第九章
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お出かけからルンルンで帰ってきた4人だが、なつみん家(仮)に入るなり、市丸に通せんぼされてしまった。
「おかえり、みんな」
「ただいま戻りました、隊長😊」
「ただいま」「タダイマ」
「ウ」
市丸は人差し指を立てて、口元にやった。
「あんまりうるさくしたら、あかんで。今、グリムジョーが会議室でお説教されてんねん」
「え⁉️🫢何したんですか、あいつ」
「ボクからは言われへんわ。とりあえず、今日はもうあの部屋に入らんとき」
むーんと、なつみは眉間に皺を寄せた。
「ご飯は作ってあるで、キッチンから持ってって、お部屋で食べ」
「およ、わざわざ。ありがとうございます。じゃあ、行こっか」
アーロニーロとワンダーワイスに声をかけ、なつみは市丸の横を通り過ぎていった。
「ご飯の前に、手洗いうがいするんやでー」
「はーい✋」
夜、ベッドの中で市丸にグリムジョーのことをもう一度きいてみたが、何も教えてくれなかった。諦めたなつみは、伝令神機を持ち出し、花の写真を見せることにした。
「すごいなぁ。めっちゃ綺麗やん」
「ですよね」
「今度ボクも連れてってや」
「はい。でも、踏み荒らさないようにしたいので、言いふらしたりしないでくださいね。そっとしておける人たちにしか、教えたくありませんから」
「ふーん。せやね。台無しにしたないな、こんなええとこ」
翌朝、驚いたことにルピが、グリムジョーの番号である6を付けて、偉そうにしているのに遭遇した。
「え…?グリムジョーは?」
「さぁね。これからは、ボクがセスタだから。ヨロシクね、なつみ」
マグカップに淹れたコーヒーを飲みながら、朝食の席に着く十刃たちの顔を睨み回したが、その視線から逃れるように、彼らはなつみを気にせず、食事を進めた。
「むぅっ(-公-)」
「そんな難しい顔をしなくても、良いじゃないか」
と言ったのは藍染。
「交代しなきゃならないほどのことって、何ですか」
「ルピの方が適任だと、判断しただけだよ。それはそうと、今日は何をする予定かな」
そんな説明では、ムスッとしたままだ。
「今日は大工さんをします。水が良い感じに湧いてきてるので、どんどん作ってかないと」
「そう。予定より広くするの?」
「もちろん❗️意外と余裕ありそうなんで」
「それは楽しみだ」
すると、新顔のルピが、怖いもの知らずに割り込んできた。
「ねぇねぇ、なつみ。大工仕事するなら、ついでにボクの新しい家を造ってよ」
「え…」
「元セスタさん家の場所にさ、ボクぴったりの大っきい宮をお願いしたいな〜。解体して更地にしておくから、そこに建ててよ」
「でも、グリムジョーたちは」
「もういないよ。空いてるとこにでも居るんじゃない?」
「……。」
気が引けてしまう。
「そうだ!これからボクの部屋に来てよ。ボクの要望をいろいろと聞いてもらいたいからさ。それを基に設計しよーよー。ね😉」
ルピはなつみの隣りまでやってきて、彼女の腕を掴んで、「ねーねー」と揺すった。なつみは口を結んでおり、それに答えなかった。
「ルピ」見兼ねた藍染が、ルピを制する。「なつみに頼み事をするのは良いが、困らせてはいけないよ」
ルピは止まった。
「返事は」
「はぁい」
わがままはそこで終わった。
「なつみ、ごめん」少し考える間を置き。「…、じゃあ、そっちの仕事の区切りがついたらで良いよ。後でお願い」
態度が改まったのを見て、なつみは俯き気味だが、ちゃんと頷いて承諾してあげた。
「わかった」
「ありがとう」
建設進行中の作業の手を止め、お昼になつみはおにぎりを食べつつ、テラスからグリムジョーの宮があった場所を見ていた。
「マジで潰しやがった、あいつ」
