第四章
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あれよあれよとやってきました。
「卒業旅行ぉー‼︎‼︎✊」
みんな、2泊3日分の荷物を持ち、義骸に入って、穿界門をくぐった。到着したのはというと、とある街。
「あっちだな」
最初は歩いて目的地へ向かう。
「あ!レンタカー屋さん、あったよー!」
なつみが走り出した。
「そんなに慌てると、コケるぞぉ」
「早く早くぅー!」
「聞いちゃいねぇ💧」
レンタカーショップに入店し、受付を済ませる。事前に8人乗りミニバンを予約していたのだった。
「それでは、運転される方の免許証をご提示ください」
「はい」「はい」「はーい!」
今回の旅行でドライバーを務めるのはこの3人、尾田、ケイジ、そしてなつみ。なつみ⁉︎
「なつみの運転て、やっぱり不安でしょうがないんだけど」
「仕方ないだろ?俺らが酒飲んじまうと、絶対飲まないアイツしか運転できなくなるんだから」
「3人分、免許と保険用意すんので結構かかったし。申し訳ないけど、ほとんどの運転、あの2人に任せるしかないよな」
「木之本には、ワイナリーからの帰りだけ頼もうぜ」
ということで、7人は車に乗り込んだ。
「しゅっぱーつ!ゴーゴー!」
レンとハルの間に座って、なつみが3列目から大っきい声を出した。
「ちょっと待て。今ナビ入れるから」
「そーば!そーば!」
「待ぁて、つってんだろ!降ろすぞ、木之本!」
「えぇー😫」
「なつみ、おやつ食べる?」
「食べる〜」
「早ぇな、おやつタイム💧」
「おーし、発車するぞ」
「いぇ〜い!いざ、蕎麦打ち体験‼︎‼︎」
そんな旅行も良いだろう。
ハワイアンスパリゾートという案が一瞬上がっていたが、何か違くね?ということで、別の案に決まった。どこの間を取ったのか、非日常を体験しまくるエキサイティングでリラックスマックスでおいしいおいしいフォトジェニック盛りだくさんな場所に行こうとなり、レンタカーで何ヵ所か訪れることにした。
まずは蕎麦打ち体験。なつみが戸隠そばを食べたいと言い出したからだ。
「それ、俺に打てって言ってんの?」
「そう。李空が作れば、どこで食べても戸隠そばじゃんね」
「言ってること意味不明だけどな。どうせ、どんなにうまく作ろうと、まずいっつって笑おうとしてるんだろ」
「へへへ😈李空は短気だから、ぶっちぶちに切れるら」
「お前ぇもな。じゃ、俺はお前の食ってやる。そんで、まずいって言ってやる」
「良い思い出だね〜😆」
と言っていたのだが、実際蕎麦打ち体験に参加してみると、難しい工程はあったものの、みんなそれなりにおいしく出来上がっていた。
「おいしいじゃん😋✨」
みんなでみんなの打った蕎麦をシェアしてみたのだ。
「太さを揃えるの難しいよな」
「いや、あんたのごっつい美しいわよ、オカン」
「木之本のは、やっぱ短いな」
「やっぱって何だよ!おいしいから良いの!」
蕎麦湯とタスマニア蕎麦なるものまで堪能し、大満足なお昼ご飯となりました。
ちょっと話題に上がっていたワイナリーは、2日目に行くとして、次の目的地こそ、今回のメイン。運転を交代して、再び車を走らせる。なつみはまた3列目の真ん中に座っていた。
「ねぇねぇ、ぼくが運転しても良いんだよ」
「あーしーたっ!な😁」
ぷーっと膨れるなつみを、ハルがぽんぽん頭を撫でてあやしてくれた。
目的地の駐車場に到着する頃には、なつみはレンにもたれかかってくーすか眠っていた。
「木之本ー、着いたぞぉ。起きろ」
「んん…、むぉ‼︎匂う、匂うぞ!」
起きしなくんかくんかして、何かに気付くと、なつみは車から急いで降りていった。
「牛さんだぁ〜‼️✨」
そう、彼らはこれから牧場で、ファームステイをするのである。
モ〜🐄
「広いなぁ」
「木之本ー、荷物持ってけよ!」
「はーい!」
