第十章
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「ぉおーきろーッ‼️‼️‼️」
グワングワングワングワングワングワングワン‼︎‼︎
「ぎゃーーーーーッ‼️‼️‼️」
耳を塞ぐなつみ。
「うるせぇーッ‼️‼️‼️」
「だって、だって、だって‼️‼️💦」
掛け布団を掻き寄せるなつみ。
「起きる時間なの❗️顔洗って、寝癖は直してあるから、早く着替えて出発するよ❗️」
そう言ったなつみは、起こしたばかりのなつみに服を投げつけた。
「…?」
ほっぺを触ったり、髪を撫でてみたりすると、確かに、寝起きとは思えない、さっぱり感があった。
「あ❗️きみ、アーロニーロだな❗️ぼくに化けてる❗️こんなイタズラするなんて、悪い子だぞ☝️))」
ぷっくり膨れて指を振る。その様子に呆れたのか、がっくりするもうひとり。
「違う。はぁ…、こんなアホだったか」
「ん⁉️😠」
アホとは心外だ。
だが、立っている方のなつみには、このおとぼけに付き合っている暇はない。
「良い?ぼくはアーロニーロじゃない。未来から来たんだ」
「へッ⁉️本物のぼくなの⁉️どうして‼️」
「きみをここから出しに来た」
「え?何言ってるの?」
自分の反応だからこそ、余計に情けなさを感じるようだ。
「もうッ。ぼくはここに閉じ込められてたッ‼︎市丸隊長に睡眠薬飲まされて、その扉は外側から鍵がかけられてた!ぼくが藍染隊長の計画の邪魔になるから、この部屋から出られないようにしてたんだ‼︎」
聞く側のなつみは口をあんぐりと開け、何のこっちゃという顔をしていた。ぼんやりしている時間は無いと、未来から来たなつみは掛け布団を畳んで、パジャマを掴んで脱がし始めた。
「ちょっと、自分でできるよ💦」
「だったら早くしてよ‼︎」
ズドーン……
遠くで音がした。それに気付き、パジャマのシャツを脱いだところで止まった。
「ウル…キオラ…?こんな霊圧してたっけ。っていうか、戦ってる?何で」
「攻め込まれたから」
懐かしい波動も響いてくる。
「うそ。…、更木隊長、卯ノ花隊長、朽木隊長、涅隊長、志波副隊長、虎徹副隊長、それにルキアさん!こっちに来てるの⁉︎まさか‼︎」
「それから、阿散井副隊長と織姫さんの同級生も来てる」
「…誰って?」
壁の向こうにある、虚夜宮中央にそびえる5本の塔を向く。
「ぼくと織姫さんは、藍染隊長、東仙隊長、市丸隊長に誘拐されてたんだよ。だからみんな、ぼくたちを助けに来た。それに破面たちが応戦してるんだよ」
信じられないといった顔で固まってしまう。相手はビンタする勢いで、更に言葉を付け加えていった。
「おかしいと思ってたでしょ⁉︎知らないうちに連れてこられて、尸魂界に帰してもらえない上に連絡すら取らせてくれない!特別とか言って秘密にされて、怪しいことばっかりじゃん‼︎大体、隊長が3人もこんな長期で隊を離れれるわけないし!あの人たちは、護廷十三隊を裏切ってこっちに来たんだよ‼︎良いから早く着替えて!」
「う、うんッ」
着替えを再開。なつみ自身、確かにこの虚圏の街づくり特別任務を不審に思っていた。だが、立場や破面たちへの仲間意識から、本気で声を上げる気にはなれないでいた。しかし、目の前にいる自分は実在している。戦う死神の霊圧や、弱った破面の霊圧も感じる。
「グリムジョーが弱ってる。ねぇ、隊長たちと十刃のほとんどが居ないみたいだけど、例の何するか教えてくれない計画で留守にしてるの?」
「……」
