第九章
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ボソッと言ってしまったが、まぁ聞こえていないだろうと思い、おっとぉ〜と口に手をやり、ちょっと小さく座った。ジュースを飲んで、誤魔化しておけ。
しかし、ちゃんと聞かれていた。みんなの視線がスクリーンから、なつみへ移される。
「なつみ」
「っ。やっぱり聞こえてた?」
両手で持っているグラスを、口元から離す。
「聞こえた。こっちにいるの、嫌になっちゃった?」
ザエルアポロはそんなふうに言う。
「そうじゃないよ。ただ、懐かしいなぁって、思ってさ。帰り方、全然教えてくれないから、ちゃんと居るよ、こっちに。でもさー…」りんごジュースを見下ろす。「ぼくの家は、瀞霊廷にあるから。大親友の美沙ちゃんと住んでる部屋が、ぼくのおうちだから。必ずあそこに帰るんだ。やる事をきっちりこなしてからね。
向こうではね、朝起きたらさ、美沙ちゃんと朝ご飯食べて、家を出たら藍染隊長と『おはようございます』の挨拶して、三番隊舎に着いたら市丸隊長とも『おはようございます』の挨拶して、瀞霊廷通信を取りに行くことがあれば、九番隊舎で東仙隊長とも挨拶するの。死神のお仕事をしないときは、お稽古で他の隊舎にお邪魔したり、ただお友だちとおしゃべりしたり、楽器弾いたり」
「デートしたり?(笑)」
市丸が右手で頬杖をついて、こちらを見てくる。なつみはそちらへ、こくんと頷いた。
「暗くなると、建物からオレンジ色の光が見えて、あったかい気持ちと、自分の家に行かなきゃって気持ちになってさ。着いたら美沙ちゃんに『ただいま』って言って、寝る準備して、ムッちゃんやお星様に『おやすみ』を言って、無事に1日過ごしたなーって思って寝て、夢を見るの。そしたらまた新しい朝になって、良い日になりますようにって、お祈りするんだ。平凡でつまんなそうに聞こえるかもしれないけど、ぼくには落ち着ける生活なの。
虚圏にはやりがいがたくさんあるけど、尸魂界は故郷だもの。帰りたいよ。取りに行きたいもの、いーっぱいあるし。見たいこともたくさん。会いたい人も…、たくさん…、あれ…」
話していたら、ぽろぽろぽろぽろ、なつみの目から大粒の涙が溢れてきていた。
「うぅぅ…。泣いちゃダメ、泣いちゃダメ」
なつみは袖口でごしごし目を拭いた。せっかくの、歓迎会という祝いの席で、来てくれた3人を前に、「帰りたい」と泣いてしまうなど、失礼以外の何ものでもない。なのだが、尸魂界の青空や街並みや死神の仲間たちを見、何でもない日常を思い出すと、心の奥底に抑え込んでおいた感情が自然と込み上げてきてしまった。一度泣き出すともう止められない。
「うぅぅぅぅ、…春水さん」
市丸が背中をさすってくれる。
「ボクらが来たで、余計に向こうが恋しくなってもうたんやね。よう今まで独りでおったわ」
ポケットからわかめ大使手拭いを取り出さなければならないほどとめどなく、みどりの凛々しい笑顔が更に誘ってきた。
「わぁぁぁんッ❗️わかめぇぇぇ😭」
「そんなもんまで涙のスイッチなん。可哀想にぃ。よしよし」
人の心を忘れて早幾年。こんなふうに、ゆるキャラを見ただけで泣けてしまうほど、心とは揺るぎやすいものだったろうか。破面たちには理解できない。できないから、慰めることも難しい。何故泣いてしまうのか、わからない。諦めたときに捨てたのか、勝手に捨てられたのか。故郷を想い、帰りたいと願う気持ちを。それとも自分達はここで満足できているからか。だとしたら。
大人になると色々と考えるが、身体が小さいと、気持ちと外の世界の距離は近い。泣いたのは、なつみだけではなかった。
「泣くなよ、なつみッ❗️」
そう叫んで、両手を机について立ち上がった。
「おい、リリネット。お前酔ってるな」
隣りのスタークが、リリネットの服の背を掴んで座らせようとしたが、彼女は動かなかった。
「うるさい❗️酔ってないって❗️」
バンッとスタークの手を払い落とした。
「帰りたいとか、そんなふーにメソメソ泣くな❗️なつみ言ったじゃん、破面になったら一緒に住めるって。だからなつみのためにこうしてあげてるのに、あたしらから離れたいとか言うなよ❗️」
「言ってないじゃん、そんなこと❗️ここに居たくないからじゃなくて、…、そうじゃなくて。あっちに行きたいから❗️」
「戻ったら戻ってこないよ、なつみは❗️」
「そんなことない❗️仕事を途中で投げ出すなんてこと、ぼくはしないよ❗️ただ安心が欲しいだけ。ちょっと帰って息抜きくらいしたいだけだよ❗️」
「こっちじゃ安心できないってことじゃん。居たくないってことじゃん❗️」
「違うって」
