第九章
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大仕事をするとどっと疲れてしまい、身体の組織がお休みモードに切り替えていくと、藍染に抱きついたまま、すーっと眠ってしまった。
「おやおや、こんなところで」
市丸と東仙がそばに来た。
「なつみちゃん、お部屋に連れて行きましょうか」
「ああ、頼む」
市丸が、藍染からなつみを引き取り、彼女を抱き上げた。
「よくお眠り。良い夢を」
藍染はなつみのほっぺを、指の背で撫で、そして微笑んだ。
「こちらの生活に、これだけ捧げてくれるとは。嬉しいですね」
「要も撫でてやると良い。あたたかいよ」
「ふふ、はい」
東仙も、「よくできました」と気持ちを込めてほっぺを包んでくれた。
「むにゃむにゃ」
「笑っているね」
市丸は、トンと一度上げてなつみを抱え直した。その時。
「お前たち、なつみをどうするつもりだ」
声がした。
「君は本当に不思議な存在だね。主が疲労で眠っているというのに、元気そうだ」
ムッちゃんが3人の前に、不機嫌な顔をして現れた。
「愛する者から切り離され、どれほど寂しい夜を過ごしているのか、お前たちには想像できないらしい。尸魂界へ帰してやれ。ここに住むことが仕方のないことなら、この子はその決まりを受け入れられるだろう。だがな、たまにはあちらに帰らなければ、心が病んでしまうぞ。相当虚の力も体内に入り込んでしまっている。苦しみに敏感になり、思いやる心を忘れてしまえば、お前たちの愛するこのなつみは居なくなってしまうんだぞ。わかっているのか」
先程までの優しい眼差しが、藍染の顔から消えた。
「忠告をありがとう。だけど、心配には及ばないよ。彼女の『夢を見る』力は何にも勝る。試練となる苦しみも、乗り越えられるだろう。私たちがついているしね」
「その『私たち』が試練となるんだろう」
さっと踵を返して藍染は歩き始めた。ムッちゃんに振り返ることなく、言葉を残していく。
「疲れただろう。君も休め。目標達成には行動と、その行動を起こす身体が必要だ。その身体を支えるのが精神だということも、わかっているよ」そしてやっと振り返る。「私たちはなつみを育ててやりたい。それだけなんだ」
ムッちゃんは、体の横でグッと拳を握り、ピクリと顔をしかめてから、消えた。
なつみを抱えて、市丸がふたりの部屋の前に着くと話しかけられた。
「ねぇ、なつみどうしたの?」
リリネットだ。
「大丈夫。寝てるだけや。偉い能力使ってしもうたから」
「力を貸そうか」
スタークもいる。
「ありがたいけど、こっちやなしに、あっちに行ってくれへん?準備するらしいで、手伝って欲しい言われてるんよ」
「準備?何の?」
「イヤやなぁ。決まってるやん。今日からボクらも住むんやで」
「あ〜」
リリネットとスタークは何のことやら、なんとなくわかったよう。
「そういうとこなら仕方ねぇな。行くぞ、リリネット。藍染様のためだ」
「うん。じゃあね、市丸。あんたも早くこっち合流しろよ」
リリネットは手が塞がっている市丸のために、ドアを開けてくれた。
「ありがとう。これからよろしゅうな、お隣さん」
「なつみに変なことしたら、すっ飛んでくからな❗️覚悟しとけよ❗️」
「はいはい」
ベッドに寝かせてやる。
「んー…」
「無茶させてもうて。ムッくんが怒るんも、無理ないわ」
なつみの前髪をそっと横に流す。
「キミが帰るとき、ボクは…」
時が経つ。ここまで来てしまった。
市丸はやや伏せた。
「帰れる。なつみちゃんは、ちゃんと京楽さんとこ帰れるで」
なつみの手を握り、きゅっきゅと小さく振った。
「ボクがキミの未来を護ったる」
目が覚めた。
「むはっ」
何時だーと、時計を手繰り寄せ、確認。
「ぶわっ」
夜ご飯の時間だ。
