第九章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
そちらでも、そろそろ冷えてきますよね。気に入ってもらえるか不安ですが、お願いして作ってもらったストールも届けてもらいますね。ぜひ、使ってください。ここから春水さんにしてあげられること、これくらいしか無くて、すみません。風邪をひかないように、気をつけてくださいね。ぼくもぽかぽかしてるようにします。春水さんのこと考えたら、⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎、いつも毎日考えるようにしますね。
手紙はこの先、次に会えたら何をしたいかが綴られているが、少々読みづらい。そして、同封したという記念写真は入っていなかった。
これを読んだ護廷十三隊の見解は、以下の通りだ。
「なつみちゃんは、こっちで何があったか、全然知らないみたいだね。拉致されたことにも気付いてない。任務って聞かされてるんだ。あの子、真面目だから、勝手に抜け出そうって気も起きないんだよ」
「黒腔を開く術など、当然のように教えられていないだろうしネェ。こちらから迎えに行き、事実を伝えるしかないヨ」
「涅、黒腔を開けるのか」
「……。」
「喜助くんに相談しようか」
「💢」
「京楽を睨んだところで、何も思い付かんのじゃろ。外の者には外のことを頼んでも良かろう。だが、お前は違う。お前には尸魂界内のことを頼む」
隊首会にて、話が進む。
「藍染は、虚圏の虚夜宮を拠点とし、破面の軍を率いておるようじゃな。日番谷先遣隊の報告内容も含めると、隊長格となりそうな破面が、少なくとも既に3人おることになる」
「挙がってる名前とどれも合わないから、手紙に書かれていた人たちも入れると、8人。…まぁ、10人近くはいるかもしれないって思った方が良いよね」
「護廷十三隊を相手にしようとしているのだ。隊長の人数以上を揃えてくるだろう」
「頭数が揃おうと、実力が伴うとは限らぬ」
「だとしても、油断は禁物だ。我々隊長が、前線に立たねばならぬことには変わりない。日番谷隊長ですら、限定解除無しには破面に苦戦したのだ」
「ええ。それに、藍染、東仙、市丸の3名にしてやられてしまったことも、忘れてはなりません。私たちでなければ、彼らとまともに戦うことなど不可能です」
「何だって良いぜ。虚圏に乗り込めるようになったら、すぐに俺が行ってやる。そうすりゃ、全員倒してなつみを連れて帰って来てやるよ。簡単じゃねぇか」
「言うのは簡単だがネェ、君は藍染に一太刀でやられた黒崎一護に敗北しているんだヨ。君1人で行かせて、そう上手くいくとは思えんネ」
マユリは肩をすくめる。
「旅禍にやられたのは、テメェも同じだろうが」
更木が言い返した。
「💢」
「やめい。過ぎたことを言い合って、何になる。各々、次の戦いに備え、鍛錬を積めば良いだけのことだ。急いてはならん。何故お前達が負けてしもうたか、時間をかけて反省せえ」ふたりから、浮竹へと視線を変える。「浮竹、調査報告を頼む」
「はい」その場にいる隊長らの耳が、浮竹へ傾く。「藍染が、王鍵について調べていたことがわかりました。虚圏へ姿を消す直前に残した言葉からも推測すると、恐らく藍染の最終的な狙いは、霊王を失脚させ、自らがその座に就くことではないでしょうか」
「…、惣右介くんじゃ無理だよ」
「彼奴1人ではな。じゃが、今、奴の手元には崩玉となつみがおる。不可能とは言い切れん」
悩むように、元柳斎は杖に体重をかけて、少し俯いた。
「なつみの存在は、本当に厄介だヨ」
言い方がきつく、マユリの言葉にみんなが顔をしかめた。