パジャマを畳んでくれる未来のなつみは、一瞬言いにくそうにしたが、答えてくれた。
「藍染隊長は、霊王宮に行きたがってる。理由は知らないけど。それで王鍵っていう鍵が必要で、今から作ろうとしてるんだよ。場所は現世の空座町。織姫さんの街。そこで、10万人くらいの魂魄を使って、王鍵を作るつもりなんだ。隊長たちはみんな現世にいる」
「魂魄を使うって」
顔が青ざめる。
「街ひとつ分の命を、ごっそり奪うってこと」
「ッ…‼︎⁉︎そんな狂った計画、やるわけないじゃん‼︎市丸隊長と東仙隊長が、ついてくわけないじゃん‼︎‼︎」
「どんなに騒いだって、やってるもんは、やってるの‼︎崩玉を創るのにも、数えきれない犠牲者がいた!あの3人は、大罪人なの‼︎」
フルフルと否定するように首を振る。
「違う。違うよ、そんなの」
「もちろんそんな計画、尸魂界が黙ってない。前もってこの狙いに気付いた護廷十三隊が、空座町の複製を造って、本物とすり替えた。本物は流魂街に転送されて、藍染隊長たちがいるのは偽物の方。護廷隊は、現れた藍染隊長たちをその場で捕まえるつもり。だから、向こうでも隊長格が揃ってる。
だけど、藍染隊長も警戒してて、2人の隊長だけじゃなく、スタークさん、バラガンさん、ハリベルさん、彼らの従属官も同行させてる。つまり、虚圏と現世の2箇所が同時に戦場になってる」
マントと斬魄刀、そして霊圧を遮断するコートも準備される。
「ウルキオラとヤミーとグリムジョーがいるのはわかるよ。けど、他はどこ?ノイトラ、ザエルアポロ、ゾマリん、アーロニーロ、ルピは?」
現世に向かっていないということは。
「ルピは、グリムジョーの腕が治った途端に殺されてた」
「そんなッ」
「あとは、…来ている隊長たちに斬られた」
「ッ‼︎‼︎」
ショックで胸を押さえて縮こまるなつみ。涙が込み上げてきて仕方がない。
「護廷十三隊の目標は、藍染隊長の阻止だけじゃない。ぼくの救出もだ。それから破面たちの動機は、藍染隊長のためじゃなく、ぼくにある。ぼくとこの先もずっと一緒に暮らせるように、護廷十三隊を潰すつもりなんだ」
「頼んでないよ…そんなこと…」
「でももう戦争は起きた。止めに行くよ」
熱り立って、胸ぐらを掴んだ。
「どうしてもっと先に来て、教えてくれなかったの‼︎‼︎そしたら、みんな死なずに済んだじゃんか‼︎‼︎どうして、何で‼︎⁉︎」
相手はその腕を落ち着いて握った。
「覚えておいて。世界は、ぼくの理想だけでできてない。みんなの理想が未来を目指してる。運命を変えるのだって、神様か誰かの許容範囲がある。ぼくは、このタイミングにしか来られなかったんだ。そのうちわかるよ。でも今じゃない。今やらなきゃいけないのは、起きてしまった争いを終わらせること。とにかく藍染隊長を止めることなんだよ」
掴んでいる手を下ろす。
「藍染隊長は崩玉を身体に取り込んで、死神じゃなくなってる。それに、鏡花水月の能力があるから、普通に戦っても、勝てないんだ。やっつけられないから、やろうとしていることを諦めさせて、動きを封じるしかない。そこまでのことは護廷隊もわかってないから、戦い抜くことしか考えてないんだ。ぼくはここでやることがあるから、きみが藍染隊長を説得するんだよ。それがきみの役目」
聞くなつみの目が不安で揺らいでいる。
「あとそれから、これも覚えてて」肩を掴んで、しっかり目を合わせた。「こっちのみんなは確かにぼくを騙してきたけど、本当の部分も、ちゃんとぼくは見てきたんだ。それを忘れずに、信じ抜いて。お願い」