そう独り言を言っていたら、後ろから話しかけられた。
「マジだねー」
振り向くと、隣りにリリネットが来た。ふたり並んで、柵の手すりに寄りかかる。
「ルピって、結構乱暴だよね」
「グリムジョーだって似たようなもんでしょ」
「でもあいつは慕われてる。今のルピはわがまますぎて、ついてきたいって、思われてないでしょ。ぼく、苦手かも。前まで、そんなんじゃなかったのに。スクラップアンドビルドじゃん、あれ。物を大切にできない人、ぼくは嫌だ」
おにぎりをまたひと口。
「陰口なんて、らしくないね。まぁ、でも確かに、徹底しすぎに見えなくもないか」
「やりすぎなの」
最後のひと口を口に入れ、水筒のお茶を飲んだ。お弁当を片付けてから、どこかに水色の髪が見えないかと、周囲を探してみた。期待は薄かったが。
「むぉー…。おらんかのー」
手を双眼鏡にして、ぐーっと左から右へ。
「誰探してんの?」
「グリムジョー」
「部屋の中で落ち込んでんじゃない?相当怒られたっぽいから」
「……、‼️‼️」
「いた?」
「行ってくる」
虚夜宮中央から、かなり離れた建物の屋上で、水色の髪が風になびいていた。
「……」
「捕まえたッ‼️」
もの思いにふけて、佇んでいたら、突然背後から襲われるグリムジョー。
「オイッ❗️なつみッ❗️何すんだ❗️」
「捕まえたのーッ‼️」
そいつはしっかりとしがみついており、グリムジョーがいくらクルクル回っても、引っ張っても離れなかった。なのだが、仕方なく諦めようとしたとき、勝手に離れられた。
「ちょっと…、どうしたの。左腕、無くなってるじゃん!」
中身が無く、ペラペラな袖に気付いた。その袖から、グリムジョーの顔へ視線を上げる。
「誰がやったの」
逆にグリムジョーは視線を逸らせた。
「東仙」
「はぁ⁉︎何で⁉︎」
「罰だとよ」
納得できないなつみを置いて、グリムジョーは屋内に帰っていく。
「あ❗️待ってよ❗️」
もちろん、その背中を追いかけていく。
「昨日何があったの。教えてよ。みんな教えてくれないんだ」
「だろうよ」
「グリムジョー!」
彼の右手を取って引き止めることができた。振り向いたグリムジョーは、こう言う。
「気にしねぇって、約束できるなら、オレの部屋で話してやる。できねぇなら、もう帰れ」
考えることに集中して、手を放してしまった。グリムジョーは先に進んだ。
「んっ」
決心して、なつみはグリムジョーが入った部屋へ急いだ。
そこは簡素なインテリアだった。そこに行くしかないベッドに座る、グリムジョーの隣り。
「ふん!😤」
来てやったぞと。座った勢いで、ベッドが上下に揺れた。
「約束守れなかったら、説教喰らうんだぞ。良いのか」
「守るもん!」
「そうかよ」
どこから話すか、探す間を置いてから、静かに語り始めた。
「ヤミーが腕切られて帰ってきた日、覚えてるか」
「うん。もちろん。びっくりしたもん。でも、ちゃんと治せてあげれて、良かったよ。それと何が」
そこまで言って、なつみは口を開けたまま、しばらく言葉を続けられなかったが、瞬きをしてから考えを口に出した。
「まさか、敵討」
「…みてぇなもん」
呆れたため息を、思い切りついてしまった。
「はぁッ!もぅッ、何考えてんの!勝手に行ったら、怒られるに決まってるじゃん!」
「そんなもんは、勝てばお咎め無しだろ」
「え…、ちょっと待って…。怖いこと言わないで欲しいんだけどさ」
「何だよ」
気付いてはいたが、何が理由でそうなっているのかは、わかっていなかった。気のせいだとも思っていた。しかし、グリムジョーのこの言い方が本当なら、彼らはどこに。
「シャウロンとエドラドとイールフォルトとナキームとディ・ロイは…」
「一緒に連れてった」
「姿が見えないの」グリムジョーの脚に、震える手を置いた。「どこ…?」