「あの子の能力は、無機物にさえ意識を与え、自在に動かすこともできる。それが崩玉にも効くのだとすれば、浦原が算出した昏睡期間4ヶ月というのも無視して、即、覚醒させることができるやもしれない。既に覚醒状態にあるとすれば、敗北の反省に時間を割くなどという悠長なことは、言っていられないんですヨ、総隊長殿」
「うむ……、確かにの。迅速に動くとしよう。王鍵の創生を目論んでおるために、重霊地である空座町へ、破面を視察に送り込んできたと考えて良いじゃろう。藍染捕縛となつみ奪還は、同時に離れた場で行うのが最善である。十万もの魂魄を、私利私欲のために掻き集める様など、儂らのなつみに堪えられるはずもない。藍染もそれを考慮しておるなら、実行する際はなつみを虚夜宮へ置いて来るじゃろう。儂らはそこを突くとしよう。じゃが…、その機を予測する術が無い。手がかりとなりそうな事象は、起きないものか…」
これまでにあった出来事を隅々まで振り返り、考えを巡らせる隊長たち。一番手に閃いたのは、やはりこの男だった。
「あちらさん、こっちの戦力を分散させたいって、思ってないかな」
京楽である。元柳斎は片眉を上げた。
「何故そう思う」
「資料の閲覧記録は必ず残るから、王鍵を求めていることがボクたちにバレちゃうのを、惣右介くんは絶対にわかってる。それでボクらが空座町に対して、何らかの対策をするのも計算に入れてるよね。王鍵を作るのなんて、こそこそやれる仕事じゃないだろうし、それなりに時間がかかるはずだから、手が離せない惣右介くんを阻止できる隙が得られるかもしれない。いくら破面が強い味方でも、惣右介くんが虚を本気で信頼することはないと思う、2人の元隊長だって、心許ないだろう。だったら、より確実に作業ができるよう、ボクたち隊長格全員が揃ってしまうことがないようにするんじゃないかな」
みんな、なるほどと頷く。
「一護くんも、惣右介くんにとっては邪魔な存在になり得る。彼の成長は著しいから、予想外の行動を取られないように、離れていたいはず。戦場を現世と虚圏で分けて、敵の数を減らし、自分が動きやすいように、環境を整えてくるんじゃないかな。ボクらはなつみちゃんを連れ戻すために虚圏へ行きたい。それと似た動機を、一護くんたち側にも与えてくるかもしれない」
「それが合図になると…」
「うん」
「だとしたら、あの女が狙われるんじゃねーか」
背負って走り回った記憶がまだ新しく、更木はすぐにそう思った。
「織姫ちゃん。あの子を連れ去ってもらおう」
その提案に少々驚かされた。
「惣右介くんの望みは、敵の殲滅ではないだろうから、一人一人をわざわざ殺していくような、煩わしいことはしないと思うんだ。とにかくまとめて虚圏に封じ込め、必要最低限しか参戦しない。それをするのに一番適しているのが、織姫ちゃんの誘拐。彼女を攫えば、一護くんたち全員で助けに向かう。そうすれば、空座町での邪魔者は減らせるよね」
「賭ける価値はあるかの」
「もちろん絶対とは言い切れないけど」
「実に現実的な考えだネェ。人間を餌にするとは」
「助かれば許してくれる。一護くんは、そういう子なんでしょ」
「京楽‼︎お前、自分の言っていることが、わかっているのか‼︎藍染に捕らわれれば、何をされるかわからないんだぞ!助け出すまで無事だとは限らない!人間を俺たちの都合に巻き込むなんて、できるか‼︎」
浮竹はそう訴えたが。
「そう熱くならずとも、良いじゃぁないか。利用できるものなら、何でも利用しなければ」反論したのは京楽ではなく、マユリ。「全ては最愛のなつみのため。あの子を取り戻せるなら、多少の犠牲ぐらい容易に目を瞑れるヨ」
「涅‼︎」
「まぁまぁ、浮竹。ボクだって、彼らが良い子たちだってことはわかってる。巻き込んで悪いと思うけど、ボクらが離れたところで、惣右介くんが彼らに襲いかかるんだよ。現に、もう2度も破面を送ってる。一護くんたちにも、戦ってもらおう。相手の状況を判断するには、相手に動いてもらわなきゃならないから。少しの可能性にだって賭けなきゃ、勝てっこないんだよ」
