第九章
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なつみ復活の朝、大切なお知らせが言い渡された。
「次の計画を考えたよ」
お粥をもぐもぐ食べていると、藍染が偉そうに背もたれにもたれて座り、脚を組み、発表した。
「競技場を造ってくれないかな?」
もぐもぐもぐ
「何のですか❓😗」
「多目的だね。球技大会がしたいって言っていたじゃないか。運動会なんかも」
「グラウンドってことですか」
「広場だけじゃなく、客席もあると良いよね。虚夜宮の皆が集まれるくらいに」
「はぁッ⁉️」
指では数えきれない、数千人規模。
「音楽祭なんかもできれば」
「スタジアム造れって言ってます⁉️ドーム⁉️何スか⁉️バスケのコート1面分の体育館じゃダメなんスか⁉️」
「僕はテニスがしたいな」
「フシャーッ‼️」
「オレ、サッカーしたい」
「フシャシャーッ‼️」
「ウイイレさせていただきます💧」
とかなんとか言い合ったものの、断ることもできず、なつみは競技場建設に着手することになった。
「もう❗️ほんっと、簡単に言うんだから❗️あの悪者‼️」
設計のラフ図を殴り描きする。
「しかも、自分は全く手伝わんと、別の計画に集中するて。勝手な人や」
2人の部屋で市丸は…、荷造りをしている。
「しかも❗️十刃のみんなも、従属官たちもみんな、そっちの計画に持ってかれちゃうなんて❗️別にいなくてもできなくないけど、でも、時間かかっちゃいますよ…」
ペンを鼻と上唇の間に挟んで、引いた図案をじっくり眺める。
「椅子、何脚作るん?」
「いち、に、さん、よん、いっぱい‼️‼️😫」
お手上げだ。
「フフフッ、久しぶりに聞いたわ、それ」
落下中のペンをナイスキャッチした市丸は、机の上にそっと置いてあげる。
「お正月休みが…😞」
なつみはパタリと机に倒れた。
「いつ帰れるんやろね…」
ふんわりと頭を撫でて、慰めてくれる。
「お風呂作ったばっかりなのに、引越せだなんてぇ」
「しゃあないやん。予定地が遠いんやもん」
「徹底的に効率的に動いて、暇な時間をありったけ作ってやる」
ぷるぷると拳を握り、決意に燃える。
「ボクが支えてあげるから、一緒に頑張ろな」
「はぁーい」
市丸は監視役を命ぜられた。
競技場の建設は進み、まずアリーナから造られていった。円形状の外観に、サッカー場は却下し、屋根を設け、バスケのコート1面分の広さにした。他の種目のコートやピッチは、追々、周囲の土地に築いていくことになった。できればの話だが。直近の悩みは、やはり椅子である。機械で自動に同じ規格では作れない。どうしても手作業になってしまい、非効率的だ。何故なら、目指すはガウディの思想であるから。
「使いやすさ、座りやすさ、そして装飾。デザインに妥協はできないよ。全てのヒントは自然の中に。ん〜ん🤔」
スタークとリリネット、左腕が急に戻ってびっくりさせてきたグリムジョーを誘い、市丸と5人でお風呂に入り、上がると珍しくすぐには帰らず、市丸に連れられて、初めて行く部屋に向かった。
「マジですごいですね、その人。グリムジョーの腕、完璧に治ってたじゃないですか」
「ほんまやで。良え人来てくれたて、藍染隊長喜んでたんやで」
「そうでしょうとも」
うんうんと頷く。
「ここや」
知らない人の霊圧が漂う部屋の前に到着。ノックをする。
「入るでー」
返事も聞かずにドアを開けようとした市丸の手を止めた。
「ちょちょちょちょちょ💦」
「なんや」
「ちゃんと名乗らないと、失礼ですよ。市丸隊長と木之本なつみです。入って良いですか❓」
「……」
なつみは礼儀正しく返事を待ったが、変な間があった。
「あの…」
「ごめんなさいっ。どうぞ」
「はわっ、かわいい声ですよ」
中から聞こえてきた声に、なつみは少し興奮して市丸の腕を叩いた。
「失礼しまーす😊」
ドアを開けると、やや不安そうにソファの前に立っている、井上織姫がこちらを窺っていた。
「こんばんは、織姫さん」
「こんばんは」
「入り、なつみちゃん。織姫ちゃんの隣り、座らせてもらい」
「はぁい✋」
とことことこと、織姫のそばに行き、なつみはにっこり笑った。
「はじめまして、織姫さん。ぼく、三番隊第二十席の木之本なつみです。よろしくお願いします」
手を差し出して、握手を求める。
