第三章
夢小説設定
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元柳斎が、なつみの能力とその危険性を知った上で、隊長たちに協力を要請している旨は理解できた。
「何故あの子に、あのような力が備わったかは儂にもわからん。じゃが、あの子だからこそ、得られたんじゃろう。皆の幸せを、世界の平和を、心より求める優しい子なんじゃ。あの子の正義は、必ず儂らと共にある。お前たちには、なつみのことを信じてやってもらいたい」整列する隊長たちの表情を伺う。「何か言いたいことがある者はおるか」
誰も、発言する意は無いようだった。だが、顔色はさまざま。総隊長がここまで言うのであれば、安心して同意しようと決めた者。新たな事実を知り、ますますなつみに好意を持った者。この状況に耐えられない者。
「市丸よ、お前もまた未熟。なつみと同じじゃよ」
平常心を保って。感情を抑えて。状況の把握と分析。取るべき最善の行動を最短で見つける。
「何でや。何でなつみちゃんの力を育てる必要があるんですか。あの能力のせいで、大変なことが起こるかもしれんのに。現に、最悪の事態になり得るいうの証明されたんですよね。そもそも使わんかったら、使えへんかったら、あの子が危ない目に遭うことも無い。ボクは、なつみちゃんの笑顔を守ったげたいから、総隊長さんの意見に反対です。組織の都合で、あの子の能力を利用しようとしてるんやったら、ボク黙ってられません…」
なつみが以前、三番隊に残って、ずっと市丸のそばにいたいと伝えてくれた時、彼女の前向きで強気な態度が市丸を安心させていた。自分の心配事が、現実には起こらないし、起こったとしても大したことにはならないだろう、と楽観していたのだ。だからなつみが始解するのも許し、現世任務にも行かせた。
だが、実際には問題が発生し、なつみは命を落としかけた。それによって、また市丸はなつみを束縛して守っていかなければと、考えを戻そうとしていた。強くなって、問題を打ち負かせば良い、という周囲の意見は受け入れられない。問題自体に近づけさせなければ、彼女が傷つくことは無いのだから。
「お前は勘違いしておらんか」
癇に障る言い方だった。
「お前はあの子を何じゃと思おておる。一般庶民か、はたまたお前の娘か。違うじゃろう」
「違いますよ。でも…」
「『でも』ではない!あの子は、護廷十三隊隊士、死神じゃ。己の力を磨き、強さを求める者。死神として生き、死神として死ぬ運命を儂らと共に背負った同志じゃ!何故お前如きがあやつの邪魔をする。あやつがそれを望むのか。力を持てぬまま、何もできずに、ただ助けられ、のうのうと生き延びるだけの一生を、あの子が幸せと呼ぶとでも思うたか⁉︎」
何も返せない。
「怪我をさせとうない、泣かせとうない。そんな理由で、渡す仕事を制限する。それで守っておるつもりか。大事にしておるつもりなのか」
この言葉に、別件ではあるが。
「耳が痛いね、朽木隊長」
「フン…」
心当たりのある2人にも、少し響いた。
「なつみは決して弱くはない。ただ経験が足りず、上手く動けんのじゃ。成長せぬまま、実戦に放り出されれば、失敗してしまうのは当然のこと。では、どう改善すべきか。鍛えるしかなかろう。徐々に危険な仕事にも挑戦していかにゃならん。あの子を成長させることもまた、あの子を守ることにつながると思わんか。その方が、あの子は喜ぶのではないか」
なつみが市丸の考えに窮屈を覚えるのは、以前からわかっていた。彼女が何を望んでいるのかも。
「しかしのぉ、なつみは強くなりたいと言うておるにも関わらず、お前から離れたくはないと言う。困った頑固者じゃ。お前にあそこまで執着しとらんのなら、一番隊へ引き入れて、この場でこんなことを話さんでも済んだはずなんじゃがの。断られてしもうた」
「あ、山じいもフラれたの?ボクと一緒じゃん」
