第九章
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リリネットは働き疲れてうとうとしていた。大好きな人のために、進んで働くのはなんと幸せなことだろう。なつみの喜ぶ顔が目に浮かんで、自然と仮面の下でほころぶ。
その日、ギリアンたちがせっせと岩を運んでくるのを見て、なつみ同様、リリネットもじっとしていられなくなった。大人しくこの空き家で過ごすこともできたが、どうしても何かしたい衝動に駆られた。外に出て、近くにいた破面に、仕事はないかときいてみた。その人は困った様子でいたが、上官らしき人を連れてきて、事情を説明してくれた。その上官というのは、運良く、ハリベルだった。彼女はリリネットのことを理解し、ギリアン誘導の仕事を与えた。なつみが起こした騒動のときは、タイミング悪く、離れた場所にいたのだが、反膜の光が発生したときには、一緒になってなつみに光線を放った。なつみが楽しそうにしているのを、満たされた気持ちで見守っていた。
「あたしのこと、気付いてくれたかな」
なつみはザエルアポロとどこかへ行ってしまい、それきり外に出てくることはなかった。
「実はあのふたり、できてたりして😏」
そんなことを思いつつ。
「あたしも早く破面になりたい。そんでなつみと一緒に遊びたいなー」
ベッドに寝転がる。
「今より強くなっちゃうのかな。…そしたら、余計なつみにくっつけなくなるよね。そんなのヤダな」
仰向けから右に寝返る。
「でも強くないと、仲間に入れてくれないんだよね」
きゅっと丸まる。
「どうなったら良いんだろう」
そう思ったところで、なるようになるだけだとわかってはいる。
「藍染って人に任せよう」
呟いて、リリネットは目を閉じた。
しばらくすると、何んだか寒くて目が覚めた。
「ヘクシュッ💦」
くしゃみが出た。
「さみー」
目は覚めたと表現するが、実際は目は閉じたままだ。毛布を引き寄せる。
「おい、やめろ」
「は?これはあたしの」
リリネットは固まった。自分は一体誰と話したんだ?
「……」
うっすら目を開けていく。
「‼️⁉️」
見たこともない破面の男が隣で寝ていた。リリネットがいるベッドで、しかも、裸で。
「誰だよ‼️あんた‼️」
慌ててベッドから出て距離を取ると、さらにびっくり。自分も裸であった。
「うぎゃあッ‼️///」
咄嗟に毛布を掴んだ。
「やめろっつったろ。さみー」
間に合ってしまい、男は毛布の反対の端を掴んだ。
「離せ❗️これ、あたしの❗️」
グッと引っ張る。
「寒いなら、こっち来いよ。他人じゃねーんだから、かまわねぇだろ」
グッと引っ張り返される。
「はぁ⁉️他人じゃないって」
「お前、寝ぼけてんのか」
睨んでいるような眼差しがリリネットに向けられる。その目を見つめ返してみると、確かに知っている気がしてきた。
「もしかして…、あたし?」
男は頷いた。
「マジ⁉️」
「お前な、力残していきすぎだろ」
「え、マジマジマジ?」
そうとわかれば、リリネットはすんなりベッドに戻って、男の隣に寝転んだ。
「わぁー、ホントだ。あたしだ」
彼の胸に手を当てて感じる、強さは違うが、自分と同じ霊圧を。
「やっと信じたか?リリネット。まぁ、俺も驚いたけどな。藍染様とやらに会う前に、破面になれちまっててよ」
「あたしが…リリネットで良いの?」
「良いよ。お前のが先なんだから」
「じゃあ、あんたは…、スターク?」
「あぁ。リリネット・ジンジャーバックとコヨーテ・スターク。これでなつみも、俺たちの名前を忘れねぇだろうな」
想像しているのか、スタークはにんまり笑っている。
「ふたりになれて良かったよな。もしお前がひとりで破面になっちまってたら、寒さで風邪ひいてたろうからよ」
「他人みたいに言わないでよ。あたしだったくせに」
「フッ」
確かに、狭いベッドにふたり並んで寝転ぶと、幾分ぽかぽかするような気がする。
「なつみもここにいたらな」
「そしたらもっとあったけぇだろうが、俺は出てくぜ」
「何でだよ、スターク。なつみちっこいから、このベッドでも3人で寝れるでしょ」
「そういう問題じゃねぇよ。霊圧だ。たぶんあいつ、耐えれねぇって。だからお前はそうなったんだろ?だったら、お前がとことんなつみにくっついてろよ。俺の分までな」
「良いの…?」
「良いよ」
「なんか、ごめんね」
「謝るな。お前は悪くない」
「スタークもね」
気楽に会話を進められ、ふたりは安心という幸せに包まれていた。
目を閉じて、再び眠りにつこうとすると。
「だからぁ‼️」
起きてしまった。
「この状態で寝てて寒くて起きたんだから、さみーまんまに決まってんじゃんッ‼️」
気合いを入れてベッドの外へ。
「服、服❗️」
なつみからもらった服を取りに行った。自分サイズの物を選び出していると。
「…俺のも」
「結局❗️」
投げてやった。