ここ、みるくの丘牧場は、なかなかの行楽スポットで、牛、羊、ポニー、アルパカ等の牧場エリア、バターやアイス作り教室、レストラン、ギフトショップ、レセプションが入ったみるくセンター、バーベキュー場、3棟の宿泊用コテージがある。土日、祝日、行楽シーズンとなると、相当な混み合いとなるこの牧場だが、平日、シーズンオフともなると、お客は昼間にちらほらいる程度となる。
「空いてんな。やりたい放題か」
「言い方よ😅そこまでではないだろうけど、待ち時間は無さそうだな」
「良いんじゃねーの?俺ら、あんま顔覚えられない方が良いしさ」
「人間たちとは、必要最低限で仲良くな!良いか?木之本、騒ぎ起こすんじゃねーぞ…って、いねぇ…」
尾田の視点では、ちょこまかとはしゃぎ回るなつみを捉えるのは少し難しい。いつの間にか彼女は、駐車場から歩く一行より一足先に走って、みるくセンターの方にいた。
「見てー!ぬいぐるみがいっぱーい‼︎‼︎」
「…帰りの車、狭くなるかな💧」
「良いよ。そうなったら、あいつだけこっから帰らせるから」
みるくセンターの自動ドアが開き、ぞろぞろと入り口を通っていったら、すぐ目に入るところにあるレセプションのお姉様が、非常に眩しそうにしていた。
「イヤハッ、イケメンの集団ッ、眩しすぎるぅ〜ウホホ💖💖💖」
目を輝きから守るように、手を顔の前にかざしていた。直視できないようだ。でも、嬉しそうだから、まぁ、心配なさそうだ。
「ねぇ!あの人のリアクションが面白すぎるよ!負けてらんなーい!💪」
なつみは受付カウンターにダッシュ。クールに構えて、人差し指と中指の先にウィンクの弾を込めると、バキュンッとお姉様のハートを狙い撃ち。
「どうも、Club 13、三番支店のNo.1ホスト、(バキュンッ😉➰❤️)、木之本です😘」
「……あら🤭」
お姉様は急なボケに、どう返すべきかすぐに判断できなかったご様子。
「おい、変なこと言って困らすんじゃねーよ」
「イテッ」
尾田がなつみの頭をコツンと叩いた。
「ウチのアホがすいません」
「いいえ〜。こちらこそ、うまくつっこめなくて、ごめんなさいね。一瞬ホントかと思っちゃったから😄」
「へへへっ、おもしろい方ですね。ぼく、お姉さんのこと好きんなっちゃった😊」
「あら〜、照れちゃう。あたしも好きになっちゃった☺️」
楽しい滞在となる予感がしてきたなつみであった。
「遅ればせながら、いらっしゃいませ。ようこそ、みるくの丘牧場へお越しくださいました」にっこり笑ってお姉様が、どのハンサムくんが電話予約をしてくれたのかしらと、チラチラ視線を走らせる。「代表者様のお名前を伺って、よろしいでしょうか」
「はい。予約した尾田です✋」
あら、長身ハンサムでした。
「尾田泉水ちゃんです☝️」
「ちゃん付けすな!💥」
「イテッ😖」
さっきより強めに、なつみは叩かれてしまった。
特に重要な情報というわけではないが、お伝えしておこう。尾田は、このかわいらしい下の名前でいじられるのを嫌っているため、上の名前で呼ぶように、みんなにお願いしている。誰もそこまで気にしていないことなのだが、本人は至って真剣なので、気にしてあげましょう。そうしないと、上記のように怒られます。お知らせでした。
「7名様でご予約の尾田様ですね。お待ちしておりました。こちらにですね、ご記入をお願いします」
カウンターの向こうから用紙を取り出して、尾田に向けて置いた。
「了解でーす」
備え付けられたボールペンを取り、尾田は宿泊者名簿に記入し始めた。
その間に他の5人はギフトショップを見てみたり、牧場のマップを見たりしていた。なつみはというと、尾田の隣で書いている様子を見ていた。そんななつみに、お姉様が話しかける。
「お客様が、伺っていた女性の方ですね。木之本様とおっしゃいましたか?」
「はい!木之本なつみです😃」
「なつみちゃんって呼んで良いかしら。かわいらしい🥰」
「どーぞぉ😊」
「ありがと〜」
恐らくこのお姉様には、なつみが10代そこらに見えているのだろう。
「お姉さんのお名前は何ですか?」
「この牧場ではね、『女将』って呼ばれてるの(笑)」