「お前と一緒にすな!」
京楽に調子を狂わされそうになったため、咳払いをして、話題を少し変えていく元柳斎。
「市丸は、何に恐れておる。なつみに降りかかる危機とは何じゃ」
「…わかりません。はっきり言えませんけど、でも、あれだけいろんなことができてまうから、悪用されてまう可能性があります」
「ふむ、そうじゃの。その通りじゃ。だが、なつみが使用するとなれば、自ら悪事を働くことは無かろう。儂はの、別のものに恐れておる」
総隊長が恐れるもの?そんなものが存在するのか。
「世界とは、均衡が保たれることで成り立っておる。『光と闇』、『大地、水、火、風』の関係のように、相反する存在、対等の存在があるんじゃ。なつみの能力で源となるのは、あの子の祈り。何でもできる、全能とも呼べるあの子の力で、世界を明るく照らせば、自ずと影なる力もどこかで潜んでおるんじゃなかろうかと儂は思え、その力がいつ暴れだすのかと案じておるのじゃ」
あの男の体が微かに反応したが、恐らく誰もそれに気付いていない。
「尸魂界にとって脅威となる勢力が攻めてきた際に、あの子の能力が必要となるやもしれん。そうなった時にじゃ、なつみが充分に成長しておれば、我が護廷十三隊は敵に対し、優位に立つことができる。そうじゃろう。備えあれば憂いなしじゃ」
元柳斎はそう話ながら、自分でうんうんと頷いた。
市丸には、気になる点がある。
「総隊長さんは、なつみちゃんが戦うことになるその敵が誰なのか、見当がついてるんですか。全然予想できてへんのに、そこまで気にするなんて変ですもんね」
元柳斎の眉がピクリと動く。
「1人の…。もちろんあの子ひとりで戦わせるなどせん。儂らがついておる。皆で協力すれば、必ず世界を守りぬけるじゃろう。さぁ、どうじゃ、市丸よ。考えを改めてくれんかの?」
「誰ですか、その1人って」
「儂の質問に答えよ」
市丸は、密かにぐっと唇を噛んでいた。その時、さっと隣りから藍染が右腕をかざし、市丸と元柳斎の間に割って入ってきた。
「市丸、ここは、総隊長の意見に従うべきだ」
2人の視線が打つかる。
「反対しているのは、お前1人だけだ。木之本くん本人も、成長を望んでいる。これ以上足掻いても、無駄なんじゃないか?まだ何も起きていないことに、そこまで危惧する必要は無いと思うよ。力の保持だけなら、何の問題も無いしね。僕らみんなで導けば、彼女はきっと大丈夫だ。正しい力の使い方を知れば、あの時のような辛い思いをせずに済む」
『正しい使い方』…?
「だから、木之本くんがやろうとしていることを認めてやれ。彼女の隊長はお前なんだ、市丸。隊長には、部下の成長を見届ける義務がある。過保護なんて、誰のためにもならないぞ」
どの口が言っているのか。だが、至極真っ当な言い分だった。
そしてまた、市丸は納得したフリをしなければならなくなった。ただ彼は、なつみと何気なく笑い合える平穏な日々を望んでいるだけなのに。なつみが夢現天子の力を手にしてしまったがために、周りが、大人たちが、世界が、うるさく言い寄るようになってしまった。環境も、なつみも、変わっていってしまう。こんなにも話が大きくなってしまって、もう、彼にはこの変化を止めることはできないのだろうか。とりあえず、ここで声を張り上げても、大した効果は得られないと測った。だから、一旦退こう。この場でできることは無い。
「わかりました。藍染隊長の言う通りですね。大変な目に遭わせてしもたから、なつみちゃんのことこれ以上傷つけんようにって、必死になりすぎてました。ボクはあの子の隊長で、あの子は戦士。ちゃんと育てたらなアカン。斬魄刀の能力も鍛えへんと、死神て呼べないですもんね」
元柳斎の眼差しが柔らかくなった。
「よう言うた、市丸。よう言うた」
「総隊長さん、みなさん、なつみちゃんのこと、よろしくお願いします。面倒見たってください。なつみちゃんは、真面目で良え子やから、絶対みなさんの期待に応えてくれますよ」
