第九章
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それは真夜中のこと。サンタは牛舎でスヤスヤ眠っていた。
「ム〜ゥ💤」
この日もアヤの仕事を手伝い、疲れて気持ちよく寝ているようだ。
暗い牛舎にいるのはサンタだけ、…のはずだった。
スルスルスル…キュ
「モフッ⁉️」
首に何かを巻かれた感触に襲われ、サンタは目を覚ました。
「あ、起きてもた」
目が合ったのはアヤではなく。
(市丸⁉︎)
不意に現れた来客を見て、前脚から立とうと動き出したが。
「アヤさん起こしに行かんでもええで。用があるんはキミやから」
「🐮❓」
止められたため、前脚をたたみ直す。
「これな、なつみちゃんからの贈り物やで。よう似合ってるわぁ。あったかいやろ」
市丸が巻いてくれたのは、どうやらストールらしい。サンタはそのストールに鼻を近づけ、くんくん嗅ぎ、確かになつみの香りを感じた。
「モ〜💖」
「嬉しそうやねぇ。よしよし」
市丸はサンタの広い額を軽くゴシゴシ撫でた。
「キミにあげたるで、その代わりにおつかい頼まれてくれへん?」
「🐮❓」
懐から出したのは、1通の手紙。
「これをな、京楽さんに届けて欲しいんよ」
そう言って、手紙をサンタの首とストールの間に挟んだ。
「瀞霊廷に野菜運んだついでに渡して来てや。頼んだで」
ポンポンと手紙の上から叩いた。
「ほな、帰るわ。おやすみ、サンタ」
市丸は外套を翻し方向転換。出口へと向かい、スタスタ歩く。その後姿に。
「モ〜(おやすみ〜)」
とお返事。…かと思われたが。
(って、帰すわけない。こっちは全部知ってるんだ。お前たちがなつみを連れ去ったこと‼︎‼︎)
スタッと立ち上がり、鼻から思い切り息を吸った。そして叫ぶ。
「ンモォォォォォオオオッ‼️‼️」
市丸は耳を塞いで振り向いた。
「何や⁉︎」
アヤは母家で眠っていたのだが、サンタの鳴き声に起こされた。
「何⁉︎」
飛び起き、急いで灯りを持って牛舎に向かう。
外に出たところで人影を見た。夜の闇の中、確かに何者かが牛舎から出てきた。黒い外套を着ており、全く誰だかわからないが、どこか見覚えのある体格をしていた。その者はサンタへ手を振りかざしてから向き直り、完全に姿を消した。
(嘘やろ。何で牛が瞬歩使えんねん💦)
アヤが牛舎へ近づくと、中からサンタが駆け出してきた。
「ムオォーッ‼️」
「キャァッ」
驚いたアヤに気付き、サンタは逃亡者を追うのをやめる。
「モー、モー」
アヤに訴えるように鳴くサンタ。
「何があったの、サンタ。今の誰」
持った灯りを顔の前に上げ、アヤはサンタの身体を見ようとした。怪我を負わされていないか見るためだ。
「あれ?何このストール」
しかし、まず先に首元の異変が目に飛び込んできた。
「どういうイタズラ?」
灯りを床に降ろし、アヤはストールを解いてやろうと手を伸ばした。するとサンタはそれを嫌がり、頭を振って何かを示した。
「ん?何かあるの?」
「モッモッ」
アヤがサンタの横に周ってストールを調べると、それを発見した。
「あ、手紙…?」
抜き出して、灯りに近づけるようしゃがんだ。そして、封筒に書かれた宛名と差し出し人の名前を見て驚く。
「これ、なつみちゃんの手紙⁉︎京楽隊長に渡さなきゃ!誰が持ってきたの、サンタ!ってきいても、答えられないか。ちょっと待ってて。出かける支度する!」
立ち上がったアヤの目の前には、サンタの顔があった。不自然に目を細めている。
「何?眠いの?」
ブンブン首を横に振る。継続する細い目。
「んー…?」
アヤも見ながら細い目になる。お互いに目を細めて見つめ合う不思議な時間が流れ、そうして気付いた。
「市丸隊長か!」
「モーモー❗️(ピンポーン⭕️)」
アヤを乗せて、サンタは瀞霊廷、八番隊舎へ急いだ。
手紙を受け取った京楽は早速読み、ストールが本当は自分宛てと知ったが、サンタがもうしてしまっているので、文句を言いつつ、譲ってあげることにした。
「大事なところが黒塗りされてる。惣右介くんがやったんだろうね。でもだいぶ良い情報が残してあるよ。大きな手がかりだ。届けてくれてありがとう、アヤさん。サンタもご苦労様。七緒ちゃん、ボク、山じいのところに行ってくるよ。ここ任せるね」
手紙は元柳斎に渡り、その写しが各隊長へ送られた。
「酷いもんだろ?なつみちゃんからボクに宛てた愛のメッセージが、全部塗りつぶされてるんだ。どっかの誰かさんじゃあるまいし。こんなことで支配できてるとでも思ってるのかな」
「口を慎め、春水」
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎春水さんへ
