第九章
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なつみが留守にすると、見えないところで厄介なことが起こるもので。
「ねぇ、居るんでしょ」
乱暴にドアをノックする男の子あり。
「うるせぇな」
無視したいが、顔を出すまで続くよりはマシかと、そのドアを開けてやる。
「何の用だ」
「あんたに頼みがあってさぁ」
少々狭めなところで開けるのをやめていたグリムジョーだが、グイッと訪問者ルピに大きく開けられてしまった。
「消えてくんない?目障りだから」
小生意気な視線が下からと、気怠そうな視線が上から送られ、交差する。
「あ?」
なかなか人に頼むことではない。
「聞こえなかったぁ?こっから消えてって言ったの」
「……」
呆れて耳に入らない。
「十刃でも従属官でもないあんたが、どうしてこの棟に堂々と住めてんの。ウザいんですけど。元セスタさん」
「……」耳に入れるつもりはなかったが、ひと言言って、帰ってもらおう。「オレじゃねぇ。なつみに連れて来られたんだ。文句なら、あいつに言え」
ドアを押さえる手が拳になる。
「そういう態度がムカつくって言ってんだよ‼︎嫌々連れて来られたみたいな言い方してさぁ。来たくないなら、断れよ‼︎何でもないあんたに、なつみを独占する権利なんか、無いんだよ‼︎‼︎」反論を待たずに、力任せに一度ドアを殴るルピ。「出てくつもりが無いなら、僕がここで殺してやっても良いんだからな‼︎‼︎」
闘争心を露わにし、ルピは霊圧を上げて、グリムジョーを威嚇した。
方やグリムジョーは、特に応戦するつもりはない。
「やめとけ。お前ぇにオレは殺せねぇ」
「はぁ‼︎⁉︎あんた、寝ぼけてんの⁉︎片腕の雑魚くらい、瞬殺できるに決まってるじゃん‼︎いつまで上に立ってるつもりだよ‼︎‼︎」
刀を抜いて、ルピはグリムジョーの喉を突き刺そうと動いた。しかし、刃が届く直前に、斜め向かいのドアが開いて、思わず手が止まってしまった。
「静かにしろ。昼寝の邪魔だ」
すぐさま振り返る。
「スターク」
止まったからといって、下すことはしない。鋒はグリムジョーを狙ったまま。
「あんたには関係無いから。帰ってくんない」
ため息をひとつ吐くスターク。
「刀を下ろせ、ルピ」
「へぇ。あんた、こいつを庇うんだ。意外だね」
「そうでもねぇよ。面倒事を避けたいだけだ。いいから、早く刀をしまえ。そんで、大人しく帰れ」
「嫌だね‼︎‼︎」腕は下ろさない。「こんな役立たず、消えたって誰も文句言わないよ‼︎あんたもこいつに、ムカついてんじゃないの?なつみを取られちゃってさ。消えた方が良いんだって。迷惑なんだからさぁ‼︎‼︎」
今にも帰刃する勢いだった。
だが、その上がった霊圧は、更に強力な霊圧で抑え込まれてしまう。それは重く、威勢や自信を押しつぶしてくるようだった。
「ググッ…⁉︎」
ルピは抵抗して腕を上げ続けようとするが、押されてしまって手が震える。これでは狙いを外すだろう。
「弱ぇ」
「何⁉︎」
目の前のグリムジョーは余裕あり気に立っていた。
「無理すんな。とっとと失せろ。死にたくなきゃな」
「うるさいッ」
ドンッと、背後からの霊圧が上げられた。それには耐えきれず、膝から崩れた。
「ウッ‼︎」
ドア枠に寄りかかるグリムジョーは、苦しむルピに説く。
「意地張んなよ、セスタ。お前じゃ敵わねぇ。相手は」
スタークの方は、近づいてルピを立たせてあげた。歩いて帰れるように。
「プリメーラだ」
乱暴だが、スタークは背中を突き飛ばして、追い払ってしまった。
「クソッ‼︎」
ルピはよろめきながらも、廊下を歩いて、立ち去っていった。
グリムジョーとスタークが、その丸まった背中を見送る。
「助けろなんて、頼んでねぇぞ」
「ああ、わかってる。好きで来たんだよ。お前まで消えられたら、なつみが泣いちまうからな」
「そーかよ」
スタークは、グリムジョーの右肩に手を置いた。
「無事か」
「ったりめぇだ」
「だよな」ぽんぽんとその置いた手で叩いた。「無事じゃねぇのは、あいつの方か。全く、ルピなんかに務まるのかよ。飛び級なんか、荷が重すぎるだろ」
11からすぐ下の者たちは、居なくなってしまったために。
「悪かったな」
「別に責めてねぇよ。じゃあな。俺は昼寝に戻る」
開けっ放しのドアを閉めてやり、スタークは自室に帰っていった。
東仙とのデートを終え、なつみはルンルンだった。
「良かったねぇ、グリムジョー。ちゃんと謝ってもらえたじゃん」
「だからって、腕が生えるわけでもねぇ」
グリムジョーの部屋を掃除してあげている。
「そのうち元通りになるんだから、文句言わないの😤」
実を言うと、なつみには部屋の汚れ以外にも、気になることがあった。
「ねぇ、お風呂一緒に入ろうよ」
「…😑ダメだっつってんだろ」
握ったモップの柄をグリムジョーに向けて、なつみは訴える。
「だーってさぁ❗️気になるんだもん❗️頭、左側ちゃんと洗えてないでしょ。セットもできてないしさー。身体の左っ側のお手入れがなってません❗️やらせろ❗️」