「ほんとうの…?」
「うん。思い出の中にある」
未来のなつみはベッドから離れ、机に置いてある何かを手に取った。
「行く前にこっちおいで。腹ぺこで戦場には行かせられないから」
首を傾げながら、なつみはベッドから降り、そちらへ近づいた。机に用意されていたのは、スープジャーと箸。中身は。
「お味噌汁」
「おにぎりも要る?ま、こっちは後で良っか。とりあえず、お味噌汁だけ、掻き込んでって」
椅子に座らされた。お腹が空いているので、言われるがまま、味噌汁を飲むことにする。
「いただきます」
ひと口含むと、ピンときた。
「ん!」唇を引っ込めて味わう。「これ…、ケイジの」
この反応に、微笑みが返ってきた。
「そう。あいつのレシピで作った。8人で、『きみが元気に出かけられますように』って心を込めて作ったんだ。おいしいでしょ😊」
「う…うんッ」
懐かしい味に、なつみは食らいついた。湧き出て滲み出るオカン感。
「勇気を持って立ち向かえば、この未来にたどり着けるからね」
鼻を啜りながら味噌汁を飲むのに集中しているなつみには、この言葉は届いていなかった。
それでも構わなかった。扉に向い、開け、廊下に顔を出すと、誰かを呼んだ。
「おいで。もう行ける」
部屋に顔を覗かせたのは、十刃ではないが、心強い味方だった。
「ワンダーワイス❗️無事で良かった。おいでおいで❗️」
「アウーッ」
完食したジャーを置いて、なつみはワンダーワイスを抱きしめた。
「むぎゅーっ」
「ウーウー」
「感動の再会は、その辺にしといてよ。グズグズしてると間に合わなくなる」
斬魄刀を腰に差し、マントを首に巻き、コートを着る。
「ぼくは虚夜宮に残って、負傷者の手当てをする。任せてごめんけど、倒された破面たちを連れてきて欲しいんだ。行きはワンダーワイスが黒腔を開いてくれる。現世に着いたらこれを2本、間隔を空けて立てて、繋いだコードに霊力を送って。間に黒腔の入り口が開く。帰りはそこを通って来て。絨毯で包んだから、担架に使って」
「わかった」
左手に絨毯に包まれた2本のポール、右手におにぎりを持たせた。
「ワンダーワイスは後から来るように命じられてるんだ。それに乗じて、こっそり入り込むよ。総隊長が炎の壁で隊長たちを囲って、3人を封じ込めてる。先に破面たちと戦ってるから、救出を優先して。もしかしたら、助っ人がいるかもしれないけど、驚かないでね。それが済んだら、戦いを止める。それまで、他の死神に見つからないようにするんだよ。気を抜かないで」
「了解❗️🍙」もぐもぐしながら、こっちからもお願いを。「こっちのことは任せた❗️」
「了解👍」
ご飯粒が付いた手も👍っと応える。だから、もう1人のも欲しくなる。ふたりのなつみに見られたら、応えざるを得ない。
「ウッ👍」
「よっしゃ😆」
👍
「ん?」
小さな手が4つめに現れた。
「悪者を懲らしめてやろう。ようやく奴にガツンと言ってやれる🐥」
「頼んだよ、相棒。ぼくをサポートしてね」
👍
「お前のことは、私がサポートしよう🐥」
「ウー⁇⁇?」
2人のなつみと2人のムッちゃんに囲まれて、混乱気味のワンダーワイス。
「はははッ❗️変な感じだよね❗️」
「笑ってないで、こっから真面目モード。向こうは本当に大変なことになってるから、気をつけなきゃ」
「うん!」
ちゅちゅちゅと米粒も平らげた。
「よし、行こう!ワンダーワイス、開けて」
「ウ」
上下に空間が裂けた。ふたりは手を繋ぎ、もうひとりのなつみに手を振った。