「破面って寒ぃな。それとも、1人分減って、体温も削られちまったんだろうか」
「知るか❗️お、着れた。着れたけど…、ちょっとデカいかな」
「俺はピッタリだな」
それぞれ着てみた。
「2人分用意してくれて良かったよ。危うくスタークが真っ裸で面接受けるとこだったじゃん」
「そうだな」
リリネットが袋を畳んだり、ブーツを揃えた後、スタークはサイドテーブルに置かれたヘルメットを彼女に投げた。
「ほらよ」
「何これ」
「身体が分かれたときに、お前が被ってたモンだ。そんなもん着けて寝られちゃ、俺の目にその角が刺さりそうだから、脱がせたんだよ」
「ふーん…。要るかな」
両手で持ち、いろんな角度から見て、それから被ってみた。
「どお?」
スタークに意見を求める。
「良いんじゃねぇの?(暗くてよく見えねぇが、そう言っときゃ良いんだろ)」
「にひーっ😁」
「だが、寝るときは取れよ」
「わかってるって」
リリネットの左目には仮面の欠片が付いている。その上部は割れた跡になっており、そのヘルメットの繋ぎ目とピタリと合う。
「無理矢理、俺が割ったわけじゃねぇからな。初めからあったんだ」
「うん。疑ったりしないよ。別にこっちは無くっても問題無さそうだしさ」
「ま、護身用に普段は被ってろよ」
「いざってときは、角で攻撃してやるよ❗️」
「片っぽしかねぇけどな」
「ほんとだよ。何でだろう」
「……。」
「ねぇ、何でだと思う?スターク」
「……。」
「スタークぅ?💢」
外したヘルメットを見ていて、スタークのことを見ていなかったリリネットは、視線を戻して気付いた。
「寝んな💢👊」
「ウ゛……。…💤」
「⁉️💢」
こうして夜が、時間的に更けていった。
ズドーン、ズドーン…‼︎‼︎
なつみは音と胸騒ぎで飛び起きた。
「何だ⁉︎」
昨日のギリアンたちの作業音とは違う、荒々しく、恐怖を感じさせる騒音が遠くから聞こえてくる。これは、攻撃の音だ。
「行かなきゃ」
マントと斬魄刀を掴んで、部屋を出ていった。
既に見張り台には十刃たちがいた。
「どうしたの⁉︎」
「なつみ、おはよう。…、今起きたんだね💧」
ザエルアポロはなつみを見るや、その格好に少し困惑の表情を浮かべた。
「音が聞こえてさ」
「すごい寝癖だな」
真剣な顔でなつみが答えたが、ゾマリがくるんくるんの彼女の髪を触ってきた。
「だぁもお❗️慌てて来たの❗️」
パジャマ、目脂、寝癖、…裸足。
「目クソぐらい取れよ」
ノイトラに指摘されて、グイグイッと目を擦った。
「で⁉️」
「あそこだ」
ハリベルが指を差した。
「あと、あっち」
アーロニーロが別の方角を指した。
見ると、砂煙が上がっている。2ヶ所は大分距離が離れている。積み上がった石材の少し内側で何かが暴れているらしい。
「敵が攻めて来たんだ」
「敵⁉︎敵なんかいるの⁉︎」
そんなことを言うなつみに、ノイトラが呆れていた。
「ここの外側にいる奴らは全員敵に決まってんだろうが」
しかし、それでは説明にならない。ザエルアポロが続ける。
「奴らはここの王を潰しに来たようだよ」
「何言ってるの。王様なんかいないじゃん。藍染隊長のことならまだいないし。第一、攻め込まれる意味わかんないよ」
「そうなんだけど。恐らく、昨日の光を見られてしまったんだよ」
「反膜の光のこと?あれに何の関係があるの」
ザエルアポロが話そうとしたが、ハリベルが先になつみの頭に手を置いてしまった。
「?」
「狙いは藍染様ではない。お前だ、なつみ」
「はい?」
「反膜の光を浴びた、お前が王だ」
ぽっかり開いてしまう口。
「ぼく?」
「そうだ」
いやいや頭を優しくぽんぽんされても。
「反膜の光というのはね、僕たち虚が守りたいものに対して放つんだ」
ザエルアポロが解説を再開した。
「慕いたいと思う相手、側に置いておきたい仲間、絶対に取られたくない獲物、それら大切にしたい対象に向けるものなんだよ」
(……獲物?😒)
「あの場にいた全員が、理由が何であれ、君に光を浴びせた」
「食べられる心配無いって言ったじゃん」
「大半がそうだけど、そこの背の高いお兄さんだけ違ったみたいだから、訂正させてもらったの」
「へへへ😏」
笑ってるノイトラを他所に話は続く。
「とにかく、事情を知らない外の連中は、あれだけの数のギリアンから一度に光を出させた者がいることに、相当驚いたと思う。仲間や獲物としてなら、あんな数にはならない。どう見ても、中心にいる人物に忠誠を誓った行為としか考えられなかっただろう。それで、『王を出せ』と言ってきた。奴らは、より強い者を殺して高みを目指す者たちだよ」
「それってつまり」
「つまり、中級大虚か最上級大虚。君はしばらく、本当に外出禁止になってしまった。死にたくなければね」
「そんなぁ‼︎」
みんなの思いやりが、予期せぬ出来事を招いてしまったらしい。
「そんなに落ち込むことではない。これは、好機とも取れるからな」