「それに、あたしらと居ることが仕事だって言うんでしょ。街ができたら、それも終わるってことでしょ⁉️それ以上こっちにいる意味無くなるってことじゃん‼️あたしらはなつみのこと家族だと思ってるのに、なつみはそうじゃないんだ❗️尸魂界に帰ったら、あたしらのこと忘れちゃうんだよ‼️」
「バカなこと言わないでよ❗️忘れるわけないじゃん‼️」
さすがになつみも怒った。
「絶対帰らせない。なつみはずっとここであたしらと暮らすの❗️帰れないようにしてやる‼️‼️」
リリネットはそう吐き捨てると、椅子をグッと引いて、席から離れて駆け出した。
「待って、リリネットちゃん‼️‼️」
なつみはそれを追いかけていった。
誰も止めはしない。
「…、これで皆もよくわかったかな」
藍染は、教習ビデオを見終わったようなタイミングと雰囲気で、話し始めた。
「なつみは、瀞霊廷に帰りたがっている。だがそれは、君たちと別れたいからではない。ならば、どうすれば良いと思う」
特に誰かに答えを求めたわけでもないので、自分で言う。
「そうだよ。一緒に行ってあげれば良いんだ。だけど、その時には彼女の会いたい者たちは居なくなっているから、慰めてあげなければね」
それはつまり、瀞霊廷を乗っ取るということ。そして、霊王宮への侵攻も。
「大事なのは、なつみが私たちと共にいることだ。場所じゃない。古に結ばれた外道な契約を打ち捨て、私たちは自由な世界を手に入れよう。あの子さえ居てくれれば、どんな景色の中だろうと、楽しく暖かいはずだ。
さて…、ふたりが帰ってくるまでの間に、ひとつ話しておこうか。虚圏の王バラガンを迎えに行く件について。誰か奴の居場所に心当たりがある者はいるかな」
リリネットは階段を駆け下り、廊下を走り、扉を力任せに押し開け、外に飛び出した。そして虚閃をバンバン撃ち始めた。
「ぅらぁッ‼︎たあッ‼︎」
なつみも外へ出てきたが、リリネットが手当たり次第に近くにある建物を破壊しようと、攻撃するのを見て、怯んでしまった。
「リリネットちゃん…ダメ」
とりあえず、取り押さえるべきだと思い、一歩踏み出そうとした時。
「なーんだ、敵がノコノコやってきて暴れてんのかと思ったら、リリネットの仕業かよ」
「こんなに壊しやがって、ド叱られても知らねぇぞ」
「離せよ‼︎‼︎」
リリネットを押さえ込んだのは、アパッチとミラ・ローズだった。もちろんスンスンも来ていた。足元で転がるリリネットを思い切り見下している。
「親切で止めてあげてるんですのよ。その口の聞き方は無いんじゃなくて?」
なつみも駆けつけた。
「ありがとう、3人とも。ごめん、リリネットちゃんお酒飲んで酔っ払ってるの」
「まぁ、悪酔いにも程がありますわ」
「従属官のくせに、ひとりだけパーティーに呼ばれたかと思ったら、この様かよ。ホント、無礼だな、お前」
「あたしとあんたらを一緒にすんな!」
「ま、そうだろーが、こんだけ暴れちまったら、二度目は無ぇだろーな」
リリネットはキッとアパッチを睨んだ。
「んだよ、その目。やんのか⁉︎」
挑発したが、すぐにミラ・ローズが制した。
「ケンカはやめな。スタークがキレたら事だ」
「チッ…」
それもそうである。
4人に囲まれると、もう暴れられないリリネットは大人しくなってくれた。立たせてあげる。
「どうしてこんなことになったんだよ。楽しい飲み会のはずだろ」
「そうなんだけど、ぼくが、『帰りたい』って言っちゃったんだ」
「部屋にか?そりゃ今日は疲れたろうから、早く戻りたくなんだろ。そんなんで怒るとか、マジガキだな」
「そんな言い方やめて、アパッチ。違うよ。部屋じゃなくて、尸魂界にだよ。帰りたくなって、泣いちゃって」
「はぁ⁉︎」
これにはアパッチだけでなく、あとの2人も驚く。
「それは、怒っても仕方ありませんわ」
「ごめん…。」
「お前まで飲んだのか?」
「飲んでないよ。市丸隊長が、前に撮ってた写真とか、いろいろ見せて、思い出話とかしてたから。それで懐かしくなって、無意識に言っちゃってた。ポロッと言っちゃったらさ、どんどん気持ちがそっちに向いちゃって、止められなくなってた。でもわかってほしいよ。虚圏に居たくないとか、みんなが嫌いとか、そんなんじゃなくて、家に帰りたいだけなんだって。好きな人に会えないの、やっぱりほんとは、すごくツラいんだもん」
この言葉を唇と噛んで聞いていたリリネットが返す。
「なつみの家はここだよ。あたしたちと暮らす家だよ。向こうのことなんか知らない!今はスタークのことが好きなんでしょ。だったら、スタークで良いじゃんか。迎えにもこない男なんか、忘れちゃえば良いじゃん‼︎」