「はじめまして。井上織姫です」
織姫も手を伸ばしてくれた。なつみは両手でその手を包んであげた。
市丸はオットマンに座った。
「自己紹介済んだら、次は特技を披露してもらおか」
織姫から先にソファに座らせ、なつみは2人の間に座った。
「それが良えな」市丸がなつみの後ろにあるクッションを指した。「貸してみ」
「はい」
渡した。
サクッ
「わぁ😟」
斬魄刀で、クッションを大きく斬ってしまった。
「直して」
切り口から、中の綿がモコッと出てきてしまっているクッションを、織姫に押し付けた。
「そんなぁっ。まさか❗️傷の治療だけでなく、お裁縫まで得意なんですか❗️」
「ちゃーうわ。黙って見とき」
腕を組んで、顎を引き、二重顎で、横切るクッションを目で追った。
織姫はクッションを膝の上に置き、手を切り口に添えると、彼女のヘアピンからふたつの物体が飛び出した。
「なにゃ⁉️」
なつみの視線が織姫の頭から手元へ、パパッと移る。
「双天帰盾、私は拒絶する」
謎の物体は切り口を挟んで止まり、間に光の空間を作り出した。
「むおお‼️」
見る見るうちにクッションは、元通りに復元される。
「できました」
「おぉお〜👏」
直ったクッションを手に取り、なつみは切り口のあったところを撫でたり、ぽふぽふと両側から挟んでみたりした。
「やっば。なんともない。すごいっすね❗️」
再び二重顎の顔で「ひえ〜」と感嘆する。
「ほな、なつみちゃんもやってみ」
「はぁ⁉️簡単に言わないでくださいよ‼️」
「そんな〜」と残念な表情になる市丸。
「医療担当として、織姫ちゃんをスカウトしてきたねんけど、なつみちゃんも同じことできるようになれば、この子の負担も減るし、キミも成長するんやで。藍染隊長がそれを望んでんねん」
「だって❗️」なつみは織姫のヘアピンを指して訴えた。「なんだかよくわかんない何か使ってたじゃないですか❗️無理ですよ。鬼道とか回道ならできるでしょうけど。斬魄刀でもないんですよ。織姫さんて、何者なんですか。どこからスカウトしてきたんですか」
クッションをきゅうと抱いて、織姫を見た。
「その子はな、東京の空座町に住む女子高生や」
横からそう言った市丸にギョッとした。
「女子高生⁉️」パッと市丸を見る。「人間⁉️」パッと織姫を見る。「殺したんすか‼️⁉️」パッと市丸を見た。
「そんな物騒なことするわけないやろ。ちゃんと説明して、了解して、ここに来てもろたんよ。肉体は装置で霊子と変換してあるから、人間としても生きてるわ」
「そうなんですか」
頷く織姫を見て、なつみはそれでも不思議に思う。
「でも、普通の人間じゃないですね。霊圧がはっきりしてますし、今の能力も」
じーっとヘアピンを見つめる。
「ごく稀にやけど、特殊な力を持って生まれた人間がおるんよ。斬魄刀の能力のようであり、虚の技にも似とる特殊な力や。織姫ちゃんのは『事象を拒絶する』力なんよね」
「はい」
「じゃあ、今のは、クッションを修復したというより、斬ったことを無かったことにしたってことですか?」
「そう」
また二重顎。
「ふぇッ❗️無理❗️」
「そうですよね。ぼくたちでなければ、できませんよ」
「むお⁉️しゃべった‼️つか、妖精さんじゃん❗️」
なつみを庇ってくれたのは、舜桜だった。
「ぼくは舜桜。よろしくね、なつみさん😊」
「よろしく〜😚」
小さな手が差し出されたので、人差し指で応えようとしたら、なつみと舜桜の間にご機嫌斜めなヤツが現れた。
「お前達でなければできないだと?私たちを舐めるなよ、小僧」
「ムッちゃん❗️」
「なつみ!お前も簡単に諦めるな!」
初めて見る妖精に、織姫は目をパチクリさせた。
「申し遅れた。私はなつみの相棒の…」翼の色を確認。「夢現天道子だ🐥」
「ぼくの斬魄刀なの。ねぇムッちゃん、もしかして織姫さんの能力を再現できるの❓」
手を腰に当て、胸を張るムッちゃん。
「ああ、できるとも!恐らく!」
ガクッ💦
「たぶんかい❗️🫱💥」
「あはは😅」
舜桜も苦笑いだ。
「お前!」ムッちゃんはビシッと舜桜を指した。「事象の拒絶とは、本当か」
「そうだよ。ぼくらは、織姫さんの望むように、傷を癒し、盾で身を守り、敵の存在を拒絶して攻撃だってする」
「なるほど。藍染が興味を持つわけか」
「特別だからね」