「……」
京楽の正論に閉口する浮竹。
「織姫ちゃんを誘拐してもらうタイミングは、ボクらで仕掛けよう」
「できるかの」
「何とかなるでしょ」
「ふむ。できるだけ引き延ばすのじゃ。その間に、空座町の複製を完成させよ。これは十二番隊に頼みたい。良いかの」
「……、結界にも、幻覚を見せる作用があると良いのですがネ」
「良いかの!」
元柳斎は愚痴ではなく、返事が欲しい。
「お任せを」
「よし」
「しかし、お約束を頂きたいのですが」
「何じゃ」
二つ返事で引き受けるほど、マユリはお人好しではない。
「短期間で街ひとつ造るというのは、かなりの重労働。戦いにしか備えない他隊と比べると、負担が大き過ぎます。特別に報酬を頂戴できますかな?」
「聞こう」
ニヤリと笑うマユリ。
「私を虚圏に行かせると、お約束ください」
これにはため息の元柳斎。
「良かろう。涅は、なつみ救出組じゃ」
マユリは小さくグッと右の拳を握った。
「ついでじゃ。他に虚圏行きを希望する者はおるか?おるなら挙手せよ」
虚圏と現世、二手に分かれて戦うため、誰をどこに配置するか決めなければならない。とりあえず、参考程度に希望を取った元柳斎だが、目を疑ってから、またため息が出てしまった。
「全員を行かせるわけがなかろう…」
ちなみに雀部も控えめに挙手している。
「ガッカリしないでよ、山じい。日番谷隊長がいるじゃない」
「💢」
任務で隊首会欠席を余儀なくされている日番谷である。
「お前は儂と共に、現世にて藍染を迎え撃つのじゃーッ‼️」
「ヤダーッ‼️‼️」
囚われの姫ならぬ、姫になることを拒絶した恋人を、白馬に乗った王子様のように、颯爽と救い出したかった、桃色の着物の下に白い隊長羽織を着たおじさま。無念、現世組に決定。
「クソォ。惣右介くんなんか、一瞬で捕まえて、なつみちゃんを救い出しに行ってやる…😖💢」
「その意気じゃ」
なつみがそれを知ることなく、グリムジョーが現世へ勝手に出かけられたのには、理由があった。彼女が先にお出かけしていたからだ。
マユリの予想通り、崩玉の昏睡状態は推測よりも緩和されている。そのため、ワンダーワイスの誕生が、既に済んでいた。
ワンダーワイスは、なつみと出会った途端に彼女を気に入り、いつでも見つけると、ついて歩きたがった。
「かわいいの〜。そばかすが、かわいいの〜。よーしよし」
「アーウー」
「ワンダーワイスは王子様みたいだね。かわいいね」
「アウー」
「ぼくのことはね、かっこいいって言ってね」
「ウー?」
その日はアーロニーロと約束をしていた。
「なつみ、そろそろ行くぞ」「マダー?」
「はーい❗️準備オッケー。行こうぜ〜」
虚夜宮内の仕事はお休みにして、アーロニーロと戦いの稽古に行く予定なのだ。太陽の下では、思うように動けなくなるアーロニーロのために、夜の世界へ出発。と、その時。
「アーゥッ」
左腕を引っ張られて、足止めされてしまった。
「ワンダーワイス。どうしたの?」
「ウーウー」
片手だったのが、両手で掴んできて、駄々をこねるように揺すってくる。
「オイ、なつみハ ボクタチト 出カケルンダ」「邪魔をするな」
「アーアー」
アーロニーロがワンダーワイスの手を強く握り、なつみから離そうとした。
「やめなよ、3人とも。ワンダーワイスは、ぼくについてきたいみたいだね。連れてってあげようよ。ダメ?たまにはお散歩も良いじゃん。お稽古のときは、ぼくらの邪魔はしないって、ちゃんと約束できるでしょ?」
「ウ」
ワンダーワイスは頷いた。
「適当ニ返事シタダケダ」「迷子になるだろ。迷惑だ」
アーロニーロは腕を組んで、ワンダーワイスを置いてくよう訴えかける。