「…、あの人は、任務のことわかってくれてるから来ないだけだよ。きっと。会えば、離れたくなくなるから」
「だったら、会っちゃダメ!ちょっとだって会っちゃダメ!スタークにしてよ。スタークだってなつみのこと好きじゃん。大好きじゃん。帰んないで、なつみ」
リリネットはなつみに縋り、抱きついた。それに応えて、なつみもリリネットの背に腕を回す。
「引き止めようとしてくれる気持ち、とっても嬉しいよ、リリネットちゃん」
「なら行かないで」
「うん。まだ行けないよ。リリネットちゃんが仕事増やしてくたから」
「あれが終わっても‼︎」
「街づくりって、終わりが無いんだよね…」
「じゃあずっと居て」
「……」
「途中で投げ出さないって言った‼︎」
どう宥める言葉を紡いだら良いのか、わからなかった。本心を言えば、またリリネットを傷つけることになる。リリネットにとって、仲間に離れられることがどれだけ辛いことなのか、なつみは少しだけでも知っていたから。
だが、ズバリと言ってくれた人がいた。
「ワガママも大概にしたらどうですの?」
スンスンだ。
「あんたに関係無いでしょ!口挟まないでよ!」
「そうですけど、私もなつみを好いていますから、この子が困っているなら、黙ってはいられませんの」
リリネットとなつみは少し身体を離した。
「スンスン」
「なつみがいずれ尸魂界に帰るのは当然ですし、スタークと結ばれることもありませんわ。だって、死神ですもの。結局私たちとは住む世界が違いますわ」
フンと澄まして簡単に言い放った。
「おいおい、言い過ぎじゃねぇか?」
リリネットの顔が、また泣き出しそうに険しくなった。
「本当のことですもの。はっきり言ってあげるのが本人のためですわ。それに、視野の狭さも鬱陶しいですし」
「まぁ、そうだな」
ミラ・ローズが面倒臭そうだが、リリネットに話しかけてくれる。
「あのな、リリネット。あたしらは藍染様に従って、ここに集まってんだ。それは、あのお方の理想の世界に共感してるからなんだよ。その目標が達成されれば、虚の居場所が虚圏っていう縛りから解放されて、どこへだって好きに行けるようになる。死神から狙われない、もっと自由な生き方ができんだよ。そうなれば、お前だってなつみについて尸魂界にだって行ける。計画がうまくいけば、誰とも別れることはねぇんだよ。わかったか。ピーピー泣くなよ、面倒臭ぇ。なつみを仲間だと思ってんなら、信じてやれ」
コツンと、ミラ・ローズはリリネットの頭に優しい拳骨を食らわした。
クスンと鼻を啜ってから、リリネットはなつみを見つめた。
「なつみ、なつみはあたしたちのこと見捨てたりしない?」
「しないよ」微笑んで、なつみは首を横に振った。「ミラ・ローズの言う通りだよ。そうそう、ぼくが帰るときは、リリネットちゃんも一緒に連れてってあげなきゃね。スタークさんも、みんなも。ぼくたちは死神と虚の架け橋になって、仲良く暮らせるおっきな世界を目指すんだもんね。仕事だからーじゃなくて、生き方って言わなきゃだ。そうだね。まだ春水さんと会っちゃダメだ。会えたら、にゃふにゃふしちゃって、息抜きどころか骨抜きされて、動けなくなっちゃう。帰っちゃダメだ❗️隊長たちも来たし、気持ち切り替えなきゃ❗️ぼくの今のお家はここ。藍染隊長が良いよって言ってくれるまで、ここでがんばらなきゃ❗️」
パンパンと、なつみは自分の両ほっぺを叩いて、気合いを入れ直した。それでなつみの視線が虚圏に戻されたのを、4人の破面は確認できた。
「よかったな、リリネット。これで安心できたろ」
「うん」
「さっさと会場に戻られたら?せっかくのご馳走が食べ尽くされてしまうんじゃなくて?」
「あ❗️ゾマリんがタルト焼いてくれたって。デザート逃すなんてありえないよ❗️急ごう、リリネットちゃん❗️早くしないと、ノイトラかヤミーあたりが、ぼくたちの分まで食べちゃうって❗️」
「良いよなー。あたしらにも分けてくんねーかな」
アパッチの何気なしに言った文句が、なつみの心に刺さった。
「…、みんなで一緒に行こうか」
「いけませんわ。私たち、呼ばれてませんもの」
「そうだ。ふたりだけで行け。アパッチも、余計なこと言うなよ」
「だってよ」
「なつみ」
なつみは顎に手をやって、考える。これは、悪い顔。
「赤信号も、みんなで渡れば怖くないってね😏」
「おいおい💧」
「知りませんわよ、怒られても」
「やめといた方が良いのはわかんだけど、面白そーだな‼︎」
「大丈夫。ぼくが藍染隊長からみんなを守ってあげる。つか、パーティーなんだから、人は集まるもんなんだって。お料理足りなくなったら、ぼくが作るし。行こ行こっ」
どうするつもりか見当のついていないリリネットの手を取って、なつみは駆け出した。
