第五章
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そのまた数日後、なつみは一番隊舎のケイジの部屋で、彼に抱きしめられていた。
「ありがとう、木之本」
「いいよ〜。お前のためだもん😊」
その言葉が嬉しくて、さらに強く抱きしめた。やられるなつみはフザけながら、両手を伸ばして「苦しいよ〜😆」の仕草を内緒でしてみた。
するとそこに。
「元気そうで何よりだよ、ケイジくん」
「(ゲッ💦)京楽隊長⁉️どうされましたか💦」
いつの間に現れたのか、扉のところにもたれかかって室内をガッツリ睨んでいる京楽がいた。慌ててケイジはなつみから離れる。
「あの、今のは変な意味は無くて、そのっ」
命乞いをする。
「そ、そうですよ!ぼくら仲良しなんで、ハグくらい当たり前ですよ😀」
「ふーん」
(アホ木之本!余計なことを💦)
ツカツカと許可無く勝手に入室し、京楽はケイジの前に威圧的に立った。
「なつみちゃんのおかげで、お悩みは解決したようだね。もうボクと代わってもらって……(ギロッ)いいかな?」
死なずには済みそう。
「はい…。もちろんです💦」
「うんっ、ありがと😄」
圧倒されて一歩も動けないケイジから、なつみを奪い取ることに成功。
「じゃあ行こうか、なつみちゃん」
京楽は彼女の手を引いて退室していった。
「またな、ケイジ‼️💦」
「おう…」
扉の枠から京楽となつみが見えなくなったと思ったら、その後をフレームインしてくる影が。
「彼奴め、邪魔をせずにおれんのか」
「総隊長⁉️💦」
元柳斎の登場。
「気にするな。お前はお前で良い。遠慮せず、なつみと仲良うせい」
そしてフレームアウト。
「はあ…💧」
偉い人たちにエライとこを見られてたケイジであった。
「はぁ…💧」
廊下を歩く京楽は怒っているご様子。
「なつみちゃん、キミは隙を見せすぎだよ(ボクにはほとんど見せないけど)!」
「そんなっ。ケイジはぼくの大事な仲間です!嬉しい時も悲しい時も、寄り添ってあげるのは当然です!それに、ケイジはひとりぼっちで寂しかったんですもん。人肌恋しかったんですよ。ハグで癒せるなら、ぼくは捧げます。いくらでも!」
「ハグで済んだとは思えない雰囲気だったけどね」
ため息をつき、なつみの手を放してあげた。
「なつみちゃん、ボクが会いにきた理由、わかるよね?」
それはもちろん。
「デートの件ですね」
もごもごと答えた。
「そう!」手を腰に当て、呆れも混じりつつ話す。「連絡先を交換してたら、こんな手間いらないのに。(まぁ、今回は来て良かったけど)で?直近のお休みはいつになるのかな?」
「えっとですね💦」
右の人差し指を口に当て、スケジュールを頭に浮かべる。
「んと、えっと、あ、んー💦」
「いつ?😠」
促されたのが怖くて、ぎゅぎゅと拳を握り、えぇい!ととりあえず答えてみた。
「再来週の金曜日です‼️」
「再来週?…えらく先じゃないか。その前にお休みは無いの?」
「あの、あるんですけど、ちょっと都合悪くて」
「…そ」腑に落ちないが、先約があるなら仕方がない。「わかった。じゃあ、再来週の金曜日ね。予定空けておくよ。そうだな、朝の10時くらいに宿舎まで迎えに行くから、そのつもりでいて」
「はい😣///」
「約束だよ」
京楽は先日同様、また無理矢理なつみの小指を絡め取った。
「はい。大丈夫です」
上下にゆっさゆっさ腕を振り、約束を交わす。
「どこに行くおつもりなんですか?」
「それはこれから決めるよ。楽しみにしてて」
「はい…///(ホ、hotel😍❓)」
期待せずにはいられない。
デート当日、朝9時を過ぎた頃。五番隊宿舎、女子棟、なつみと美沙の部屋。
「ん、何だ?」
