第一章
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始解を修得したその日の終業後、彼女の斬魄刀、夢現天子の能力を早くもっと知りたいと思い、なつみはウズウズしていた。何か試せないかと部屋にある物を見渡してみる。そこは4人で使用している仕事部屋で、主に書類を作成したりする場所。同室の隊士たちは既に帰宅しており、夕日の射すガランとした室内に、険しい顔で腕組みをしながら入り口のところになつみはひとり立っていた。
「人で試すのはちょっとかわいそうな気がするから、まずは物で試したいんだけど。ふーん…、どうしようかな」
瀞霊廷に明かりが灯り出す頃、イヅルは隊舎の見回りを終え、自室に戻るところだった。
「お疲れさん、イヅル。もうみんな帰ってた?」
「お疲れ様です、市丸隊長。それが」
そう言ってイヅルは、言葉の途中でクスッと笑ってしまう。
「何やの?変なことあった?」
「いえ、あの、大方みんな帰っていたんですけど、木之本くんがまだ残ってるみたいで」
「なつみちゃんが?」
「はい。掃除を始めたら止まらなくなってしまったとは言ってましたが」
「へ〜」
「でもなんだか隠し事でもしてるような感じがあったんです。水の入ったバケツを持っていたので、もしかすると、うっかり何かこぼしてしまったのかもしれないですね」
「ほぉ」
「まだやることがあるので、ひとりにさせてきてしまいましたが、一応様子を見に行ってあげてもらえませんか?」
「うん、わかった。任しとき。ほな、イヅルも早よキリつけて帰りや」
「はい。ありがとうございます」
手をふりふり、市丸はなつみのいる部屋へ向かった。
扉の前に着くと、確かに明かりがついていて、中からチャプチャプキュッキュッと物音がするのを確認できる。ノックをして、そっと扉を開けながら市丸は声をかけた。
「なつみちゃーん、お掃除してんのー?…って、エッ⁉︎何や、コレ‼︎」
目の前で繰り広げられている光景に驚いてしまった。床に雑巾が2匹、机に1匹、書類棚に1匹、窓に1匹、天井にも1匹、別々に動き回りながら各自持ち場を磨いていた。
「何で勝手に雑巾が動いてんの⁉︎」
「…んんん、もう限界‼︎」
声の主は扉側の壁際に立って、斬魄刀を構えていた。しかし先程の言葉と共に力が抜けて、刀を下ろす、と同時に天井と窓を担当していた雑巾がボタボタと落ちた。雑巾たちはすっかり静止している。
「はぁ、はぁ、6枚が限界か。そっか」
「なつみちゃん、今の何?」
「あ、市丸隊長、こんばんは。あの、夢現天子の力を、もっと知りたくて、人で試すのは申し訳なくて、ちょっとホコリが気になったんで、それで、掃除道具が動き出して、掃除してくれたら良いなって、思って、やってみたんですよ、はい」
はぁ…、と一息ついて、なつみは斬魄刀を鞘に収めた。
「物でもいけんねんな」
「みたいですね!」
にっこり笑うなつみを前に、市丸は顎に手を当てて考えていた。
「うーん、なつみちゃんの能力って何なんやろう…。…あ」
思い出して、顎に当てていた手で時計を指した。
「せやった。もう結構な時間になってるで、帰らなかんよーって言いに来たんやった」
「わ!ほんとだ!みんな、お片付けするよ」
さっき収めた斬魄刀を慌てて抜き、解号を唱える。
「従え、夢現天子。整列ぅ!」
あちこちに散らばっていた雑巾たちが、なつみの号令に従い、なつみの前で横一列に整列した。
「番号ぉ、1、2、3、4、5、6!」
左から、ビシッ、ビシッ、ビシッ、ビシッ、ビシッ、ビシッと手があがった。
「洗い場まで行くぞ。我に続け、ぜんたーい、進めっ!イッチ、ニー、、イッチ、ニー、、」
部屋の入り口に立つ市丸の目の前で、奇妙な行進が通り過ぎていく。なつみの掛け声に合わせて、雑巾たちが二足歩行をしていくのだ。全員が退室すると、なつみが部屋の明かりを消し、左手にバケツ、右手に斬魄刀を持った。
「では、女子トイレにしゅっぱーつ!」
♩♫♩♩、♩♫♩〜と鼻歌を歌いつつ、パレードが始まる。その後ろから市丸がついていく。