「どういうこと?」
なつみはゾマリを見た。
「我々は藍染様から、最上級大虚を探すよう言い付けられている。破面化させ、仲間を増やすためだ。わざわざこちらから探すこと無く、あちらから出向いてくれているのだ。何とも好都合だ。今はこうして様子を伺い、どう生捕りにするか策を練っていたんだよ」
「ゾマリ、言い方」
「あぁ。済まない。どう、なだめるかだ」
ゾマリが言い直すや否や。
「そんな甘ぇ言い方すんなよ。オレはあっちに行くぜ。向こうは最上級大虚が1体の、あとは取り巻きの中級大虚が数匹。そんなもんより、最上級大虚2体の方が面白そうじゃねぇか」
「お好きにどうぞ」
「邪魔すんなよ」
不敵な笑みを残して、ノイトラは去った。
「ハリベル。ノイトラがやり過ぎないように、一応見てきてくれる?」
「良いだろう。藍染様のためだ」
ハリベルも後に続いた。
「ジャア、ボクガ向コウ行ク」
アーロニーロもやる気満々だ。
「行ってもいいけど、もうリリネットが戦ってるんじゃないかな」
「え⁉︎」
ザエルアポロの発言に、なつみは驚いた。
「彼女、あの辺りの空き家に居るらしいから、たぶん、応戦してるんだと思う。あの敵の数でほとんど進行が進んでいない。あのエリアで食い止められる力を持ってるのは、あの子だけだよ。さすが、強いね」
「そんな悠長なこと言ってないで、助けに行かなきゃ❗️」
「ダメダヨ、なつみ」「お前はここにいろ」
「でも」
「でもじゃない。ダメだ。なつみが行くぐらいなら、アーロニーロに行ってもらう方が良いね。行ってきて」
アーロニーロも出ていった。
「僕は太陽の面倒を見たいから、研究室に戻るよ」
「ザエルアポロ❗️」
「諦めろ、なつみ」
ゾマリに肩を掴まれてしまった。
「そもそもパジャマの君を戦場に送るわけないだろう?」
「むぅ❗️」
「怒っても無駄。行かせないよ。君は全員の無事を祈って、虚夜宮の中で大人しくしていなさい。そうだゾマリ、退屈しないように、なつみを図書室に連れてってあげて。それから、藍染様がお着きになったら、対応よろしく」
「わかった」
ザエルアポロは扉へ向かった。
「さぁ、なつみ。まずは着替えて、朝食にしよう。こんななりでは、藍染様とお会いするのに失礼だぞ」
ほっぺは膨らませたままだが、ゾマリの促す通りに動くことにする。仕方なしにだ。
(リリネットちゃん、無事でいて)
図書室にて、建築や家庭菜園の本を読んでいたら、扉がノックされた。
「どーぞー」
カチャリと音がして、外から誰かが入ってきた。
「ご機嫌斜めやなぁ」
その声にハッとして、本から顔を上げた。
「市丸隊長⁉️どうして⁉️藍染隊長だけって聞いてたのに」
「そうなんやけどね」
駆け寄ってきたなつみを抱きとめて、市丸は経緯を話す。
「なんや、偉い強い人らに攻め込まれてるて聞いて、藍染隊長にこっち来るよう、急に言われたんよ。せやから、東仙隊長も一緒や」
「東仙隊長も⁉️」
「せや。みんなで手分けして、最上級大虚たちを大人しくしたったわ。今、会議室でなつみちゃんが来てくれるん待ってるわ」
「リリネットちゃんは」
「おるで。早よ呼んで来てて、急かされたわ」
なつみの顔がパァッと明るくなった。
「行きましょう❗️呼びに来てくれて、ありがとうございます❗️」
「本、片付けたるわ」
「すいません。お願いします❗️」
何冊かの内、家庭菜園の本を市丸に渡した。
会議室に着くと、市丸が戸を叩いた。
「市丸です。なつみちゃんを連れて来ました」
中から返事が返ってきた。
「入りなさい」
ふたりはにっこり笑い合ってから、市丸が開けた。
「失礼します〜」
市丸が1歩中に進んだ瞬間、彼の脇を素早く何かが通り過ぎて、なつみは倒れた。
ドカ、バタンッ❗️
「⁉︎」
「なつみ なつみ なつみ なつみ なつみーッ‼️😆」
「あらら。なつみちゃん大丈夫かいな。頭打ってへん?(笑)」
タックルされたなつみは、誰がこんなことをするのかと思いながら、よいしょと身体を起こす。
「もー、びっくりするじゃんか」
「ひひーッ😁」
なつみに跨る少女は笑っていた。
「あぁ❗️」
これが誰だかわかったなつみ。
「リリネットちゃん⁉️」
「うん❗️」
「むきゃーっ‼️💓」
「わぁーっ‼️」
なつみが歓喜の声(奇声)を上げて抱きついたものだから、リリネットは少し後ろに傾いた。でも笑っている。
「破面になれたんだ❗️良かったね、リリネットちゃん❗️これでぼくら家族だよー❗️」
「うん❗️一緒に暮らせるよ❗️」
きつく抱き合うふたりを見て、微笑む市丸。
「はいはい、立って、ふたりとも。紹介せなあかん人たち、まだおるんよ。待たせてるで」
小さなふたりは満面の笑みで振り向き、声を揃えて答えた。
「「😄はーい😁」」
リリネットと手を繋いで中に入ると、藍染と東仙を確認。
「こんにちは、藍染隊長、東仙隊長」
