第十章
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転送された空座町へは、技術開発局にある、このレプリカ作戦でのみ使用を許されている特製のワープドアから行くことができる。阿近に、「心配かけさせやがって、この野郎」のほっぺギュウをくらいつつ、マユリに連絡を取ってもらう。
「木之本ら、8名、警備のため、空座町へ向かいたいそうです。許可しますか」
「現世の状況はどうかネ」
「見たところ最悪ですね」
((((((((‼︎⁉︎))))))))
そうなるように祈ったが、実際聞くとビックリしてしまう。あと、なつみには、普通に尸魂界と虚圏で通信できていることにもショック。
(ズルいぃッ😫)
「情けないネェ。仕方ない。行かせてやれ。他にまともに動ける者はいないんだろう?」
「局長はまだそちらに?」
「あぁ、もう少しかかりそうだヨ。全隊長の尻拭いをさせてしまって悪いネ、なつみ。私は手伝ってやれないが、奴らに勝ってきてくれ給え」
かーんたんにサラッと許可が下りた。
扉の前に通される一同。
「大丈夫。ぼくがいる」
そう呟き、踏み出していった。
空座町に入って気付いた。
「ちょっと、みんな寝てんじゃないの?起きてる人いんじゃん!ヤバいじゃん‼︎」
「本当だな」
空座町の人間たちは、異世界に転送されていることを知らずにいられるよう、全員眠らされているはずだったが。
「時間がかかり過ぎたか、霊力が多少でもある人たちが起きちまってんじゃないか?」
「まだ市丸隊長たちは来てない。避難させるなら今のうちだよ」
「そうだな。巻き込んだら大変だ」
手分けして住民たちの避難誘導をしようとした時だった。
ーーーーー‼︎‼︎‼︎
「来ちゃった」
何のためか誤差があり、辛うじて空座町からは離れたところで霊圧の高まりが起きた。
「どうしよう!すぐ来るよね」
なつみは動いている人間の霊圧を数える。1、2、3、4、いっぱい。パニック‼︎
「間に合わないよ‼︎‼︎」
「と、と、とりあえずっ!お前が寝かせちまえ!動かれるよりマシだろ」
レンが本当にとりあえずの策を出した。
「おおおう❗️そだな❗️そだそだ。みんな、結界の外出てて。やってみるから❗️」
テッテケテッテテーっとみんなは移動した。なつみだけは町のど真ん中目指してテレポート。
「町ひとつ分か。まぁ…、鍛えたぼくだから?できるっしょ。いくよ、ムッちゃん」
外に出た7人は戸惑った。
「市丸隊長はわかる」
「あぁ。でも、いるんだよな、あの人」
「向こうで何があったんだよ」
「こっち来れたってことはさ、総隊長もさ」
「考えてもしょうがねぇ。俺たちが知ってる藍染じゃねぇってことだろ」
「ついさっきまでとも違うぞ。絶対ぇ、気ぃ抜くな」
「……」
美沙が無言で敵がいる方角を睨んでいたら、背後から困った声が聞こえてきた。
「大変だよぉ❗️寝てくれない人たちがいるんだけど😫」
みんな振り返る。
「なんかね、高校生っぽいんだけど、めっちゃぼくのお願いに嫌がってくるんだよ。イチゴがどうのって言ってさ。イチゴって、ツンツンくんのことだよね。どうなってんの、この町❗️それと変なオジサンも❗️」
そう訴えてから、なつみも気付く。
「あれって、藍染隊長だよね。の、はすだよね。はんぺん……?」
はんぺん…?これは小声で、みんなは聞き取れていなかった。
「藍染さえ近づけさせなきゃ良いんだから、放っておいて、あたしたちはもう行こう!」
そう言ったのは美沙だった。
「美沙ちゃん」
もう上司として見ていないんだと思い、なつみは心がキュッとした。
「美沙ちゃんの言う通りだ。行こうぜ」
みんな頷いて賛成した。
藍染と市丸は、木立を歩いていた。
「やはり、こちらの方が空気が良いね。陽も暖かい。散歩日和だ」
「そうですねぇ」
そんな他愛もない会話をしていた。それぞれに思いを抱いて。
ザッと砂埃を上げて、2人の前に小さな影が現れた。
「待てぇ‼︎」
小さな身体は大きく見えるように、両腕を目一杯広げて立ち塞がった。
「やぁ、なつみ。また会えたね」
藍染も腕を広げて、優雅に歩いてくる。
「ちょちょちょちょちょ、ハグじゃない!」
悪者に腕を組んでツン!
