第二章
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1ヶ月ぶりに隊舎へ帰ってくると、なつみはイヅルと再会し、隊首室にて、しばらくおしゃべりをした。
「本当にお疲れ様、木之本くん。よく頑張ったね」
「ありがとうございます。なんとか帰ってこれました」
「すごく心配したけど、木之本くんなら大丈夫だって、信じてたよ。はぁ、一安心ですね、隊長」
「ほんまやねぇ」
「早速なんだけど、木之本くん、報告書を1週間で仕上げて欲しいんだ。できるかな?」
「こら、イヅル。たった今帰ってきたばっかりやのに、もう仕事の話なんて、なつみちゃんがかわいそうやろ」
「ですが、非常事態だっただけに、最終日のデータを早く出して欲しいと技術開発局から催促されてるんです」
「だっ、大丈夫ですよ!戦闘訓練にしばらく参加できない分、時間はありますから」
「そうなんだね。ごめんね。よろしく頼むよ」
「はい」
隊舎を出ると、走っちゃいけないと言われているため、始解をして、50mテレポートをぴょんぴょんし、屋根の上を近道で五番隊へ。
「おいしょー!」
Yの字でビシッと着地。久しぶりの我が家だ。すーっと大きく息を吸う。
「美沙ちゃーんッ‼︎ただいまーッ‼︎‼︎」
近所迷惑この上ない声量だった。すると、ドタドタドタッと宿舎の中から足音がして、ノンストップでアタック。
「おかえり、なつみーーーッ‼︎‼︎」
「うわぁ⁉︎ 美沙ちゃん、裸足じゃんっ」
玄関からそのままなつみに飛びついた美沙は、ぎゅぅーっと親友を抱きしめた。
「よかったぁ…。ちゃんと帰ってきた。なつみー」
ほんわかしたなつみの香りに安心して、ちょっぴり涙が浮かぶ。
「ただいま、美沙ちゃん。心配してくれたんだね。ありがとう」
「当たり前でしょ」
ちょっと体を離して、お互いの顔を確認して、笑い合う。
「泣くことないじゃん、美沙ちゃん」
「うるさい。勝手に出るんだから、しょうがないでしょ」
「中入ろうよ。足痛いでしょ?(笑)」
「うん(笑)」
部屋に届いていた荷物の中身をざっと確認してから、流魂街へお出かけの準備。美沙と2人で、ご飯を食べに行くつもり。その後で、銭湯に行って、コーヒー牛乳を飲んで、お部屋戻って、ぐっすり!という完璧なプランを立てた。
「ねぇ、デザートにアップルパイ食べたい」
「え〜、アイス食べようよ」
「わかった!両方あるとこ行って、シェアしよう」
「そうしよう😁」
仲良しコンビは、ケタケタ笑いながら会えなかった1ヶ月間に何があったか話した。
「パンツッ…。絶対あり得ないから!(笑)」
「絶対忘れん!この失敗、絶対忘れん!でもみんなは、絶対忘れてくれーッ‼︎」
お腹も心も満たされた後は、お風呂に浸かって疲れを洗い流しましょう。
「でっかいお風呂久しぶりー!」
「あたしも、あんたと来て以来だわ」
「何で〜?ひとりでも来たら良いじゃん」
「そうなんだけどね」
脱衣所を抜けて、洗い場へ。2人並んで座った。美沙が左、なつみが右。
「ちょおー、この石鹸の匂いがめっちゃ懐かしい✨」
「いちいち感動するのね」
「だって好きだもーん」
なつみの右にもお客さんがいた。髪の毛を洗って、シャワーを止める。そして、左の方で何かに気づいた。
「死神さん⁉︎」
「はい?」「ほぇ?」
死神さんたちは右を見る。小さい方の死神さんだけ気づいた。
「アヤさん⁉︎」
「やっぱり死神さんだー‼︎」
シャンプーで泡立てたついでに、髪でピョンと角を作って、「ねぇねぇ、見てみて、キューピーさん!👼」とボケかましたろうとした矢先のビッグハグ。
