第九章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
翌日、巨大なドームで街を囲ってしまう計画について更に話し合い、実際に外周を測りにも出掛けていった。
「言うは易かったなー。長さも高さも広さも要る。人手が足りても、材料が集まらないかなぁ、マジ」
「人手があっても、デカい岩を積み上げる作業なんてやりたかないぜ」
「そうだよねぇ。果てしないよねぇ…」
手分けして測ってきた大まかな距離を合わせ、外周の合計を出してみた。
「トトロみたいに、ブアーッて木を生やせたら良いのになー。傘持ってグングン踊るとグングン育つの」
なつみは机にへばっていた。
「日進月歩だよ、なつみ。現実的に考えないと。少しでも手をつければ、それだけちゃんと作業を進めたことになる。サボらなければ、いつかは完成するんだよ。諦めるのは早い気がするな」
「ザエポンは優等生…🫠」
「やめてって言ったよね、その呼び方。お茶淹れてきてあげたのに、なつみにだけあげないから」
「なぁーッ❗️くださいー、ザエルアポロさまぁーッ❗️カラッカラでございましゅーッ❗️」
「わかれば、よろしい」
氷の入ったグラスにお茶を注いでくれた。
「どうぞ」
「ありがとー😊」
くぴっと飲むと、カランと氷の音がした。
「でもさ、真面目な話。辞めるなら今だよ。場所の想定ができただけで、具体的なことはまだやってないもん」
「弱気だな」
ゾマリだ。
「規模がデカ過ぎるんだってぇ。でも…、太陽光は欲しいものだから、別の方法があるならって思うんだけど」
「無いんだろう」
ゾマリはなつみのグラスのそばに何かを置いた。
「わぁ💖」
「なつみのために焼いておいた。アイスティーと一緒に、よかったら食べてくれ」
「やったぁ❗️ゾマリんのアモールクッキー🍪」
この「ん」は気付かれない程度のしれっと感で、名前の最後に付けられている。
「おいちぃ😋」
美味しそうに、クッキーを頬張った。
「グレートブラボーボックスの拡張スロットに、アモール・バッファーを差し込む」
そう呟いて、さらにアモールクッキーを齧る。
「何今の(笑)」
「わかんない(笑)」
言った本人もわからない。調べてもわからない、夢みる機械。とらわれの娘よ、わたしを訪ねたまえ。エン👆
「お気に召してくれたようだな。また作ってあげよう」
なつみがもぐもぐにこにこする顔を眺め、ゾマリも満足そうに言った。
「ほんと⁉️やった〜😋」
嬉しそう。
「ドームと太陽の完成祝いにな😌」
「😱💦」一変。「そんなぁ😫」
「安い褒美だな😒」
偉そうに脚を組んで、頬杖までしたノイトラが口を挟んできた。
「そんなことないよ❗️虚圏なんだから、安くない。安くないけどさぁ」
彼のことは注意するが、クッキーをご褒美にしかしてもらえないのは、なつみにとっていただけない。
「太陽の恵みに感謝をし、ありがたく頂く。食物とはそのように、価値あるものだ。この世界に光が生まれる記念日に、なつみと共に、豊かな未来を想いながら、同じものを食す。私には、この上ない幸せになるでしょう」
「ゾマリん🥺」
「私はあなたに無理を言っているつもりは、全く無い。心配せずとも、必ずできると断言しましょう」
「すげぇ自信」
ノイトラのぼそっ。
「なつみはまだ、この土地に慣れていないのだ。我々虚について、計り知れていない。彼女が仮定する限界が、いかに低いところにあるのか、わかっていないのだよ」
「なんだとぉー✊」
お茶を飲みつつ、拳を振る。
「何する気だ?」
「皆も考えていたことだろう。ギリアンに働いてもらうのだよ☝️」
「んにょ⁉️そんなことできるの❓👀」
ゾマリの発言に、周りは「あぁ〜」と納得の反応を見せた。
「できるよ。ここから少し離れたところに、ギリアンの巣が何箇所かあってね。彼らに頼めば、石材を運んできてくれるはずさ。1個体が大きいから、一度に運べる量も期待できる。大勢いるし、案外、資材調達はすぐできそうかな。大柄の破面にも声をかけてみれば、もっと捗るだろうね。確かに、この方法なら、なつみの悩みはちっぽけだ」
ザエルアポロの説明を、うんうんと聞いたが、疑問がある。
「ちっぽけで悪かったけどさ、そんなに簡単に、お願い聞いてくれる?脅したりしたらダメだよ❗️ん〜、ボランティアで動いてくれるとも思えないし、タダ働きはかわいそう。それこそ何か、報酬的なのを用意してあげなきゃならないんじゃない?🤔」