こう言わなければ、藍染の機嫌を損ねそうだった。面倒を起こさないように、抑えなければ。
「何故あの子に、あのような力が備わったかは儂にもわからん。じゃが、あの子だからこそ、得られたんじゃろう。皆の幸せを、世界の平和を、心より求める優しい子なんじゃ。あの子の正義は、必ず儂らと共にある。お前たちには、なつみのことを信じてやってもらいたい」整列する隊長たちの表情を伺う。「何か言いたいことがある者はおるか」
誰も、発言する意は無いようだった。だが、顔色はさまざま。総隊長がここまで言うのであれば、安心して同意しようと決めた者。新たな事実を知り、ますますなつみに好意を持った者。この状況に耐えられない者。
「市丸よ、お前もまた未熟。なつみと同じじゃよ」
平常心を保って。感情を抑えて。状況の把握と分析。取るべき最善の行動を最短で見つける。
「何でや。何でなつみちゃんの力を育てる必要があるんですか。あの能力のせいで、大変なことが起こるかもしれんのに。現に、最悪の事態になり得るいうの証明されたんですよね。そもそも使わんかったら、使えへんかったら、あの子が危ない目に遭うことも無い。ボクは、なつみちゃんの笑顔を守ったげたいから、総隊長さんの意見に反対です。組織の都合で、あの子の能力を利用しようとしてるんやったら、ボク黙ってられません…」
なつみが以前、三番隊に残って、ずっと市丸のそばにいたいと伝えてくれた時、彼女の前向きで強気な態度が市丸を安心させていた。自分の心配事が、現実には起こらないし、起こったとしても大したことにはならないだろう、と楽観していたのだ。だからなつみが始解するのも許し、現世任務にも行かせた。
だが、実際には問題が発生し、なつみは命を落としかけた。それによって、また市丸はなつみを束縛して守っていかなければと、考えを戻そうとしていた。強くなって、問題を打ち負かせば良い、という周囲の意見は受け入れられない。問題自体に近づけさせなければ、彼女が傷つくことは無いのだから。
「お前は勘違いしておらんか」
癇に障る言い方だった。
「お前はあの子を何じゃと思おておる。一般庶民か、はたまたお前の娘か。違うじゃろう」
「違いますよ。でも…」
「『でも』ではない!あの子は、護廷十三隊隊士、死神じゃ。己の力を磨き、強さを求める者。死神として生き、死神として死ぬ運命を儂らと共に背負った同志じゃ!何故お前如きがあやつの邪魔をする。あやつがそれを望むのか。力を持てぬまま、何もできずに、ただ助けられ、のうのうと生き延びるだけの一生を、あの子が幸せと呼ぶとでも思うたか⁉︎」
何も返せない。
「怪我をさせとうない、泣かせとうない。そんな理由で、渡す仕事を制限する。それで守っておるつもりか。大事にしておるつもりなのか」
この言葉に、別件ではあるが。
「耳が痛いね、朽木隊長」
「フン…」
心当たりのある2人にも、少し響いた。
「なつみは決して弱くはない。ただ経験が足りず、上手く動けんのじゃ。成長せぬまま、実戦に放り出されれば、失敗してしまうのは当然のこと。では、どう改善すべきか。鍛えるしかなかろう。徐々に危険な仕事にも挑戦していかにゃならん。あの子を成長させることもまた、あの子を守ることにつながると思わんか。その方が、あの子は喜ぶのではないか」
なつみが市丸の考えに窮屈を覚えるのは、以前からわかっていた。彼女が何を望んでいるのかも。
「しかしのぉ、なつみは強くなりたいと言うておるにも関わらず、お前から離れたくはないと言う。困った頑固者じゃ。お前にあそこまで執着しとらんのなら、一番隊へ引き入れて、この場でこんなことを話さんでも済んだはずなんじゃがの。断られてしもうた」
「あ、山じいもフラれたの?ボクと一緒じゃん」
「お前と一緒にすな!」
京楽に調子を狂わされそうになったため、咳払いをして、話題を少し変えていく元柳斎。