「うぉうっ!」
「よかったぁ。助かってたんですね!」
「こんなところで会えるなんて、偶然ですねっ」
シャシャッと髪をとかして角を隠す。
「なつみ、その人誰」
「ぼくが最後に魂葬した人だよ」
「あぁ!その節は、この子がお世話になりました!」
「ど、どうも…」
ゆっくり優しくアヤの体を離してあげる。
「とりあえず!体、洗いましょう!」
湯船に浸かって、うーんと伸びをする。
「ぐひゃ〜、いい湯じゃのぉ〜♨️」
「てか、よく自己紹介もしてなかったのに、あんたがピンチだって伝わったわね」
「ほんとだよぉ〜」
お湯が気持ちよくて、なつみは溶けんばかりのくつろぎ様。
「ん?どゆこと?」
ノリで同感の意を示したが、正直何のこっちゃであった。
「そこにいるアヤさんが、あんたが虚に襲われてるって、知らせてくれたのよ、尾田くんに」
「尾田に?」
ますます何のこっちゃ。なので、アヤが説明してくれた。
「魂葬の直前で、なつみちゃんの後ろに怪物が現れたのが見えたの。腕を振り上げてて。だから、襲われちゃうと思ったんだけど、気づいたら、もうこっちに来てて。それで、通りかかった人たちに『死神さんが怪物に襲われて大変です!』って言って、助けを呼んでほしいって頼んだんだけど、大丈夫って言われるだけで、誰も相手してくれなくて」
「そこに、たまたまその地区を巡回してた尾田くんが居合わせて、アヤさんの話を聞いてあげたわけ。本当に運が良かったの。尾田くんじゃなかったらって思うと、ゾッとする」
ちょっと腑に落ちない。
「技術開発局から連絡があったはずじゃないの?」
「あった。あったけど、すごく遅かったの。あの虚は霊圧を消して動いてたみたいで、察知できなかったんだって。攻撃のときには霊圧が出てたらしいけど、断続的で、気づきにくかったそうよ」
「ほぉ…。確かに、ぼくも全く反応できなかったもんな」
「たぶん、尾田くんはその点に引っかかって、すぐに市丸隊長に報告したんだと思う。なつみなら、もっと余裕を持って戦うはずだから、そんなに敵を引きつけるはずがないって、何かが本当に起きたのかもしれないってね」
「あいつ…、後でお礼言ってやらなきゃ」
そんなことがあったなんて、尾田は全然教えてくれなかった。彼にとって、さも当然だからなのだろうか。
「で、不思議なのは、アヤさんがあんたの名前を知らないのに、尾田くんにちゃんとあんたのことだって伝えられたことよ。何て言ったんですか?」
「えっと…、どんな死神ですかってきかれたから、身長がこれくらいで」片手で高さを示す。「かわいらしい女の子で、…自称イケメン?と」
「「……😐😑」」
「いやっ、名推理‼︎👏あの野郎、グッジョブだぜ」
「いやいや、あんたしか当てはまんないから」
「え?そう?」
2人のやり取りを見て、思わず笑ってしまうアヤ。
「むー、また笑われた。それで?その後は?」
「後?尾田くんが市丸隊長に報告して、市丸隊長はすぐに穿界門を開ける手配をしたの。通行の認証が来た直後で、ようやく技術開発局から応援要請が届いてね、それで、あんたが中級大虚に襲われてるってみんな知ったの。どうするどうするってなってる中、市丸隊長が単身で救助に向かわれた。それは覚えてるでしょ?」
「うん。隊長が助けてくれた」