「ふふふッ😏」
「良いのかな」
「いーのいーの。ついておいで、3人とも。そんで、行きすがら、仲間を増やすぞ。へへへ😏」
「悪ぃ顔💧」
「藍染隊長はぼくをイジメて遊ぶんだぞ。市丸隊長も。ちょっとくらいこっちから困らせてやっても、良いって。やり返してやろーぜ❗️ご馳走は、みんなに分け与えて然りだ❗️祝いの席だし。みんなでぶち上げお祭りパーリナイしよーぜ❗️Hooooo〜✊🥳」
ふたりが帰るまでと思われていたが、何人になることやら。
案外パーリナイがあっさり受け入れられてしまい、若干の拍子抜けをしたが、その夜はパーリナイであった。スピーカーに繋いだDJ なつみの伝令神機からチョイスされるご機嫌ダンスチューンで、ダンスフロアは大盛り上がり。
「ビバナミダ こぼれおちてゆけばいいじゃん
無駄じゃない
止まらない 今の君が好き
ナミダナミダ そうなんだ
その涙 僕にゆだねてくれないか
七転び八起き
共に行く!また最高って聞かせて
ナミダナミダ 再見!」
「岡村ちゃんも良いよね🤩」
料理はみんなで分け合いやすいように、小さくカットされて、大皿に盛られた。お酒もみんなで飲む。
「もー、ぼくがパイナップル好きって知っての所業❓❓サイコーなんだけど、このタルト😋💓」
「気に入ってもらえて何より」
「夏だね〜。後でレシピ教えてね。あ、リリネットちゃん、おいでおいで。これ食べてみ〜。ヤバたんだよ。あーんして」
「あーん」
「どや!」
「うまっ‼️」
「だらー!ほれー、ゾマリん様最強説ここに有りだてマジ!アモール‼️」
「それでシラフというのだから、なつみもそこそこ最強だぞ」
「んー!曲終わるだに、次はね、アバ行くかいな、アバ!ちょっともー、ここさー、ミラーボール無いの⁉︎」
「なつみが鬼道とかいうので何か出したら?」
「すぅげぇ適当言うじゃん」
「夏休みの自由研究課題として、リリネットにミラーボールを製作させたら?」
「もっと適当言うじゃないすか、藍染隊長😙💧」
「なつみ、あとで一緒に踊ってくれないか。いつか君が誘ってくれた時のように、また君と踊りたいんだ」
それは夢現天子の能力をお披露目した、あの時のことだろう。
「ふふっ、普通、こんな時間の大騒ぎ、偉い人は止めに入るものじゃないんですか?『喧しいわーッ💢』て🤭」
「総隊長ならね。でも僕は違う。君がよく言うだろう?僕がどんなだって」
藍染はなつみを後ろから抱きしめて、ゆらゆらメロディーに合わせて身体を揺らす。
「わーるもの♪」
こちょこちょこちょーっ
「ぎゃはははははーっ🤣」
「鬼の居ぬ間に洗濯だよ。こっちだって羽を伸ばしたいんだ」
「藍染隊長、表裏、ありすぎ‼️(笑)」
そろそろ疲れて横になりたいと、ダンスパーティーからお先に失礼して、自室に戻ることにしたなつみ。玄関の前には何故かスタークの姿があった。
「あれ、どうしたの?中入らないの?」
「ん…、お前のこと待ってたんだ」
「用事なら踊りながらでも聞いたのに。…そういえば早々に姿消してたっけ。人混み嫌い?」
「そうだな」
スタークの前に到着。にっこり笑って見上げる。
「なぁに?😊」
壁にもたれていたスターク、なつみを抱き寄せてしまった。
(⁉️///)
彼の胸に両手とほっぺがくっついてしまう。
「あの💦///」
もっと密着するように、スタークの腕がなつみの腰を引き寄せる。
「んん😣///」
戸惑ってうまく動けない。
「なつみ…」
なつみの髪に口付ける。
(ダメダメダメダメダメ😖💦)
「ゲッ⁉️スターク、何してんの‼️うわッ」
「あーかーん。邪魔したらアカンわ。ちょっとここで待っとろ」
「そ、そうだね。マジかー。スタークもやるじゃん。ぶちゅっといっちゃえ‼︎食っちまえ‼︎」
「スタークさん、こんなとこで、恥ずかしいよ。あと、その、お話があるとかじゃないの?///」
胸の鼓動が早まる。
「なつみ、俺も、お前にどこにも行って欲しくない。離れたくねぇよ」
リリネットの涙ほど強くは伝わらないが、同じ重さを感じる。
「…、ありがとう。スタークさんの気持ち、嬉しいよ」
「返したくねぇ。お前の彼氏のとこに」
それは受け付けられないお願いだった。だから、なつみは何とか逃げることにした。
「なつみ何してんのかな、ケツ振って」
「下から抜けて、逃げようとしてんねんな。けど、スタークくんがうまいこと力入れてるもんで、出られへんねん。静かな戦いやな(笑)」
「はな、はなせぇ💢」
「ヤダ」
「んぐぐぐぐ💢」
「ダメだ」
スタークは内心思っていた。もっと激しく抵抗してくれたら燃えて、勢いに任せて抱いてしまい、キスだって奪いにいく気にもなれただろうに。なつみがうねうねと逃げようとするから、変に遊びに変わってしまった。