自信満々の舜桜を、ムッちゃんは嘴に指を当てて観察した。
「私たちは大概のことはできるが、対象となる相手からの許可が、能力の発動条件にある。なつみが決めたことだ。それはなんとかできるとして。事象の拒絶をどうするかだ。起きてしまったことを無かったことにするかぁ…」
「んー、イメージできないと、やりたい結果をアウトプットできないもんね。難しいね🤔」
なつみも悩む。
そこでヒントを出してくれたのは、市丸だった。
「直り方を観とったけど、最後に斬られた縁っこから順番に戻ってくみたいやったで。なつみちゃんは過去に飛べるやんか。あんな感じに、起きたことを逆再生したいて思えば、できるんとちゃうの?」
なつみとムッちゃんは、二重顎で口をあんぐり開けた。
「天才かよ🐥」
「で、でもさ、タイムスリップってあんまりやっちゃいけないことだって言われてるじゃん。運命とは違うことをしたら、未来に起こりえなかった問題が発生したりするって。ダメなんじゃないですか?やったら。時間経過の流れと一緒に治療をするのは自然ですけど、逆再生だなんて。不自然です」
織姫には考えたこともなかった発想だった。自分がしてきたことは、いけないことだったのかと、胸を押さえてしまう。しかし。
「今更やろ🫱」
タンッと市丸がなつみの頭のてっぺんにチョップした。
「痛いじゃないですかぁ😣」
「キミらがやってきたこと、大体不自然でしかないで。物に命宿したり、時空飛び越えたり、京楽さんにキスさせようとしたり」
「それ、言うの今じゃない、てか、させてない、させてないと言ったら嘘になるけど、わざとじゃないです❗️最後のいらない❗️遡りすぎですッ‼️💦」
手をブンブン振ったり、織姫の耳を塞いだり、大変大変。
「志波海燕の死を回避した時点で、かなり元の運命から逸れたんやで。起こるかどうかもわからん危機なんて、今更気にしたかて、しゃあないやろ。目の前で苦しんどる人がおったら、遮二無二助けに行くんがキミやし。救われたらあかん人なんかおらんいうのが、なつみちゃんの信念やろ。今覚えられること拒否して、いつか後悔する時が来るんやない?その方が、キミには危機やと思うけど」仏頂面のおでこを指でツンと押す。「なぁ、なつみちゃん」
「良いこと言うな、市丸🐥」
「うん。グッときたね」
妖精たちの感想と同様の想いに、織姫の心も晴れた。
「木之本さん、やってみようよ。きっとできるよ!」
「ほぇ😧」
織姫はなつみの方を向いて、エールを送るように、両手の拳を胸のところでギュッギュッと握って振った。
「朽木さんから木之本さんのこと聞いたよ。すごい力を持ってるって。何でもできるって。がんばればできるようになるよ。ハッチさんていう人も、あたしと似た力を持ってるから、不可能じゃないと思う。大丈夫だよ!」
さっきまでの大人しさはどこへやら。織姫は熱心になつみにそう言って励ました。
「おおぅ。めっちゃしゃべるやん」若干引くなつみ。「朽木さんて、…ルキアさんのこと?」
「うん。あたし、朽木さんに誘ってもらって、十三番隊でしばらく戦うトレーニングをしてたんだ。浮竹隊長も志波副隊長も優しくて、いろいろ面倒を」
言葉の途中だが、なつみの目が何かをききたがっているように見えて、止まってしまった。
「クーちゃんは」
ポツリとなつみが言った。市丸の右手が左腕の下に移動する。
「久原って隊士とは会わなかった?十三番隊にいるけど、ぼくと同期の仲間なの。これ、これと似てるお守りしてるヤツなんだけどさ」
なつみは斬魄刀に結んでいる交通安全のお守りを見せた。
織姫は、返事に迷った。
「俺、久原っていいます。織姫さんを安全に現世までお連れしますよ!任せてください!」
「待て、破面。まだ戦えるぞ。織姫さんに近づくな!」
「ダメ!逃げて!」
「ほう、少しはまともに戦えると思えば、お前、なつみの同期とかいう輩か。その飾りを、揃いで付けているらしいな」
「そこまで話したのか、あいつ」
「俺たちは仲間だからな」
「違うだろ。なつみは、俺たちの仲間だ‼︎‼︎」
「ならば何故あいつは帰らない」
「お前らが」
「俺たちと居ることを選んでいるからだ。そしてお前達は取り戻しにも来ない。その程度の弱さで、なつみといつまでも肩を並べていられると思うな」
「言っただろ。俺はまだ、戦えるんだよ‼︎‼︎」
「やめて‼︎‼︎」