「その通りだ」
「じゃあ何にするの?何?なに?なに?何でみんな、ぼくを見てるの?」
キョロキョロ周りを見ると、集まる全員がこちらを見ていた。察したなつみは、机をひとつ叩いて、声を荒げる。
「ぼくを食べさそうったって、そうはいかないぞッ‼️‼️💦」
「それが一番のご褒美になるんだけどな」
「ダメったら、ダメ‼️ぼくは、おいしくないぞ‼️😤」
「そんなの食わなくてもわかるぜ。お前は旨いに決まってる。けどな、ちっこすぎて、一瞬で飲み込んじまいそうなんだよな。ギリアンにとっちゃ、魚卵の一粒みてぇなもんだ」
「失敬なッ‼️せめてウズラの卵だ‼️💢」
怒ったなつみは、ノイトラの頬杖している腕をスパンとチョップした。が、硬くてグンッとひと揺れしただけだった。
「痛ーいッ‼️😫」
「なつみをチラつかせて、馬の鼻先に吊るした人参みたいにすれば、言うこと聞くかもな」
「なつみを食べさせやしないから、安心して。そんなことをしたら、藍染様の怒りを買ってしまうから」
「なら、どうするっていうの」
身構えるなつみ。答えたのはハリベルだった。
「身なりを整えてやろう」
「はい❓」
「そう。その手でいくよ」
「いやいや、ザエルアポロもハリベルさんも、わかるように言ってよ😧」
「髪が伸びてる」「爪モ伸ビテル」
「先に入浴してくると良いんじゃないか?」
アーロニーロもゾマリも、先の2人の意図がわかっている様子。
「なになに⁉️注文の多い料理店か何か⁉️やめてよ‼️😫」
焦るなつみ。
「だから、食わせねぇっつってんだろ。バーカ😒」
「んなっ‼️バカって言う方がバカだ、バーカ❗️」
振り向いてくれたなつみを引き寄せて、ノイトラは彼女の右耳元の髪をひと束掴んだ。
「お前のいらねぇ部分だけよこせっつってんだよ。騒ぐな、チビ助」
「むっ‼️///」
少し顔の距離が近くて、なつみはドキッとした。
「そういうことだから。垢すり、耳掃除、果ては涙活もしてもらおうかな」
ザエルアポロが、ノイトラとなつみを引き離した。
「垢⁉️」
「運動をして、汗をかいてもらうのも良いだろう」
「そうだね。でも今日はもう疲れちゃってるでしょ?運動は、また明日にしてもらおう」
「ねぇねぇ、そんなカスを集めてどうしようっていうの?」
「ウンコまではいらねぇからな。オレらにもその辺のプライドはある」
「やらねぇよ‼️わかってるよ、そんなの‼️」
何となくパッとおしりを隠すなつみ。
「集めたなつみのカケラを餌にするんだ。それでギリアンたちの気を引く。働いてくれた者たちには、それを報酬として食わせてやる」
「へぇ〜…」
ハリベルの話を聞きながら、まだおしりを押さえている。念のため。
「なつみの味を一度覚えれば、再び資材調達に向かうだろう」
ぱちぱち瞬きをして考えた。
「それってさ、ぼくを一目見たら、襲ってきますよってことじゃないの?」
「だろうが、気にするな」
あっさり。
「ほらぁ‼️気にするってぇ‼️虚夜宮ですら外出禁止になんの、ぼく⁉️ヤダァッ‼️」
「うるせぇよ!別にオレらが守ってやりゃ良いんだろ。ギリアンごときの群れなんざ、チョロいもんだぜ」
「かっこいいこと言ってくれるところ悪いけど、僕らが守るまでもないと思うよ」
「どういうことだよ」
ノイトラの鋭い視線がザエルアポロを刺す。
「どういうことだよ❗️」
それに続いて、あんまり怖くない視線も刺さってきた。
「なつみは、食べるのが勿体ない存在だということさ。最上の喜びを一瞬味わって終わらせるよりも、そばにいて少しずつ微笑ましい時を過ごさせてもらう方が、どこか満たされていく気がするんだよね」
「気がしてるだけな」
「そのことをギリアンたちも感じ取れれば、襲っては来ないよ。さぁ、まずは垢すりから始めてもらおうかな」
にっこり笑って、ザエルアポロはパンッと手を合わせて言った。
「うげっ😵💫」
嫌がるなつみは放っておく。
「ハリベルたち、任せていいかな」
「わかった。行くぞ」
「「「はい‼︎」」」
ハリベルの指示で、アパッチ、ミラ・ローズ、スンスンがなつみを捕らえ、立ち上がらせ、出口へ連行していく。
「あぁ❗️ちょっとぉ❗️シャワー浴びても良いけど、ひとりで洗うからね❗」
「ダメだ」
先頭をいくハリベルの厳しい一言。
「もぉー❗️まだクッキー残ってるのにー‼️」
