第三章
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なつみが急いで報告書を提出した2日後の午後のこと。
「え?十二番隊長さんが来てるて?」
「はい。お通ししてよろしいでしょうか」
「えっと、えー?何でわざわざ。どうしよ」
イヅルの報告を受けて、口は迷いつつも、手は机の上をテキパキと片付け始める市丸。
「今、どこで待ってもらってるん?」
そうきいた途端に、隊首室の扉が開いた。
「遅いヨ‼︎いつまで待たせる気だッ」
入ってきちゃったマユリ。無断でズンズンと応接用の椅子に近づき、ドサッと座った。
「私は暇では無いんだヨ」
困ったなと、市丸とイヅルは顔を見合わせた。
「それで、ご用件は何ですか」
おずおずと市丸がきいた。
「ここの二十席の報告書を読ませてもらったヨ」
「何か、不備でも?」
「私がそんなことでわざわざ来る訳が無いだろう」強めの口調。だが次の言葉は穏やかに話した。「なに、気になることがあってネ、そいつと直接話して、確認したいと思った。ただそれだけだヨ」
事情を聞いても、困ったことに変わりなかった。
「わかったら、さっさとここにその二十席を連れてくるんだヨ。ボサッとするんじゃないヨ!」
怖い顔だし、迷惑な文句を吐くお客様に、たじたじなイヅルが対応した。
「申し訳ありません、涅隊長。ちょうど今、木之本くんをおつかいに出していまして、彼女は不在なんです…」
「何だって⁉︎」クレーマー、怒り心頭。「折角、わざわざ、私が貴重な時間を割いてまでこんなところに来てやったというのに、いないだと⁉︎」
「そんなこと言われたかて、知りませんやん!💦」
「全く!無駄足を踏ませる気かネ⁉︎いつ戻ってくるんだ、そいつは!」
「わ、わかりませんっ。九番隊へ、最新の瀞霊廷通信を取りに行っているので、かなり時間はかかるかと」
「答えになってないヨ‼︎私は何時に帰ってくるかときいたんだ‼︎」
丁寧に説明したつもりのイヅルは、もう市丸の陰に隠れたがっていた。
「日を改めてもらえませんか?涅さんとなつみちゃんの都合の良え日を決めてもらって…。その、今日は会えないと思いますから💦」
片方の上唇をピクピクさせながら市丸の顔を横目で、目を細めて睨みつける。嫌悪の念を抑えつけようと努力はしているようだ。
「わかったヨ。そうしようじゃないか。茶も出てきそうに無いからネ。後で私の予定を教えてやるから、来れる時に来いと木之本とやらに伝えておけ。もしくは、偶然にも出くわした際、時間があれば十二番隊に連れて行き、話を聞く。それで良いかネ。そんなに時間は取らせないつもりでいるヨ。お前たちの仕事に差し支えることはないだろう」
「そうですか。なら、そうしましょ。なつみちゃんに伝えときます」
話がついたと思うや否や、イヅルがささっと出口を開けて、マユリのお帰りに備えた。
「ご足労いただき、ありがとうございました」
「全くその通りだヨ」
立ち上がると、振り返ることもなく、敷居を跨いでマユリは帰っていった。その背中を見ながら、一応市丸が挨拶を送る。
「お疲れさんでしたぁ〜」
聞こえてはいないだろうが。
扉を閉めるイヅル、自分の席に着く市丸、同時にため息が漏れた。
「「はぁ……」」
どっと疲れが上から降ってきた感じがした。
「何なんや、もぉー、あの人苦手や〜😩」
「同感です😔」
去った嵐について思い返してみる。
「気になることって何やろ。変なことあったんかな」
「虚の霊圧を探知できなかったこととかじゃないですか?」
「でもそんなんやったら、なつみちゃんにきいてもしゃあないと思うけどな」