「こんにちは」
「こんにちは」
藍染は席に、東仙はその斜め後ろに立っていた。
「この人たちが?」
藍染の座るお誕生日席の反対側に、並んで立つ虚3体と、見知らぬ破面1人。市丸に先を歩いてもらいながら、その列の横を通り過ぎた。
と、自分の席に座っているノイトラに視線が行った。
「傷まるけじゃん❗️」
「うるせぇよ…😒」
「もうもう、ほらほら腕下ろして、お行儀良く座って」
嫌々な顔をしながらも、なつみに治療してもらう。
「あの威勢で、このざまだ。笑ってやれ」
「黙れ、ハリベル‼︎‼︎」
「黙るのお前ぇだ、ばーか」
なつみにおデコをペシッと叩かれる。
「藍染様が来てくださったお陰で、みんなこうして無事に揃ったんだよ。感謝をちゃんとお伝えしたか?」
ザエルアポロが口を挟んできた。
「した」
「よぅし」
ザエルアポロの代わりに、なつみがノイトラの頭をこねくり回して褒めた。
「皆、よく頑張ってくれた」藍染は十刃となつみを見た。「そして、君たちは、よく来てくれた。ようこそ、虚夜宮へ。これから同胞として、共に高みを目指していこう」新入りたちに話しかける。
「よろしくお願いします❗️」
治療を終えたなつみが、元気に彼らに向かって頭を下げた。
「この子が、君らが求めてきた『王』だ。しかし、どちらかと言えば、姫かな」
ゲッと、藍染に振り向くなつみ。
「ヒメ…⁉︎ぼくは死神です❗️ランクそこそこの❗️」
ゲッとしたのは最上級大虚もだった。
「こんなちんちくりんが…⁉︎おい、ふざけんなよ。ウソだろ」
「信じれんな」
「見るからに弱そうじゃねぇか。こんなもんを守りたがる意味がわからねぇ」
「口を」
藍染が穏やかに睨んで説教を述べようとしたら。
「うるっせぇな❗️ちんちくりん言うな❗️このデブンデブンがぁ❗️💢」
なつみが横から割り込んできた。
「慎みなさい、なつみ💧」
「はい❗️すいませんっ❗️😤」
このやり取りに、思わずクスリとした破面の男。
「やっぱおもしれーな(笑)」
「スターク、笑ってないで、なつみに自己紹介しなよ」
リリネットがそう言った。
「あぁ、悪い悪い。スタークだ。俺のこと、わかんねぇだろうが、ずっとお前に会いたかったんだ」ニコリと微笑んだ。「なつみ」
ズッキュン‼️‼️
「ぐはぁッ‼️‼️」
なつみは胸を押さえて、その場に倒れ込んでしまった。
「え…、なつみ⁉︎」
「なつみちゃん、どないしたん⁉︎」
「おい、どうした、なつみ‼︎」
「なつみ⁉︎」
「ぐぅぅぅぅッ‼️‼️😖」
市丸は唸るなつみに駆け寄る。リリネットはその異変の原因を咄嗟に推測した。
「スターク!霊圧抑えて!苦しがってんじゃん!」
「そ、そうか」
スタークはばつが悪くなり、やや退く。しかし、藍染は一瞬驚きはしたが、すぐに何事か理解し、ため息まじりに言ってやった。
「スターク、気にすることはない」
「だけど!」
「良いんだ、リリネット。なつみは大丈夫」
「……❗️……❗️」
「何や。何やて、なつみちゃん」
小声で唱えるなつみの口元に、耳を傾ける市丸。そして、身体を起こす。
「アホ」
おデコに1発ペシッ。
「にゃうっ💦」
「何、『ハンサム、ハンサム』言うとんねん!キミには恋人おるやろ!恋煩いすな‼︎」
もう1発オマケ。
「にゃうっ💦💦」
「あー、心配して損したぁ」
市丸は放ったらかしにして、元いた場所に戻った。
「本当に、大丈夫なのか?なつみ」
転がされたままのなつみのそばに来て、心配そうに顔を覗き込んでくるスタークを、まともに近くで見てしまった。
ズッキュン‼️‼️
またパタリといく。
「むきゃーッ///💖💦」
恥ずかしそうにくねるなつみ。
そんな彼女を見たことのある死神たちは。
「はぁ…」
呆れ、初見の破面たちは。
「なつみって、こうなるんだね💧」
「かわいらしいが、これは傷つくな」
「罪深いな」
ちょっと引いている。ましてや初対面の虚たちは、ドン引きだ。
「これと戦おうとしてたのか」
「てか、これを王に選んだのか?」
「とんでもない所に違いないだろう」
一方リリネットは真相を知り、ニヤニヤが止まらない。
「なーんだ、なつみ。スタークに惚れちゃったんだ。もう付き合っちゃいなよ〜🥴」
「だ、だ、だ、ダメだよ‼️ぼくには、しゅ、しゅんしゅいしゃんがぁ❗️」
「言えてへんでー」
動揺がダダ漏れなつみ。
「…///」
スタークはというと、頬をポリポリ、照れくさそうに掻いていた。
「はぁ……」
頭を抱える藍染。
強力な恋のライバル、もとい、仲間の出現に、虚夜宮は更なる盛り上がりを見せていく。
「むっきゃーッ‼️ハンサムーッ‼️///」
ちなみに襲撃してきた3人とは、ヤミー、ウルキオラ、グリムジョーだ。
「なぁ、霊圧に当てられて、バカになってるってことじゃダメか?」
ノイトラの冷たい視線が、普段より増して冷めていた。
「そうだね。これだけ揃ってるから。そうしておこう」