その訴えに、スンスンが親切に引き返しくれて、残ったアモールクッキーを持ってきてくれた。
「これで文句はありませんね」
「むぅう‼️無くなっちゃった‼️」
認めちゃったなつみであった。
今や、膝枕をさせてもらい、耳掃除をしてもらっているなつみ。自分の部屋に戻ってきた彼女を、お呼びでないのに迎え入れたのは、ザエルアポロだった。2人はベッドの上。
「むぅ。」
「君の耳は小さめだね。フフッ、かわいい」
「むぅ❗️」
「じっとしてて。怪我するよ」
(ーむー)
なつみは、切り揃えられた前髪に触れる。
「髪も爪も切られちゃった」
「少しだよ。綺麗にしてもらってると思えば良いでしょ」
「眉毛も揃えてもらったし、ムダ毛まで剃られたんだよ。こんなのまるで」
「デートに行く前に、準備しているみたい?」
ザエルアポロはなつみの耳から採れたものを、用意してきたトレーに移す。
「そー…。しないけどね❗️」
「市丸はまだ来ないだろうからね」
そう言われて、思わず動きたくなった。
「絨毯に乗って、楽しそうにしているのを見てたよ。君たちはそういう関係なの?」
「そういうって、どういうの。隊長とぼくは、上司と部下。あと、兄弟みたいな仲良しな関係だよ。ふたりでお出かけするにしたって、こんな準備はする気起きないもんね」
「そう?もっと深い関係に見えたけどな」
また動きそうになった。
「っ…。そんなことない。ないよ。ぼくには恋人がいるんだもん。しばらく離ればなれだけど、想いは強く結ばれてるの。会いたくてたまらないくらい好きな人がちゃんといるの❗️」
「はいはい。わかったよ。そうか、君はもう誰かのものなんだね。反対の耳を見せて」
なつみは起きた。
「なつみに愛されてるなんて、羨ましい奴がいたもんだ」
「何言ってんの。ぼくは愛をみんなに振り撒いてるよ。ザエルアポロのことも大好きだから、愛してるとも言えるね。ただ、恋心が向けてあげられないだけ」
大切そうに、胸に手を当てて言った。
「その恋心が羨ましいんだよ。特に僕達、虚は欲張りだから、本当は君を丸ごと奪いたいほど欲しいんだよね」
本来ならときめくようなセリフのようだが、なつみは目を細めてから、ザエルアポロの反対側へ移動し、彼の膝に頭を乗せた。
「それ、恋心と違うよ。ただの食欲だよ」
核心をついて、ツンと言ってやった。
「あはっ、そっか。そうだよね。ほんとだ。フフフッ」
耳掃除を再開する。
「やっぱりなつみは賢いな(笑)」
「だってさ、おかしいじゃん。さっきまで着てた服持ってったでしょ。服に付いてた髪の毛とか臭いが欲しいとか言って。食材にしか見られてねぇわ。ぼくはここの棟梁だから生かされて、襲われないでいるだけなんだよ」
「そんなこと言わないで。かけがえのない存在であることに違いないんだから。君を見て、『美味しそう』ってみんな思ってるけど」
(わーい、人気者〜😑)
「一緒にいると、満腹感に似たものを感じるんだよ。君を食べなきゃいけないっていう命令が、頭から消え去るみたいにね。僕らは好き好んで藍染様のお言葉に従い、好き好んで君と暮らしたいと思ってる。襲いたかったらとっくにしてる、けどしていないでしょう?それなりの理由があるんだよ。だから、僕らのこともっと信用して欲しいな。フフッ、大きいのが採れたよ」
ごそっという音の後、耳から棒が離れたのを感じて、ザエルアポロの顔が見れるように、なつみはちょっと頭を動かした。
「食べなくても良いって思ってても、食べてはみたいんでしょ。こんなことしてさ」
「そうだね。味見ができる良いチャンスだと思って、かき集めさせてもらってるね(笑)」
「まったくもー。ぼくから出るゴミなんか、よく食べようと思うよ」
「そう聞くと気持ち悪いことをしているみたいだけど、美味しい成分を抽出するから、ゴミという意識は無いかな。そのままでは食べずに、出汁として頂くつもりなんだ」
「充分キモッちゃるいわ」
「あはは」
「笑い事じゃあねぇーわ☝️」
そんなこんなで耳掃除も終了。
「いろいろありがとう。借りた服は洗って持ってきてあげるからね」
「おーう。こっちもありがてーやなー、こんなスッキリさせてもらっちまってよー」
「フフッ、怒ってる」
「理由が理由なんだよ❗️」
「必要なことだから、今日のところは泣き寝入りして😊」
「くぅー‼️😖」
「新しい服貰えたんだから、もっと喜んだらどう?」