「はなせー❗️」
「帰さねぇ」
右脚をピーン、ピーンと伸ばして勢いよく抜けれないものか。ムリか。
しかし、ちゃんと聞かれていた。みんなの視線がスクリーンから、なつみへ移される。
「なつみ」
「っ。やっぱり聞こえてた?」
両手で持っているグラスを、口元から離す。
「聞こえた。こっちにいるの、嫌になっちゃった?」
ザエルアポロはそんなふうに言う。
「そうじゃないよ。ただ、懐かしいなぁって、思ってさ。帰り方、全然教えてくれないから、ちゃんと居るよ、こっちに。でもさー…」りんごジュースを見下ろす。「ぼくの家は、瀞霊廷にあるから。大親友の美沙ちゃんと住んでる部屋が、ぼくのおうちだから。必ずあそこに帰るんだ。やる事をきっちりこなしてからね。
向こうではね、朝起きたらさ、美沙ちゃんと朝ご飯食べて、家を出たら藍染隊長と『おはようございます』の挨拶して、三番隊舎に着いたら市丸隊長とも『おはようございます』の挨拶して、瀞霊廷通信を取りに行くことがあれば、九番隊舎で東仙隊長とも挨拶するの。死神のお仕事をしないときは、お稽古で他の隊舎にお邪魔したり、ただお友だちとおしゃべりしたり、楽器弾いたり」
「デートしたり?(笑)」
市丸が右手で頬杖をついて、こちらを見てくる。なつみはそちらへ、こくんと頷いた。
「暗くなると、建物からオレンジ色の光が見えて、あったかい気持ちと、自分の家に行かなきゃって気持ちになってさ。着いたら美沙ちゃんに『ただいま』って言って、寝る準備して、ムッちゃんやお星様に『おやすみ』を言って、無事に1日過ごしたなーって思って寝て、夢を見るの。そしたらまた新しい朝になって、良い日になりますようにって、お祈りするんだ。平凡でつまんなそうに聞こえるかもしれないけど、ぼくには落ち着ける生活なの。
虚圏にはやりがいがたくさんあるけど、尸魂界は故郷だもの。帰りたいよ。取りに行きたいもの、いーっぱいあるし。見たいこともたくさん。会いたい人も…、たくさん…、あれ…」
話していたら、ぽろぽろぽろぽろ、なつみの目から大粒の涙が溢れてきていた。
「うぅぅ…。泣いちゃダメ、泣いちゃダメ」
なつみは袖口でごしごし目を拭いた。せっかくの、歓迎会という祝いの席で、来てくれた3人を前に、「帰りたい」と泣いてしまうなど、失礼以外の何ものでもない。なのだが、尸魂界の青空や街並みや死神の仲間たちを見、何でもない日常を思い出すと、心の奥底に抑え込んでおいた感情が自然と込み上げてきてしまった。一度泣き出すともう止められない。
「うぅぅぅぅ、…春水さん」
市丸が背中をさすってくれる。
「ボクらが来たで、余計に向こうが恋しくなってもうたんやね。よう今まで独りでおったわ」
ポケットからわかめ大使手拭いを取り出さなければならないほどとめどなく、みどりの凛々しい笑顔が更に誘ってきた。
「わぁぁぁんッ❗️わかめぇぇぇ😭」
「そんなもんまで涙のスイッチなん。可哀想にぃ。よしよし」
人の心を忘れて早幾年。こんなふうに、ゆるキャラを見ただけで泣けてしまうほど、心とは揺るぎやすいものだったろうか。破面たちには理解できない。できないから、慰めることも難しい。何故泣いてしまうのか、わからない。諦めたときに捨てたのか、勝手に捨てられたのか。故郷を想い、帰りたいと願う気持ちを。それとも自分達はここで満足できているからか。だとしたら。
大人になると色々と考えるが、身体が小さいと、気持ちと外の世界の距離は近い。泣いたのは、なつみだけではなかった。
「泣くなよ、なつみッ❗️」
そう叫んで、両手を机について立ち上がった。
「おい、リリネット。お前酔ってるな」
隣りのスタークが、リリネットの服の背を掴んで座らせようとしたが、彼女は動かなかった。
「うるさい❗️酔ってないって❗️」
バンッとスタークの手を払い落とした。
「帰りたいとか、そんなふーにメソメソ泣くな❗️なつみ言ったじゃん、破面になったら一緒に住めるって。だからなつみのためにこうしてあげてるのに、あたしらから離れたいとか言うなよ❗️」
「言ってないじゃん、そんなこと❗️ここに居たくないからじゃなくて、…、そうじゃなくて。あっちに行きたいから❗️」
「戻ったら戻ってこないよ、なつみは❗️」
「そんなことない❗️仕事を途中で投げ出すなんてこと、ぼくはしないよ❗️ただ安心が欲しいだけ。ちょっと帰って息抜きくらいしたいだけだよ❗️」
「こっちじゃ安心できないってことじゃん。居たくないってことじゃん❗️」
「違うって」