「うーん…、他は見当もつきませんね。ですが、そんなことより、木之本くん、大丈夫でしょうか。涅隊長に怯えて、何も話せなくなってしまうかもしれませんよ」
「せやなぁ。一緒に行ってあげた方がええんかなぁ。ひとりで行かせたら、泣いて帰ってきそうやもんな」
とは言っても、できることなら。
「あそこ行きたないな〜😩」
面倒は勘弁してほしいと願うのはマユリの方も同じで、プンスカしながら門の方へ歩いていた。
「時間を無駄にしてしまったじゃないか。私が直々に足を運んだにも関わらず、留守とは⁉︎なんて迷惑なヤツなんだろうネ‼︎」
アポ無しで急に来る方も迷惑だが、そうツッコむ人の声など耳に入らないほどイライラしていた。
ということで、塀の向こうにいる人の気配にも気付けなかったマユリ。門を抜けて、通りを左折した所で、ドンッ‼️‼️
「イターッ」「う゛ぅッ」
誰かと正面衝突してしまった。痛むのは胸の辺り。相手は顔面を打ったらしく、両手で顔を覆ってしゃがみこんでいた。
「どこ見て歩いてるんだネ⁉︎痛いじゃないか💢」
「す、すいません(泣)」
当たってしまった相手が立ち上がり、そっと手を離しながら、顔を上げる。
「💘⁉️」
痛みのせいで潤んだ瞳、暑さのせいで赤くなった頬、光る汗、ぶつかってしまったのが申し訳なくてへの字になった眉と口元、顔から離したばかりでまだ胸元にあるおてて、身長差と距離のせいで上目遣いになる視線。それは紛れもなく、一目惚れだった。
「あわっ‼︎涅隊長⁉︎すいませんでしたー😫💦」
誰とぶつかったのか確認したその死神は、あたふたと両手をふるふるして「どうしようどうしよう」とパニックになっていた。パニックついでにマユリの手を取る。
「どこが痛みますか⁉︎救護班呼びましょうか⁉︎」
必死で話しかけてくれるが、マユリの方は初めてのトキメキに打たれてフリーズ。戸惑いから険しい表情を浮かべていた。その顔が怒りの表情と捉えてしまった相手。
「うぅぅッ、怒らないでくださいぃ😭」
2人が落ち着くまで、事故の経緯を説明しよう。マユリは前途の通り、イライラして歩いていたため、周りが見えていなかった。その姿勢は、やや猫背。相手側は荷物が載った重そうなリヤカーを懸命に引っ張っていたため、こちらも俯きながら歩いており、前を見ていなかった。そんな2人が門のところ、出会い頭にぶつかってしまったということだった。
恋のイカズチからは動けるようになったマユリは、黙ってリヤカーの後ろに回った。
「あれっ、涅隊長⁉︎」
「これを運ぶんだろ。手伝ってやろうじゃないか」
「えぇ⁉︎そんな、大丈夫ですよ!」
「私の不注意でぶつかってしまったからネ。気にしなくて良いんだヨ」
「(さっきと態度が…?)そうですか。ありがとうございます」
その子はニッコリ笑って言った。
「涅隊長って、とっても優しい方なんですね😄✨」
またもトキメキがッ…。胸がキュンとしている前方で、合図がかかった。
「いきますよ〜、せーのっ!」
リヤカーが動き出した。マユリはそれに気付き、力を入れて押し始める。
「うわ〜✨さっきより、すっごく軽いです!助かります!ありがとうございまーす!」
「コラ、前を向きなさい。また誰かにぶつかってしまうヨ」
「はーい😆」
嬉しそうに、2人は三番隊の敷地をどんどん進んでいった。
すると、玄関の方から2人の男性が駆けてきた。
「おーい!」
「おかえりー!」
リヤカーを引く子が返事をする。
「ただいまー!尾田ー!レンー!」
友人2人は後ろにいる大モノに気付いて、びっくりする。
「え⁉︎涅隊長⁉︎」