「それとこれとはだッ‼️って、そうだそうだ。そうそう、服だよ、服。ちょいとききたいことがあるんだけどね、お兄さん」
「何?」
なつみの部屋を出たところでの会話である。
「こういう服ってさ、どこから持ってくるの?」
「あれ?気に入らなかった?」
「文句を言いに行きたいんじゃないわ。そうじゃなくて、リリネットちゃんに用意してあげたくてさ」
「あー、君が会ってきたっていう最上級大虚か」
「うん。まだ藍染隊長からお返事もらってないけど、服くらい先に準備してても良いかなって思ってさ」
「服くらいならね。大丈夫だと思う。あのね、織物を作ってる棟があるんだけど。そこで衣類も作られているんだよ」
「虚圏で作ってんの⁉︎糸は⁉︎」
「虚って、いろんな特殊能力を持った個体がいてね、蜘蛛や蚕のように糸を自ら作り出せる者たちがいるんだ。彼らから出た糸で生地を織り、僕らが着る服にしている。デザイナーもそこにいるから、好みに合わせたオーダーもできるよ」
「へぇー。マジ」
「マジ」
「だからみんなオシャレなのかぁ。今から行ってこよー。どこに建物があるって?」
それから何時間か後、なつみは大きな袋を背負って出かけていた。
「急がなきゃ、ギリアンたちが動き出しちゃう」
その前に、用事を済ませておきたい。彼らが言ってくれた、「襲われない」という言葉を信じたいが、絶対とは言い切れないため、早めに出てきたのだった。
向かったのはあの洞窟。しかし、そこへ辿り着くまでもなく、彼女と再開できた。
「なつみ!」
「リリネットちゃん❗️迎えに来てくれたの?」
「それはこっちのセリフだよ」
「ああ、そっか」
「その袋、何?」
「これねー、リリネットちゃんにプレゼント😊」
「ほんと⁉︎ちょっと、早く家に行こっ」
「うん❗️行こー行こー❗️」
洞窟の中は変わりなく、掘りごたつが残されていた。
「明かり点けまーす」
なつみが光を天井に放った。
「それがさー、いちおリリネットちゃんのこと頼んでみたけど、許可はまだもらってなくてさ。悪いんだけど、もう少し待っててもらいたいんだ」
「ふーん、そう。ま、あたしはなつみが遊びに来てくれるだけで、今は充分だけどね。忘れないでいてくれたんだもん」
「忘れるわけないよ❗️」
机に袋を乗せ、ふたりは椅子に座り込んだ。
「一緒に住むのはまだ先になるけど、絶対仲間に入れてもらえるって信じて、勝手にリリネットちゃんの服、用意して持ってきちゃったんだ😁」
ジャジャーンと、袋の中身を続々と出していった。
「リリネットちゃんの好みがわからなかったから、無難なのを選んできたつもりだよ」
「なつみのと似てるね。…、何で2セットずつあるの?しかも片っぽおっきくない?」
服の上下、下着、靴と、全身コーディネートが揃っていた。
「破面になったとき、大概みんな小さくなるらしいけど、例外的にリリネットちゃんが大きくなることもあるかもしれないから、念のためにメンズサイズも用意してきたの。大は小を兼ねるって言うじゃん」
「そうだけど」
「遠慮しないで受け取って。すっぽんぽんでいるよりマシだから。別のが良かったら、違う新しいのを作りに行こう。ね❗️」
「うん😌」
リリネットは、トップスを広げて、身体に当ててみた。
「今んとこ、ちっちゃい方で着れそうだね👍」
なつみは良いことしたぞと思っている。鼻が高い。
「さてと。ぼくはもうお暇するよ」
着てくれそうなのを確認して、なつみは席を立つ。
「もう行っちゃうの?ゆっくりしてってよ」
「ごめんね。そうしたいの山々だけど、ぼくには時間が無いんだ。早く帰らないと、ギリアンの群れに迫られちゃうかもしれないの。ぼくの風味を付けた餌を食べさせて、気を引くらしくてさ。そんで石材運んでもらうって言うんだ。その餌が気に入られたら、ぼくまで気に入られることになるでしょ?危ない危ない。ギリアンたちが虚夜宮近くに集まる前に、帰らなきゃ」
「そうなんだ。石材って、街づくりに使うヤツだよね。わかった。じゃあさ、途中までなら、あたしもついてって良い?」
「うん❗️良いと思う。街の境界線はもう決まってるから、そこまで一緒に行こう❗️」
「やった😁」
プレゼントはその場に置いておき、なつみとリリネットは早速出発した。
「なつみ、前より足速くなった?霊圧も強くなってない?」