こんにちは、お久しぶりです。お元気ですか?ぼくは元気です。虚圏での生活にもすっかり慣れましたし、たくさんお友だちができて、毎日楽しく暮らしています。街づくりなんて大変な任務を担当することになりましたが、みんなが協力してくれるおかげで、キツくても、問題が起きても、なんとか良い感じに作業が進められています。藍染隊長、市丸隊長、東仙隊長が来て下さって、もっと順調に仕事が進んでいますし、この調子で行けば、お正月休みならいただけるんじゃないかと思っています。
春水さんもご存知のことと思いますが、ぼくが住む虚夜宮には、たくさんの破面がいます。みんな、大虚から変身した人たちなので、とっても強いんですよ。良い練習相手になってくれるので、尸魂界でやっていた稽古も引き続きできています。ぷよぷよにはなっていないので、安心してください。ぼくの先生たちにもそうお伝えください。「木之本は斬拳走鬼と回道の稽古を続けているので、ぷよぷよしていません」って。
いちばん仲良くしてくれているのは、リリネットちゃんという、小さくてかわいい女の子です。ぼくになついてくれてて、まるで妹ができた気分です。リリネットちゃんの相棒のスタークさんとも、ぼくは仲良しです。ぼくは市丸隊長と一緒の部屋で暮らしていて、リリネットちゃんとスタークさんの部屋の隣なんです。たまにふたりがケンカしてる声が聞こえてきますが、ぼくも市丸隊長に大きな声で文句言っているので、おあいこですよね。だって隊長、ぼくが淹れたお茶を横取りするんですよ。ゾマリんからもらったおかしも勝手に食べちゃうし。自分も欲しいなら、用意始める前に言ってくれれば良いのに。「ひと口だけでええんやもん」とか言うんですよ。ぼくは全口欲しいのに!市丸隊長のおうちに居候させてもらってたときも、こんな感じでしたけど。やっぱり一緒に住むなら、美沙ちゃんとが良いです。
この間、新しくぼくたちの仲間になってくれたおじいちゃんのお話をしますね。ぼくたちのおっきな目標は、死神と虚が仲良く暮らす世界をつくることじゃないですか。なのでその日は、一気にたくさんの虚さんたちとお友だちになれて、とっても嬉しかった日になりました。
なつみは便箋と封筒をもらいに、藍染の部屋にやってきた。コンコンコン。
「木之本です」
「入りなさい」
「失礼します」
トコトコトコと入室。
「お手紙セットください😊」
「フフッ、お店屋さんごっこかな?」
冗談を言われて、ムスッとした。
「むぅ。違いますよ。市丸隊長から聞きました。京楽隊長にお手紙出しても良いんですよね」
「良いよ。はい、どうぞ。君に全部あげる。好きに使いなさい」
藍染は引き出しから紙袋を取り出し、なつみに渡した。早速中身を確認。
「わぁ❗️便箋いっぱい❗️ありがとうございます」
満足そうに、なつみはお手紙セットを抱きしめた。
「でも全部なんて、本当に良いんですか?雛森副隊長にお手紙書かれないんですか?」
「僕は良いんだ。報告書で済ませるから」
(ちめたいなぁー😒)
「それはさて置き」
(なんと。btw😟)
次に藍染が取り出したのは、黒い生地の何かしら。それを持ってなつみの正面に立った。
「何ですか?それ」
首を傾げるなつみの前で、藍染はパサリと広げた。
「うん。着られそうだね」
「かっぱ?」
「としても使えるね」
なつみに腕を回し、黒いフード付きコートを掛けてあげた。
「今日はこれを着て、みんなで遠征に行こう。バラガンという強い虚がいてね、彼とその仲間たちに、僕らの仲間になってもらえないか、誘いに行きたいんだ」
「みんなで❓✨」
「虚圏で軍を持つ程の強さと人望があるから、魅力的だけど、その分気を付けていかなければね。今のところ、敵だと思われているだろうから、彼らの前に着いた途端、攻撃されるかもしれない。それに耐えられるだけの面子で行く必要があるんだ」
「そのメンバーにぼくを選んでくれるんですか❓✨」
「そうだよ」藍染はなつみの頭をなでなで。「塔の建設と手紙を書く時間を奪ってしまうんだけど、一緒に来て欲しい。良いかな」
ピシッと右手を挙手❗️
「はい❗️お供します❗️✋」
藍染は、東仙、市丸、なつみ、十刃を連れ、バラガンが治めるエリアにやって来た。なつみは遠足気分でついてきており、道中みんなとおしゃべりをして楽しんでいた。「マジこれXIII機関。ってか、みんなは着ないの?これ」などと言いつつ。
「なつみ、ここからは頭巾を被って、下を見て歩きなさい」
そんな指示を出された。
「どうしてですか?」
「ここから先は、まるでお化け屋敷だからだよ。苦手だったよね」
「ふええええっ😱💦」
お化けと聞いて、震え上がるなつみ。ついてきたことを後悔する。
「人間からしたら、僕らもお化けなんだけどな😅」
「お化け嫌いが死神って、おかしいだろ」
「うるさい❗️怖いもんは、怖いの❗️」
なつみはコートのフードを目深かに被り、縮こまった。
「私が先頭に立つ。君たちはなつみを囲んでついてきてくれ」
「はい」
「はいぃっ😖))💦」
市丸の左腕にしがみついて、ビクつきながら、なんとかみんなと歩いていった。