「おや、それは残念」
肩をすくめた。
「なんでロン毛になってるんですか!」
ズバッ。
「他人に指を差してはいけないよ。失礼だ」たしなめつつ、説明してくれる。「これは恐らく、タテガミかな?強さの象徴」サラリと伸びた髪をなびかせてみせた。「好きだよね?こういうの」
「………🙄」
こんなにも白い目で人を見たことがあっただろうか。
「好きやないて」
その通り。
「色かな」
違う。
どこからか、ため息が聞こえてきそう。
「くだらねぇ話はその辺にしろよ」
ザンッ、7人分の到着が響いた。
「まるで私たちが待たせたような言い方だな。その逆だというのに。私たちは、君たちが来るだろうと思って、わざわざゆっくりと歩いていたんだよ」
仲間たちは刀を抜いて構えていく。
「心許ない最後の砦にされて、君たちが気の毒でならない。愚かな組織に使われて、可哀想だよ」
藍染の挑発を聞きながらも、なつみたちは心を乱さなかった。8人で立ち向かえる心強さが自信となり、バケモノと変わり果てた藍染を相手にしても、決して臆さなかった。
その勇敢な眼差しを見て、市丸が藍染に話しかけた。
「藍染隊長、ボク、先に行って、町に変な罠が仕掛けられてへんか、偵察してきましょか?まさか、ボクらがここ来るてわかってながら、この子らしか警備に置かんなんてアホな話あるはずありませんから」
「そうだね。頼もうかな」
「はい」
スタスタと市丸は歩いて藍染の横を通り過ぎる。
「ギンが帰ってくるまで、私はなつみと遊んで待つとしよう」
フッと市丸がその場から消えると、美沙のすぐそばに出現した。
「案内は美沙ちゃんにしてもらうわ。ちょっと借りるで〜」
「え⁉︎」
そんな言葉を残して、市丸は美沙を連れ去った。
パッと振り返ってドキッとしたが、なつみたちは藍染に向き直った。
「誰も追わないんだね」
「行きませんよ」
「どうしてかな」
「市丸隊長が行っても、何もすることはありません」ビシッ、また藍染を指した。「あっちに用があるのは、あんただけだ‼︎‼︎」
やれやれと、藍染は首を軽く横に振った。細めた目で彼女を見遣る。
「どこまで知った」
斬魄刀の柄を両手で握る。開いた目で、相手の動きを見逃すまいと凝視した。
「…、戦う理由は見つけてきましたよ」
いつでも動けるよう、腰をおとした姿勢のまま、7人は藍染を囲むフォーメーションへと、少しずつ移動した。
クスリと笑った藍染は、この虹色の志士たちが緊張で強張っているのを見た。戦い始めやすくしてあげようと、優しく、こちらから仕掛けにいった。
空座町の結界前まで飛んできた市丸は、抱えていた美沙を地面に降ろした。
「ボクの手紙、みんなで読むことないやろ‼︎‼︎」
急に大声でお説教され、美沙は目をしぱしぱさせた。
「わ、わかりました?😣」
「わかるわ‼︎ぜーいんの顔に出とった‼︎‼︎」
「ですが、全部は読んでないですよ。掻い摘んで、ちょっとずつ💦」
「んなこと問題やない!」
市丸は素早くしゃがんで、頭を抱えた。
「あぁーあ、恥い…」
慰めなくてはと、美沙が市丸の丸まった背中を摩ってやった。
「私たち8人の内に留めておきますから、お気を」
ガバッ!
