第九章
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虚夜宮を視界に捉えたなつみ。ある人物の陰も捉えた。
「あわぁ❗️✨」
玄関先で彼女の帰りを待っていてくれたようだ。
「わぁーいっ‼️」
なつみは速度を上げて、すっ飛んでいく。
ぱっと彼の斜め上に現れ、抱きつく。
「市丸隊長ー‼️😆」
きつくくっついて、耳元で大きな声。
「元気やな〜。大冒険して、疲れてるんとちゃうの?」
妹のお尻を支えて、落ちないようにしてくれる兄。
「むふー、隊長だ〜😚」
ぷにぷにほっぺで市丸に擦り寄る。とても幸せそうな顔をして。
「おかえり、なつみちゃん。ボクも会いたかったで。良かったわ。ほんま、ちゃーんと元通りに戻ってて」
よいしょと、ゆっくり下に降ろしてくれた。
「にひーっ😁」
「😊」
笑顔で向き合う、幸せなひと時。
しかし、忘れていた。
「あ!ぷいっ!」
腕組みをくんっとして、なつみはぷんぷんと怒った。
「ん?何怒っとんの」
「決まってるじゃないですか!ぼくは、藍染隊長と市丸隊長と東仙隊長に怒ってなきゃいけないんです!お3人は、ぼくを騙した悪者ですから!」
ぷんぷん。市丸の横をズシンズシンと足を上げて通り過ぎ、先に中へ入っていった。
「ごめんな〜。黙っとるように言われとったから。そんな怒らんといてや。ほらほら、笑い〜」
ぷっくりほっぺを人差し指でこちょこちょするも、そんなに効果が無かったようで、市丸はなつみを後ろから襲うことにした。
「えいっ。こちょこちょ〜っ♪」
「にゃははははっ‼️🤣」
相変わらず脇腹のくすぐりに弱いなつみであった。
「やめてくださいよーッ‼️」
「フフッ。おこりんぼさんも、これで撃退や」
いや、余計に怒るでしょうに。
部屋に戻って、手洗いうがい、荷物を置いて、いざ会議室へ向かう。
バンッ‼️
扉を勢いよく開けて、颯爽と登場。
「お、その顔は見つけてきたって顔だな」
ノイトラがニンマリとしてきいた。
「おうよ❗️」
机の端に到着すると、両手をついて前屈み。みんなの視線が集まる中。
ぺこり⤵︎
「見つかりませんしたー。すいやせんしたー」
ガクッ
みんながっかり。
「なんだよッ。ただ迷子になっただけか、お前ぇ‼︎」
「ち、違うよ❗️水脈は無かったけど、他の発見があったんだよ❗️」
「他?」
ザエルアポロは興味があるようだ。
「そう❗️ぼくのダウジングは血液に反応したから、ダウジングをインチキというのは、やめてほしいね❗️😤」
「血液を見つけたってこと?(笑)」
「それがスゴイの❗️」
みんなの頭にはハテナが浮かび、市丸の口元はクスクスしていた。
「とーっても強い虚がそこにいてね😆」
「わかった。そいつに追われて、逃げ回ってたから、あんな遠くまで行ってたんだな」
「ちぃがうっつーの。ノイトラはちょっと黙っててよ😗」
「へいへい」
「その子と仲良くなったんだぁ。もうぼくたちお友だちだよ。リリネットちゃんっていうの。リリネットちゃんもね、みんなみたいに破面になりたいって言ってくれたの❗️だからね、ここに住まわせてあげたいなーって。リリネットちゃんとの出会いが、ぼくにとっての大きな発見よ。今回の探検の大収穫❗️」
両手を高く掲げ、得意げな表情を浮かべるなつみ。だが、彼らには、そこまでといった報告だった。
「何、その反応ぉ。ダメなの?」
「うーん…。君の実力が計り知れないから、君基準で『とーっても強い』と言われても、さして」
「なんだと‼️ザエポン‼️」
(ザエポン?)
