第九章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
ここにいる全ての虚を破面にするには時間がかかるため、その日はバラガンが選抜した者たちを、藍染が持つ崩玉で進化させることにした。その間、なつみはできるだけ虚たちの名前を覚えて帰ろうと、自己紹介を聞いて回ったのだが。
「んもー❗️みんなカタカナ❗️覚わんないよ❗️😫」
ギブアップした。
「日本人いないの❓何で❓南米からお越しなの❓」
英語だったりラテン語だったり、とにかくカタカナなのだ。
「僕らだって、こんなにたくさんを一度には覚えきれないよ。だけどそうか。なつみには聞き馴染みが無いから、記憶しにくいかもね」
「どういうこと❓」
こんな素朴な疑問にも、親切に答えてくれるザエルアポロは、やっぱり優しいお兄さんだ。
「世界の位置関係を知ってる?虚圏、現世、尸魂界、それから地獄。それぞれどこに存在しているのか」
「んー、わかんない。学校で教わったっけ、そんなこと🤔」
「考えたことも無いの?三界は行き来できて、入り口と出口で繋がってはいるけど、隔絶された場所になっているのは、どうしてだろうって」
「そだね。確かに❗️今、考える。ん〜🤔」
「是非そうして、なつみ。大事なことだよ。学校で勉強として教わることは、大人の都合で選び出された知識だからね。知られたくない真実を隠すために、すごく限定したり、嘘をついたりして、僕たち生徒を騙していたりするんだよ。目の前で起きている事象に、自分が少しでもおかしいと思ったら、自分自身で考えなきゃ。で、何か閃いた?」
「はぁい、先生✋」
「はい、木之本さん」
「瀞霊廷の周りにある流魂街には、日本人の魂魄が集まってきますが、それはぼくたち死神が、現世の日本で魂葬をしてるからだと思います。だからぁ…、それで、日本と瀞霊廷の位置は…、んー❓🤔」
「当たり前すぎて、わざわざ考えたことも無かったかな。良いところに気付いているよ。じゃあね、ヒントをあげる。重さを考えてご覧。人間の肉体と、魂魄とでは、どっちがどうなってる?」
「それは人間の方が重いよ。あ❗️もしかして、よくある天国と地獄のイメージが関係してる❓天国は空の上にあるの。つまり、瀞霊廷は、日本の上にあるんだ。だぁからぼくたち護廷隊は、日本を担当してるのか。近いから❗️じゃあ、虚圏はどこ❓」
「フフフッ、賢いね。どんどん見えてきてる。あくまでザックリとした言い方になるけど、この星、地球上の表面の外側に尸魂界、内側に現世があるんだ」
「ふぇ〜」
「重なってたり、平行だったりして、単純に上下にある関係ではないけどね」
「物知りだねぇ、ザエルアポロ」
「ありがとう」
「ってことは、…ん。虚圏も魂魄の世界だし、現世より軽いから、虚圏も天国❓」
「なんだか、聞いてた天国とは違うけど、その通りだよ。宇宙に近い順に言うと、尸魂界、虚圏、現世なんだ」
「そうなんだー。なら、玉ねぎみたいに、球体の層で、日本と瀞霊廷が重なってるなら、言葉や文化が共有できるのは自然なことなんだね。だとすると、みんながぼくにとって外人さんぽいのは、ここが日本と瀞霊廷の間にある地域じゃないからってことになるよ」
「ピンポン」
「ふぇッ😵」
「随分遠くまで来ちゃったんだよ、君たち。カタカナの国にようこそ😉」
「そういうことかー😵」
「とはいえ、虚圏はどうしてか少し狭い世界でね。現世の距離とは、また変わっているんだよ」
「よくわかんない☹️」
「会えない距離じゃないってこと」
なつみの鼻を摘んで、横にクイクイ揺すった。
「けへへっ、ザエルアポロはたまにクサいことを言う😊」
「そうかな?」
