第一章
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なつみはプレートを「います」から「お留守」にひっくり返した。
「行きましょう!」すっかり無敵スマイルが戻っている。「こちらです!」
腕をピンと伸ばして階段へ導くなつみを見て、クスクス笑ってしまう。
「はいはい。ついていきますよぉ(笑)」
なつみが先行して階段を降り始め、踊り場に先に着くと振り返った。ちょっとムスッとして。
「京楽隊長、先降りてください」
「えっ…?何で?(笑)」
「身長差がエグいっす!」
「あっはははは!そっかそっか。わかった。先に降りるよ」
立ち止まるなつみの頭をぽんぽん撫でてから、次の段に降りていく京楽。数段進んでいったが、なつみはまだ立ち止まったまま。
「今度はどうしたの?(笑)」
「やっと目線の高さ同じくらいです」
なつみは自分の頭のてっぺんに手を置いてから、そのままの高さで水平にクイックイッと自分と京楽の間を前後させて比べた。
「めっちゃ遠いっす」
へへっと笑って降りてくる。
「なになに〜?チューしたくなっちゃった?」
「何でそうなるんですか!///」
「油断大敵。キミには前科があるからね。無断でボクの唇を奪おうとした」
「わー!もうっ、勘弁してくださいよ!あれはわざとじゃないですから、ぼくは無実ですよ」
そう言って、結局京楽より先に階段を駆け降りていったなつみは、赤くなってぷんぷんしている顔を見られないようにしたいようだ。
「ねぇ、なつみちゃん」なのに京楽は意地悪をする。「あんなにボクの写真持ってるならさ、あれは持ってるの?」
「その話もしないでくださいよ。あれって何ですか」
「耳貸して」
文句を垂れつつも、ちゃんと立ち止まって耳を傾けるなつみが聞かされた言葉に、「むきゅっ‼︎‼︎」っと驚いた。
「も、も、持ってないですよ‼︎」
「そうなんだ。欲しい?」
「ンー!ンー!」と唸りながら、ものすごく悩む。(あれは、存在自体も都市伝説化している代物。実在すると知ったならば、自らの手で入手したいが、これは甘えるべきなのか⁉︎くそぅ!今日はどうしてこうも選択に迫られるんだ‼︎)「ンー!」
「わかったよ(笑)欲しいってことね」
「ホシーデスッ‼︎‼︎」
うきゃー💖と、手で顔を隠しながらその場でくねくねして、照れて照れて仕方がない。
「まったく…。そんなにボクのこと好きって言ってくれるのに、一世一代のプロポーズをフッちゃうんだもんなぁ。ガッカリだよ」
「そんな、プロポーズだなんて大袈裟な」
「ボクは本気だよ。キミのことが欲しいんだ」
再び歩き出す京楽の後ろを慌ててついていく。
「とっても嬉しいです。そう言っていただけて。他の隊からお誘いをいただけるなんて、光栄なことですから!ぼくもようやく一人前の死神になれた気分です!今は、二十席になったばかりなので、すぐに異動という決断ができなくて、お断りさせていただきますが、またいつかお声がけいただければ、その時はきっとお受けしますよ!」
「きっと…か。ねぇ、断る理由は本当にそれだけ?」
「えっと…、はい」
「じゃあ、3ヶ月後に誘えば来てくれるってこと?」
「うっ、それは、ちょっと…」
「なら、半年」
「そんな急には…」
「1年後?」
「あの、その…」
「何年待てば良いのかな?」
「……すみません。…わかりません」
下唇を噛んで、うまく気の利いた答えを言えなくてしょんぼりする。
「なつみちゃんはさ、もしかして、誰かのためにここに残りたいんじゃない?」
「ほえ…」とした顔になり、思いを巡らせるなつみ。そう言われると、そうなのかもしれない…。確かに、長年所属して、離れ難くなっているところがある。ずっと家族のように連れ添ってきた仲間たちがいるから。
「そ、そうですね。ぼくがいなくなったら、あいつらが寂しがるんじゃないかって思ってるのかもしれないですね」
でも何かが違う気がする。それだけではない何か。
「キミは市丸隊長と一緒にいたいんだろ?」
驚いて、パッと京楽の顔を見上げるなつみ。それ、だ……。
「好きなんだろう?彼のことが。特別な感情で」