なつみの伝令神機に着信あり。
「尾田?」
何故か尾田からの入電。
「(冷やかしだな)もしもーし、おはよー」
「おはよ、木之本」
なんだか、切迫した感じの話し方だった。
「どうした?」
「お前、京楽隊長とデート行くんだろ」
「そうだけど…」
「支度は?」
「途中まではしたよ」
「そっか」
「どうしたんだよ、尾田。何かあったのか?」
言葉を選んでいるのか、嫌な間を置かれた。
「おい、答えろよ」
「あのな、木之本。悪いが今日のデート、無しだ」
「は⁉️」
「京楽隊長が行けなくなっちまったんだよ」
「どういうことだよ‼️」
かくかくしかじか……
午前10時、八番隊舎、尾田に連れられ応接室に入ると、なつみは固まった。
「ごめんよぉーっ😭」
「……😑」
応接室の奥には隊首室がある。そこから飛び出してきた京楽が、なつみの腰に抱きついて泣き始めたのだ。
「ボクが馬鹿だったよぉーっ😭」
「やっと認められましたね‼️💢」
隊首室からすっと出てきた七緒が一喝。
「わぁーん💦」
呆れとドン引きと仕様の無さから、なつみの目は細くなり、口は一文字。開け放たれた扉の向こう、泣きつく京楽の机の上には、山と積まれた資料が。
「あれ全部?」
「そう」
「マジ?」
「マジ。あれでも俺ら結構手伝った方」
「はぁ……」
お察しの通り、京楽は仕事で忙しいらしく、デートどころではない。
「ごめぇぇん‼️‼️😫」
「さぁ、とっとと木之本さんから離れて、席にお戻りください‼️」
七緒が京楽を引き剥がしにかかる。
「あぁぁ、ヤダーッ‼️デート行きたいよぉーッ‼️‼️」
「行きたければ、全部片付けてください‼️」
「今日中なんて無理だよー‼️‼️」
「無理にしたのは隊長ご自身です💢」
京楽は机に戻され、業務を再開させられた。半べそである。
「涙で文字が読めない😢」
「知りません‼️」
(夏休み最終日でこんな1日を過ごす子供がいるって聞いたことがあるけど、大の大人が…💧)
小の小人はガッカリしていた。
「申し訳ありませんね、木之本さん」
七緒が隊首室の扉をバンッと閉めてから、なつみにお詫びの言葉を述べた。
「いえ…。大変そうですね」
「ええ。いつものことではありますが、さすがにこれに懲りて、態度を改めてもらいたいものです」
尾田から事情を聞いてわかってはいたものの、そんなに時間はかからないだろうと思い、昼からでもデートに行けるものと考えていたのだが、現実は残酷であった。
「せっかく、身支度までしていただいたのに」
この日のために美沙と選んだ新しい服を着て来ていたなつみ。ションボリが止まらない。
「うぅぅ」
小さな背中が余りにもかわいそう。
「今日のところはお引き取りを、と言いたいところですが、わざわざお越しいただいたので、尾田くんの部屋に行かれてはどうですか?積もる話もおありでしょう」
「良いんですか?」
尾田が聞き返した。
「ええ。来客のお相手も、業務の一環ですから」
すると扉の向こうから。
「なつみちゃんはボクとデートするために来たんだよ‼️ 尾田くんとじゃなーいッ💢」
「黙らっしゃい💥✊」
シーン…
強めの裏拳ノックで大人しくなった。
「じゃ、じゃあ、行こうか💦」
「おぅ💦」
2人はそそくさと応接室を後にした。
尾田の部屋に入ると、思うことがあった。
「尾田の部屋だ〜」
「あ?俺の部屋だぞ」
「場所が変わっても、なんか懐かしいな😄」
「そうか?」
「うん。インテリアが『尾田です』って名乗ってる」
「意味わかんねー。そこ座れ」
「うん。あとね、尾田臭がする」
くんくん。
「臭ぇの?」
「良い悪いじゃない。尾田シューだ」
「あっそ。木之本臭は…、わかんねぇ😕」
「むしゅ〜。ぎゃぼっ💦」
確認のため、椅子に座ったなつみの頭を鷲掴みしてくんかくんか。しかし、首を傾げる。