「なつみを返せ‼︎返せーッ‼︎‼︎」
なつみが縋るように見つめてくる。その目を避けたくて、手も顔も下げた。
「織姫さん…?」
だが、嘘よりも、本当のことを部分的にも伝えた方が、なつみのためになると思い、市丸の動きに注意しながら話すことにする。
「会ったよ。久原さんと」
「ほんと⁉︎」
柄を握っている。
「木之本さんに会いたがってた」
それを聞いて、なつみの目に涙が溜まっていった。
「クーちゃん…。元気にしてた?」
「怪我をしてたけど、治してあげたから、もう大丈夫だよ」
「うそ!ぼくが知らないうちに。あいつらが怪我したら、ぼくが治すって約束してたのに…。ありがとう、織姫さん」
市丸は手の位置を変えた。
「ボクからも礼を言わせてもらうわ。元やけど、部下のクーちゃんを助けてくれて、ありがとう」
なつみはゴシゴシと目元を拭いて、やる気を湧き上がらせる。
「やーっと向こうからのメッセージが届きましたね❗️よーっし。クーちゃんの傷、今度はぼくが治してあげれるように、新しい技を修得してやるぞー❗️オーッ❗️✊」
「オー❗️🐥」
なつみとムッちゃんコンビが拳を突き上げた。
「で…、どうやるの?」
「ウォウ❗️そうだよ、ムッちゃん。どうしよう」
舜桜のツッコミで、話は発動法に戻される。
「フフフッ、私を舐めるなと言ったろう。ちゃんと頭の隅で考えていたさ」
「それで何か閃いた❓」
「当然だ。要は『タイムふろしき』なんだ。そう言われると、イメージしやすいだろう?」
「タイムふろしきって、あのドラえもんの❓」
「そうだ!いよいよ現実味を帯びてきたな😤」
「いや、フィクションでしょ💧」
ムッちゃんはスィーッと飛び、ソファの背に立った。そしてなつみのマントを引っ張る。
「これがお前の、タイ、ム、ふろ、しき、だ。そうだろ」
言葉のリズムに合わせて、マントをクイクイした。
「えぇ❓これが❓」
「そうだろう。お前はこのマントを、虚の昇華に使っている。昇華は霊子を分解することで、今回やろうとしている結合と逆の作用だ。お前がやってきた昇華が、タイムふろしきで言うところの、時間を早送りする機能ならば、事象の拒絶は」
「時間を巻き戻す機能」
頷くムッちゃん。
「つまり、いつもの外側を内側にして念じれば、お前にも事象の拒絶ができるんじゃないか?」
「ほお😮」
手を打って、納得のなつみ。
「キミは手伝わないんだ😅」
ムッちゃんはキッと睨んだ。
「良いか、ちっこいの。なつみと共に道を歩み、この子を見守るのが私の役目だ。そして、道を切り拓くのがなつみの役目。なつみの運命を左右することを、私がしてはならないのだ」
「はいはい、わかったから。ケンカするんやったら、ふたりともおうち帰り」
小さい子扱いが上手い市丸に、舜桜とムッちゃんがキッ。
「嫌です!」
「お前の指図は受けん!」
「頑固やね〜」
市丸は妖精たちを放っておくことにする。
「ほな、なつみちゃんへの課題を言い渡すで」
市丸の懐から、ハンカチが出てきた。それは結ばれており、中に何かを包んでいる。解いて、中身を開けて見せてあげる。
「はわわ、それ」
「直したいやろ」
大きい粒をひとつ手に取り、掲げて覗き込んでから、大切に握りしめた。
「持ってきてくれたんですね」
「もう新しいの作ってくれてるかもしれへんけど、こっちの方が、なつみちゃんにとっては本物やん。織姫ちゃんに直してもらうより、自分で直したいやろなー思たんよ。大事な宝物やからな」
「うゆゆゆゆ🥺」
しまっておいた涙が、溢れ返してしまった。
「たいちょーッ‼️‼️😭」
抱きついて、大泣きが始まる。
「あいがどーごやいまぅー」
「これでまた、京楽さんとお揃いになれるな」
「はいぃー」
瀞霊廷で耳にした噂話とは違い、目の前にいる市丸は、優しい笑顔を讃えていた。
「あんまり泣いたらあかんよ。さ、やってみよか。マント取り」
「はいっ」
指輪のカケラをハンカチに返して、なつみはぐすんぐすんしながらマントを外した。
いつもとは逆の面を広げて、その上に指輪だったものを乗せてもらう。巾着のように包んで、霊圧を上げ、念じる。
「元通りに戻って」
数秒後、4人が見守る中、マントを広げてみるのだが、もう手の感触でなつみにはわかっていた。笑顔と涙が誰よりも先に溢れた。
「できましたぁ」
