第四章
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大泣きすれば疲れてしまうもので、なつみの泣き声は徐々にそのボリュームを落としていった。
「うにゅぅぅぅ…」
酔いもしっかり回ってきていた。
一角が背中で、なつみの鼻をすする揺れを心地よく感じながら、思うことを話してみた。
「それにしても、こんなに寂しがるヤツも珍しいよな。大抵、仲間が出世するために異動するんなら、喜ぶなり、羨ましがるなりするもんじゃねぇの」
「うん…、大抵はね。けど、なつみちゃんたちは特例中の特例だから、そう簡単に割り切れないのさ。絆が強いんだよ」
「絆ねぇ…」
一口飲む。
「あのぉ、特例ってどういうことですか?」
弓親が控えめな挙手をしながら問う。それに京楽が答えた。
「なつみちゃんはね、6人の男の子たちと一緒に、三番隊に入隊したんだよ。それから今までずっと変わらず、彼らは一緒に居続けてきた」
「「⁉️」」
その事実は一角と弓親を驚かせた。
「びっくりするよね。護廷十三隊史上初めてのことかもしれないから。同期7人が同じ隊で、誰一人欠けることなく、この長い年数を過ごしてきたんだもん。すごいよ」
「なつみがいるからじゃないですか?😊」
「それも要因の一つだけど、彼らの優秀さも大きいはずだよ」
京楽と乱菊は和やかに笑い合う。
「何でそれがすげぇことなんだ?」
更木には理解できないようだった。
「隊長には、同期とか仲間意識とか無さそうですもんね」
「ああ?悪ぃかよ」
「いいえ」そのまま弓親が解説してくれる。「新人隊士が一つの隊に7人で入隊するのは、珍しいことではないんです。どの隊もそれくらいの人数で取るんですよ。でもその人数は最初の2〜3年で減るのが普通なんです。所属する隊が自分に合わないとか、昇進を目指すためとかの理由で、別の隊に移ったり、もしくは任務中に死んだりして」
「もっと時間が経てば、護廷十三隊全体での同期もどんどんいなくなっちゃうのよね。今となっては、あたしなんて、あと何人残ってるのかしら」
「僕には一角がいるよ」
「ボクは浮竹だけだな。気付けば、ふたりぼっち」
「そんなもんすよ。それだけ危険な仕事してんですから。にしても、7人全員ってのは、異常だな。二、四、十一、十二番隊ならまだしも、三番隊だろ?しかも、その6人が一気に他所の隊に行っちまうと。それもまた珍しい話だ」
「三番隊は大変だね。6人新しい人入れなきゃいけないんでしょ?何年かかけて、ちょっとずつ変わってけば良いのに。どうして、いっぺんにやるんだろう?それに、取り残されちゃうなつみちゃんが、こんな風に落ち込むのだって、想像つくじゃんか。何考えてんだか」
弓親が不憫にそう思ってくれた。
「まぁ、市丸隊長なりに考えてのことだと思うよ。みんななつみちゃんのことが好きだからさ、変に残ってると、抜け駆けされたり、ヤキモチ妬いちゃったりして、友情が崩れちゃうかもしれないだろ?なつみちゃんがそれを望まないだろうし。今まで通りの『みんな仲良しさん』っていう関係を保ちながら、彼らそれぞれの成長を促すには、同じタイミングで全員がなつみちゃんから離れるのが最適なんだよ。例え、彼女がこうして泣いたとしても」
「そうね。あの子らがいないところに来るまで、泣くのを我慢できたんだから、なつみには応援したい気持ちもちゃんとあるってことですもんね。これだけ泣いたんだし、明日になればケロッとしてるわ。これで良かったのよ。逆に心配なのは、なつみよりも、あの子たちの方。なつみがいない環境で、やってけるのかしら。本人は大丈夫って言うんだけど、実際のところはなってみなきゃ、わからないじゃない」