「当たり前や‼︎‼︎」
「すみません😣💦」
心は立ち直っていないが、立ち上がって話を聞く市丸。
「それで、どんなあんぽんたんな計画立ててきたん」
「えっと…」聞く前から「あほ」扱いは無いでしょうと思いつつ。「おふたりの身柄を確保し、事情聴取のため、一旦虚圏へ連行します」
「…誰が決めたん」
厳しい問いに、答えがどもってしまう。
「なつみです…」
市丸は片手で目を覆い俯く。
「ボクらを逃す気か」
「市丸隊長には生きていてもらいたいんです‼︎」
鼻からため息を吐きながら、静かに手を下ろした。
「ボクには…な。あかん。なつみちゃんはどっちもて思てるし。あかんねん。藍染を殺さんと、何も終わらん。今、ここで、ボクがやるしかないねん。ボクにしかできひんから」
美沙は悲しげに市丸を見上げた。
「キミならわかるな。藍染の負けは、護廷十三隊の勝ち。護廷十三隊の勝ちは、尸魂界の法が継続するいうこと。それは、ボクの処刑が絶対やってこと。みんなのために、避けられへんボクの運命や。理由を知られたかて、変わるもんやない」
今度は美沙が苦しそうに俯いた。
「なつみが、泣きますっ…」
「しゃあないねん…。そん時は、キミがおってや。あの子らもおる。京楽さんもおる。スタークもおるやろ。ボクがおらんでも、大丈夫やて」
時間を稼いだとて、これまであった悲劇を無視して、藍染と市丸の処刑を止める方法など、位の低い、権力を持たない隊士が8人抗ったところで、できることも思いつくことさえもできないだろうと、美沙は考えていた。しかし、なつみの願いを砕きたくはなかった。だが…。
「他に路は無い。ごめんな、みんなの優しい気持ちに、応えられへんわ」
(これなんだ…)
美沙は、その市丸の笑顔を見て、なつみが感じてきたという、彼の悲しみを目にした気がした。益々、胸が苦しくなった。
「そろそろ戻ろか」
市丸は戻ると言いつつ、結界に近づいて、中を覗く素振りをした。
「なぁ、美沙ちゃん。こん中、何か仕掛けてあるん?」
美沙は目尻を拭ってから答えた。
「いいえ。町の複製と転送装置を作るのに手一杯で、そこまでは。侵入されない前提だったのもありますし」
「はぁ…。そういうとこやで、ほんま」
踵を返して美沙に声をかける。
「帰るで」
「はい」
ふたりは、梢が不自然に揺れ動く方角へ向かった。
到着すると、次の攻撃を仕掛けようと構えるも、何故か動けなくなっている6人と、彼らに囲まれるように中央でなつみを地面に押さえつける藍染の姿があった。
「うぐぐッ」
藍染の手から逃れようともがくなつみだが、うまくいかない。
「良いことを教えよう、なつみ。戦う理由を見つけただけでは勝てないんだ。君には、果たすべき目標の欠如と、守りたいものが多すぎる。勝利への執念と、不要な存在への殺意が無ければ、私には敵わないんだよ」
頭を押さえつけられながらも、なつみは目だけを動かして、藍染を睨んだ。
藍染は市丸と美沙に、その態勢のまま話しかける。
「やぁ、戻ったね。おかえり。驚かせて済まない。なつみが元気なものだから、つい」にこりと微笑む。「それで、空座町の様子はどうだったかな」
「何もありませんでした。簡単に中入れますよ」
市丸は美沙の半歩前に立っており、助けに向かうための攻撃態勢を取ろうとする彼女の腕を、掴んで止めている。平然と。
「そうか。つくづく、君たちに同情するよ。こんな軽薄な組織に身を捧げているだなんて」
なつみは脚を動かして抜け出そうとする。だができない。仲間たちも助けに行きたいが、藍染の反応の方が確実に速いことが予測でき、下手に動くことができなかった。
「ここに来られた君たちは賢い。私に勝てるとしか考え付かなかった哀れな上司に代わって、私が褒めてあげよう」
そう言って、なつみの頭を撫でた。と、その時。
「キミに褒められたって、誰も嬉しくないよ。惣右介くん」
ひとつの足音だけで現れたのはこの男。
「しゅ「京楽隊長ぉおッ‼︎‼︎😭」💢(尾田、コラァ💢)」
京楽である。
「ボロボロやないですか」
「おかげさまでね。けど、愛の力に導かれちゃってさ」
それで来てしまったと。
藍染はなつみを引きずり上げると、彼女を左腕で抱き、京楽によく見えるよう、なつみを正面に向けさせた。