「ちょうどこの集団で歩いてるときに、副隊長に会ったんですよ、さっき。別に悪いことしてたわけじゃないけど、びっくりしちゃって、慌てて斬魄刀とこの子たちを隠してました(笑)」
「そうなんや。イヅルが心配しててん。なつみちゃんが何かやらかしたんやないかーって」
「え!そうだったんですね。申し訳ないな、心配かけちゃって。夢現天子の力を使ってるところを見たのは、まだ市丸隊長だけなんですよ」
「まぁいうても、始解できるようになったの今日の昼やしね。せやけどなつみちゃんのことやから、お友達に自慢してたんやろ?」
「う…、明日見せるって約束しちゃいました」
女子トイレに到着。この時間に使用してる人はいないため、市丸が入っても良かったが、一応入り口の外で立ち止まった。なつみはバケツの水を捨て、軽くすすぎ、足元で待つ雑巾たちをまとめて手洗い場に拾い上げた。
「斬魄刀から手ぇ離しても、能力使えんねんな。すごいな」
「みたいですね。さて、自分たちで体洗ってね」
そう言ってなつみは蛇口をひねり、雑巾たちに水をかけた。6匹の雑巾は、みんなで戯れ合うようにして汚れを落としていく。
「なんか、かわええな」
「でしょ!」
なつみが自分の手を洗っている横で、ある程度綺麗になった雑巾たちは体を捻りあげて、水を絞っていた。
「よーし、バケツに入って」
保育園児満載のカートのようなバケツを片手に、なつみは女子トイレから出てくる。
「なぁ、なつみちゃん。ボク気付いてへんかったけど、今ボクに能力使ってる?」
「え?いえ、使ってませんよ」
「ふーん、そっか」
「?」
小さな物干し台に雑巾たちをそれぞれ捕まらせ、なつみは手を汚すことなく片付けを終えた。
「完了です!」
斬魄刀を鞘に収めると、雑巾たちはぶらんと垂れ下がった。
「ご苦労さんでした、なつみちゃん」
「はい!」
返事の直後、ぐ〜っという音が響いた。
「ありゃ、そりゃお腹も空くわな」
「はい///」
「一緒にご飯行こか」
「え⁉︎良いんですか⁉︎」
「うん」
「やったー!どこ行きますか?」
「なつみちゃんは何が食べたい?」
「ぼくはですね…」
うーんと悩みながら歩くなつみを優しい視線で見つめ、市丸は隣を歩いた。
「市丸隊長が食べたい物、です!」
「もー、決まらへんやん、それじゃあ。ボクかて、なつみちゃんが食べたい物でええもん」
「えー。困りましたね」
「困ったねー」
「人で試すのはちょっとかわいそうな気がするから、まずは物で試したいんだけど。ふーん…、どうしようかな」
瀞霊廷に明かりが灯り出す頃、イヅルは隊舎の見回りを終え、自室に戻るところだった。
「お疲れさん、イヅル。もうみんな帰ってた?」
「お疲れ様です、市丸隊長。それが」
そう言ってイヅルは、言葉の途中でクスッと笑ってしまう。
「何やの?変なことあった?」
「いえ、あの、大方みんな帰っていたんですけど、木之本くんがまだ残ってるみたいで」
「なつみちゃんが?」
「はい。掃除を始めたら止まらなくなってしまったとは言ってましたが」
「へ〜」
「でもなんだか隠し事でもしてるような感じがあったんです。水の入ったバケツを持っていたので、もしかすると、うっかり何かこぼしてしまったのかもしれないですね」
「ほぉ」
「まだやることがあるので、ひとりにさせてきてしまいましたが、一応様子を見に行ってあげてもらえませんか?」
「うん、わかった。任しとき。ほな、イヅルも早よキリつけて帰りや」
「はい。ありがとうございます」
手をふりふり、市丸はなつみのいる部屋へ向かった。
扉の前に着くと、確かに明かりがついていて、中からチャプチャプキュッキュッと物音がするのを確認できる。ノックをして、そっと扉を開けながら市丸は声をかけた。
「なつみちゃーん、お掃除してんのー?…って、エッ⁉︎何や、コレ‼︎」
目の前で繰り広げられている光景に驚いてしまった。床に雑巾が2匹、机に1匹、書類棚に1匹、窓に1匹、天井にも1匹、別々に動き回りながら各自持ち場を磨いていた。
「何で勝手に雑巾が動いてんの⁉︎」
「…んんん、もう限界‼︎」