「あのっ…、えっと、そう言われると」どうしてこの人は、こんなにもいろんなことに気づけるんだろう。自分でさえも気づけなかったのに。でも一度大事な結論に気づくと、それを導いた事象や想いがどんどん見えてくる。「…そう、ですね。はい///」
コクンと頷く。
「でも不思議だなぁ。市丸隊長のことが大好きなのに、ボクのことも好きだなんて。なつみちゃん、浮気は良くないよ」
「う、浮気じゃないですッ!それははっきり言えます!不思議なことなんかイッコも無いです!(というか、京楽隊長に浮気ダメって言われたくないです)」
「おや…、珍しく強気だね」
フゥゥン!😤と鼻から息を吐いて、ちょっと興奮気味のご様子のなつみちゃん。
「浮気じゃないって、どうして言えるのかな?」
「好きの種類が違います!全ッ然違います!」
「ふーん、どう違うの?」
「京楽隊長には憧れを抱いています。強くてかっこよくて、みんなから頼られてかっこいいので、ぼく、京楽隊長みたいな立派な死神になりたいって思ってるんですよ!そう!京楽隊長はぼくにとって目標なんです!京楽隊長のことを知れば知るほど、そう思うんです!尊敬です!」
「そう?ありがとう。あの写真を見ながらそう思えるなんて、なつみちゃんは器用だね」
「むぅ!意地悪なとこはちょっとイヤです」
来客用の入り口に着くと、なつみはツンケンしながら言った。
「ぼくは別のところに草鞋を置いているので、そちらに向かいます。京楽隊長はこちらで少々お待ちください」
「はーい」
パタパタと駆けていくなつみの足音が遠のく。京楽は草鞋を履きつつ、考え事。
(憧れに、目標ね。ボクはそれじゃ満足しないんだけどなぁ…。あの態度って、わざとなんだろうか)
戸口を抜けて、なつみが駆けてくるだろう方角に少し歩いてみる。
「わ!びっくりしたぁ」
「待っててくださいって言ったのに」
なつみは突然京楽の前に姿を現した。
「さっそく始解をやっちゃったわけだ」
「待たせてはいけないと思いまして。瞬間移動は良いですよ。瞬歩と違って疲れませんから。でも、着地地点に障害物が無いか確認しないといけないので、見えるところしか行けないんですよね。門はあちらです。行きましょう」
横に並んで歩く2人。
「さっきの続き。市丸隊長への好きはどんな感じなの?」
「市丸隊長にはですね、もちろん尊敬もありますよ。でもそれだけじゃないんです。みんなは隊長として、市丸隊長を慕って、好きって思ってると思うんですけど。ぼくはもっと違う気持ちがあって。うーん、例えるなら、…そう!お兄ちゃんって感じですかね!」
「お兄ちゃん?」
「そうです、そうです。いつも優しく見守ってくれて、助けてくれて、たまにちょっかい出されたりして、ぼくは家族を持ったことがないので、実際は違うかもしれませんが、ぼくにもしお兄ちゃんがいたとしたら、きっと市丸隊長みたいな人なんだろうなって思いますよ。そんな風に思ってるので、特別に好きって言えますよね」
「そうだね。恋ではないんだ」
「違いますよ‼︎あるわけないじゃないですか、そんなもん!」
「そんなもん(笑)」
「すいません。思わず(焦)」
「良いよ。それで?市丸ギンお兄ちゃんと離れられない理由は何だって言うの?」
「それはですね…。言って良いのかな。まぁ、ぼくの気のせいかもしれないからいっか。市丸隊長はいつもにこやかじゃないですか。でもときどきふとした時に、とっても寂しそうなお顔をされてるのを見るんです。ぼくはペーペーじゃないですか。だから、どうかされましたかなんて、偉そうにきくことできなくて。他の人たちは気にもしてないようなので、ぼくの勘違いかもしれないんですけど。でも、野生の勘が働いて、気になってしまって。どうしたら、隊長の悩みを解決できるのかわからないし、自分が助けになるのかもわかりませんが、とりあえず隊長のそばにいれば、何かしらの役に立てるかもしれないと思っているんです。ぼくの大事な人のためですから。ぼくしか気づいていないならなおのこと、ぼくがご一緒しなきゃいけないじゃないですか!だからぼくは、三番隊にいたいんですよね」
「なるほど…。家族みたいに大事な人のためか。わかるよ、その気持ち」
「ほんとですか」
「うん」
「あ…、なんとなくどなたのことか想像できますよ」
「そうかい?」
「はい!間違ってると失礼に当たるので、言わないですけど」