「では、丁度良かった。私では心苦しくてできそうになかったんだ。さぁ、やってくれ。いつでもどうぞ」
何を言っているんだと、なつみは藍染を見た。
「躊躇うのもわかるが、君が志願したんだろう。課せられた任務を果たすと良い。なつみの死刑執行を」
「ー‼︎⁉︎」
なつみは驚きで息を呑んだ。
「何を驚いている、なつみ。君が京楽に銃口を向けた時点で、完全に私たちの側についてしまったんだよ。あれは尸魂界への反逆だ。君も、私たち同様、死罪に値している。もう遅い」
空いた右手でなつみの頬を撫でる。
「京楽は君を愛している。他の男に殺されるくらいなら、自分がやると申し出たに違いないよ。あの男は君を殺しにここに来たんだ」
頬を撫でていた親指が、彼女の唇に移動した。
「愛するが故に」
むかつき、なつみは素早く顔を背けた。
「君が可愛くて、私にはできないよ」
避けられた藍染は、性懲りも無く、なつみの髪に口付ける。
「おかしいね。どうして斬れだなんて言うんだい?キミはさっき、なつみちゃんを救えるのは自分だけだって、言ってたじゃないか」
そう言いながら、京楽は斬魄刀に手をかける。
「私に噛みついてしまったんだよ。もう生かしてはおけなくなった」
藍染はなつみから身体をやや離して、京楽を見た。
「やれ」
藍染の言葉で京楽は動いた。抜刀し、瞬歩で接近。狙ったのはなつみ、ではなく、その後ろに立つ藍染の方だった。
パリンッ
しかし、斬魄刀を藍染に突き刺そうとしたが、目の前の景色が砕け落ち、なつみがいるはずの場所に藍染が立ち、藍染がいるはずのところになつみがいた。
(しまった‼︎‼︎)
と思ったが、勢いのついた突きは止められなかった。
カキンッ
刀が当たる音が響いて、京楽の攻撃は防がれた。
「なつみちゃん!」
間一髪で鏡花水月の術を解き、花天狂骨に夢現天子を当て、軌道を逸らすことができた。
ドスッ
「ウッ‼︎」
京楽の一撃を躱したなつみだったが、直後に鳩尾への蹴りを喰らい、宙に浮いた。藍染が落ちてくるなつみを捕まえたら、今度は胸ぐらを掴んで持ち上げた。
「実に惜しかった!もう少しだったね、なつみ」
足がバタバタと浮いている。
「だが、ほら、言った通りだ。君は周りを守ったがために、また私に捕まってしまった。もっとよく聞いていないと、成長しないよ」
重力もあり、喉が締め付けられる。
「仕方がない。お仕置きは、自分でするとしよう」
藍染は鏡花水月を構えた。周りは瞬時にいろいろと考えを巡らせたいが、何も間に合わない。時が来た。
「さよなら。私の可愛いなつみ」
仲間たちが、京楽が、見ている前で、なつみの身体は上下ふたつに斬り裂かれた。
スパンッーーー
信じがたい風景に、みんなが凍りつく。
3人を除いて。
ニヤッ
黒いコートを藍染が手放すと、それが落ちて、地に布の小山ができた。
おかしなことに、なつみの身体が消えてしまったようだ。身体も無ければ、血も流れていない。藍染の刀に、肉を斬った跡が残されていなかった。
藍染はピクリと眉間に皺を寄せた。
「馬鹿にされたものだ。こんなものが切り札か」
藍染の目線の先では蠢く布の山。
ブワァッ‼️‼️
ト、ト、ト、ト、トッ‼️
出口を見つけたそれは飛び出し、京楽目指して駆け出した。
「ッ、ッ、ッ、ッ」
京楽の左肩まで駆け上がり、その灰色の毛むくじゃらは息を整えようとした。
「なつみちゃん…?」
変わらない緑色の瞳が、大好きな彼を映す。京楽に呼ばれて、それに答えるように頬を擦り寄せた。
「うぅぅ。春水さぁん」
京楽も、うさぎになったなつみに頬を寄せる。
「良かった、無事で」
しかし藍染には良くない。
「私に隠していたのは、このことだったのか」
自分の隠し事を棚に上げている。
「遊びはもうやめようか。つまらなくなった。その身体では、まともに戦えないだろうからね。ギン、空座町へ行こう」
「…はい」
藍染は歩き始める。
「待て!」
なつみが京楽の肩の上で叫んだ。
「フンッ…」
気にもせず進んでいく。
追うように歩き出した市丸に視線を移し、首を横に振って、行かないでくれと無言で訴えたが、市丸は刀を抜いた。
「邪魔、せんで」
バトンのように回すと、強風がなつみに向かって巻き起こった。
