第九章
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資材調達も進み、基礎工事に取り掛かっているある日、リリネットがなつみを訪ねた。その時なつみは、道場のように広く使える部屋で、スタークを相手に斬術のトレーニングをしていた。
例え瀞霊廷を離れようと、鍛錬を怠ってはならない。実力を備えた猛者たちが、ここにはたくさんいる。できることは、仕事以外でもしっかりやっておかなければ。スタークの方も、他の破面と違い、力を斬魄刀のような物では持っていなかったため、新しく刀を支給してもらい、それを使う練習がしたかった。なつみはスタークに剣の扱いを教えつつ、自分の技を見直していく。彼のハンサムな顔立ちにも慣れ、目の保養には違いないが、始めの頃より落ち着いたやり取りができるようになっていた。
「見てー、ふたりとも!」
リリネットのお呼びに、ふたりの構えが下される。
「新しい服もらったんだ!どう?いーでしょー😁」
おしゃべりできるように、リリネットは部屋の中央へ、軽い足取りで駆けていった。
なつみはギョッとした。
「ちょっと、リリネットちゃん!確かにぼくが渡したのは大きかったみたいだけど、それはちっちゃすぎるよ!ちっちゃいというか、出し過ぎ‼︎」
「えー?そうかな」
右手を頭に、左手は腰に、リリネットはポージングをして見せた。
「周りのお姉さんたちに触発されたか知らないけど、男性陣から変に見られちゃうかもしれないよ。バッて攫われちゃったらどうするの。嫌な思いするのリリネットちゃんなんだよ。ぼくが助けに駆けつけてあげられるなら良いけど、そうじゃない時だってあるもん。お腹はしまいなさい!風邪ひく!」
「下は良いのかよ💧」
ほぼパンツなボトムスについて、スタークが指摘した。
「そのおパンツも!ズボン履きなさい!」
「もー、うるさいなぁ。母親みたいな言い方しないでよ。あたしはこれが良いの!動きやすいんだもん」
フンッと、リリネットはそっぽを向いた。
「なつみ、コイツの好きにさせてやれよ。どうせ聞きやしねぇ。それに、お前が心配することも起こんねぇだろうしな」
「どして、そんなこと言えるのさ」
不機嫌ななつみはスタークを見た。
「露出したところで、出るとこ全く出てねぇから」
欲情しない、と。
ドカッ‼️💥
「痛ッ‼︎‼︎」
「うるさい、スターク‼️」
失言に対し、リリネットがスタークのお尻にキックをかました。確かに動きやすい。
なつみは鼻からため息が漏れる。
「藍染隊長の趣味なのかなぁ、こういうデザイン…」
顔を引っ張りあってケンカするリリネットとスタークを見て思う。
「ほら、そうやって戯れてる間に、ポロッとしそうじゃん。それ、何で止まってんの?海軍の正義コートみたいに心意気?」
「はぁ?何言ってんの、なつみ(笑)」
リリネットは気にしていない。なつみは知らない。スタークは勘づいているが、興味が無い。心の存在を忘れるほど、強欲になった者の考えることなど。
壁の基礎ができると、今度は地上に、いよいよ石材を積んでいく作業となる。
「担当の区分けをしよう」
ザエルアポロの提案である。しかし。
「うんん。ここからは、ぼくひとりでやる」
「は⁉︎」
なつみはそんな無茶を言い出した。
「できるわけないよ。みんなでやっていこう。その方が確実だし、早くできる」
「うん。そうなんだけど、でも、ぼくひとりでやりたい」
ザエルアポロが止めても、なつみの考えは変わらない。
「どうして」
「ひとりでやれば、積み方が統一できるもん。欠陥が出にくくなると思う。下手に誰かがミスして、それを隠されたまま上まで積まれちゃうと、後戻りできなくなるからさ。だったら、ぼくがひとりで責任持って積み上げた方が綺麗だよ」
「それはそうだけど…」ザエルアポロは首を横に振る。「ダメ。君の小さな手では、何百年かかるかわからない。待ってられないよ」
なつみはその小さな掌を見てから、きゅっと握った。