言い方を改めて欲しいのと、その通りではあったが、グリムジョーは嫌そうな顔をやめない。
「断る」
「もぉーっ。ぼくが女だから?」
もう片方の手を腰にやり、なつみはご立腹のポーズ。
「そうだ」
「(-公-)💢」
大きな手振りで「はぁッ‼️😩」と大きなため息を吐いた。
💡❗️
「はぁッ‼️🙌」
何やら即座に閃いて、バンザイ。くるん。
「はぁッ‼️😆👉」
グリムジョーへ振り向いて、なつみはズバンッと彼に指差した。
「何だよ。『はぁはぁ』うるせぇな」
「ねぇねぇねぇねぇねぇ❗️」
ぐいぐいぐいぐいぐいと詰め寄る。近い。
「なんだよ😒」
「あのさ❗️ぼくちょっと尸魂界行って、忘れ物取りに行くから、道開けて❗️😆」
「…。」嫌そう。「何取りに行くんだよ」
「義骸❗️男の❗️」
「ケッ」
やっぱり。
「ぼくが男になれば、裸の付き合いしてくれるっしょ❗️誰かに頼んだら、運んでもらわないといけないけど、自分で行けば、入って帰れば良いから、楽ちんなんだよね。ぼく行く❗️決めた❗️こっそり行って、こっそり帰ってくる❗️やるぞ❗️✊」
「近ぇ」
「グリムジョーは悪い子だから、ぼくのワル事に付き合え❗️このヤンキー❗️🙂」
悪戯っ子な笑顔。
「モノ頼む態度じゃねぇーな」
「お願いお願いお願いお願いお願ーいっ。開けて〜😙」
これはくどい。
視界の下の方で、なつみの頭頂部がチラつく。精神の視野はそれよりやや上へ。
『消えてくんない』
ルピの声が再生される。
仲間を失い、地位を失い、腕も失った。今はなつみが居ろとうるさいから、虚夜宮に留まっているだけで、正直なところ、藍染の命令など無視しようと思えばできる。ここはノッてみるか?確実に弱体化した自分に、連中は何を求める。居ても、居なくてもではないのか。なつみは帰りたがっていることだし、そのままトンズラでも。などなど考える。
「…行くか」
ポツリと答えが出た。
「おぉ❗️😮そーこなくっちゃ〜、番長‼️🥴」
「バンチョウ?」
なつみはモップの柄を中心に、くるりと回って、グリムジョーから離れた。
「そうと決まれば、善は急げ。思い立ったが吉日❗️今から行くぞ❗️」
「今から⁉︎」
「うん❗️」
床に置かれたバケツも持ってドアへ踏み出す。
「片付けてくるね。ちょっと待ってて👋😉」
タンタンッと軽い足取りで駆け出した。
お掃除道具をしまっておく部屋から出ると、市丸が彼女を待っていた。
「なつみちゃん、お疲れ様。お掃除してたん?」
「はい❗️」
「綺麗になった?」
「バッチリです👍」
「そらええな」
にっこり笑い合う。
「隊長、ぼくまだやることあって、忙しいんですよ。もう行きますね」
「そうなんや。ご飯のお誘いに来たんやけど、足止めして、ごめんな」
「いえ。失礼します😌」
「あんまり根詰めんときやー」
「はーい😁」
手ぶらななつみは、ワープで去った。
その一瞬の別れ際に、市丸は嫌なものを見た気がした。
(何や…。今の顔💧)
グリムジョーの部屋に戻ったなつみ。
「おっしゃ。行くべ」
グッと拳を握り締め、やる気満々。だが、グリムジョーは何か、思い出したようだ。
「黒腔を通るには、霊子で足場を作らなきゃならねぇ。お前、できんのか?」
「❓地面無いの❓」
「無ぇ」
「えー」
「オレの後ろをついて来れれば良いけどよ。万が一、道から落ちちまった場合、助けに行ってやれる自信が無ぇ」
「むー。そうなのか」
これは問題を見つけてしまったぞと、考え込む。
顎に人差し指の第二関節をコンコン当て、3回目で閃いた。
「じゃあ、グリムジョーがぼくを運んで❗️」
良い案だが。
「おぶってやれねぇ。この腕だぞ」
落ちてしまうだろう。
「まぁまぁ、ちょいと待っててよ」
そうニヤついて、なつみはまた出て行った。
戻ってくると、その手には斜めがけの鞄があり、それを床に置いた。
「おい、それで何するつもりだ」
「入る❗️」
「は?無理だろ」
「無理じゃないもん」
付き合ってらんねーとでも言うように、グリムジョーは椅子に座ってしまった。
「なら、頑張ってみろ」
こっちは他の方法を考えておく、と手を振って応援。
そうして目を離した途端、刀が床に置かれる音と、服が落ちる音がした。
「?」
「よいしょよいしょ」
「⁉︎」
抜け殻となった服の中から這い出てきたのは、1羽の灰色うさぎ。
「これなら入るっしょ」
うさぎは、鞄の口を広げて入っていった。
「ほれ見ぃー。入るにぃー」
グリムジョーはお口をあんぐり。
「体重も軽くなったからさ、これで大丈夫でしょ。ね❗️」
鞄から出てきて、グリムジョーを見上げた。
「うぉーい。何か言え、番長」
脛辺りをぽんぽん叩く。
「何だ、その姿」
何か言った番長。
「あ❗️この変身さ、理由をすっかり忘れちゃったけど、市丸隊長から、みんなには内緒にするようにって言われてたんだよね」
「なら、オレに見せたらダメだろ」
「そぉーなんだけどさぁ」
グリムジョーの驚いた表情を見て、やっと思い出したものだから。
「もう遅い」
「だな」
「内緒だよ🤫」
「わかった」
どうせ戻ってこないのだから、口止めも何もない。
「ああ❗️そうだ❗️あれ持ってった方が良いじゃんね❗️しくったー。鞄と一緒に持ってくれば良かった😣」