「ねぇ、ここが外国なら、話す言語も違くない❓どうしてぼくたち、ストレスフリーにだべれてんの❓」
「良い質問だね。何でだろう」
「およ、ザエポンも気にしてない案件があったんだ😏」
「その名前やめて」
「もしや❗️朝ご飯に知らず知らず、ほんやくコンニャク食べてたりして」
「何で朝ご飯限定なの💧」
「わーかった❗️みんな日本語勉強したんでしょ」
「わざわざ4人のためにね。優秀でしょ?なんて、そんなわけないよ」
「そっか。ヤミーにはムリだもんね」
「あぁ⁉︎💢」
聞こえてた。
「はーい✋」
「はい、リリネットちゃん」
「それさ、テレパシーじゃね?😏」
「バーカ」
「うっさい❗️スターク❗️💢✊」
青空教室にはお友だちがたくさん。
「まぁ別に、リリネットが正解でも良いんじゃない?」
「おいおい、何事も科学的に分析すんのが、科学者ってもんじゃねーのかよ」
「何事もって…、僕だって興味の有無に左右されるんだよ。言葉が通じずに不都合が生じるなら対策を講じるけど、伝わってるわけだし。気にすることじゃないよ。なつみたちと僕らは、テレパシーで意思疎通ができてる。生物の感情に大差はないから、思いはテレパシーで理解しあえるんだよ。はい、これ正解」
ザエルアポロがそこでパンと手を打ったので、この話題はここで終わるかと思われたが。
「何?なつみ。ニヤニヤしちゃって」
「ふふーん」アヒル口で鼻から笑った。「心でお話ししてるってことだねぇ😊」
先生と同級生たちは、この発言にトキリとした。これには投げやりだった先生も、やわらかい態度にならざるを得ない。
「そうだね。それも正解」
自分たちが見失ってしまった心は、なつみの中にありそうだ。
「言葉が通じるって良いね。仲良くなれるもん😊」
それには、賛成し難いかもしれない。
「言葉の意味が理解できても、通じない相手はいるものだ、なつみ」
次の先生はゾマリ。
「え…。うーん…。いじめっ子とかそうかも、だけど、時間をかけて、お互いの意見を出し合って、その状況の真実を見て、どうしたら仲良くなれるか、一緒に答えを出せば良いんじゃない?見えてないことがあると難しいけど、それぞれの立場とかさ」
「下手に力があると、相手は全て下に見えてしまう。そうすると、不意をついてねじ伏せ、話し合う時間などつくりはしない。お前にはわからないだろう。なつみは命を守るために従わせるからな。それに、一時的でもあり、お前の優しさが皆に伝わり、その想いに協力しようとさえ思う。決してお前はそれで、嫌に良い気になりはしない。目上と同等と育てたい者と区別はしても、誰のことも蔑むことはない。そんなお前とは違い、平気な顔で他者の犠牲の上に立てる者たちがいる。表には当然隠しているのだ。常識という嘘の正義で固めてな」
雰囲気が何か悪い。なつみのアヒル口は、端がやや下がる。
「…。藍染隊長はそんなんじゃないからね」
「わかっている」ゾマリは上を指した。「あれをご覧」
なつみはその先を見上げた。
「いちばん大きく輝くあれは、何だ」
そんなものは決まっている。
「あれ?月でしょ?」
夜空に満ち欠けする天体は月だ。
「では、今は何時くらいだと思う」
「今は、あー、おやつの、時間?」
腹時計がそう言ったのかも。
「そうだな。そのくらいだろう。ならば、おやつはこんな暗い時間に食べるものか?」
「ううん。おやつは午後の3時に食べたくなるよ。虚圏はさ、特別だからこんなに暗くて、ずっと……、ずっと…?」
視線がゾマリから、夜空へと再び上っていく。
「もう一度きこう。あの星は何だと思う」
世界は玉ねぎのように層になっている。現世と尸魂界では、同じように空の色が変わっていく。そのふたつの間にある虚圏だって、同じように回っているなら。