「そう思う❓嬉しいな〜。こっちの空気に慣れてきて、一時的に成長期になってるのかもね」
「身長は変わらないけど😄」
「クラァッ‼️黙らっしゃい💢」
「言うは易かったなー。長さも高さも広さも要る。人手が足りても、材料が集まらないかなぁ、マジ」
「人手があっても、デカい岩を積み上げる作業なんてやりたかないぜ」
「そうだよねぇ。果てしないよねぇ…」
手分けして測ってきた大まかな距離を合わせ、外周の合計を出してみた。
「トトロみたいに、ブアーッて木を生やせたら良いのになー。傘持ってグングン踊るとグングン育つの」
なつみは机にへばっていた。
「日進月歩だよ、なつみ。現実的に考えないと。少しでも手をつければ、それだけちゃんと作業を進めたことになる。サボらなければ、いつかは完成するんだよ。諦めるのは早い気がするな」
「ザエポンは優等生…🫠」
「やめてって言ったよね、その呼び方。お茶淹れてきてあげたのに、なつみにだけあげないから」
「なぁーッ❗️くださいー、ザエルアポロさまぁーッ❗️カラッカラでございましゅーッ❗️」
「わかれば、よろしい」
氷の入ったグラスにお茶を注いでくれた。
「どうぞ」
「ありがとー😊」
くぴっと飲むと、カランと氷の音がした。
「でもさ、真面目な話。辞めるなら今だよ。場所の想定ができただけで、具体的なことはまだやってないもん」
「弱気だな」
ゾマリだ。
「規模がデカ過ぎるんだってぇ。でも…、太陽光は欲しいものだから、別の方法があるならって思うんだけど」
「無いんだろう」
ゾマリはなつみのグラスのそばに何かを置いた。
「わぁ💖」
「なつみのために焼いておいた。アイスティーと一緒に、よかったら食べてくれ」
「やったぁ❗️ゾマリんのアモールクッキー🍪」
この「ん」は気付かれない程度のしれっと感で、名前の最後に付けられている。
「おいちぃ😋」
美味しそうに、クッキーを頬張った。
「グレートブラボーボックスの拡張スロットに、アモール・バッファーを差し込む」
そう呟いて、さらにアモールクッキーを齧る。
「何今の(笑)」
「わかんない(笑)」
言った本人もわからない。調べてもわからない、夢みる機械。とらわれの娘よ、わたしを訪ねたまえ。エン👆
「お気に召してくれたようだな。また作ってあげよう」
なつみがもぐもぐにこにこする顔を眺め、ゾマリも満足そうに言った。
「ほんと⁉️やった〜😋」
嬉しそう。
「ドームと太陽の完成祝いにな😌」
「😱💦」一変。「そんなぁ😫」
「安い褒美だな😒」
偉そうに脚を組んで、頬杖までしたノイトラが口を挟んできた。
「そんなことないよ❗️虚圏なんだから、安くない。安くないけどさぁ」
彼のことは注意するが、クッキーをご褒美にしかしてもらえないのは、なつみにとっていただけない。
「太陽の恵みに感謝をし、ありがたく頂く。食物とはそのように、価値あるものだ。この世界に光が生まれる記念日に、なつみと共に、豊かな未来を想いながら、同じものを食す。私には、この上ない幸せになるでしょう」
「ゾマリん🥺」
「私はあなたに無理を言っているつもりは、全く無い。心配せずとも、必ずできると断言しましょう」
「すげぇ自信」
ノイトラのぼそっ。
「なつみはまだ、この土地に慣れていないのだ。我々虚について、計り知れていない。彼女が仮定する限界が、いかに低いところにあるのか、わかっていないのだよ」
「なんだとぉー✊」
お茶を飲みつつ、拳を振る。
「何する気だ?」
「皆も考えていたことだろう。ギリアンに働いてもらうのだよ☝️」
「んにょ⁉️そんなことできるの❓👀」
ゾマリの発言に、周りは「あぁ〜」と納得の反応を見せた。
「できるよ。ここから少し離れたところに、ギリアンの巣が何箇所かあってね。彼らに頼めば、石材を運んできてくれるはずさ。1個体が大きいから、一度に運べる量も期待できる。大勢いるし、案外、資材調達はすぐできそうかな。大柄の破面にも声をかけてみれば、もっと捗るだろうね。確かに、この方法なら、なつみの悩みはちっぽけだ」
ザエルアポロの説明を、うんうんと聞いたが、疑問がある。
「ちっぽけで悪かったけどさ、そんなに簡単に、お願い聞いてくれる?脅したりしたらダメだよ❗️ん〜、ボランティアで動いてくれるとも思えないし、タダ働きはかわいそう。それこそ何か、報酬的なのを用意してあげなきゃならないんじゃない?🤔」
「その通りだ」