「そう。そこからも大変でね。市丸隊長があんたを抱えて、四番隊に直行。治療が済んでも、意識不明でいつ起きるかわからない。それだけでも心労なのに、あんたが抜けた穴を1日前倒しで次の担当者が入って、念のためにもう1人増員して派遣、その人で空いた穴をまたみんなで仕事割り振って、業務振り分けの練り直しよ、それを短時間で整えて、ほんっとにドタバタだったって。あんたがぐーすか寝てる傍ら、三番隊の人たちは一晩中起きてたんだから。まぁ、心配で眠れないのもあっただろうけど。今頃、あの同期たちは早々に寝てるんじゃない?」
「そうだったんだ」
自分が倒れていた間の出来事を知って、改めて李空の言葉が甦る。
(ぼくは生かされてる…)
そして、口をきゅっと結んで、アヤに抱きついた。
「ぼくを助けてくれて、ありがとうございました。…やっぱりアヤさんは優しい人ですね。また命を救ってくれましたから」
美沙にも手を伸ばして、彼女の手を取った。
「美沙ちゃんもありがとう」
「あたしは大したことしてない。ただなつみが帰ってこられるように、祈ってただけだもん…」なつみの手を握る手に、ぎゅっと力を込める。「戸隠くんが教えてくれたの。星に祈ると叶うよって。そんなタイプに見えないのにね。でも、そうした。あたしには、それしかできなかったから」
李空にもお礼言わなきゃ…。
「ありがとう。神様に想いが届いたんだよ。充分だよ」
「あたしだけじゃない。アヤさんも願ってたでしょう?」
「はい」柔らかい笑顔で答える。「だって、私の心を救ってくれた大切な人だから。どうか無事でいてくださいって、ずっと思ってました」
もう嬉しくて、あったかい気持ちでいっぱいになって、微笑みに涙が流れていった。
「ぼくは、ここにいて良いんだ…」
何で突然そんなことを、と思う美沙とアヤは顔を見合わせたが、美沙が語気を強めて、後押ししてくれた。
「当たり前でしょ⁉︎あんたがいない世界なんて、絶対つまんないに決まってるもん。あんたがいなきゃ、みんな笑い方忘れちゃうって!いて良いじゃなくて、いてくれなきゃ、困るのよ」
「うぅぅ🥺美沙ちゃーん、好きー!大好きー!」
「あたしもなつみが好きー!愛してるー!」
なつみと美沙がバシャーンとお湯しぶきを上げて抱き合った。大いに笑い声をこだまさせながら。
「よかったね、なつみちゃん」
アヤにも2人の幸せが伝わってきた。しばらく仲良しな女の子たちを見て微笑んでいると、お湯しぶきがこちらにも飛んできた。
「アヤさんのことも好きー!」
「大好きー!」
「キャー⁉︎(笑)」
3人はキャッキャッと賑やかにくっつき合って、悲しみを知らないように笑った。
すると、テンション上がって血流が良くなったか、なつみがフラフラしてきた。
「うにゅにゅ、のぼせてきたかも」
「あぁ!大丈夫⁉︎出よう!すぐ出よう!」
「手伝いますっ。なつみちゃん、しっかり!」
なつみは2人に支えられて脱衣所へ。
「お世話かけますぅ😣💦」
「ほんとよ!」
「体冷やさなきゃ。何か飲み物あります?」
「コーヒー牛乳みんなで飲もぉ🌀🌀」
「はいはい、買ってあげるから、体拭いて!」
「うぃ〜」
「なつみちゃんといると、ちょっぴり大変だけど、すっごく楽しいね😊」
「それほどでもぉ〜」
出会って間もないが、アヤにもなつみの存在がかけがえのないものだと感じられていた。だったら、なつみと仲良くしている人たちにしたら、この子を失うことは、絶望の淵に陥ることと同意だったかもしれない。自分がしたことに、こんなにも価値を見出せたことがあっただろうか。なつみのいる、優しさでつながった世界でなら、あの苦しみに襲われることは無いように思われた。でも、なつみにもあの苦しみを少しだけ見てしまった。ならば、自分がこの子の笑顔を護れるように、これからの時間を過ごしていこう、と決心に似たひらめきを見つけられたアヤだった。