「死んだ」
「ッ‼︎‼︎」
なつみは勢いよく立ち上がった。
「誰ッ⁉︎どこの誰がやったの‼︎‼︎」
「落ち着け」
「無理だよ‼︎‼︎仲間がこんなにやられて、黙ってられるわけないじゃん‼︎‼︎」
「うるせぇッ‼︎‼︎気にしねぇって約束したろ‼︎‼︎」
「ッ……‼︎」
グリムジョーも声を荒げ、それを前になつみは口を強く結んだ。
「お前のここでの仕事は、戦うことじゃねぇ。虚夜宮を住みやすい場所にすることだ。お前は正義感が強ぇから、これを知れば、敵の陣地に乗り込んで行こうとするのはみんなわかってる。お前を守るために黙ってんだよ。馬鹿をやったのはオレたちだけで充分だ。お前はここを動くな。もう一度言うぜ。この部屋で聞いたことは、気にすんな。わかったか」
唇を噛みながら、なつみはベッドに座り直した。
「……。」
そして頷いた。
「よし」
本当はなつみの頭を撫でてやりたかったが、その時なつみは手の無い左側に座ってしまった。話を続ける。
「ヤミーがやられたことを知って、オレたちは久しぶりに強ぇ敵と戦えると思ったんだ。言えば止められるのはわかってたからよ、藍染サマにも、誰にも見つからねぇように、タイミングを見計らって出ていった」
「それが昨日」
「あぁ。相手が強ぇと、張り合いがあって、良いもんなんだが、あいつらには、強過ぎたみてぇだな」少し上を見上げる。「黙って出てきても、オレたちが暴れだせば、見つかっちまうらしくてよ。あいつら5人とも消されたところで、オレは東仙に連れ戻された」頬杖をついて、猫背になる。「藍染サマは許してくれるっつったんだが、東仙の苛立ちは治らず、勝手に行動した挙句、上位破面を5人も死なせた罰として、オレの左腕を斬り落とし、燃やしちまった」
なつみは口元に手をやり、はっと息を呑んだ。
「集団の和を乱す奴はいらねぇんだと。戦闘力と十刃の地位を剥奪されて、オレはもう用無し扱いだ。なのに、反乱でも怖ぇのか、オレに虚夜宮に留まれって命令を出しやがる。くだらねぇ」
グリムジョーは頬杖から起き上がり、なつみに身体を向けた。
「これで満足したか?全部話してやったぞ」
きかれたなつみは、鼻を一度啜ってから、グリムジョーの方を向き、両手を空の袖に添えた。
「無理だろ」
「静かにして」
集中し、切り口から先を思い描いて、霊力を注ぎ込む。虚の身体に組み込まれた、高速再生の能力を少しでも呼び起こせたらと、心で念じて。
「んー」
熱が上がってくるのは感じられるが、それ以上の変化はなかなか起きない。
「んー!」
唸っても、どうにもならないこともある。
「もういい、なつみ。やめろ」
「ん‼︎」
グリムジョーがなつみの手を掴んで、作業を止めた。
「ヤミーのときみたいに、落とされた方の腕もあれば、くっつけるだけだったのに」
卯ノ花から重点的に鍛えられたのは、傷の治し方であり、失った身体の部位の再生は、負傷者本人の回復力に任せるようにと教わっていた。
「ぼくじゃ、治してあげられない。ごめん…」
「何でお前が謝んだよ。悪りぃのは、全部オレだ。オレが蒔いた種だ」
そう言って、あからさまに落ち込まれると、なつみは放ってはおけない。
敵討も治療もできないなら、せめて、と思い、なつみは立ち上がった。グリムジョーに身体を向け、そちらへ移動する。
「ぎゅっ」
「…⁉︎」
ベッドに座るグリムジョーに跨るように、正面から優しく抱きついていった。
「ぎゅー」
「おいッ!何してんだよ」
突然の行動にグリムジョーは焦り、右手でなつみの背中を掴んで引っ張った。だが、動くはずもない。
「ぎゅうしてんの❗️」
嫌がるところをお構い無しにくっついていくなつみ。ほっぺた同士がくっつくほどに。
「げんきげんきだよ、グリムジョー」
「ああ⁉︎///」