敵に幻を見せる藍染だが、このときばかりは自分が幻を見ておきたい気分だった。
「にゃーッ‼️こっち見ないで、ハンサムーッ‼️///」
その日、ギリアンたちがせっせと岩を運んでくるのを見て、なつみ同様、リリネットもじっとしていられなくなった。大人しくこの空き家で過ごすこともできたが、どうしても何かしたい衝動に駆られた。外に出て、近くにいた破面に、仕事はないかときいてみた。その人は困った様子でいたが、上官らしき人を連れてきて、事情を説明してくれた。その上官というのは、運良く、ハリベルだった。彼女はリリネットのことを理解し、ギリアン誘導の仕事を与えた。なつみが起こした騒動のときは、タイミング悪く、離れた場所にいたのだが、反膜の光が発生したときには、一緒になってなつみに光線を放った。なつみが楽しそうにしているのを、満たされた気持ちで見守っていた。
「あたしのこと、気付いてくれたかな」
なつみはザエルアポロとどこかへ行ってしまい、それきり外に出てくることはなかった。
「実はあのふたり、できてたりして😏」
そんなことを思いつつ。
「あたしも早く破面になりたい。そんでなつみと一緒に遊びたいなー」
ベッドに寝転がる。
「今より強くなっちゃうのかな。…そしたら、余計なつみにくっつけなくなるよね。そんなのヤダな」
仰向けから右に寝返る。
「でも強くないと、仲間に入れてくれないんだよね」
きゅっと丸まる。
「どうなったら良いんだろう」
そう思ったところで、なるようになるだけだとわかってはいる。
「藍染って人に任せよう」
呟いて、リリネットは目を閉じた。
しばらくすると、何んだか寒くて目が覚めた。
「ヘクシュッ💦」
くしゃみが出た。
「さみー」
目は覚めたと表現するが、実際は目は閉じたままだ。毛布を引き寄せる。
「おい、やめろ」
「は?これはあたしの」
リリネットは固まった。自分は一体誰と話したんだ?
「……」
うっすら目を開けていく。
「‼️⁉️」
見たこともない破面の男が隣で寝ていた。リリネットがいるベッドで、しかも、裸で。
「誰だよ‼️あんた‼️」
慌ててベッドから出て距離を取ると、さらにびっくり。自分も裸であった。
「うぎゃあッ‼️///」
咄嗟に毛布を掴んだ。
「やめろっつったろ。さみー」
間に合ってしまい、男は毛布の反対の端を掴んだ。
「離せ❗️これ、あたしの❗️」
グッと引っ張る。
「寒いなら、こっち来いよ。他人じゃねーんだから、かまわねぇだろ」
グッと引っ張り返される。
「はぁ⁉️他人じゃないって」
「お前、寝ぼけてんのか」
睨んでいるような眼差しがリリネットに向けられる。その目を見つめ返してみると、確かに知っている気がしてきた。
「もしかして…、あたし?」
男は頷いた。
「マジ⁉️」
「お前な、力残していきすぎだろ」
「え、マジマジマジ?」
そうとわかれば、リリネットはすんなりベッドに戻って、男の隣に寝転んだ。
「わぁー、ホントだ。あたしだ」
彼の胸に手を当てて感じる、強さは違うが、自分と同じ霊圧を。
「やっと信じたか?リリネット。まぁ、俺も驚いたけどな。藍染様とやらに会う前に、破面になれちまっててよ」
「あたしが…リリネットで良いの?」
「良いよ。お前のが先なんだから」
「じゃあ、あんたは…、スターク?」
「あぁ。リリネット・ジンジャーバックとコヨーテ・スターク。これでなつみも、俺たちの名前を忘れねぇだろうな」
想像しているのか、スタークはにんまり笑っている。
「ふたりになれて良かったよな。もしお前がひとりで破面になっちまってたら、寒さで風邪ひいてたろうからよ」
「他人みたいに言わないでよ。あたしだったくせに」
「フッ」
確かに、狭いベッドにふたり並んで寝転ぶと、幾分ぽかぽかするような気がする。
「なつみもここにいたらな」
「そしたらもっとあったけぇだろうが、俺は出てくぜ」
「何でだよ、スターク。なつみちっこいから、このベッドでも3人で寝れるでしょ」
「そういう問題じゃねぇよ。霊圧だ。たぶんあいつ、耐えれねぇって。だからお前はそうなったんだろ?だったら、お前がとことんなつみにくっついてろよ。俺の分までな」
「良いの…?」
「良いよ」
「なんか、ごめんね」
「謝るな。お前は悪くない」
「スタークもね」
気楽に会話を進められ、ふたりは安心という幸せに包まれていた。
目を閉じて、再び眠りにつこうとすると。
「だからぁ‼️」
起きてしまった。
「この状態で寝てて寒くて起きたんだから、さみーまんまに決まってんじゃんッ‼️」
気合いを入れてベッドの外へ。
「服、服❗️」
なつみからもらった服を取りに行った。自分サイズの物を選び出していると。
「…俺のも」
「結局❗️」
投げてやった。
「破面って寒ぃな。それとも、1人分減って、体温も削られちまったんだろうか」
「知るか❗️お、着れた。着れたけど…、ちょっとデカいかな」