「大丈夫。ぼくを信じて。ぼくもみんなを頼るから」
そう言って、虚夜宮の屋上へ向かった。
屋上の中央に着くと、なつみはちょこんとあぐらをかいて座る。指示を待つ十刃たちは、あまり近づかないようにと、なつみに言われた。遠くから見守るしかない。
「どうするつもりだ?」
こそこそと話す。集中できるよう、邪魔はできない。
「わからない。何か試したいと言って、僕が止めても聞かなかった」
斬魄刀を抜き、構える。霊圧を高め始めた。
「すー…」
深呼吸で心身を整える。まだまだ足りない霊圧。
「ふー…」
空気中からも霊気をかき集め、大放出する力を溜め込む。
「あの小さな身体がやってることとは思えないな」
「初めて会った頃より、アイツはかなり強くなってる。この環境が育てたんだろうが、それにしてもだよな」
願えば、運命はそちらに傾く。必ず。
そろそろ良いだろう、試してみても。失敗しても、それを成功に変えられる時間と支えがあるなら、恐るべきではない。可能性を広げるには、限界値をまず知るところにある。なつみはぎゅっと目を閉じた。
「従え、夢現天子。虚夜宮を壁で囲え」
ドカンと火山が噴火するように、下から込み上げた霊圧が、なつみの意思を境界線まで運んでいく。それは、向いている側だけでなく、左右も後ろもぐるりと1周して、届いていた。
カタカタカタカタ…
現地では、積まれた岩が動き出した。
「近づいちゃダメだからね」
旋風や疾風が吹き始める。それらが岩を持ち上げ、選び、適切な大きさや形へと切り出していく。岩たちも風も意思を持ち、自らの場所を決めて、ひとりではまっていくよう。なつみは壁の完成図を思い描き、向こうへ伝える。
「すげぇ…。本当にひとりでやってるのか、これ…」
「あんなに遠くのものを、しかも、あの数で。一度に神経を、こんなに分けて集中できるなんて、考えられない。考えられないけど、確実に操っているよね。なんて子なんだ、なつみ…」
少しずつ、岩が積み上がる。門となる開口部を残して、円形が生えてくるのが見える。
「積み木やってんじゃねぇんだぞ。バケモンだな」
「有能だと言ってやれ。藍染様に選ばれた子なんだ。奇跡をもたらす子なのだよ」
「無理を、していないだろうか」
「本当だ。気になるな」「なつみ、苦シソウ」
夢現天道子ではなく、夢現天子で能力を使っているなつみは、かなり気を配って壁を作っていた。大仕事にはそれなりの力を発揮しなければならないと思い、こちらにしたが、暴走も困るため、目を閉じて、異変にすぐ気付けるよう、全方向へ神経を研ぎ澄ましていた。
「ひとりで良いつったんだ。心配したところで、オレらにできることはねぇーんだろ」
「そーだよな。することねぇのに、何でオレらはここに集まってんだよ。見たとこ、順調そうじゃねぇか。遅っせーけど。今10㎝くらい積めたとこか?(笑)」
「馬鹿が。そこまで遅くはないだろう。しかし、ヤミーの言う通りだ。俺たちはもう、下に帰っても問題無いんじゃないか」
そう言ったウルキオラを、なつみを迎え入れた者たちとスタークが冷たい目で睨みつける。
「馬鹿なのは君も同じだ。僕らのために全力を注いでいるなつみを、放っておけるわけがないだろ」
「帰りたきゃ、勝手に帰れよ」
そう遇らわれては、少し意地になって残りたくなるウルキオラ。
「チ……」
1階分くらいには建っただろうか、なつみはいよいよガス欠模様。
「うぅッ…」
プツンと集中が切れて、斬魄刀を下ろした。終了の伝達を受け、積まれるのを待っていた岩はドンドンと資材置き場に返され、そして風が止んだ。
「ぐへぇ…、ちかれた😵」
仰向けで寝転び、その体制で刀を鞘に収めた。
「ぐぇー…」
もう何もしないぞといった感じに、大の字になる。
そこへ駆けつける仲間たち。
「なつみ!お疲れ様。大丈夫?」
ザエルアポロはすぐになつみの手を握って、霊力の残量を測った。
「くたくただぁ…。あんだけしか積めてないのに。不甲斐ないー。もうちょっとできると思ってたー😫」