「嘘でしょ…。太陽、なの…?」
「やっぱり、驚くよね」ザエルアポロはもちろん知っていた。「僕も初めて知った時は驚いたよ。毎日日食が起きるなんて、自分はどんな場所にいるんだってね」
「日食って、太陽の前に月が来て、地球から見ると、太陽が陰る現象でしょ?じゃあ、あれ、太陽を隠してるの月?おかしくない?」
「さぁ、どこまで遡って疑えば、嘘の始まりに辿り着けるかな。目を凝らして見るんだよ。不自然とはつまり、人工的と言い換えられるのを、よく意識して」
「人工物って…。あんな大っきいの無理だよ!」
「けど実際に隠せている。みんなが当たり前に感じてしまうほど、遥か昔からね。ちなみに、距離を上手く使えば、大きさはそんなに必要じゃないよ」
次の先生はハリベル。
「なつみ、さっきゾマリが言っていただろう。犠牲の上に立つことで、安寧の世界を享受していると思い上がっている者たちがいると」
「そんなに酷くはなかったと思うけど。うん」
「犠牲とは、どういうことを指す」
「犠牲は、何かを捧げて、良い結果にしたり、…悪くもなるかな。貢献とか献身と違って、捧げた側はある程度の被害を受けることを、犠牲って言うと思う」
「その通りだ。では、私たち虚は犠牲者だと思うか」
藍染たちはとりあえずの仕事を終え、青空教室へ近づいていく。
「数が減ることは、世界のためだと思えるか」
それは霊術院で習うこと。
「減らすんじゃなくて、魂の浄化で、それで…」
「虚の存在は不都合なのだ。お前たち死神が、瀞霊廷に送る魂魄をプラス、私たち虚をマイナスと呼んでいるのを知っている。良い気分はしない」
「うん…」
「虚に捕食される魂魄は犠牲者だな」
「うん」
「魂魄を捕食した、していないに関わらず、死神は虚と対峙すると斬りかかる。そうして駆除された虚は、犠牲者ではないのか。プラスの魂魄を守るために、私たちは犠牲となる。瀞霊廷は不都合なものを、管理しておかなければ気が済まないのだろう。あの影は、監視の目だ」
なつみは複雑な思いで、太陽を見上げた。
「どうした、皆して空を見上げて。天体観測かな」
「藍染隊長っ」
合流した藍染に駆け寄った。
「何かな」
「あれ!あれ、太陽だってご存知でしたか⁉︎」
「うん。そうだよ」
「ハリベルさんが、あの影は瀞霊廷が何かしてるせいでできてるって言うんです。ぼく、そんなこと知りませんでした。教わってませんよ」
次の先生は藍染。
「世界の平和を維持するために、この星の一番高いところから、見守っている人がいるんだよ。その人のいる城がつくっている影が、あれ。この影は支配力が強くて、弱い虚は尸魂界に侵入することができないんだ。だから現世に現れるんだけど。それは、プラスの魂魄と瀞霊廷を守る私たちにとって、とても都合の良いことなんだ」
「でも、瀞霊廷にとっては良いことかもしれませんが、虚圏がこんなに、暗くて寒くて、居心地とっても悪くて。生前、罪を犯したことのない優しい人でも、死神が魂葬できなかっただけで虚になってしまって、天国に行けると思ってたのに、こんな侘しいところに送られてしまうなんて、あんまりじゃないですか!不公平です!虚になってしまった、たったそれだけで、すぐにまた死を経験しなければならない対象に、知らないうちにされてしまうだけでも辛いのに。偶然じゃなくて、自然の流れでこうなったんじゃないなんて。瀞霊廷って、そんなに偉いんですか。おかしいです。お日様の光があれば、心が凍りついたみたいにならずに済んだかもしれないのに。今聞いたこと、全部本当なら、ぼくは瀞霊廷の偉い人たちみんなを、嫌いになっちゃいそうです。知ればぼくみたいにおかしいと思えて、声をあげる人が出てくるはずなのに、…わざと隠してるなんてッ」なつみはギュッと胸のところを掴んで押さえた。「なんとかしなきゃ」