「わかんねぇ」
「もぉー!やめろよ!」
「わかんねぇー(笑)」
2人きりで会えたのが嬉しくて、尾田はなつみの髪の毛をわしゃわしゃしてやった。おめかしをして、いつもよりかわいさ倍増しているため、余計に触りたいのだ。
「やめろってー!セットしたのにー!」
「良いだろ。どうせ今日はどこも行けねぇよ」
「わかんねぇだろ」と反論したかったが、あの量は説得力がありすぎた。
「やっぱり、ぼくのせいだよな……」
シュンとするものだから、尾田は乱した髪を直してやった。
「まぁ、きっかけはお前だけどな。『どこ行こう』『何しよう』『何食べよう』『何着てこう』『髪型どうしよう』『香水どれにしよう』って。俺はお前と仲が良いから、特に質問攻めだったよ。仕事そっちのけでお前のことずっと考えてたんだぜ。けど、隊長がサボるのは今に始まったことじゃないから、そんな気にすんなよ。副隊長の注意を無視して溜め込んだ、隊長の自業自得だ」
とは言っても、むぅむぅと唸る。
「落ち込むなって。行けなくなったのは残念だけど、それだけ大事に思われてるってことなんだから」
「大事だったら、ちゃんと予定空けてるよ。大事じゃないんだよ、ぼくなんか。別にデートは他の人とだってしてるだろうし。ぼくは特別じゃないんだよ。ドタキャンしたって良いってくらいの相手なんだよ」
なつみは椅子の上で膝を抱え、顔を伏せた。
その様子に、「そんなことはない」と慰めてやりたかったが、その前に、なつみがどうして京楽にデレツンな態度を取るのか納得してしまった。
「お前、京楽隊長のこと、どう思ってんの。好きなんじゃねーの」
「好きだよ。好きだけど…、本気になったらバカみたいじゃん。どうせぼくは、京楽隊長にとって遊びでしかないんだから。京楽隊長は『隊長』。ぼくはそのずっと下の最下位の席官。まともに相手してくれるわけ無いじゃん。京楽隊長はモテるし、ぼくじゃなくても良いし、他のみんなも誘ってるだろうし。女の子が好きだし…」
最後の言葉はものすごく小声で、尾田には聞き取れなかったが、大体内容がそんなことだろうと予想ができるものだった。
「なぁ、もし隊長がお前の言う通りの人だとして、誰にでも手を出してるってわかってるのに、それでもお前はデートの誘いを受けたんだよな」
膝を抱える手がぎゅっとなった。
「お前そんな、自分を安売りしてんのか。今日は自分とデートしてくれても、明日には別の誰かとするかもしれねぇってのに。次があるって期待しながら、ほいほいついてくんだ。それこそバカなんじゃねーの」
「お前に何がわかるってんだ‼️」と言うところだったはず。なのになつみは言えなかった。そんなことないのに、今話した内容を全部通せば、尾田の言うことは正しかったから。
しかし尾田はそこで、なつみの隣に椅子を置き、彼女の肩を抱いてやった。
「『そんなことないもん』だろ?言えよ、そう思うんだったら。わかってるんだぜ、お前が思ってもないこと言ったっての。そういうの良くねぇって。本当になっちまうからな」
「ぼくがそういう能力者だから?」
「違う。みんなそうだ。言霊ってやつ。悪いことを口にしたら、それが現実になるんだ。お前がさっき言ったこと、あれは悪いことだろ。望まないこと言うなよ。怖がんな、お前らしくない」
「だって、嫌な思いするの嫌だもん」
「男1人にフラれるくらい何だよ。お前の一生がそれで終わるわけでもなし。失敗したって良いじゃねーか。次にうんと楽しい恋をすりゃ良いだけの話なんだからよ。…それに」尾田は身体を離した。「お前は怖がって現実から目を逸らしたせいで、本当かどうかもわからねぇ噂とか、今は違ってるかもしれねぇ昔話とかの、他人から見た京楽隊長の印象であの人を見てるだろ。俺から見りゃ、あの人はそんなフザけた下衆野郎じゃない。まぁ、昔は知らねぇけど。近くで見られるようになって、わかったよ。他人の評価なんてあてにならないってな」