「俺はピッタリだな」
それぞれ着てみた。
「2人分用意してくれて良かったよ。危うくスタークが真っ裸で面接受けるとこだったじゃん」
「そうだな」
リリネットが袋を畳んだり、ブーツを揃えた後、スタークはサイドテーブルに置かれたヘルメットを彼女に投げた。
「ほらよ」
「何これ」
「身体が分かれたときに、お前が被ってたモンだ。そんなもん着けて寝られちゃ、俺の目にその角が刺さりそうだから、脱がせたんだよ」
「ふーん…。要るかな」
両手で持ち、いろんな角度から見て、それから被ってみた。
「どお?」
スタークに意見を求める。
「良いんじゃねぇの?(暗くてよく見えねぇが、そう言っときゃ良いんだろ)」
「にひーっ😁」
「だが、寝るときは取れよ」
「わかってるって」
リリネットの左目には仮面の欠片が付いている。その上部は割れた跡になっており、そのヘルメットの繋ぎ目とピタリと合う。
「無理矢理、俺が割ったわけじゃねぇからな。初めからあったんだ」
「うん。疑ったりしないよ。別にこっちは無くっても問題無さそうだしさ」
「ま、護身用に普段は被ってろよ」
「いざってときは、角で攻撃してやるよ❗️」
「片っぽしかねぇけどな」
「ほんとだよ。何でだろう」
「……。」
「ねぇ、何でだと思う?スターク」
「……。」
「スタークぅ?💢」
外したヘルメットを見ていて、スタークのことを見ていなかったリリネットは、視線を戻して気付いた。
「寝んな💢👊」
「ウ゛……。…💤」
「⁉️💢」
こうして夜が、時間的に更けていった。
ズドーン、ズドーン…‼︎‼︎
なつみは音と胸騒ぎで飛び起きた。
「何だ⁉︎」
昨日のギリアンたちの作業音とは違う、荒々しく、恐怖を感じさせる騒音が遠くから聞こえてくる。これは、攻撃の音だ。
「行かなきゃ」
マントと斬魄刀を掴んで、部屋を出ていった。
既に見張り台には十刃たちがいた。
「どうしたの⁉︎」
「なつみ、おはよう。…、今起きたんだね💧」
ザエルアポロはなつみを見るや、その格好に少し困惑の表情を浮かべた。
「音が聞こえてさ」
「すごい寝癖だな」
真剣な顔でなつみが答えたが、ゾマリがくるんくるんの彼女の髪を触ってきた。
「だぁもお❗️慌てて来たの❗️」
パジャマ、目脂、寝癖、…裸足。
「目クソぐらい取れよ」
ノイトラに指摘されて、グイグイッと目を擦った。
「で⁉️」
「あそこだ」
ハリベルが指を差した。
「あと、あっち」
アーロニーロが別の方角を指した。
見ると、砂煙が上がっている。2ヶ所は大分距離が離れている。積み上がった石材の少し内側で何かが暴れているらしい。
「敵が攻めて来たんだ」
「敵⁉︎敵なんかいるの⁉︎」
そんなことを言うなつみに、ノイトラが呆れていた。
「ここの外側にいる奴らは全員敵に決まってんだろうが」
しかし、それでは説明にならない。ザエルアポロが続ける。
「奴らはここの王を潰しに来たようだよ」
「何言ってるの。王様なんかいないじゃん。藍染隊長のことならまだいないし。第一、攻め込まれる意味わかんないよ」
「そうなんだけど。恐らく、昨日の光を見られてしまったんだよ」
「反膜の光のこと?あれに何の関係があるの」
ザエルアポロが話そうとしたが、ハリベルが先になつみの頭に手を置いてしまった。
「?」
「狙いは藍染様ではない。お前だ、なつみ」
「はい?」
「反膜の光を浴びた、お前が王だ」
ぽっかり開いてしまう口。
「ぼく?」
「そうだ」
いやいや頭を優しくぽんぽんされても。
「反膜の光というのはね、僕たち虚が守りたいものに対して放つんだ」
ザエルアポロが解説を再開した。
「慕いたいと思う相手、側に置いておきたい仲間、絶対に取られたくない獲物、それら大切にしたい対象に向けるものなんだよ」
(……獲物?😒)
「あの場にいた全員が、理由が何であれ、君に光を浴びせた」
「食べられる心配無いって言ったじゃん」
「大半がそうだけど、そこの背の高いお兄さんだけ違ったみたいだから、訂正させてもらったの」
「へへへ😏」
笑ってるノイトラを他所に話は続く。
「とにかく、事情を知らない外の連中は、あれだけの数のギリアンから一度に光を出させた者がいることに、相当驚いたと思う。仲間や獲物としてなら、あんな数にはならない。どう見ても、中心にいる人物に忠誠を誓った行為としか考えられなかっただろう。それで、『王を出せ』と言ってきた。奴らは、より強い者を殺して高みを目指す者たちだよ」
「それってつまり」
「つまり、中級大虚か最上級大虚。君はしばらく、本当に外出禁止になってしまった。死にたくなければね」
「そんなぁ‼︎」
みんなの思いやりが、予期せぬ出来事を招いてしまったらしい。
「そんなに落ち込むことではない。これは、好機とも取れるからな」
「どういうこと?」
なつみはゾマリを見た。
