第六章
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「ぼくの快気祝いということで、乾杯‼️😆」
「かんぱ〜い」
「かんぱ…って、違ぇーだろッ‼️💢」
「えへへへ、ついお花見のノリしちゃいました。すいませーん」
日番谷にツッコまれ、座り直して、パイナップルをパクり。
「おいし〜😋」
机を出さずに、椅子を片付け、敷物を広げて床に座るスタイルに変更していた。座る順番は先程と変わらない。中央には食べやすくカットしたフルーツが大皿に盛られている。
「では、お話ししますよ」
パイナップルをもぐもぐしながら、なつみは語り始めた。
「まず、このマントについてですね」
「ぼくはずっと前から斬魄刀で虚を斬るのが嫌でした。痛そうで、かわいそうなんですもん。昇華の方法なら、他にもあるんじゃないかって思ってたんです。で、自分の力だけだと鬼道になるし、それじゃあ滅却になっちゃうんで、道具を使おうってなって。こう…、動いてたんですよ。イメージ湧かせるために」
両腕をふわふわと内側から外側へ回す。
「それで、包み込む何かなら、優しく作用できるんじゃないかって閃いたんです。そこで思いついたのが布ですよ。
そんなこと考えてる時に、ちょうど、京楽隊長と呉服屋さんにお出かけすることになって」
「2人で新しい服を仕立てたんだよね。早くそれ着てデートしたいよ」
「その話はここでしないでください///💦」
「んふふ」
「そのお店でいろんな生地に触れてみて、とっても肌触りが良いものを見つけられたんです。この素材で作ってみたいってなって。お店の方に、その生地を作った方の所在を伺って、後日そこに行ってきたんです。
なんとその場所っていうのが、ぼくが生まれた場所かもしれないところの近くにあって、だから肌に合ったのかなって感じです。
職人さんのとこで、機織り体験して、糸をもらって、あと、機織り機の設計図ももらってきました。それから、ぼくが初めて発見された神社ってのがあるんですけど、そこの御神木の前に糸を置いて、お祈りをしました。
実はその場所に行く前に、涅隊長にご相談したんですよね。斬魄刀と同じ昇華ができる道具が作れるかどうかをきいたんです。そしたら、斬魄刀の成分を教えていただいて、魂魄が必要だとわかりました。とっ捕まえて詰め込むなんて、そんな乱暴なことしたくなかったので、ぼくの想いに賛同してくれる方の魂魄にお声がけするようにお祈りしたんですよ。
力が宿ったような気がしたから、きっとうまくいったんだろうな〜と思って、ここに帰ってきました。で、ほんとは自分で木材切るとこからやりたかったんですけど、涅隊長に機織り機を作っていただいて、毎日毎日ちょっとずつ、スッスットントンしながら生地を織り上げていったんです。虚さんたちのために、良いものができますようにって心を込めて。
織れたら次は、刺繍したり、仕上げの作業をしていきました。現場で使う物なので、携帯できる物にしなきゃいけないじゃないですか。だから、マフラーとかスカーフとかポンチョとか、色々考えたんですけど、やっぱりスーパーヒーローに憧れるし、何より、ぼくは先生の一番弟子なので、ここはマントでしょって決めました!」
「ふふ、ありがとう」
「色違いのお揃いです!」
雀部に向かって、緑色のマントを見せてあげた。
「でも、形は同じですが、取り外しが簡単にできるように、首のとこだけで止める仕様にしてあります。おかげで風でペラペラしちゃうんですけどね。
不思議な力が宿ったのもあって、今はこの大きさですけど、霊力を注ぐと、いっぱい大っきくできるんですよ。だから、いろんなサイズの虚に対応できます。便利ですね。