「なに手伝わせてるんだよ⁉︎」
「ぼくは頼んでないよ。涅隊長がとっても親切でね、押してくださってるんだよ」
尾田とレンが来てくれたため、一旦停止。
「げふー。雑誌ってこんだけあると重いな」
「代わってやる。出てこい」
レンがハンドルを変わってくれた。尾田は後ろに行き、マユリにお礼を伝える。
「ご親切に、どうもありがとうございました。もう大丈夫ですよ。俺たちで運んできますんで😁」
「あぁ。そうしてくれ給え」
袖で額の汗を拭いている子に、レンが言う。
「木之本、お前もちゃんと涅隊長にお礼言いな」
「おう!」
テッテと小走りにマユリへ近づいて、ペコッとお辞儀する。
「涅隊長、お手伝いしていただき、ありがとうございました」
ニッコリ。
顔を上げたなつみの肩に手を置くマユリ。
「君が木之本なつみかネ」
「は…い。そうですけど」
リヤカーを押し始めた尾田たちだが、その様子を見て立ち止まる。
「私は君と話すために、ここに来たんだヨ」
「そうだったんですか!すいません、出かけてまして」
「良いんだヨ。こうして会えたからネ」
「どういったご用件でしたか?」
「中級大虚と戦った時のことを、君の口から聞いてみたくてネ。現場や報告書ではわからないことがあるんだヨ。私と一緒にウチに来てくれないかな?」
「今ですか⁉︎」
「そうだヨ」
「ちょ、ちょっと、隊長に確認取りますね」
伝令神機を取り出すが。
「市丸には許可をもらっている。君の都合の良い時に連れていって良いとネ。時間は取らせないよ。今は忙しいかね?」
「いえ、それでしたら、大丈夫です。行きましょう!」
なつみは尾田たちに伝言を頼む。
「隊長か副隊長に、ぼくが技術開発局に行くって、言っといて!お願い!」
リヤカーの2人が返す。
「りょーかーい」
「2回目のいってらっしゃーい」
「いってきまーす!」
再び、マユリとなつみは三番隊の門を通り、道へ出た。
「体調の方は万全かネ?」
「いえ、肺がまだ治りきってなくて、すぐに疲れてしまうんです」
「そうか。ならば走らせるのは良くないネ」
なつみの前で背を向けて屈んだ。
「そんな‼︎」
「何だネ。遠慮をするな。私は早く帰りたいんだヨ」
「うぅぅ、恐縮ですっ。失礼します!」
そう言って、なつみはマユリの首に腕を回して、彼の背に覆い被さった。
「ふん、良い香りだネ」
汗臭いはずなのに、そう言ってくれて、なつみにはやはり、マユリが優しい人に見えて仕方なかった。
「重たかったら、降ろしてもらって良いですからね」
「大丈夫だヨ。君は軽い。そんな心配より、しっかり掴まっているんだヨ。多少揺れるかもしれないからネ。では、行くヨ」
「はい」
マユリはなつみをおんぶして、十二番隊隊舎へ移動を始めた。
その様子を窓から見ていた市丸とイヅル。
「怯えるどころか、めっちゃ仲良くなってへん?」
「ここであんなに怒ってたのに、涅隊長、穏やかでしたね」
「はぁ〜、めんどいこと起きんとええけど」
「というと?」
「いろいろや」
玄関前で尾田たちが荷台から箱を重たそうに運んでいるのも見えた。
「それにしても、木之本くんは力持ちですね。あれだけの量をひとりで運んでくるなんて。もっと時間がかかるかと思いました。早かったですよね」
「前よりも気合入れて鍛えるって、はりきってんねん。ボクらが見てへんとこで、無茶してるかもしれへんよ。心配やわー」
お兄ちゃんには心配事が多いようで。
「あの子を狙う男が増えんのも、勘弁して欲しいわ。ボクだけのなつみちゃんやったのにー😫」
「仕方ないですよ。木之本くんは、愛され体質ですから」