なつみは少しだけ顔を上げ、尾田を見つめた。
「『誰かがこう言ってたから、そうだ』なんて考えやめろよ。ちゃんと、まっさらな気持ちで、あの人がお前に向ける言葉とか行動とか、見た方が良い。それでお前なりに判断した方が納得できるんじゃないか?良い印象を持てたら、とことん惚れれば良いし。悪い印象だったら、やっぱりなって言って、切り捨てちまえば良い。本当を見ずに、決めつけるなよ。それにお前は、疑ってるから、好きになるのが怖いけど、好きでいたいとも思ってるんだろ。だったらなおさらだ。知らないまま諦めるなんて、間違ってる。今日のは、ただ隊長がアホだっただけ。他に深い理由は無い。そんだけだ。あの人を許してやれよ、木之本」
抱えていた脚を下ろして、なつみは尾田に抱きついた。
「ありがとう、尾田。忘れかけてた大事な約束、思い出したよ」
「約束?」
「ずっと前、京楽隊長がぼくに宿題を出したんだ」
「どんな?」
「ぼくには、気づいてない大事なことがあるって。それがわかったら、会いに来てって」
「……、見つけられそうか?」
尾田の声は優しかった。
「まだわからない。だけど、いつか見つけられると思う。ぼくが間違ってたとしたらね」
「お前なら大丈夫だよ」
「うん。ありがとう」
きゅうっとなつみは尾田の首に頬を当てた。
そういえば、このシチュエーション…。
「そういやお前、ケイジと抱き合ってたらしいな。こんな感じか?」
「⁉️///」
ガバッと離れた。
「隊長が嘆いてた」
「そ、そうだよ!友情のハグだもん!変なことしてないもん!」
「ふーん」
「いつものことだろ!」
「お前こそ浮気癖あるように見られそうだな」
ピキピキピキッ
「そんなことないもーーーんッ‼️💢」
「はいはい。それも誤解ってやつだ。お互い様だな🙏」
「ごっつぁんです」が「なーむー」ととられそうな合掌。
「俺って、なんて良い奴なんでしょうか」
「自分で言うなよ」
「意味わかってねーな、マジ」
「むぅ‼️」
尾田は拗ねるなつみを置いといて、作業机に向かった。
「今から仕事すっから。ここにいてもいいけど、邪魔すんなよ」
ぴょんぴょんぴょん♪
「何すんのー?😁」
「邪魔すんなっつったろ💢」
両手でほっぺたサンドの刑に処す。
「うゅゅ💦」
すぐに解放されたが、懲りないなつみ。
「なぁ、聞いてよ。今日ぼく生理2日目でマジムカついてんだけど」
「知らねぇよ💢つか、男の前でそんなこと言うな‼️」
「ほんとは先週のはずだったんだ」
「聞いちゃいねーな。じゃあ俺も聞かねぇ」
大きな独り言が始まる。
「それなのにこなくて、キタのが昨日!もー最悪じゃんね。今日は血が多い日なの。なのにデートなの!どーしよー!って思ってたらこうなった。不幸中の幸いだよね〜」
だから荷物がやけにパンパンなのかと確認しつつ、尾田の頭を過ぎるひとつの確信。
(てことは、そういうことは無いってことだな)
「何、『よかった😮💨』みたいな顔してんだよ。良くないよ!生理だよ!イライラだよ!もー!わかれよ、この感じ‼︎だから男になりたいんじゃ‼︎‼︎」
「あーもー!うるせぇな!やること無ぇなら帰れよ‼︎」
「いて良いって言ったじゃん!」
「大人しくするならだ!」
「ケーチケーチ」
ほんとに帰っちゃうぞ〜的なノリで廊下に出て、開けたドアの隙間から覗いてやる。
すると。
「木之本さん」
「ぎゃッ‼️‼️」
振り向くと七緒がいた。
「すいません!静かにします!💦」
怒られると思い、慌てて尾田の部屋に戻っていった。