その戸惑いを押さえるグーの手を、藍染はそっと両手で包んで、暖かく解きほぐそうとする。
「なつみ、君はもう異論の声を上げたよ。だからこうして、私たち4人がここにいる。瀞霊廷は、これまでの振る舞いを見直すきっかけを得たんだ。真の平和な世界とは、現状、違っているかもしれないと、気付き始めている。彼らを嫌いになるのは、まだ早いよ。虚が恐ろしいだけの存在ではないことを、私たちで証明することができれば、やり方を改めてくれるかもしれない。大事なのは説得力だ。虚夜宮での暮らしが、立証に有効なものとなるよう、皆で力を合わせて励んでいこう。そうすれば、きっといつか、虚圏にも同じように太陽の光が降り注ぐはずだよ。私たちならできる。そうだよね」
藍染のお話は、なつみの心いっぱいに響いた。泣きそうなのを堪える、横に引っ張った顔で答える。
「はいッ❗️ぼくたちならできます❗️あの影、取っ払いましょう❗️この任務の最終目標です❗️✊」
そう言って、高々と決意の拳を掲げた。
「うん。頑張ろう✊」
藍染もそれに倣って、笑顔で拳を挙げた。
「おーっ‼️✊」
なつみの元気な掛け声に感化され、同じくらい元気に挙げる者もいれば、控えめな者もいるが、仲間全員が彼女を中心に拳を挙げた。
「ぼくたちに、お日様の光をーっ‼️✊」
バラガンさんとお友だちになったところで、みんなとおしゃべりをしてました。月だと思ってたのが、本当は太陽なんだよって教えてもらって、驚きました。ぼくたちは虚と仲良しになることで、彼らと戦ったりしない平和な関係を築いていきます。その結果として、瀞霊廷の偉い人たちからの理解を得て、虚圏の警戒を解いてもらって、ここにお日様の光を分けてもらうようにするのが、ぼくら4人の使命なんだなって、思いました。だからやってやりますよ!出会う全ての虚とお友だちになって、彼らが敵じゃないことをわかってもらって、太陽を隠す影を無くします!応援してくださいね、春水さん。
いちばんはっきりとした目標のドーム制作は、なんと完成までこぎつけちゃいました!バラガンさんが連れてきてくれた人たちが、ものすごい助っ人になってくれて、作業がとってもはかどったんです。みんなに感謝ですよ。ザエルアポロという科学者さんがいるんですけど、そのお兄さんがぼくの造った太陽を育ててくれて、ドームの天井を空にすることもできました。今のところ、順調に計画が進んでいます。春水さんにも見てもらいたいです。朝焼け、青空、夕暮れ。色が変わっていく空は本当にキレイです。本物の太陽と比べると、物足りなさがあるかもしれませんが、虚夜宮にお日様を再現できて、心なしか、みんなが穏やかになった気がするんです。日の出の時間に起きられたときはたまに、お料理上手なゾマリとヨガをするんですよ。虚圏に朝活の余裕をもたらしてやりましたぜ。
新しく決まったんですが、虚夜宮という名前は、完成したドームを指すことになりました。今まで虚夜宮と呼んでいた建物のことは、「なつみん家(仮)」になりました。早いとこカッコイイ名前を考えて、改名しないといけません。ダサいですから。
新虚夜宮の完成式の日は、それはもう感動的でした。みんなと記念写真を撮ったので、見てみてください。ぼく、感激していっぱい泣いちゃって、顔が真っ赤ですから、ぼくのことはあんまり見ないでほしいんですけど。みんな良い笑顔してますよね。心を持ってないなんてウソみたい。虚圏チームに一致団結の兆しですよ。護廷隊にも負けないくらい!運動会したら、絶対良い勝負になりますよ。そのときは、申し訳ありませんが、ぼくと春水さんは敵同士になるので、覚悟してください。なんか、変なこと書いたら、会えるのがとっても楽しみになってきちゃいました。と同時に、ちょっぴりさみしいのも。まだまだ先の話なんですよね。