「もぉー!そんなにモテてまうと、お兄ちゃん、グレてまうでー!」
「どういうことですか😅」
「え?十二番隊長さんが来てるて?」
「はい。お通ししてよろしいでしょうか」
「えっと、えー?何でわざわざ。どうしよ」
イヅルの報告を受けて、口は迷いつつも、手は机の上をテキパキと片付け始める市丸。
「今、どこで待ってもらってるん?」
そうきいた途端に、隊首室の扉が開いた。
「遅いヨ‼︎いつまで待たせる気だッ」
入ってきちゃったマユリ。無断でズンズンと応接用の椅子に近づき、ドサッと座った。
「私は暇では無いんだヨ」
困ったなと、市丸とイヅルは顔を見合わせた。
「それで、ご用件は何ですか」
おずおずと市丸がきいた。
「ここの二十席の報告書を読ませてもらったヨ」
「何か、不備でも?」
「私がそんなことでわざわざ来る訳が無いだろう」強めの口調。だが次の言葉は穏やかに話した。「なに、気になることがあってネ、そいつと直接話して、確認したいと思った。ただそれだけだヨ」
事情を聞いても、困ったことに変わりなかった。
「わかったら、さっさとここにその二十席を連れてくるんだヨ。ボサッとするんじゃないヨ!」
怖い顔だし、迷惑な文句を吐くお客様に、たじたじなイヅルが対応した。
「申し訳ありません、涅隊長。ちょうど今、木之本くんをおつかいに出していまして、彼女は不在なんです…」
「何だって⁉︎」クレーマー、怒り心頭。「折角、わざわざ、私が貴重な時間を割いてまでこんなところに来てやったというのに、いないだと⁉︎」
「そんなこと言われたかて、知りませんやん!💦」
「全く!無駄足を踏ませる気かネ⁉︎いつ戻ってくるんだ、そいつは!」
「わ、わかりませんっ。九番隊へ、最新の瀞霊廷通信を取りに行っているので、かなり時間はかかるかと」
「答えになってないヨ‼︎私は何時に帰ってくるかときいたんだ‼︎」
丁寧に説明したつもりのイヅルは、もう市丸の陰に隠れたがっていた。
「日を改めてもらえませんか?涅さんとなつみちゃんの都合の良え日を決めてもらって…。その、今日は会えないと思いますから💦」
片方の上唇をピクピクさせながら市丸の顔を横目で、目を細めて睨みつける。嫌悪の念を抑えつけようと努力はしているようだ。
「わかったヨ。そうしようじゃないか。茶も出てきそうに無いからネ。後で私の予定を教えてやるから、来れる時に来いと木之本とやらに伝えておけ。もしくは、偶然にも出くわした際、時間があれば十二番隊に連れて行き、話を聞く。それで良いかネ。そんなに時間は取らせないつもりでいるヨ。お前たちの仕事に差し支えることはないだろう」
「そうですか。なら、そうしましょ。なつみちゃんに伝えときます」
話がついたと思うや否や、イヅルがささっと出口を開けて、マユリのお帰りに備えた。
「ご足労いただき、ありがとうございました」
「全くその通りだヨ」
立ち上がると、振り返ることもなく、敷居を跨いでマユリは帰っていった。その背中を見ながら、一応市丸が挨拶を送る。
「お疲れさんでしたぁ〜」
聞こえてはいないだろうが。
扉を閉めるイヅル、自分の席に着く市丸、同時にため息が漏れた。
「「はぁ……」」
どっと疲れが上から降ってきた感じがした。
「何なんや、もぉー、あの人苦手や〜😩」
「同感です😔」
去った嵐について思い返してみる。
「気になることって何やろ。変なことあったんかな」
「虚の霊圧を探知できなかったこととかじゃないですか?」
「でもそんなんやったら、なつみちゃんにきいてもしゃあないと思うけどな」