祝福を受けながら、なつみは京楽とのペアリングを、ようやく再び着けることができた。
「春水さん…///」
「次の計画を考えたよ」
お粥をもぐもぐ食べていると、藍染が偉そうに背もたれにもたれて座り、脚を組み、発表した。
「競技場を造ってくれないかな?」
もぐもぐもぐ
「何のですか❓😗」
「多目的だね。球技大会がしたいって言っていたじゃないか。運動会なんかも」
「グラウンドってことですか」
「広場だけじゃなく、客席もあると良いよね。虚夜宮の皆が集まれるくらいに」
「はぁッ⁉️」
指では数えきれない、数千人規模。
「音楽祭なんかもできれば」
「スタジアム造れって言ってます⁉️ドーム⁉️何スか⁉️バスケのコート1面分の体育館じゃダメなんスか⁉️」
「僕はテニスがしたいな」
「フシャーッ‼️」
「オレ、サッカーしたい」
「フシャシャーッ‼️」
「ウイイレさせていただきます💧」
とかなんとか言い合ったものの、断ることもできず、なつみは競技場建設に着手することになった。
「もう❗️ほんっと、簡単に言うんだから❗️あの悪者‼️」
設計のラフ図を殴り描きする。
「しかも、自分は全く手伝わんと、別の計画に集中するて。勝手な人や」
2人の部屋で市丸は…、荷造りをしている。
「しかも❗️十刃のみんなも、従属官たちもみんな、そっちの計画に持ってかれちゃうなんて❗️別にいなくてもできなくないけど、でも、時間かかっちゃいますよ…」
ペンを鼻と上唇の間に挟んで、引いた図案をじっくり眺める。
「椅子、何脚作るん?」
「いち、に、さん、よん、いっぱい‼️‼️😫」
お手上げだ。
「フフフッ、久しぶりに聞いたわ、それ」
落下中のペンをナイスキャッチした市丸は、机の上にそっと置いてあげる。
「お正月休みが…😞」
なつみはパタリと机に倒れた。
「いつ帰れるんやろね…」
ふんわりと頭を撫でて、慰めてくれる。
「お風呂作ったばっかりなのに、引越せだなんてぇ」
「しゃあないやん。予定地が遠いんやもん」
「徹底的に効率的に動いて、暇な時間をありったけ作ってやる」
ぷるぷると拳を握り、決意に燃える。
「ボクが支えてあげるから、一緒に頑張ろな」
「はぁーい」
市丸は監視役を命ぜられた。
競技場の建設は進み、まずアリーナから造られていった。円形状の外観に、サッカー場は却下し、屋根を設け、バスケのコート1面分の広さにした。他の種目のコートやピッチは、追々、周囲の土地に築いていくことになった。できればの話だが。直近の悩みは、やはり椅子である。機械で自動に同じ規格では作れない。どうしても手作業になってしまい、非効率的だ。何故なら、目指すはガウディの思想であるから。
「使いやすさ、座りやすさ、そして装飾。デザインに妥協はできないよ。全てのヒントは自然の中に。ん〜ん🤔」
スタークとリリネット、左腕が急に戻ってびっくりさせてきたグリムジョーを誘い、市丸と5人でお風呂に入り、上がると珍しくすぐには帰らず、市丸に連れられて、初めて行く部屋に向かった。
「マジですごいですね、その人。グリムジョーの腕、完璧に治ってたじゃないですか」
「ほんまやで。良え人来てくれたて、藍染隊長喜んでたんやで」
「そうでしょうとも」
うんうんと頷く。
「ここや」
知らない人の霊圧が漂う部屋の前に到着。ノックをする。
「入るでー」
返事も聞かずにドアを開けようとした市丸の手を止めた。
「ちょちょちょちょちょ💦」
「なんや」
「ちゃんと名乗らないと、失礼ですよ。市丸隊長と木之本なつみです。入って良いですか❓」
「……」
なつみは礼儀正しく返事を待ったが、変な間があった。
「あの…」
「ごめんなさいっ。どうぞ」
「はわっ、かわいい声ですよ」
中から聞こえてきた声に、なつみは少し興奮して市丸の腕を叩いた。
「失礼しまーす😊」
ドアを開けると、やや不安そうにソファの前に立っている、井上織姫がこちらを窺っていた。
「こんばんは、織姫さん」
「こんばんは」
「入り、なつみちゃん。織姫ちゃんの隣り、座らせてもらい」
「はぁい✋」
とことことこと、織姫のそばに行き、なつみはにっこり笑った。
「はじめまして、織姫さん。ぼく、三番隊第二十席の木之本なつみです。よろしくお願いします」
手を差し出して、握手を求める。
「はじめまして。井上織姫です」
織姫も手を伸ばしてくれた。なつみは両手でその手を包んであげた。