「じゃあ何にするの?何?なに?なに?何でみんな、ぼくを見てるの?」
キョロキョロ周りを見ると、集まる全員がこちらを見ていた。察したなつみは、机をひとつ叩いて、声を荒げる。
「ぼくを食べさそうったって、そうはいかないぞッ‼️‼️💦」
「それが一番のご褒美になるんだけどな」
「ダメったら、ダメ‼️ぼくは、おいしくないぞ‼️😤」
「そんなの食わなくてもわかるぜ。お前は旨いに決まってる。けどな、ちっこすぎて、一瞬で飲み込んじまいそうなんだよな。ギリアンにとっちゃ、魚卵の一粒みてぇなもんだ」
「失敬なッ‼️せめてウズラの卵だ‼️💢」
怒ったなつみは、ノイトラの頬杖している腕をスパンとチョップした。が、硬くてグンッとひと揺れしただけだった。
「痛ーいッ‼️😫」
「なつみをチラつかせて、馬の鼻先に吊るした人参みたいにすれば、言うこと聞くかもな」
「なつみを食べさせやしないから、安心して。そんなことをしたら、藍染様の怒りを買ってしまうから」
「なら、どうするっていうの」
身構えるなつみ。答えたのはハリベルだった。
「身なりを整えてやろう」
「はい❓」
「そう。その手でいくよ」
「いやいや、ザエルアポロもハリベルさんも、わかるように言ってよ😧」
「髪が伸びてる」「爪モ伸ビテル」
「先に入浴してくると良いんじゃないか?」
アーロニーロもゾマリも、先の2人の意図がわかっている様子。
「なになに⁉️注文の多い料理店か何か⁉️やめてよ‼️😫」
焦るなつみ。
「だから、食わせねぇっつってんだろ。バーカ😒」
「んなっ‼️バカって言う方がバカだ、バーカ❗️」
振り向いてくれたなつみを引き寄せて、ノイトラは彼女の右耳元の髪をひと束掴んだ。
「お前のいらねぇ部分だけよこせっつってんだよ。騒ぐな、チビ助」
「むっ‼️///」
少し顔の距離が近くて、なつみはドキッとした。
「そういうことだから。垢すり、耳掃除、果ては涙活もしてもらおうかな」
ザエルアポロが、ノイトラとなつみを引き離した。
「垢⁉️」
「運動をして、汗をかいてもらうのも良いだろう」
「そうだね。でも今日はもう疲れちゃってるでしょ?運動は、また明日にしてもらおう」
「ねぇねぇ、そんなカスを集めてどうしようっていうの?」
「ウンコまではいらねぇからな。オレらにもその辺のプライドはある」
「やらねぇよ‼️わかってるよ、そんなの‼️」
何となくパッとおしりを隠すなつみ。
「集めたなつみのカケラを餌にするんだ。それでギリアンたちの気を引く。働いてくれた者たちには、それを報酬として食わせてやる」
「へぇ〜…」
ハリベルの話を聞きながら、まだおしりを押さえている。念のため。
「なつみの味を一度覚えれば、再び資材調達に向かうだろう」
ぱちぱち瞬きをして考えた。
「それってさ、ぼくを一目見たら、襲ってきますよってことじゃないの?」
「だろうが、気にするな」
あっさり。
「ほらぁ‼️気にするってぇ‼️虚夜宮ですら外出禁止になんの、ぼく⁉️ヤダァッ‼️」
「うるせぇよ!別にオレらが守ってやりゃ良いんだろ。ギリアンごときの群れなんざ、チョロいもんだぜ」
「かっこいいこと言ってくれるところ悪いけど、僕らが守るまでもないと思うよ」
「どういうことだよ」
ノイトラの鋭い視線がザエルアポロを刺す。
「どういうことだよ❗️」
それに続いて、あんまり怖くない視線も刺さってきた。
「なつみは、食べるのが勿体ない存在だということさ。最上の喜びを一瞬味わって終わらせるよりも、そばにいて少しずつ微笑ましい時を過ごさせてもらう方が、どこか満たされていく気がするんだよね」
「気がしてるだけな」
「そのことをギリアンたちも感じ取れれば、襲っては来ないよ。さぁ、まずは垢すりから始めてもらおうかな」
にっこり笑って、ザエルアポロはパンッと手を合わせて言った。
「うげっ😵💫」
嫌がるなつみは放っておく。
「ハリベルたち、任せていいかな」
「わかった。行くぞ」
「「「はい‼︎」」」
ハリベルの指示で、アパッチ、ミラ・ローズ、スンスンがなつみを捕らえ、立ち上がらせ、出口へ連行していく。
「あぁ❗️ちょっとぉ❗️シャワー浴びても良いけど、ひとりで洗うからね❗」
「ダメだ」
先頭をいくハリベルの厳しい一言。
「もぉー❗️まだクッキー残ってるのにー‼️」
その訴えに、スンスンが親切に引き返しくれて、残ったアモールクッキーを持ってきてくれた。
