第一章
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入隊してから半年と経つと、なつみは隊士としての成長を見せていた。三番隊での同期は男のみで、初めは一人でいることが多かったが、徐々にその輪に溶け込むようになり、早朝の自主的な戦闘訓練も、彼らと共に毎日行った。力の差はまだ目に見えるほどではない。しかし、意外なことになつみがその中で最も優れた能力を持っているように思われた。
「ターッ!」
カーンと木刀同士が当たる乾いた音が朝日の射す道場に響いて、その後カランカランと男の木刀だけが床に転がった。
「イッテー…、手首捻っちまったよ」
握っていた木刀を飛ばされた勢いで捻った手首をぶらぶらさせ、男はしかめ面を向けた。
「悪い、尾田。冷やした方が良いか?」
落ちた木刀を拾い上げ、なつみは心配そうに尾田と呼ぶ男の顔を見上げる。
「そんなにヒドかねぇよ。大丈夫だ」
そう言って、なつみから木刀を受け取る。
「チビのくせして強ぇよな、木之本って!てか、尾田が弱いだけ?」
「うっせ!俺は、今日調子悪いだけだ」
なつみと尾田の稽古を見ていた周りの仲間が、負けた尾田を茶化す。
「腹減った!朝練はこんなもんにして、さっさと飯食いに行くぞ!」
仲間の態度が気に食わなかったのか、尾田はドスドスと足音をたて道場を出て行く。
「まぁまぁ、そう怒んなさんなってぇ(笑)。木之本も行こうぜ。早く早く」
「おう!」
仲間たちに手招きされて、なつみは笑顔で答え駆け寄る。この年、同隊に入隊したのは7人。毎朝仲良く汗をかいた後、食堂へ行くのであった。6人の男友達の中、1人女子であるなつみだが、見た目がそうであるだけで、態度はすっかり7人目の男子になっていた。
死神5年目に突入すると、斬魄刀を始解させようとみんな躍起になっていた。それまで斬拳走鬼を鍛えるために、朝の道場でうるさく音をたてていたが、このときには各々斬魄刀と向かい合おうと、静かに外で瞑想していることが多くなった。
「ぼくの斬魄刀。名前は何……」
「私の名は…し」
なつみは微かな声を聞いた。あともう少しだと、彼女は確信した。
しかし、一番乗りはなつみではなく、尾田であった。それに続けと他の5人も始解を修得した。戦闘の力はこの中の誰よりもあるなつみだったが、始解は誰よりも遅かった。何が原因なのか、悩む日が続く。虚の昇華・滅却は順調にいっていた。魂葬も問題無い。死神としての仕事はこなせていた。なのに、あと一歩足りず、なつみは昇進できない。いつまでも下級死神扱い。
それから1年は悩みぬいていただろう。時が過ぎるのは早い。始解ができるできないとで、こんなにも差が開くものかとなつみは痛感していた。尾田ら仲間たちはめきめきと力を付けていき、難しい仕事も任されるようになっていた。彼らはそうは思っていなかっただろうが、なつみは思っていた。これは自分が女だからなのだろうと。7人は変わらず一緒にいる時間を過ごしていたが、どうしたって新人のときのような明るさは無かった。そこで尾田が隊長である市丸に相談することにした。
尾田はまっすぐに執務室に向かったが、市丸の姿は無かった。その頃には副隊長となっていたイヅルに話を聞くと、市丸はいつもの散歩に出かけているという。
「見つかるといいが。会えるだろうか」
市丸の散歩コースは決まっていない。彼の心持で毎回違う。どこを歩いているのかは、その日次第なのだ。尾田はとりあえず外に出て、すれ違う人に市丸を見かけなかったかときいてみた。しかしどれだけきいても、みな見ていないと答えるばかり。
「どこにいるんだ、市丸隊長」
そう小さくため息をついた途端、後ろから急に肩を叩かれた。
トントン。
「尾田クン。ボクのこと探してるんやて?」
「うわッ!!」
この辺には絶対にいないと決め付けて油断していた矢先、その当人に声をかけられ、尾田は全身に鳥肌が走った。そして振り返った。
「どこにいたんですか、隊長!?」
「どこて、ずっとキミの後ろ歩いてたやん♪」
(これが隊長得意の意地悪かッ……)
市丸の返事に返す言葉が無い尾田。
「そんな怖い顔して怒らんといてーな。ボクに用事って何?」
自分を取り返そうと咳払いを一つし、尾田は話した。
「ゴホンッ。その…、木之本のことなのですが」
「なつみちゃん?どうかしたん」
「あいつ、始解ができないことにずっと悩んでいるじゃないですか」
「んー…、せやねぇ」
「俺たちよりも実力あるはずなのに、自信を無くしているというか」
「元気ないよね」
「そうなんです。いっしょにいて、見ていて辛いんですよ。俺たちでも、あいつを元気づけようと色々してはいるんですけど、それじゃ足りないらしくて……。隊長からも、何かしてやってもらえないでしょうか」
「友達想いやねぇ、尾田クン。確かに、なつみちゃんのニカーってした笑顔、久しく見てへんもんなぁ。寂しいわなぁ。ふーん。でも、こればっかりは本人のがんばり次第やしなぁ」
「それはもちろんですけど」
尾田はうなだれるように視線を落とした。
「んまぁ、かわいいなつみちゃんのためやし。何かしてみよか」
腕組みをしてうんうんと頷きながら市丸はそう言った。
「隊長ッ…!ありがとうございます!」
頭を下げて感謝する尾田。
「ええて。ボク、キミらの隊長やし。部下のために動くんが、ボクの仕事やから当然や」
その言葉に涙しそうなほど感動した尾田だったが、次の言葉にはうまく反応できなかった。
「なつみちゃんが泣いてしまうかもしれんようなことするから、尾田クンは黙って待っとき」
市丸の笑顔にたくさんの影が見えたような気がして、尾田は固まった。
(何をする気ですかぁッ、あなたは……!)