「本当にお疲れ様、木之本くん。よく頑張ったね」
「ありがとうございます。なんとか帰ってこれました」
「すごく心配したけど、木之本くんなら大丈夫だって、信じてたよ。はぁ、一安心ですね、隊長」
「ほんまやねぇ」
「早速なんだけど、木之本くん、報告書を1週間で仕上げて欲しいんだ。できるかな?」
「こら、イヅル。たった今帰ってきたばっかりやのに、もう仕事の話なんて、なつみちゃんがかわいそうやろ」
「ですが、非常事態だっただけに、最終日のデータを早く出して欲しいと技術開発局から催促されてるんです」
「だっ、大丈夫ですよ!戦闘訓練にしばらく参加できない分、時間はありますから」
「そうなんだね。ごめんね。よろしく頼むよ」
「はい」
隊舎を出ると、走っちゃいけないと言われているため、始解をして、50mテレポートをぴょんぴょんし、屋根の上を近道で五番隊へ。
「おいしょー!」
Yの字でビシッと着地。久しぶりの我が家だ。すーっと大きく息を吸う。
「美沙ちゃーんッ‼︎ただいまーッ‼︎‼︎」
近所迷惑この上ない声量だった。すると、ドタドタドタッと宿舎の中から足音がして、ノンストップでアタック。
「おかえり、なつみーーーッ‼︎‼︎」
「うわぁ⁉︎ 美沙ちゃん、裸足じゃんっ」
玄関からそのままなつみに飛びついた美沙は、ぎゅぅーっと親友を抱きしめた。
「よかったぁ…。ちゃんと帰ってきた。なつみー」
ほんわかしたなつみの香りに安心して、ちょっぴり涙が浮かぶ。
「ただいま、美沙ちゃん。心配してくれたんだね。ありがとう」
「当たり前でしょ」
ちょっと体を離して、お互いの顔を確認して、笑い合う。
「泣くことないじゃん、美沙ちゃん」
「うるさい。勝手に出るんだから、しょうがないでしょ」
「中入ろうよ。足痛いでしょ?(笑)」
「うん(笑)」
部屋に届いていた荷物の中身をざっと確認してから、流魂街へお出かけの準備。美沙と2人で、ご飯を食べに行くつもり。その後で、銭湯に行って、コーヒー牛乳を飲んで、お部屋戻って、ぐっすり!という完璧なプランを立てた。
「ねぇ、デザートにアップルパイ食べたい」
「え〜、アイス食べようよ」
「わかった!両方あるとこ行って、シェアしよう」
「そうしよう😁」
仲良しコンビは、ケタケタ笑いながら会えなかった1ヶ月間に何があったか話した。
「パンツッ…。絶対あり得ないから!(笑)」
「絶対忘れん!この失敗、絶対忘れん!でもみんなは、絶対忘れてくれーッ‼︎」
お腹も心も満たされた後は、お風呂に浸かって疲れを洗い流しましょう。
「でっかいお風呂久しぶりー!」
「あたしも、あんたと来て以来だわ」
「何で〜?ひとりでも来たら良いじゃん」
「そうなんだけどね」
脱衣所を抜けて、洗い場へ。2人並んで座った。美沙が左、なつみが右。
「ちょおー、この石鹸の匂いがめっちゃ懐かしい✨」
「いちいち感動するのね」
「だって好きだもーん」
なつみの右にもお客さんがいた。髪の毛を洗って、シャワーを止める。そして、左の方で何かに気づいた。
「死神さん⁉︎」
「はい?」「ほぇ?」
死神さんたちは右を見る。小さい方の死神さんだけ気づいた。
「アヤさん⁉︎」
「やっぱり死神さんだー‼︎」
シャンプーで泡立てたついでに、髪でピョンと角を作って、「ねぇねぇ、見てみて、キューピーさん!👼」とボケかましたろうとした矢先のビッグハグ。
「うぉうっ!」
「よかったぁ。助かってたんですね!」