右に左にゆっさゆっさ。
「失くしたものがいっぱいでも、残ったものもあるんだよ。悪いことが起きたように見えても、世界は最善で周ってるって信じよう。一緒に、この悲しいを幸せに繋げれるように、がんばってみようよ。失くしたことを、無駄だったで終わらせないようにさ」
伝ってきたのは声だけではなかった。
「なんとかできるよね」
掴んでいた右手の力が抜け、グリムジョーはなつみを引き寄せることにした。
「ったりめぇだ。こんなダサい終わり方があるかよ。チャンスは巡ってくる。必ずな」
頷きが返ってきた。
「なつみ」
グリムジョーはなつみの肩に顔を埋めた。
「ありがとな、会いに来てくれて」
なつみは顔を上げた。
「話してくれて、ありがとう」
大工仕事にそろそろ戻らなければと、なつみはグリムジョーの部屋を出ようとした。だが、閃いてしまって、くるりと回れ右をした。
「そうだ❗️」
「?」
「今から仕事手伝ってよ。暇でしょ?」
「あのな、暇だろうが、この腕だぞ」
「できること頼むから😤」
「怪我人相手に、人使い荒ぇな、ったく」
文句を言いつつも、重い腰を上げてくれる。
「その傷を治すのに必要なの❗️作業スピード上げて、とっとと完成させなきゃ❗️」
「あー、そうかよ」
廊下を通り、階段を降りていく。
「あとさ❗️」
「まだ何かあんのかよ」
「うちのお向かいに住みなよ」
「あ?」
「部屋空いてるよ」
「良いよ、ここで」
「ダメ❗️」
「何でだよ💧」
「ぼくがグリムジョーのお世話するから❗️」
「…いい😓」
「ダメ❗️片腕だと、いろいろ不便でしょ。生えてくるまで、ぼくが介助する❗️任せろ❗️」
確かに、この半日でいくつか苦労を感じてはいたが。
「…いい😑」
なつみでなければ、受け入れただろうに。
「ダメ❗️」
なつみであるから、相手をしてくれる今。
「グリムジョーが嫌がっても、ぼくがやるの❗️みんなが負けちゃったこと気にしないように。次に進めるように❗️」
バンッと玄関の扉を開けた。
「おかえり、みんな」
「ただいま戻りました、隊長😊」
「ただいま」「タダイマ」
「ウ」
市丸は人差し指を立てて、口元にやった。
「あんまりうるさくしたら、あかんで。今、グリムジョーが会議室でお説教されてんねん」
「え⁉️🫢何したんですか、あいつ」
「ボクからは言われへんわ。とりあえず、今日はもうあの部屋に入らんとき」
むーんと、なつみは眉間に皺を寄せた。
「ご飯は作ってあるで、キッチンから持ってって、お部屋で食べ」
「およ、わざわざ。ありがとうございます。じゃあ、行こっか」
アーロニーロとワンダーワイスに声をかけ、なつみは市丸の横を通り過ぎていった。
「ご飯の前に、手洗いうがいするんやでー」
「はーい✋」
夜、ベッドの中で市丸にグリムジョーのことをもう一度きいてみたが、何も教えてくれなかった。諦めたなつみは、伝令神機を持ち出し、花の写真を見せることにした。
「すごいなぁ。めっちゃ綺麗やん」
「ですよね」
「今度ボクも連れてってや」
「はい。でも、踏み荒らさないようにしたいので、言いふらしたりしないでくださいね。そっとしておける人たちにしか、教えたくありませんから」
「ふーん。せやね。台無しにしたないな、こんなええとこ」
翌朝、驚いたことにルピが、グリムジョーの番号である6を付けて、偉そうにしているのに遭遇した。
「え…?グリムジョーは?」
「さぁね。これからは、ボクがセスタだから。ヨロシクね、なつみ」
マグカップに淹れたコーヒーを飲みながら、朝食の席に着く十刃たちの顔を睨み回したが、その視線から逃れるように、彼らはなつみを気にせず、食事を進めた。
「むぅっ(-公-)」
「そんな難しい顔をしなくても、良いじゃないか」
と言ったのは藍染。