「ふふ、たぶんキミの予想は当たってるよ」
「え⁉︎……いやいや、まぁまぁ、京楽隊長のお話は置いといて」
「あらら、横に置かれちゃった」
「つ、つまりですよ!京楽隊長への好きは憧れで、市丸隊長への好きは兄弟愛ですよ!」右手に憧れ、左手に兄弟愛を掲げる。「別物です!」
右手の憧れに自分の左手をそっと重ねる京楽。
「ほんとだね。全然違う」
恥ずかしくなり、きゅっと伸ばした腕を胸のところまで引っ込めるなつみ。
「京楽隊長はすごい方ですよね。何でもお気づきになるので、それにつられて、ぼく、心の奥に溜めていた想いを全部吐き出せたみたいです。スッキリしました。たくさんお話しできて今日良かったです。お起こしいただいて、本当にありがとうございました」
2人は隊舎の門に着いていた。
「どういたしまして。なつみちゃんのためなら、お悩み相談なんてお安い御用だからね」
なつみははにかんで嬉しそうに笑った。
「京楽隊長はやっぱ『イイ男』っスね!イケメンっス!」
お腹を抱えてクククッと笑う彼女を見て、少し呆れてしまう京楽。
「なつみちゃん、ひとつ宿題を出しても良いかな?」
「宿題、ですか?」
「今日なつみちゃんは、自分の本当の気持ちをボクたちに伝えられたよね。でもボクから見ると、まだキミが気づいていないもうひとつ大事なことがあるんだ。それを見つけてごらん。見つかったら、ボクのところにおいで」
そう言うと、なつみの片方のほっぺを指の背で撫でてやった。もしくはただの自惚れなのだろうかと思いつつ。
「覚えておきます」
少々戸惑いつつも、なつみはそう答えた。
「よろしく。じゃあ、帰るよ。バイバイ、なつみちゃん」
「はい!貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。お気をつけて、お帰りください!」
なつみは一礼してから、両手を振ってお別れの挨拶をした。3歩進んだ京楽は振り返る。
「なつみちゃん、思い切り自由に生きてごらん。ボクがついててあげるから、自信を持って!」
この言葉に乗って、トキメキがなつみの全身を駆け巡った。
「…はいッ‼︎‼︎」
嬉しさMAXに到達したなつみは、もっと大きく手を振って、去っていく京楽を見送った。
「行きましょう!」すっかり無敵スマイルが戻っている。「こちらです!」
腕をピンと伸ばして階段へ導くなつみを見て、クスクス笑ってしまう。
「はいはい。ついていきますよぉ(笑)」
なつみが先行して階段を降り始め、踊り場に先に着くと振り返った。ちょっとムスッとして。
「京楽隊長、先降りてください」
「えっ…?何で?(笑)」
「身長差がエグいっす!」
「あっはははは!そっかそっか。わかった。先に降りるよ」
立ち止まるなつみの頭をぽんぽん撫でてから、次の段に降りていく京楽。数段進んでいったが、なつみはまだ立ち止まったまま。
「今度はどうしたの?(笑)」
「やっと目線の高さ同じくらいです」
なつみは自分の頭のてっぺんに手を置いてから、そのままの高さで水平にクイックイッと自分と京楽の間を前後させて比べた。
「めっちゃ遠いっす」
へへっと笑って降りてくる。
「なになに〜?チューしたくなっちゃった?」
「何でそうなるんですか!///」
「油断大敵。キミには前科があるからね。無断でボクの唇を奪おうとした」
「わー!もうっ、勘弁してくださいよ!あれはわざとじゃないですから、ぼくは無実ですよ」
そう言って、結局京楽より先に階段を駆け降りていったなつみは、赤くなってぷんぷんしている顔を見られないようにしたいようだ。
「ねぇ、なつみちゃん」なのに京楽は意地悪をする。「あんなにボクの写真持ってるならさ、あれは持ってるの?」
「その話もしないでくださいよ。あれって何ですか」
「耳貸して」
文句を垂れつつも、ちゃんと立ち止まって耳を傾けるなつみが聞かされた言葉に、「むきゅっ‼︎‼︎」っと驚いた。
「も、も、持ってないですよ‼︎」
「そうなんだ。欲しい?」
「ンー!ンー!」と唸りながら、ものすごく悩む。(あれは、存在自体も都市伝説化している代物。実在すると知ったならば、自らの手で入手したいが、これは甘えるべきなのか⁉︎くそぅ!今日はどうしてこうも選択に迫られるんだ‼︎)「ンー!」
