第二章
夢小説設定
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夜風がとっても気持ち良くて、なつみはお散歩したくなってきた。
「ねぇねぇ、美沙ちゃん、ぼく、アヤさん送ってくから、先に帰って良いよ。明日仕事でしょ?ぼく休みだし、お昼まで寝てて、まだ眠くないし。だめ?」
とはいうものの、さすが親友。顔色を見て感じ取れることがあった。
「全く…。わかった。遅くなんないでよ。あと、先に寝てるから、起こさないで」
「りょーかいっ」
美沙がアヤに視線を向けた。
「それじゃあ、アヤさん、お先に失礼します。おやすみなさーい👋😄」
「はい。おやすみなさい😊」
美沙は瀞霊廷へ、なつみとアヤは美沙と反対方向へと別れていった。
思惑通りひとりになることができたなつみは、内緒のコソ練場へ来ていた。荷物を置いて、芝生に座り込む。斬魄刀を抜いて、あぐらをかいている膝の上に載せた。心を静めて、彼に語りかける。
「辞めたんだな」
「やめることをね。…、ごめん、まだわかんない」
「相談か」
なつみの向かい側、同じ背丈で、同じ座り方をした相棒の姿があった。
「これから確認する。思い立ったが吉日って言うでしょ?」
「聞こうか」
ムッちゃんは背筋を伸ばして、主の想いを伺う。その主、すぅっと息を吸って、言葉をまとめる。
「あの結果を招いたのは、ぼくが弱いからだ。李空の言う通り、鍛えて強くなれば良いんだけど、あんまりにも漠然としてない?」
「確かに、言うは易し。だが、どれだけという目標が無ければ、気持ちを保つのは難しいだろうな」
「そう。それに、鍛えるったって、これまでのやり方で良いのか不安なんだよ。ぼくはあの時全力で立ち向かった。今までの経験を総動員させたつもりだよ。でも、ダメだったんだ。ってことはだよ、中級大虚を1人で倒せないのが、ぼくの限界なのかもしれない。死神として続けていくには、別の方法を考えないと、今より先に進めない気がするんだ。…、みんなの想いに応えたい。同じ失敗をして、死ぬわけにいかないんだよ。恐らく、変えなきゃ今度こそ終わりなんだ」
考えるような静けさ。
「その別の方法とは?カケラほどには閃いたか?」
「だからここにいる」
風が草を撫でる。
「聞かせてくれないのか」
「ムッちゃんは嫌がる」
「相談ではないのか?」
「鍛える前に、何とかしておきたいことがあるんだ。ぼくにとって必要な能力を身につけられるか、試したい。今、ここで」
夢現天子を右手に握り、立ち上がる。
「ムッちゃんは、ぼくがいなくなるとイヤ?」
「無論だ。お前がいなければ、私は存在できない。私はお前と、この素晴らしい世界で楽しい時間を過ごしたいのさ。お前の笑顔を見ながらな」
頬にも風の感触。
「ムッちゃんの終わりって、どうしたら来るの」
「無茶は止せ」
「ぼくの終わりは、戦えなくなるときだ」
「止せ」
「断る」
少し屈み、目を閉じて、斬魄刀に霊圧を込める。
「わがままを言え。望むままに」
迷いを断ち切るように、左上から刀を振り下ろす。パッと瞼を開いた。霊圧に押された空気が遠ざかっていく。
「叶え、夢現天道子」「⁉︎」
右腕を少し後ろへ落ち着け、おかしな構えを取る。
「ぼくの腕を」「やめろ」
真下に踏ん張る。
「斬り落とせ……」「やめろーーーッ‼︎‼︎‼︎」
なつみは夢現天道子を天高く垂直に投げ飛ばし、右腕を真横にまっすぐ伸ばした。じっと待つ。回転しながら斬魄刀は頂点に達し、そのまま回り続けながら落ちてくる。どんどん迫ってくる。なつみはただひたすらに、自分の斬魄刀に右腕を斬り落とされる想像をした。
(叶え、叶え、叶え、叶え、叶え)
唇をぐっと噛み、衝撃に備えた。
ストンッ
ハァッ、ハァッ、ハァッ…
グゥッと体を丸めながら座り込むなつみの横、地面に斬魄刀が突き刺さっていた。
「馬鹿が…。ふざけるのもいい加減にしろ」
俯く主の顔はニヤついていた。
「うまくいった…。ははっ」
そう言うと、ごろんと仰向けで寝転び、手の甲を眉間に置く。その腕は、右。
「怖かった〜」
手はふるふると震えていた。
斬魄刀は、腕を避けるように回転して落ちてきたのだった。(尾田栄一郎『ONE PIECE』第97話“三代鬼徹”14-15頁 参考)
「本当に私がお前を斬っていたら、どうなっていたか」
「そんな怒んないでよ」
「治癒する者がいないここでは、お前は血を流し、倒れていた」
「言ったろ。善は急げ、思い立ったが吉日だ」
「私を追い込むな。…貴様如きが」