「んもー❗️みんなカタカナ❗️覚わんないよ❗️😫」
ギブアップした。
「日本人いないの❓何で❓南米からお越しなの❓」
英語だったりラテン語だったり、とにかくカタカナなのだ。
「僕らだって、こんなにたくさんを一度には覚えきれないよ。だけどそうか。なつみには聞き馴染みが無いから、記憶しにくいかもね」
「どういうこと❓」
こんな素朴な疑問にも、親切に答えてくれるザエルアポロは、やっぱり優しいお兄さんだ。
「世界の位置関係を知ってる?虚圏、現世、尸魂界、それから地獄。それぞれどこに存在しているのか」
「んー、わかんない。学校で教わったっけ、そんなこと🤔」
「考えたことも無いの?三界は行き来できて、入り口と出口で繋がってはいるけど、隔絶された場所になっているのは、どうしてだろうって」
「そだね。確かに❗️今、考える。ん〜🤔」
「是非そうして、なつみ。大事なことだよ。学校で勉強として教わることは、大人の都合で選び出された知識だからね。知られたくない真実を隠すために、すごく限定したり、嘘をついたりして、僕たち生徒を騙していたりするんだよ。目の前で起きている事象に、自分が少しでもおかしいと思ったら、自分自身で考えなきゃ。で、何か閃いた?」
「はぁい、先生✋」
「はい、木之本さん」
「瀞霊廷の周りにある流魂街には、日本人の魂魄が集まってきますが、それはぼくたち死神が、現世の日本で魂葬をしてるからだと思います。だからぁ…、それで、日本と瀞霊廷の位置は…、んー❓🤔」
「当たり前すぎて、わざわざ考えたことも無かったかな。良いところに気付いているよ。じゃあね、ヒントをあげる。重さを考えてご覧。人間の肉体と、魂魄とでは、どっちがどうなってる?」
「それは人間の方が重いよ。あ❗️もしかして、よくある天国と地獄のイメージが関係してる❓天国は空の上にあるの。つまり、瀞霊廷は、日本の上にあるんだ。だぁからぼくたち護廷隊は、日本を担当してるのか。近いから❗️じゃあ、虚圏はどこ❓」
「フフフッ、賢いね。どんどん見えてきてる。あくまでザックリとした言い方になるけど、この星、地球上の表面の外側に尸魂界、内側に現世があるんだ」
「ふぇ〜」
「重なってたり、平行だったりして、単純に上下にある関係ではないけどね」
「物知りだねぇ、ザエルアポロ」
「ありがとう」
「ってことは、…ん。虚圏も魂魄の世界だし、現世より軽いから、虚圏も天国❓」
「なんだか、聞いてた天国とは違うけど、その通りだよ。宇宙に近い順に言うと、尸魂界、虚圏、現世なんだ」
「そうなんだー。なら、玉ねぎみたいに、球体の層で、日本と瀞霊廷が重なってるなら、言葉や文化が共有できるのは自然なことなんだね。だとすると、みんながぼくにとって外人さんぽいのは、ここが日本と瀞霊廷の間にある地域じゃないからってことになるよ」
「ピンポン」
「ふぇッ😵」
「随分遠くまで来ちゃったんだよ、君たち。カタカナの国にようこそ😉」
「そういうことかー😵」
「とはいえ、虚圏はどうしてか少し狭い世界でね。現世の距離とは、また変わっているんだよ」
「よくわかんない☹️」
「会えない距離じゃないってこと」
なつみの鼻を摘んで、横にクイクイ揺すった。
「けへへっ、ザエルアポロはたまにクサいことを言う😊」
「そうかな?」
「ねぇ、ここが外国なら、話す言語も違くない❓どうしてぼくたち、ストレスフリーにだべれてんの❓」
「良い質問だね。何でだろう」
「およ、ザエポンも気にしてない案件があったんだ😏」