お耳まで巻き込んで、ほっぺに手を当てての、しくったーのポーズをするなつみ。
「今度は何を忘れたって?」
後から後から思い出す。
「黒いコートだよ。藍染隊長からもらったさ。あれ、こそこそするのに役立つでしょ」
「あー、そうだな。要るか」
義骸に入った後で、必要になるかもしれない。
「取ってくる」
出口へ向かう。
「そのまま行くのか?見つかるぞ」
「だって、服着るのめんどいもん。どうせスタークさんはお昼寝してるし、リリネットちゃんも市丸隊長もいる気配ないし、大丈夫でしょ。グリムジョーはさ、その服畳んどいてくんない?すぐ戻るよ。よろしく!」
大きくジャンプして、器用にノブにぶら下がり、ドアを開けた。
コートをクローゼットから出したは良いが、ここでもまた問題が発生。うさぎの小さな身体に対し、コートは人サイズ。引きずってでないと、運ぶことができなかった。そのため、すぐ戻るはずが、やや時間がかかってしまっている。
「んーんーんー、汚れちゃうけど、しょうがないけど、持ってきにくいー💦」
ドアに到着し、何とか開けて、お尻で押して開いていく。
(そうだ。ドアストッパーしよう)
挟み込み、ドアが閉まらないようにした。小さな隙間から、再びお尻方向に進んでいった。
頭まで廊下に出たところで、招かれざる隣人が居合わせてしまう。
「あれ⁉︎何でこんなとこにうさぎ」
リリネットが帰ってきてしまったのだ。
(⁉️💦)
ヤバいと、なつみはすぐさま逃げようとしたが、どちらへ走るべきか。迷っている間に捕まってしまう。
「ああ!これなつみの!悪いうさぎだな。なつみの部屋荒らして、泥棒しようとしたんだ‼︎」
うさぎを抱えたまま、コートを拾い上げ、椅子に掛けてくれた。
「ここにとりあえず置いとこ」
ドアストッパーも外し、急いで帰る。
「ちょっと見てよ、スターク!」
リリネットが部屋に入るのを、グリムジョーが密かに覗き見していた。
(あーあ、捕まっちまった。これはマズいか)
案の定寝ていたスタークに、獲物を見せるリリネット。
「これ❗️うさぎ❗️」
うさぎの脇を持って掲げた。うさぎ、脚がぷらんぷらん。
「おー、うさぎだな🥱」
それがどうしたと。
「今さ、このうさぎがなつみの部屋漁ってたんだよ。泥棒してたの。ドロボー」
「泥棒?」
ムクリと起き上がるも、スタークはベッドから離れる気は無い。
「どっから来たのかなー」
向きを変えられても、脚がぷらんぷらんのまま。首が減り込むよう。
「ザエルアポロの回し者じゃねーのか?動物実験とかしてそうだしよ」
「そっか。じゃあ、返してこよう」
「あぁ、そうしろ」
リリネットはうさぎを左肩の方へ抱き直した。すると息ができるようになったうさぎは叫ぶ。
「苦しいよ‼️リリネットちゃん‼️」
「「は⁉︎」」
うさぎが喋ったことに驚いて、ふたりは目をパチクリさせた。
「しゃべった⁉️」
力が抜けたその隙に、うさぎはリリネットから跳び抜けた。
「あー、息止まるかと思った😮💨」深呼吸する。「ぼくね、急いでるから、説明はまた今度するよ❗️だからもう失礼するね❗️」
ぴょんぴょこ出口へ走っていく。
「お前、なつみか⁉︎何でうさぎに」
正体に気付き、スタークはベッドから立ち上がり、慌ててなつみのもとへ行こうとした。
「おいしょ‼️」
ドアノブに飛び付いたが、あることを察知して焦った。
「やっべ‼️💦」
開けたは良いが、すぐに部屋の内側へ隠れる。
パタン
スタークが閉めてくれた。
「ありがとう」
「すぐ説明しろ」
「その前に、匿ってよ💦」
霊圧はこの付近から出ている。やっと市丸はなつみの居場所を突き止めたのだ。変な胸騒ぎが気になり、跡をつけたかったが、初めにどこを掃除したのか聞かなかったことで、ヒントを得られず、作業場所か部屋かの2択で迷うことになった。そして選択を誤り、時間がかかってしまった。しかし、幸運にもなつみが手間取っていたために、出発までに間に合った市丸。あとは、どの部屋かだ。
まずは自分たちの部屋。開けてみる。
(何でコートが椅子に掛かってんねん)
それが視界に飛び込んできた。
(何企んでるん、あの子)
しかし、コートがあるのがおかしいだけで、他に異変は無い。室内は暗く、人気も無い。
(あっちの部屋か)
次に疑ったのは向かいの部屋だった。ノックをする。
「ちょっとぉ」
「何だよ」
グリムジョーがすぐに顔を出してくれたが、ドアの開き具合が怪しい。
「なつみちゃんおる?」
「さっきまでな。ここ掃除して、モップ片付けに行って、それっきりだ。いねぇのか?」
「おらん」
グイッ
「おいッ⁉︎」
市丸はグリムジョーが押さえているのに構わず、グッとドアを開けてしまった。
「……。」
だが見当たらない。
「いねぇだろ」
「みたいやね。急に押しかけて、悪かったな。ごめんやで」
グリムジョーとて、市丸の気配を察知していた。なつみの服は隠している。
「どうせ風呂だろ」
「いや、そっちや」
その視線は斜め後ろへ。
3つ目のドアの前に移動する市丸。ノックをする。
「なつみちゃーん、ここにおるんやろー」
ボンッ‼︎‼︎
(…?)