ビュォォオオオッ
「うぅぅぅう、う、うわぁぁあーッ‼︎‼︎」
うさぎの手ではもちろん掴んでいられなくなり、なつみは吹き飛んでいってしまった。
「なつみちゃん‼︎‼︎」
唯一この風でも耐えられる京楽だったが、なつみを助けに行かざるを得ない。誰も藍染と市丸を止められず、2人の空座町侵攻を許してしまった。
「木之本ら、8名、警備のため、空座町へ向かいたいそうです。許可しますか」
「現世の状況はどうかネ」
「見たところ最悪ですね」
((((((((‼︎⁉︎))))))))
そうなるように祈ったが、実際聞くとビックリしてしまう。あと、なつみには、普通に尸魂界と虚圏で通信できていることにもショック。
(ズルいぃッ😫)
「情けないネェ。仕方ない。行かせてやれ。他にまともに動ける者はいないんだろう?」
「局長はまだそちらに?」
「あぁ、もう少しかかりそうだヨ。全隊長の尻拭いをさせてしまって悪いネ、なつみ。私は手伝ってやれないが、奴らに勝ってきてくれ給え」
かーんたんにサラッと許可が下りた。
扉の前に通される一同。
「大丈夫。ぼくがいる」
そう呟き、踏み出していった。
空座町に入って気付いた。
「ちょっと、みんな寝てんじゃないの?起きてる人いんじゃん!ヤバいじゃん‼︎」
「本当だな」
空座町の人間たちは、異世界に転送されていることを知らずにいられるよう、全員眠らされているはずだったが。
「時間がかかり過ぎたか、霊力が多少でもある人たちが起きちまってんじゃないか?」
「まだ市丸隊長たちは来てない。避難させるなら今のうちだよ」
「そうだな。巻き込んだら大変だ」
手分けして住民たちの避難誘導をしようとした時だった。
ーーーーー‼︎‼︎‼︎
「来ちゃった」
何のためか誤差があり、辛うじて空座町からは離れたところで霊圧の高まりが起きた。
「どうしよう!すぐ来るよね」
なつみは動いている人間の霊圧を数える。1、2、3、4、いっぱい。パニック‼︎
「間に合わないよ‼︎‼︎」
「と、と、とりあえずっ!お前が寝かせちまえ!動かれるよりマシだろ」
レンが本当にとりあえずの策を出した。
「おおおう❗️そだな❗️そだそだ。みんな、結界の外出てて。やってみるから❗️」
テッテケテッテテーっとみんなは移動した。なつみだけは町のど真ん中目指してテレポート。
「町ひとつ分か。まぁ…、鍛えたぼくだから?できるっしょ。いくよ、ムッちゃん」
外に出た7人は戸惑った。
「市丸隊長はわかる」
「あぁ。でも、いるんだよな、あの人」
「向こうで何があったんだよ」
「こっち来れたってことはさ、総隊長もさ」
「考えてもしょうがねぇ。俺たちが知ってる藍染じゃねぇってことだろ」
「ついさっきまでとも違うぞ。絶対ぇ、気ぃ抜くな」
「……」
美沙が無言で敵がいる方角を睨んでいたら、背後から困った声が聞こえてきた。
「大変だよぉ❗️寝てくれない人たちがいるんだけど😫」
みんな振り返る。
「なんかね、高校生っぽいんだけど、めっちゃぼくのお願いに嫌がってくるんだよ。イチゴがどうのって言ってさ。イチゴって、ツンツンくんのことだよね。どうなってんの、この町❗️それと変なオジサンも❗️」
そう訴えてから、なつみも気付く。
「あれって、藍染隊長だよね。の、はすだよね。はんぺん……?」
はんぺん…?これは小声で、みんなは聞き取れていなかった。
「藍染さえ近づけさせなきゃ良いんだから、放っておいて、あたしたちはもう行こう!」
そう言ったのは美沙だった。
「美沙ちゃん」
もう上司として見ていないんだと思い、なつみは心がキュッとした。
「美沙ちゃんの言う通りだ。行こうぜ」
みんな頷いて賛成した。
藍染と市丸は、木立を歩いていた。
「やはり、こちらの方が空気が良いね。陽も暖かい。散歩日和だ」
「そうですねぇ」
そんな他愛もない会話をしていた。それぞれに思いを抱いて。
ザッと砂埃を上げて、2人の前に小さな影が現れた。
「待てぇ‼︎」
小さな身体は大きく見えるように、両腕を目一杯広げて立ち塞がった。
「やぁ、なつみ。また会えたね」
藍染も腕を広げて、優雅に歩いてくる。
「ちょちょちょちょちょ、ハグじゃない!」
悪者に腕を組んでツン!