脚をバタバタ。
逆の手をスタークが取る。
「充分だろ。とりあえず休憩して、回復しなきゃな」
「うん、ありがとう。ふふ、覚えてるね、スタークさん。ほんとにリリネットちゃんだったんだね〜」
「そう言ったろ」
あの時覚えた霊力を分ける方法を、再現するスターク。
そこに邪魔が入る。
「お前ぇひとりじゃ足んねーだろ」
ノイトラがスタークを押し退けて、なつみの手を奪ってしまった。
「…。」
「…。」
手を握ってくれるノイトラの顔を見上げて言う。
「ねぇ、それ握ってるだけ」
「あ⁉︎」
回道を施された覚えはあっても、与え方を知らなかったノイトラ。ただ寄り添ってくれただけ。
「気持ちは嬉しいけどね😊」
「んだよ、どうやるか教えろ‼︎」
「あっはは❗️」
「笑ってんじゃねぇ💢」
「木偶の棒はどいてくれるかな」
今度はノイトラが押し退けられて、ゾマリがなつみの手を取る。逆は、ザエルアポロから交代してハリベルが。
「教わればできるっつってんだろ!」
「お前の霊力を、澄んだなつみの身体に入れさせたくはない」
ノイトラはムカつきすぎて、片方吊り上がって開いた口が塞がらない。
「そこまで言わなくたって、ハリベルさん。ぼくの身体はもうだいぶここの空気を吸って、みんなみたいになってるはずだよ。リリネットちゃんとスタークさんの霊力も貰ってるし、純粋な死神じゃ、もうなくなってる。でもそんなこと気にしない。強くなれるならね。だから、後でちゃんとノイトラにも教えてあげる。傷つけるばっかりじゃ、ダメだもんね」
なつみはにっこり笑った。
「なつみ、なつみ。マダ疲レテル?」「俺たちもお前に分けたい」
「ありがとう、アーロニーロ。ほんとうに優しい子たちだよね。もう少し欲しいから、次によろしく」
「ウン!」「任せろ」
「頼もしいね。これでパワーチャージが済んだら、またやるよ❗️ぼく、もっともっとできるんだから‼️」
そんな前向きな発言に、ザエルアポロは止めたくなる。
「ちょっと、またやるっていうの?今倒れたばかりじゃないか」
「だぁーいじょーぶっ」
ザエルアポロの心配は、あっちへポイッ。
「倒れても、みんながいてくれるでしょ?助けてくれるから、大丈夫だよ。あ、でもそっか。いちお、今の積んである状態を確認してきてもらうのが先か。誰かにお遣い頼んでも良い?」
「俺が行こう」
なんとウルキオラが立候補。
「あら、ありがとう。ふふっ、ウルキオラも良い子😊」
「うるさい」
姿を消した。
「何だかんだ言って、アイツもなつみに興味あるのかもな。俺も行こうか」
「スタークさんは、ぼくのお仕事に興味があるんだね😄」
「フッ…、何にでもだ」
姿を消した。
「ッ///」
なつみは赤面した。
「まだ慣れてないのか」
ハリベルの洞察力。
「そうだよ❗️慣れないよ❗️今の笑い方見た⁉️もー、ちょーッ‼️///」
セクシー。言えないけど。ジタバタジタバタ。
「僕も見てきたいな」
「私もだ」
みんな、壁の出来具合が気になるらしい。
「じゃあぼくも‼️」
みんなが行くなら自分も行きたい。
「おぶってやろーか😏」
みんなが大事にからかうものだから、グリムジョーもそれに加わりたいらしい。せっかく一員になったのだから。
「もうそんなにぐったりじゃないよ。ちっちゃい子扱いしないで😤」
「チビだろ?(笑)」
「むぅ‼️」
それならばヤミーも乗っておかなければ。
「とっとと行こうぜ、こっちゃ退屈なんだ。散歩ぐらいしねーと、やってらんねーぜ」
「わぁ❗️じゃあじゃあ、ピクニックだね✨」
ヤミーの小言をなつみ流に翻訳すると、そうなってしまう。
「何でそーなるんだよッ」
「そうと決まれば準備しよう。ゾマリ、手伝って」
ザエルアポロはピクニックの荷造りに階下へ向かう。その背中に注文をつけるノイトラ。
「なつみ汁忘れんなよー」
「だぁから、いらないって、それぇッ‼️‼️」
注文のキャンセルは、果たして受け付けてもらえたのでしょうか。追加オーダーなら良いんだろうか?