中から急に霊圧の高まりが。
不思議に思いつつも、開けてみることにする。
「⁉︎」
ギョッとする光景がそこに。
「何してんねん💧」
「な、何って、見りゃわかんでしょ❗️💦」
「わからん💧」
3人居るはずの部屋を覗いているはずが、市丸の目には1人しか認識できなかった。何故なら。
「たまには練習しとかねぇと、やり方忘れちまうだろ。お、俺らの特殊だし💦」
「そーそー❗️」
スタークとリリネットが帰刃していたからだ。
「いや、危ないて💧」
こんな狭いところで。
練習ということで、スタークは銃の構えをいろいろ試してみる。
「こんなのとか、こんなのとかよ」
(‼️💦💦💦)
(スターク❗️あんま動かないで❗️)
(悪い💧)
(😖💦)
(がんばれ、なつみ❗️)
動くなと言われ、中途半端なポーズで止まるスターク。
「なつみなら来てねぇぞ。別の場所だろ」
(落ちる落ちる‼️💦💦💦)
(耐えて、なつみ‼️)
「探しに行けよ。俺たちは、解放の練習で忙しいんだ💦」
「…そうみたいやね」
(ひーッ‼️ムリムリムリムリムリムリムリーッ💦💦💦)
(早く追い出せ、スターク‼️‼️)
断念した市丸は、部屋を出ていくことにする。
「わかったわ。もしなつみちゃん見かけたら、教えてや」
「おう!(とっとと行け‼︎)」
扉が閉まる。
「「ふぅ😮💨」」
ボトンッ
「ウゲッ」
ガチャッ‼︎
「やっぱりおった‼︎‼︎しかも、その格好‼︎‼︎」
一気に気が抜けて、リリネットもスタークも一息吐いた。なつみも、市丸の退室に安堵し、腕から力が抜けて、スタークのお尻からボトンッと落ちた。最悪、くっついて逃げられるようにと、物陰ではなく、帰刃をしたスタークの腰周りにある灰色のフサフサに紛れ込んでいたのだが。
「コラッ‼︎ なつみちゃん‼︎」
バレていた。
「やばばばばっ‼️💦」
これこそもう遅いが、腰のフサフサに戻った。ブルブル震えて。
「隠れてへんわ‼︎アホッ‼︎」
市丸はスタークたちの了承も得ず、ズカズカ入室し、なつみの首根っこを掴んで持ち上げた。
「みんなには、変身のこと内緒や言うたやろ‼︎何しようとしてたん‼︎」
グッグッと振られ、なつみは縮こまる。
「やめろよ!なつみ、怖がってんじゃん!」
「キミには関係無い!」
スタークとリリネットは元の姿に戻り、市丸の怒りを鎮めようとするが、隠し事をしようとしていたことは、説教物であるとわかっていた。強くは止められない。それでも、なつみのことを庇ってやりたかった。
「そんなに怒るなよ。逃げ出そうとしたわけじゃねぇんだ」
「わからんやろ」
市丸にぶら下げられながら、泣き出しそうなのを堪えていると、もう1人、庇ってくれる人が来てくれた。
「なつみ、もう無理だな。諦めようぜ」
「グリムジョー」
「ん」
グリムジョーは、なつみの服と斬魄刀を持ってきてくれた。
「キミが唆したん」
「違ぇよ。リリネット、なつみに着せてやれ」
「う、うん」
リリネットはグリムジョーから斬魄刀と服を受け取り、部屋の奥へ運ぶ。次になつみを市丸の手から取り上げ、奥へ連れて行った。
「大丈夫?なつみ」
「うん」
男性陣はそちらを見ないようにする。
「呆れたわ。キミらも相当アホやね」
「何だと」
「なつみちゃんのためとはいえ、キミらかて、あの子の脱走にちょっとでも協力したら、藍染隊長に殺されるかもしれへんのよ」
もちろんそれを承知の上で、協力するのだ。それに、スタークにだって、市丸のアホさが見えていた。
「あんただって、あいつを逃がしたいと思ってたんだろ?心変わりしちまったみてぇだが」
市丸は少し黙って、その言葉を聞いてやった。
「状況は変わるもんや。なつみちゃん、服着れたら、藍染隊長んとこ行くで。報告して、お説教してもらうわ」
「…はい」
誰にも気付かれず、ちょっと行ってすぐ帰る作戦は、失敗に終わってしまった。
「ねぇ、居るんでしょ」
乱暴にドアをノックする男の子あり。
「うるせぇな」
無視したいが、顔を出すまで続くよりはマシかと、そのドアを開けてやる。
「何の用だ」
「あんたに頼みがあってさぁ」
少々狭めなところで開けるのをやめていたグリムジョーだが、グイッと訪問者ルピに大きく開けられてしまった。
「消えてくんない?目障りだから」
小生意気な視線が下からと、気怠そうな視線が上から送られ、交差する。
「あ?」
なかなか人に頼むことではない。
「聞こえなかったぁ?こっから消えてって言ったの」
「……」
呆れて耳に入らない。
「十刃でも従属官でもないあんたが、どうしてこの棟に堂々と住めてんの。ウザいんですけど。元セスタさん」
「……」耳に入れるつもりはなかったが、ひと言言って、帰ってもらおう。「オレじゃねぇ。なつみに連れて来られたんだ。文句なら、あいつに言え」