京楽も頷く。
「ボクも尾田くんにきいた。彼も大丈夫だって答えたよ。そのうち慣れていくだろうし、彼女と会えないことにむしろ慣れなきゃいけないんだって」
「上を目指しながら、対等の関係を求めるなら、同じ隊にはいられないですからね」
「そう。今のところ強がりにしか聞こえないけどね。だって考えてごらんよ、彼らは過酷な任務に就いても、隊舎に無事に帰れば、いつでもなつみちゃんが迎えてくれて、癒してくれてたんだよ。彼女がいたから、がんばってこられたんだ。それがもうなくなる。どんなに辛い仕事をしたって、なつみちゃんのもとには帰れないんだ。それでも良いだなんて、無理しちゃってるようにしか見えないね」
「そいつらが良いって言ってんなら、良いじゃねぇか。柄にもなく、野郎の心配でもしてんのか?」
「違うよ!ウチでやってけるかどうかの心配はしてるけど、尾田くんの心の心配なんかしてないね!あんの奴さん、鼻につくこと言ってくれちゃったんだよ?ボクもう思わず、眉間にシワが寄っちゃったよ」
思い出して、眉間に皺が寄り、指でその皺をぐりぐり伸ばした。
「何言われたんですか?」
「『木之本は、会いたくなったら会いに来てくれるでしょうし、俺たちもなるべく、そうしようって思ってます』だってさ!何?何なの?ボクは、尾田くんに会いに来たなつみちゃんを横取りして、取って食えば良いの?もぉー、ボクの前でラブラブ発言やめてよ‼︎って感じ(笑)」
「なつみは誰相手でも会いたくなったら、すぐ会いに行くじゃないですか。そんな妬かなくても良くないですか?」
「だって、ボクには会いに来てくれないもん」
「会いたくないんじゃないですか?(笑)」
「なんでぇー⁉️こんなに好かれてるのに⁉️😫」
「さっき威嚇されてましたよ(笑)」
「そうだけどさぁ‼️でもちゃんと両想いなんだよ?そんな虐めないでよ〜😣」
そうして年長者をからかい、笑いが収まると、弓親があることに気付いた。
「あれ?なつみちゃん、寝ちゃってる?」
「あら、うとうとしてる。フフッ☺️」
「かぁわいい〜。今なら抱きついて良さそうだね😚」
「いや、ダメでしょ💧」
一角もなつみの姿を確認しようと、少し振り向いてみた。すると、月光に照らされてキラリ光る筋が、ぴろ〜ん。
「ゲッ⁉️はな垂れてやがる💦」
「そりゃあ、あんだけ泣いたら、鼻水も垂れるでしょ。一角の背中で拭いてあげなよ」
「やるか💢」
そうなると、なつみが落ち着いた先が一角の後ろで良かったと思う人たち。
「そういう運命よ」
「何のことだ💢」
乱菊が立ち上がり、なつみのもとへ行く。そして軽く揺すって起こしてあげる。
「なつみー、ちょっと起きて」
「うむむむむ😪」
「鼻すーって吸って」
「すーっ」
夢うつつの中、なつみは言われた通り、鼻水を鼻に戻していく。鼻水が回収されると、視界がクリアになり、乱菊は、障害物が無くなったなつみの懐へ思い切り手を突っ込んだ。
「「「「⁉️」」」」
その行動に、男たちは目を奪われた。
「確か、この辺に手拭いがあるはずなのよ…」
そう言いながら、乱菊はなつみの胸元をまさぐった。
「んお、むお、おぉ〜」
状況把握の追いついていないなつみは、揺すられながらそんな声を発していた。しかし、さすがにこれでは色気が無いということで。
「乱菊ちゃん、もうちょっと上の方を揉んでみたらどうかな。それか、ボクが代わろうか」
と、京楽がくだらないことを言っている間に、お目当ての品が見つかったようだ。
「あった!なつみ、これで鼻拭きなさい。はい、チーン」
「チーン🤧」
男性陣は股間に何かしらを感じつつ、この微笑ましい光景を何とは思わず眺めていた。
「ほんとだ。わかめ大使だ」