「寝ちゃったー💦」
あとで上手に寝れるか心配しながら、顔を洗い、廊下に出た。
「ん。そっか。今日から市丸隊長と寝るんだ。あ、ちょい待ち」
独り言を言いながら、部屋へ引き返す。
「ほらぁ、ベッドくっ付いてる。ダメダメ。そうはいくかってんだ」
ベッドをずるずると引っ張り、きっちり離した。
「これで良しっ❗️さて、ご飯作るぞー」
また出ていった。
キッチンに近づくと、鼻腔を刺激する良い香りが、なつみの鼻をヒクヒクさせた。
「くんくんっ。あれ、良い匂い」
ひょこっと顔を覗かせると、そこには。
「わぁ❗️ごちそーだ❗️」
サラダ、スープ、パン、ステーキなどが用意されていた。
「やぁ、良いタイミングで起きてこられたね。ちょうど、全部の料理を仕上げたところだよ」
そう言ったのは、エプロンで手を拭くスマートな東仙。
「すごいです❗️これ、全部東仙隊長が❓」
「いや、何人かに手伝ってもらったよ。ゾマリが一番頼りになったかな」
「ほぉ❗️もー、良いタイミングじゃないですよ、もっと早く叩き起こしてくれれば、ぼくもお手伝いできたのに」
「疲れているところを起こせるわけないだろう。さぁ、手伝ってくれると言うなら、料理の配膳をお願いしようかな」
「はいっ❗️✋」
ピシッと手を上げてお返事した。
ダイニングテーブルのある会議室に行って、再びビックリ。部屋はいつもよりピカピカに掃除されており、キラキラと輝いて見える。それに、椅子が3脚新たに加わっていた。
「すごいじゃん✨」
台車を押しながら部屋を見渡す。
「起きたか、なつみ。パーティーを寝過ごさなくて、良かったな」
「そんな言い方しなくても良いじゃないか。なつみ、今日はすごく頑張ったんだね。気付いたら、壁がもう完成していて、驚いたよ。倒れるのも無理ない。お疲れ様」
ノイトラとザエルアポロは、お皿やカトラリーを並べていた。
「えっへへ。ぼくもびっくりだよ」
なつみはサラダボウルとトングを持った。
「ドレッシングかかってるよね」
「かけてある。私が作ったものだ」
「いやっは〜、アモールドレッシング」
ゾマリ特製には、なんでもアモールを付けておく。
「なつみは何を飲む?みんなはワインにするが、なつみは飲まないだろう。ジュースか?」
ゾマリがグラスを磨き、光に当てて汚れを探し、また磨きながらきいてきた。
「ぼくにワインは絶対ダメ❗️」蘇る、酔っ払いキス魔事件。「ぶどうジュースも置かないで❗️」リスクは避ける。「祝いの席で大暴れするわけにいかんのだ」
「何やらかしたんだよ、ワインで💧」
「きかないで❗️」
お掃除道具を片付けてきたスタークが、なつみの後ろから尋ねた。
「リリネットちゃんもワイン飲まないからね❗️」
「何でだよ❗️」
スタークといっしょにいたリリネットに、急に飛び火した。
「お酒が似合わないから❗️😤」
「くっだらねぇ理由付けんなよ。あたしもワイン飲むの❗️」
「酔っても知らないよ❗️」
トングでビシッとリリネットを指す。
「ガキじゃないんだから、悪酔いなんかするかよ❗️なつみのジュース持ってきてあげるから、とっとと注文言え❗️」
「りんご❗️」
「あいよーっ‼️」
リリネットは注文を承り、くるりと回れ右して出口へ向かう。
「お茶も持ってきてあげてー」
「あいよーっ‼️」
ザエルアポロの追加注文が入った。
「なつみ汁もなー」
「あいよーっ‼️」
「いらねぇつってんだよ❗️いっつもお前それだな❗️」
ノイトラの注文も通ってしまったらしい。
「わかったよ」だが、なつみの文句を聞き入れてくれるらしい。珍しい。「やっぱいらねー」
「あいよーっ‼️」
ラストオーダー終了。
「食後にするからよ😏」
「うおいッ」
トングでツッコんだ。カチカチッ。