市丸はオットマンに座った。
「自己紹介済んだら、次は特技を披露してもらおか」
織姫から先にソファに座らせ、なつみは2人の間に座った。
「それが良えな」市丸がなつみの後ろにあるクッションを指した。「貸してみ」
「はい」
渡した。
サクッ
「わぁ😟」
斬魄刀で、クッションを大きく斬ってしまった。
「直して」
切り口から、中の綿がモコッと出てきてしまっているクッションを、織姫に押し付けた。
「そんなぁっ。まさか❗️傷の治療だけでなく、お裁縫まで得意なんですか❗️」
「ちゃーうわ。黙って見とき」
腕を組んで、顎を引き、二重顎で、横切るクッションを目で追った。
織姫はクッションを膝の上に置き、手を切り口に添えると、彼女のヘアピンからふたつの物体が飛び出した。
「なにゃ⁉️」
なつみの視線が織姫の頭から手元へ、パパッと移る。
「双天帰盾、私は拒絶する」
謎の物体は切り口を挟んで止まり、間に光の空間を作り出した。
「むおお‼️」
見る見るうちにクッションは、元通りに復元される。
「できました」
「おぉお〜👏」
直ったクッションを手に取り、なつみは切り口のあったところを撫でたり、ぽふぽふと両側から挟んでみたりした。
「やっば。なんともない。すごいっすね❗️」
再び二重顎の顔で「ひえ〜」と感嘆する。
「ほな、なつみちゃんもやってみ」
「はぁ⁉️簡単に言わないでくださいよ‼️」
「そんな〜」と残念な表情になる市丸。
「医療担当として、織姫ちゃんをスカウトしてきたねんけど、なつみちゃんも同じことできるようになれば、この子の負担も減るし、キミも成長するんやで。藍染隊長がそれを望んでんねん」
「だって❗️」なつみは織姫のヘアピンを指して訴えた。「なんだかよくわかんない何か使ってたじゃないですか❗️無理ですよ。鬼道とか回道ならできるでしょうけど。斬魄刀でもないんですよ。織姫さんて、何者なんですか。どこからスカウトしてきたんですか」
クッションをきゅうと抱いて、織姫を見た。
「その子はな、東京の空座町に住む女子高生や」
横からそう言った市丸にギョッとした。
「女子高生⁉️」パッと市丸を見る。「人間⁉️」パッと織姫を見る。「殺したんすか‼️⁉️」パッと市丸を見た。
「そんな物騒なことするわけないやろ。ちゃんと説明して、了解して、ここに来てもろたんよ。肉体は装置で霊子と変換してあるから、人間としても生きてるわ」
「そうなんですか」
頷く織姫を見て、なつみはそれでも不思議に思う。
「でも、普通の人間じゃないですね。霊圧がはっきりしてますし、今の能力も」
じーっとヘアピンを見つめる。
「ごく稀にやけど、特殊な力を持って生まれた人間がおるんよ。斬魄刀の能力のようであり、虚の技にも似とる特殊な力や。織姫ちゃんのは『事象を拒絶する』力なんよね」
「はい」
「じゃあ、今のは、クッションを修復したというより、斬ったことを無かったことにしたってことですか?」
「そう」
また二重顎。
「ふぇッ❗️無理❗️」
「そうですよね。ぼくたちでなければ、できませんよ」
「むお⁉️しゃべった‼️つか、妖精さんじゃん❗️」
なつみを庇ってくれたのは、舜桜だった。
「ぼくは舜桜。よろしくね、なつみさん😊」
「よろしく〜😚」
小さな手が差し出されたので、人差し指で応えようとしたら、なつみと舜桜の間にご機嫌斜めなヤツが現れた。
「お前達でなければできないだと?私たちを舐めるなよ、小僧」
「ムッちゃん❗️」
「なつみ!お前も簡単に諦めるな!」
初めて見る妖精に、織姫は目をパチクリさせた。
「申し遅れた。私はなつみの相棒の…」翼の色を確認。「夢現天道子だ🐥」
「ぼくの斬魄刀なの。ねぇムッちゃん、もしかして織姫さんの能力を再現できるの❓」
手を腰に当て、胸を張るムッちゃん。
「ああ、できるとも!恐らく!」
ガクッ💦
「たぶんかい❗️🫱💥」
「あはは😅」
舜桜も苦笑いだ。
「お前!」ムッちゃんはビシッと舜桜を指した。「事象の拒絶とは、本当か」
「そうだよ。ぼくらは、織姫さんの望むように、傷を癒し、盾で身を守り、敵の存在を拒絶して攻撃だってする」
「なるほど。藍染が興味を持つわけか」
「特別だからね」
自信満々の舜桜を、ムッちゃんは嘴に指を当てて観察した。