手拭いの端にあるわかめ大使の刺繍の顔が、その何かしらを穏やかに鎮めてくれる。
「いろいろと、ありがたや…🙏✨」
鼻水の染み込んだ手拭いは、一角が洗って、後日なつみに返せば良いから、とりあえずあんたが持ってなさい、ということで、乱菊がそれを彼に渡した。渡された途端、一角はすぐ洗いに行った。なつみはというと、乱菊の膝を枕に、もうすっかり眠っている。
「すーすー😴」
鼻の通りも良さそうだ。
「かわいい寝顔だなぁ〜。このまま連れて帰りたいよ🥰」
京楽がツンツンとほっぺを突いてみると、なつみは「むぅぅ…、むにゃむにゃ」と唸った。
「あぁっ、延々見てられる😚」
嬉しそうだ。
そうしていると、洗濯を終えた一角が戻ってきた。と、その屋根に到着して立ったまま、何かを視界に捉えた。
「…迎えが来たみたいだぜ」
風と共に姿を表したのは、市丸だった。
「こんばんは〜」
挨拶もそこそこに、市丸は横たわるなつみを見つけた。
「おった、なつみちゃん。こんなとこで寝てもうて、風邪ひくで?」
「大丈夫よ、なつみ、ぽかぽかだから」
乱菊がそう言うものだから、市丸は屈んでなつみのおでこからほっぺを触った。
「まさか、飲ませたんとちゃうやろな」
「何よ、人聞きの悪い。あたしらは飲ませてないわよ。この子が勝手に飲んだの!」
「飲んだの⁉︎もぉ…、勘弁してや…」
そう聞いて、市丸はしゃがんだ姿勢で俯いた。そして決意する。
「あかん!暴れ出す前に、今のうちとっとと送ったろっ」
意外な事実に、弓親が笑ってしまった。
「なつみちゃんて、酔うと暴れちゃうんですか?さっきまで大泣きはしてましたけど(笑)」
「せやで。酔っ払ったなつみちゃんをおんぶして帰ったらな、ボクの背中でおもクソ暴れたんや。耳元で大きい声出すし、脚バタバタするし。そないに暴れるんやったら降ろすで言うと、もっと暴れるもん。あれは大変やった…。それ以来、お酒飲まさんようにしてんのにぃ!」
「あっはは、そうだったんだね。だったら、今日はボクが送ってってあげようか?」
京楽が優しさから、そう申し出てくれた。
「イヤや。そのままお持ち帰りするでしょ!なつみちゃんのお世話は、ボクの仕事や。ボクが連れて帰ります!大人しく寝てる今のうちにっ」
暴れ出したら落っことすというリスクはあるが、今夜はお姫様抱っこで帰ることにする。
「起きんといてや」
この小さなぷにぷに爆弾が、相当怖いらしい。
「ほんじゃ、みなさん、ウチのなつみちゃんがご迷惑おかけしました」
抱えたなつみをあまり揺らさない程度に、市丸は頭を下げた。
「迷惑だなんて。そんなこと思ってないよ。慰めてあげられなくて、こっちが申し訳なかったし」
「本心吐き出せる場所をくれただけでも、この子には充分ですよ。もう、きっと大丈夫や。ほんま、ありがとうございました。乱菊も、ありがとうな」
「いいのよ」
それで、市丸が立ち去りそうだったため、京楽は彼に駆け寄って、慌ててなつみの頭を撫でに行った。
「えい!」
なでなで。
「わ〜い、やっと触らせてくれたよ☺️」
市丸の腕の中で、なつみはニンマリしていた。ご機嫌な夢でも見ているのだろうか。
「みんなキミのことを大事に想ってるから、離れ離れになっても大丈夫だよ。寂しい気持ちは、ここに置いていこうね」
薄っすら聞こえていたのか、はたまた偶然か、なつみは「うん」と言った。
「(かわいいーッ!チューしたーいッ!)フフッ、おやすみ、なつみちゃん」
かぶりつきたい衝動をクールに抑えつつ、京楽は市丸から一歩離れて手を振った。
「市丸隊長も、おやすみ」
「はーい。失礼します😌」
その言葉を残し、市丸は姿を消した。
五番隊宿舎への道すがら、市丸の温もりに包まれるなつみは、ぽつりと寝言を呟いた。