ちゃんと使えるかどうか、涅隊長に同伴してもらって、実際に虚をこのマントで昇華してみました。その子とぼくはお友だちで、そろそろ成仏したそうにしてたので、前もって説明してから試させてもらいました。ちょっと不安でしたけど、一発本番で成功しましたよ。あの子も嬉しそうでした」
「その外套の能力は、斬魄刀のように斬り込んで一気に効果を発揮するものではなく、外側から徐々に作用していくものだった。興奮を落ち着かせる効果もあるらしいネ。ゆっくりとではあるが、虚の霊子を分解していたヨ。戦いを好まないこの子にぴったりな代物といえるネ。なつみだから、使いこなせるだけかもしれないが。まぁ、斬魄刀の昇華と同じことができると、証明されたヨ」
「他の人に下手に触られて、おかしなことが起こると嫌なので、管理はしっかりするようにと、お話しされました。記憶されてますか?」
「大丈夫だヨ」
「よかったです。では次に、昨日のお話に移りますね」
「昨日はぼく、お休みの日で、お昼ちょっと前からお出かけしてました。十三番隊舎の方までお散歩して、お昼ご飯をクーちゃん、友人の久原と一緒に食べに行ったんです。
先程お伝えしたように、十三番隊には副隊長が長い間いないので、お昼ご飯食べながら、クーちゃんが早く偉くなって、副隊長になれると良いよね〜っていうお話をしてました。
お店出たらすぐにお別れして、またお散歩してたんですけど。クーちゃんがほんとに副隊長を勤められるのか、大丈夫かなーって思えてきちゃって。だから、前副隊長の志波海燕さんがどんな方だったのか、どんなことを目標にして頑張ってた方なのか調べてみようって思ったんです。それがわかれば、クーちゃんが何に力を入れて取り組めば良いのか、わかるじゃないですか。副隊長へ一歩前進できるようにしてあげたかったんです。結果として、何故か遠のいてしまったんですけど。
それで、涅隊長のとこに行くことにしたんです。いろんなデータを見せてもらって、とっても参考になりました」
「しかし残念ながら、私は昨日なつみと会っていないんだヨ。彼女は訪ねてこなかった」
「左様。久原にも話を聞いたが、昼を共にしたのは確かだが、会話の内容はなつみの証言と異なっておった。当然じゃ。志波は生きておるのだからな。これらの食い違いもきっかけとなり、儂は過去改変の仮説に至れたんじゃよ」
「そう聞かされてびっくりしましたけどね。でもそうなんだろうなーって思えました。違うことが多いんですもん。
志波副隊長の成績とか、斬魄刀の能力とか見ていって、最後にあの夜の報告書を読ませていただきました。
先発した志波副隊長の奥様率いる討伐隊が全滅してしまい、仇を討つために志波副隊長は、浮竹隊長と朽木ルキアさんと共にメタスタシアがいる巣に向かわれました。始めは志波副隊長がおひとりで戦われ、その最中に斬魄刀を奪われてしまいました。ですが、そのまま斬魄刀を使わずに戦い続けたと書かれていました。何人も犠牲者を出した相手に対して、素手で相当なダメージを与えられたとあって、ぼく、感銘を受けました。ぼくは、斬魄刀をなるべく使わずに虚のお相手をするのを目標にしてますから。身のこなしとか、マネしたくなりましたよ。
その後ですよね。メタスタシアが志波副隊長の腕に入り込んで、融合を始めてしまったのは。それで浮竹隊長が暴走する志波副隊長の身体を止めようと抜刀。その場にいたお2人では、もう志波副隊長を助けられないと判断され、志波副隊長ごとメタスタシアを斬る決断をされました。本当なら浮竹隊長が手を掛けるはずでしたが、そのタイミングで急に体調を崩され、うまく動けなくなってしまいました。
このままでは危険だと思われ、浮竹隊長はルキアさんに逃げるよう指示を出されていましたが、ルキアさんは勇敢にも現場に戻ってこられました。とってもかっこいいですよね!