「やーい、おーこらーれた〜」
「😖💢💦」
しかし、まだ七緒は部屋の前にいるようで、扉をノックする音が響いた。
「ありがとう、木之本」
「いいよ〜。お前のためだもん😊」
その言葉が嬉しくて、さらに強く抱きしめた。やられるなつみはフザけながら、両手を伸ばして「苦しいよ〜😆」の仕草を内緒でしてみた。
するとそこに。
「元気そうで何よりだよ、ケイジくん」
「(ゲッ💦)京楽隊長⁉️どうされましたか💦」
いつの間に現れたのか、扉のところにもたれかかって室内をガッツリ睨んでいる京楽がいた。慌ててケイジはなつみから離れる。
「あの、今のは変な意味は無くて、そのっ」
命乞いをする。
「そ、そうですよ!ぼくら仲良しなんで、ハグくらい当たり前ですよ😀」
「ふーん」
(アホ木之本!余計なことを💦)
ツカツカと許可無く勝手に入室し、京楽はケイジの前に威圧的に立った。
「なつみちゃんのおかげで、お悩みは解決したようだね。もうボクと代わってもらって……(ギロッ)いいかな?」
死なずには済みそう。
「はい…。もちろんです💦」
「うんっ、ありがと😄」
圧倒されて一歩も動けないケイジから、なつみを奪い取ることに成功。
「じゃあ行こうか、なつみちゃん」
京楽は彼女の手を引いて退室していった。
「またな、ケイジ‼️💦」
「おう…」
扉の枠から京楽となつみが見えなくなったと思ったら、その後をフレームインしてくる影が。
「彼奴め、邪魔をせずにおれんのか」
「総隊長⁉️💦」
元柳斎の登場。
「気にするな。お前はお前で良い。遠慮せず、なつみと仲良うせい」
そしてフレームアウト。
「はあ…💧」
偉い人たちにエライとこを見られてたケイジであった。
「はぁ…💧」
廊下を歩く京楽は怒っているご様子。
「なつみちゃん、キミは隙を見せすぎだよ(ボクにはほとんど見せないけど)!」
「そんなっ。ケイジはぼくの大事な仲間です!嬉しい時も悲しい時も、寄り添ってあげるのは当然です!それに、ケイジはひとりぼっちで寂しかったんですもん。人肌恋しかったんですよ。ハグで癒せるなら、ぼくは捧げます。いくらでも!」
「ハグで済んだとは思えない雰囲気だったけどね」
ため息をつき、なつみの手を放してあげた。
「なつみちゃん、ボクが会いにきた理由、わかるよね?」
それはもちろん。
「デートの件ですね」
もごもごと答えた。
「そう!」手を腰に当て、呆れも混じりつつ話す。「連絡先を交換してたら、こんな手間いらないのに。(まぁ、今回は来て良かったけど)で?直近のお休みはいつになるのかな?」
「えっとですね💦」
右の人差し指を口に当て、スケジュールを頭に浮かべる。
「んと、えっと、あ、んー💦」
「いつ?😠」
促されたのが怖くて、ぎゅぎゅと拳を握り、えぇい!ととりあえず答えてみた。
「再来週の金曜日です‼️」
「再来週?…えらく先じゃないか。その前にお休みは無いの?」
「あの、あるんですけど、ちょっと都合悪くて」
「…そ」腑に落ちないが、先約があるなら仕方がない。「わかった。じゃあ、再来週の金曜日ね。予定空けておくよ。そうだな、朝の10時くらいに宿舎まで迎えに行くから、そのつもりでいて」
「はい😣///」
「約束だよ」
京楽は先日同様、また無理矢理なつみの小指を絡め取った。
「はい。大丈夫です」
上下にゆっさゆっさ腕を振り、約束を交わす。
「どこに行くおつもりなんですか?」
「それはこれから決めるよ。楽しみにしてて」
「はい…///(ホ、hotel😍❓)」
期待せずにはいられない。
デート当日、朝9時を過ぎた頃。五番隊宿舎、女子棟、なつみと美沙の部屋。
「ん、何だ?」
なつみの伝令神機に着信あり。
「尾田?」
何故か尾田からの入電。
「(冷やかしだな)もしもーし、おはよー」