「何でですかー?(笑)」
「雰囲気かな?誰かがそう呼び出したら、それが定着しちゃったのよ」
「あだ名って、そういうもんですよね🙂」尾田はペンを置いた。「書けましたよ」
「はい。ありがとうございます」
女将さんは紙を回収すると、次に鍵を取り出し、カウンターからエントランス側に出てきた。
「それではコテージへご案内します」
「わーい🙌行こぉ行こぉ〜✊」
みるくセンターから女将さんに連れられて、深緑色の大きなコテージへ向かう。その道中、この7人の関係や旅行の目的、なつみが30歳であることなどを、嘘と本当を混ぜながら女将さんに教えてあげた。
「30⁉︎嘘でしょ⁉︎」
免許証を見せてあげる。
「ホントだぁ〜」
「大人なんですぅ😤」
本当はもっと上なのだが。
到着して、鍵を開け、室内に入って行き、リビングの広さにびっくりした。
「うわ〜、めっちゃ良いじゃん!」
嬉しそうな7人の顔を見て、満足そうな女将さん。少しだけ部屋の中が暗かったため、照明のスイッチをオンにした。
「あれ?」
押したのだが、明かりがつかなかった。もう2回ほどカチカチしたが、つかない。
「おっかしいわねー」
キッチンの奥からも困った声がした。
「あれ?」
明日、明後日分のペットボトルの飲み物を冷蔵庫に入れておこうとしたハルの声だ。
「冷蔵庫の中、冷たくないですよ。電源入ってなくないですか?」
「えー⁉︎そっちも調子悪いの⁉︎」
嫌な予感を察知したクーちゃんが、テレビをつけてみようと試みるも。
「やっぱりつかない」
嫌な予感を察知したケイジが、リモコンを使ってエアコンをつけてみようと試みるも。
「こっちもダメだ。リモコンは電池だからついてるけど」
「ブレーカー確認した方が良いかもしれませんよ」
レンが女将さんにそう言ってみた。
「そうね!」
女将さんがパタパタと足音立てて、リビングから出ていった。
すると、6人が一斉になつみに注目。
「何だよ‼️ぼくじゃないぞ‼️」
明らかに、疑いの視線が注がれている。
「どうだか」
「これで原因がわかりませんってなったら、お前が犯人だ」
「何で⁉︎」
「なつみは魔法使いだから」
「ひとり部屋に文句言ってたしな。『なーんで7人いっしょに寝るんじゃダメなの⁉️』ってひと騒ぎしてたじゃん」
「だって、寝る前に『今日は楽しかったね』ってみんなでピロートークしたいじゃん😤」
「お前💦言葉の使い方間違ってんだよ‼️俺らをいかがわしい集団にすな‼️」
「はぁ、ここ使えないってことか。気に入ったのにな」
パタパタと足音をさせて、女将さんがリビングに戻ってきた。
「ブレーカー見たけど、どこも落ちてなかったわ。でも2階の部屋も電気きてないみたいなの。変だわぁ。今朝点検したときは普通だったのに」
やっぱりとなつみを睨みつける6人。
(違うって!斬魄刀抜いてないのに、解放できるわけないだろ⁉︎)
「申し訳ございません。本日このコテージでの滞在は難しいと判断させていただきます。代案といたしまして、あちらの2棟をこのコテージの料金のままお使いいただくということで、ご了承いただけないでしょうか」
あちらと窓の外を指さされ、なつみたちはすぐ近くにある2つのコテージを見た。
「黄色い方が5名様用。赤い方が最大7名様用の仕様となっております」
「他のお客さんの予約って入ってるんじゃないですか?」
「不幸中の幸いというのかな。今日、明日と宿泊の予約をされてるのは、このみなさんだけなのよ。さみしいけど。だから全然大丈夫」
ということならば、それで手を打とうと思った矢先、なつみが挙手した。
「はいッ✋」
「はいっ、なつみちゃん」
男たちの間にまた嫌な予感。
「赤い方だけで良いと思いますッ‼️」
((((((出たぁー))))))
女将さんも困った表情を見せた。
「確かに7人泊まれるけど、だいぶ狭いと思うよ😯」
「一つ屋根の下じゃなきゃダメなんすよ!ぼくの居ぬ間におもしろいことしてたら、ムカつくじゃないですか!」
(意味わかんねー💧)