「そんなことないよ。ワンダーワイスはお利口さんだもん。ね」
アーロニーロの嫌がる様子も見てわかっているが、ワンダーワイスを迷惑だと思いたくないなつみは、その金色の髪をぽんぽんと撫でてやってから、きゅっと手を握ってあげた。
「一緒に行こう❗️アーロニーロ❗️文句あるなら、きみを置いてくからね❗️」
「何で‼︎」「ナンデ⁉︎」
「アーウーッ」
4人がなつみん家(仮)から出ていくのを、グリムジョーは確認した。
なつみたちは気の向くままに進んでいき、今まで来たことのない場所へやってきていた。
「よし❗️隠れんぼしようか。じゃんけんして鬼決めようぜ〜。じゃーんーけーんーポイっ✌️」
「✊」
「✊」
「負けた✌️😣💦」
「なつみ オニー」「10数えろ」
「どんどん遠く行けよ、お前ら。あんまり近いと、すぐ捕まえちゃうんだから❗️ワンダーワイスも、遠慮なく本気で隠れてみ😉」
クスクスと笑いながら、鬼を残して走っていった。
9秒後。
「じゅーうッ‼️もーいーかーいッ⁉️」
「もーいーよー…!」
「アー…!」
聞こえたような、聞こえてないような。なつみは霊圧探知を開始する。
「ふむふむ、アーロニーロはチョロいな😏」
しかし、見つけて鬼交代などという優しいルールではやっていないため、きっちりタッチするまで、追いかけっこが続く。能力はいくら使ってもかまわない。これは演習なのだから。
「アーロニーロみっけ❗️」
「ココカラダ!」「逃げ切ってやる」
アーロニーロの相手をしながら、ワンダーワイスの行方も心の中で追うなつみ。
(あれぇ…?やばいなぁ。迷子かも💧)
ワンダーワイスは隠れる場所を探して歩いていたら、何か気になるものを見つけた予感がして、フラーっと歩き出してしまっていた。
「オアー」
世界は予想だにしない偶然を引き起こすもの。新しい出会いは、新しい可能性と共にやってくる。ワンダーワイスは、夜に咲く、花畑を発見したのだ。
(なつみすきだ、こういうの)
大きく息を吸う。
「アァァーウゥーーーッ‼️」
遠くから聞こえてきた。はっきりと。
「アイツ、隠レンボ ワカッテナイ」「アホだな」
「タッチ、アーロニーロ✋」
「あ」「ア」
「何かあったみたい。行ってあげよう」
手紙はこの先、次に会えたら何をしたいかが綴られているが、少々読みづらい。そして、同封したという記念写真は入っていなかった。
これを読んだ護廷十三隊の見解は、以下の通りだ。
「なつみちゃんは、こっちで何があったか、全然知らないみたいだね。拉致されたことにも気付いてない。任務って聞かされてるんだ。あの子、真面目だから、勝手に抜け出そうって気も起きないんだよ」
「黒腔を開く術など、当然のように教えられていないだろうしネェ。こちらから迎えに行き、事実を伝えるしかないヨ」
「涅、黒腔を開けるのか」
「……。」
「喜助くんに相談しようか」
「💢」
「京楽を睨んだところで、何も思い付かんのじゃろ。外の者には外のことを頼んでも良かろう。だが、お前は違う。お前には尸魂界内のことを頼む」
隊首会にて、話が進む。
「藍染は、虚圏の虚夜宮を拠点とし、破面の軍を率いておるようじゃな。日番谷先遣隊の報告内容も含めると、隊長格となりそうな破面が、少なくとも既に3人おることになる」
「挙がってる名前とどれも合わないから、手紙に書かれていた人たちも入れると、8人。…まぁ、10人近くはいるかもしれないって思った方が良いよね」
「護廷十三隊を相手にしようとしているのだ。隊長の人数以上を揃えてくるだろう」
「頭数が揃おうと、実力が伴うとは限らぬ」
「だとしても、油断は禁物だ。我々隊長が、前線に立たねばならぬことには変わりない。日番谷隊長ですら、限定解除無しには破面に苦戦したのだ」