「おや、それは残念」
肩をすくめた。
「なんでロン毛になってるんですか!」
ズバッ。
「他人に指を差してはいけないよ。失礼だ」たしなめつつ、説明してくれる。「これは恐らく、タテガミかな?強さの象徴」サラリと伸びた髪をなびかせてみせた。「好きだよね?こういうの」
「………🙄」
こんなにも白い目で人を見たことがあっただろうか。
「好きやないて」
その通り。
「色かな」
違う。
どこからか、ため息が聞こえてきそう。
「くだらねぇ話はその辺にしろよ」
ザンッ、7人分の到着が響いた。
「まるで私たちが待たせたような言い方だな。その逆だというのに。私たちは、君たちが来るだろうと思って、わざわざゆっくりと歩いていたんだよ」
仲間たちは刀を抜いて構えていく。
「心許ない最後の砦にされて、君たちが気の毒でならない。愚かな組織に使われて、可哀想だよ」
藍染の挑発を聞きながらも、なつみたちは心を乱さなかった。8人で立ち向かえる心強さが自信となり、バケモノと変わり果てた藍染を相手にしても、決して臆さなかった。
その勇敢な眼差しを見て、市丸が藍染に話しかけた。
「藍染隊長、ボク、先に行って、町に変な罠が仕掛けられてへんか、偵察してきましょか?まさか、ボクらがここ来るてわかってながら、この子らしか警備に置かんなんてアホな話あるはずありませんから」
「そうだね。頼もうかな」
「はい」
スタスタと市丸は歩いて藍染の横を通り過ぎる。
「ギンが帰ってくるまで、私はなつみと遊んで待つとしよう」
フッと市丸がその場から消えると、美沙のすぐそばに出現した。
「案内は美沙ちゃんにしてもらうわ。ちょっと借りるで〜」
「え⁉︎」
そんな言葉を残して、市丸は美沙を連れ去った。
パッと振り返ってドキッとしたが、なつみたちは藍染に向き直った。
「誰も追わないんだね」
「行きませんよ」
「どうしてかな」
「市丸隊長が行っても、何もすることはありません」ビシッ、また藍染を指した。「あっちに用があるのは、あんただけだ‼︎‼︎」
やれやれと、藍染は首を軽く横に振った。細めた目で彼女を見遣る。
「どこまで知った」
斬魄刀の柄を両手で握る。開いた目で、相手の動きを見逃すまいと凝視した。
「…、戦う理由は見つけてきましたよ」
いつでも動けるよう、腰をおとした姿勢のまま、7人は藍染を囲むフォーメーションへと、少しずつ移動した。
クスリと笑った藍染は、この虹色の志士たちが緊張で強張っているのを見た。戦い始めやすくしてあげようと、優しく、こちらから仕掛けにいった。
空座町の結界前まで飛んできた市丸は、抱えていた美沙を地面に降ろした。
「ボクの手紙、みんなで読むことないやろ‼︎‼︎」
急に大声でお説教され、美沙は目をしぱしぱさせた。
「わ、わかりました?😣」
「わかるわ‼︎ぜーいんの顔に出とった‼︎‼︎」
「ですが、全部は読んでないですよ。掻い摘んで、ちょっとずつ💦」
「んなこと問題やない!」
市丸は素早くしゃがんで、頭を抱えた。
「あぁーあ、恥い…」
慰めなくてはと、美沙が市丸の丸まった背中を摩ってやった。
「私たち8人の内に留めておきますから、お気を」
ガバッ!