「おはよ、木之本」
なんだか、切迫した感じの話し方だった。
「どうした?」
「お前、京楽隊長とデート行くんだろ」
「そうだけど…」
「支度は?」
「途中まではしたよ」
「そっか」
「どうしたんだよ、尾田。何かあったのか?」
言葉を選んでいるのか、嫌な間を置かれた。
「おい、答えろよ」
「あのな、木之本。悪いが今日のデート、無しだ」
「は⁉️」
「京楽隊長が行けなくなっちまったんだよ」
「どういうことだよ‼️」
かくかくしかじか……
午前10時、八番隊舎、尾田に連れられ応接室に入ると、なつみは固まった。
「ごめんよぉーっ😭」
「……😑」
応接室の奥には隊首室がある。そこから飛び出してきた京楽が、なつみの腰に抱きついて泣き始めたのだ。
「ボクが馬鹿だったよぉーっ😭」
「やっと認められましたね‼️💢」
隊首室からすっと出てきた七緒が一喝。
「わぁーん💦」
呆れとドン引きと仕様の無さから、なつみの目は細くなり、口は一文字。開け放たれた扉の向こう、泣きつく京楽の机の上には、山と積まれた資料が。
「あれ全部?」
「そう」
「マジ?」
「マジ。あれでも俺ら結構手伝った方」
「はぁ……」
お察しの通り、京楽は仕事で忙しいらしく、デートどころではない。
「ごめぇぇん‼️‼️😫」
「さぁ、とっとと木之本さんから離れて、席にお戻りください‼️」
七緒が京楽を引き剥がしにかかる。
「あぁぁ、ヤダーッ‼️デート行きたいよぉーッ‼️‼️」
「行きたければ、全部片付けてください‼️」
「今日中なんて無理だよー‼️‼️」
「無理にしたのは隊長ご自身です💢」
京楽は机に戻され、業務を再開させられた。半べそである。
「涙で文字が読めない😢」
「知りません‼️」
(夏休み最終日でこんな1日を過ごす子供がいるって聞いたことがあるけど、大の大人が…💧)
小の小人はガッカリしていた。
「申し訳ありませんね、木之本さん」
七緒が隊首室の扉をバンッと閉めてから、なつみにお詫びの言葉を述べた。
「いえ…。大変そうですね」
「ええ。いつものことではありますが、さすがにこれに懲りて、態度を改めてもらいたいものです」
尾田から事情を聞いてわかってはいたものの、そんなに時間はかからないだろうと思い、昼からでもデートに行けるものと考えていたのだが、現実は残酷であった。
「せっかく、身支度までしていただいたのに」
この日のために美沙と選んだ新しい服を着て来ていたなつみ。ションボリが止まらない。
「うぅぅ」
小さな背中が余りにもかわいそう。
「今日のところはお引き取りを、と言いたいところですが、わざわざお越しいただいたので、尾田くんの部屋に行かれてはどうですか?積もる話もおありでしょう」
「良いんですか?」
尾田が聞き返した。
「ええ。来客のお相手も、業務の一環ですから」
すると扉の向こうから。
「なつみちゃんはボクとデートするために来たんだよ‼️ 尾田くんとじゃなーいッ💢」
「黙らっしゃい💥✊」
シーン…
強めの裏拳ノックで大人しくなった。
「じゃ、じゃあ、行こうか💦」
「おぅ💦」
2人はそそくさと応接室を後にした。
尾田の部屋に入ると、思うことがあった。
「尾田の部屋だ〜」
「あ?俺の部屋だぞ」
「場所が変わっても、なんか懐かしいな😄」
「そうか?」
「うん。インテリアが『尾田です』って名乗ってる」
「意味わかんねー。そこ座れ」
「うん。あとね、尾田臭がする」
くんくん。
「臭ぇの?」
「良い悪いじゃない。尾田シューだ」
「あっそ。木之本臭は…、わかんねぇ😕」
「むしゅ〜。ぎゃぼっ💦」
確認のため、椅子に座ったなつみの頭を鷲掴みしてくんかくんか。しかし、首を傾げる。
「わかんねぇ」
「もぉー!やめろよ!」
「わかんねぇー(笑)」