「わかったよ(笑)欲しいってことね」
「ホシーデスッ‼︎‼︎」
うきゃー💖と、手で顔を隠しながらその場でくねくねして、照れて照れて仕方がない。
「まったく…。そんなにボクのこと好きって言ってくれるのに、一世一代のプロポーズをフッちゃうんだもんなぁ。ガッカリだよ」
「そんな、プロポーズだなんて大袈裟な」
「ボクは本気だよ。キミのことが欲しいんだ」
再び歩き出す京楽の後ろを慌ててついていく。
「とっても嬉しいです。そう言っていただけて。他の隊からお誘いをいただけるなんて、光栄なことですから!ぼくもようやく一人前の死神になれた気分です!今は、二十席になったばかりなので、すぐに異動という決断ができなくて、お断りさせていただきますが、またいつかお声がけいただければ、その時はきっとお受けしますよ!」
「きっと…か。ねぇ、断る理由は本当にそれだけ?」
「えっと…、はい」
「じゃあ、3ヶ月後に誘えば来てくれるってこと?」
「うっ、それは、ちょっと…」
「なら、半年」
「そんな急には…」
「1年後?」
「あの、その…」
「何年待てば良いのかな?」
「……すみません。…わかりません」
下唇を噛んで、うまく気の利いた答えを言えなくてしょんぼりする。
「なつみちゃんはさ、もしかして、誰かのためにここに残りたいんじゃない?」
「ほえ…」とした顔になり、思いを巡らせるなつみ。そう言われると、そうなのかもしれない…。確かに、長年所属して、離れ難くなっているところがある。ずっと家族のように連れ添ってきた仲間たちがいるから。
「そ、そうですね。ぼくがいなくなったら、あいつらが寂しがるんじゃないかって思ってるのかもしれないですね」
でも何かが違う気がする。それだけではない何か。
「キミは市丸隊長と一緒にいたいんだろ?」
驚いて、パッと京楽の顔を見上げるなつみ。それ、だ……。
「好きなんだろう?彼のことが。特別な感情で」
「あのっ…、えっと、そう言われると」どうしてこの人は、こんなにもいろんなことに気づけるんだろう。自分でさえも気づけなかったのに。でも一度大事な結論に気づくと、それを導いた事象や想いがどんどん見えてくる。「…そう、ですね。はい///」
コクンと頷く。
「でも不思議だなぁ。市丸隊長のことが大好きなのに、ボクのことも好きだなんて。なつみちゃん、浮気は良くないよ」
「う、浮気じゃないですッ!それははっきり言えます!不思議なことなんかイッコも無いです!(というか、京楽隊長に浮気ダメって言われたくないです)」
「おや…、珍しく強気だね」
フゥゥン!😤と鼻から息を吐いて、ちょっと興奮気味のご様子のなつみちゃん。
「浮気じゃないって、どうして言えるのかな?」
「好きの種類が違います!全ッ然違います!」
「ふーん、どう違うの?」
「京楽隊長には憧れを抱いています。強くてかっこよくて、みんなから頼られてかっこいいので、ぼく、京楽隊長みたいな立派な死神になりたいって思ってるんですよ!そう!京楽隊長はぼくにとって目標なんです!京楽隊長のことを知れば知るほど、そう思うんです!尊敬です!」
「そう?ありがとう。あの写真を見ながらそう思えるなんて、なつみちゃんは器用だね」
「むぅ!意地悪なとこはちょっとイヤです」
来客用の入り口に着くと、なつみはツンケンしながら言った。
「ぼくは別のところに草鞋を置いているので、そちらに向かいます。京楽隊長はこちらで少々お待ちください」
「はーい」
パタパタと駆けていくなつみの足音が遠のく。京楽は草鞋を履きつつ、考え事。
(憧れに、目標ね。ボクはそれじゃ満足しないんだけどなぁ…。あの態度って、わざとなんだろうか)
戸口を抜けて、なつみが駆けてくるだろう方角に少し歩いてみる。
「わ!びっくりしたぁ」
「待っててくださいって言ったのに」
なつみは突然京楽の前に姿を現した。
「さっそく始解をやっちゃったわけだ」
「待たせてはいけないと思いまして。瞬間移動は良いですよ。瞬歩と違って疲れませんから。でも、着地地点に障害物が無いか確認しないといけないので、見えるところしか行けないんですよね。門はあちらです。行きましょう」
横に並んで歩く2人。
「さっきの続き。市丸隊長への好きはどんな感じなの?」