「ごめん」
刀を鞘に収めて抱きしめた。
「ぼく如きだからだよ。ぼくの勘が間違ってて、今腕を失ったって、一度は死んだようなものだから、その程度のヤツだったってことで終わるんだよ。けど、そうはならなかったね。ぼくの願いは運悪くはずれてしまった。というよりも、ムッちゃんによって拒否された。だから、叶わなかった」
「お前が下手な名前を付けるから、見てみろ、私の翼が赤地に黒の水玉だ」
「はははっ!てんとう虫じゃん!」
「笑うな」
金色の翼を惜しむムッちゃん。
「慣れてって。しばらくはこれでいくから」
「お前はそれで良いのか。私の力が発揮できないぞ」
「だからだよ」
「私が邪魔か」
「そんなことない」
拗ねる相棒をなだめてやる。
「あの戦いにおいて見つけられる、いくつもの反省点を振り返って、今すぐにでも何とか改善できることってあるか考えたんだ。そしたら、あの時のことを何とかしたくなった」
「あの時か。私はお前の願いを叶えてやらなければならないからな。…そうか」
あの時、中級大虚に歯が立たないと気付いた後、虚の魂を覗いてしまった。あれが無ければ、もう少し元気な体で戻ってこられただろう。
「ムッちゃんはどう思った」
「やり過ぎではあったな」
「うん。だからさ、思ったんだよね、いちばん最初に必要なことは、ブレーキをかけることだって」
「暴走が無ければ、あそこまで窮地に追いやられることもなかったな」
「本当の名前、夢現天子で100%の力を使えば、今のぼくでは制御しきれないことが起こる。鍛錬を積んで、充分になるまで鍛える間、暴走を食い止められるように、反対の力が欲しい。勝手に付けたあだ名なら、能力を半減できるんじゃないかって考えたんだ」
「思惑通りだな。危険な賭けだったが」
「ぼくは本気で腕を斬るのを願った。でもムッちゃんが嫌がったから、何も起きなかった」
「偶然だと思わないか」
「だったら他にも試すまでだ」
斬魄刀を腰に差して、帰る準備をする。
「先程のような馬鹿な真似は、二度とするなよ」
「ちゃーんと違うことでやるって(笑)」
腕組みをして、何かを企む。叶って欲しいけど、叶わなくても全然かまわないこと。だからなつみは、抜かずにつぶやくだけにした。
「叶え、夢現天道子……」
さて、何を願っただろうか。荷物を持って、瀞霊廷へ帰るべく、なつみは歩き始めた。
「ねぇねぇ、美沙ちゃん、ぼく、アヤさん送ってくから、先に帰って良いよ。明日仕事でしょ?ぼく休みだし、お昼まで寝てて、まだ眠くないし。だめ?」
とはいうものの、さすが親友。顔色を見て感じ取れることがあった。
「全く…。わかった。遅くなんないでよ。あと、先に寝てるから、起こさないで」
「りょーかいっ」
美沙がアヤに視線を向けた。
「それじゃあ、アヤさん、お先に失礼します。おやすみなさーい👋😄」
「はい。おやすみなさい😊」
美沙は瀞霊廷へ、なつみとアヤは美沙と反対方向へと別れていった。
思惑通りひとりになることができたなつみは、内緒のコソ練場へ来ていた。荷物を置いて、芝生に座り込む。斬魄刀を抜いて、あぐらをかいている膝の上に載せた。心を静めて、彼に語りかける。
「辞めたんだな」
「やめることをね。…、ごめん、まだわかんない」
「相談か」
なつみの向かい側、同じ背丈で、同じ座り方をした相棒の姿があった。
「これから確認する。思い立ったが吉日って言うでしょ?」
「聞こうか」
ムッちゃんは背筋を伸ばして、主の想いを伺う。その主、すぅっと息を吸って、言葉をまとめる。
「あの結果を招いたのは、ぼくが弱いからだ。李空の言う通り、鍛えて強くなれば良いんだけど、あんまりにも漠然としてない?」
「確かに、言うは易し。だが、どれだけという目標が無ければ、気持ちを保つのは難しいだろうな」
「そう。それに、鍛えるったって、これまでのやり方で良いのか不安なんだよ。ぼくはあの時全力で立ち向かった。今までの経験を総動員させたつもりだよ。でも、ダメだったんだ。ってことはだよ、中級大虚を1人で倒せないのが、ぼくの限界なのかもしれない。死神として続けていくには、別の方法を考えないと、今より先に進めない気がするんだ。…、みんなの想いに応えたい。同じ失敗をして、死ぬわけにいかないんだよ。恐らく、変えなきゃ今度こそ終わりなんだ」
考えるような静けさ。
「その別の方法とは?カケラほどには閃いたか?」
「だからここにいる」
風が草を撫でる。
「聞かせてくれないのか」
「ムッちゃんは嫌がる」
「相談ではないのか?」