「当たり前や‼︎‼︎」
「すみません😣💦」
心は立ち直っていないが、立ち上がって話を聞く市丸。
「それで、どんなあんぽんたんな計画立ててきたん」
「えっと…」聞く前から「あほ」扱いは無いでしょうと思いつつ。「おふたりの身柄を確保し、事情聴取のため、一旦虚圏へ連行します」
「…誰が決めたん」
厳しい問いに、答えがどもってしまう。
「なつみです…」
市丸は片手で目を覆い俯く。
「ボクらを逃す気か」
「市丸隊長には生きていてもらいたいんです‼︎」
鼻からため息を吐きながら、静かに手を下ろした。
「ボクには…な。あかん。なつみちゃんはどっちもて思てるし。あかんねん。藍染を殺さんと、何も終わらん。今、ここで、ボクがやるしかないねん。ボクにしかできひんから」
美沙は悲しげに市丸を見上げた。
「キミならわかるな。藍染の負けは、護廷十三隊の勝ち。護廷十三隊の勝ちは、尸魂界の法が継続するいうこと。それは、ボクの処刑が絶対やってこと。みんなのために、避けられへんボクの運命や。理由を知られたかて、変わるもんやない」
今度は美沙が苦しそうに俯いた。
「なつみが、泣きますっ…」
「しゃあないねん…。そん時は、キミがおってや。あの子らもおる。京楽さんもおる。スタークもおるやろ。ボクがおらんでも、大丈夫やて」
時間を稼いだとて、これまであった悲劇を無視して、藍染と市丸の処刑を止める方法など、位の低い、権力を持たない隊士が8人抗ったところで、できることも思いつくことさえもできないだろうと、美沙は考えていた。しかし、なつみの願いを砕きたくはなかった。だが…。
「他に路は無い。ごめんな、みんなの優しい気持ちに、応えられへんわ」
(これなんだ…)
美沙は、その市丸の笑顔を見て、なつみが感じてきたという、彼の悲しみを目にした気がした。益々、胸が苦しくなった。
「そろそろ戻ろか」
市丸は戻ると言いつつ、結界に近づいて、中を覗く素振りをした。
「なぁ、美沙ちゃん。こん中、何か仕掛けてあるん?」
美沙は目尻を拭ってから答えた。
「いいえ。町の複製と転送装置を作るのに手一杯で、そこまでは。侵入されない前提だったのもありますし」
「はぁ…。そういうとこやで、ほんま」
踵を返して美沙に声をかける。
「帰るで」
「はい」
ふたりは、梢が不自然に揺れ動く方角へ向かった。
到着すると、次の攻撃を仕掛けようと構えるも、何故か動けなくなっている6人と、彼らに囲まれるように中央でなつみを地面に押さえつける藍染の姿があった。
「うぐぐッ」
藍染の手から逃れようともがくなつみだが、うまくいかない。
「良いことを教えよう、なつみ。戦う理由を見つけただけでは勝てないんだ。君には、果たすべき目標の欠如と、守りたいものが多すぎる。勝利への執念と、不要な存在への殺意が無ければ、私には敵わないんだよ」
頭を押さえつけられながらも、なつみは目だけを動かして、藍染を睨んだ。
藍染は市丸と美沙に、その態勢のまま話しかける。
「やぁ、戻ったね。おかえり。驚かせて済まない。なつみが元気なものだから、つい」にこりと微笑む。「それで、空座町の様子はどうだったかな」
「何もありませんでした。簡単に中入れますよ」
市丸は美沙の半歩前に立っており、助けに向かうための攻撃態勢を取ろうとする彼女の腕を、掴んで止めている。平然と。
「そうか。つくづく、君たちに同情するよ。こんな軽薄な組織に身を捧げているだなんて」
なつみは脚を動かして抜け出そうとする。だができない。仲間たちも助けに行きたいが、藍染の反応の方が確実に速いことが予測でき、下手に動くことができなかった。
「ここに来られた君たちは賢い。私に勝てるとしか考え付かなかった哀れな上司に代わって、私が褒めてあげよう」
そう言って、なつみの頭を撫でた。と、その時。
「キミに褒められたって、誰も嬉しくないよ。惣右介くん」
ひとつの足音だけで現れたのはこの男。
「しゅ「京楽隊長ぉおッ‼︎‼︎😭」💢(尾田、コラァ💢)」
京楽である。
「ボロボロやないですか」
「おかげさまでね。けど、愛の力に導かれちゃってさ」
それで来てしまったと。
藍染はなつみを引きずり上げると、彼女を左腕で抱き、京楽によく見えるよう、なつみを正面に向けさせた。
「では、丁度良かった。私では心苦しくてできそうになかったんだ。さぁ、やってくれ。いつでもどうぞ」
何を言っているんだと、なつみは藍染を見た。