テーブルのセッティングも完了。パーティーの出席者も全員席に着いた。なつみは市丸の隣り。藍染はお誕生日席。
「では、私たちの新たな門出を祝して、乾杯しようか」
藍染の言葉に、みんなグラスを持つ。
(ほんとにワインで乾杯するの?リリネットちゃん)
(うるさいなぁ。飲むったら飲むの❗️)
テーブルを挟んだ斜め前に座るリリネットに、こそこそ話しかける。
「ンンッ」
ギクッ
藍染が咳払いをして注意したため、厳しい面持ちでピシッと背筋を伸ばしたふたり。
(好きにさせたり。キミがお酒飲まんければ、何も起きん)
(むぅー)
「なつみ、顔」
これ(ー公ー)に注意された。なので。
「😁‼️✨」
ワザとらしく笑ってみせた。だが。
「やりすぎ」
「じゃ、どんな顔す」
「乾杯」
「乾杯」「うぉっ、か、かんぱい❗️💦」
なつみが言ってる途中を遮って乾杯されてしまった。みんなクスクスしてひと口味わう。ウルキオラは「クッ」。
「酷い。酷いっす、藍染隊長」
「みんな構えて待ってる最中に、変なやり取りする方が酷いわ」
「ヘンじゃないもん❗️」
言われた藍染はワインの後味を楽しんでいる。
「まともな音頭を取らせてくれない君の方が酷い🍷」
「月並みなスピーチ聞かされるよりマシです〜、っていうのは、心の中に留めておいてあげます〜」
「口から出てるよ、しっかりとね」
そのりんごジュース、実はアルコール入っているのでは?いや、みんなでこうして食事ができて、舞い上がっているだけだろう。
「要、なつみの豆腐ハンバーグの付け合わせに、ししとうのソテーも入れておいたかい」
「待て待て待てーい❗️やめーい、そこのやり取りぃ❗️」
反撃されてしまった。
「フフッ、お作りしましょうか」
「いーやー❗️いりませんてー❗️ご勘弁をー❗️藍染隊長ー❗️東仙隊長ー❗️」
「騙されたと思って食べてごらん。今日は大丈夫かもしれないよ(笑)」
「ねぇ、ほんと、みんなさ、藍染隊長が極悪人だってこと知らないんじゃない?この人、マジで悪いって。見たでしょ、今の。ぼくをハメようとしてんだよ。止めてよ、この悪巧み❗️」
何とも言えない破面たちに助けを求めても仕方がない。
「なつみがいると、どんな場所も賑やかで楽しいね。要、ししとうの用意☺️」
「だめぇーッ❗️藍染さまぁーッ❗️😭💦」
「藍染隊長、なつみちゃんイジメんの、ほどほどにしてあげてください」
「市丸隊長🥹」
ありがたい、助け舟だ。
「ボクがイジメる番が回ってきませんから」
デュクシッ
回ってきた、回ってきた。
食事は進み、お酒も進む。会話は弾み、尸魂界出身組が揃ったものだから、なつみがわざわざ話してこなかったエピソードを、3人は破面たちに聞かせてしまった。
「もう❗️そんなペラペラ話さないでくださいよ❗️言ったじゃないですか。ぼくは全く覚えてないんだから❗️」
「覚えてなくても、あの子らが嘘言うわけないもん。あったんよ」
「なぁ、そんなに疑うなら、今飲んじまえば良いだろ。ほら」
「飲まないって❗️ぼくには心に決めた人がいるっつの。違う人とチューするもんか❗️」
「残念だなぁ」
「残念じゃないよ😤」
「でもなぁ、こんだけ一緒に生活しとるんやから、そろそろパンツの1枚も、ポロッと見せびらかしてるんとちゃうの?」
「してませんよ❗️」
「だったら、そろそろかもしれないよ」
「無いですって‼️」
「いちご柄なんだっけ」
「何で東仙隊長が知ってるんですかぁ❗️」
「怒ることないじゃないか。私には、どんなものかわからないんだから」
「ぼくのパンツ情報が届いてることが問題なんです❗️」
「瀞霊廷通信の編集部に、そんな話が舞い込んでくるだけだよ」
「垂れ込みは文だけでなく、写真でも届いてたそうじゃないか」
「うそぉ⁉️どんなっすか‼️」
「さぁ」
「くーッ、都合の良い時だけ目が見えない人ぶるんだから」