ドアを押さえる手が拳になる。
「そういう態度がムカつくって言ってんだよ‼︎嫌々連れて来られたみたいな言い方してさぁ。来たくないなら、断れよ‼︎何でもないあんたに、なつみを独占する権利なんか、無いんだよ‼︎‼︎」反論を待たずに、力任せに一度ドアを殴るルピ。「出てくつもりが無いなら、僕がここで殺してやっても良いんだからな‼︎‼︎」
闘争心を露わにし、ルピは霊圧を上げて、グリムジョーを威嚇した。
方やグリムジョーは、特に応戦するつもりはない。
「やめとけ。お前ぇにオレは殺せねぇ」
「はぁ‼︎⁉︎あんた、寝ぼけてんの⁉︎片腕の雑魚くらい、瞬殺できるに決まってるじゃん‼︎いつまで上に立ってるつもりだよ‼︎‼︎」
刀を抜いて、ルピはグリムジョーの喉を突き刺そうと動いた。しかし、刃が届く直前に、斜め向かいのドアが開いて、思わず手が止まってしまった。
「静かにしろ。昼寝の邪魔だ」
すぐさま振り返る。
「スターク」
止まったからといって、下すことはしない。鋒はグリムジョーを狙ったまま。
「あんたには関係無いから。帰ってくんない」
ため息をひとつ吐くスターク。
「刀を下ろせ、ルピ」
「へぇ。あんた、こいつを庇うんだ。意外だね」
「そうでもねぇよ。面倒事を避けたいだけだ。いいから、早く刀をしまえ。そんで、大人しく帰れ」
「嫌だね‼︎‼︎」腕は下ろさない。「こんな役立たず、消えたって誰も文句言わないよ‼︎あんたもこいつに、ムカついてんじゃないの?なつみを取られちゃってさ。消えた方が良いんだって。迷惑なんだからさぁ‼︎‼︎」
今にも帰刃する勢いだった。
だが、その上がった霊圧は、更に強力な霊圧で抑え込まれてしまう。それは重く、威勢や自信を押しつぶしてくるようだった。
「ググッ…⁉︎」
ルピは抵抗して腕を上げ続けようとするが、押されてしまって手が震える。これでは狙いを外すだろう。
「弱ぇ」
「何⁉︎」
目の前のグリムジョーは余裕あり気に立っていた。
「無理すんな。とっとと失せろ。死にたくなきゃな」
「うるさいッ」
ドンッと、背後からの霊圧が上げられた。それには耐えきれず、膝から崩れた。
「ウッ‼︎」
ドア枠に寄りかかるグリムジョーは、苦しむルピに説く。
「意地張んなよ、セスタ。お前じゃ敵わねぇ。相手は」
スタークの方は、近づいてルピを立たせてあげた。歩いて帰れるように。
「プリメーラだ」
乱暴だが、スタークは背中を突き飛ばして、追い払ってしまった。
「クソッ‼︎」
ルピはよろめきながらも、廊下を歩いて、立ち去っていった。
グリムジョーとスタークが、その丸まった背中を見送る。
「助けろなんて、頼んでねぇぞ」
「ああ、わかってる。好きで来たんだよ。お前まで消えられたら、なつみが泣いちまうからな」
「そーかよ」
スタークは、グリムジョーの右肩に手を置いた。
「無事か」
「ったりめぇだ」
「だよな」ぽんぽんとその置いた手で叩いた。「無事じゃねぇのは、あいつの方か。全く、ルピなんかに務まるのかよ。飛び級なんか、荷が重すぎるだろ」
11からすぐ下の者たちは、居なくなってしまったために。
「悪かったな」
「別に責めてねぇよ。じゃあな。俺は昼寝に戻る」
開けっ放しのドアを閉めてやり、スタークは自室に帰っていった。
東仙とのデートを終え、なつみはルンルンだった。
「良かったねぇ、グリムジョー。ちゃんと謝ってもらえたじゃん」
「だからって、腕が生えるわけでもねぇ」
グリムジョーの部屋を掃除してあげている。
「そのうち元通りになるんだから、文句言わないの😤」
実を言うと、なつみには部屋の汚れ以外にも、気になることがあった。
「ねぇ、お風呂一緒に入ろうよ」
「…😑ダメだっつってんだろ」
握ったモップの柄をグリムジョーに向けて、なつみは訴える。
「だーってさぁ❗️気になるんだもん❗️頭、左側ちゃんと洗えてないでしょ。セットもできてないしさー。身体の左っ側のお手入れがなってません❗️やらせろ❗️」
言い方を改めて欲しいのと、その通りではあったが、グリムジョーは嫌そうな顔をやめない。
「断る」
「もぉーっ。ぼくが女だから?」
もう片方の手を腰にやり、なつみはご立腹のポーズ。
「そうだ」
「(-公-)💢」
大きな手振りで「はぁッ‼️😩」と大きなため息を吐いた。
💡❗️
「はぁッ‼️🙌」
何やら即座に閃いて、バンザイ。くるん。
「はぁッ‼️😆👉」
グリムジョーへ振り向いて、なつみはズバンッと彼に指差した。
「何だよ。『はぁはぁ』うるせぇな」
「ねぇねぇねぇねぇねぇ❗️」
ぐいぐいぐいぐいぐいと詰め寄る。近い。
「なんだよ😒」
「あのさ❗️ぼくちょっと尸魂界行って、忘れ物取りに行くから、道開けて❗️😆」
「…。」嫌そう。「何取りに行くんだよ」
「義骸❗️男の❗️」