「リリネットちゃんはね、たぶん最上級大虚だよ」
「何⁉︎そいつぁ、嬉しい情報じゃねーか。だったらそいつをここに呼んでやるの、オレは賛成だぜ」
「おお👏」
「喜ぶな、なつみ。ノイトラはただ、その最上級大虚と戦いたいだけだ」
「え⁉️ダメだよ、仲良くするんだから」
ハリベルが教えてくれて、なつみはノイトラを注意できた。
「ケッ」
「はいはい、とりあえずそこまで。みーんな、仲良う暮らしてくんが、ここの決まりやろ。物騒な話はやめや。
なつみちゃん、そのリリネットちゃんいう子のこと、藍染隊長にボクから言うといたるわ。破面化できる秘密道具は、あの人が持っとるもんやで」
「秘密道具❗️👀✨」
ちゃっかりお誕生日席に座ってる市丸が言ってくれた。
「そうや。みんなもそれでなれたんよ。自然となっとった人もおるけど。
なつみちゃんは、嘘つく子やないし、キミらにデコピンできるくらいには強い子やで、この子の言うことは信じたってや。今日のところはご苦労さんいうて、労ったって」
「隊長🥰」
なつみはニコニコしていたが、周りは「甘すぎだろ」と各々思っていた。
「それでそれで!ハリベルさんたちはどうだったの?何か見つけた?」
机に手をついたまま、ぴょんぴょん跳びはねるなつみ。
「ったりめーだ‼︎ なつみと違って、あたしらはちゃーんと水を見つけてきたぜ!ハリベル様を舐めんなよ!」
ハリベルにきいたのに、答えたのはアパッチだった。
「ぐはぁっ、負けたー😫‼️」
なつみは上半身を机に突っ伏して、崩れた。
「そんなに偉そうにするな。見つけたと言っても、少量だ。あれではすぐに枯渇するだろう」
「そうなの⁉︎😗」
ハリベルの補足に、ぱっとなつみは顔を上げた。
「あぁ。恐らく私たちが見つけた流れは下の方のものだ。もしその流れを利用したいのなら、上流の状況を見てくる必要があるだろう。今日は早く報告するために、先には進まなかったんだ」
「かぁわいいこと言うじゃ〜ん😚」
(言い方が京楽さんと一緒やな)
「距離はどう?」
デレッとした顔を真顔に戻す。
「近くはないな。確認できた水量で、ここまで引こうとすると、到達までに時間がかかりすぎる上に、かなり減るだろう」
「現実的じゃないか……」
んーと考えるなつみ。だが、案が無いわけではない。しかし、これもまた無茶な思いつきである。
「なつみちゃん、言うてみ。表に出してみんと、何も変わらんで」
三番隊で行われる会議中、よく見るなつみの、何かひらめいているのに黙っているときの顔。市丸は気付いていた。
「おぉ思い切って言っちゃいますよ。たぶん、無理ですけど」
「言うのはタダや」
なつみは立ち上がり、一度息を深く吸った。
「太陽を造るのはどうかな」
それは街づくりどころか、世界の構築から始めようと言っているのと同じである。人よりも、もしかすると、神よりも優れた、はじまりの仕業をしようと言うのだ。
「馬鹿げてるよね。ほら、無し無し😅」
逃げるように、なつみは椅子を向こうから持ってきて、みんなと並んで席に着こうとした。
「いや、案外それが一番効率的かもしれないよ」
「え」
「確かに奇天烈な案だけど、この虚圏に昼を創り出すことは、植物の栽培に必須となる課題だよ。太陽の作用は、自然環境の循環に大きく関わってくる。水、植物、さらに空気の浄化も期待できるかもしれない。動かすことができれば、時間の概念も生まれるだろうから、僕らは今にも増して、人間だった頃の生活を取り戻せるようになるんじゃないかな。フフッ、さすがなつみだね」
ザエルアポロが、なつみの思っていたこと以上に解説してくれた。
「お、おう。そうそう。それだけ大事だからね、太陽は。欲しいよね❗️水の豊かな土地が、もしかしたらあるかもしれないけど、もうこれだけの建物ができあがってるから、お引越しよりも、ここの環境を改善する方が良いと思うんだ」
ザエルアポロとは違った意見が挙がるかどうか、なつみは十刃やその従属官たちの顔を見回した。
「僕、太陽キライ」
口を開いたのは、アーロニーロだった。
「陽の光に当たると、術が使えなくなる」「変身デキナクナルカラ、ヤダ」