「ちゅー…する…」
「?」
京楽のせいで、エッチな夢でも見てるんだと、結論付ける市丸であった。
「うにゅぅぅぅ…」
酔いもしっかり回ってきていた。
一角が背中で、なつみの鼻をすする揺れを心地よく感じながら、思うことを話してみた。
「それにしても、こんなに寂しがるヤツも珍しいよな。大抵、仲間が出世するために異動するんなら、喜ぶなり、羨ましがるなりするもんじゃねぇの」
「うん…、大抵はね。けど、なつみちゃんたちは特例中の特例だから、そう簡単に割り切れないのさ。絆が強いんだよ」
「絆ねぇ…」
一口飲む。
「あのぉ、特例ってどういうことですか?」
弓親が控えめな挙手をしながら問う。それに京楽が答えた。
「なつみちゃんはね、6人の男の子たちと一緒に、三番隊に入隊したんだよ。それから今までずっと変わらず、彼らは一緒に居続けてきた」
「「⁉️」」
その事実は一角と弓親を驚かせた。
「びっくりするよね。護廷十三隊史上初めてのことかもしれないから。同期7人が同じ隊で、誰一人欠けることなく、この長い年数を過ごしてきたんだもん。すごいよ」
「なつみがいるからじゃないですか?😊」
「それも要因の一つだけど、彼らの優秀さも大きいはずだよ」
京楽と乱菊は和やかに笑い合う。
「何でそれがすげぇことなんだ?」
更木には理解できないようだった。
「隊長には、同期とか仲間意識とか無さそうですもんね」
「ああ?悪ぃかよ」
「いいえ」そのまま弓親が解説してくれる。「新人隊士が一つの隊に7人で入隊するのは、珍しいことではないんです。どの隊もそれくらいの人数で取るんですよ。でもその人数は最初の2〜3年で減るのが普通なんです。所属する隊が自分に合わないとか、昇進を目指すためとかの理由で、別の隊に移ったり、もしくは任務中に死んだりして」
「もっと時間が経てば、護廷十三隊全体での同期もどんどんいなくなっちゃうのよね。今となっては、あたしなんて、あと何人残ってるのかしら」
「僕には一角がいるよ」
「ボクは浮竹だけだな。気付けば、ふたりぼっち」
「そんなもんすよ。それだけ危険な仕事してんですから。にしても、7人全員ってのは、異常だな。二、四、十一、十二番隊ならまだしも、三番隊だろ?しかも、その6人が一気に他所の隊に行っちまうと。それもまた珍しい話だ」
「三番隊は大変だね。6人新しい人入れなきゃいけないんでしょ?何年かかけて、ちょっとずつ変わってけば良いのに。どうして、いっぺんにやるんだろう?それに、取り残されちゃうなつみちゃんが、こんな風に落ち込むのだって、想像つくじゃんか。何考えてんだか」
弓親が不憫にそう思ってくれた。
「まぁ、市丸隊長なりに考えてのことだと思うよ。みんななつみちゃんのことが好きだからさ、変に残ってると、抜け駆けされたり、ヤキモチ妬いちゃったりして、友情が崩れちゃうかもしれないだろ?なつみちゃんがそれを望まないだろうし。今まで通りの『みんな仲良しさん』っていう関係を保ちながら、彼らそれぞれの成長を促すには、同じタイミングで全員がなつみちゃんから離れるのが最適なんだよ。例え、彼女がこうして泣いたとしても」
「そうね。あの子らがいないところに来るまで、泣くのを我慢できたんだから、なつみには応援したい気持ちもちゃんとあるってことですもんね。これだけ泣いたんだし、明日になればケロッとしてるわ。これで良かったのよ。逆に心配なのは、なつみよりも、あの子たちの方。なつみがいない環境で、やってけるのかしら。本人は大丈夫って言うんだけど、実際のところはなってみなきゃ、わからないじゃない」
京楽も頷く。
「ボクも尾田くんにきいた。彼も大丈夫だって答えたよ。そのうち慣れていくだろうし、彼女と会えないことにむしろ慣れなきゃいけないんだって」