「その名前やめて」
「もしや❗️朝ご飯に知らず知らず、ほんやくコンニャク食べてたりして」
「何で朝ご飯限定なの💧」
「わーかった❗️みんな日本語勉強したんでしょ」
「わざわざ4人のためにね。優秀でしょ?なんて、そんなわけないよ」
「そっか。ヤミーにはムリだもんね」
「あぁ⁉︎💢」
聞こえてた。
「はーい✋」
「はい、リリネットちゃん」
「それさ、テレパシーじゃね?😏」
「バーカ」
「うっさい❗️スターク❗️💢✊」
青空教室にはお友だちがたくさん。
「まぁ別に、リリネットが正解でも良いんじゃない?」
「おいおい、何事も科学的に分析すんのが、科学者ってもんじゃねーのかよ」
「何事もって…、僕だって興味の有無に左右されるんだよ。言葉が通じずに不都合が生じるなら対策を講じるけど、伝わってるわけだし。気にすることじゃないよ。なつみたちと僕らは、テレパシーで意思疎通ができてる。生物の感情に大差はないから、思いはテレパシーで理解しあえるんだよ。はい、これ正解」
ザエルアポロがそこでパンと手を打ったので、この話題はここで終わるかと思われたが。
「何?なつみ。ニヤニヤしちゃって」
「ふふーん」アヒル口で鼻から笑った。「心でお話ししてるってことだねぇ😊」
先生と同級生たちは、この発言にトキリとした。これには投げやりだった先生も、やわらかい態度にならざるを得ない。
「そうだね。それも正解」
自分たちが見失ってしまった心は、なつみの中にありそうだ。
「言葉が通じるって良いね。仲良くなれるもん😊」
それには、賛成し難いかもしれない。
「言葉の意味が理解できても、通じない相手はいるものだ、なつみ」
次の先生はゾマリ。
「え…。うーん…。いじめっ子とかそうかも、だけど、時間をかけて、お互いの意見を出し合って、その状況の真実を見て、どうしたら仲良くなれるか、一緒に答えを出せば良いんじゃない?見えてないことがあると難しいけど、それぞれの立場とかさ」
「下手に力があると、相手は全て下に見えてしまう。そうすると、不意をついてねじ伏せ、話し合う時間などつくりはしない。お前にはわからないだろう。なつみは命を守るために従わせるからな。それに、一時的でもあり、お前の優しさが皆に伝わり、その想いに協力しようとさえ思う。決してお前はそれで、嫌に良い気になりはしない。目上と同等と育てたい者と区別はしても、誰のことも蔑むことはない。そんなお前とは違い、平気な顔で他者の犠牲の上に立てる者たちがいる。表には当然隠しているのだ。常識という嘘の正義で固めてな」
雰囲気が何か悪い。なつみのアヒル口は、端がやや下がる。
「…。藍染隊長はそんなんじゃないからね」
「わかっている」ゾマリは上を指した。「あれをご覧」
なつみはその先を見上げた。
「いちばん大きく輝くあれは、何だ」
そんなものは決まっている。
「あれ?月でしょ?」
夜空に満ち欠けする天体は月だ。
「では、今は何時くらいだと思う」
「今は、あー、おやつの、時間?」
腹時計がそう言ったのかも。
「そうだな。そのくらいだろう。ならば、おやつはこんな暗い時間に食べるものか?」
「ううん。おやつは午後の3時に食べたくなるよ。虚圏はさ、特別だからこんなに暗くて、ずっと……、ずっと…?」
視線がゾマリから、夜空へと再び上っていく。
「もう一度きこう。あの星は何だと思う」
世界は玉ねぎのように層になっている。現世と尸魂界では、同じように空の色が変わっていく。そのふたつの間にある虚圏だって、同じように回っているなら。
「嘘でしょ…。太陽、なの…?」
「やっぱり、驚くよね」ザエルアポロはもちろん知っていた。「僕も初めて知った時は驚いたよ。毎日日食が起きるなんて、自分はどんな場所にいるんだってね」