「ケッ」
やっぱり。
「ぼくが男になれば、裸の付き合いしてくれるっしょ❗️誰かに頼んだら、運んでもらわないといけないけど、自分で行けば、入って帰れば良いから、楽ちんなんだよね。ぼく行く❗️決めた❗️こっそり行って、こっそり帰ってくる❗️やるぞ❗️✊」
「近ぇ」
「グリムジョーは悪い子だから、ぼくのワル事に付き合え❗️このヤンキー❗️🙂」
悪戯っ子な笑顔。
「モノ頼む態度じゃねぇーな」
「お願いお願いお願いお願いお願ーいっ。開けて〜😙」
これはくどい。
視界の下の方で、なつみの頭頂部がチラつく。精神の視野はそれよりやや上へ。
『消えてくんない』
ルピの声が再生される。
仲間を失い、地位を失い、腕も失った。今はなつみが居ろとうるさいから、虚夜宮に留まっているだけで、正直なところ、藍染の命令など無視しようと思えばできる。ここはノッてみるか?確実に弱体化した自分に、連中は何を求める。居ても、居なくてもではないのか。なつみは帰りたがっていることだし、そのままトンズラでも。などなど考える。
「…行くか」
ポツリと答えが出た。
「おぉ❗️😮そーこなくっちゃ〜、番長‼️🥴」
「バンチョウ?」
なつみはモップの柄を中心に、くるりと回って、グリムジョーから離れた。
「そうと決まれば、善は急げ。思い立ったが吉日❗️今から行くぞ❗️」
「今から⁉︎」
「うん❗️」
床に置かれたバケツも持ってドアへ踏み出す。
「片付けてくるね。ちょっと待ってて👋😉」
タンタンッと軽い足取りで駆け出した。
お掃除道具をしまっておく部屋から出ると、市丸が彼女を待っていた。
「なつみちゃん、お疲れ様。お掃除してたん?」
「はい❗️」
「綺麗になった?」
「バッチリです👍」
「そらええな」
にっこり笑い合う。
「隊長、ぼくまだやることあって、忙しいんですよ。もう行きますね」
「そうなんや。ご飯のお誘いに来たんやけど、足止めして、ごめんな」
「いえ。失礼します😌」
「あんまり根詰めんときやー」
「はーい😁」
手ぶらななつみは、ワープで去った。
その一瞬の別れ際に、市丸は嫌なものを見た気がした。
(何や…。今の顔💧)
グリムジョーの部屋に戻ったなつみ。
「おっしゃ。行くべ」
グッと拳を握り締め、やる気満々。だが、グリムジョーは何か、思い出したようだ。
「黒腔を通るには、霊子で足場を作らなきゃならねぇ。お前、できんのか?」
「❓地面無いの❓」
「無ぇ」
「えー」
「オレの後ろをついて来れれば良いけどよ。万が一、道から落ちちまった場合、助けに行ってやれる自信が無ぇ」
「むー。そうなのか」
これは問題を見つけてしまったぞと、考え込む。
顎に人差し指の第二関節をコンコン当て、3回目で閃いた。
「じゃあ、グリムジョーがぼくを運んで❗️」
良い案だが。
「おぶってやれねぇ。この腕だぞ」
落ちてしまうだろう。
「まぁまぁ、ちょいと待っててよ」
そうニヤついて、なつみはまた出て行った。
戻ってくると、その手には斜めがけの鞄があり、それを床に置いた。
「おい、それで何するつもりだ」
「入る❗️」
「は?無理だろ」
「無理じゃないもん」
付き合ってらんねーとでも言うように、グリムジョーは椅子に座ってしまった。
「なら、頑張ってみろ」
こっちは他の方法を考えておく、と手を振って応援。
そうして目を離した途端、刀が床に置かれる音と、服が落ちる音がした。
「?」
「よいしょよいしょ」
「⁉︎」
抜け殻となった服の中から這い出てきたのは、1羽の灰色うさぎ。
「これなら入るっしょ」
うさぎは、鞄の口を広げて入っていった。
「ほれ見ぃー。入るにぃー」
グリムジョーはお口をあんぐり。
「体重も軽くなったからさ、これで大丈夫でしょ。ね❗️」
鞄から出てきて、グリムジョーを見上げた。
「うぉーい。何か言え、番長」
脛辺りをぽんぽん叩く。
「何だ、その姿」
何か言った番長。
「あ❗️この変身さ、理由をすっかり忘れちゃったけど、市丸隊長から、みんなには内緒にするようにって言われてたんだよね」
「なら、オレに見せたらダメだろ」
「そぉーなんだけどさぁ」
グリムジョーの驚いた表情を見て、やっと思い出したものだから。
「もう遅い」
「だな」
「内緒だよ🤫」
「わかった」
どうせ戻ってこないのだから、口止めも何もない。
「ああ❗️そうだ❗️あれ持ってった方が良いじゃんね❗️しくったー。鞄と一緒に持ってくれば良かった😣」
お耳まで巻き込んで、ほっぺに手を当てての、しくったーのポーズをするなつみ。
「今度は何を忘れたって?」
後から後から思い出す。
「黒いコートだよ。藍染隊長からもらったさ。あれ、こそこそするのに役立つでしょ」
「あー、そうだな。要るか」
義骸に入った後で、必要になるかもしれない。