「交代しなきゃならないほどのことって、何ですか」
「ルピの方が適任だと、判断しただけだよ。それはそうと、今日は何をする予定かな」
そんな説明では、ムスッとしたままだ。
「今日は大工さんをします。水が良い感じに湧いてきてるので、どんどん作ってかないと」
「そう。予定より広くするの?」
「もちろん❗️意外と余裕ありそうなんで」
「それは楽しみだ」
すると、新顔のルピが、怖いもの知らずに割り込んできた。
「ねぇねぇ、なつみ。大工仕事するなら、ついでにボクの新しい家を造ってよ」
「え…」
「元セスタさん家の場所にさ、ボクぴったりの大っきい宮をお願いしたいな〜。解体して更地にしておくから、そこに建ててよ」
「でも、グリムジョーたちは」
「もういないよ。空いてるとこにでも居るんじゃない?」
「……。」
気が引けてしまう。
「そうだ!これからボクの部屋に来てよ。ボクの要望をいろいろと聞いてもらいたいからさ。それを基に設計しよーよー。ね😉」
ルピはなつみの隣りまでやってきて、彼女の腕を掴んで、「ねーねー」と揺すった。なつみは口を結んでおり、それに答えなかった。
「ルピ」見兼ねた藍染が、ルピを制する。「なつみに頼み事をするのは良いが、困らせてはいけないよ」
ルピは止まった。
「返事は」
「はぁい」
わがままはそこで終わった。
「なつみ、ごめん」少し考える間を置き。「…、じゃあ、そっちの仕事の区切りがついたらで良いよ。後でお願い」
態度が改まったのを見て、なつみは俯き気味だが、ちゃんと頷いて承諾してあげた。
「わかった」
「ありがとう」
建設進行中の作業の手を止め、お昼になつみはおにぎりを食べつつ、テラスからグリムジョーの宮があった場所を見ていた。
「マジで潰しやがった、あいつ」
そう独り言を言っていたら、後ろから話しかけられた。
「マジだねー」
振り向くと、隣りにリリネットが来た。ふたり並んで、柵の手すりに寄りかかる。
「ルピって、結構乱暴だよね」
「グリムジョーだって似たようなもんでしょ」
「でもあいつは慕われてる。今のルピはわがまますぎて、ついてきたいって、思われてないでしょ。ぼく、苦手かも。前まで、そんなんじゃなかったのに。スクラップアンドビルドじゃん、あれ。物を大切にできない人、ぼくは嫌だ」
おにぎりをまたひと口。
「陰口なんて、らしくないね。まぁ、でも確かに、徹底しすぎに見えなくもないか」
「やりすぎなの」
最後のひと口を口に入れ、水筒のお茶を飲んだ。お弁当を片付けてから、どこかに水色の髪が見えないかと、周囲を探してみた。期待は薄かったが。
「むぉー…。おらんかのー」
手を双眼鏡にして、ぐーっと左から右へ。
「誰探してんの?」
「グリムジョー」
「部屋の中で落ち込んでんじゃない?相当怒られたっぽいから」
「……、‼️‼️」
「いた?」
「行ってくる」
虚夜宮中央から、かなり離れた建物の屋上で、水色の髪が風になびいていた。
「……」
「捕まえたッ‼️」
もの思いにふけて、佇んでいたら、突然背後から襲われるグリムジョー。
「オイッ❗️なつみッ❗️何すんだ❗️」
「捕まえたのーッ‼️」
そいつはしっかりとしがみついており、グリムジョーがいくらクルクル回っても、引っ張っても離れなかった。なのだが、仕方なく諦めようとしたとき、勝手に離れられた。
「ちょっと…、どうしたの。左腕、無くなってるじゃん!」
中身が無く、ペラペラな袖に気付いた。その袖から、グリムジョーの顔へ視線を上げる。
「誰がやったの」
逆にグリムジョーは視線を逸らせた。
「東仙」
「はぁ⁉︎何で⁉︎」
「罰だとよ」
納得できないなつみを置いて、グリムジョーは屋内に帰っていく。
「あ❗️待ってよ❗️」
もちろん、その背中を追いかけていく。