2人きりで会えたのが嬉しくて、尾田はなつみの髪の毛をわしゃわしゃしてやった。おめかしをして、いつもよりかわいさ倍増しているため、余計に触りたいのだ。
「やめろってー!セットしたのにー!」
「良いだろ。どうせ今日はどこも行けねぇよ」
「わかんねぇだろ」と反論したかったが、あの量は説得力がありすぎた。
「やっぱり、ぼくのせいだよな……」
シュンとするものだから、尾田は乱した髪を直してやった。
「まぁ、きっかけはお前だけどな。『どこ行こう』『何しよう』『何食べよう』『何着てこう』『髪型どうしよう』『香水どれにしよう』って。俺はお前と仲が良いから、特に質問攻めだったよ。仕事そっちのけでお前のことずっと考えてたんだぜ。けど、隊長がサボるのは今に始まったことじゃないから、そんな気にすんなよ。副隊長の注意を無視して溜め込んだ、隊長の自業自得だ」
とは言っても、むぅむぅと唸る。
「落ち込むなって。行けなくなったのは残念だけど、それだけ大事に思われてるってことなんだから」
「大事だったら、ちゃんと予定空けてるよ。大事じゃないんだよ、ぼくなんか。別にデートは他の人とだってしてるだろうし。ぼくは特別じゃないんだよ。ドタキャンしたって良いってくらいの相手なんだよ」
なつみは椅子の上で膝を抱え、顔を伏せた。
その様子に、「そんなことはない」と慰めてやりたかったが、その前に、なつみがどうして京楽にデレツンな態度を取るのか納得してしまった。
「お前、京楽隊長のこと、どう思ってんの。好きなんじゃねーの」
「好きだよ。好きだけど…、本気になったらバカみたいじゃん。どうせぼくは、京楽隊長にとって遊びでしかないんだから。京楽隊長は『隊長』。ぼくはそのずっと下の最下位の席官。まともに相手してくれるわけ無いじゃん。京楽隊長はモテるし、ぼくじゃなくても良いし、他のみんなも誘ってるだろうし。女の子が好きだし…」
最後の言葉はものすごく小声で、尾田には聞き取れなかったが、大体内容がそんなことだろうと予想ができるものだった。
「なぁ、もし隊長がお前の言う通りの人だとして、誰にでも手を出してるってわかってるのに、それでもお前はデートの誘いを受けたんだよな」
膝を抱える手がぎゅっとなった。
「お前そんな、自分を安売りしてんのか。今日は自分とデートしてくれても、明日には別の誰かとするかもしれねぇってのに。次があるって期待しながら、ほいほいついてくんだ。それこそバカなんじゃねーの」
「お前に何がわかるってんだ‼️」と言うところだったはず。なのになつみは言えなかった。そんなことないのに、今話した内容を全部通せば、尾田の言うことは正しかったから。
しかし尾田はそこで、なつみの隣に椅子を置き、彼女の肩を抱いてやった。
「『そんなことないもん』だろ?言えよ、そう思うんだったら。わかってるんだぜ、お前が思ってもないこと言ったっての。そういうの良くねぇって。本当になっちまうからな」
「ぼくがそういう能力者だから?」
「違う。みんなそうだ。言霊ってやつ。悪いことを口にしたら、それが現実になるんだ。お前がさっき言ったこと、あれは悪いことだろ。望まないこと言うなよ。怖がんな、お前らしくない」
「だって、嫌な思いするの嫌だもん」
「男1人にフラれるくらい何だよ。お前の一生がそれで終わるわけでもなし。失敗したって良いじゃねーか。次にうんと楽しい恋をすりゃ良いだけの話なんだからよ。…それに」尾田は身体を離した。「お前は怖がって現実から目を逸らしたせいで、本当かどうかもわからねぇ噂とか、今は違ってるかもしれねぇ昔話とかの、他人から見た京楽隊長の印象であの人を見てるだろ。俺から見りゃ、あの人はそんなフザけた下衆野郎じゃない。まぁ、昔は知らねぇけど。近くで見られるようになって、わかったよ。他人の評価なんてあてにならないってな」