「ええ。それに、藍染、東仙、市丸の3名にしてやられてしまったことも、忘れてはなりません。私たちでなければ、彼らとまともに戦うことなど不可能です」
「何だって良いぜ。虚圏に乗り込めるようになったら、すぐに俺が行ってやる。そうすりゃ、全員倒してなつみを連れて帰って来てやるよ。簡単じゃねぇか」
「言うのは簡単だがネェ、君は藍染に一太刀でやられた黒崎一護に敗北しているんだヨ。君1人で行かせて、そう上手くいくとは思えんネ」
マユリは肩をすくめる。
「旅禍にやられたのは、テメェも同じだろうが」
更木が言い返した。
「💢」
「やめい。過ぎたことを言い合って、何になる。各々、次の戦いに備え、鍛錬を積めば良いだけのことだ。急いてはならん。何故お前達が負けてしもうたか、時間をかけて反省せえ」ふたりから、浮竹へと視線を変える。「浮竹、調査報告を頼む」
「はい」その場にいる隊長らの耳が、浮竹へ傾く。「藍染が、王鍵について調べていたことがわかりました。虚圏へ姿を消す直前に残した言葉からも推測すると、恐らく藍染の最終的な狙いは、霊王を失脚させ、自らがその座に就くことではないでしょうか」
「…、惣右介くんじゃ無理だよ」
「彼奴1人ではな。じゃが、今、奴の手元には崩玉となつみがおる。不可能とは言い切れん」
悩むように、元柳斎は杖に体重をかけて、少し俯いた。
「なつみの存在は、本当に厄介だヨ」
言い方がきつく、マユリの言葉にみんなが顔をしかめた。
「あの子の能力は、無機物にさえ意識を与え、自在に動かすこともできる。それが崩玉にも効くのだとすれば、浦原が算出した昏睡期間4ヶ月というのも無視して、即、覚醒させることができるやもしれない。既に覚醒状態にあるとすれば、敗北の反省に時間を割くなどという悠長なことは、言っていられないんですヨ、総隊長殿」
「うむ……、確かにの。迅速に動くとしよう。王鍵の創生を目論んでおるために、重霊地である空座町へ、破面を視察に送り込んできたと考えて良いじゃろう。藍染捕縛となつみ奪還は、同時に離れた場で行うのが最善である。十万もの魂魄を、私利私欲のために掻き集める様など、儂らのなつみに堪えられるはずもない。藍染もそれを考慮しておるなら、実行する際はなつみを虚夜宮へ置いて来るじゃろう。儂らはそこを突くとしよう。じゃが…、その機を予測する術が無い。手がかりとなりそうな事象は、起きないものか…」
これまでにあった出来事を隅々まで振り返り、考えを巡らせる隊長たち。一番手に閃いたのは、やはりこの男だった。
「あちらさん、こっちの戦力を分散させたいって、思ってないかな」
京楽である。元柳斎は片眉を上げた。
「何故そう思う」
「資料の閲覧記録は必ず残るから、王鍵を求めていることがボクたちにバレちゃうのを、惣右介くんは絶対にわかってる。それでボクらが空座町に対して、何らかの対策をするのも計算に入れてるよね。王鍵を作るのなんて、こそこそやれる仕事じゃないだろうし、それなりに時間がかかるはずだから、手が離せない惣右介くんを阻止できる隙が得られるかもしれない。いくら破面が強い味方でも、惣右介くんが虚を本気で信頼することはないと思う、2人の元隊長だって、心許ないだろう。だったら、より確実に作業ができるよう、ボクたち隊長格全員が揃ってしまうことがないようにするんじゃないかな」
みんな、なるほどと頷く。
「一護くんも、惣右介くんにとっては邪魔な存在になり得る。彼の成長は著しいから、予想外の行動を取られないように、離れていたいはず。戦場を現世と虚圏で分けて、敵の数を減らし、自分が動きやすいように、環境を整えてくるんじゃないかな。ボクらはなつみちゃんを連れ戻すために虚圏へ行きたい。それと似た動機を、一護くんたち側にも与えてくるかもしれない」
「それが合図になると…」
「うん」