「昨日何があったの。教えてよ。みんな教えてくれないんだ」
「だろうよ」
「グリムジョー!」
彼の右手を取って引き止めることができた。振り向いたグリムジョーは、こう言う。
「気にしねぇって、約束できるなら、オレの部屋で話してやる。できねぇなら、もう帰れ」
考えることに集中して、手を放してしまった。グリムジョーは先に進んだ。
「んっ」
決心して、なつみはグリムジョーが入った部屋へ急いだ。
そこは簡素なインテリアだった。そこに行くしかないベッドに座る、グリムジョーの隣り。
「ふん!😤」
来てやったぞと。座った勢いで、ベッドが上下に揺れた。
「約束守れなかったら、説教喰らうんだぞ。良いのか」
「守るもん!」
「そうかよ」
どこから話すか、探す間を置いてから、静かに語り始めた。
「ヤミーが腕切られて帰ってきた日、覚えてるか」
「うん。もちろん。びっくりしたもん。でも、ちゃんと治せてあげれて、良かったよ。それと何が」
そこまで言って、なつみは口を開けたまま、しばらく言葉を続けられなかったが、瞬きをしてから考えを口に出した。
「まさか、敵討」
「…みてぇなもん」
呆れたため息を、思い切りついてしまった。
「はぁッ!もぅッ、何考えてんの!勝手に行ったら、怒られるに決まってるじゃん!」
「そんなもんは、勝てばお咎め無しだろ」
「え…、ちょっと待って…。怖いこと言わないで欲しいんだけどさ」
「何だよ」
気付いてはいたが、何が理由でそうなっているのかは、わかっていなかった。気のせいだとも思っていた。しかし、グリムジョーのこの言い方が本当なら、彼らはどこに。
「シャウロンとエドラドとイールフォルトとナキームとディ・ロイは…」
「一緒に連れてった」
「姿が見えないの」グリムジョーの脚に、震える手を置いた。「どこ…?」
「死んだ」
「ッ‼︎‼︎」
なつみは勢いよく立ち上がった。
「誰ッ⁉︎どこの誰がやったの‼︎‼︎」
「落ち着け」
「無理だよ‼︎‼︎仲間がこんなにやられて、黙ってられるわけないじゃん‼︎‼︎」
「うるせぇッ‼︎‼︎気にしねぇって約束したろ‼︎‼︎」
「ッ……‼︎」
グリムジョーも声を荒げ、それを前になつみは口を強く結んだ。
「お前のここでの仕事は、戦うことじゃねぇ。虚夜宮を住みやすい場所にすることだ。お前は正義感が強ぇから、これを知れば、敵の陣地に乗り込んで行こうとするのはみんなわかってる。お前を守るために黙ってんだよ。馬鹿をやったのはオレたちだけで充分だ。お前はここを動くな。もう一度言うぜ。この部屋で聞いたことは、気にすんな。わかったか」
唇を噛みながら、なつみはベッドに座り直した。
「……。」
そして頷いた。
「よし」
本当はなつみの頭を撫でてやりたかったが、その時なつみは手の無い左側に座ってしまった。話を続ける。
「ヤミーがやられたことを知って、オレたちは久しぶりに強ぇ敵と戦えると思ったんだ。言えば止められるのはわかってたからよ、藍染サマにも、誰にも見つからねぇように、タイミングを見計らって出ていった」
「それが昨日」
「あぁ。相手が強ぇと、張り合いがあって、良いもんなんだが、あいつらには、強過ぎたみてぇだな」少し上を見上げる。「黙って出てきても、オレたちが暴れだせば、見つかっちまうらしくてよ。あいつら5人とも消されたところで、オレは東仙に連れ戻された」頬杖をついて、猫背になる。「藍染サマは許してくれるっつったんだが、東仙の苛立ちは治らず、勝手に行動した挙句、上位破面を5人も死なせた罰として、オレの左腕を斬り落とし、燃やしちまった」
なつみは口元に手をやり、はっと息を呑んだ。
「集団の和を乱す奴はいらねぇんだと。戦闘力と十刃の地位を剥奪されて、オレはもう用無し扱いだ。なのに、反乱でも怖ぇのか、オレに虚夜宮に留まれって命令を出しやがる。くだらねぇ」