玉座の間。ここも床や柱はあれど、壁や天井は無い。これがバラガンの城。サンフランシスコのあの家と同じセリフが言える。「いつでも開いてまーす」しかし、明らかに違う点がある。その暗さに。
「敵の陣地に仲間を引き連れて練り歩くとは、大層な余裕じゃの、藍染」
「それはどうも」
懸念されていた迎撃は無く、穏やかな会話から始まった。藍染の背中で、なつみにはバラガンの姿が見えていない。声だけが聞こえる。
「だが、ちと足りんのではないか」
「そういう君は、随分と仲間の数を取り戻せたようだね」
十刃たちの隙間から周りを見渡すと、数えきれないほどの虚が、こちらを睨んでずらりと並んでいるのが見える。
(やばぁ…。歓迎されてないや💦)
藍染が話を続ける。
「今日は君を迎えに来たよ。私たちと共に、この虚圏の平安を築いていく前向きな検討をしてくれたかな」
「災いが平安を語るなよ、疫病神め」
声からするとおじいちゃんぽいが、藍染の大きな態度からして、実は結構若いのかと想像を膨らませるなつみ。怖いもの見たさな興味が、なつみの頭を少しずつ横にずらしていく。
「要望があるなら聞いておこう。何を差し出せば、君は私についてきてくれるのかな」
「何をだと…?儂が欲しい物など決まっておるわ」
そろりそろり覗いてみる。市丸はそれに気付かなかった。
「貴様の首と、我が城ラス「オバケェェェエエエーーー‼️‼️‼️😱」…💢」
声量を上げて、藍染とその仲間たちを脅そうとしたら、藍染の背中で隠れていた小さな影の絶叫に、バラガンの言葉は掻き消されてしまった。まだ続いている。
「エエエーーー」
「静かにしなさい」
「ーーー‼️‼️‼️………(パタン)😱」
「ありがとう」
なつみは気を失って市丸の腕の中に倒れた。若者でもなく、おじいちゃんでもなく、それを通り越しての骸骨に腰を抜かしてしまったようだ。
「ガキの躾がなっとらんぞ、藍染」
「済まない」
ボスの背後ではコソコソと、今の出来事の感想が行き交う。
(バラガンの見た目より、なつみの声にチビるぜ)
(ウッソ、汚ねー、ノイトラ)
(お前だって相当ビクついてたろ、リリネット)
(2人だけじゃない。全員ギョッとしたさ)
(本当にお化け嫌いなんだな)
(お化けの定義がわからないがな)
(奴の強さに恐怖しないところが、そいつらしい)
(何で連れてきたんだよ、藍染サマは)
(なつみがいなきゃ、ボクタチツイテコナイ)
(何にせよ、これで遠慮なくやれるわけだな)
ヤミーがニヤリと笑ったが、藍染は話の流れを変えてしまう。
「残念ながら君の願いは、ふたつめしか聞いてあげられないな。今日のところは帰るとしよう。バラガンには、もう一度考え直す時間が必要なようだ」
そう言うと、藍染はバラガンに背を向けた。
「そんな時間などいらんわ。今ここで、どちらも手に入れてくれる‼︎‼︎掛かれ‼︎‼︎」
バラガンの号令で、横に並んでいた虚たちが一斉に、こちらに飛び掛かってきた。
「やれ」
藍染も指示を出した。それに応えて十刃たちが刀を抜き、虚たちの四肢を切り落とす。彼らは言い付けられていた。虚圏の元王のため、手下の命をその場では奪うなと。彼ら自身に、生き死にを選ぶ権利などありはしないことを示すために。
ダンダンダンダンダン
腕や脚が地面に落ちる音と、痛みに襲われた虚の叫びがこだました。そこでなつみは目を覚ました。
「全員動くんじゃねぇーッ‼︎‼︎‼︎」
起き上がったなつみは斬魄刀を抜き、霊圧を爆上げした。
「従え、夢現天子」
カキンッ………
全員の動きが止まった。いや、頭は自由らしい。
「何だ、これは⁉︎」
「動けねぇ」
「あのガキの仕業か⁉︎」
「フザけんなよ。俺らもか?」
「私は良いんじゃないか?」
「ダメです❗️」
「ボクもなん?」
「ダメです❗️みんなです❗️こんなの酷い❗️」
次の願いをかける。
「治します。文句は受け付けません」
全員の動きを止めたまま、なつみは落ちた腕や脚を浮かせ、虚それぞれの身体に戻し、くっつけていった。この状態にあるなつみの命令は絶対だ。誰も文句は言えない。疑問なら許されるが。
「何者だ、貴様。何故、敵の傷を癒す」
バラガンの姿は、なつみの目に映らない。集中力を高めるためと、視覚による余計な情報を遮断するため、目を閉じていた。
「敵じゃありません。ぼくたちは、あなた方とお友だちになるために、ここに来たんです。戦いなんて、求めていませんよ」
「友達だと⁉︎笑わせるな。儂が手元に置くのは、味方として従える手下のみよ。馴れ馴れしくも、儂と同等と思い違う愚か者は皆敵とみなす。所詮、目障りな蟻にすぎんからな。儂という神が統べる限り、この虚圏に友情などという夢は存在せん‼︎儂の足場となる頂点を築き上げる、弱肉強食の世界があるのみじゃ‼︎‼︎」
バラガンが玉座に肘をついて座ったまま、ガミガミ説教を垂れている間に、治療は完了した。
「ガミガミガミガミ、うるっせぇな。『仲間を治してくれて、ありがとうございます』も言えねぇーのか、この頑固骸骨ぁ‼️💢」
藍染の横を、ズンと一歩通り過ぎて前に進んだ。