「なつみちゃん用に部屋を確保できるから、一応ご要望には沿えれるけど、オススメできないもの」
「何でですか😠」
「2階に広めの寝室空間があってね、そこにシングルベッドが4台とソファベッドが2台あるの。結構詰め詰めでね」
「あとひとつ足りてないですよ?」
「もう1方はね、1階リビングのソファベッドで寝られるの。でもそれかわいそうでしょ?2階でみんな仲良く寝てるのに、1人だけだだっ広いリビングでさみしく寝るなんて。2組に分かれて、1棟ずつ使った方が余裕があって、過ごしやすいと思うの」
でも確かに、どう2組に分かれるべきか決めかねてしまう。誰もがなつみと一緒に過ごしたいのだから。こればかりは、遠慮する者はいないだろう。なつみの主張通り、7人で泊まれるなら、それがいちばん平和である。
「お前、俺らの前で着替えねぇって、約束できるか?」
「なんで?別にぼくの裸なんて見ても、どうもしないだろ?」
(((((💢)))))
「約束できなきゃ、お前1人で黄色い方に泊まらすぞ💢」
「ぃやーだーッ‼︎するする!約束するよ!1人にしないでぇー😭」
(ここで、そう泣くか😅)
意見の一致、交渉が成立したようなので、尾田が女将さんにお願いする。
「ってことなんで、こっちのコテージキャンセルして、赤いコテージに変更させてください。移動するのも面倒なんで、2泊ともあっちで良いですよ」
「良いの?遠慮してない?大丈夫?」
みんな「大丈夫です」と頷いてみせた。
「じゃあ、鍵持ってくるね‼️」
「お願いしまーす😆」
これでピロートークも夢じゃないというわけだ。
「せっかくの旅行だもん。うんざりするほど一緒にいようよ!」
「風呂はついてくんなよ」
「がまんするよ!」
「我慢なのかよ💧布団も入ってくんなよ」
「それはぁ〜」
「蹴り落とそう」
「そうしよう」
「プロレスごっこだね💖やろーやろー🙌」
「何でお前はいちいち変な言い方すんだよ」
「期待させるだけさせて、結局何も無いのがコイツのやり口だ。騙されるな」
李空よ、果たしてそうだろうか。まぁ、期待せずに夜を待つと良い。
「卒業旅行ぉー‼︎‼︎✊」
みんな、2泊3日分の荷物を持ち、義骸に入って、穿界門をくぐった。到着したのはというと、とある街。
「あっちだな」
最初は歩いて目的地へ向かう。
「あ!レンタカー屋さん、あったよー!」
なつみが走り出した。
「そんなに慌てると、コケるぞぉ」
「早く早くぅー!」
「聞いちゃいねぇ💧」
レンタカーショップに入店し、受付を済ませる。事前に8人乗りミニバンを予約していたのだった。
「それでは、運転される方の免許証をご提示ください」
「はい」「はい」「はーい!」
今回の旅行でドライバーを務めるのはこの3人、尾田、ケイジ、そしてなつみ。なつみ⁉︎
「なつみの運転て、やっぱり不安でしょうがないんだけど」
「仕方ないだろ?俺らが酒飲んじまうと、絶対飲まないアイツしか運転できなくなるんだから」
「3人分、免許と保険用意すんので結構かかったし。申し訳ないけど、ほとんどの運転、あの2人に任せるしかないよな」
「木之本には、ワイナリーからの帰りだけ頼もうぜ」
ということで、7人は車に乗り込んだ。
「しゅっぱーつ!ゴーゴー!」
レンとハルの間に座って、なつみが3列目から大っきい声を出した。
「ちょっと待て。今ナビ入れるから」
「そーば!そーば!」
「待ぁて、つってんだろ!降ろすぞ、木之本!」
「えぇー😫」
「なつみ、おやつ食べる?」
「食べる〜」
「早ぇな、おやつタイム💧」
「おーし、発車するぞ」
「いぇ〜い!いざ、蕎麦打ち体験‼︎‼︎」
そんな旅行も良いだろう。
ハワイアンスパリゾートという案が一瞬上がっていたが、何か違くね?ということで、別の案に決まった。どこの間を取ったのか、非日常を体験しまくるエキサイティングでリラックスマックスでおいしいおいしいフォトジェニック盛りだくさんな場所に行こうとなり、レンタカーで何ヵ所か訪れることにした。