「あぁ、そっか。そうなんだ」
なつみは胸に手を当てて、その意見を受け止めた。
「別に良いじゃねぇか。陰さえありゃ、能力使えんだろ。反対なのは、アーロニーロだけだ。1人のワガママに付き合うこたねーぞ、なつみ」
酷い言い方をするノイトラに、アーロニーロとなつみがキッと睨んだ。
「我儘だと?偉そうに。許さん」「オ前、ムカツク。カラダ硬イダケノクセニ」
「あぁ⁉︎💢」
キレるノイトラにトドメを刺すのは、なつみの仕事。
「貴様、雨の湿気でそのさらさらストレートを、クネックネのウネッウネのボンバーにしてやるから、覚えてろよ👉」
猫パンチレベルであった。周りは苦笑い。
「ひとつ良いか」
ハリベルが手を上げた。
「はい、ハリベルさん。どうぞ🫱」
「簡単に太陽と言うが、どうやって造るつもりだ」
「おっとー🫢」
そこはまだ考えていなかったなつみ。困ってしまう。
「なんかさ、ぼくならできそうな気がするんだけど、でもそれって、術を使い続けるってことなんだよね。四六時中。しかも太陽だから、かなりのエネルギーを必要とするだろうし。キツそうだから、装置というか、設備っていうの?道具でなんとかしたいところなんだよね。ほら、プラネタリウムはさ、夜空を屋内に作り出すじゃん。あんな感じが良いかなとか思うけど、あれは光だけなんだよね。熱っていうものの化学反応も、欲しいところじゃん。温室ってのもあるけど、あれは、太陽がもともとアリキだし、空調でどうのこうのだし。火の玉を空中に浮かばせたままって、難しいし。太陽は地球の自転で位置が変わるけど、ここでは太陽を動かさなきゃならないだろうから、屋根から吊るすのが良いのかな」ブツブツブツブツ、思いついたことを長々と垂れ流してみる。「だから宇宙開発部あったら良いのにさ。衛星で打ち上げて回らせちゃうとか。でも、虚圏の環境バランスってのも気になるから、下手に変化させたくないところもあるしなぁ。つまりは消えない花火だよねー。うーん。ここら一帯だけで、試験的に昼の空間を作ってみるのが正解だろうなぁ。…、わからん」
結局、パタリと机に伏せて尽きてしまった。助け船を出せるのは、やはりこの男だけだろう。
「宇宙に打ち上げるよりも、屋内の設備にしてみるのは良い考えだと思うよ。その方が操作できて、人工的に季節なんかも作れるかもしれない。野菜の成長を調整できるようになれば、なつみたちは安定して食糧を調達することができるよ。熱源と光源だよね。僕も知恵を絞ってみるよ。しばらくは、この虚夜宮付近に青空を広げる計画を立てて、それに則って動いていこう」
「ザエポン、かっこいい🥹」
「その呼び方、やめてくれないかな」
「あ、やっぱり?(笑)」
異論は出ないが、なつみは気になった。
「アーロニーロ、太陽造っても良い?やっぱりやめてほしい?」
「うーん…」「ウーン…」
長い頭部が右斜めに傾く。
「なつみが欲しいなら、造っても良い」「イイ」
そうは言っても。
「言い方が嫌々そうだよ…。どうしよう😞」
なつみも右に傾く。
「なつみちゃん。困ってる人に同調したるんはええけど、もうちょっと考えてみ」
「ふえ〜?」
右隣には市丸がいるのだ。
「そもそもや。アーロニーロがどうして変身にこだわらなあかんのか、そこを考えたらな」
「あー、そっか」市丸からアーロニーロに視線を移す。「何でぇ❗️」
「乱暴なきき方やね😅」
「変身できなくたって、アーロニーロはいろんな能力持ってるはずでしょ?お日様の光の下でも、充分強く戦えるって❗️つか、この街で戦う必要無いし❗️太陽あっても良いじゃん❗️ピンチになったら、ぼくが助けてあげるしさ。許せ、アーロニーロ。きみの個性をひとつ潰させてもらおう。その分さ、他にできること増やすのお手伝いするから。お願ぁーい🥹」
うるうるした眼でアーロニーロを見つめ、瞬き。甘い声に、ちゅんと尖った唇。これを向けられては、男は皆チョロくなる。
「わかった。お前の言葉を信じる」「新シイチカラ、集メルヨ」
「良い子ぉーッ‼️」
なつみはアーロニーロの席にすっ飛んでいき、頭部を抱き寄せ、ぐりぐり撫で回してやった。