「行ってきます❗️」
「アゥアー!」
「いってらっしゃい」
グワングワングワングワングワングワングワン‼︎‼︎
「ぎゃーーーーーッ‼️‼️‼️」
耳を塞ぐなつみ。
「うるせぇーッ‼️‼️‼️」
「だって、だって、だって‼️‼️💦」
掛け布団を掻き寄せるなつみ。
「起きる時間なの❗️顔洗って、寝癖は直してあるから、早く着替えて出発するよ❗️」
そう言ったなつみは、起こしたばかりのなつみに服を投げつけた。
「…?」
ほっぺを触ったり、髪を撫でてみたりすると、確かに、寝起きとは思えない、さっぱり感があった。
「あ❗️きみ、アーロニーロだな❗️ぼくに化けてる❗️こんなイタズラするなんて、悪い子だぞ☝️))」
ぷっくり膨れて指を振る。その様子に呆れたのか、がっくりするもうひとり。
「違う。はぁ…、こんなアホだったか」
「ん⁉️😠」
アホとは心外だ。
だが、立っている方のなつみには、このおとぼけに付き合っている暇はない。
「良い?ぼくはアーロニーロじゃない。未来から来たんだ」
「へッ⁉️本物のぼくなの⁉️どうして‼️」
「きみをここから出しに来た」
「え?何言ってるの?」
自分の反応だからこそ、余計に情けなさを感じるようだ。
「もうッ。ぼくはここに閉じ込められてたッ‼︎市丸隊長に睡眠薬飲まされて、その扉は外側から鍵がかけられてた!ぼくが藍染隊長の計画の邪魔になるから、この部屋から出られないようにしてたんだ‼︎」
聞く側のなつみは口をあんぐりと開け、何のこっちゃという顔をしていた。ぼんやりしている時間は無いと、未来から来たなつみは掛け布団を畳んで、パジャマを掴んで脱がし始めた。
「ちょっと、自分でできるよ💦」
「だったら早くしてよ‼︎」
ズドーン……
遠くで音がした。それに気付き、パジャマのシャツを脱いだところで止まった。
「ウル…キオラ…?こんな霊圧してたっけ。っていうか、戦ってる?何で」
「攻め込まれたから」
懐かしい波動も響いてくる。
「うそ。…、更木隊長、卯ノ花隊長、朽木隊長、涅隊長、志波副隊長、虎徹副隊長、それにルキアさん!こっちに来てるの⁉︎まさか‼︎」
「それから、阿散井副隊長と織姫さんの同級生も来てる」
「…誰って?」
壁の向こうにある、虚夜宮中央にそびえる5本の塔を向く。
「ぼくと織姫さんは、藍染隊長、東仙隊長、市丸隊長に誘拐されてたんだよ。だからみんな、ぼくたちを助けに来た。それに破面たちが応戦してるんだよ」
信じられないといった顔で固まってしまう。相手はビンタする勢いで、更に言葉を付け加えていった。
「おかしいと思ってたでしょ⁉︎知らないうちに連れてこられて、尸魂界に帰してもらえない上に連絡すら取らせてくれない!特別とか言って秘密にされて、怪しいことばっかりじゃん‼︎大体、隊長が3人もこんな長期で隊を離れれるわけないし!あの人たちは、護廷十三隊を裏切ってこっちに来たんだよ‼︎良いから早く着替えて!」
「う、うんッ」
着替えを再開。なつみ自身、確かにこの虚圏の街づくり特別任務を不審に思っていた。だが、立場や破面たちへの仲間意識から、本気で声を上げる気にはなれないでいた。しかし、目の前にいる自分は実在している。戦う死神の霊圧や、弱った破面の霊圧も感じる。
「グリムジョーが弱ってる。ねぇ、隊長たちと十刃のほとんどが居ないみたいだけど、例の何するか教えてくれない計画で留守にしてるの?」
「……」
パジャマを畳んでくれる未来のなつみは、一瞬言いにくそうにしたが、答えてくれた。