まずは蕎麦打ち体験。なつみが戸隠そばを食べたいと言い出したからだ。
「それ、俺に打てって言ってんの?」
「そう。李空が作れば、どこで食べても戸隠そばじゃんね」
「言ってること意味不明だけどな。どうせ、どんなにうまく作ろうと、まずいっつって笑おうとしてるんだろ」
「へへへ😈李空は短気だから、ぶっちぶちに切れるら」
「お前ぇもな。じゃ、俺はお前の食ってやる。そんで、まずいって言ってやる」
「良い思い出だね〜😆」
と言っていたのだが、実際蕎麦打ち体験に参加してみると、難しい工程はあったものの、みんなそれなりにおいしく出来上がっていた。
「おいしいじゃん😋✨」
みんなでみんなの打った蕎麦をシェアしてみたのだ。
「太さを揃えるの難しいよな」
「いや、あんたのごっつい美しいわよ、オカン」
「木之本のは、やっぱ短いな」
「やっぱって何だよ!おいしいから良いの!」
蕎麦湯とタスマニア蕎麦なるものまで堪能し、大満足なお昼ご飯となりました。
ちょっと話題に上がっていたワイナリーは、2日目に行くとして、次の目的地こそ、今回のメイン。運転を交代して、再び車を走らせる。なつみはまた3列目の真ん中に座っていた。
「ねぇねぇ、ぼくが運転しても良いんだよ」
「あーしーたっ!な😁」
ぷーっと膨れるなつみを、ハルがぽんぽん頭を撫でてあやしてくれた。
目的地の駐車場に到着する頃には、なつみはレンにもたれかかってくーすか眠っていた。
「木之本ー、着いたぞぉ。起きろ」
「んん…、むぉ‼︎匂う、匂うぞ!」
起きしなくんかくんかして、何かに気付くと、なつみは車から急いで降りていった。
「牛さんだぁ〜‼️✨」
そう、彼らはこれから牧場で、ファームステイをするのである。
モ〜🐄
「広いなぁ」
「木之本ー、荷物持ってけよ!」
「はーい!」
ここ、みるくの丘牧場は、なかなかの行楽スポットで、牛、羊、ポニー、アルパカ等の牧場エリア、バターやアイス作り教室、レストラン、ギフトショップ、レセプションが入ったみるくセンター、バーベキュー場、3棟の宿泊用コテージがある。土日、祝日、行楽シーズンとなると、相当な混み合いとなるこの牧場だが、平日、シーズンオフともなると、お客は昼間にちらほらいる程度となる。
「空いてんな。やりたい放題か」
「言い方よ😅そこまでではないだろうけど、待ち時間は無さそうだな」
「良いんじゃねーの?俺ら、あんま顔覚えられない方が良いしさ」
「人間たちとは、必要最低限で仲良くな!良いか?木之本、騒ぎ起こすんじゃねーぞ…って、いねぇ…」
尾田の視点では、ちょこまかとはしゃぎ回るなつみを捉えるのは少し難しい。いつの間にか彼女は、駐車場から歩く一行より一足先に走って、みるくセンターの方にいた。
「見てー!ぬいぐるみがいっぱーい‼︎‼︎」
「…帰りの車、狭くなるかな💧」
「良いよ。そうなったら、あいつだけこっから帰らせるから」
みるくセンターの自動ドアが開き、ぞろぞろと入り口を通っていったら、すぐ目に入るところにあるレセプションのお姉様が、非常に眩しそうにしていた。
「イヤハッ、イケメンの集団ッ、眩しすぎるぅ〜ウホホ💖💖💖」
目を輝きから守るように、手を顔の前にかざしていた。直視できないようだ。でも、嬉しそうだから、まぁ、心配なさそうだ。
「ねぇ!あの人のリアクションが面白すぎるよ!負けてらんなーい!💪」
なつみは受付カウンターにダッシュ。クールに構えて、人差し指と中指の先にウィンクの弾を込めると、バキュンッとお姉様のハートを狙い撃ち。
「どうも、Club 13、三番支店のNo.1ホスト、(バキュンッ😉➰❤️)、木之本です😘」
「……あら🤭」
お姉様は急なボケに、どう返すべきかすぐに判断できなかったご様子。
「おい、変なこと言って困らすんじゃねーよ」
「イテッ」
尾田がなつみの頭をコツンと叩いた。
「ウチのアホがすいません」
「いいえ〜。こちらこそ、うまくつっこめなくて、ごめんなさいね。一瞬ホントかと思っちゃったから😄」
「へへへっ、おもしろい方ですね。ぼく、お姉さんのこと好きんなっちゃった😊」