「ゾマリーん❗️アモールクッキー入れといてー❗️」
これから楽しいピクニック。消費したエネルギーを取り戻しつつ、親睦を深めていこう。
例え瀞霊廷を離れようと、鍛錬を怠ってはならない。実力を備えた猛者たちが、ここにはたくさんいる。できることは、仕事以外でもしっかりやっておかなければ。スタークの方も、他の破面と違い、力を斬魄刀のような物では持っていなかったため、新しく刀を支給してもらい、それを使う練習がしたかった。なつみはスタークに剣の扱いを教えつつ、自分の技を見直していく。彼のハンサムな顔立ちにも慣れ、目の保養には違いないが、始めの頃より落ち着いたやり取りができるようになっていた。
「見てー、ふたりとも!」
リリネットのお呼びに、ふたりの構えが下される。
「新しい服もらったんだ!どう?いーでしょー😁」
おしゃべりできるように、リリネットは部屋の中央へ、軽い足取りで駆けていった。
なつみはギョッとした。
「ちょっと、リリネットちゃん!確かにぼくが渡したのは大きかったみたいだけど、それはちっちゃすぎるよ!ちっちゃいというか、出し過ぎ‼︎」
「えー?そうかな」
右手を頭に、左手は腰に、リリネットはポージングをして見せた。
「周りのお姉さんたちに触発されたか知らないけど、男性陣から変に見られちゃうかもしれないよ。バッて攫われちゃったらどうするの。嫌な思いするのリリネットちゃんなんだよ。ぼくが助けに駆けつけてあげられるなら良いけど、そうじゃない時だってあるもん。お腹はしまいなさい!風邪ひく!」
「下は良いのかよ💧」
ほぼパンツなボトムスについて、スタークが指摘した。
「そのおパンツも!ズボン履きなさい!」
「もー、うるさいなぁ。母親みたいな言い方しないでよ。あたしはこれが良いの!動きやすいんだもん」
フンッと、リリネットはそっぽを向いた。
「なつみ、コイツの好きにさせてやれよ。どうせ聞きやしねぇ。それに、お前が心配することも起こんねぇだろうしな」
「どして、そんなこと言えるのさ」
不機嫌ななつみはスタークを見た。
「露出したところで、出るとこ全く出てねぇから」
欲情しない、と。
ドカッ‼️💥
「痛ッ‼︎‼︎」
「うるさい、スターク‼️」
失言に対し、リリネットがスタークのお尻にキックをかました。確かに動きやすい。
なつみは鼻からため息が漏れる。
「藍染隊長の趣味なのかなぁ、こういうデザイン…」
顔を引っ張りあってケンカするリリネットとスタークを見て思う。
「ほら、そうやって戯れてる間に、ポロッとしそうじゃん。それ、何で止まってんの?海軍の正義コートみたいに心意気?」
「はぁ?何言ってんの、なつみ(笑)」
リリネットは気にしていない。なつみは知らない。スタークは勘づいているが、興味が無い。心の存在を忘れるほど、強欲になった者の考えることなど。
壁の基礎ができると、今度は地上に、いよいよ石材を積んでいく作業となる。
「担当の区分けをしよう」
ザエルアポロの提案である。しかし。
「うんん。ここからは、ぼくひとりでやる」
「は⁉︎」
なつみはそんな無茶を言い出した。
「できるわけないよ。みんなでやっていこう。その方が確実だし、早くできる」
「うん。そうなんだけど、でも、ぼくひとりでやりたい」
ザエルアポロが止めても、なつみの考えは変わらない。
「どうして」
「ひとりでやれば、積み方が統一できるもん。欠陥が出にくくなると思う。下手に誰かがミスして、それを隠されたまま上まで積まれちゃうと、後戻りできなくなるからさ。だったら、ぼくがひとりで責任持って積み上げた方が綺麗だよ」
「それはそうだけど…」ザエルアポロは首を横に振る。「ダメ。君の小さな手では、何百年かかるかわからない。待ってられないよ」
なつみはその小さな掌を見てから、きゅっと握った。
「大丈夫。ぼくを信じて。ぼくもみんなを頼るから」
そう言って、虚夜宮の屋上へ向かった。