「我々は藍染様から、最上級大虚を探すよう言い付けられている。破面化させ、仲間を増やすためだ。わざわざこちらから探すこと無く、あちらから出向いてくれているのだ。何とも好都合だ。今はこうして様子を伺い、どう生捕りにするか策を練っていたんだよ」
「ゾマリ、言い方」
「あぁ。済まない。どう、なだめるかだ」
ゾマリが言い直すや否や。
「そんな甘ぇ言い方すんなよ。オレはあっちに行くぜ。向こうは最上級大虚が1体の、あとは取り巻きの中級大虚が数匹。そんなもんより、最上級大虚2体の方が面白そうじゃねぇか」
「お好きにどうぞ」
「邪魔すんなよ」
不敵な笑みを残して、ノイトラは去った。
「ハリベル。ノイトラがやり過ぎないように、一応見てきてくれる?」
「良いだろう。藍染様のためだ」
ハリベルも後に続いた。
「ジャア、ボクガ向コウ行ク」
アーロニーロもやる気満々だ。
「行ってもいいけど、もうリリネットが戦ってるんじゃないかな」
「え⁉︎」
ザエルアポロの発言に、なつみは驚いた。
「彼女、あの辺りの空き家に居るらしいから、たぶん、応戦してるんだと思う。あの敵の数でほとんど進行が進んでいない。あのエリアで食い止められる力を持ってるのは、あの子だけだよ。さすが、強いね」
「そんな悠長なこと言ってないで、助けに行かなきゃ❗️」
「ダメダヨ、なつみ」「お前はここにいろ」
「でも」
「でもじゃない。ダメだ。なつみが行くぐらいなら、アーロニーロに行ってもらう方が良いね。行ってきて」
アーロニーロも出ていった。
「僕は太陽の面倒を見たいから、研究室に戻るよ」
「ザエルアポロ❗️」
「諦めろ、なつみ」
ゾマリに肩を掴まれてしまった。
「そもそもパジャマの君を戦場に送るわけないだろう?」
「むぅ❗️」
「怒っても無駄。行かせないよ。君は全員の無事を祈って、虚夜宮の中で大人しくしていなさい。そうだゾマリ、退屈しないように、なつみを図書室に連れてってあげて。それから、藍染様がお着きになったら、対応よろしく」
「わかった」
ザエルアポロは扉へ向かった。
「さぁ、なつみ。まずは着替えて、朝食にしよう。こんななりでは、藍染様とお会いするのに失礼だぞ」
ほっぺは膨らませたままだが、ゾマリの促す通りに動くことにする。仕方なしにだ。
(リリネットちゃん、無事でいて)
図書室にて、建築や家庭菜園の本を読んでいたら、扉がノックされた。
「どーぞー」
カチャリと音がして、外から誰かが入ってきた。
「ご機嫌斜めやなぁ」
その声にハッとして、本から顔を上げた。
「市丸隊長⁉️どうして⁉️藍染隊長だけって聞いてたのに」
「そうなんやけどね」
駆け寄ってきたなつみを抱きとめて、市丸は経緯を話す。
「なんや、偉い強い人らに攻め込まれてるて聞いて、藍染隊長にこっち来るよう、急に言われたんよ。せやから、東仙隊長も一緒や」
「東仙隊長も⁉️」
「せや。みんなで手分けして、最上級大虚たちを大人しくしたったわ。今、会議室でなつみちゃんが来てくれるん待ってるわ」
「リリネットちゃんは」
「おるで。早よ呼んで来てて、急かされたわ」
なつみの顔がパァッと明るくなった。
「行きましょう❗️呼びに来てくれて、ありがとうございます❗️」
「本、片付けたるわ」
「すいません。お願いします❗️」
何冊かの内、家庭菜園の本を市丸に渡した。
会議室に着くと、市丸が戸を叩いた。
「市丸です。なつみちゃんを連れて来ました」
中から返事が返ってきた。
「入りなさい」
ふたりはにっこり笑い合ってから、市丸が開けた。
「失礼します〜」
市丸が1歩中に進んだ瞬間、彼の脇を素早く何かが通り過ぎて、なつみは倒れた。
ドカ、バタンッ❗️
「⁉︎」
「なつみ なつみ なつみ なつみ なつみーッ‼️😆」
「あらら。なつみちゃん大丈夫かいな。頭打ってへん?(笑)」
タックルされたなつみは、誰がこんなことをするのかと思いながら、よいしょと身体を起こす。
「もー、びっくりするじゃんか」
「ひひーッ😁」
なつみに跨る少女は笑っていた。
「あぁ❗️」
これが誰だかわかったなつみ。
「リリネットちゃん⁉️」
「うん❗️」
「むきゃーっ‼️💓」
「わぁーっ‼️」
なつみが歓喜の声(奇声)を上げて抱きついたものだから、リリネットは少し後ろに傾いた。でも笑っている。
「破面になれたんだ❗️良かったね、リリネットちゃん❗️これでぼくら家族だよー❗️」
「うん❗️一緒に暮らせるよ❗️」
きつく抱き合うふたりを見て、微笑む市丸。
「はいはい、立って、ふたりとも。紹介せなあかん人たち、まだおるんよ。待たせてるで」
小さなふたりは満面の笑みで振り向き、声を揃えて答えた。
「「😄はーい😁」」
リリネットと手を繋いで中に入ると、藍染と東仙を確認。
「こんにちは、藍染隊長、東仙隊長」
「こんにちは」
「こんにちは」
藍染は席に、東仙はその斜め後ろに立っていた。
「この人たちが?」