「君だって都合よく性別を変えるじゃないか。大人にも子どもになるようだし」
「むーんッ‼️‼️」
「どんな歯の食いしばり方やねん😅」
「なつみはモデルの活動もしていたんだ。だから、盗撮だけじゃなく、正規の写真もたくさん出回っているんだよ」
「へぇ、それは見てみたいですね」
「見なくて良いの‼️👉」
「せやせや。ボク、伝令神機になつみちゃんの写真よーさん保存してるで、見せたるわ」
「おぉ、見せろ見せろ」
市丸は席を立って、エスパーダの方へ行き、伝令神機をテーブルの上に差し出した。
「こんな感じや。かわええやろ」
操作をして見せてあげるが。
「小さくて見にくいね。そうだ。市丸、ちょっとそれ貸してよ」
「ええよ」
ザエルアポロに伝令神機を渡す。
ピッピッピッ
何やらリモコンで操作すると、スクリーンが降りてきた。そしてデータがプロジェクターに飛ばされた。なつみの写真が、デカデカと映し出される。
「うぎゃッ🫣」
恥ずかしくなり、本人は目を覆う。
「ありがとう」
ザエルアポロが持ち主に伝令神機を返す。
「便利やねぇ」
市丸がポチポチすると、次々にバイトで撮った写真が流れる。
それが続くと、あるデータにたどり着いた。
「あ、これは動画や。再生できるんかな」
「音も入るはずだよ。スタート押してみて」
再生ボタンを押すと流れてきたのは、音楽祭の映像で、なつみが『プラチナ』を歌っている姿だった。
「なつみ、ノリノリじゃん」
「尸魂界はこんなことできるぐらい、平和ボケしてんのな」
「これよりも、男性死神協会で歌ったトリの録画は残ってないんですか?」
「あるで」
「なら、そっちにしてください❗️ぼくのかっこいいヤツ❗️」
「これが終わったらだ」
そしてリクエストが通り、なつみの男バージョンも、みんなに見てもらえた。
「楽しかったなぁ、あの日。もう随分経つんだ…」
懐かしい瀞霊廷での生活が、心いっぱいに思い出される。このノスタルジーに包まれ、なつみは思わず口にしてしまった。
「帰りたい…」
「おやおや、こんなところで」
市丸と東仙がそばに来た。
「なつみちゃん、お部屋に連れて行きましょうか」
「ああ、頼む」
市丸が、藍染からなつみを引き取り、彼女を抱き上げた。
「よくお眠り。良い夢を」
藍染はなつみのほっぺを、指の背で撫で、そして微笑んだ。
「こちらの生活に、これだけ捧げてくれるとは。嬉しいですね」
「要も撫でてやると良い。あたたかいよ」
「ふふ、はい」
東仙も、「よくできました」と気持ちを込めてほっぺを包んでくれた。
「むにゃむにゃ」
「笑っているね」
市丸は、トンと一度上げてなつみを抱え直した。その時。
「お前たち、なつみをどうするつもりだ」
声がした。
「君は本当に不思議な存在だね。主が疲労で眠っているというのに、元気そうだ」
ムッちゃんが3人の前に、不機嫌な顔をして現れた。
「愛する者から切り離され、どれほど寂しい夜を過ごしているのか、お前たちには想像できないらしい。尸魂界へ帰してやれ。ここに住むことが仕方のないことなら、この子はその決まりを受け入れられるだろう。だがな、たまにはあちらに帰らなければ、心が病んでしまうぞ。相当虚の力も体内に入り込んでしまっている。苦しみに敏感になり、思いやる心を忘れてしまえば、お前たちの愛するこのなつみは居なくなってしまうんだぞ。わかっているのか」
先程までの優しい眼差しが、藍染の顔から消えた。
「忠告をありがとう。だけど、心配には及ばないよ。彼女の『夢を見る』力は何にも勝る。試練となる苦しみも、乗り越えられるだろう。私たちがついているしね」
「その『私たち』が試練となるんだろう」
さっと踵を返して藍染は歩き始めた。ムッちゃんに振り返ることなく、言葉を残していく。