屋上の中央に着くと、なつみはちょこんとあぐらをかいて座る。指示を待つ十刃たちは、あまり近づかないようにと、なつみに言われた。遠くから見守るしかない。
「どうするつもりだ?」
こそこそと話す。集中できるよう、邪魔はできない。
「わからない。何か試したいと言って、僕が止めても聞かなかった」
斬魄刀を抜き、構える。霊圧を高め始めた。
「すー…」
深呼吸で心身を整える。まだまだ足りない霊圧。
「ふー…」
空気中からも霊気をかき集め、大放出する力を溜め込む。
「あの小さな身体がやってることとは思えないな」
「初めて会った頃より、アイツはかなり強くなってる。この環境が育てたんだろうが、それにしてもだよな」
願えば、運命はそちらに傾く。必ず。
そろそろ良いだろう、試してみても。失敗しても、それを成功に変えられる時間と支えがあるなら、恐るべきではない。可能性を広げるには、限界値をまず知るところにある。なつみはぎゅっと目を閉じた。
「従え、夢現天子。虚夜宮を壁で囲え」
ドカンと火山が噴火するように、下から込み上げた霊圧が、なつみの意思を境界線まで運んでいく。それは、向いている側だけでなく、左右も後ろもぐるりと1周して、届いていた。
カタカタカタカタ…
現地では、積まれた岩が動き出した。
「近づいちゃダメだからね」
旋風や疾風が吹き始める。それらが岩を持ち上げ、選び、適切な大きさや形へと切り出していく。岩たちも風も意思を持ち、自らの場所を決めて、ひとりではまっていくよう。なつみは壁の完成図を思い描き、向こうへ伝える。
「すげぇ…。本当にひとりでやってるのか、これ…」
「あんなに遠くのものを、しかも、あの数で。一度に神経を、こんなに分けて集中できるなんて、考えられない。考えられないけど、確実に操っているよね。なんて子なんだ、なつみ…」
少しずつ、岩が積み上がる。門となる開口部を残して、円形が生えてくるのが見える。
「積み木やってんじゃねぇんだぞ。バケモンだな」
「有能だと言ってやれ。藍染様に選ばれた子なんだ。奇跡をもたらす子なのだよ」
「無理を、していないだろうか」
「本当だ。気になるな」「なつみ、苦シソウ」
夢現天道子ではなく、夢現天子で能力を使っているなつみは、かなり気を配って壁を作っていた。大仕事にはそれなりの力を発揮しなければならないと思い、こちらにしたが、暴走も困るため、目を閉じて、異変にすぐ気付けるよう、全方向へ神経を研ぎ澄ましていた。
「ひとりで良いつったんだ。心配したところで、オレらにできることはねぇーんだろ」
「そーだよな。することねぇのに、何でオレらはここに集まってんだよ。見たとこ、順調そうじゃねぇか。遅っせーけど。今10㎝くらい積めたとこか?(笑)」
「馬鹿が。そこまで遅くはないだろう。しかし、ヤミーの言う通りだ。俺たちはもう、下に帰っても問題無いんじゃないか」
そう言ったウルキオラを、なつみを迎え入れた者たちとスタークが冷たい目で睨みつける。
「馬鹿なのは君も同じだ。僕らのために全力を注いでいるなつみを、放っておけるわけがないだろ」
「帰りたきゃ、勝手に帰れよ」
そう遇らわれては、少し意地になって残りたくなるウルキオラ。
「チ……」
1階分くらいには建っただろうか、なつみはいよいよガス欠模様。
「うぅッ…」
プツンと集中が切れて、斬魄刀を下ろした。終了の伝達を受け、積まれるのを待っていた岩はドンドンと資材置き場に返され、そして風が止んだ。
「ぐへぇ…、ちかれた😵」
仰向けで寝転び、その体制で刀を鞘に収めた。
「ぐぇー…」
もう何もしないぞといった感じに、大の字になる。
そこへ駆けつける仲間たち。
「なつみ!お疲れ様。大丈夫?」
ザエルアポロはすぐになつみの手を握って、霊力の残量を測った。
「くたくただぁ…。あんだけしか積めてないのに。不甲斐ないー。もうちょっとできると思ってたー😫」
脚をバタバタ。
逆の手をスタークが取る。
「充分だろ。とりあえず休憩して、回復しなきゃな」