「あら〜、照れちゃう。あたしも好きになっちゃった☺️」
楽しい滞在となる予感がしてきたなつみであった。
「遅ればせながら、いらっしゃいませ。ようこそ、みるくの丘牧場へお越しくださいました」にっこり笑ってお姉様が、どのハンサムくんが電話予約をしてくれたのかしらと、チラチラ視線を走らせる。「代表者様のお名前を伺って、よろしいでしょうか」
「はい。予約した尾田です✋」
あら、長身ハンサムでした。
「尾田泉水ちゃんです☝️」
「ちゃん付けすな!💥」
「イテッ😖」
さっきより強めに、なつみは叩かれてしまった。
特に重要な情報というわけではないが、お伝えしておこう。尾田は、このかわいらしい下の名前でいじられるのを嫌っているため、上の名前で呼ぶように、みんなにお願いしている。誰もそこまで気にしていないことなのだが、本人は至って真剣なので、気にしてあげましょう。そうしないと、上記のように怒られます。お知らせでした。
「7名様でご予約の尾田様ですね。お待ちしておりました。こちらにですね、ご記入をお願いします」
カウンターの向こうから用紙を取り出して、尾田に向けて置いた。
「了解でーす」
備え付けられたボールペンを取り、尾田は宿泊者名簿に記入し始めた。
その間に他の5人はギフトショップを見てみたり、牧場のマップを見たりしていた。なつみはというと、尾田の隣で書いている様子を見ていた。そんななつみに、お姉様が話しかける。
「お客様が、伺っていた女性の方ですね。木之本様とおっしゃいましたか?」
「はい!木之本なつみです😃」
「なつみちゃんって呼んで良いかしら。かわいらしい🥰」
「どーぞぉ😊」
「ありがと〜」
恐らくこのお姉様には、なつみが10代そこらに見えているのだろう。
「お姉さんのお名前は何ですか?」
「この牧場ではね、『女将』って呼ばれてるの(笑)」
「何でですかー?(笑)」
「雰囲気かな?誰かがそう呼び出したら、それが定着しちゃったのよ」
「あだ名って、そういうもんですよね🙂」尾田はペンを置いた。「書けましたよ」
「はい。ありがとうございます」
女将さんは紙を回収すると、次に鍵を取り出し、カウンターからエントランス側に出てきた。
「それではコテージへご案内します」
「わーい🙌行こぉ行こぉ〜✊」
みるくセンターから女将さんに連れられて、深緑色の大きなコテージへ向かう。その道中、この7人の関係や旅行の目的、なつみが30歳であることなどを、嘘と本当を混ぜながら女将さんに教えてあげた。
「30⁉︎嘘でしょ⁉︎」
免許証を見せてあげる。
「ホントだぁ〜」
「大人なんですぅ😤」
本当はもっと上なのだが。
到着して、鍵を開け、室内に入って行き、リビングの広さにびっくりした。
「うわ〜、めっちゃ良いじゃん!」
嬉しそうな7人の顔を見て、満足そうな女将さん。少しだけ部屋の中が暗かったため、照明のスイッチをオンにした。
「あれ?」
押したのだが、明かりがつかなかった。もう2回ほどカチカチしたが、つかない。
「おっかしいわねー」
キッチンの奥からも困った声がした。
「あれ?」
明日、明後日分のペットボトルの飲み物を冷蔵庫に入れておこうとしたハルの声だ。
「冷蔵庫の中、冷たくないですよ。電源入ってなくないですか?」
「えー⁉︎そっちも調子悪いの⁉︎」
嫌な予感を察知したクーちゃんが、テレビをつけてみようと試みるも。
「やっぱりつかない」
嫌な予感を察知したケイジが、リモコンを使ってエアコンをつけてみようと試みるも。
「こっちもダメだ。リモコンは電池だからついてるけど」
「ブレーカー確認した方が良いかもしれませんよ」
レンが女将さんにそう言ってみた。
「そうね!」
女将さんがパタパタと足音立てて、リビングから出ていった。
すると、6人が一斉になつみに注目。
「何だよ‼️ぼくじゃないぞ‼️」
明らかに、疑いの視線が注がれている。
「どうだか」
「これで原因がわかりませんってなったら、お前が犯人だ」