「わっ、お化け😖💦」
「💧」
怖くて目を閉じたが、プルプル震えながらもなつみは斬魄刀を身体の前に構えた。
「威勢が良いのか悪いのか、はっきりせんガキじゃな」
「命を軽く見てる人が、え、偉そうにしてるなんて、ぼくは黙ってられません❗️世界は優しさでつながってるべきだもん❗️」
「…、貴様、そこに並んでおる死神擬きの虚とは違うな。死神か?黙っておれんと言うならば、友という考えを捨て、儂を斬るか。やってみよ。儂を倒せば、貴様の夢の世界が作れるやもしれんぞ。だが覚えておけ。儂を斬れば、貴様の下らん正義も斬られ、殺し合いの世界に呑まれるだけだとな‼︎‼︎」
「😖)))」
そんなことは百も承知だ。なつみはとうの昔にやり方を変えている。自信を取り戻せ。
「ぼくは刀で解決する方法を辞めたんです。ぼくは、護廷十三隊、三番隊所属、第二十席」バサッと左手でフードを取り、バラガンをまともに見た。「木之本」
「木之本なつみだと‼︎⁉︎」
今度はなつみの言葉がバラガンに遮られてしまった。
「(なつみ。虚とお友だちになって、世界に平和を、うんたらかんたら…)…、ぼくを知ってるんですか?💧」
「何故だ…、儂に、会いにきたのか…?」
「ええ、はい…。」
骸骨では表情が読み取りづらいが、凝視されていることは確かだ。
「流石はバラガン様。顔までご存知でしたか」
バラガンの部下の1人が、口を挟んできた。
「あなたの名前は、虚圏中に知れ渡ってるわよ。虚夜宮に現れた、新たな王だってね。まさかこんな子供がそうだなんて、思いもしなかったわ」
「ぼくは王様じゃないし、大人です❗️」
2人目が話し出す。
「お前ら、虚夜宮を汚しやがって。死神如きに、よく平気で諂えるな!恥を知れ‼︎」
「よい」
捲し立てた虚をバラガンが止めた。
「しかし」
「よいと言うておる‼︎」
横入りの3人目は市丸だった。
「ま、みんな動かれへんから、なんや全部間抜けに見えるわ」
「シーッ🤫💦」
なつみは、すぐかけ直せるように構えは下さなかったが、術は解くことにした。すると、解放されたバラガンは立ち上がった。
「もうよい。刀を下ろせ、木之本なつみ」
ゆっくりとした歩みで迫り来るお化けに、歯を食いしばりながら対峙するなつみ。
「儂を信じろ」
確かに攻撃の意志は感じられない。なつみは構えを緩めた。
「私が援護する」
なつみの前まで辿り着くと、バラガンはその手を伸ばしてきた。
「この子に触れるな」
藍染が斬魄刀を抜いて、バラガンの喉元に突きつけた。しかしバラガンは怯まなかった。
「信じろと言ったんだ」
「藍染隊長、大丈夫ですよ」
なつみはバラガンを受け入れた。彼はなつみの頭に手を置き、柔らかい髪に触れながら、優しく撫でてやった。
「お前の勇気に免じて、お前の友となってやろう、なつみ」
まさかの急展開に、なつみも含め、周囲は驚きに包まれた。
「ほ、ほんとですか。やったぁ!ありがとうございます!やりましたよ、藍染隊長!バラガンさん、ぼくたちの仲間になってくれますって!」
「そう、みたいだね…」
なつみは嬉しそうに斬魄刀を収めた。
「でも、どうして急に」
藍染も刀をしまった。
「貴様に従うわけではない。なつみのおる我が家を選んだまでだ」
「…?」
と言われても、理解できない藍染であった。
「むきゅ❗️バラガンさんと、今日からお友だちです❗️」
怖がる素振りも無くなり、なつみは喜んでバラガンに抱きついた。
パンッ✨✨✨
すると、一瞬にして抱き心地が変わった。
「あれ?」
すぐ上を見上げると、そこにはおじいさんのお顔が。
「ん…?」バラガンも自分の手を見て、不思議がる。「肉体だと」
「わぁー💖」
なつみは、バラガンの突然の破面化に胸を躍らせた。
「バラガンさんが、破面になったー‼️怖くなーい‼️😆」
そして何となく下の光景が目に入った。
「ギョッ‼️⁉️🫣💦」
おパンツの文化が、ございませんでした。
「ふ、服‼️持って来たんだよね‼️サイズ探して、渡してあげてー‼️むきゃきゃ🫣///」
裸の王様も、なつみも、慌てて一旦離れたとさ。
こうして虚圏の皇帝バラガンを仲間に入れられたわけだが、彼の心変わりの要因をここだけでこっそり公開しておこう。
藍染に敗北し、虚夜宮を去ることにしたバラガン。新地で生活を始め、ある日、尸魂界から偶然流れ着いた1枚の雑誌の切り抜きを見つける。それには、なつみがモデルとして撮られた広告の写真とインタビュー記事が載っていた。
(…///)
一目惚れをした。
それ以来、そのなつみの写真を密かに大事に眺め続け、こう願うようになっていた。
(この子とひと目会えんか…)
虚夜宮に新たな王が選ばれたという噂は、バラガンの耳にも届いていたが、先入観からか、てっきり藍染だと思い込んでおり、なつみの名前はいつの間にか聞き流してしまっていた。
こうして憧れのアイドルと、実際に会える日が来ようとは。その子の願いが、自分と親しくなることだとは。叶えてやるに決まっている。そして、あわよくば、藍染という敵を消し去ることもできればと。