「こんなところで会えるなんて、偶然ですねっ」
シャシャッと髪をとかして角を隠す。
「なつみ、その人誰」
「ぼくが最後に魂葬した人だよ」
「あぁ!その節は、この子がお世話になりました!」
「ど、どうも…」
ゆっくり優しくアヤの体を離してあげる。
「とりあえず!体、洗いましょう!」
湯船に浸かって、うーんと伸びをする。
「ぐひゃ〜、いい湯じゃのぉ〜♨️」
「てか、よく自己紹介もしてなかったのに、あんたがピンチだって伝わったわね」
「ほんとだよぉ〜」
お湯が気持ちよくて、なつみは溶けんばかりのくつろぎ様。
「ん?どゆこと?」
ノリで同感の意を示したが、正直何のこっちゃであった。
「そこにいるアヤさんが、あんたが虚に襲われてるって、知らせてくれたのよ、尾田くんに」
「尾田に?」
ますます何のこっちゃ。なので、アヤが説明してくれた。
「魂葬の直前で、なつみちゃんの後ろに怪物が現れたのが見えたの。腕を振り上げてて。だから、襲われちゃうと思ったんだけど、気づいたら、もうこっちに来てて。それで、通りかかった人たちに『死神さんが怪物に襲われて大変です!』って言って、助けを呼んでほしいって頼んだんだけど、大丈夫って言われるだけで、誰も相手してくれなくて」
「そこに、たまたまその地区を巡回してた尾田くんが居合わせて、アヤさんの話を聞いてあげたわけ。本当に運が良かったの。尾田くんじゃなかったらって思うと、ゾッとする」
ちょっと腑に落ちない。
「技術開発局から連絡があったはずじゃないの?」
「あった。あったけど、すごく遅かったの。あの虚は霊圧を消して動いてたみたいで、察知できなかったんだって。攻撃のときには霊圧が出てたらしいけど、断続的で、気づきにくかったそうよ」
「ほぉ…。確かに、ぼくも全く反応できなかったもんな」
「たぶん、尾田くんはその点に引っかかって、すぐに市丸隊長に報告したんだと思う。なつみなら、もっと余裕を持って戦うはずだから、そんなに敵を引きつけるはずがないって、何かが本当に起きたのかもしれないってね」
「あいつ…、後でお礼言ってやらなきゃ」
そんなことがあったなんて、尾田は全然教えてくれなかった。彼にとって、さも当然だからなのだろうか。
「で、不思議なのは、アヤさんがあんたの名前を知らないのに、尾田くんにちゃんとあんたのことだって伝えられたことよ。何て言ったんですか?」
「えっと…、どんな死神ですかってきかれたから、身長がこれくらいで」片手で高さを示す。「かわいらしい女の子で、…自称イケメン?と」
「「……😐😑」」
「いやっ、名推理‼︎👏あの野郎、グッジョブだぜ」
「いやいや、あんたしか当てはまんないから」
「え?そう?」
2人のやり取りを見て、思わず笑ってしまうアヤ。
「むー、また笑われた。それで?その後は?」
「後?尾田くんが市丸隊長に報告して、市丸隊長はすぐに穿界門を開ける手配をしたの。通行の認証が来た直後で、ようやく技術開発局から応援要請が届いてね、それで、あんたが中級大虚に襲われてるってみんな知ったの。どうするどうするってなってる中、市丸隊長が単身で救助に向かわれた。それは覚えてるでしょ?」
「うん。隊長が助けてくれた」
「そう。そこからも大変でね。市丸隊長があんたを抱えて、四番隊に直行。治療が済んでも、意識不明でいつ起きるかわからない。それだけでも心労なのに、あんたが抜けた穴を1日前倒しで次の担当者が入って、念のためにもう1人増員して派遣、その人で空いた穴をまたみんなで仕事割り振って、業務振り分けの練り直しよ、それを短時間で整えて、ほんっとにドタバタだったって。あんたがぐーすか寝てる傍ら、三番隊の人たちは一晩中起きてたんだから。まぁ、心配で眠れないのもあっただろうけど。今頃、あの同期たちは早々に寝てるんじゃない?」