「疲れただろう。君も休め。目標達成には行動と、その行動を起こす身体が必要だ。その身体を支えるのが精神だということも、わかっているよ」そしてやっと振り返る。「私たちはなつみを育ててやりたい。それだけなんだ」
ムッちゃんは、体の横でグッと拳を握り、ピクリと顔をしかめてから、消えた。
なつみを抱えて、市丸がふたりの部屋の前に着くと話しかけられた。
「ねぇ、なつみどうしたの?」
リリネットだ。
「大丈夫。寝てるだけや。偉い能力使ってしもうたから」
「力を貸そうか」
スタークもいる。
「ありがたいけど、こっちやなしに、あっちに行ってくれへん?準備するらしいで、手伝って欲しい言われてるんよ」
「準備?何の?」
「イヤやなぁ。決まってるやん。今日からボクらも住むんやで」
「あ〜」
リリネットとスタークは何のことやら、なんとなくわかったよう。
「そういうとこなら仕方ねぇな。行くぞ、リリネット。藍染様のためだ」
「うん。じゃあね、市丸。あんたも早くこっち合流しろよ」
リリネットは手が塞がっている市丸のために、ドアを開けてくれた。
「ありがとう。これからよろしゅうな、お隣さん」
「なつみに変なことしたら、すっ飛んでくからな❗️覚悟しとけよ❗️」
「はいはい」
ベッドに寝かせてやる。
「んー…」
「無茶させてもうて。ムッくんが怒るんも、無理ないわ」
なつみの前髪をそっと横に流す。
「キミが帰るとき、ボクは…」
時が経つ。ここまで来てしまった。
市丸はやや伏せた。
「帰れる。なつみちゃんは、ちゃんと京楽さんとこ帰れるで」
なつみの手を握り、きゅっきゅと小さく振った。
「ボクがキミの未来を護ったる」
目が覚めた。
「むはっ」
何時だーと、時計を手繰り寄せ、確認。
「ぶわっ」
夜ご飯の時間だ。
「寝ちゃったー💦」
あとで上手に寝れるか心配しながら、顔を洗い、廊下に出た。
「ん。そっか。今日から市丸隊長と寝るんだ。あ、ちょい待ち」
独り言を言いながら、部屋へ引き返す。
「ほらぁ、ベッドくっ付いてる。ダメダメ。そうはいくかってんだ」
ベッドをずるずると引っ張り、きっちり離した。
「これで良しっ❗️さて、ご飯作るぞー」
また出ていった。
キッチンに近づくと、鼻腔を刺激する良い香りが、なつみの鼻をヒクヒクさせた。
「くんくんっ。あれ、良い匂い」
ひょこっと顔を覗かせると、そこには。
「わぁ❗️ごちそーだ❗️」
サラダ、スープ、パン、ステーキなどが用意されていた。
「やぁ、良いタイミングで起きてこられたね。ちょうど、全部の料理を仕上げたところだよ」
そう言ったのは、エプロンで手を拭くスマートな東仙。
「すごいです❗️これ、全部東仙隊長が❓」
「いや、何人かに手伝ってもらったよ。ゾマリが一番頼りになったかな」
「ほぉ❗️もー、良いタイミングじゃないですよ、もっと早く叩き起こしてくれれば、ぼくもお手伝いできたのに」
「疲れているところを起こせるわけないだろう。さぁ、手伝ってくれると言うなら、料理の配膳をお願いしようかな」
「はいっ❗️✋」
ピシッと手を上げてお返事した。
ダイニングテーブルのある会議室に行って、再びビックリ。部屋はいつもよりピカピカに掃除されており、キラキラと輝いて見える。それに、椅子が3脚新たに加わっていた。
「すごいじゃん✨」
台車を押しながら部屋を見渡す。
「起きたか、なつみ。パーティーを寝過ごさなくて、良かったな」
「そんな言い方しなくても良いじゃないか。なつみ、今日はすごく頑張ったんだね。気付いたら、壁がもう完成していて、驚いたよ。倒れるのも無理ない。お疲れ様」
ノイトラとザエルアポロは、お皿やカトラリーを並べていた。
「えっへへ。ぼくもびっくりだよ」
なつみはサラダボウルとトングを持った。
「ドレッシングかかってるよね」
「かけてある。私が作ったものだ」