「ム〜ゥ💤」
この日もアヤの仕事を手伝い、疲れて気持ちよく寝ているようだ。
暗い牛舎にいるのはサンタだけ、…のはずだった。
スルスルスル…キュ
「モフッ⁉️」
首に何かを巻かれた感触に襲われ、サンタは目を覚ました。
「あ、起きてもた」
目が合ったのはアヤではなく。
(市丸⁉︎)
不意に現れた来客を見て、前脚から立とうと動き出したが。
「アヤさん起こしに行かんでもええで。用があるんはキミやから」
「🐮❓」
止められたため、前脚をたたみ直す。
「これな、なつみちゃんからの贈り物やで。よう似合ってるわぁ。あったかいやろ」
市丸が巻いてくれたのは、どうやらストールらしい。サンタはそのストールに鼻を近づけ、くんくん嗅ぎ、確かになつみの香りを感じた。
「モ〜💖」
「嬉しそうやねぇ。よしよし」
市丸はサンタの広い額を軽くゴシゴシ撫でた。
「キミにあげたるで、その代わりにおつかい頼まれてくれへん?」
「🐮❓」
懐から出したのは、1通の手紙。
「これをな、京楽さんに届けて欲しいんよ」
そう言って、手紙をサンタの首とストールの間に挟んだ。
「瀞霊廷に野菜運んだついでに渡して来てや。頼んだで」
ポンポンと手紙の上から叩いた。
「ほな、帰るわ。おやすみ、サンタ」
市丸は外套を翻し方向転換。出口へと向かい、スタスタ歩く。その後姿に。
「モ〜(おやすみ〜)」
とお返事。…かと思われたが。
(って、帰すわけない。こっちは全部知ってるんだ。お前たちがなつみを連れ去ったこと‼︎‼︎)
スタッと立ち上がり、鼻から思い切り息を吸った。そして叫ぶ。
「ンモォォォォォオオオッ‼️‼️」
市丸は耳を塞いで振り向いた。
「何や⁉︎」
アヤは母家で眠っていたのだが、サンタの鳴き声に起こされた。
「何⁉︎」
飛び起き、急いで灯りを持って牛舎に向かう。
外に出たところで人影を見た。夜の闇の中、確かに何者かが牛舎から出てきた。黒い外套を着ており、全く誰だかわからないが、どこか見覚えのある体格をしていた。その者はサンタへ手を振りかざしてから向き直り、完全に姿を消した。
(嘘やろ。何で牛が瞬歩使えんねん💦)
アヤが牛舎へ近づくと、中からサンタが駆け出してきた。
「ムオォーッ‼️」
「キャァッ」
驚いたアヤに気付き、サンタは逃亡者を追うのをやめる。
「モー、モー」
アヤに訴えるように鳴くサンタ。
「何があったの、サンタ。今の誰」
持った灯りを顔の前に上げ、アヤはサンタの身体を見ようとした。怪我を負わされていないか見るためだ。
「あれ?何このストール」
しかし、まず先に首元の異変が目に飛び込んできた。
「どういうイタズラ?」
灯りを床に降ろし、アヤはストールを解いてやろうと手を伸ばした。するとサンタはそれを嫌がり、頭を振って何かを示した。
「ん?何かあるの?」
「モッモッ」
アヤがサンタの横に周ってストールを調べると、それを発見した。
「あ、手紙…?」
抜き出して、灯りに近づけるようしゃがんだ。そして、封筒に書かれた宛名と差し出し人の名前を見て驚く。
「これ、なつみちゃんの手紙⁉︎京楽隊長に渡さなきゃ!誰が持ってきたの、サンタ!ってきいても、答えられないか。ちょっと待ってて。出かける支度する!」
立ち上がったアヤの目の前には、サンタの顔があった。不自然に目を細めている。
「何?眠いの?」
ブンブン首を横に振る。継続する細い目。
「んー…?」
アヤも見ながら細い目になる。お互いに目を細めて見つめ合う不思議な時間が流れ、そうして気付いた。
「市丸隊長か!」
「モーモー❗️(ピンポーン⭕️)」
アヤを乗せて、サンタは瀞霊廷、八番隊舎へ急いだ。
手紙を受け取った京楽は早速読み、ストールが本当は自分宛てと知ったが、サンタがもうしてしまっているので、文句を言いつつ、譲ってあげることにした。
「大事なところが黒塗りされてる。惣右介くんがやったんだろうね。でもだいぶ良い情報が残してあるよ。大きな手がかりだ。届けてくれてありがとう、アヤさん。サンタもご苦労様。七緒ちゃん、ボク、山じいのところに行ってくるよ。ここ任せるね」
手紙は元柳斎に渡り、その写しが各隊長へ送られた。
「酷いもんだろ?なつみちゃんからボクに宛てた愛のメッセージが、全部塗りつぶされてるんだ。どっかの誰かさんじゃあるまいし。こんなことで支配できてるとでも思ってるのかな」
「口を慎め、春水」
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎春水さんへ
こんにちは、お久しぶりです。お元気ですか?ぼくは元気です。虚圏での生活にもすっかり慣れましたし、たくさんお友だちができて、毎日楽しく暮らしています。街づくりなんて大変な任務を担当することになりましたが、みんなが協力してくれるおかげで、キツくても、問題が起きても、なんとか良い感じに作業が進められています。藍染隊長、市丸隊長、東仙隊長が来て下さって、もっと順調に仕事が進んでいますし、この調子で行けば、お正月休みならいただけるんじゃないかと思っています。