グリムジョーは頬杖から起き上がり、なつみに身体を向けた。
「これで満足したか?全部話してやったぞ」
きかれたなつみは、鼻を一度啜ってから、グリムジョーの方を向き、両手を空の袖に添えた。
「無理だろ」
「静かにして」
集中し、切り口から先を思い描いて、霊力を注ぎ込む。虚の身体に組み込まれた、高速再生の能力を少しでも呼び起こせたらと、心で念じて。
「んー」
熱が上がってくるのは感じられるが、それ以上の変化はなかなか起きない。
「んー!」
唸っても、どうにもならないこともある。
「もういい、なつみ。やめろ」
「ん‼︎」
グリムジョーがなつみの手を掴んで、作業を止めた。
「ヤミーのときみたいに、落とされた方の腕もあれば、くっつけるだけだったのに」
卯ノ花から重点的に鍛えられたのは、傷の治し方であり、失った身体の部位の再生は、負傷者本人の回復力に任せるようにと教わっていた。
「ぼくじゃ、治してあげられない。ごめん…」
「何でお前が謝んだよ。悪りぃのは、全部オレだ。オレが蒔いた種だ」
そう言って、あからさまに落ち込まれると、なつみは放ってはおけない。
敵討も治療もできないなら、せめて、と思い、なつみは立ち上がった。グリムジョーに身体を向け、そちらへ移動する。
「ぎゅっ」
「…⁉︎」
ベッドに座るグリムジョーに跨るように、正面から優しく抱きついていった。
「ぎゅー」
「おいッ!何してんだよ」
突然の行動にグリムジョーは焦り、右手でなつみの背中を掴んで引っ張った。だが、動くはずもない。
「ぎゅうしてんの❗️」
嫌がるところをお構い無しにくっついていくなつみ。ほっぺた同士がくっつくほどに。
「げんきげんきだよ、グリムジョー」
「ああ⁉︎///」
右に左にゆっさゆっさ。
「失くしたものがいっぱいでも、残ったものもあるんだよ。悪いことが起きたように見えても、世界は最善で周ってるって信じよう。一緒に、この悲しいを幸せに繋げれるように、がんばってみようよ。失くしたことを、無駄だったで終わらせないようにさ」
伝ってきたのは声だけではなかった。
「なんとかできるよね」
掴んでいた右手の力が抜け、グリムジョーはなつみを引き寄せることにした。
「ったりめぇだ。こんなダサい終わり方があるかよ。チャンスは巡ってくる。必ずな」
頷きが返ってきた。
「なつみ」
グリムジョーはなつみの肩に顔を埋めた。
「ありがとな、会いに来てくれて」
なつみは顔を上げた。
「話してくれて、ありがとう」
大工仕事にそろそろ戻らなければと、なつみはグリムジョーの部屋を出ようとした。だが、閃いてしまって、くるりと回れ右をした。
「そうだ❗️」
「?」
「今から仕事手伝ってよ。暇でしょ?」
「あのな、暇だろうが、この腕だぞ」
「できること頼むから😤」
「怪我人相手に、人使い荒ぇな、ったく」
文句を言いつつも、重い腰を上げてくれる。
「その傷を治すのに必要なの❗️作業スピード上げて、とっとと完成させなきゃ❗️」
「あー、そうかよ」
廊下を通り、階段を降りていく。
「あとさ❗️」
「まだ何かあんのかよ」
「うちのお向かいに住みなよ」
「あ?」
「部屋空いてるよ」
「良いよ、ここで」
「ダメ❗️」
「何でだよ💧」
「ぼくがグリムジョーのお世話するから❗️」
「…いい😓」
「ダメ❗️片腕だと、いろいろ不便でしょ。生えてくるまで、ぼくが介助する❗️任せろ❗️」
確かに、この半日でいくつか苦労を感じてはいたが。
「…いい😑」
なつみでなければ、受け入れただろうに。
「ダメ❗️」
なつみであるから、相手をしてくれる今。
「グリムジョーが嫌がっても、ぼくがやるの❗️みんなが負けちゃったこと気にしないように。次に進めるように❗️」
バンッと玄関の扉を開けた。