「藍染隊長は、霊王宮に行きたがってる。理由は知らないけど。それで王鍵っていう鍵が必要で、今から作ろうとしてるんだよ。場所は現世の空座町。織姫さんの街。そこで、10万人くらいの魂魄を使って、王鍵を作るつもりなんだ。隊長たちはみんな現世にいる」
「魂魄を使うって」
顔が青ざめる。
「街ひとつ分の命を、ごっそり奪うってこと」
「ッ…‼︎⁉︎そんな狂った計画、やるわけないじゃん‼︎市丸隊長と東仙隊長が、ついてくわけないじゃん‼︎‼︎」
「どんなに騒いだって、やってるもんは、やってるの‼︎崩玉を創るのにも、数えきれない犠牲者がいた!あの3人は、大罪人なの‼︎」
フルフルと否定するように首を振る。
「違う。違うよ、そんなの」
「もちろんそんな計画、尸魂界が黙ってない。前もってこの狙いに気付いた護廷十三隊が、空座町の複製を造って、本物とすり替えた。本物は流魂街に転送されて、藍染隊長たちがいるのは偽物の方。護廷隊は、現れた藍染隊長たちをその場で捕まえるつもり。だから、向こうでも隊長格が揃ってる。
だけど、藍染隊長も警戒してて、2人の隊長だけじゃなく、スタークさん、バラガンさん、ハリベルさん、彼らの従属官も同行させてる。つまり、虚圏と現世の2箇所が同時に戦場になってる」
マントと斬魄刀、そして霊圧を遮断するコートも準備される。
「ウルキオラとヤミーとグリムジョーがいるのはわかるよ。けど、他はどこ?ノイトラ、ザエルアポロ、ゾマリん、アーロニーロ、ルピは?」
現世に向かっていないということは。
「ルピは、グリムジョーの腕が治った途端に殺されてた」
「そんなッ」
「あとは、…来ている隊長たちに斬られた」
「ッ‼︎‼︎」
ショックで胸を押さえて縮こまるなつみ。涙が込み上げてきて仕方がない。
「護廷十三隊の目標は、藍染隊長の阻止だけじゃない。ぼくの救出もだ。それから破面たちの動機は、藍染隊長のためじゃなく、ぼくにある。ぼくとこの先もずっと一緒に暮らせるように、護廷十三隊を潰すつもりなんだ」
「頼んでないよ…そんなこと…」
「でももう戦争は起きた。止めに行くよ」
熱り立って、胸ぐらを掴んだ。
「どうしてもっと先に来て、教えてくれなかったの‼︎‼︎そしたら、みんな死なずに済んだじゃんか‼︎‼︎どうして、何で‼︎⁉︎」
相手はその腕を落ち着いて握った。
「覚えておいて。世界は、ぼくの理想だけでできてない。みんなの理想が未来を目指してる。運命を変えるのだって、神様か誰かの許容範囲がある。ぼくは、このタイミングにしか来られなかったんだ。そのうちわかるよ。でも今じゃない。今やらなきゃいけないのは、起きてしまった争いを終わらせること。とにかく藍染隊長を止めることなんだよ」
掴んでいる手を下ろす。
「藍染隊長は崩玉を身体に取り込んで、死神じゃなくなってる。それに、鏡花水月の能力があるから、普通に戦っても、勝てないんだ。やっつけられないから、やろうとしていることを諦めさせて、動きを封じるしかない。そこまでのことは護廷隊もわかってないから、戦い抜くことしか考えてないんだ。ぼくはここでやることがあるから、きみが藍染隊長を説得するんだよ。それがきみの役目」
聞くなつみの目が不安で揺らいでいる。
「あとそれから、これも覚えてて」肩を掴んで、しっかり目を合わせた。「こっちのみんなは確かにぼくを騙してきたけど、本当の部分も、ちゃんとぼくは見てきたんだ。それを忘れずに、信じ抜いて。お願い」
「ほんとうの…?」
「うん。思い出の中にある」