「うーん…、他は見当もつきませんね。ですが、そんなことより、木之本くん、大丈夫でしょうか。涅隊長に怯えて、何も話せなくなってしまうかもしれませんよ」
「せやなぁ。一緒に行ってあげた方がええんかなぁ。ひとりで行かせたら、泣いて帰ってきそうやもんな」
とは言っても、できることなら。
「あそこ行きたないな〜😩」
面倒は勘弁してほしいと願うのはマユリの方も同じで、プンスカしながら門の方へ歩いていた。
「時間を無駄にしてしまったじゃないか。私が直々に足を運んだにも関わらず、留守とは⁉︎なんて迷惑なヤツなんだろうネ‼︎」
アポ無しで急に来る方も迷惑だが、そうツッコむ人の声など耳に入らないほどイライラしていた。
ということで、塀の向こうにいる人の気配にも気付けなかったマユリ。門を抜けて、通りを左折した所で、ドンッ‼️‼️
「イターッ」「う゛ぅッ」
誰かと正面衝突してしまった。痛むのは胸の辺り。相手は顔面を打ったらしく、両手で顔を覆ってしゃがみこんでいた。
「どこ見て歩いてるんだネ⁉︎痛いじゃないか💢」
「す、すいません(泣)」
当たってしまった相手が立ち上がり、そっと手を離しながら、顔を上げる。
「💘⁉️」
痛みのせいで潤んだ瞳、暑さのせいで赤くなった頬、光る汗、ぶつかってしまったのが申し訳なくてへの字になった眉と口元、顔から離したばかりでまだ胸元にあるおてて、身長差と距離のせいで上目遣いになる視線。それは紛れもなく、一目惚れだった。
「あわっ‼︎涅隊長⁉︎すいませんでしたー😫💦」
誰とぶつかったのか確認したその死神は、あたふたと両手をふるふるして「どうしようどうしよう」とパニックになっていた。パニックついでにマユリの手を取る。
「どこが痛みますか⁉︎救護班呼びましょうか⁉︎」
必死で話しかけてくれるが、マユリの方は初めてのトキメキに打たれてフリーズ。戸惑いから険しい表情を浮かべていた。その顔が怒りの表情と捉えてしまった相手。
「うぅぅッ、怒らないでくださいぃ😭」
2人が落ち着くまで、事故の経緯を説明しよう。マユリは前途の通り、イライラして歩いていたため、周りが見えていなかった。その姿勢は、やや猫背。相手側は荷物が載った重そうなリヤカーを懸命に引っ張っていたため、こちらも俯きながら歩いており、前を見ていなかった。そんな2人が門のところ、出会い頭にぶつかってしまったということだった。
恋のイカズチからは動けるようになったマユリは、黙ってリヤカーの後ろに回った。
「あれっ、涅隊長⁉︎」
「これを運ぶんだろ。手伝ってやろうじゃないか」
「えぇ⁉︎そんな、大丈夫ですよ!」
「私の不注意でぶつかってしまったからネ。気にしなくて良いんだヨ」
「(さっきと態度が…?)そうですか。ありがとうございます」
その子はニッコリ笑って言った。
「涅隊長って、とっても優しい方なんですね😄✨」
またもトキメキがッ…。胸がキュンとしている前方で、合図がかかった。
「いきますよ〜、せーのっ!」
リヤカーが動き出した。マユリはそれに気付き、力を入れて押し始める。
「うわ〜✨さっきより、すっごく軽いです!助かります!ありがとうございまーす!」
「コラ、前を向きなさい。また誰かにぶつかってしまうヨ」
「はーい😆」
嬉しそうに、2人は三番隊の敷地をどんどん進んでいった。
すると、玄関の方から2人の男性が駆けてきた。
「おーい!」
「おかえりー!」
リヤカーを引く子が返事をする。
「ただいまー!尾田ー!レンー!」
友人2人は後ろにいる大モノに気付いて、びっくりする。
「え⁉︎涅隊長⁉︎」
「なに手伝わせてるんだよ⁉︎」
「ぼくは頼んでないよ。涅隊長がとっても親切でね、押してくださってるんだよ」