「うりうりうりうりーっ❗️大好きだぞ、アーロニーロ❗️ぼくは向上心の塊野郎が大好きだ‼️😆」
身体まで揺するものだから、マスクに隠れた内部では、液体も双子もぐるぐる回る。
「やめろー!オレたちもお前好きだから!」「止メテー!目ガ回ルー!」
みんなは思っている。
(太陽云々より先に、なつみにやられちゃってるよ、おいおい)
「なつみちゃんがちっちゃなお日様やから、しゃあないて」
ということで、なつみの街づくりは、太陽を創り出すところから始めることになった。
「こうね、両手を高く上げて、力を溜めると、できる気がするんすよ🙌」
「『オラに元気を〜』言うたら、できるやろうね。キミなら」
「オラ」「言わさへんけど」
市丸は、まだもう少しここに居てくれるようです。
「あわぁ❗️✨」
玄関先で彼女の帰りを待っていてくれたようだ。
「わぁーいっ‼️」
なつみは速度を上げて、すっ飛んでいく。
ぱっと彼の斜め上に現れ、抱きつく。
「市丸隊長ー‼️😆」
きつくくっついて、耳元で大きな声。
「元気やな〜。大冒険して、疲れてるんとちゃうの?」
妹のお尻を支えて、落ちないようにしてくれる兄。
「むふー、隊長だ〜😚」
ぷにぷにほっぺで市丸に擦り寄る。とても幸せそうな顔をして。
「おかえり、なつみちゃん。ボクも会いたかったで。良かったわ。ほんま、ちゃーんと元通りに戻ってて」
よいしょと、ゆっくり下に降ろしてくれた。
「にひーっ😁」
「😊」
笑顔で向き合う、幸せなひと時。
しかし、忘れていた。
「あ!ぷいっ!」
腕組みをくんっとして、なつみはぷんぷんと怒った。
「ん?何怒っとんの」
「決まってるじゃないですか!ぼくは、藍染隊長と市丸隊長と東仙隊長に怒ってなきゃいけないんです!お3人は、ぼくを騙した悪者ですから!」
ぷんぷん。市丸の横をズシンズシンと足を上げて通り過ぎ、先に中へ入っていった。
「ごめんな〜。黙っとるように言われとったから。そんな怒らんといてや。ほらほら、笑い〜」
ぷっくりほっぺを人差し指でこちょこちょするも、そんなに効果が無かったようで、市丸はなつみを後ろから襲うことにした。
「えいっ。こちょこちょ〜っ♪」
「にゃははははっ‼️🤣」
相変わらず脇腹のくすぐりに弱いなつみであった。
「やめてくださいよーッ‼️」
「フフッ。おこりんぼさんも、これで撃退や」
いや、余計に怒るでしょうに。
部屋に戻って、手洗いうがい、荷物を置いて、いざ会議室へ向かう。
バンッ‼️
扉を勢いよく開けて、颯爽と登場。
「お、その顔は見つけてきたって顔だな」
ノイトラがニンマリとしてきいた。
「おうよ❗️」
机の端に到着すると、両手をついて前屈み。みんなの視線が集まる中。
ぺこり⤵︎
「見つかりませんしたー。すいやせんしたー」
ガクッ
みんながっかり。
「なんだよッ。ただ迷子になっただけか、お前ぇ‼︎」
「ち、違うよ❗️水脈は無かったけど、他の発見があったんだよ❗️」
「他?」
ザエルアポロは興味があるようだ。
「そう❗️ぼくのダウジングは血液に反応したから、ダウジングをインチキというのは、やめてほしいね❗️😤」
「血液を見つけたってこと?(笑)」
「それがスゴイの❗️」
みんなの頭にはハテナが浮かび、市丸の口元はクスクスしていた。
「とーっても強い虚がそこにいてね😆」
「わかった。そいつに追われて、逃げ回ってたから、あんな遠くまで行ってたんだな」
「ちぃがうっつーの。ノイトラはちょっと黙っててよ😗」
「へいへい」
「その子と仲良くなったんだぁ。もうぼくたちお友だちだよ。リリネットちゃんっていうの。リリネットちゃんもね、みんなみたいに破面になりたいって言ってくれたの❗️だからね、ここに住まわせてあげたいなーって。リリネットちゃんとの出会いが、ぼくにとっての大きな発見よ。今回の探検の大収穫❗️」
両手を高く掲げ、得意げな表情を浮かべるなつみ。だが、彼らには、そこまでといった報告だった。
「何、その反応ぉ。ダメなの?」
「うーん…。君の実力が計り知れないから、君基準で『とーっても強い』と言われても、さして」
「なんだと‼️ザエポン‼️」
(ザエポン?)
