第一章
夢小説設定
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確実に勘違いだ、大袈裟に言いすぎている、と最初は思えたが、相手が市丸なだけに、頭ごなしに嘘だとは決めつけられなかった。
「人を思い通りに操れるとかなら、まだ信じられるよ。念力とか、霊力の流れを利用してできそうだからね。なつみちゃんの術にかかって歩かされてるとき、そう思ったもん」
「ボクも初めはそう思てました。対象を絶対服従させる能力やって。なつみちゃんが初めて始解をしたときの相手はボクやったんですけど、そんときはなつみちゃんの言いなりになって、動かされました。どんだけ頭で拒否しても、体がなつみちゃんの命令に従ってまうんです。そん次になつみちゃんは、いくつかのお掃除道具に命吹き込んで、それぞれバラバラの動きで掃除させてました。それで、人だけやなく、物も従わせれるってわかった。なつみちゃんは力の悪用なんてせん子やってわかってますけど、万が一のことも考えて、ボクは身の危険を感じるまでは能力解放をせんように彼女に言いました。あんなに優しい子をイジメや陰謀に巻き込みたくないんや」
「それで、本当の能力を隠してたってわけ」
「はい。あの段階でもボクは脅威を感じましたけど、なつみちゃんの夢現天子のすごさはそんなもんやなかった。彼女が力を解放しているところを見なくても、聞かなくても、息すら止めていても、相手は術にかかってしまう。なつみちゃんの能力が届くんは、半径50m圏内。せやけど、それもなつみちゃんが強くなれば広がっていくやろ。その中でなら、なつみちゃんは何でもできる。瞬間移動も空を飛ぶことも」
「そんな馬鹿な」
「ボクはこの目で見てますから、信じるしかないですよ。弱点はあるんかな…。なつみちゃんの術から逃れるには、なつみちゃんの集中を他に逸らすか、あとは霊圧を上げて力尽くで抵抗するかですね。能力の発動条件については、なつみちゃんが『こうしたい!』ってハッキリした意思を持って命令せんとあかん思てたけど、京楽さんとのこと聞いて、命令する必要が無いいうんがわかりました。なつみちゃんの『こうだとええな』って思いが斬魄刀に伝わって、なつみちゃんの願いを叶えてあげてるんやってボクは推測します。彼女が望む世界を、あの子は自由につくれるんですよ」
「そうか…」
「なつみちゃんはピンと来てへんかったけど、なつみちゃんの能力があれば、誰にも気付かれんと盗みを働くことができるし、自分の手を汚さずに暗殺もできる。使い方によっては、どんだけでもアクドイことができてまう。なつみちゃんがそないな力持ってるのを周りに知られたくないんですよね、ボク」
「なるほど」
「でもやっぱり、なつみちゃんと仲良くしてる人らは、なつみちゃんがどんな始解するか見てみたい思うじゃないですか。やから、誤魔化せるようにせないうて。そしたらなつみちゃんが『引っ張ってるように見せて、いっしょに踊るのどうでしょ!』って、キラッキラの笑顔で言いよるんですよ。まぁ、お友だちにやるくらいならええかな思て、一応それを打開策として用意させたんです。ほいたら、それしか用意せーへんもんで、美沙ちゃんならまだしも、藍染隊長にもやってもうて。あの子、変に度胸あるわぁって(笑)」
「ふーん、その次がボクだったわけね。キミが許した披露しても良い技がダンスだけだから、恥ずかしくてもやってみたと。それでボクとチューするの想像しちゃって、ダンスをするって命令がそっちに上書きされて、斬魄刀の力が発動しちゃったってことか。かわいい暴走だな💕」
「ねぇ、京楽さん。なつみちゃんのこと護ってあげれるように、ボクらに協力してもらえません?」
「というと?」
「悪いことしようとする人たちがなつみちゃんに目ぇ付けて、彼女利用して、彼女を悲しませたりせえへんように、夢現天子のことを内緒にしとってください」
市丸がこれまでに観察してわかった夢現天子の実態に、嘘やいい加減な情報が含まれていないのは読み取れた。しかし、京楽には理解できないこと、腑に落ちないことがあった。
「藍染隊長にも口止めを頼んだのかな?」
「もちろんです」もちろん市丸は彼になつみの能力について尋ねられていた。そしてもちろん、まだ把握しきれていないと言って、濁しておいていた。「でも頼むまでもなく、藍染隊長もボクと同じ意見で、公言は避けるべきや言うてました。始解自体もそんな使わんようにって」
「そっかそっか…」
「イヅルもなつみちゃんのお友達もみんな納得してくれました。せやから京楽さんも…」
「ごめんね〜。そのお願いはきけないや」
「え…、何でですか」
なつみのためだと念を押せば首を縦に振ってくれると想定していたが、やはりこの男、そう簡単には事を運ばせてくれないらしい。