尾田とレンが来てくれたため、一旦停止。
「げふー。雑誌ってこんだけあると重いな」
「代わってやる。出てこい」
レンがハンドルを変わってくれた。尾田は後ろに行き、マユリにお礼を伝える。
「ご親切に、どうもありがとうございました。もう大丈夫ですよ。俺たちで運んできますんで😁」
「あぁ。そうしてくれ給え」
袖で額の汗を拭いている子に、レンが言う。
「木之本、お前もちゃんと涅隊長にお礼言いな」
「おう!」
テッテと小走りにマユリへ近づいて、ペコッとお辞儀する。
「涅隊長、お手伝いしていただき、ありがとうございました」
ニッコリ。
顔を上げたなつみの肩に手を置くマユリ。
「君が木之本なつみかネ」
「は…い。そうですけど」
リヤカーを押し始めた尾田たちだが、その様子を見て立ち止まる。
「私は君と話すために、ここに来たんだヨ」
「そうだったんですか!すいません、出かけてまして」
「良いんだヨ。こうして会えたからネ」
「どういったご用件でしたか?」
「中級大虚と戦った時のことを、君の口から聞いてみたくてネ。現場や報告書ではわからないことがあるんだヨ。私と一緒にウチに来てくれないかな?」
「今ですか⁉︎」
「そうだヨ」
「ちょ、ちょっと、隊長に確認取りますね」
伝令神機を取り出すが。
「市丸には許可をもらっている。君の都合の良い時に連れていって良いとネ。時間は取らせないよ。今は忙しいかね?」
「いえ、それでしたら、大丈夫です。行きましょう!」
なつみは尾田たちに伝言を頼む。
「隊長か副隊長に、ぼくが技術開発局に行くって、言っといて!お願い!」
リヤカーの2人が返す。
「りょーかーい」
「2回目のいってらっしゃーい」
「いってきまーす!」
再び、マユリとなつみは三番隊の門を通り、道へ出た。
「体調の方は万全かネ?」
「いえ、肺がまだ治りきってなくて、すぐに疲れてしまうんです」
「そうか。ならば走らせるのは良くないネ」
なつみの前で背を向けて屈んだ。
「そんな‼︎」
「何だネ。遠慮をするな。私は早く帰りたいんだヨ」
「うぅぅ、恐縮ですっ。失礼します!」
そう言って、なつみはマユリの首に腕を回して、彼の背に覆い被さった。
「ふん、良い香りだネ」
汗臭いはずなのに、そう言ってくれて、なつみにはやはり、マユリが優しい人に見えて仕方なかった。
「重たかったら、降ろしてもらって良いですからね」
「大丈夫だヨ。君は軽い。そんな心配より、しっかり掴まっているんだヨ。多少揺れるかもしれないからネ。では、行くヨ」
「はい」
マユリはなつみをおんぶして、十二番隊隊舎へ移動を始めた。
その様子を窓から見ていた市丸とイヅル。
「怯えるどころか、めっちゃ仲良くなってへん?」
「ここであんなに怒ってたのに、涅隊長、穏やかでしたね」
「はぁ〜、めんどいこと起きんとええけど」
「というと?」
「いろいろや」
玄関前で尾田たちが荷台から箱を重たそうに運んでいるのも見えた。
「それにしても、木之本くんは力持ちですね。あれだけの量をひとりで運んでくるなんて。もっと時間がかかるかと思いました。早かったですよね」
「前よりも気合入れて鍛えるって、はりきってんねん。ボクらが見てへんとこで、無茶してるかもしれへんよ。心配やわー」
お兄ちゃんには心配事が多いようで。
「あの子を狙う男が増えんのも、勘弁して欲しいわ。ボクだけのなつみちゃんやったのにー😫」
「仕方ないですよ。木之本くんは、愛され体質ですから」
「もぉー!そんなにモテてまうと、お兄ちゃん、グレてまうでー!」
「どういうことですか😅」