「ターッ!」
カーンと木刀同士が当たる乾いた音が朝日の射す道場に響いて、その後カランカランと男の木刀だけが床に転がった。
「イッテー…、手首捻っちまったよ」
握っていた木刀を飛ばされた勢いで捻った手首をぶらぶらさせ、男はしかめ面を向けた。
「悪い、尾田。冷やした方が良いか?」
落ちた木刀を拾い上げ、なつみは心配そうに尾田と呼ぶ男の顔を見上げる。
「そんなにヒドかねぇよ。大丈夫だ」
そう言って、なつみから木刀を受け取る。
「チビのくせして強ぇよな、木之本って!てか、尾田が弱いだけ?」
「うっせ!俺は、今日調子悪いだけだ」
なつみと尾田の稽古を見ていた周りの仲間が、負けた尾田を茶化す。
「腹減った!朝練はこんなもんにして、さっさと飯食いに行くぞ!」
仲間の態度が気に食わなかったのか、尾田はドスドスと足音をたて道場を出て行く。
「まぁまぁ、そう怒んなさんなってぇ(笑)。木之本も行こうぜ。早く早く」
「おう!」
仲間たちに手招きされて、なつみは笑顔で答え駆け寄る。この年、同隊に入隊したのは7人。毎朝仲良く汗をかいた後、食堂へ行くのであった。6人の男友達の中、1人女子であるなつみだが、見た目がそうであるだけで、態度はすっかり7人目の男子になっていた。
死神5年目に突入すると、斬魄刀を始解させようとみんな躍起になっていた。それまで斬拳走鬼を鍛えるために、朝の道場でうるさく音をたてていたが、このときには各々斬魄刀と向かい合おうと、静かに外で瞑想していることが多くなった。
「ぼくの斬魄刀。名前は何……」
「私の名は…し」
なつみは微かな声を聞いた。あともう少しだと、彼女は確信した。
しかし、一番乗りはなつみではなく、尾田であった。それに続けと他の5人も始解を修得した。戦闘の力はこの中の誰よりもあるなつみだったが、始解は誰よりも遅かった。何が原因なのか、悩む日が続く。虚の昇華・滅却は順調にいっていた。魂葬も問題無い。死神としての仕事はこなせていた。なのに、あと一歩足りず、なつみは昇進できない。いつまでも下級死神扱い。
それから1年は悩みぬいていただろう。時が過ぎるのは早い。始解ができるできないとで、こんなにも差が開くものかとなつみは痛感していた。尾田ら仲間たちはめきめきと力を付けていき、難しい仕事も任されるようになっていた。彼らはそうは思っていなかっただろうが、なつみは思っていた。これは自分が女だからなのだろうと。7人は変わらず一緒にいる時間を過ごしていたが、どうしたって新人のときのような明るさは無かった。そこで尾田が隊長である市丸に相談することにした。
尾田はまっすぐに執務室に向かったが、市丸の姿は無かった。その頃には副隊長となっていたイヅルに話を聞くと、市丸はいつもの散歩に出かけているという。
「見つかるといいが。会えるだろうか」
市丸の散歩コースは決まっていない。彼の心持で毎回違う。どこを歩いているのかは、その日次第なのだ。尾田はとりあえず外に出て、すれ違う人に市丸を見かけなかったかときいてみた。しかしどれだけきいても、みな見ていないと答えるばかり。
「どこにいるんだ、市丸隊長」
そう小さくため息をついた途端、後ろから急に肩を叩かれた。
トントン。
「尾田クン。ボクのこと探してるんやて?」
「うわッ!!」
この辺には絶対にいないと決め付けて油断していた矢先、その当人に声をかけられ、尾田は全身に鳥肌が走った。そして振り返った。
「どこにいたんですか、隊長!?」
「どこて、ずっとキミの後ろ歩いてたやん♪」
(これが隊長得意の意地悪かッ……)
市丸の返事に返す言葉が無い尾田。
「そんな怖い顔して怒らんといてーな。ボクに用事って何?」
自分を取り返そうと咳払いを一つし、尾田は話した。
「ゴホンッ。その…、木之本のことなのですが」
「なつみちゃん?どうかしたん」
「あいつ、始解ができないことにずっと悩んでいるじゃないですか」
「んー…、せやねぇ」
「俺たちよりも実力あるはずなのに、自信を無くしているというか」
「元気ないよね」
「そうなんです。いっしょにいて、見ていて辛いんですよ。俺たちでも、あいつを元気づけようと色々してはいるんですけど、それじゃ足りないらしくて……。隊長からも、何かしてやってもらえないでしょうか」
「友達想いやねぇ、尾田クン。確かに、なつみちゃんのニカーってした笑顔、久しく見てへんもんなぁ。寂しいわなぁ。ふーん。でも、こればっかりは本人のがんばり次第やしなぁ」
「それはもちろんですけど」
尾田はうなだれるように視線を落とした。
「んまぁ、かわいいなつみちゃんのためやし。何かしてみよか」
腕組みをしてうんうんと頷きながら市丸はそう言った。
「隊長ッ…!ありがとうございます!」
頭を下げて感謝する尾田。
「ええて。ボク、キミらの隊長やし。部下のために動くんが、ボクの仕事やから当然や」
その言葉に涙しそうなほど感動した尾田だったが、次の言葉にはうまく反応できなかった。
「なつみちゃんが泣いてしまうかもしれんようなことするから、尾田クンは黙って待っとき」
市丸の笑顔にたくさんの影が見えたような気がして、尾田は固まった。
(何をする気ですかぁッ、あなたは……!)