「いやっは〜、アモールドレッシング」
ゾマリ特製には、なんでもアモールを付けておく。
「なつみは何を飲む?みんなはワインにするが、なつみは飲まないだろう。ジュースか?」
ゾマリがグラスを磨き、光に当てて汚れを探し、また磨きながらきいてきた。
「ぼくにワインは絶対ダメ❗️」蘇る、酔っ払いキス魔事件。「ぶどうジュースも置かないで❗️」リスクは避ける。「祝いの席で大暴れするわけにいかんのだ」
「何やらかしたんだよ、ワインで💧」
「きかないで❗️」
お掃除道具を片付けてきたスタークが、なつみの後ろから尋ねた。
「リリネットちゃんもワイン飲まないからね❗️」
「何でだよ❗️」
スタークといっしょにいたリリネットに、急に飛び火した。
「お酒が似合わないから❗️😤」
「くっだらねぇ理由付けんなよ。あたしもワイン飲むの❗️」
「酔っても知らないよ❗️」
トングでビシッとリリネットを指す。
「ガキじゃないんだから、悪酔いなんかするかよ❗️なつみのジュース持ってきてあげるから、とっとと注文言え❗️」
「りんご❗️」
「あいよーっ‼️」
リリネットは注文を承り、くるりと回れ右して出口へ向かう。
「お茶も持ってきてあげてー」
「あいよーっ‼️」
ザエルアポロの追加注文が入った。
「なつみ汁もなー」
「あいよーっ‼️」
「いらねぇつってんだよ❗️いっつもお前それだな❗️」
ノイトラの注文も通ってしまったらしい。
「わかったよ」だが、なつみの文句を聞き入れてくれるらしい。珍しい。「やっぱいらねー」
「あいよーっ‼️」
ラストオーダー終了。
「食後にするからよ😏」
「うおいッ」
トングでツッコんだ。カチカチッ。
テーブルのセッティングも完了。パーティーの出席者も全員席に着いた。なつみは市丸の隣り。藍染はお誕生日席。
「では、私たちの新たな門出を祝して、乾杯しようか」
藍染の言葉に、みんなグラスを持つ。
(ほんとにワインで乾杯するの?リリネットちゃん)
(うるさいなぁ。飲むったら飲むの❗️)
テーブルを挟んだ斜め前に座るリリネットに、こそこそ話しかける。
「ンンッ」
ギクッ
藍染が咳払いをして注意したため、厳しい面持ちでピシッと背筋を伸ばしたふたり。
(好きにさせたり。キミがお酒飲まんければ、何も起きん)
(むぅー)
「なつみ、顔」
これ(ー公ー)に注意された。なので。
「😁‼️✨」
ワザとらしく笑ってみせた。だが。
「やりすぎ」
「じゃ、どんな顔す」
「乾杯」
「乾杯」「うぉっ、か、かんぱい❗️💦」
なつみが言ってる途中を遮って乾杯されてしまった。みんなクスクスしてひと口味わう。ウルキオラは「クッ」。
「酷い。酷いっす、藍染隊長」
「みんな構えて待ってる最中に、変なやり取りする方が酷いわ」
「ヘンじゃないもん❗️」
言われた藍染はワインの後味を楽しんでいる。
「まともな音頭を取らせてくれない君の方が酷い🍷」
「月並みなスピーチ聞かされるよりマシです〜、っていうのは、心の中に留めておいてあげます〜」
「口から出てるよ、しっかりとね」
そのりんごジュース、実はアルコール入っているのでは?いや、みんなでこうして食事ができて、舞い上がっているだけだろう。
「要、なつみの豆腐ハンバーグの付け合わせに、ししとうのソテーも入れておいたかい」
「待て待て待てーい❗️やめーい、そこのやり取りぃ❗️」
反撃されてしまった。
「フフッ、お作りしましょうか」
「いーやー❗️いりませんてー❗️ご勘弁をー❗️藍染隊長ー❗️東仙隊長ー❗️」
「騙されたと思って食べてごらん。今日は大丈夫かもしれないよ(笑)」
「ねぇ、ほんと、みんなさ、藍染隊長が極悪人だってこと知らないんじゃない?この人、マジで悪いって。見たでしょ、今の。ぼくをハメようとしてんだよ。止めてよ、この悪巧み❗️」