「それに、あたしらと居ることが仕事だって言うんでしょ。街ができたら、それも終わるってことでしょ⁉️それ以上こっちにいる意味無くなるってことじゃん‼️あたしらはなつみのこと家族だと思ってるのに、なつみはそうじゃないんだ❗️尸魂界に帰ったら、あたしらのこと忘れちゃうんだよ‼️」
「バカなこと言わないでよ❗️忘れるわけないじゃん‼️」
さすがになつみも怒った。
「絶対帰らせない。なつみはずっとここであたしらと暮らすの❗️帰れないようにしてやる‼️‼️」
リリネットはそう吐き捨てると、椅子をグッと引いて、席から離れて駆け出した。
「待って、リリネットちゃん‼️‼️」
なつみはそれを追いかけていった。
誰も止めはしない。
「…、これで皆もよくわかったかな」
藍染は、教習ビデオを見終わったようなタイミングと雰囲気で、話し始めた。
「なつみは、瀞霊廷に帰りたがっている。だがそれは、君たちと別れたいからではない。ならば、どうすれば良いと思う」
特に誰かに答えを求めたわけでもないので、自分で言う。
「そうだよ。一緒に行ってあげれば良いんだ。だけど、その時には彼女の会いたい者たちは居なくなっているから、慰めてあげなければね」
それはつまり、瀞霊廷を乗っ取るということ。そして、霊王宮への侵攻も。
「大事なのは、なつみが私たちと共にいることだ。場所じゃない。古に結ばれた外道な契約を打ち捨て、私たちは自由な世界を手に入れよう。あの子さえ居てくれれば、どんな景色の中だろうと、楽しく暖かいはずだ。
さて…、ふたりが帰ってくるまでの間に、ひとつ話しておこうか。虚圏の王バラガンを迎えに行く件について。誰か奴の居場所に心当たりがある者はいるかな」
リリネットは階段を駆け下り、廊下を走り、扉を力任せに押し開け、外に飛び出した。そして虚閃をバンバン撃ち始めた。
「ぅらぁッ‼︎たあッ‼︎」
なつみも外へ出てきたが、リリネットが手当たり次第に近くにある建物を破壊しようと、攻撃するのを見て、怯んでしまった。
「リリネットちゃん…ダメ」
とりあえず、取り押さえるべきだと思い、一歩踏み出そうとした時。
「なーんだ、敵がノコノコやってきて暴れてんのかと思ったら、リリネットの仕業かよ」
「こんなに壊しやがって、ド叱られても知らねぇぞ」
「離せよ‼︎‼︎」
リリネットを押さえ込んだのは、アパッチとミラ・ローズだった。もちろんスンスンも来ていた。足元で転がるリリネットを思い切り見下している。
「親切で止めてあげてるんですのよ。その口の聞き方は無いんじゃなくて?」
なつみも駆けつけた。
「ありがとう、3人とも。ごめん、リリネットちゃんお酒飲んで酔っ払ってるの」
「まぁ、悪酔いにも程がありますわ」
「従属官のくせに、ひとりだけパーティーに呼ばれたかと思ったら、この様かよ。ホント、無礼だな、お前」
「あたしとあんたらを一緒にすんな!」
「ま、そうだろーが、こんだけ暴れちまったら、二度目は無ぇだろーな」
リリネットはキッとアパッチを睨んだ。
「んだよ、その目。やんのか⁉︎」
挑発したが、すぐにミラ・ローズが制した。
「ケンカはやめな。スタークがキレたら事だ」
「チッ…」
それもそうである。
4人に囲まれると、もう暴れられないリリネットは大人しくなってくれた。立たせてあげる。
「どうしてこんなことになったんだよ。楽しい飲み会のはずだろ」
「そうなんだけど、ぼくが、『帰りたい』って言っちゃったんだ」
「部屋にか?そりゃ今日は疲れたろうから、早く戻りたくなんだろ。そんなんで怒るとか、マジガキだな」
「そんな言い方やめて、アパッチ。違うよ。部屋じゃなくて、尸魂界にだよ。帰りたくなって、泣いちゃって」
「はぁ⁉︎」
これにはアパッチだけでなく、あとの2人も驚く。
「それは、怒っても仕方ありませんわ」
「ごめん…。」
「お前まで飲んだのか?」
「飲んでないよ。市丸隊長が、前に撮ってた写真とか、いろいろ見せて、思い出話とかしてたから。それで懐かしくなって、無意識に言っちゃってた。ポロッと言っちゃったらさ、どんどん気持ちがそっちに向いちゃって、止められなくなってた。でもわかってほしいよ。虚圏に居たくないとか、みんなが嫌いとか、そんなんじゃなくて、家に帰りたいだけなんだって。好きな人に会えないの、やっぱりほんとは、すごくツラいんだもん」
この言葉を唇と噛んで聞いていたリリネットが返す。
「なつみの家はここだよ。あたしたちと暮らす家だよ。向こうのことなんか知らない!今はスタークのことが好きなんでしょ。だったら、スタークで良いじゃんか。迎えにもこない男なんか、忘れちゃえば良いじゃん‼︎」
「…、あの人は、任務のことわかってくれてるから来ないだけだよ。きっと。会えば、離れたくなくなるから」