「取ってくる」
出口へ向かう。
「そのまま行くのか?見つかるぞ」
「だって、服着るのめんどいもん。どうせスタークさんはお昼寝してるし、リリネットちゃんも市丸隊長もいる気配ないし、大丈夫でしょ。グリムジョーはさ、その服畳んどいてくんない?すぐ戻るよ。よろしく!」
大きくジャンプして、器用にノブにぶら下がり、ドアを開けた。
コートをクローゼットから出したは良いが、ここでもまた問題が発生。うさぎの小さな身体に対し、コートは人サイズ。引きずってでないと、運ぶことができなかった。そのため、すぐ戻るはずが、やや時間がかかってしまっている。
「んーんーんー、汚れちゃうけど、しょうがないけど、持ってきにくいー💦」
ドアに到着し、何とか開けて、お尻で押して開いていく。
(そうだ。ドアストッパーしよう)
挟み込み、ドアが閉まらないようにした。小さな隙間から、再びお尻方向に進んでいった。
頭まで廊下に出たところで、招かれざる隣人が居合わせてしまう。
「あれ⁉︎何でこんなとこにうさぎ」
リリネットが帰ってきてしまったのだ。
(⁉️💦)
ヤバいと、なつみはすぐさま逃げようとしたが、どちらへ走るべきか。迷っている間に捕まってしまう。
「ああ!これなつみの!悪いうさぎだな。なつみの部屋荒らして、泥棒しようとしたんだ‼︎」
うさぎを抱えたまま、コートを拾い上げ、椅子に掛けてくれた。
「ここにとりあえず置いとこ」
ドアストッパーも外し、急いで帰る。
「ちょっと見てよ、スターク!」
リリネットが部屋に入るのを、グリムジョーが密かに覗き見していた。
(あーあ、捕まっちまった。これはマズいか)
案の定寝ていたスタークに、獲物を見せるリリネット。
「これ❗️うさぎ❗️」
うさぎの脇を持って掲げた。うさぎ、脚がぷらんぷらん。
「おー、うさぎだな🥱」
それがどうしたと。
「今さ、このうさぎがなつみの部屋漁ってたんだよ。泥棒してたの。ドロボー」
「泥棒?」
ムクリと起き上がるも、スタークはベッドから離れる気は無い。
「どっから来たのかなー」
向きを変えられても、脚がぷらんぷらんのまま。首が減り込むよう。
「ザエルアポロの回し者じゃねーのか?動物実験とかしてそうだしよ」
「そっか。じゃあ、返してこよう」
「あぁ、そうしろ」
リリネットはうさぎを左肩の方へ抱き直した。すると息ができるようになったうさぎは叫ぶ。
「苦しいよ‼️リリネットちゃん‼️」
「「は⁉︎」」
うさぎが喋ったことに驚いて、ふたりは目をパチクリさせた。
「しゃべった⁉️」
力が抜けたその隙に、うさぎはリリネットから跳び抜けた。
「あー、息止まるかと思った😮💨」深呼吸する。「ぼくね、急いでるから、説明はまた今度するよ❗️だからもう失礼するね❗️」
ぴょんぴょこ出口へ走っていく。
「お前、なつみか⁉︎何でうさぎに」
正体に気付き、スタークはベッドから立ち上がり、慌ててなつみのもとへ行こうとした。
「おいしょ‼️」
ドアノブに飛び付いたが、あることを察知して焦った。
「やっべ‼️💦」
開けたは良いが、すぐに部屋の内側へ隠れる。
パタン
スタークが閉めてくれた。
「ありがとう」
「すぐ説明しろ」
「その前に、匿ってよ💦」
霊圧はこの付近から出ている。やっと市丸はなつみの居場所を突き止めたのだ。変な胸騒ぎが気になり、跡をつけたかったが、初めにどこを掃除したのか聞かなかったことで、ヒントを得られず、作業場所か部屋かの2択で迷うことになった。そして選択を誤り、時間がかかってしまった。しかし、幸運にもなつみが手間取っていたために、出発までに間に合った市丸。あとは、どの部屋かだ。
まずは自分たちの部屋。開けてみる。
(何でコートが椅子に掛かってんねん)
それが視界に飛び込んできた。
(何企んでるん、あの子)
しかし、コートがあるのがおかしいだけで、他に異変は無い。室内は暗く、人気も無い。
(あっちの部屋か)
次に疑ったのは向かいの部屋だった。ノックをする。
「ちょっとぉ」
「何だよ」
グリムジョーがすぐに顔を出してくれたが、ドアの開き具合が怪しい。
「なつみちゃんおる?」
「さっきまでな。ここ掃除して、モップ片付けに行って、それっきりだ。いねぇのか?」
「おらん」
グイッ
「おいッ⁉︎」
市丸はグリムジョーが押さえているのに構わず、グッとドアを開けてしまった。
「……。」
だが見当たらない。
「いねぇだろ」
「みたいやね。急に押しかけて、悪かったな。ごめんやで」
グリムジョーとて、市丸の気配を察知していた。なつみの服は隠している。
「どうせ風呂だろ」
「いや、そっちや」
その視線は斜め後ろへ。
3つ目のドアの前に移動する市丸。ノックをする。
「なつみちゃーん、ここにおるんやろー」
ボンッ‼︎‼︎
(…?)