何とも言えない破面たちに助けを求めても仕方がない。
「なつみがいると、どんな場所も賑やかで楽しいね。要、ししとうの用意☺️」
「だめぇーッ❗️藍染さまぁーッ❗️😭💦」
「藍染隊長、なつみちゃんイジメんの、ほどほどにしてあげてください」
「市丸隊長🥹」
ありがたい、助け舟だ。
「ボクがイジメる番が回ってきませんから」
デュクシッ
回ってきた、回ってきた。
食事は進み、お酒も進む。会話は弾み、尸魂界出身組が揃ったものだから、なつみがわざわざ話してこなかったエピソードを、3人は破面たちに聞かせてしまった。
「もう❗️そんなペラペラ話さないでくださいよ❗️言ったじゃないですか。ぼくは全く覚えてないんだから❗️」
「覚えてなくても、あの子らが嘘言うわけないもん。あったんよ」
「なぁ、そんなに疑うなら、今飲んじまえば良いだろ。ほら」
「飲まないって❗️ぼくには心に決めた人がいるっつの。違う人とチューするもんか❗️」
「残念だなぁ」
「残念じゃないよ😤」
「でもなぁ、こんだけ一緒に生活しとるんやから、そろそろパンツの1枚も、ポロッと見せびらかしてるんとちゃうの?」
「してませんよ❗️」
「だったら、そろそろかもしれないよ」
「無いですって‼️」
「いちご柄なんだっけ」
「何で東仙隊長が知ってるんですかぁ❗️」
「怒ることないじゃないか。私には、どんなものかわからないんだから」
「ぼくのパンツ情報が届いてることが問題なんです❗️」
「瀞霊廷通信の編集部に、そんな話が舞い込んでくるだけだよ」
「垂れ込みは文だけでなく、写真でも届いてたそうじゃないか」
「うそぉ⁉️どんなっすか‼️」
「さぁ」
「くーッ、都合の良い時だけ目が見えない人ぶるんだから」
「君だって都合よく性別を変えるじゃないか。大人にも子どもになるようだし」
「むーんッ‼️‼️」
「どんな歯の食いしばり方やねん😅」
「なつみはモデルの活動もしていたんだ。だから、盗撮だけじゃなく、正規の写真もたくさん出回っているんだよ」
「へぇ、それは見てみたいですね」
「見なくて良いの‼️👉」
「せやせや。ボク、伝令神機になつみちゃんの写真よーさん保存してるで、見せたるわ」
「おぉ、見せろ見せろ」
市丸は席を立って、エスパーダの方へ行き、伝令神機をテーブルの上に差し出した。
「こんな感じや。かわええやろ」
操作をして見せてあげるが。
「小さくて見にくいね。そうだ。市丸、ちょっとそれ貸してよ」
「ええよ」
ザエルアポロに伝令神機を渡す。
ピッピッピッ
何やらリモコンで操作すると、スクリーンが降りてきた。そしてデータがプロジェクターに飛ばされた。なつみの写真が、デカデカと映し出される。
「うぎゃッ🫣」
恥ずかしくなり、本人は目を覆う。
「ありがとう」
ザエルアポロが持ち主に伝令神機を返す。
「便利やねぇ」
市丸がポチポチすると、次々にバイトで撮った写真が流れる。
それが続くと、あるデータにたどり着いた。
「あ、これは動画や。再生できるんかな」
「音も入るはずだよ。スタート押してみて」
再生ボタンを押すと流れてきたのは、音楽祭の映像で、なつみが『プラチナ』を歌っている姿だった。
「なつみ、ノリノリじゃん」
「尸魂界はこんなことできるぐらい、平和ボケしてんのな」
「これよりも、男性死神協会で歌ったトリの録画は残ってないんですか?」
「あるで」
「なら、そっちにしてください❗️ぼくのかっこいいヤツ❗️」
「これが終わったらだ」
そしてリクエストが通り、なつみの男バージョンも、みんなに見てもらえた。
「楽しかったなぁ、あの日。もう随分経つんだ…」
懐かしい瀞霊廷での生活が、心いっぱいに思い出される。このノスタルジーに包まれ、なつみは思わず口にしてしまった。
「帰りたい…」