ですが、ルキアさんが戻って来ても、志波副隊長を救う手段はありませんでしたので、最期の止めを刺されて、その戦いは終わりました」
「待て、木之本。私が海燕殿を、殺めたと言うのか。私が、この手で」
「はい…。ぼくも驚きましたよ。資料を読むまでは、志波副隊長は虚に倒されて命を落としたと思っていたので、まさかルキアさんが」
なつみの言葉はそこで、ルキアに遮られてしまった。立ち上がり、憤る。
「…ふざけるのも大概にしろッ‼︎‼︎お前の戯言など、信じるものか‼︎‼︎私が海燕殿を殺めるなど、できるわけがないだろう‼︎‼︎何故隊長方は、この者の言うことを鵜呑みになさるのですか。全て現実離れしすぎています。私が、海燕殿を、殺めるなど…ッ」
「落ち着け、朽木」
「そうだ。話を最後まで聞いてやれ。木之本、悪いな。続けてくれ」
「よろしいんですか…」
「あぁ。お前が読んだ記録には、朽木がどうしたと書かれていたんだ」
「……。志波副隊長は、いえ、メタスタシアはルキアさんを見つけると、浮竹隊長から離れてそちらへ向かっていきました。ルキアさんは斬魄刀を構え、メタスタシアが突進してくる勢いのまま、迷い無く胸をひと突きに貫いたそうです。その一撃で、昇華が始まりました」
「…ッ、ありえぬ、そのようなこと……」
「抑えろ」
涙を堪えるルキアを海燕が落ち着かせる。今や浮竹は例の夜がどのように展開されたのか、一部始終のほぼ全てを見通せたようだった。
「木之本の言動は確かに現実離れしているな。だが、木之本が今話した内容は、酷く現実的だ。木之本がいなければ、確実にそうなっていたと、俺も思う。朽木、お前はただ否定したいだけなんだろ。後に課せられたはずの想像に容易い重荷から、目を逸らしていたいだけだ」
ルキアはなつみの話を聞きながら思い出していた。あの時感じた恐怖が蘇ってきていたのだ。彼女自身が一番よくわかっている。何故あの時戻ってきたのか。勇敢など似つかわしくない動機であったことを。とうに過ぎた忘れたい出来事を、こうして掘り返され、向き合わされる辛さ。動揺するのは仕方のないことであった。
立ったまま俯くルキアの振るう手を、さっと拾い上げる者がいた。彼女の苦しみに耐えられなくなったなつみだ。
「ルキアさん。ぼくが読んだ報告書には、まだ続きがあったんですよ」
「…、何だというのだ」
「胸を貫かれた状態で、志波副隊長はルキアさんを優しく抱きしめたんだそうです。会話の内容こそ書かれていませんでしたが、そうして、最期の言葉を遺されていかれたんですって」
「礼を言ったんだろ」自分のことのため、海燕には想像できたようだ。「あと、謝ったかもな」
「そう思います。ルキアさんは、ルキアさんなりにできることを最大限にされたんですから。それからですね、こっからが大事なんですよ!」
ルキアを座らせてあげ、なつみは元いた場所に戻りながら演説を朗々と語り出した。
「志波副隊長の身体はメタスタシアと融合した結果、一緒に昇華されてしまったようですが、融合している時間の短さか、それとも、異物である霊子とはくっつきはしても、本当は溶けて混ざり合うことはないのか、何が原因かわかりませんが、とにかく、虚の昇華の方が早く、志波副隊長の意識は最後の方で残っているという時差があったってことに気付いたんですよ!
それだったら、ぼくなら、志波副隊長を助けられたんじゃないかって、思えてきたんです。だって、このマントを使えば、大きな傷を付けずに昇華をすることができるんですよ。虚の霊子が先に昇華されるなら、全て急いで取り出して、志波副隊長の回復をえいってできたら、ミッションクリアなんです。可能性がめちゃくちゃあるじゃないですか。
そう思ったら、テンション上がっちゃって、隣にいた涅隊長に『できますよね!』ってきいたら、『そうだろうネ』って簡単に返されちゃって、ムッとしちゃったけど、想像がどんどん膨らんじゃって、興奮してたんですよ。
そんなぼくを見て、涅隊長はおっしゃいました。メタスタシアは既に消滅しているから、同じ敵と遭遇することは無いけれど、似たようなケースと出逢う可能性は大いにあるから、自分ならどう動いたとか、いろいろと考えて、心の準備をしておくのは良いことだよって。
だからぼく、資料で読んだことを頭の中で再現しながら、イメージトレーニングをすることにしたんです」
なつみは梨をパクりとつまんで、シャリシャリと給水。
「夕方頃は、卯ノ花隊長のところで回道のお勉強をしていました」
「そうでしたね。1時間くらいでしたか」
「一緒ですね!そう、その後は、ご飯食べて、お風呂入って、パジャマに着替えて、ジュース飲んで、歯ぁ磨いて、んーと、あ!宿舎の屋根の上でウクレレ弾いて、夜空を眺めて、月の次に明るい星を探して、『今日も良い日でした。明日も良い日になりますように』ってお祈りして、お部屋戻って、ベッドに入りました」