「だったら、会っちゃダメ!ちょっとだって会っちゃダメ!スタークにしてよ。スタークだってなつみのこと好きじゃん。大好きじゃん。帰んないで、なつみ」
リリネットはなつみに縋り、抱きついた。それに応えて、なつみもリリネットの背に腕を回す。
「引き止めようとしてくれる気持ち、とっても嬉しいよ、リリネットちゃん」
「なら行かないで」
「うん。まだ行けないよ。リリネットちゃんが仕事増やしてくたから」
「あれが終わっても‼︎」
「街づくりって、終わりが無いんだよね…」
「じゃあずっと居て」
「……」
「途中で投げ出さないって言った‼︎」
どう宥める言葉を紡いだら良いのか、わからなかった。本心を言えば、またリリネットを傷つけることになる。リリネットにとって、仲間に離れられることがどれだけ辛いことなのか、なつみは少しだけでも知っていたから。
だが、ズバリと言ってくれた人がいた。
「ワガママも大概にしたらどうですの?」
スンスンだ。
「あんたに関係無いでしょ!口挟まないでよ!」
「そうですけど、私もなつみを好いていますから、この子が困っているなら、黙ってはいられませんの」
リリネットとなつみは少し身体を離した。
「スンスン」
「なつみがいずれ尸魂界に帰るのは当然ですし、スタークと結ばれることもありませんわ。だって、死神ですもの。結局私たちとは住む世界が違いますわ」
フンと澄まして簡単に言い放った。
「おいおい、言い過ぎじゃねぇか?」
リリネットの顔が、また泣き出しそうに険しくなった。
「本当のことですもの。はっきり言ってあげるのが本人のためですわ。それに、視野の狭さも鬱陶しいですし」
「まぁ、そうだな」
ミラ・ローズが面倒臭そうだが、リリネットに話しかけてくれる。
「あのな、リリネット。あたしらは藍染様に従って、ここに集まってんだ。それは、あのお方の理想の世界に共感してるからなんだよ。その目標が達成されれば、虚の居場所が虚圏っていう縛りから解放されて、どこへだって好きに行けるようになる。死神から狙われない、もっと自由な生き方ができんだよ。そうなれば、お前だってなつみについて尸魂界にだって行ける。計画がうまくいけば、誰とも別れることはねぇんだよ。わかったか。ピーピー泣くなよ、面倒臭ぇ。なつみを仲間だと思ってんなら、信じてやれ」
コツンと、ミラ・ローズはリリネットの頭に優しい拳骨を食らわした。
クスンと鼻を啜ってから、リリネットはなつみを見つめた。
「なつみ、なつみはあたしたちのこと見捨てたりしない?」
「しないよ」微笑んで、なつみは首を横に振った。「ミラ・ローズの言う通りだよ。そうそう、ぼくが帰るときは、リリネットちゃんも一緒に連れてってあげなきゃね。スタークさんも、みんなも。ぼくたちは死神と虚の架け橋になって、仲良く暮らせるおっきな世界を目指すんだもんね。仕事だからーじゃなくて、生き方って言わなきゃだ。そうだね。まだ春水さんと会っちゃダメだ。会えたら、にゃふにゃふしちゃって、息抜きどころか骨抜きされて、動けなくなっちゃう。帰っちゃダメだ❗️隊長たちも来たし、気持ち切り替えなきゃ❗️ぼくの今のお家はここ。藍染隊長が良いよって言ってくれるまで、ここでがんばらなきゃ❗️」
パンパンと、なつみは自分の両ほっぺを叩いて、気合いを入れ直した。それでなつみの視線が虚圏に戻されたのを、4人の破面は確認できた。
「よかったな、リリネット。これで安心できたろ」
「うん」
「さっさと会場に戻られたら?せっかくのご馳走が食べ尽くされてしまうんじゃなくて?」
「あ❗️ゾマリんがタルト焼いてくれたって。デザート逃すなんてありえないよ❗️急ごう、リリネットちゃん❗️早くしないと、ノイトラかヤミーあたりが、ぼくたちの分まで食べちゃうって❗️」
「良いよなー。あたしらにも分けてくんねーかな」
アパッチの何気なしに言った文句が、なつみの心に刺さった。
「…、みんなで一緒に行こうか」
「いけませんわ。私たち、呼ばれてませんもの」
「そうだ。ふたりだけで行け。アパッチも、余計なこと言うなよ」
「だってよ」
「なつみ」
なつみは顎に手をやって、考える。これは、悪い顔。
「赤信号も、みんなで渡れば怖くないってね😏」
「おいおい💧」
「知りませんわよ、怒られても」
「やめといた方が良いのはわかんだけど、面白そーだな‼︎」
「大丈夫。ぼくが藍染隊長からみんなを守ってあげる。つか、パーティーなんだから、人は集まるもんなんだって。お料理足りなくなったら、ぼくが作るし。行こ行こっ」
どうするつもりか見当のついていないリリネットの手を取って、なつみは駆け出した。
「ふふふッ😏」
「良いのかな」
「いーのいーの。ついておいで、3人とも。そんで、行きすがら、仲間を増やすぞ。へへへ😏」