春水さんもご存知のことと思いますが、ぼくが住む虚夜宮には、たくさんの破面がいます。みんな、大虚から変身した人たちなので、とっても強いんですよ。良い練習相手になってくれるので、尸魂界でやっていた稽古も引き続きできています。ぷよぷよにはなっていないので、安心してください。ぼくの先生たちにもそうお伝えください。「木之本は斬拳走鬼と回道の稽古を続けているので、ぷよぷよしていません」って。
いちばん仲良くしてくれているのは、リリネットちゃんという、小さくてかわいい女の子です。ぼくになついてくれてて、まるで妹ができた気分です。リリネットちゃんの相棒のスタークさんとも、ぼくは仲良しです。ぼくは市丸隊長と一緒の部屋で暮らしていて、リリネットちゃんとスタークさんの部屋の隣なんです。たまにふたりがケンカしてる声が聞こえてきますが、ぼくも市丸隊長に大きな声で文句言っているので、おあいこですよね。だって隊長、ぼくが淹れたお茶を横取りするんですよ。ゾマリんからもらったおかしも勝手に食べちゃうし。自分も欲しいなら、用意始める前に言ってくれれば良いのに。「ひと口だけでええんやもん」とか言うんですよ。ぼくは全口欲しいのに!市丸隊長のおうちに居候させてもらってたときも、こんな感じでしたけど。やっぱり一緒に住むなら、美沙ちゃんとが良いです。
この間、新しくぼくたちの仲間になってくれたおじいちゃんのお話をしますね。ぼくたちのおっきな目標は、死神と虚が仲良く暮らす世界をつくることじゃないですか。なのでその日は、一気にたくさんの虚さんたちとお友だちになれて、とっても嬉しかった日になりました。
なつみは便箋と封筒をもらいに、藍染の部屋にやってきた。コンコンコン。
「木之本です」
「入りなさい」
「失礼します」
トコトコトコと入室。
「お手紙セットください😊」
「フフッ、お店屋さんごっこかな?」
冗談を言われて、ムスッとした。
「むぅ。違いますよ。市丸隊長から聞きました。京楽隊長にお手紙出しても良いんですよね」
「良いよ。はい、どうぞ。君に全部あげる。好きに使いなさい」
藍染は引き出しから紙袋を取り出し、なつみに渡した。早速中身を確認。
「わぁ❗️便箋いっぱい❗️ありがとうございます」
満足そうに、なつみはお手紙セットを抱きしめた。
「でも全部なんて、本当に良いんですか?雛森副隊長にお手紙書かれないんですか?」
「僕は良いんだ。報告書で済ませるから」
(ちめたいなぁー😒)
「それはさて置き」
(なんと。btw😟)
次に藍染が取り出したのは、黒い生地の何かしら。それを持ってなつみの正面に立った。
「何ですか?それ」
首を傾げるなつみの前で、藍染はパサリと広げた。
「うん。着られそうだね」
「かっぱ?」
「としても使えるね」
なつみに腕を回し、黒いフード付きコートを掛けてあげた。
「今日はこれを着て、みんなで遠征に行こう。バラガンという強い虚がいてね、彼とその仲間たちに、僕らの仲間になってもらえないか、誘いに行きたいんだ」
「みんなで❓✨」
「虚圏で軍を持つ程の強さと人望があるから、魅力的だけど、その分気を付けていかなければね。今のところ、敵だと思われているだろうから、彼らの前に着いた途端、攻撃されるかもしれない。それに耐えられるだけの面子で行く必要があるんだ」
「そのメンバーにぼくを選んでくれるんですか❓✨」
「そうだよ」藍染はなつみの頭をなでなで。「塔の建設と手紙を書く時間を奪ってしまうんだけど、一緒に来て欲しい。良いかな」
ピシッと右手を挙手❗️
「はい❗️お供します❗️✋」
藍染は、東仙、市丸、なつみ、十刃を連れ、バラガンが治めるエリアにやって来た。なつみは遠足気分でついてきており、道中みんなとおしゃべりをして楽しんでいた。「マジこれXIII機関。ってか、みんなは着ないの?これ」などと言いつつ。
「なつみ、ここからは頭巾を被って、下を見て歩きなさい」
そんな指示を出された。
「どうしてですか?」
「ここから先は、まるでお化け屋敷だからだよ。苦手だったよね」
「ふええええっ😱💦」
お化けと聞いて、震え上がるなつみ。ついてきたことを後悔する。
「人間からしたら、僕らもお化けなんだけどな😅」
「お化け嫌いが死神って、おかしいだろ」
「うるさい❗️怖いもんは、怖いの❗️」
なつみはコートのフードを目深かに被り、縮こまった。
「私が先頭に立つ。君たちはなつみを囲んでついてきてくれ」
「はい」
「はいぃっ😖))💦」
市丸の左腕にしがみついて、ビクつきながら、なんとかみんなと歩いていった。
玉座の間。ここも床や柱はあれど、壁や天井は無い。これがバラガンの城。サンフランシスコのあの家と同じセリフが言える。「いつでも開いてまーす」しかし、明らかに違う点がある。その暗さに。