「なつみちゃん、毎晩そうしてるの?」
「ウクレレは気分ですよ」
「あれやろ?レンくんのギターに触発されて始めたっていう。うまくなったん?」
「上達はしてますよ。上手とは言えないですけどね」
「そうなんだぁ。聴きたいなぁ」
「恥ずかしいです///」
「ええやん。聴かせてあげるくらい。今省いてたけど、もっと恥ずかしいこと毎晩してるんやし、なつみちゃん」
「⁉️何のことですか‼️💦」
なつみの耳元に口を近づけ、コソコソ。
「京楽さんの写真眺めてムラムラしてんねやろ」
「なーーーッ‼️‼️‼️💦」
「😊❓」
余計なことを言った市丸の口を両手でブロックして、今の発言がどこまで届いていたのか周りをギョロギョロ見回して確認するなつみ。変な反響は起きておらず、どうやら誰にも聞かれていなかったようだ。安心したなつみは、強めのコソコソで反論しておいた。
「ムラじゃなくて、キュンです‼️‼️」
コホンと咳払いをして、取り乱した感情を抑えると、「一緒やん」とニコニコする市丸を放っておいて、なつみは話を戻していった。
「ぼくの寝室なんですが、ベッドがあって、寝ると、左側に壁があるんです。いつもぼくはムッちゃんを、ぼくの斬魄刀を、ベッドの左側に置いて一緒に寝ています。それからこのマントですが、寝る時は外して、その左側の壁に掛けているです。その状態で昨日も寝ました。違ったのは、布団に入ってからもイメトレをしてたってことですね」
「何の?(笑)」
ふざける市丸の肩をぺしっと叩いて黙らせる。
「志波副隊長救出大作戦のイメトレに決まってるじゃないですか‼️💢」
「フフフ、は〜い(笑)」
「むぅ!それで‼️ずっとそのことを考えていたら、いつの間にか眠ってしまっていました。
気がつくと、外にいたんです。夜の森の中。ふわふわと宙に浮いていました。隣にはムッちゃんがいて、マントを着けてやったぞって言ったんです。その通りで、ぼくはこのマントをパジャマ姿で着けていました。もう、夢だと思うじゃないですか」
「かんぱ〜い」
「かんぱ…って、違ぇーだろッ‼️💢」
「えへへへ、ついお花見のノリしちゃいました。すいませーん」
日番谷にツッコまれ、座り直して、パイナップルをパクり。
「おいし〜😋」
机を出さずに、椅子を片付け、敷物を広げて床に座るスタイルに変更していた。座る順番は先程と変わらない。中央には食べやすくカットしたフルーツが大皿に盛られている。
「では、お話ししますよ」
パイナップルをもぐもぐしながら、なつみは語り始めた。
「まず、このマントについてですね」
「ぼくはずっと前から斬魄刀で虚を斬るのが嫌でした。痛そうで、かわいそうなんですもん。昇華の方法なら、他にもあるんじゃないかって思ってたんです。で、自分の力だけだと鬼道になるし、それじゃあ滅却になっちゃうんで、道具を使おうってなって。こう…、動いてたんですよ。イメージ湧かせるために」
両腕をふわふわと内側から外側へ回す。
「それで、包み込む何かなら、優しく作用できるんじゃないかって閃いたんです。そこで思いついたのが布ですよ。
そんなこと考えてる時に、ちょうど、京楽隊長と呉服屋さんにお出かけすることになって」
「2人で新しい服を仕立てたんだよね。早くそれ着てデートしたいよ」
「その話はここでしないでください///💦」
「んふふ」
「そのお店でいろんな生地に触れてみて、とっても肌触りが良いものを見つけられたんです。この素材で作ってみたいってなって。お店の方に、その生地を作った方の所在を伺って、後日そこに行ってきたんです。
なんとその場所っていうのが、ぼくが生まれた場所かもしれないところの近くにあって、だから肌に合ったのかなって感じです。
職人さんのとこで、機織り体験して、糸をもらって、あと、機織り機の設計図ももらってきました。それから、ぼくが初めて発見された神社ってのがあるんですけど、そこの御神木の前に糸を置いて、お祈りをしました。
実はその場所に行く前に、涅隊長にご相談したんですよね。斬魄刀と同じ昇華ができる道具が作れるかどうかをきいたんです。そしたら、斬魄刀の成分を教えていただいて、魂魄が必要だとわかりました。とっ捕まえて詰め込むなんて、そんな乱暴なことしたくなかったので、ぼくの想いに賛同してくれる方の魂魄にお声がけするようにお祈りしたんですよ。
力が宿ったような気がしたから、きっとうまくいったんだろうな〜と思って、ここに帰ってきました。で、ほんとは自分で木材切るとこからやりたかったんですけど、涅隊長に機織り機を作っていただいて、毎日毎日ちょっとずつ、スッスットントンしながら生地を織り上げていったんです。虚さんたちのために、良いものができますようにって心を込めて。