「私たちは大概のことはできるが、対象となる相手からの許可が、能力の発動条件にある。なつみが決めたことだ。それはなんとかできるとして。事象の拒絶をどうするかだ。起きてしまったことを無かったことにするかぁ…」
「んー、イメージできないと、やりたい結果をアウトプットできないもんね。難しいね🤔」
なつみも悩む。
そこでヒントを出してくれたのは、市丸だった。
「直り方を観とったけど、最後に斬られた縁っこから順番に戻ってくみたいやったで。なつみちゃんは過去に飛べるやんか。あんな感じに、起きたことを逆再生したいて思えば、できるんとちゃうの?」
なつみとムッちゃんは、二重顎で口をあんぐり開けた。
「天才かよ🐥」
「で、でもさ、タイムスリップってあんまりやっちゃいけないことだって言われてるじゃん。運命とは違うことをしたら、未来に起こりえなかった問題が発生したりするって。ダメなんじゃないですか?やったら。時間経過の流れと一緒に治療をするのは自然ですけど、逆再生だなんて。不自然です」
織姫には考えたこともなかった発想だった。自分がしてきたことは、いけないことだったのかと、胸を押さえてしまう。しかし。
「今更やろ🫱」
タンッと市丸がなつみの頭のてっぺんにチョップした。
「痛いじゃないですかぁ😣」
「キミらがやってきたこと、大体不自然でしかないで。物に命宿したり、時空飛び越えたり、京楽さんにキスさせようとしたり」
「それ、言うの今じゃない、てか、させてない、させてないと言ったら嘘になるけど、わざとじゃないです❗️最後のいらない❗️遡りすぎですッ‼️💦」
手をブンブン振ったり、織姫の耳を塞いだり、大変大変。
「志波海燕の死を回避した時点で、かなり元の運命から逸れたんやで。起こるかどうかもわからん危機なんて、今更気にしたかて、しゃあないやろ。目の前で苦しんどる人がおったら、遮二無二助けに行くんがキミやし。救われたらあかん人なんかおらんいうのが、なつみちゃんの信念やろ。今覚えられること拒否して、いつか後悔する時が来るんやない?その方が、キミには危機やと思うけど」仏頂面のおでこを指でツンと押す。「なぁ、なつみちゃん」
「良いこと言うな、市丸🐥」
「うん。グッときたね」
妖精たちの感想と同様の想いに、織姫の心も晴れた。
「木之本さん、やってみようよ。きっとできるよ!」
「ほぇ😧」
織姫はなつみの方を向いて、エールを送るように、両手の拳を胸のところでギュッギュッと握って振った。
「朽木さんから木之本さんのこと聞いたよ。すごい力を持ってるって。何でもできるって。がんばればできるようになるよ。ハッチさんていう人も、あたしと似た力を持ってるから、不可能じゃないと思う。大丈夫だよ!」
さっきまでの大人しさはどこへやら。織姫は熱心になつみにそう言って励ました。
「おおぅ。めっちゃしゃべるやん」若干引くなつみ。「朽木さんて、…ルキアさんのこと?」
「うん。あたし、朽木さんに誘ってもらって、十三番隊でしばらく戦うトレーニングをしてたんだ。浮竹隊長も志波副隊長も優しくて、いろいろ面倒を」
言葉の途中だが、なつみの目が何かをききたがっているように見えて、止まってしまった。
「クーちゃんは」
ポツリとなつみが言った。市丸の右手が左腕の下に移動する。
「久原って隊士とは会わなかった?十三番隊にいるけど、ぼくと同期の仲間なの。これ、これと似てるお守りしてるヤツなんだけどさ」
なつみは斬魄刀に結んでいる交通安全のお守りを見せた。
織姫は、返事に迷った。
「俺、久原っていいます。織姫さんを安全に現世までお連れしますよ!任せてください!」
「待て、破面。まだ戦えるぞ。織姫さんに近づくな!」
「ダメ!逃げて!」
「ほう、少しはまともに戦えると思えば、お前、なつみの同期とかいう輩か。その飾りを、揃いで付けているらしいな」
「そこまで話したのか、あいつ」
「俺たちは仲間だからな」
「違うだろ。なつみは、俺たちの仲間だ‼︎‼︎」
「ならば何故あいつは帰らない」
「お前らが」
「俺たちと居ることを選んでいるからだ。そしてお前達は取り戻しにも来ない。その程度の弱さで、なつみといつまでも肩を並べていられると思うな」
「言っただろ。俺はまだ、戦えるんだよ‼︎‼︎」
「やめて‼︎‼︎」
「なつみを返せ‼︎返せーッ‼︎‼︎」
なつみが縋るように見つめてくる。その目を避けたくて、手も顔も下げた。