なつみは少しだけ顔を上げ、尾田を見つめた。
「『誰かがこう言ってたから、そうだ』なんて考えやめろよ。ちゃんと、まっさらな気持ちで、あの人がお前に向ける言葉とか行動とか、見た方が良い。それでお前なりに判断した方が納得できるんじゃないか?良い印象を持てたら、とことん惚れれば良いし。悪い印象だったら、やっぱりなって言って、切り捨てちまえば良い。本当を見ずに、決めつけるなよ。それにお前は、疑ってるから、好きになるのが怖いけど、好きでいたいとも思ってるんだろ。だったらなおさらだ。知らないまま諦めるなんて、間違ってる。今日のは、ただ隊長がアホだっただけ。他に深い理由は無い。そんだけだ。あの人を許してやれよ、木之本」
抱えていた脚を下ろして、なつみは尾田に抱きついた。
「ありがとう、尾田。忘れかけてた大事な約束、思い出したよ」
「約束?」
「ずっと前、京楽隊長がぼくに宿題を出したんだ」
「どんな?」
「ぼくには、気づいてない大事なことがあるって。それがわかったら、会いに来てって」
「……、見つけられそうか?」
尾田の声は優しかった。
「まだわからない。だけど、いつか見つけられると思う。ぼくが間違ってたとしたらね」
「お前なら大丈夫だよ」
「うん。ありがとう」
きゅうっとなつみは尾田の首に頬を当てた。
そういえば、このシチュエーション…。
「そういやお前、ケイジと抱き合ってたらしいな。こんな感じか?」
「⁉️///」
ガバッと離れた。
「隊長が嘆いてた」
「そ、そうだよ!友情のハグだもん!変なことしてないもん!」
「ふーん」
「いつものことだろ!」
「お前こそ浮気癖あるように見られそうだな」
ピキピキピキッ
「そんなことないもーーーんッ‼️💢」
「はいはい。それも誤解ってやつだ。お互い様だな🙏」
「ごっつぁんです」が「なーむー」ととられそうな合掌。
「俺って、なんて良い奴なんでしょうか」
「自分で言うなよ」
「意味わかってねーな、マジ」
「むぅ‼️」
尾田は拗ねるなつみを置いといて、作業机に向かった。
「今から仕事すっから。ここにいてもいいけど、邪魔すんなよ」
ぴょんぴょんぴょん♪
「何すんのー?😁」
「邪魔すんなっつったろ💢」
両手でほっぺたサンドの刑に処す。
「うゅゅ💦」
すぐに解放されたが、懲りないなつみ。
「なぁ、聞いてよ。今日ぼく生理2日目でマジムカついてんだけど」
「知らねぇよ💢つか、男の前でそんなこと言うな‼️」
「ほんとは先週のはずだったんだ」
「聞いちゃいねーな。じゃあ俺も聞かねぇ」
大きな独り言が始まる。
「それなのにこなくて、キタのが昨日!もー最悪じゃんね。今日は血が多い日なの。なのにデートなの!どーしよー!って思ってたらこうなった。不幸中の幸いだよね〜」
だから荷物がやけにパンパンなのかと確認しつつ、尾田の頭を過ぎるひとつの確信。
(てことは、そういうことは無いってことだな)
「何、『よかった😮💨』みたいな顔してんだよ。良くないよ!生理だよ!イライラだよ!もー!わかれよ、この感じ‼︎だから男になりたいんじゃ‼︎‼︎」
「あーもー!うるせぇな!やること無ぇなら帰れよ‼︎」
「いて良いって言ったじゃん!」
「大人しくするならだ!」
「ケーチケーチ」
ほんとに帰っちゃうぞ〜的なノリで廊下に出て、開けたドアの隙間から覗いてやる。
すると。
「木之本さん」
「ぎゃッ‼️‼️」
振り向くと七緒がいた。
「すいません!静かにします!💦」
怒られると思い、慌てて尾田の部屋に戻っていった。
「やーい、おーこらーれた〜」
「😖💢💦」
しかし、まだ七緒は部屋の前にいるようで、扉をノックする音が響いた。