「これで文句はありませんね」
「むぅう‼️無くなっちゃった‼️」
認めちゃったなつみであった。
今や、膝枕をさせてもらい、耳掃除をしてもらっているなつみ。自分の部屋に戻ってきた彼女を、お呼びでないのに迎え入れたのは、ザエルアポロだった。2人はベッドの上。
「むぅ。」
「君の耳は小さめだね。フフッ、かわいい」
「むぅ❗️」
「じっとしてて。怪我するよ」
(ーむー)
なつみは、切り揃えられた前髪に触れる。
「髪も爪も切られちゃった」
「少しだよ。綺麗にしてもらってると思えば良いでしょ」
「眉毛も揃えてもらったし、ムダ毛まで剃られたんだよ。こんなのまるで」
「デートに行く前に、準備しているみたい?」
ザエルアポロはなつみの耳から採れたものを、用意してきたトレーに移す。
「そー…。しないけどね❗️」
「市丸はまだ来ないだろうからね」
そう言われて、思わず動きたくなった。
「絨毯に乗って、楽しそうにしているのを見てたよ。君たちはそういう関係なの?」
「そういうって、どういうの。隊長とぼくは、上司と部下。あと、兄弟みたいな仲良しな関係だよ。ふたりでお出かけするにしたって、こんな準備はする気起きないもんね」
「そう?もっと深い関係に見えたけどな」
また動きそうになった。
「っ…。そんなことない。ないよ。ぼくには恋人がいるんだもん。しばらく離ればなれだけど、想いは強く結ばれてるの。会いたくてたまらないくらい好きな人がちゃんといるの❗️」
「はいはい。わかったよ。そうか、君はもう誰かのものなんだね。反対の耳を見せて」
なつみは起きた。
「なつみに愛されてるなんて、羨ましい奴がいたもんだ」
「何言ってんの。ぼくは愛をみんなに振り撒いてるよ。ザエルアポロのことも大好きだから、愛してるとも言えるね。ただ、恋心が向けてあげられないだけ」
大切そうに、胸に手を当てて言った。
「その恋心が羨ましいんだよ。特に僕達、虚は欲張りだから、本当は君を丸ごと奪いたいほど欲しいんだよね」
本来ならときめくようなセリフのようだが、なつみは目を細めてから、ザエルアポロの反対側へ移動し、彼の膝に頭を乗せた。
「それ、恋心と違うよ。ただの食欲だよ」
核心をついて、ツンと言ってやった。
「あはっ、そっか。そうだよね。ほんとだ。フフフッ」
耳掃除を再開する。
「やっぱりなつみは賢いな(笑)」
「だってさ、おかしいじゃん。さっきまで着てた服持ってったでしょ。服に付いてた髪の毛とか臭いが欲しいとか言って。食材にしか見られてねぇわ。ぼくはここの棟梁だから生かされて、襲われないでいるだけなんだよ」
「そんなこと言わないで。かけがえのない存在であることに違いないんだから。君を見て、『美味しそう』ってみんな思ってるけど」
(わーい、人気者〜😑)
「一緒にいると、満腹感に似たものを感じるんだよ。君を食べなきゃいけないっていう命令が、頭から消え去るみたいにね。僕らは好き好んで藍染様のお言葉に従い、好き好んで君と暮らしたいと思ってる。襲いたかったらとっくにしてる、けどしていないでしょう?それなりの理由があるんだよ。だから、僕らのこともっと信用して欲しいな。フフッ、大きいのが採れたよ」
ごそっという音の後、耳から棒が離れたのを感じて、ザエルアポロの顔が見れるように、なつみはちょっと頭を動かした。
「食べなくても良いって思ってても、食べてはみたいんでしょ。こんなことしてさ」
「そうだね。味見ができる良いチャンスだと思って、かき集めさせてもらってるね(笑)」
「まったくもー。ぼくから出るゴミなんか、よく食べようと思うよ」
「そう聞くと気持ち悪いことをしているみたいだけど、美味しい成分を抽出するから、ゴミという意識は無いかな。そのままでは食べずに、出汁として頂くつもりなんだ」
「充分キモッちゃるいわ」
「あはは」
「笑い事じゃあねぇーわ☝️」
そんなこんなで耳掃除も終了。
「いろいろありがとう。借りた服は洗って持ってきてあげるからね」
「おーう。こっちもありがてーやなー、こんなスッキリさせてもらっちまってよー」
「フフッ、怒ってる」
「理由が理由なんだよ❗️」
「必要なことだから、今日のところは泣き寝入りして😊」
「くぅー‼️😖」
「新しい服貰えたんだから、もっと喜んだらどう?」
「それとこれとはだッ‼️って、そうだそうだ。そうそう、服だよ、服。ちょいとききたいことがあるんだけどね、お兄さん」