織れたら次は、刺繍したり、仕上げの作業をしていきました。現場で使う物なので、携帯できる物にしなきゃいけないじゃないですか。だから、マフラーとかスカーフとかポンチョとか、色々考えたんですけど、やっぱりスーパーヒーローに憧れるし、何より、ぼくは先生の一番弟子なので、ここはマントでしょって決めました!」
「ふふ、ありがとう」
「色違いのお揃いです!」
雀部に向かって、緑色のマントを見せてあげた。
「でも、形は同じですが、取り外しが簡単にできるように、首のとこだけで止める仕様にしてあります。おかげで風でペラペラしちゃうんですけどね。
不思議な力が宿ったのもあって、今はこの大きさですけど、霊力を注ぐと、いっぱい大っきくできるんですよ。だから、いろんなサイズの虚に対応できます。便利ですね。
ちゃんと使えるかどうか、涅隊長に同伴してもらって、実際に虚をこのマントで昇華してみました。その子とぼくはお友だちで、そろそろ成仏したそうにしてたので、前もって説明してから試させてもらいました。ちょっと不安でしたけど、一発本番で成功しましたよ。あの子も嬉しそうでした」
「その外套の能力は、斬魄刀のように斬り込んで一気に効果を発揮するものではなく、外側から徐々に作用していくものだった。興奮を落ち着かせる効果もあるらしいネ。ゆっくりとではあるが、虚の霊子を分解していたヨ。戦いを好まないこの子にぴったりな代物といえるネ。なつみだから、使いこなせるだけかもしれないが。まぁ、斬魄刀の昇華と同じことができると、証明されたヨ」
「他の人に下手に触られて、おかしなことが起こると嫌なので、管理はしっかりするようにと、お話しされました。記憶されてますか?」
「大丈夫だヨ」
「よかったです。では次に、昨日のお話に移りますね」
「昨日はぼく、お休みの日で、お昼ちょっと前からお出かけしてました。十三番隊舎の方までお散歩して、お昼ご飯をクーちゃん、友人の久原と一緒に食べに行ったんです。
先程お伝えしたように、十三番隊には副隊長が長い間いないので、お昼ご飯食べながら、クーちゃんが早く偉くなって、副隊長になれると良いよね〜っていうお話をしてました。
お店出たらすぐにお別れして、またお散歩してたんですけど。クーちゃんがほんとに副隊長を勤められるのか、大丈夫かなーって思えてきちゃって。だから、前副隊長の志波海燕さんがどんな方だったのか、どんなことを目標にして頑張ってた方なのか調べてみようって思ったんです。それがわかれば、クーちゃんが何に力を入れて取り組めば良いのか、わかるじゃないですか。副隊長へ一歩前進できるようにしてあげたかったんです。結果として、何故か遠のいてしまったんですけど。
それで、涅隊長のとこに行くことにしたんです。いろんなデータを見せてもらって、とっても参考になりました」
「しかし残念ながら、私は昨日なつみと会っていないんだヨ。彼女は訪ねてこなかった」
「左様。久原にも話を聞いたが、昼を共にしたのは確かだが、会話の内容はなつみの証言と異なっておった。当然じゃ。志波は生きておるのだからな。これらの食い違いもきっかけとなり、儂は過去改変の仮説に至れたんじゃよ」
「そう聞かされてびっくりしましたけどね。でもそうなんだろうなーって思えました。違うことが多いんですもん。
志波副隊長の成績とか、斬魄刀の能力とか見ていって、最後にあの夜の報告書を読ませていただきました。
先発した志波副隊長の奥様率いる討伐隊が全滅してしまい、仇を討つために志波副隊長は、浮竹隊長と朽木ルキアさんと共にメタスタシアがいる巣に向かわれました。始めは志波副隊長がおひとりで戦われ、その最中に斬魄刀を奪われてしまいました。ですが、そのまま斬魄刀を使わずに戦い続けたと書かれていました。何人も犠牲者を出した相手に対して、素手で相当なダメージを与えられたとあって、ぼく、感銘を受けました。ぼくは、斬魄刀をなるべく使わずに虚のお相手をするのを目標にしてますから。身のこなしとか、マネしたくなりましたよ。
その後ですよね。メタスタシアが志波副隊長の腕に入り込んで、融合を始めてしまったのは。それで浮竹隊長が暴走する志波副隊長の身体を止めようと抜刀。その場にいたお2人では、もう志波副隊長を助けられないと判断され、志波副隊長ごとメタスタシアを斬る決断をされました。本当なら浮竹隊長が手を掛けるはずでしたが、そのタイミングで急に体調を崩され、うまく動けなくなってしまいました。
このままでは危険だと思われ、浮竹隊長はルキアさんに逃げるよう指示を出されていましたが、ルキアさんは勇敢にも現場に戻ってこられました。とってもかっこいいですよね!