未来のなつみはベッドから離れ、机に置いてある何かを手に取った。
「行く前にこっちおいで。腹ぺこで戦場には行かせられないから」
首を傾げながら、なつみはベッドから降り、そちらへ近づいた。机に用意されていたのは、スープジャーと箸。中身は。
「お味噌汁」
「おにぎりも要る?ま、こっちは後で良っか。とりあえず、お味噌汁だけ、掻き込んでって」
椅子に座らされた。お腹が空いているので、言われるがまま、味噌汁を飲むことにする。
「いただきます」
ひと口含むと、ピンときた。
「ん!」唇を引っ込めて味わう。「これ…、ケイジの」
この反応に、微笑みが返ってきた。
「そう。あいつのレシピで作った。8人で、『きみが元気に出かけられますように』って心を込めて作ったんだ。おいしいでしょ😊」
「う…うんッ」
懐かしい味に、なつみは食らいついた。湧き出て滲み出るオカン感。
「勇気を持って立ち向かえば、この未来にたどり着けるからね」
鼻を啜りながら味噌汁を飲むのに集中しているなつみには、この言葉は届いていなかった。
それでも構わなかった。扉に向い、開け、廊下に顔を出すと、誰かを呼んだ。
「おいで。もう行ける」
部屋に顔を覗かせたのは、十刃ではないが、心強い味方だった。
「ワンダーワイス❗️無事で良かった。おいでおいで❗️」
「アウーッ」
完食したジャーを置いて、なつみはワンダーワイスを抱きしめた。
「むぎゅーっ」
「ウーウー」
「感動の再会は、その辺にしといてよ。グズグズしてると間に合わなくなる」
斬魄刀を腰に差し、マントを首に巻き、コートを着る。
「ぼくは虚夜宮に残って、負傷者の手当てをする。任せてごめんけど、倒された破面たちを連れてきて欲しいんだ。行きはワンダーワイスが黒腔を開いてくれる。現世に着いたらこれを2本、間隔を空けて立てて、繋いだコードに霊力を送って。間に黒腔の入り口が開く。帰りはそこを通って来て。絨毯で包んだから、担架に使って」
「わかった」
左手に絨毯に包まれた2本のポール、右手におにぎりを持たせた。
「ワンダーワイスは後から来るように命じられてるんだ。それに乗じて、こっそり入り込むよ。総隊長が炎の壁で隊長たちを囲って、3人を封じ込めてる。先に破面たちと戦ってるから、救出を優先して。もしかしたら、助っ人がいるかもしれないけど、驚かないでね。それが済んだら、戦いを止める。それまで、他の死神に見つからないようにするんだよ。気を抜かないで」
「了解❗️🍙」もぐもぐしながら、こっちからもお願いを。「こっちのことは任せた❗️」
「了解👍」
ご飯粒が付いた手も👍っと応える。だから、もう1人のも欲しくなる。ふたりのなつみに見られたら、応えざるを得ない。
「ウッ👍」
「よっしゃ😆」
👍
「ん?」
小さな手が4つめに現れた。
「悪者を懲らしめてやろう。ようやく奴にガツンと言ってやれる🐥」
「頼んだよ、相棒。ぼくをサポートしてね」
👍
「お前のことは、私がサポートしよう🐥」
「ウー⁇⁇?」
2人のなつみと2人のムッちゃんに囲まれて、混乱気味のワンダーワイス。
「はははッ❗️変な感じだよね❗️」
「笑ってないで、こっから真面目モード。向こうは本当に大変なことになってるから、気をつけなきゃ」
「うん!」
ちゅちゅちゅと米粒も平らげた。
「よし、行こう!ワンダーワイス、開けて」
「ウ」
上下に空間が裂けた。ふたりは手を繋ぎ、もうひとりのなつみに手を振った。
「行ってきます❗️」
「アゥアー!」
「いってらっしゃい」