「何で⁉︎」
「なつみは魔法使いだから」
「ひとり部屋に文句言ってたしな。『なーんで7人いっしょに寝るんじゃダメなの⁉️』ってひと騒ぎしてたじゃん」
「だって、寝る前に『今日は楽しかったね』ってみんなでピロートークしたいじゃん😤」
「お前💦言葉の使い方間違ってんだよ‼️俺らをいかがわしい集団にすな‼️」
「はぁ、ここ使えないってことか。気に入ったのにな」
パタパタと足音をさせて、女将さんがリビングに戻ってきた。
「ブレーカー見たけど、どこも落ちてなかったわ。でも2階の部屋も電気きてないみたいなの。変だわぁ。今朝点検したときは普通だったのに」
やっぱりとなつみを睨みつける6人。
(違うって!斬魄刀抜いてないのに、解放できるわけないだろ⁉︎)
「申し訳ございません。本日このコテージでの滞在は難しいと判断させていただきます。代案といたしまして、あちらの2棟をこのコテージの料金のままお使いいただくということで、ご了承いただけないでしょうか」
あちらと窓の外を指さされ、なつみたちはすぐ近くにある2つのコテージを見た。
「黄色い方が5名様用。赤い方が最大7名様用の仕様となっております」
「他のお客さんの予約って入ってるんじゃないですか?」
「不幸中の幸いというのかな。今日、明日と宿泊の予約をされてるのは、このみなさんだけなのよ。さみしいけど。だから全然大丈夫」
ということならば、それで手を打とうと思った矢先、なつみが挙手した。
「はいッ✋」
「はいっ、なつみちゃん」
男たちの間にまた嫌な予感。
「赤い方だけで良いと思いますッ‼️」
((((((出たぁー))))))
女将さんも困った表情を見せた。
「確かに7人泊まれるけど、だいぶ狭いと思うよ😯」
「一つ屋根の下じゃなきゃダメなんすよ!ぼくの居ぬ間におもしろいことしてたら、ムカつくじゃないですか!」
(意味わかんねー💧)
「なつみちゃん用に部屋を確保できるから、一応ご要望には沿えれるけど、オススメできないもの」
「何でですか😠」
「2階に広めの寝室空間があってね、そこにシングルベッドが4台とソファベッドが2台あるの。結構詰め詰めでね」
「あとひとつ足りてないですよ?」
「もう1方はね、1階リビングのソファベッドで寝られるの。でもそれかわいそうでしょ?2階でみんな仲良く寝てるのに、1人だけだだっ広いリビングでさみしく寝るなんて。2組に分かれて、1棟ずつ使った方が余裕があって、過ごしやすいと思うの」
でも確かに、どう2組に分かれるべきか決めかねてしまう。誰もがなつみと一緒に過ごしたいのだから。こればかりは、遠慮する者はいないだろう。なつみの主張通り、7人で泊まれるなら、それがいちばん平和である。
「お前、俺らの前で着替えねぇって、約束できるか?」
「なんで?別にぼくの裸なんて見ても、どうもしないだろ?」
(((((💢)))))
「約束できなきゃ、お前1人で黄色い方に泊まらすぞ💢」
「ぃやーだーッ‼︎するする!約束するよ!1人にしないでぇー😭」
(ここで、そう泣くか😅)
意見の一致、交渉が成立したようなので、尾田が女将さんにお願いする。
「ってことなんで、こっちのコテージキャンセルして、赤いコテージに変更させてください。移動するのも面倒なんで、2泊ともあっちで良いですよ」
「良いの?遠慮してない?大丈夫?」
みんな「大丈夫です」と頷いてみせた。
「じゃあ、鍵持ってくるね‼️」
「お願いしまーす😆」
これでピロートークも夢じゃないというわけだ。
「せっかくの旅行だもん。うんざりするほど一緒にいようよ!」
「風呂はついてくんなよ」
「がまんするよ!」
「我慢なのかよ💧布団も入ってくんなよ」
「それはぁ〜」
「蹴り落とそう」
「そうしよう」
「プロレスごっこだね💖やろーやろー🙌」
「何でお前はいちいち変な言い方すんだよ」
「期待させるだけさせて、結局何も無いのがコイツのやり口だ。騙されるな」
李空よ、果たしてそうだろうか。まぁ、期待せずに夜を待つと良い。