「だとしたら、あの女が狙われるんじゃねーか」
背負って走り回った記憶がまだ新しく、更木はすぐにそう思った。
「織姫ちゃん。あの子を連れ去ってもらおう」
その提案に少々驚かされた。
「惣右介くんの望みは、敵の殲滅ではないだろうから、一人一人をわざわざ殺していくような、煩わしいことはしないと思うんだ。とにかくまとめて虚圏に封じ込め、必要最低限しか参戦しない。それをするのに一番適しているのが、織姫ちゃんの誘拐。彼女を攫えば、一護くんたち全員で助けに向かう。そうすれば、空座町での邪魔者は減らせるよね」
「賭ける価値はあるかの」
「もちろん絶対とは言い切れないけど」
「実に現実的な考えだネェ。人間を餌にするとは」
「助かれば許してくれる。一護くんは、そういう子なんでしょ」
「京楽‼︎お前、自分の言っていることが、わかっているのか‼︎藍染に捕らわれれば、何をされるかわからないんだぞ!助け出すまで無事だとは限らない!人間を俺たちの都合に巻き込むなんて、できるか‼︎」
浮竹はそう訴えたが。
「そう熱くならずとも、良いじゃぁないか。利用できるものなら、何でも利用しなければ」反論したのは京楽ではなく、マユリ。「全ては最愛のなつみのため。あの子を取り戻せるなら、多少の犠牲ぐらい容易に目を瞑れるヨ」
「涅‼︎」
「まぁまぁ、浮竹。ボクだって、彼らが良い子たちだってことはわかってる。巻き込んで悪いと思うけど、ボクらが離れたところで、惣右介くんが彼らに襲いかかるんだよ。現に、もう2度も破面を送ってる。一護くんたちにも、戦ってもらおう。相手の状況を判断するには、相手に動いてもらわなきゃならないから。少しの可能性にだって賭けなきゃ、勝てっこないんだよ」
「……」
京楽の正論に閉口する浮竹。
「織姫ちゃんを誘拐してもらうタイミングは、ボクらで仕掛けよう」
「できるかの」
「何とかなるでしょ」
「ふむ。できるだけ引き延ばすのじゃ。その間に、空座町の複製を完成させよ。これは十二番隊に頼みたい。良いかの」
「……、結界にも、幻覚を見せる作用があると良いのですがネ」
「良いかの!」
元柳斎は愚痴ではなく、返事が欲しい。
「お任せを」
「よし」
「しかし、お約束を頂きたいのですが」
「何じゃ」
二つ返事で引き受けるほど、マユリはお人好しではない。
「短期間で街ひとつ造るというのは、かなりの重労働。戦いにしか備えない他隊と比べると、負担が大き過ぎます。特別に報酬を頂戴できますかな?」
「聞こう」
ニヤリと笑うマユリ。
「私を虚圏に行かせると、お約束ください」
これにはため息の元柳斎。
「良かろう。涅は、なつみ救出組じゃ」
マユリは小さくグッと右の拳を握った。
「ついでじゃ。他に虚圏行きを希望する者はおるか?おるなら挙手せよ」
虚圏と現世、二手に分かれて戦うため、誰をどこに配置するか決めなければならない。とりあえず、参考程度に希望を取った元柳斎だが、目を疑ってから、またため息が出てしまった。
「全員を行かせるわけがなかろう…」
ちなみに雀部も控えめに挙手している。
「ガッカリしないでよ、山じい。日番谷隊長がいるじゃない」
「💢」
任務で隊首会欠席を余儀なくされている日番谷である。
「お前は儂と共に、現世にて藍染を迎え撃つのじゃーッ‼️」
「ヤダーッ‼️‼️」
囚われの姫ならぬ、姫になることを拒絶した恋人を、白馬に乗った王子様のように、颯爽と救い出したかった、桃色の着物の下に白い隊長羽織を着たおじさま。無念、現世組に決定。
「クソォ。惣右介くんなんか、一瞬で捕まえて、なつみちゃんを救い出しに行ってやる…😖💢」
「その意気じゃ」
なつみがそれを知ることなく、グリムジョーが現世へ勝手に出かけられたのには、理由があった。彼女が先にお出かけしていたからだ。