ですが、ルキアさんが戻って来ても、志波副隊長を救う手段はありませんでしたので、最期の止めを刺されて、その戦いは終わりました」
「待て、木之本。私が海燕殿を、殺めたと言うのか。私が、この手で」
「はい…。ぼくも驚きましたよ。資料を読むまでは、志波副隊長は虚に倒されて命を落としたと思っていたので、まさかルキアさんが」
なつみの言葉はそこで、ルキアに遮られてしまった。立ち上がり、憤る。
「…ふざけるのも大概にしろッ‼︎‼︎お前の戯言など、信じるものか‼︎‼︎私が海燕殿を殺めるなど、できるわけがないだろう‼︎‼︎何故隊長方は、この者の言うことを鵜呑みになさるのですか。全て現実離れしすぎています。私が、海燕殿を、殺めるなど…ッ」
「落ち着け、朽木」
「そうだ。話を最後まで聞いてやれ。木之本、悪いな。続けてくれ」
「よろしいんですか…」
「あぁ。お前が読んだ記録には、朽木がどうしたと書かれていたんだ」
「……。志波副隊長は、いえ、メタスタシアはルキアさんを見つけると、浮竹隊長から離れてそちらへ向かっていきました。ルキアさんは斬魄刀を構え、メタスタシアが突進してくる勢いのまま、迷い無く胸をひと突きに貫いたそうです。その一撃で、昇華が始まりました」
「…ッ、ありえぬ、そのようなこと……」
「抑えろ」
涙を堪えるルキアを海燕が落ち着かせる。今や浮竹は例の夜がどのように展開されたのか、一部始終のほぼ全てを見通せたようだった。
「木之本の言動は確かに現実離れしているな。だが、木之本が今話した内容は、酷く現実的だ。木之本がいなければ、確実にそうなっていたと、俺も思う。朽木、お前はただ否定したいだけなんだろ。後に課せられたはずの想像に容易い重荷から、目を逸らしていたいだけだ」
ルキアはなつみの話を聞きながら思い出していた。あの時感じた恐怖が蘇ってきていたのだ。彼女自身が一番よくわかっている。何故あの時戻ってきたのか。勇敢など似つかわしくない動機であったことを。とうに過ぎた忘れたい出来事を、こうして掘り返され、向き合わされる辛さ。動揺するのは仕方のないことであった。
立ったまま俯くルキアの振るう手を、さっと拾い上げる者がいた。彼女の苦しみに耐えられなくなったなつみだ。
「ルキアさん。ぼくが読んだ報告書には、まだ続きがあったんですよ」
「…、何だというのだ」
「胸を貫かれた状態で、志波副隊長はルキアさんを優しく抱きしめたんだそうです。会話の内容こそ書かれていませんでしたが、そうして、最期の言葉を遺されていかれたんですって」
「礼を言ったんだろ」自分のことのため、海燕には想像できたようだ。「あと、謝ったかもな」
「そう思います。ルキアさんは、ルキアさんなりにできることを最大限にされたんですから。それからですね、こっからが大事なんですよ!」
ルキアを座らせてあげ、なつみは元いた場所に戻りながら演説を朗々と語り出した。
「志波副隊長の身体はメタスタシアと融合した結果、一緒に昇華されてしまったようですが、融合している時間の短さか、それとも、異物である霊子とはくっつきはしても、本当は溶けて混ざり合うことはないのか、何が原因かわかりませんが、とにかく、虚の昇華の方が早く、志波副隊長の意識は最後の方で残っているという時差があったってことに気付いたんですよ!