「日食って、太陽の前に月が来て、地球から見ると、太陽が陰る現象でしょ?じゃあ、あれ、太陽を隠してるの月?おかしくない?」
「さぁ、どこまで遡って疑えば、嘘の始まりに辿り着けるかな。目を凝らして見るんだよ。不自然とはつまり、人工的と言い換えられるのを、よく意識して」
「人工物って…。あんな大っきいの無理だよ!」
「けど実際に隠せている。みんなが当たり前に感じてしまうほど、遥か昔からね。ちなみに、距離を上手く使えば、大きさはそんなに必要じゃないよ」
次の先生はハリベル。
「なつみ、さっきゾマリが言っていただろう。犠牲の上に立つことで、安寧の世界を享受していると思い上がっている者たちがいると」
「そんなに酷くはなかったと思うけど。うん」
「犠牲とは、どういうことを指す」
「犠牲は、何かを捧げて、良い結果にしたり、…悪くもなるかな。貢献とか献身と違って、捧げた側はある程度の被害を受けることを、犠牲って言うと思う」
「その通りだ。では、私たち虚は犠牲者だと思うか」
藍染たちはとりあえずの仕事を終え、青空教室へ近づいていく。
「数が減ることは、世界のためだと思えるか」
それは霊術院で習うこと。
「減らすんじゃなくて、魂の浄化で、それで…」
「虚の存在は不都合なのだ。お前たち死神が、瀞霊廷に送る魂魄をプラス、私たち虚をマイナスと呼んでいるのを知っている。良い気分はしない」
「うん…」
「虚に捕食される魂魄は犠牲者だな」
「うん」
「魂魄を捕食した、していないに関わらず、死神は虚と対峙すると斬りかかる。そうして駆除された虚は、犠牲者ではないのか。プラスの魂魄を守るために、私たちは犠牲となる。瀞霊廷は不都合なものを、管理しておかなければ気が済まないのだろう。あの影は、監視の目だ」
なつみは複雑な思いで、太陽を見上げた。
「どうした、皆して空を見上げて。天体観測かな」
「藍染隊長っ」
合流した藍染に駆け寄った。
「何かな」
「あれ!あれ、太陽だってご存知でしたか⁉︎」
「うん。そうだよ」
「ハリベルさんが、あの影は瀞霊廷が何かしてるせいでできてるって言うんです。ぼく、そんなこと知りませんでした。教わってませんよ」
次の先生は藍染。
「世界の平和を維持するために、この星の一番高いところから、見守っている人がいるんだよ。その人のいる城がつくっている影が、あれ。この影は支配力が強くて、弱い虚は尸魂界に侵入することができないんだ。だから現世に現れるんだけど。それは、プラスの魂魄と瀞霊廷を守る私たちにとって、とても都合の良いことなんだ」
「でも、瀞霊廷にとっては良いことかもしれませんが、虚圏がこんなに、暗くて寒くて、居心地とっても悪くて。生前、罪を犯したことのない優しい人でも、死神が魂葬できなかっただけで虚になってしまって、天国に行けると思ってたのに、こんな侘しいところに送られてしまうなんて、あんまりじゃないですか!不公平です!虚になってしまった、たったそれだけで、すぐにまた死を経験しなければならない対象に、知らないうちにされてしまうだけでも辛いのに。偶然じゃなくて、自然の流れでこうなったんじゃないなんて。瀞霊廷って、そんなに偉いんですか。おかしいです。お日様の光があれば、心が凍りついたみたいにならずに済んだかもしれないのに。今聞いたこと、全部本当なら、ぼくは瀞霊廷の偉い人たちみんなを、嫌いになっちゃいそうです。知ればぼくみたいにおかしいと思えて、声をあげる人が出てくるはずなのに、…わざと隠してるなんてッ」なつみはギュッと胸のところを掴んで押さえた。「なんとかしなきゃ」
その戸惑いを押さえるグーの手を、藍染はそっと両手で包んで、暖かく解きほぐそうとする。