マユリの予想通り、崩玉の昏睡状態は推測よりも緩和されている。そのため、ワンダーワイスの誕生が、既に済んでいた。
ワンダーワイスは、なつみと出会った途端に彼女を気に入り、いつでも見つけると、ついて歩きたがった。
「かわいいの〜。そばかすが、かわいいの〜。よーしよし」
「アーウー」
「ワンダーワイスは王子様みたいだね。かわいいね」
「アウー」
「ぼくのことはね、かっこいいって言ってね」
「ウー?」
その日はアーロニーロと約束をしていた。
「なつみ、そろそろ行くぞ」「マダー?」
「はーい❗️準備オッケー。行こうぜ〜」
虚夜宮内の仕事はお休みにして、アーロニーロと戦いの稽古に行く予定なのだ。太陽の下では、思うように動けなくなるアーロニーロのために、夜の世界へ出発。と、その時。
「アーゥッ」
左腕を引っ張られて、足止めされてしまった。
「ワンダーワイス。どうしたの?」
「ウーウー」
片手だったのが、両手で掴んできて、駄々をこねるように揺すってくる。
「オイ、なつみハ ボクタチト 出カケルンダ」「邪魔をするな」
「アーアー」
アーロニーロがワンダーワイスの手を強く握り、なつみから離そうとした。
「やめなよ、3人とも。ワンダーワイスは、ぼくについてきたいみたいだね。連れてってあげようよ。ダメ?たまにはお散歩も良いじゃん。お稽古のときは、ぼくらの邪魔はしないって、ちゃんと約束できるでしょ?」
「ウ」
ワンダーワイスは頷いた。
「適当ニ返事シタダケダ」「迷子になるだろ。迷惑だ」
アーロニーロは腕を組んで、ワンダーワイスを置いてくよう訴えかける。
「そんなことないよ。ワンダーワイスはお利口さんだもん。ね」
アーロニーロの嫌がる様子も見てわかっているが、ワンダーワイスを迷惑だと思いたくないなつみは、その金色の髪をぽんぽんと撫でてやってから、きゅっと手を握ってあげた。
「一緒に行こう❗️アーロニーロ❗️文句あるなら、きみを置いてくからね❗️」
「何で‼︎」「ナンデ⁉︎」
「アーウーッ」
4人がなつみん家(仮)から出ていくのを、グリムジョーは確認した。
なつみたちは気の向くままに進んでいき、今まで来たことのない場所へやってきていた。
「よし❗️隠れんぼしようか。じゃんけんして鬼決めようぜ〜。じゃーんーけーんーポイっ✌️」
「✊」
「✊」
「負けた✌️😣💦」
「なつみ オニー」「10数えろ」
「どんどん遠く行けよ、お前ら。あんまり近いと、すぐ捕まえちゃうんだから❗️ワンダーワイスも、遠慮なく本気で隠れてみ😉」
クスクスと笑いながら、鬼を残して走っていった。
9秒後。
「じゅーうッ‼️もーいーかーいッ⁉️」
「もーいーよー…!」
「アー…!」
聞こえたような、聞こえてないような。なつみは霊圧探知を開始する。
「ふむふむ、アーロニーロはチョロいな😏」
しかし、見つけて鬼交代などという優しいルールではやっていないため、きっちりタッチするまで、追いかけっこが続く。能力はいくら使ってもかまわない。これは演習なのだから。
「アーロニーロみっけ❗️」
「ココカラダ!」「逃げ切ってやる」
アーロニーロの相手をしながら、ワンダーワイスの行方も心の中で追うなつみ。
(あれぇ…?やばいなぁ。迷子かも💧)
ワンダーワイスは隠れる場所を探して歩いていたら、何か気になるものを見つけた予感がして、フラーっと歩き出してしまっていた。
「オアー」
世界は予想だにしない偶然を引き起こすもの。新しい出会いは、新しい可能性と共にやってくる。ワンダーワイスは、夜に咲く、花畑を発見したのだ。
(なつみすきだ、こういうの)
大きく息を吸う。
「アァァーウゥーーーッ‼️」
遠くから聞こえてきた。はっきりと。
「アイツ、隠レンボ ワカッテナイ」「アホだな」
「タッチ、アーロニーロ✋」
「あ」「ア」
「何かあったみたい。行ってあげよう」