「上を目指しながら、対等の関係を求めるなら、同じ隊にはいられないですからね」
「そう。今のところ強がりにしか聞こえないけどね。だって考えてごらんよ、彼らは過酷な任務に就いても、隊舎に無事に帰れば、いつでもなつみちゃんが迎えてくれて、癒してくれてたんだよ。彼女がいたから、がんばってこられたんだ。それがもうなくなる。どんなに辛い仕事をしたって、なつみちゃんのもとには帰れないんだ。それでも良いだなんて、無理しちゃってるようにしか見えないね」
「そいつらが良いって言ってんなら、良いじゃねぇか。柄にもなく、野郎の心配でもしてんのか?」
「違うよ!ウチでやってけるかどうかの心配はしてるけど、尾田くんの心の心配なんかしてないね!あんの奴さん、鼻につくこと言ってくれちゃったんだよ?ボクもう思わず、眉間にシワが寄っちゃったよ」
思い出して、眉間に皺が寄り、指でその皺をぐりぐり伸ばした。
「何言われたんですか?」
「『木之本は、会いたくなったら会いに来てくれるでしょうし、俺たちもなるべく、そうしようって思ってます』だってさ!何?何なの?ボクは、尾田くんに会いに来たなつみちゃんを横取りして、取って食えば良いの?もぉー、ボクの前でラブラブ発言やめてよ‼︎って感じ(笑)」
「なつみは誰相手でも会いたくなったら、すぐ会いに行くじゃないですか。そんな妬かなくても良くないですか?」
「だって、ボクには会いに来てくれないもん」
「会いたくないんじゃないですか?(笑)」
「なんでぇー⁉️こんなに好かれてるのに⁉️😫」
「さっき威嚇されてましたよ(笑)」
「そうだけどさぁ‼️でもちゃんと両想いなんだよ?そんな虐めないでよ〜😣」
そうして年長者をからかい、笑いが収まると、弓親があることに気付いた。
「あれ?なつみちゃん、寝ちゃってる?」
「あら、うとうとしてる。フフッ☺️」
「かぁわいい〜。今なら抱きついて良さそうだね😚」
「いや、ダメでしょ💧」
一角もなつみの姿を確認しようと、少し振り向いてみた。すると、月光に照らされてキラリ光る筋が、ぴろ〜ん。
「ゲッ⁉️はな垂れてやがる💦」
「そりゃあ、あんだけ泣いたら、鼻水も垂れるでしょ。一角の背中で拭いてあげなよ」
「やるか💢」
そうなると、なつみが落ち着いた先が一角の後ろで良かったと思う人たち。
「そういう運命よ」
「何のことだ💢」
乱菊が立ち上がり、なつみのもとへ行く。そして軽く揺すって起こしてあげる。
「なつみー、ちょっと起きて」
「うむむむむ😪」
「鼻すーって吸って」
「すーっ」
夢うつつの中、なつみは言われた通り、鼻水を鼻に戻していく。鼻水が回収されると、視界がクリアになり、乱菊は、障害物が無くなったなつみの懐へ思い切り手を突っ込んだ。
「「「「⁉️」」」」
その行動に、男たちは目を奪われた。
「確か、この辺に手拭いがあるはずなのよ…」
そう言いながら、乱菊はなつみの胸元をまさぐった。
「んお、むお、おぉ〜」
状況把握の追いついていないなつみは、揺すられながらそんな声を発していた。しかし、さすがにこれでは色気が無いということで。
「乱菊ちゃん、もうちょっと上の方を揉んでみたらどうかな。それか、ボクが代わろうか」
と、京楽がくだらないことを言っている間に、お目当ての品が見つかったようだ。
「あった!なつみ、これで鼻拭きなさい。はい、チーン」
「チーン🤧」
男性陣は股間に何かしらを感じつつ、この微笑ましい光景を何とは思わず眺めていた。
「ほんとだ。わかめ大使だ」
手拭いの端にあるわかめ大使の刺繍の顔が、その何かしらを穏やかに鎮めてくれる。
「いろいろと、ありがたや…🙏✨」