「藍染隊長はたまたまキミと考え方が一緒だっただけだよね。吉良くんやなつみちゃんのお友達、なつみちゃん本人も、隊長であるキミの意見には反対できない立場にある訳だし。今のキミのお話を聞く限り、ただただキミの意見でしかないんだよ。夢現天子のことは本当のことだろうね。それで予想される最悪の事態も、ボクも想像できる。でもさ、その想定は可能性のひとつでしかないから、キミは心配しすぎだと思うよ。三番隊の悪い風習かな、悲観的に物事を見ちゃうの。ねぇ、キミは一体、何からなつみちゃんを護ろうとしているんだい?」
「……」
「答えられない…か。ま、言いたくないなら別に良いけどさ。今のところ興味無いから。それよりもボクは、なつみちゃんの気ぃー持ぉーちっが気になるよ」自分の胸をポンポンポンっと叩いて、京楽はそう言った。「彼女はどうしたがってるんだい」
また何も答えられない市丸。
「知らないの?一番近くで、ずっと彼女を見てきたのに、よくあの子の努力を無かったことにするようなことをあの子に頼めるね」
「そんなことは…、わかってますよ」
「いや、わかってない。なつみちゃんの口から直接、どう自分の力と付き合っていきたいのか聴かなきゃ駄目だろう?違うかい?キミは自分の頭の中でわかった気になってるだけだ。ありそうな現実を思いついて、もっともな理由を並べ立てて、みんなの心を掌握して、事態を静かに収めたいって?キミね、ひとりで何でも抱え込みすぎ」
京楽は市丸の肩に手を置いてやって、慰めた。
「なつみちゃんを想ってのことだとはわかってるよ。でもそれじゃいけない。彼女の気持ちを無視しちゃいけないんだ。彼女には運命を選ぶ権利がある」
「…その通りですね」
手を下ろして、京楽は続けた。
「ボクはキミの考えを否定しようとは思わない。心配しすぎてしまうのも仕方ない。どうにかしなきゃって思うよね。けどさ、考えてみなよ、相手はあのなつみちゃんだよ?何かあっても、とびきり優しい心を持ったあの子なら、ちゃんと乗り越えられると思わないかい?彼女らしいやり方で。ボクらだって全力であの子をサポートするし。困難は分かち合えたら、1人分の負担がグッと軽くなるじゃないか。どうかな、ボクは間違ったこと言ってる?」
「いえ。ボクとは真逆の可能性でお話しされてるなとは思いますけど」
「じゃあ、なつみちゃんがどの可能性を選びたいのか、聴きに行こうよ」
「しゃーないですね。行きましょうか」
2人は立ち上がり、その場を後にする。向かうはなつみが逃げた行方。上階にある専用の仕事部屋だ。
「人を思い通りに操れるとかなら、まだ信じられるよ。念力とか、霊力の流れを利用してできそうだからね。なつみちゃんの術にかかって歩かされてるとき、そう思ったもん」
「ボクも初めはそう思てました。対象を絶対服従させる能力やって。なつみちゃんが初めて始解をしたときの相手はボクやったんですけど、そんときはなつみちゃんの言いなりになって、動かされました。どんだけ頭で拒否しても、体がなつみちゃんの命令に従ってまうんです。そん次になつみちゃんは、いくつかのお掃除道具に命吹き込んで、それぞれバラバラの動きで掃除させてました。それで、人だけやなく、物も従わせれるってわかった。なつみちゃんは力の悪用なんてせん子やってわかってますけど、万が一のことも考えて、ボクは身の危険を感じるまでは能力解放をせんように彼女に言いました。あんなに優しい子をイジメや陰謀に巻き込みたくないんや」
「それで、本当の能力を隠してたってわけ」
「はい。あの段階でもボクは脅威を感じましたけど、なつみちゃんの夢現天子のすごさはそんなもんやなかった。彼女が力を解放しているところを見なくても、聞かなくても、息すら止めていても、相手は術にかかってしまう。なつみちゃんの能力が届くんは、半径50m圏内。せやけど、それもなつみちゃんが強くなれば広がっていくやろ。その中でなら、なつみちゃんは何でもできる。瞬間移動も空を飛ぶことも」
「そんな馬鹿な」
「ボクはこの目で見てますから、信じるしかないですよ。弱点はあるんかな…。なつみちゃんの術から逃れるには、なつみちゃんの集中を他に逸らすか、あとは霊圧を上げて力尽くで抵抗するかですね。能力の発動条件については、なつみちゃんが『こうしたい!』ってハッキリした意思を持って命令せんとあかん思てたけど、京楽さんとのこと聞いて、命令する必要が無いいうんがわかりました。なつみちゃんの『こうだとええな』って思いが斬魄刀に伝わって、なつみちゃんの願いを叶えてあげてるんやってボクは推測します。彼女が望む世界を、あの子は自由につくれるんですよ」
「そうか…」