「リリネットちゃんはね、たぶん最上級大虚だよ」
「何⁉︎そいつぁ、嬉しい情報じゃねーか。だったらそいつをここに呼んでやるの、オレは賛成だぜ」
「おお👏」
「喜ぶな、なつみ。ノイトラはただ、その最上級大虚と戦いたいだけだ」
「え⁉️ダメだよ、仲良くするんだから」
ハリベルが教えてくれて、なつみはノイトラを注意できた。
「ケッ」
「はいはい、とりあえずそこまで。みーんな、仲良う暮らしてくんが、ここの決まりやろ。物騒な話はやめや。
なつみちゃん、そのリリネットちゃんいう子のこと、藍染隊長にボクから言うといたるわ。破面化できる秘密道具は、あの人が持っとるもんやで」
「秘密道具❗️👀✨」
ちゃっかりお誕生日席に座ってる市丸が言ってくれた。
「そうや。みんなもそれでなれたんよ。自然となっとった人もおるけど。
なつみちゃんは、嘘つく子やないし、キミらにデコピンできるくらいには強い子やで、この子の言うことは信じたってや。今日のところはご苦労さんいうて、労ったって」
「隊長🥰」
なつみはニコニコしていたが、周りは「甘すぎだろ」と各々思っていた。
「それでそれで!ハリベルさんたちはどうだったの?何か見つけた?」
机に手をついたまま、ぴょんぴょん跳びはねるなつみ。
「ったりめーだ‼︎ なつみと違って、あたしらはちゃーんと水を見つけてきたぜ!ハリベル様を舐めんなよ!」
ハリベルにきいたのに、答えたのはアパッチだった。
「ぐはぁっ、負けたー😫‼️」
なつみは上半身を机に突っ伏して、崩れた。
「そんなに偉そうにするな。見つけたと言っても、少量だ。あれではすぐに枯渇するだろう」
「そうなの⁉︎😗」
ハリベルの補足に、ぱっとなつみは顔を上げた。
「あぁ。恐らく私たちが見つけた流れは下の方のものだ。もしその流れを利用したいのなら、上流の状況を見てくる必要があるだろう。今日は早く報告するために、先には進まなかったんだ」
「かぁわいいこと言うじゃ〜ん😚」
(言い方が京楽さんと一緒やな)
「距離はどう?」
デレッとした顔を真顔に戻す。
「近くはないな。確認できた水量で、ここまで引こうとすると、到達までに時間がかかりすぎる上に、かなり減るだろう」
「現実的じゃないか……」
んーと考えるなつみ。だが、案が無いわけではない。しかし、これもまた無茶な思いつきである。
「なつみちゃん、言うてみ。表に出してみんと、何も変わらんで」
三番隊で行われる会議中、よく見るなつみの、何かひらめいているのに黙っているときの顔。市丸は気付いていた。
「おぉ思い切って言っちゃいますよ。たぶん、無理ですけど」
「言うのはタダや」
なつみは立ち上がり、一度息を深く吸った。
「太陽を造るのはどうかな」
それは街づくりどころか、世界の構築から始めようと言っているのと同じである。人よりも、もしかすると、神よりも優れた、はじまりの仕業をしようと言うのだ。
「馬鹿げてるよね。ほら、無し無し😅」
逃げるように、なつみは椅子を向こうから持ってきて、みんなと並んで席に着こうとした。
「いや、案外それが一番効率的かもしれないよ」
「え」
「確かに奇天烈な案だけど、この虚圏に昼を創り出すことは、植物の栽培に必須となる課題だよ。太陽の作用は、自然環境の循環に大きく関わってくる。水、植物、さらに空気の浄化も期待できるかもしれない。動かすことができれば、時間の概念も生まれるだろうから、僕らは今にも増して、人間だった頃の生活を取り戻せるようになるんじゃないかな。フフッ、さすがなつみだね」
ザエルアポロが、なつみの思っていたこと以上に解説してくれた。