「鍛える前に、何とかしておきたいことがあるんだ。ぼくにとって必要な能力を身につけられるか、試したい。今、ここで」
夢現天子を右手に握り、立ち上がる。
「ムッちゃんは、ぼくがいなくなるとイヤ?」
「無論だ。お前がいなければ、私は存在できない。私はお前と、この素晴らしい世界で楽しい時間を過ごしたいのさ。お前の笑顔を見ながらな」
頬にも風の感触。
「ムッちゃんの終わりって、どうしたら来るの」
「無茶は止せ」
「ぼくの終わりは、戦えなくなるときだ」
「止せ」
「断る」
少し屈み、目を閉じて、斬魄刀に霊圧を込める。
「わがままを言え。望むままに」
迷いを断ち切るように、左上から刀を振り下ろす。パッと瞼を開いた。霊圧に押された空気が遠ざかっていく。
「叶え、夢現天道子」「⁉︎」
右腕を少し後ろへ落ち着け、おかしな構えを取る。
「ぼくの腕を」「やめろ」
真下に踏ん張る。
「斬り落とせ……」「やめろーーーッ‼︎‼︎‼︎」
なつみは夢現天道子を天高く垂直に投げ飛ばし、右腕を真横にまっすぐ伸ばした。じっと待つ。回転しながら斬魄刀は頂点に達し、そのまま回り続けながら落ちてくる。どんどん迫ってくる。なつみはただひたすらに、自分の斬魄刀に右腕を斬り落とされる想像をした。
(叶え、叶え、叶え、叶え、叶え)
唇をぐっと噛み、衝撃に備えた。
ストンッ
ハァッ、ハァッ、ハァッ…
グゥッと体を丸めながら座り込むなつみの横、地面に斬魄刀が突き刺さっていた。
「馬鹿が…。ふざけるのもいい加減にしろ」
俯く主の顔はニヤついていた。
「うまくいった…。ははっ」
そう言うと、ごろんと仰向けで寝転び、手の甲を眉間に置く。その腕は、右。
「怖かった〜」
手はふるふると震えていた。
斬魄刀は、腕を避けるように回転して落ちてきたのだった。(尾田栄一郎『ONE PIECE』第97話“三代鬼徹”14-15頁 参考)
「本当に私がお前を斬っていたら、どうなっていたか」
「そんな怒んないでよ」
「治癒する者がいないここでは、お前は血を流し、倒れていた」
「言ったろ。善は急げ、思い立ったが吉日だ」
「私を追い込むな。…貴様如きが」
「ごめん」
刀を鞘に収めて抱きしめた。
「ぼく如きだからだよ。ぼくの勘が間違ってて、今腕を失ったって、一度は死んだようなものだから、その程度のヤツだったってことで終わるんだよ。けど、そうはならなかったね。ぼくの願いは運悪くはずれてしまった。というよりも、ムッちゃんによって拒否された。だから、叶わなかった」
「お前が下手な名前を付けるから、見てみろ、私の翼が赤地に黒の水玉だ」
「はははっ!てんとう虫じゃん!」
「笑うな」
金色の翼を惜しむムッちゃん。
「慣れてって。しばらくはこれでいくから」
「お前はそれで良いのか。私の力が発揮できないぞ」
「だからだよ」
「私が邪魔か」
「そんなことない」
拗ねる相棒をなだめてやる。
「あの戦いにおいて見つけられる、いくつもの反省点を振り返って、今すぐにでも何とか改善できることってあるか考えたんだ。そしたら、あの時のことを何とかしたくなった」
「あの時か。私はお前の願いを叶えてやらなければならないからな。…そうか」
あの時、中級大虚に歯が立たないと気付いた後、虚の魂を覗いてしまった。あれが無ければ、もう少し元気な体で戻ってこられただろう。
「ムッちゃんはどう思った」
「やり過ぎではあったな」
「うん。だからさ、思ったんだよね、いちばん最初に必要なことは、ブレーキをかけることだって」
「暴走が無ければ、あそこまで窮地に追いやられることもなかったな」
「本当の名前、夢現天子で100%の力を使えば、今のぼくでは制御しきれないことが起こる。鍛錬を積んで、充分になるまで鍛える間、暴走を食い止められるように、反対の力が欲しい。勝手に付けたあだ名なら、能力を半減できるんじゃないかって考えたんだ」
「思惑通りだな。危険な賭けだったが」
「ぼくは本気で腕を斬るのを願った。でもムッちゃんが嫌がったから、何も起きなかった」
「偶然だと思わないか」
「だったら他にも試すまでだ」
斬魄刀を腰に差して、帰る準備をする。
「先程のような馬鹿な真似は、二度とするなよ」
「ちゃーんと違うことでやるって(笑)」
腕組みをして、何かを企む。叶って欲しいけど、叶わなくても全然かまわないこと。だからなつみは、抜かずにつぶやくだけにした。
「叶え、夢現天道子……」
さて、何を願っただろうか。荷物を持って、瀞霊廷へ帰るべく、なつみは歩き始めた。