「なつみちゃんはピンと来てへんかったけど、なつみちゃんの能力があれば、誰にも気付かれんと盗みを働くことができるし、自分の手を汚さずに暗殺もできる。使い方によっては、どんだけでもアクドイことができてまう。なつみちゃんがそないな力持ってるのを周りに知られたくないんですよね、ボク」
「なるほど」
「でもやっぱり、なつみちゃんと仲良くしてる人らは、なつみちゃんがどんな始解するか見てみたい思うじゃないですか。やから、誤魔化せるようにせないうて。そしたらなつみちゃんが『引っ張ってるように見せて、いっしょに踊るのどうでしょ!』って、キラッキラの笑顔で言いよるんですよ。まぁ、お友だちにやるくらいならええかな思て、一応それを打開策として用意させたんです。ほいたら、それしか用意せーへんもんで、美沙ちゃんならまだしも、藍染隊長にもやってもうて。あの子、変に度胸あるわぁって(笑)」
「ふーん、その次がボクだったわけね。キミが許した披露しても良い技がダンスだけだから、恥ずかしくてもやってみたと。それでボクとチューするの想像しちゃって、ダンスをするって命令がそっちに上書きされて、斬魄刀の力が発動しちゃったってことか。かわいい暴走だな💕」
「ねぇ、京楽さん。なつみちゃんのこと護ってあげれるように、ボクらに協力してもらえません?」
「というと?」
「悪いことしようとする人たちがなつみちゃんに目ぇ付けて、彼女利用して、彼女を悲しませたりせえへんように、夢現天子のことを内緒にしとってください」
市丸がこれまでに観察してわかった夢現天子の実態に、嘘やいい加減な情報が含まれていないのは読み取れた。しかし、京楽には理解できないこと、腑に落ちないことがあった。
「藍染隊長にも口止めを頼んだのかな?」
「もちろんです」もちろん市丸は彼になつみの能力について尋ねられていた。そしてもちろん、まだ把握しきれていないと言って、濁しておいていた。「でも頼むまでもなく、藍染隊長もボクと同じ意見で、公言は避けるべきや言うてました。始解自体もそんな使わんようにって」
「そっかそっか…」
「イヅルもなつみちゃんのお友達もみんな納得してくれました。せやから京楽さんも…」
「ごめんね〜。そのお願いはきけないや」
「え…、何でですか」
なつみのためだと念を押せば首を縦に振ってくれると想定していたが、やはりこの男、そう簡単には事を運ばせてくれないらしい。
「藍染隊長はたまたまキミと考え方が一緒だっただけだよね。吉良くんやなつみちゃんのお友達、なつみちゃん本人も、隊長であるキミの意見には反対できない立場にある訳だし。今のキミのお話を聞く限り、ただただキミの意見でしかないんだよ。夢現天子のことは本当のことだろうね。それで予想される最悪の事態も、ボクも想像できる。でもさ、その想定は可能性のひとつでしかないから、キミは心配しすぎだと思うよ。三番隊の悪い風習かな、悲観的に物事を見ちゃうの。ねぇ、キミは一体、何からなつみちゃんを護ろうとしているんだい?」
「……」
「答えられない…か。ま、言いたくないなら別に良いけどさ。今のところ興味無いから。それよりもボクは、なつみちゃんの気ぃー持ぉーちっが気になるよ」自分の胸をポンポンポンっと叩いて、京楽はそう言った。「彼女はどうしたがってるんだい」
また何も答えられない市丸。
「知らないの?一番近くで、ずっと彼女を見てきたのに、よくあの子の努力を無かったことにするようなことをあの子に頼めるね」
「そんなことは…、わかってますよ」
「いや、わかってない。なつみちゃんの口から直接、どう自分の力と付き合っていきたいのか聴かなきゃ駄目だろう?違うかい?キミは自分の頭の中でわかった気になってるだけだ。ありそうな現実を思いついて、もっともな理由を並べ立てて、みんなの心を掌握して、事態を静かに収めたいって?キミね、ひとりで何でも抱え込みすぎ」
京楽は市丸の肩に手を置いてやって、慰めた。
「なつみちゃんを想ってのことだとはわかってるよ。でもそれじゃいけない。彼女の気持ちを無視しちゃいけないんだ。彼女には運命を選ぶ権利がある」
「…その通りですね」
手を下ろして、京楽は続けた。
「ボクはキミの考えを否定しようとは思わない。心配しすぎてしまうのも仕方ない。どうにかしなきゃって思うよね。けどさ、考えてみなよ、相手はあのなつみちゃんだよ?何かあっても、とびきり優しい心を持ったあの子なら、ちゃんと乗り越えられると思わないかい?彼女らしいやり方で。ボクらだって全力であの子をサポートするし。困難は分かち合えたら、1人分の負担がグッと軽くなるじゃないか。どうかな、ボクは間違ったこと言ってる?」
「いえ。ボクとは真逆の可能性でお話しされてるなとは思いますけど」
「じゃあ、なつみちゃんがどの可能性を選びたいのか、聴きに行こうよ」
「しゃーないですね。行きましょうか」
2人は立ち上がり、その場を後にする。向かうはなつみが逃げた行方。上階にある専用の仕事部屋だ。