「敵の陣地に仲間を引き連れて練り歩くとは、大層な余裕じゃの、藍染」
「それはどうも」
懸念されていた迎撃は無く、穏やかな会話から始まった。藍染の背中で、なつみにはバラガンの姿が見えていない。声だけが聞こえる。
「だが、ちと足りんのではないか」
「そういう君は、随分と仲間の数を取り戻せたようだね」
十刃たちの隙間から周りを見渡すと、数えきれないほどの虚が、こちらを睨んでずらりと並んでいるのが見える。
(やばぁ…。歓迎されてないや💦)
藍染が話を続ける。
「今日は君を迎えに来たよ。私たちと共に、この虚圏の平安を築いていく前向きな検討をしてくれたかな」
「災いが平安を語るなよ、疫病神め」
声からするとおじいちゃんぽいが、藍染の大きな態度からして、実は結構若いのかと想像を膨らませるなつみ。怖いもの見たさな興味が、なつみの頭を少しずつ横にずらしていく。
「要望があるなら聞いておこう。何を差し出せば、君は私についてきてくれるのかな」
「何をだと…?儂が欲しい物など決まっておるわ」
そろりそろり覗いてみる。市丸はそれに気付かなかった。
「貴様の首と、我が城ラス「オバケェェェエエエーーー‼️‼️‼️😱」…💢」
声量を上げて、藍染とその仲間たちを脅そうとしたら、藍染の背中で隠れていた小さな影の絶叫に、バラガンの言葉は掻き消されてしまった。まだ続いている。
「エエエーーー」
「静かにしなさい」
「ーーー‼️‼️‼️………(パタン)😱」
「ありがとう」
なつみは気を失って市丸の腕の中に倒れた。若者でもなく、おじいちゃんでもなく、それを通り越しての骸骨に腰を抜かしてしまったようだ。
「ガキの躾がなっとらんぞ、藍染」
「済まない」
ボスの背後ではコソコソと、今の出来事の感想が行き交う。
(バラガンの見た目より、なつみの声にチビるぜ)
(ウッソ、汚ねー、ノイトラ)
(お前だって相当ビクついてたろ、リリネット)
(2人だけじゃない。全員ギョッとしたさ)
(本当にお化け嫌いなんだな)
(お化けの定義がわからないがな)
(奴の強さに恐怖しないところが、そいつらしい)
(何で連れてきたんだよ、藍染サマは)
(なつみがいなきゃ、ボクタチツイテコナイ)
(何にせよ、これで遠慮なくやれるわけだな)
ヤミーがニヤリと笑ったが、藍染は話の流れを変えてしまう。
「残念ながら君の願いは、ふたつめしか聞いてあげられないな。今日のところは帰るとしよう。バラガンには、もう一度考え直す時間が必要なようだ」
そう言うと、藍染はバラガンに背を向けた。
「そんな時間などいらんわ。今ここで、どちらも手に入れてくれる‼︎‼︎掛かれ‼︎‼︎」
バラガンの号令で、横に並んでいた虚たちが一斉に、こちらに飛び掛かってきた。
「やれ」
藍染も指示を出した。それに応えて十刃たちが刀を抜き、虚たちの四肢を切り落とす。彼らは言い付けられていた。虚圏の元王のため、手下の命をその場では奪うなと。彼ら自身に、生き死にを選ぶ権利などありはしないことを示すために。
ダンダンダンダンダン
腕や脚が地面に落ちる音と、痛みに襲われた虚の叫びがこだました。そこでなつみは目を覚ました。
「全員動くんじゃねぇーッ‼︎‼︎‼︎」
起き上がったなつみは斬魄刀を抜き、霊圧を爆上げした。
「従え、夢現天子」
カキンッ………
全員の動きが止まった。いや、頭は自由らしい。
「何だ、これは⁉︎」
「動けねぇ」
「あのガキの仕業か⁉︎」
「フザけんなよ。俺らもか?」
「私は良いんじゃないか?」
「ダメです❗️」
「ボクもなん?」
「ダメです❗️みんなです❗️こんなの酷い❗️」
次の願いをかける。
「治します。文句は受け付けません」
全員の動きを止めたまま、なつみは落ちた腕や脚を浮かせ、虚それぞれの身体に戻し、くっつけていった。この状態にあるなつみの命令は絶対だ。誰も文句は言えない。疑問なら許されるが。
「何者だ、貴様。何故、敵の傷を癒す」
バラガンの姿は、なつみの目に映らない。集中力を高めるためと、視覚による余計な情報を遮断するため、目を閉じていた。
「敵じゃありません。ぼくたちは、あなた方とお友だちになるために、ここに来たんです。戦いなんて、求めていませんよ」
「友達だと⁉︎笑わせるな。儂が手元に置くのは、味方として従える手下のみよ。馴れ馴れしくも、儂と同等と思い違う愚か者は皆敵とみなす。所詮、目障りな蟻にすぎんからな。儂という神が統べる限り、この虚圏に友情などという夢は存在せん‼︎儂の足場となる頂点を築き上げる、弱肉強食の世界があるのみじゃ‼︎‼︎」
バラガンが玉座に肘をついて座ったまま、ガミガミ説教を垂れている間に、治療は完了した。
「ガミガミガミガミ、うるっせぇな。『仲間を治してくれて、ありがとうございます』も言えねぇーのか、この頑固骸骨ぁ‼️💢」
藍染の横を、ズンと一歩通り過ぎて前に進んだ。
「わっ、お化け😖💦」
「💧」