鼻水の染み込んだ手拭いは、一角が洗って、後日なつみに返せば良いから、とりあえずあんたが持ってなさい、ということで、乱菊がそれを彼に渡した。渡された途端、一角はすぐ洗いに行った。なつみはというと、乱菊の膝を枕に、もうすっかり眠っている。
「すーすー😴」
鼻の通りも良さそうだ。
「かわいい寝顔だなぁ〜。このまま連れて帰りたいよ🥰」
京楽がツンツンとほっぺを突いてみると、なつみは「むぅぅ…、むにゃむにゃ」と唸った。
「あぁっ、延々見てられる😚」
嬉しそうだ。
そうしていると、洗濯を終えた一角が戻ってきた。と、その屋根に到着して立ったまま、何かを視界に捉えた。
「…迎えが来たみたいだぜ」
風と共に姿を表したのは、市丸だった。
「こんばんは〜」
挨拶もそこそこに、市丸は横たわるなつみを見つけた。
「おった、なつみちゃん。こんなとこで寝てもうて、風邪ひくで?」
「大丈夫よ、なつみ、ぽかぽかだから」
乱菊がそう言うものだから、市丸は屈んでなつみのおでこからほっぺを触った。
「まさか、飲ませたんとちゃうやろな」
「何よ、人聞きの悪い。あたしらは飲ませてないわよ。この子が勝手に飲んだの!」
「飲んだの⁉︎もぉ…、勘弁してや…」
そう聞いて、市丸はしゃがんだ姿勢で俯いた。そして決意する。
「あかん!暴れ出す前に、今のうちとっとと送ったろっ」
意外な事実に、弓親が笑ってしまった。
「なつみちゃんて、酔うと暴れちゃうんですか?さっきまで大泣きはしてましたけど(笑)」
「せやで。酔っ払ったなつみちゃんをおんぶして帰ったらな、ボクの背中でおもクソ暴れたんや。耳元で大きい声出すし、脚バタバタするし。そないに暴れるんやったら降ろすで言うと、もっと暴れるもん。あれは大変やった…。それ以来、お酒飲まさんようにしてんのにぃ!」
「あっはは、そうだったんだね。だったら、今日はボクが送ってってあげようか?」
京楽が優しさから、そう申し出てくれた。
「イヤや。そのままお持ち帰りするでしょ!なつみちゃんのお世話は、ボクの仕事や。ボクが連れて帰ります!大人しく寝てる今のうちにっ」
暴れ出したら落っことすというリスクはあるが、今夜はお姫様抱っこで帰ることにする。
「起きんといてや」
この小さなぷにぷに爆弾が、相当怖いらしい。
「ほんじゃ、みなさん、ウチのなつみちゃんがご迷惑おかけしました」
抱えたなつみをあまり揺らさない程度に、市丸は頭を下げた。
「迷惑だなんて。そんなこと思ってないよ。慰めてあげられなくて、こっちが申し訳なかったし」
「本心吐き出せる場所をくれただけでも、この子には充分ですよ。もう、きっと大丈夫や。ほんま、ありがとうございました。乱菊も、ありがとうな」
「いいのよ」
それで、市丸が立ち去りそうだったため、京楽は彼に駆け寄って、慌ててなつみの頭を撫でに行った。
「えい!」
なでなで。
「わ〜い、やっと触らせてくれたよ☺️」
市丸の腕の中で、なつみはニンマリしていた。ご機嫌な夢でも見ているのだろうか。
「みんなキミのことを大事に想ってるから、離れ離れになっても大丈夫だよ。寂しい気持ちは、ここに置いていこうね」
薄っすら聞こえていたのか、はたまた偶然か、なつみは「うん」と言った。
「(かわいいーッ!チューしたーいッ!)フフッ、おやすみ、なつみちゃん」
かぶりつきたい衝動をクールに抑えつつ、京楽は市丸から一歩離れて手を振った。
「市丸隊長も、おやすみ」
「はーい。失礼します😌」
その言葉を残し、市丸は姿を消した。
五番隊宿舎への道すがら、市丸の温もりに包まれるなつみは、ぽつりと寝言を呟いた。
「ちゅー…する…」
「?」
京楽のせいで、エッチな夢でも見てるんだと、結論付ける市丸であった。