「何?」
なつみの部屋を出たところでの会話である。
「こういう服ってさ、どこから持ってくるの?」
「あれ?気に入らなかった?」
「文句を言いに行きたいんじゃないわ。そうじゃなくて、リリネットちゃんに用意してあげたくてさ」
「あー、君が会ってきたっていう最上級大虚か」
「うん。まだ藍染隊長からお返事もらってないけど、服くらい先に準備してても良いかなって思ってさ」
「服くらいならね。大丈夫だと思う。あのね、織物を作ってる棟があるんだけど。そこで衣類も作られているんだよ」
「虚圏で作ってんの⁉︎糸は⁉︎」
「虚って、いろんな特殊能力を持った個体がいてね、蜘蛛や蚕のように糸を自ら作り出せる者たちがいるんだ。彼らから出た糸で生地を織り、僕らが着る服にしている。デザイナーもそこにいるから、好みに合わせたオーダーもできるよ」
「へぇー。マジ」
「マジ」
「だからみんなオシャレなのかぁ。今から行ってこよー。どこに建物があるって?」
それから何時間か後、なつみは大きな袋を背負って出かけていた。
「急がなきゃ、ギリアンたちが動き出しちゃう」
その前に、用事を済ませておきたい。彼らが言ってくれた、「襲われない」という言葉を信じたいが、絶対とは言い切れないため、早めに出てきたのだった。
向かったのはあの洞窟。しかし、そこへ辿り着くまでもなく、彼女と再開できた。
「なつみ!」
「リリネットちゃん❗️迎えに来てくれたの?」
「それはこっちのセリフだよ」
「ああ、そっか」
「その袋、何?」
「これねー、リリネットちゃんにプレゼント😊」
「ほんと⁉︎ちょっと、早く家に行こっ」
「うん❗️行こー行こー❗️」
洞窟の中は変わりなく、掘りごたつが残されていた。
「明かり点けまーす」
なつみが光を天井に放った。
「それがさー、いちおリリネットちゃんのこと頼んでみたけど、許可はまだもらってなくてさ。悪いんだけど、もう少し待っててもらいたいんだ」
「ふーん、そう。ま、あたしはなつみが遊びに来てくれるだけで、今は充分だけどね。忘れないでいてくれたんだもん」
「忘れるわけないよ❗️」
机に袋を乗せ、ふたりは椅子に座り込んだ。
「一緒に住むのはまだ先になるけど、絶対仲間に入れてもらえるって信じて、勝手にリリネットちゃんの服、用意して持ってきちゃったんだ😁」
ジャジャーンと、袋の中身を続々と出していった。
「リリネットちゃんの好みがわからなかったから、無難なのを選んできたつもりだよ」
「なつみのと似てるね。…、何で2セットずつあるの?しかも片っぽおっきくない?」
服の上下、下着、靴と、全身コーディネートが揃っていた。
「破面になったとき、大概みんな小さくなるらしいけど、例外的にリリネットちゃんが大きくなることもあるかもしれないから、念のためにメンズサイズも用意してきたの。大は小を兼ねるって言うじゃん」
「そうだけど」
「遠慮しないで受け取って。すっぽんぽんでいるよりマシだから。別のが良かったら、違う新しいのを作りに行こう。ね❗️」
「うん😌」
リリネットは、トップスを広げて、身体に当ててみた。
「今んとこ、ちっちゃい方で着れそうだね👍」
なつみは良いことしたぞと思っている。鼻が高い。
「さてと。ぼくはもうお暇するよ」
着てくれそうなのを確認して、なつみは席を立つ。
「もう行っちゃうの?ゆっくりしてってよ」
「ごめんね。そうしたいの山々だけど、ぼくには時間が無いんだ。早く帰らないと、ギリアンの群れに迫られちゃうかもしれないの。ぼくの風味を付けた餌を食べさせて、気を引くらしくてさ。そんで石材運んでもらうって言うんだ。その餌が気に入られたら、ぼくまで気に入られることになるでしょ?危ない危ない。ギリアンたちが虚夜宮近くに集まる前に、帰らなきゃ」
「そうなんだ。石材って、街づくりに使うヤツだよね。わかった。じゃあさ、途中までなら、あたしもついてって良い?」
「うん❗️良いと思う。街の境界線はもう決まってるから、そこまで一緒に行こう❗️」
「やった😁」
プレゼントはその場に置いておき、なつみとリリネットは早速出発した。
「なつみ、前より足速くなった?霊圧も強くなってない?」
「そう思う❓嬉しいな〜。こっちの空気に慣れてきて、一時的に成長期になってるのかもね」
「身長は変わらないけど😄」
「クラァッ‼️黙らっしゃい💢」