「そうだったんだ」
自分が倒れていた間の出来事を知って、改めて李空の言葉が甦る。
(ぼくは生かされてる…)
そして、口をきゅっと結んで、アヤに抱きついた。
「ぼくを助けてくれて、ありがとうございました。…やっぱりアヤさんは優しい人ですね。また命を救ってくれましたから」
美沙にも手を伸ばして、彼女の手を取った。
「美沙ちゃんもありがとう」
「あたしは大したことしてない。ただなつみが帰ってこられるように、祈ってただけだもん…」なつみの手を握る手に、ぎゅっと力を込める。「戸隠くんが教えてくれたの。星に祈ると叶うよって。そんなタイプに見えないのにね。でも、そうした。あたしには、それしかできなかったから」
李空にもお礼言わなきゃ…。
「ありがとう。神様に想いが届いたんだよ。充分だよ」
「あたしだけじゃない。アヤさんも願ってたでしょう?」
「はい」柔らかい笑顔で答える。「だって、私の心を救ってくれた大切な人だから。どうか無事でいてくださいって、ずっと思ってました」
もう嬉しくて、あったかい気持ちでいっぱいになって、微笑みに涙が流れていった。
「ぼくは、ここにいて良いんだ…」
何で突然そんなことを、と思う美沙とアヤは顔を見合わせたが、美沙が語気を強めて、後押ししてくれた。
「当たり前でしょ⁉︎あんたがいない世界なんて、絶対つまんないに決まってるもん。あんたがいなきゃ、みんな笑い方忘れちゃうって!いて良いじゃなくて、いてくれなきゃ、困るのよ」
「うぅぅ🥺美沙ちゃーん、好きー!大好きー!」
「あたしもなつみが好きー!愛してるー!」
なつみと美沙がバシャーンとお湯しぶきを上げて抱き合った。大いに笑い声をこだまさせながら。
「よかったね、なつみちゃん」
アヤにも2人の幸せが伝わってきた。しばらく仲良しな女の子たちを見て微笑んでいると、お湯しぶきがこちらにも飛んできた。
「アヤさんのことも好きー!」
「大好きー!」
「キャー⁉︎(笑)」
3人はキャッキャッと賑やかにくっつき合って、悲しみを知らないように笑った。
すると、テンション上がって血流が良くなったか、なつみがフラフラしてきた。
「うにゅにゅ、のぼせてきたかも」
「あぁ!大丈夫⁉︎出よう!すぐ出よう!」
「手伝いますっ。なつみちゃん、しっかり!」
なつみは2人に支えられて脱衣所へ。
「お世話かけますぅ😣💦」
「ほんとよ!」
「体冷やさなきゃ。何か飲み物あります?」
「コーヒー牛乳みんなで飲もぉ🌀🌀」
「はいはい、買ってあげるから、体拭いて!」
「うぃ〜」
「なつみちゃんといると、ちょっぴり大変だけど、すっごく楽しいね😊」
「それほどでもぉ〜」
出会って間もないが、アヤにもなつみの存在がかけがえのないものだと感じられていた。だったら、なつみと仲良くしている人たちにしたら、この子を失うことは、絶望の淵に陥ることと同意だったかもしれない。自分がしたことに、こんなにも価値を見出せたことがあっただろうか。なつみのいる、優しさでつながった世界でなら、あの苦しみに襲われることは無いように思われた。でも、なつみにもあの苦しみを少しだけ見てしまった。ならば、自分がこの子の笑顔を護れるように、これからの時間を過ごしていこう、と決心に似たひらめきを見つけられたアヤだった。