「躊躇うのもわかるが、君が志願したんだろう。課せられた任務を果たすと良い。なつみの死刑執行を」
「ー‼︎⁉︎」
なつみは驚きで息を呑んだ。
「何を驚いている、なつみ。君が京楽に銃口を向けた時点で、完全に私たちの側についてしまったんだよ。あれは尸魂界への反逆だ。君も、私たち同様、死罪に値している。もう遅い」
空いた右手でなつみの頬を撫でる。
「京楽は君を愛している。他の男に殺されるくらいなら、自分がやると申し出たに違いないよ。あの男は君を殺しにここに来たんだ」
頬を撫でていた親指が、彼女の唇に移動した。
「愛するが故に」
むかつき、なつみは素早く顔を背けた。
「君が可愛くて、私にはできないよ」
避けられた藍染は、性懲りも無く、なつみの髪に口付ける。
「おかしいね。どうして斬れだなんて言うんだい?キミはさっき、なつみちゃんを救えるのは自分だけだって、言ってたじゃないか」
そう言いながら、京楽は斬魄刀に手をかける。
「私に噛みついてしまったんだよ。もう生かしてはおけなくなった」
藍染はなつみから身体をやや離して、京楽を見た。
「やれ」
藍染の言葉で京楽は動いた。抜刀し、瞬歩で接近。狙ったのはなつみ、ではなく、その後ろに立つ藍染の方だった。
パリンッ
しかし、斬魄刀を藍染に突き刺そうとしたが、目の前の景色が砕け落ち、なつみがいるはずの場所に藍染が立ち、藍染がいるはずのところになつみがいた。
(しまった‼︎‼︎)
と思ったが、勢いのついた突きは止められなかった。
カキンッ
刀が当たる音が響いて、京楽の攻撃は防がれた。
「なつみちゃん!」
間一髪で鏡花水月の術を解き、花天狂骨に夢現天子を当て、軌道を逸らすことができた。
ドスッ
「ウッ‼︎」
京楽の一撃を躱したなつみだったが、直後に鳩尾への蹴りを喰らい、宙に浮いた。藍染が落ちてくるなつみを捕まえたら、今度は胸ぐらを掴んで持ち上げた。
「実に惜しかった!もう少しだったね、なつみ」
足がバタバタと浮いている。
「だが、ほら、言った通りだ。君は周りを守ったがために、また私に捕まってしまった。もっとよく聞いていないと、成長しないよ」
重力もあり、喉が締め付けられる。
「仕方がない。お仕置きは、自分でするとしよう」
藍染は鏡花水月を構えた。周りは瞬時にいろいろと考えを巡らせたいが、何も間に合わない。時が来た。
「さよなら。私の可愛いなつみ」
仲間たちが、京楽が、見ている前で、なつみの身体は上下ふたつに斬り裂かれた。
スパンッーーー
信じがたい風景に、みんなが凍りつく。
3人を除いて。
ニヤッ
黒いコートを藍染が手放すと、それが落ちて、地に布の小山ができた。
おかしなことに、なつみの身体が消えてしまったようだ。身体も無ければ、血も流れていない。藍染の刀に、肉を斬った跡が残されていなかった。
藍染はピクリと眉間に皺を寄せた。
「馬鹿にされたものだ。こんなものが切り札か」
藍染の目線の先では蠢く布の山。
ブワァッ‼️‼️
ト、ト、ト、ト、トッ‼️
出口を見つけたそれは飛び出し、京楽目指して駆け出した。
「ッ、ッ、ッ、ッ」
京楽の左肩まで駆け上がり、その灰色の毛むくじゃらは息を整えようとした。
「なつみちゃん…?」
変わらない緑色の瞳が、大好きな彼を映す。京楽に呼ばれて、それに答えるように頬を擦り寄せた。
「うぅぅ。春水さぁん」
京楽も、うさぎになったなつみに頬を寄せる。
「良かった、無事で」
しかし藍染には良くない。
「私に隠していたのは、このことだったのか」
自分の隠し事を棚に上げている。
「遊びはもうやめようか。つまらなくなった。その身体では、まともに戦えないだろうからね。ギン、空座町へ行こう」
「…はい」
藍染は歩き始める。
「待て!」
なつみが京楽の肩の上で叫んだ。
「フンッ…」
気にもせず進んでいく。
追うように歩き出した市丸に視線を移し、首を横に振って、行かないでくれと無言で訴えたが、市丸は刀を抜いた。
「邪魔、せんで」
バトンのように回すと、強風がなつみに向かって巻き起こった。
ビュォォオオオッ
「うぅぅぅう、う、うわぁぁあーッ‼︎‼︎」
うさぎの手ではもちろん掴んでいられなくなり、なつみは吹き飛んでいってしまった。
「なつみちゃん‼︎‼︎」
唯一この風でも耐えられる京楽だったが、なつみを助けに行かざるを得ない。誰も藍染と市丸を止められず、2人の空座町侵攻を許してしまった。