「織姫さん…?」
だが、嘘よりも、本当のことを部分的にも伝えた方が、なつみのためになると思い、市丸の動きに注意しながら話すことにする。
「会ったよ。久原さんと」
「ほんと⁉︎」
柄を握っている。
「木之本さんに会いたがってた」
それを聞いて、なつみの目に涙が溜まっていった。
「クーちゃん…。元気にしてた?」
「怪我をしてたけど、治してあげたから、もう大丈夫だよ」
「うそ!ぼくが知らないうちに。あいつらが怪我したら、ぼくが治すって約束してたのに…。ありがとう、織姫さん」
市丸は手の位置を変えた。
「ボクからも礼を言わせてもらうわ。元やけど、部下のクーちゃんを助けてくれて、ありがとう」
なつみはゴシゴシと目元を拭いて、やる気を湧き上がらせる。
「やーっと向こうからのメッセージが届きましたね❗️よーっし。クーちゃんの傷、今度はぼくが治してあげれるように、新しい技を修得してやるぞー❗️オーッ❗️✊」
「オー❗️🐥」
なつみとムッちゃんコンビが拳を突き上げた。
「で…、どうやるの?」
「ウォウ❗️そうだよ、ムッちゃん。どうしよう」
舜桜のツッコミで、話は発動法に戻される。
「フフフッ、私を舐めるなと言ったろう。ちゃんと頭の隅で考えていたさ」
「それで何か閃いた❓」
「当然だ。要は『タイムふろしき』なんだ。そう言われると、イメージしやすいだろう?」
「タイムふろしきって、あのドラえもんの❓」
「そうだ!いよいよ現実味を帯びてきたな😤」
「いや、フィクションでしょ💧」
ムッちゃんはスィーッと飛び、ソファの背に立った。そしてなつみのマントを引っ張る。
「これがお前の、タイ、ム、ふろ、しき、だ。そうだろ」
言葉のリズムに合わせて、マントをクイクイした。
「えぇ❓これが❓」
「そうだろう。お前はこのマントを、虚の昇華に使っている。昇華は霊子を分解することで、今回やろうとしている結合と逆の作用だ。お前がやってきた昇華が、タイムふろしきで言うところの、時間を早送りする機能ならば、事象の拒絶は」
「時間を巻き戻す機能」
頷くムッちゃん。
「つまり、いつもの外側を内側にして念じれば、お前にも事象の拒絶ができるんじゃないか?」
「ほお😮」
手を打って、納得のなつみ。
「キミは手伝わないんだ😅」
ムッちゃんはキッと睨んだ。
「良いか、ちっこいの。なつみと共に道を歩み、この子を見守るのが私の役目だ。そして、道を切り拓くのがなつみの役目。なつみの運命を左右することを、私がしてはならないのだ」
「はいはい、わかったから。ケンカするんやったら、ふたりともおうち帰り」
小さい子扱いが上手い市丸に、舜桜とムッちゃんがキッ。
「嫌です!」
「お前の指図は受けん!」
「頑固やね〜」
市丸は妖精たちを放っておくことにする。
「ほな、なつみちゃんへの課題を言い渡すで」
市丸の懐から、ハンカチが出てきた。それは結ばれており、中に何かを包んでいる。解いて、中身を開けて見せてあげる。
「はわわ、それ」
「直したいやろ」
大きい粒をひとつ手に取り、掲げて覗き込んでから、大切に握りしめた。
「持ってきてくれたんですね」
「もう新しいの作ってくれてるかもしれへんけど、こっちの方が、なつみちゃんにとっては本物やん。織姫ちゃんに直してもらうより、自分で直したいやろなー思たんよ。大事な宝物やからな」
「うゆゆゆゆ🥺」
しまっておいた涙が、溢れ返してしまった。
「たいちょーッ‼️‼️😭」
抱きついて、大泣きが始まる。
「あいがどーごやいまぅー」
「これでまた、京楽さんとお揃いになれるな」
「はいぃー」
瀞霊廷で耳にした噂話とは違い、目の前にいる市丸は、優しい笑顔を讃えていた。
「あんまり泣いたらあかんよ。さ、やってみよか。マント取り」
「はいっ」
指輪のカケラをハンカチに返して、なつみはぐすんぐすんしながらマントを外した。
いつもとは逆の面を広げて、その上に指輪だったものを乗せてもらう。巾着のように包んで、霊圧を上げ、念じる。
「元通りに戻って」
数秒後、4人が見守る中、マントを広げてみるのだが、もう手の感触でなつみにはわかっていた。笑顔と涙が誰よりも先に溢れた。
「できましたぁ」
祝福を受けながら、なつみは京楽とのペアリングを、ようやく再び着けることができた。
「春水さん…///」