「なつみ、君はもう異論の声を上げたよ。だからこうして、私たち4人がここにいる。瀞霊廷は、これまでの振る舞いを見直すきっかけを得たんだ。真の平和な世界とは、現状、違っているかもしれないと、気付き始めている。彼らを嫌いになるのは、まだ早いよ。虚が恐ろしいだけの存在ではないことを、私たちで証明することができれば、やり方を改めてくれるかもしれない。大事なのは説得力だ。虚夜宮での暮らしが、立証に有効なものとなるよう、皆で力を合わせて励んでいこう。そうすれば、きっといつか、虚圏にも同じように太陽の光が降り注ぐはずだよ。私たちならできる。そうだよね」
藍染のお話は、なつみの心いっぱいに響いた。泣きそうなのを堪える、横に引っ張った顔で答える。
「はいッ❗️ぼくたちならできます❗️あの影、取っ払いましょう❗️この任務の最終目標です❗️✊」
そう言って、高々と決意の拳を掲げた。
「うん。頑張ろう✊」
藍染もそれに倣って、笑顔で拳を挙げた。
「おーっ‼️✊」
なつみの元気な掛け声に感化され、同じくらい元気に挙げる者もいれば、控えめな者もいるが、仲間全員が彼女を中心に拳を挙げた。
「ぼくたちに、お日様の光をーっ‼️✊」
バラガンさんとお友だちになったところで、みんなとおしゃべりをしてました。月だと思ってたのが、本当は太陽なんだよって教えてもらって、驚きました。ぼくたちは虚と仲良しになることで、彼らと戦ったりしない平和な関係を築いていきます。その結果として、瀞霊廷の偉い人たちからの理解を得て、虚圏の警戒を解いてもらって、ここにお日様の光を分けてもらうようにするのが、ぼくら4人の使命なんだなって、思いました。だからやってやりますよ!出会う全ての虚とお友だちになって、彼らが敵じゃないことをわかってもらって、太陽を隠す影を無くします!応援してくださいね、春水さん。
いちばんはっきりとした目標のドーム制作は、なんと完成までこぎつけちゃいました!バラガンさんが連れてきてくれた人たちが、ものすごい助っ人になってくれて、作業がとってもはかどったんです。みんなに感謝ですよ。ザエルアポロという科学者さんがいるんですけど、そのお兄さんがぼくの造った太陽を育ててくれて、ドームの天井を空にすることもできました。今のところ、順調に計画が進んでいます。春水さんにも見てもらいたいです。朝焼け、青空、夕暮れ。色が変わっていく空は本当にキレイです。本物の太陽と比べると、物足りなさがあるかもしれませんが、虚夜宮にお日様を再現できて、心なしか、みんなが穏やかになった気がするんです。日の出の時間に起きられたときはたまに、お料理上手なゾマリとヨガをするんですよ。虚圏に朝活の余裕をもたらしてやりましたぜ。
新しく決まったんですが、虚夜宮という名前は、完成したドームを指すことになりました。今まで虚夜宮と呼んでいた建物のことは、「なつみん家(仮)」になりました。早いとこカッコイイ名前を考えて、改名しないといけません。ダサいですから。
新虚夜宮の完成式の日は、それはもう感動的でした。みんなと記念写真を撮ったので、見てみてください。ぼく、感激していっぱい泣いちゃって、顔が真っ赤ですから、ぼくのことはあんまり見ないでほしいんですけど。みんな良い笑顔してますよね。心を持ってないなんてウソみたい。虚圏チームに一致団結の兆しですよ。護廷隊にも負けないくらい!運動会したら、絶対良い勝負になりますよ。そのときは、申し訳ありませんが、ぼくと春水さんは敵同士になるので、覚悟してください。なんか、変なこと書いたら、会えるのがとっても楽しみになってきちゃいました。と同時に、ちょっぴりさみしいのも。まだまだ先の話なんですよね。