「うん、ありがとう。ふふ、覚えてるね、スタークさん。ほんとにリリネットちゃんだったんだね〜」
「そう言ったろ」
あの時覚えた霊力を分ける方法を、再現するスターク。
そこに邪魔が入る。
「お前ぇひとりじゃ足んねーだろ」
ノイトラがスタークを押し退けて、なつみの手を奪ってしまった。
「…。」
「…。」
手を握ってくれるノイトラの顔を見上げて言う。
「ねぇ、それ握ってるだけ」
「あ⁉︎」
回道を施された覚えはあっても、与え方を知らなかったノイトラ。ただ寄り添ってくれただけ。
「気持ちは嬉しいけどね😊」
「んだよ、どうやるか教えろ‼︎」
「あっはは❗️」
「笑ってんじゃねぇ💢」
「木偶の棒はどいてくれるかな」
今度はノイトラが押し退けられて、ゾマリがなつみの手を取る。逆は、ザエルアポロから交代してハリベルが。
「教わればできるっつってんだろ!」
「お前の霊力を、澄んだなつみの身体に入れさせたくはない」
ノイトラはムカつきすぎて、片方吊り上がって開いた口が塞がらない。
「そこまで言わなくたって、ハリベルさん。ぼくの身体はもうだいぶここの空気を吸って、みんなみたいになってるはずだよ。リリネットちゃんとスタークさんの霊力も貰ってるし、純粋な死神じゃ、もうなくなってる。でもそんなこと気にしない。強くなれるならね。だから、後でちゃんとノイトラにも教えてあげる。傷つけるばっかりじゃ、ダメだもんね」
なつみはにっこり笑った。
「なつみ、なつみ。マダ疲レテル?」「俺たちもお前に分けたい」
「ありがとう、アーロニーロ。ほんとうに優しい子たちだよね。もう少し欲しいから、次によろしく」
「ウン!」「任せろ」
「頼もしいね。これでパワーチャージが済んだら、またやるよ❗️ぼく、もっともっとできるんだから‼️」
そんな前向きな発言に、ザエルアポロは止めたくなる。
「ちょっと、またやるっていうの?今倒れたばかりじゃないか」
「だぁーいじょーぶっ」
ザエルアポロの心配は、あっちへポイッ。
「倒れても、みんながいてくれるでしょ?助けてくれるから、大丈夫だよ。あ、でもそっか。いちお、今の積んである状態を確認してきてもらうのが先か。誰かにお遣い頼んでも良い?」
「俺が行こう」
なんとウルキオラが立候補。
「あら、ありがとう。ふふっ、ウルキオラも良い子😊」
「うるさい」
姿を消した。
「何だかんだ言って、アイツもなつみに興味あるのかもな。俺も行こうか」
「スタークさんは、ぼくのお仕事に興味があるんだね😄」
「フッ…、何にでもだ」
姿を消した。
「ッ///」
なつみは赤面した。
「まだ慣れてないのか」
ハリベルの洞察力。
「そうだよ❗️慣れないよ❗️今の笑い方見た⁉️もー、ちょーッ‼️///」
セクシー。言えないけど。ジタバタジタバタ。
「僕も見てきたいな」
「私もだ」
みんな、壁の出来具合が気になるらしい。
「じゃあぼくも‼️」
みんなが行くなら自分も行きたい。
「おぶってやろーか😏」
みんなが大事にからかうものだから、グリムジョーもそれに加わりたいらしい。せっかく一員になったのだから。
「もうそんなにぐったりじゃないよ。ちっちゃい子扱いしないで😤」
「チビだろ?(笑)」
「むぅ‼️」
それならばヤミーも乗っておかなければ。
「とっとと行こうぜ、こっちゃ退屈なんだ。散歩ぐらいしねーと、やってらんねーぜ」
「わぁ❗️じゃあじゃあ、ピクニックだね✨」
ヤミーの小言をなつみ流に翻訳すると、そうなってしまう。
「何でそーなるんだよッ」
「そうと決まれば準備しよう。ゾマリ、手伝って」
ザエルアポロはピクニックの荷造りに階下へ向かう。その背中に注文をつけるノイトラ。
「なつみ汁忘れんなよー」
「だぁから、いらないって、それぇッ‼️‼️」
注文のキャンセルは、果たして受け付けてもらえたのでしょうか。追加オーダーなら良いんだろうか?
「ゾマリーん❗️アモールクッキー入れといてー❗️」
これから楽しいピクニック。消費したエネルギーを取り戻しつつ、親睦を深めていこう。