中から急に霊圧の高まりが。
不思議に思いつつも、開けてみることにする。
「⁉︎」
ギョッとする光景がそこに。
「何してんねん💧」
「な、何って、見りゃわかんでしょ❗️💦」
「わからん💧」
3人居るはずの部屋を覗いているはずが、市丸の目には1人しか認識できなかった。何故なら。
「たまには練習しとかねぇと、やり方忘れちまうだろ。お、俺らの特殊だし💦」
「そーそー❗️」
スタークとリリネットが帰刃していたからだ。
「いや、危ないて💧」
こんな狭いところで。
練習ということで、スタークは銃の構えをいろいろ試してみる。
「こんなのとか、こんなのとかよ」
(‼️💦💦💦)
(スターク❗️あんま動かないで❗️)
(悪い💧)
(😖💦)
(がんばれ、なつみ❗️)
動くなと言われ、中途半端なポーズで止まるスターク。
「なつみなら来てねぇぞ。別の場所だろ」
(落ちる落ちる‼️💦💦💦)
(耐えて、なつみ‼️)
「探しに行けよ。俺たちは、解放の練習で忙しいんだ💦」
「…そうみたいやね」
(ひーッ‼️ムリムリムリムリムリムリムリーッ💦💦💦)
(早く追い出せ、スターク‼️‼️)
断念した市丸は、部屋を出ていくことにする。
「わかったわ。もしなつみちゃん見かけたら、教えてや」
「おう!(とっとと行け‼︎)」
扉が閉まる。
「「ふぅ😮💨」」
ボトンッ
「ウゲッ」
ガチャッ‼︎
「やっぱりおった‼︎‼︎しかも、その格好‼︎‼︎」
一気に気が抜けて、リリネットもスタークも一息吐いた。なつみも、市丸の退室に安堵し、腕から力が抜けて、スタークのお尻からボトンッと落ちた。最悪、くっついて逃げられるようにと、物陰ではなく、帰刃をしたスタークの腰周りにある灰色のフサフサに紛れ込んでいたのだが。
「コラッ‼︎ なつみちゃん‼︎」
バレていた。
「やばばばばっ‼️💦」
これこそもう遅いが、腰のフサフサに戻った。ブルブル震えて。
「隠れてへんわ‼︎アホッ‼︎」
市丸はスタークたちの了承も得ず、ズカズカ入室し、なつみの首根っこを掴んで持ち上げた。
「みんなには、変身のこと内緒や言うたやろ‼︎何しようとしてたん‼︎」
グッグッと振られ、なつみは縮こまる。
「やめろよ!なつみ、怖がってんじゃん!」
「キミには関係無い!」
スタークとリリネットは元の姿に戻り、市丸の怒りを鎮めようとするが、隠し事をしようとしていたことは、説教物であるとわかっていた。強くは止められない。それでも、なつみのことを庇ってやりたかった。
「そんなに怒るなよ。逃げ出そうとしたわけじゃねぇんだ」
「わからんやろ」
市丸にぶら下げられながら、泣き出しそうなのを堪えていると、もう1人、庇ってくれる人が来てくれた。
「なつみ、もう無理だな。諦めようぜ」
「グリムジョー」
「ん」
グリムジョーは、なつみの服と斬魄刀を持ってきてくれた。
「キミが唆したん」
「違ぇよ。リリネット、なつみに着せてやれ」
「う、うん」
リリネットはグリムジョーから斬魄刀と服を受け取り、部屋の奥へ運ぶ。次になつみを市丸の手から取り上げ、奥へ連れて行った。
「大丈夫?なつみ」
「うん」
男性陣はそちらを見ないようにする。
「呆れたわ。キミらも相当アホやね」
「何だと」
「なつみちゃんのためとはいえ、キミらかて、あの子の脱走にちょっとでも協力したら、藍染隊長に殺されるかもしれへんのよ」
もちろんそれを承知の上で、協力するのだ。それに、スタークにだって、市丸のアホさが見えていた。
「あんただって、あいつを逃がしたいと思ってたんだろ?心変わりしちまったみてぇだが」
市丸は少し黙って、その言葉を聞いてやった。
「状況は変わるもんや。なつみちゃん、服着れたら、藍染隊長んとこ行くで。報告して、お説教してもらうわ」
「…はい」
誰にも気付かれず、ちょっと行ってすぐ帰る作戦は、失敗に終わってしまった。