「市丸隊長にはですね、もちろん尊敬もありますよ。でもそれだけじゃないんです。みんなは隊長として、市丸隊長を慕って、好きって思ってると思うんですけど。ぼくはもっと違う気持ちがあって。うーん、例えるなら、…そう!お兄ちゃんって感じですかね!」
「お兄ちゃん?」
「そうです、そうです。いつも優しく見守ってくれて、助けてくれて、たまにちょっかい出されたりして、ぼくは家族を持ったことがないので、実際は違うかもしれませんが、ぼくにもしお兄ちゃんがいたとしたら、きっと市丸隊長みたいな人なんだろうなって思いますよ。そんな風に思ってるので、特別に好きって言えますよね」
「そうだね。恋ではないんだ」
「違いますよ‼︎あるわけないじゃないですか、そんなもん!」
「そんなもん(笑)」
「すいません。思わず(焦)」
「良いよ。それで?市丸ギンお兄ちゃんと離れられない理由は何だって言うの?」
「それはですね…。言って良いのかな。まぁ、ぼくの気のせいかもしれないからいっか。市丸隊長はいつもにこやかじゃないですか。でもときどきふとした時に、とっても寂しそうなお顔をされてるのを見るんです。ぼくはペーペーじゃないですか。だから、どうかされましたかなんて、偉そうにきくことできなくて。他の人たちは気にもしてないようなので、ぼくの勘違いかもしれないんですけど。でも、野生の勘が働いて、気になってしまって。どうしたら、隊長の悩みを解決できるのかわからないし、自分が助けになるのかもわかりませんが、とりあえず隊長のそばにいれば、何かしらの役に立てるかもしれないと思っているんです。ぼくの大事な人のためですから。ぼくしか気づいていないならなおのこと、ぼくがご一緒しなきゃいけないじゃないですか!だからぼくは、三番隊にいたいんですよね」
「なるほど…。家族みたいに大事な人のためか。わかるよ、その気持ち」
「ほんとですか」
「うん」
「あ…、なんとなくどなたのことか想像できますよ」
「そうかい?」
「はい!間違ってると失礼に当たるので、言わないですけど」
「ふふ、たぶんキミの予想は当たってるよ」
「え⁉︎……いやいや、まぁまぁ、京楽隊長のお話は置いといて」
「あらら、横に置かれちゃった」
「つ、つまりですよ!京楽隊長への好きは憧れで、市丸隊長への好きは兄弟愛ですよ!」右手に憧れ、左手に兄弟愛を掲げる。「別物です!」
右手の憧れに自分の左手をそっと重ねる京楽。
「ほんとだね。全然違う」
恥ずかしくなり、きゅっと伸ばした腕を胸のところまで引っ込めるなつみ。
「京楽隊長はすごい方ですよね。何でもお気づきになるので、それにつられて、ぼく、心の奥に溜めていた想いを全部吐き出せたみたいです。スッキリしました。たくさんお話しできて今日良かったです。お起こしいただいて、本当にありがとうございました」
2人は隊舎の門に着いていた。
「どういたしまして。なつみちゃんのためなら、お悩み相談なんてお安い御用だからね」
なつみははにかんで嬉しそうに笑った。
「京楽隊長はやっぱ『イイ男』っスね!イケメンっス!」
お腹を抱えてクククッと笑う彼女を見て、少し呆れてしまう京楽。
「なつみちゃん、ひとつ宿題を出しても良いかな?」
「宿題、ですか?」
「今日なつみちゃんは、自分の本当の気持ちをボクたちに伝えられたよね。でもボクから見ると、まだキミが気づいていないもうひとつ大事なことがあるんだ。それを見つけてごらん。見つかったら、ボクのところにおいで」
そう言うと、なつみの片方のほっぺを指の背で撫でてやった。もしくはただの自惚れなのだろうかと思いつつ。
「覚えておきます」
少々戸惑いつつも、なつみはそう答えた。
「よろしく。じゃあ、帰るよ。バイバイ、なつみちゃん」
「はい!貴重なお時間をいただき、ありがとうございました。お気をつけて、お帰りください!」
なつみは一礼してから、両手を振ってお別れの挨拶をした。3歩進んだ京楽は振り返る。
「なつみちゃん、思い切り自由に生きてごらん。ボクがついててあげるから、自信を持って!」
この言葉に乗って、トキメキがなつみの全身を駆け巡った。
「…はいッ‼︎‼︎」
嬉しさMAXに到達したなつみは、もっと大きく手を振って、去っていく京楽を見送った。