「市丸は、何に恐れておる。なつみに降りかかる危機とは何じゃ」
「…わかりません。はっきり言えませんけど、でも、あれだけいろんなことができてまうから、悪用されてまう可能性があります」
「ふむ、そうじゃの。その通りじゃ。だが、なつみが使用するとなれば、自ら悪事を働くことは無かろう。儂はの、別のものに恐れておる」
総隊長が恐れるもの?そんなものが存在するのか。
「世界とは、均衡が保たれることで成り立っておる。『光と闇』、『大地、水、火、風』の関係のように、相反する存在、対等の存在があるんじゃ。なつみの能力で源となるのは、あの子の祈り。何でもできる、全能とも呼べるあの子の力で、世界を明るく照らせば、自ずと影なる力もどこかで潜んでおるんじゃなかろうかと儂は思え、その力がいつ暴れだすのかと案じておるのじゃ」
あの男の体が微かに反応したが、恐らく誰もそれに気付いていない。
「尸魂界にとって脅威となる勢力が攻めてきた際に、あの子の能力が必要となるやもしれん。そうなった時にじゃ、なつみが充分に成長しておれば、我が護廷十三隊は敵に対し、優位に立つことができる。そうじゃろう。備えあれば憂いなしじゃ」
元柳斎はそう話ながら、自分でうんうんと頷いた。
市丸には、気になる点がある。
「総隊長さんは、なつみちゃんが戦うことになるその敵が誰なのか、見当がついてるんですか。全然予想できてへんのに、そこまで気にするなんて変ですもんね」
元柳斎の眉がピクリと動く。
「1人の…。もちろんあの子ひとりで戦わせるなどせん。儂らがついておる。皆で協力すれば、必ず世界を守りぬけるじゃろう。さぁ、どうじゃ、市丸よ。考えを改めてくれんかの?」
「誰ですか、その1人って」
「儂の質問に答えよ」
市丸は、密かにぐっと唇を噛んでいた。その時、さっと隣りから藍染が右腕をかざし、市丸と元柳斎の間に割って入ってきた。
「市丸、ここは、総隊長の意見に従うべきだ」
2人の視線が打つかる。
「反対しているのは、お前1人だけだ。木之本くん本人も、成長を望んでいる。これ以上足掻いても、無駄なんじゃないか?まだ何も起きていないことに、そこまで危惧する必要は無いと思うよ。力の保持だけなら、何の問題も無いしね。僕らみんなで導けば、彼女はきっと大丈夫だ。正しい力の使い方を知れば、あの時のような辛い思いをせずに済む」
『正しい使い方』…?
「だから、木之本くんがやろうとしていることを認めてやれ。彼女の隊長はお前なんだ、市丸。隊長には、部下の成長を見届ける義務がある。過保護なんて、誰のためにもならないぞ」
どの口が言っているのか。だが、至極真っ当な言い分だった。
そしてまた、市丸は納得したフリをしなければならなくなった。ただ彼は、なつみと何気なく笑い合える平穏な日々を望んでいるだけなのに。なつみが夢現天子の力を手にしてしまったがために、周りが、大人たちが、世界が、うるさく言い寄るようになってしまった。環境も、なつみも、変わっていってしまう。こんなにも話が大きくなってしまって、もう、彼にはこの変化を止めることはできないのだろうか。とりあえず、ここで声を張り上げても、大した効果は得られないと測った。だから、一旦退こう。この場でできることは無い。
「わかりました。藍染隊長の言う通りですね。大変な目に遭わせてしもたから、なつみちゃんのことこれ以上傷つけんようにって、必死になりすぎてました。ボクはあの子の隊長で、あの子は戦士。ちゃんと育てたらなアカン。斬魄刀の能力も鍛えへんと、死神て呼べないですもんね」
元柳斎の眼差しが柔らかくなった。
「よう言うた、市丸。よう言うた」
「総隊長さん、みなさん、なつみちゃんのこと、よろしくお願いします。面倒見たってください。なつみちゃんは、真面目で良え子やから、絶対みなさんの期待に応えてくれますよ」
こう言わなければ、藍染の機嫌を損ねそうだった。面倒を起こさないように、抑えなければ。