怖くて目を閉じたが、プルプル震えながらもなつみは斬魄刀を身体の前に構えた。
「威勢が良いのか悪いのか、はっきりせんガキじゃな」
「命を軽く見てる人が、え、偉そうにしてるなんて、ぼくは黙ってられません❗️世界は優しさでつながってるべきだもん❗️」
「…、貴様、そこに並んでおる死神擬きの虚とは違うな。死神か?黙っておれんと言うならば、友という考えを捨て、儂を斬るか。やってみよ。儂を倒せば、貴様の夢の世界が作れるやもしれんぞ。だが覚えておけ。儂を斬れば、貴様の下らん正義も斬られ、殺し合いの世界に呑まれるだけだとな‼︎‼︎」
「😖)))」
そんなことは百も承知だ。なつみはとうの昔にやり方を変えている。自信を取り戻せ。
「ぼくは刀で解決する方法を辞めたんです。ぼくは、護廷十三隊、三番隊所属、第二十席」バサッと左手でフードを取り、バラガンをまともに見た。「木之本」
「木之本なつみだと‼︎⁉︎」
今度はなつみの言葉がバラガンに遮られてしまった。
「(なつみ。虚とお友だちになって、世界に平和を、うんたらかんたら…)…、ぼくを知ってるんですか?💧」
「何故だ…、儂に、会いにきたのか…?」
「ええ、はい…。」
骸骨では表情が読み取りづらいが、凝視されていることは確かだ。
「流石はバラガン様。顔までご存知でしたか」
バラガンの部下の1人が、口を挟んできた。
「あなたの名前は、虚圏中に知れ渡ってるわよ。虚夜宮に現れた、新たな王だってね。まさかこんな子供がそうだなんて、思いもしなかったわ」
「ぼくは王様じゃないし、大人です❗️」
2人目が話し出す。
「お前ら、虚夜宮を汚しやがって。死神如きに、よく平気で諂えるな!恥を知れ‼︎」
「よい」
捲し立てた虚をバラガンが止めた。
「しかし」
「よいと言うておる‼︎」
横入りの3人目は市丸だった。
「ま、みんな動かれへんから、なんや全部間抜けに見えるわ」
「シーッ🤫💦」
なつみは、すぐかけ直せるように構えは下さなかったが、術は解くことにした。すると、解放されたバラガンは立ち上がった。
「もうよい。刀を下ろせ、木之本なつみ」
ゆっくりとした歩みで迫り来るお化けに、歯を食いしばりながら対峙するなつみ。
「儂を信じろ」
確かに攻撃の意志は感じられない。なつみは構えを緩めた。
「私が援護する」
なつみの前まで辿り着くと、バラガンはその手を伸ばしてきた。
「この子に触れるな」
藍染が斬魄刀を抜いて、バラガンの喉元に突きつけた。しかしバラガンは怯まなかった。
「信じろと言ったんだ」
「藍染隊長、大丈夫ですよ」
なつみはバラガンを受け入れた。彼はなつみの頭に手を置き、柔らかい髪に触れながら、優しく撫でてやった。
「お前の勇気に免じて、お前の友となってやろう、なつみ」
まさかの急展開に、なつみも含め、周囲は驚きに包まれた。
「ほ、ほんとですか。やったぁ!ありがとうございます!やりましたよ、藍染隊長!バラガンさん、ぼくたちの仲間になってくれますって!」
「そう、みたいだね…」
なつみは嬉しそうに斬魄刀を収めた。
「でも、どうして急に」
藍染も刀をしまった。
「貴様に従うわけではない。なつみのおる我が家を選んだまでだ」
「…?」
と言われても、理解できない藍染であった。
「むきゅ❗️バラガンさんと、今日からお友だちです❗️」
怖がる素振りも無くなり、なつみは喜んでバラガンに抱きついた。
パンッ✨✨✨
すると、一瞬にして抱き心地が変わった。
「あれ?」
すぐ上を見上げると、そこにはおじいさんのお顔が。
「ん…?」バラガンも自分の手を見て、不思議がる。「肉体だと」
「わぁー💖」
なつみは、バラガンの突然の破面化に胸を躍らせた。
「バラガンさんが、破面になったー‼️怖くなーい‼️😆」
そして何となく下の光景が目に入った。
「ギョッ‼️⁉️🫣💦」
おパンツの文化が、ございませんでした。
「ふ、服‼️持って来たんだよね‼️サイズ探して、渡してあげてー‼️むきゃきゃ🫣///」
裸の王様も、なつみも、慌てて一旦離れたとさ。
こうして虚圏の皇帝バラガンを仲間に入れられたわけだが、彼の心変わりの要因をここだけでこっそり公開しておこう。
藍染に敗北し、虚夜宮を去ることにしたバラガン。新地で生活を始め、ある日、尸魂界から偶然流れ着いた1枚の雑誌の切り抜きを見つける。それには、なつみがモデルとして撮られた広告の写真とインタビュー記事が載っていた。
(…///)
一目惚れをした。
それ以来、そのなつみの写真を密かに大事に眺め続け、こう願うようになっていた。
(この子とひと目会えんか…)
虚夜宮に新たな王が選ばれたという噂は、バラガンの耳にも届いていたが、先入観からか、てっきり藍染だと思い込んでおり、なつみの名前はいつの間にか聞き流してしまっていた。
こうして憧れのアイドルと、実際に会える日が来ようとは。その子の願いが、自分と親しくなることだとは。叶えてやるに決まっている。そして、あわよくば、藍染という敵を消し去ることもできればと。