それだったら、ぼくなら、志波副隊長を助けられたんじゃないかって、思えてきたんです。だって、このマントを使えば、大きな傷を付けずに昇華をすることができるんですよ。虚の霊子が先に昇華されるなら、全て急いで取り出して、志波副隊長の回復をえいってできたら、ミッションクリアなんです。可能性がめちゃくちゃあるじゃないですか。
そう思ったら、テンション上がっちゃって、隣にいた涅隊長に『できますよね!』ってきいたら、『そうだろうネ』って簡単に返されちゃって、ムッとしちゃったけど、想像がどんどん膨らんじゃって、興奮してたんですよ。
そんなぼくを見て、涅隊長はおっしゃいました。メタスタシアは既に消滅しているから、同じ敵と遭遇することは無いけれど、似たようなケースと出逢う可能性は大いにあるから、自分ならどう動いたとか、いろいろと考えて、心の準備をしておくのは良いことだよって。
だからぼく、資料で読んだことを頭の中で再現しながら、イメージトレーニングをすることにしたんです」
なつみは梨をパクりとつまんで、シャリシャリと給水。
「夕方頃は、卯ノ花隊長のところで回道のお勉強をしていました」
「そうでしたね。1時間くらいでしたか」
「一緒ですね!そう、その後は、ご飯食べて、お風呂入って、パジャマに着替えて、ジュース飲んで、歯ぁ磨いて、んーと、あ!宿舎の屋根の上でウクレレ弾いて、夜空を眺めて、月の次に明るい星を探して、『今日も良い日でした。明日も良い日になりますように』ってお祈りして、お部屋戻って、ベッドに入りました」
「なつみちゃん、毎晩そうしてるの?」
「ウクレレは気分ですよ」
「あれやろ?レンくんのギターに触発されて始めたっていう。うまくなったん?」
「上達はしてますよ。上手とは言えないですけどね」
「そうなんだぁ。聴きたいなぁ」
「恥ずかしいです///」
「ええやん。聴かせてあげるくらい。今省いてたけど、もっと恥ずかしいこと毎晩してるんやし、なつみちゃん」
「⁉️何のことですか‼️💦」
なつみの耳元に口を近づけ、コソコソ。
「京楽さんの写真眺めてムラムラしてんねやろ」
「なーーーッ‼️‼️‼️💦」
「😊❓」
余計なことを言った市丸の口を両手でブロックして、今の発言がどこまで届いていたのか周りをギョロギョロ見回して確認するなつみ。変な反響は起きておらず、どうやら誰にも聞かれていなかったようだ。安心したなつみは、強めのコソコソで反論しておいた。
「ムラじゃなくて、キュンです‼️‼️」
コホンと咳払いをして、取り乱した感情を抑えると、「一緒やん」とニコニコする市丸を放っておいて、なつみは話を戻していった。
「ぼくの寝室なんですが、ベッドがあって、寝ると、左側に壁があるんです。いつもぼくはムッちゃんを、ぼくの斬魄刀を、ベッドの左側に置いて一緒に寝ています。それからこのマントですが、寝る時は外して、その左側の壁に掛けているです。その状態で昨日も寝ました。違ったのは、布団に入ってからもイメトレをしてたってことですね」
「何の?(笑)」
ふざける市丸の肩をぺしっと叩いて黙らせる。
「志波副隊長救出大作戦のイメトレに決まってるじゃないですか‼️💢」
「フフフ、は〜い(笑)」
「むぅ!それで‼️ずっとそのことを考えていたら、いつの間にか眠ってしまっていました。
気がつくと、外にいたんです。夜の森の中。ふわふわと宙に浮いていました。隣にはムッちゃんがいて、マントを着けてやったぞって言ったんです。その通りで、ぼくはこのマントをパジャマ姿で着けていました。もう、夢だと思うじゃないですか」