藍染の座るお誕生日席の反対側に、並んで立つ虚3体と、見知らぬ破面1人。市丸に先を歩いてもらいながら、その列の横を通り過ぎた。
と、自分の席に座っているノイトラに視線が行った。
「傷まるけじゃん❗️」
「うるせぇよ…😒」
「もうもう、ほらほら腕下ろして、お行儀良く座って」
嫌々な顔をしながらも、なつみに治療してもらう。
「あの威勢で、このざまだ。笑ってやれ」
「黙れ、ハリベル‼︎‼︎」
「黙るのお前ぇだ、ばーか」
なつみにおデコをペシッと叩かれる。
「藍染様が来てくださったお陰で、みんなこうして無事に揃ったんだよ。感謝をちゃんとお伝えしたか?」
ザエルアポロが口を挟んできた。
「した」
「よぅし」
ザエルアポロの代わりに、なつみがノイトラの頭をこねくり回して褒めた。
「皆、よく頑張ってくれた」藍染は十刃となつみを見た。「そして、君たちは、よく来てくれた。ようこそ、虚夜宮へ。これから同胞として、共に高みを目指していこう」新入りたちに話しかける。
「よろしくお願いします❗️」
治療を終えたなつみが、元気に彼らに向かって頭を下げた。
「この子が、君らが求めてきた『王』だ。しかし、どちらかと言えば、姫かな」
ゲッと、藍染に振り向くなつみ。
「ヒメ…⁉︎ぼくは死神です❗️ランクそこそこの❗️」
ゲッとしたのは最上級大虚もだった。
「こんなちんちくりんが…⁉︎おい、ふざけんなよ。ウソだろ」
「信じれんな」
「見るからに弱そうじゃねぇか。こんなもんを守りたがる意味がわからねぇ」
「口を」
藍染が穏やかに睨んで説教を述べようとしたら。
「うるっせぇな❗️ちんちくりん言うな❗️このデブンデブンがぁ❗️💢」
なつみが横から割り込んできた。
「慎みなさい、なつみ💧」
「はい❗️すいませんっ❗️😤」
このやり取りに、思わずクスリとした破面の男。
「やっぱおもしれーな(笑)」
「スターク、笑ってないで、なつみに自己紹介しなよ」
リリネットがそう言った。
「あぁ、悪い悪い。スタークだ。俺のこと、わかんねぇだろうが、ずっとお前に会いたかったんだ」ニコリと微笑んだ。「なつみ」
ズッキュン‼️‼️
「ぐはぁッ‼️‼️」
なつみは胸を押さえて、その場に倒れ込んでしまった。
「え…、なつみ⁉︎」
「なつみちゃん、どないしたん⁉︎」
「おい、どうした、なつみ‼︎」
「なつみ⁉︎」
「ぐぅぅぅぅッ‼️‼️😖」
市丸は唸るなつみに駆け寄る。リリネットはその異変の原因を咄嗟に推測した。
「スターク!霊圧抑えて!苦しがってんじゃん!」
「そ、そうか」
スタークはばつが悪くなり、やや退く。しかし、藍染は一瞬驚きはしたが、すぐに何事か理解し、ため息まじりに言ってやった。
「スターク、気にすることはない」
「だけど!」
「良いんだ、リリネット。なつみは大丈夫」
「……❗️……❗️」
「何や。何やて、なつみちゃん」
小声で唱えるなつみの口元に、耳を傾ける市丸。そして、身体を起こす。
「アホ」
おデコに1発ペシッ。
「にゃうっ💦」
「何、『ハンサム、ハンサム』言うとんねん!キミには恋人おるやろ!恋煩いすな‼︎」
もう1発オマケ。
「にゃうっ💦💦」
「あー、心配して損したぁ」
市丸は放ったらかしにして、元いた場所に戻った。
「本当に、大丈夫なのか?なつみ」
転がされたままのなつみのそばに来て、心配そうに顔を覗き込んでくるスタークを、まともに近くで見てしまった。
ズッキュン‼️‼️
またパタリといく。
「むきゃーッ///💖💦」
恥ずかしそうにくねるなつみ。
そんな彼女を見たことのある死神たちは。
「はぁ…」
呆れ、初見の破面たちは。
「なつみって、こうなるんだね💧」
「かわいらしいが、これは傷つくな」
「罪深いな」
ちょっと引いている。ましてや初対面の虚たちは、ドン引きだ。
「これと戦おうとしてたのか」
「てか、これを王に選んだのか?」
「とんでもない所に違いないだろう」
一方リリネットは真相を知り、ニヤニヤが止まらない。
「なーんだ、なつみ。スタークに惚れちゃったんだ。もう付き合っちゃいなよ〜🥴」
「だ、だ、だ、ダメだよ‼️ぼくには、しゅ、しゅんしゅいしゃんがぁ❗️」
「言えてへんでー」
動揺がダダ漏れなつみ。
「…///」
スタークはというと、頬をポリポリ、照れくさそうに掻いていた。
「はぁ……」
頭を抱える藍染。
強力な恋のライバル、もとい、仲間の出現に、虚夜宮は更なる盛り上がりを見せていく。
「むっきゃーッ‼️ハンサムーッ‼️///」
ちなみに襲撃してきた3人とは、ヤミー、ウルキオラ、グリムジョーだ。
「なぁ、霊圧に当てられて、バカになってるってことじゃダメか?」
ノイトラの冷たい視線が、普段より増して冷めていた。
「そうだね。これだけ揃ってるから。そうしておこう」
敵に幻を見せる藍染だが、このときばかりは自分が幻を見ておきたい気分だった。
「にゃーッ‼️こっち見ないで、ハンサムーッ‼️///」