「悪ぃ顔💧」
「藍染隊長はぼくをイジメて遊ぶんだぞ。市丸隊長も。ちょっとくらいこっちから困らせてやっても、良いって。やり返してやろーぜ❗️ご馳走は、みんなに分け与えて然りだ❗️祝いの席だし。みんなでぶち上げお祭りパーリナイしよーぜ❗️Hooooo〜✊🥳」
ふたりが帰るまでと思われていたが、何人になることやら。
案外パーリナイがあっさり受け入れられてしまい、若干の拍子抜けをしたが、その夜はパーリナイであった。スピーカーに繋いだDJ なつみの伝令神機からチョイスされるご機嫌ダンスチューンで、ダンスフロアは大盛り上がり。
「ビバナミダ こぼれおちてゆけばいいじゃん
無駄じゃない
止まらない 今の君が好き
ナミダナミダ そうなんだ
その涙 僕にゆだねてくれないか
七転び八起き
共に行く!また最高って聞かせて
ナミダナミダ 再見!」
「岡村ちゃんも良いよね🤩」
料理はみんなで分け合いやすいように、小さくカットされて、大皿に盛られた。お酒もみんなで飲む。
「もー、ぼくがパイナップル好きって知っての所業❓❓サイコーなんだけど、このタルト😋💓」
「気に入ってもらえて何より」
「夏だね〜。後でレシピ教えてね。あ、リリネットちゃん、おいでおいで。これ食べてみ〜。ヤバたんだよ。あーんして」
「あーん」
「どや!」
「うまっ‼️」
「だらー!ほれー、ゾマリん様最強説ここに有りだてマジ!アモール‼️」
「それでシラフというのだから、なつみもそこそこ最強だぞ」
「んー!曲終わるだに、次はね、アバ行くかいな、アバ!ちょっともー、ここさー、ミラーボール無いの⁉︎」
「なつみが鬼道とかいうので何か出したら?」
「すぅげぇ適当言うじゃん」
「夏休みの自由研究課題として、リリネットにミラーボールを製作させたら?」
「もっと適当言うじゃないすか、藍染隊長😙💧」
「なつみ、あとで一緒に踊ってくれないか。いつか君が誘ってくれた時のように、また君と踊りたいんだ」
それは夢現天子の能力をお披露目した、あの時のことだろう。
「ふふっ、普通、こんな時間の大騒ぎ、偉い人は止めに入るものじゃないんですか?『喧しいわーッ💢』て🤭」
「総隊長ならね。でも僕は違う。君がよく言うだろう?僕がどんなだって」
藍染はなつみを後ろから抱きしめて、ゆらゆらメロディーに合わせて身体を揺らす。
「わーるもの♪」
こちょこちょこちょーっ
「ぎゃはははははーっ🤣」
「鬼の居ぬ間に洗濯だよ。こっちだって羽を伸ばしたいんだ」
「藍染隊長、表裏、ありすぎ‼️(笑)」
そろそろ疲れて横になりたいと、ダンスパーティーからお先に失礼して、自室に戻ることにしたなつみ。玄関の前には何故かスタークの姿があった。
「あれ、どうしたの?中入らないの?」
「ん…、お前のこと待ってたんだ」
「用事なら踊りながらでも聞いたのに。…そういえば早々に姿消してたっけ。人混み嫌い?」
「そうだな」
スタークの前に到着。にっこり笑って見上げる。
「なぁに?😊」
壁にもたれていたスターク、なつみを抱き寄せてしまった。
(⁉️///)
彼の胸に両手とほっぺがくっついてしまう。
「あの💦///」
もっと密着するように、スタークの腕がなつみの腰を引き寄せる。
「んん😣///」
戸惑ってうまく動けない。
「なつみ…」
なつみの髪に口付ける。
(ダメダメダメダメダメ😖💦)
「ゲッ⁉️スターク、何してんの‼️うわッ」
「あーかーん。邪魔したらアカンわ。ちょっとここで待っとろ」
「そ、そうだね。マジかー。スタークもやるじゃん。ぶちゅっといっちゃえ‼︎食っちまえ‼︎」
「スタークさん、こんなとこで、恥ずかしいよ。あと、その、お話があるとかじゃないの?///」
胸の鼓動が早まる。
「なつみ、俺も、お前にどこにも行って欲しくない。離れたくねぇよ」
リリネットの涙ほど強くは伝わらないが、同じ重さを感じる。
「…、ありがとう。スタークさんの気持ち、嬉しいよ」
「返したくねぇ。お前の彼氏のとこに」
それは受け付けられないお願いだった。だから、なつみは何とか逃げることにした。
「なつみ何してんのかな、ケツ振って」
「下から抜けて、逃げようとしてんねんな。けど、スタークくんがうまいこと力入れてるもんで、出られへんねん。静かな戦いやな(笑)」
「はな、はなせぇ💢」
「ヤダ」
「んぐぐぐぐ💢」
「ダメだ」
スタークは内心思っていた。もっと激しく抵抗してくれたら燃えて、勢いに任せて抱いてしまい、キスだって奪いにいく気にもなれただろうに。なつみがうねうねと逃げようとするから、変に遊びに変わってしまった。
「はなせー❗️」
「帰さねぇ」
右脚をピーン、ピーンと伸ばして勢いよく抜けれないものか。ムリか。