声の主は扉側の壁際に立って、斬魄刀を構えていた。しかし先程の言葉と共に力が抜けて、刀を下ろす、と同時に天井と窓を担当していた雑巾がボタボタと落ちた。雑巾たちはすっかり静止している。
「はぁ、はぁ、6枚が限界か。そっか」
「なつみちゃん、今の何?」
「あ、市丸隊長、こんばんは。あの、夢現天子の力を、もっと知りたくて、人で試すのは申し訳なくて、ちょっとホコリが気になったんで、それで、掃除道具が動き出して、掃除してくれたら良いなって、思って、やってみたんですよ、はい」
はぁ…、と一息ついて、なつみは斬魄刀を鞘に収めた。
「物でもいけんねんな」
「みたいですね!」
にっこり笑うなつみを前に、市丸は顎に手を当てて考えていた。
「うーん、なつみちゃんの能力って何なんやろう…。…あ」
思い出して、顎に当てていた手で時計を指した。
「せやった。もう結構な時間になってるで、帰らなかんよーって言いに来たんやった」
「わ!ほんとだ!みんな、お片付けするよ」
さっき収めた斬魄刀を慌てて抜き、解号を唱える。
「従え、夢現天子。整列ぅ!」
あちこちに散らばっていた雑巾たちが、なつみの号令に従い、なつみの前で横一列に整列した。
「番号ぉ、1、2、3、4、5、6!」
左から、ビシッ、ビシッ、ビシッ、ビシッ、ビシッ、ビシッと手があがった。
「洗い場まで行くぞ。我に続け、ぜんたーい、進めっ!イッチ、ニー、、イッチ、ニー、、」
部屋の入り口に立つ市丸の目の前で、奇妙な行進が通り過ぎていく。なつみの掛け声に合わせて、雑巾たちが二足歩行をしていくのだ。全員が退室すると、なつみが部屋の明かりを消し、左手にバケツ、右手に斬魄刀を持った。
「では、女子トイレにしゅっぱーつ!」
♩♫♩♩、♩♫♩〜と鼻歌を歌いつつ、パレードが始まる。その後ろから市丸がついていく。
「ちょうどこの集団で歩いてるときに、副隊長に会ったんですよ、さっき。別に悪いことしてたわけじゃないけど、びっくりしちゃって、慌てて斬魄刀とこの子たちを隠してました(笑)」
「そうなんや。イヅルが心配しててん。なつみちゃんが何かやらかしたんやないかーって」
「え!そうだったんですね。申し訳ないな、心配かけちゃって。夢現天子の力を使ってるところを見たのは、まだ市丸隊長だけなんですよ」
「まぁいうても、始解できるようになったの今日の昼やしね。せやけどなつみちゃんのことやから、お友達に自慢してたんやろ?」
「う…、明日見せるって約束しちゃいました」
女子トイレに到着。この時間に使用してる人はいないため、市丸が入っても良かったが、一応入り口の外で立ち止まった。なつみはバケツの水を捨て、軽くすすぎ、足元で待つ雑巾たちをまとめて手洗い場に拾い上げた。
「斬魄刀から手ぇ離しても、能力使えんねんな。すごいな」
「みたいですね。さて、自分たちで体洗ってね」
そう言ってなつみは蛇口をひねり、雑巾たちに水をかけた。6匹の雑巾は、みんなで戯れ合うようにして汚れを落としていく。
「なんか、かわええな」
「でしょ!」
なつみが自分の手を洗っている横で、ある程度綺麗になった雑巾たちは体を捻りあげて、水を絞っていた。
「よーし、バケツに入って」
保育園児満載のカートのようなバケツを片手に、なつみは女子トイレから出てくる。
「なぁ、なつみちゃん。ボク気付いてへんかったけど、今ボクに能力使ってる?」
「え?いえ、使ってませんよ」
「ふーん、そっか」
「?」
小さな物干し台に雑巾たちをそれぞれ捕まらせ、なつみは手を汚すことなく片付けを終えた。
「完了です!」
斬魄刀を鞘に収めると、雑巾たちはぶらんと垂れ下がった。
「ご苦労さんでした、なつみちゃん」
「はい!」
返事の直後、ぐ〜っという音が響いた。
「ありゃ、そりゃお腹も空くわな」
「はい///」
「一緒にご飯行こか」
「え⁉︎良いんですか⁉︎」
「うん」
「やったー!どこ行きますか?」
「なつみちゃんは何が食べたい?」
「ぼくはですね…」
うーんと悩みながら歩くなつみを優しい視線で見つめ、市丸は隣を歩いた。
「市丸隊長が食べたい物、です!」
「もー、決まらへんやん、それじゃあ。ボクかて、なつみちゃんが食べたい物でええもん」
「えー。困りましたね」
「困ったねー」