「お、おう。そうそう。それだけ大事だからね、太陽は。欲しいよね❗️水の豊かな土地が、もしかしたらあるかもしれないけど、もうこれだけの建物ができあがってるから、お引越しよりも、ここの環境を改善する方が良いと思うんだ」
ザエルアポロとは違った意見が挙がるかどうか、なつみは十刃やその従属官たちの顔を見回した。
「僕、太陽キライ」
口を開いたのは、アーロニーロだった。
「陽の光に当たると、術が使えなくなる」「変身デキナクナルカラ、ヤダ」
「あぁ、そっか。そうなんだ」
なつみは胸に手を当てて、その意見を受け止めた。
「別に良いじゃねぇか。陰さえありゃ、能力使えんだろ。反対なのは、アーロニーロだけだ。1人のワガママに付き合うこたねーぞ、なつみ」
酷い言い方をするノイトラに、アーロニーロとなつみがキッと睨んだ。
「我儘だと?偉そうに。許さん」「オ前、ムカツク。カラダ硬イダケノクセニ」
「あぁ⁉︎💢」
キレるノイトラにトドメを刺すのは、なつみの仕事。
「貴様、雨の湿気でそのさらさらストレートを、クネックネのウネッウネのボンバーにしてやるから、覚えてろよ👉」
猫パンチレベルであった。周りは苦笑い。
「ひとつ良いか」
ハリベルが手を上げた。
「はい、ハリベルさん。どうぞ🫱」
「簡単に太陽と言うが、どうやって造るつもりだ」
「おっとー🫢」
そこはまだ考えていなかったなつみ。困ってしまう。
「なんかさ、ぼくならできそうな気がするんだけど、でもそれって、術を使い続けるってことなんだよね。四六時中。しかも太陽だから、かなりのエネルギーを必要とするだろうし。キツそうだから、装置というか、設備っていうの?道具でなんとかしたいところなんだよね。ほら、プラネタリウムはさ、夜空を屋内に作り出すじゃん。あんな感じが良いかなとか思うけど、あれは光だけなんだよね。熱っていうものの化学反応も、欲しいところじゃん。温室ってのもあるけど、あれは、太陽がもともとアリキだし、空調でどうのこうのだし。火の玉を空中に浮かばせたままって、難しいし。太陽は地球の自転で位置が変わるけど、ここでは太陽を動かさなきゃならないだろうから、屋根から吊るすのが良いのかな」ブツブツブツブツ、思いついたことを長々と垂れ流してみる。「だから宇宙開発部あったら良いのにさ。衛星で打ち上げて回らせちゃうとか。でも、虚圏の環境バランスってのも気になるから、下手に変化させたくないところもあるしなぁ。つまりは消えない花火だよねー。うーん。ここら一帯だけで、試験的に昼の空間を作ってみるのが正解だろうなぁ。…、わからん」
結局、パタリと机に伏せて尽きてしまった。助け船を出せるのは、やはりこの男だけだろう。
「宇宙に打ち上げるよりも、屋内の設備にしてみるのは良い考えだと思うよ。その方が操作できて、人工的に季節なんかも作れるかもしれない。野菜の成長を調整できるようになれば、なつみたちは安定して食糧を調達することができるよ。熱源と光源だよね。僕も知恵を絞ってみるよ。しばらくは、この虚夜宮付近に青空を広げる計画を立てて、それに則って動いていこう」
「ザエポン、かっこいい🥹」
「その呼び方、やめてくれないかな」
「あ、やっぱり?(笑)」
異論は出ないが、なつみは気になった。
「アーロニーロ、太陽造っても良い?やっぱりやめてほしい?」
「うーん…」「ウーン…」
長い頭部が右斜めに傾く。
「なつみが欲しいなら、造っても良い」「イイ」
そうは言っても。
「言い方が嫌々そうだよ…。どうしよう😞」
なつみも右に傾く。
「なつみちゃん。困ってる人に同調したるんはええけど、もうちょっと考えてみ」
「ふえ〜?」
右隣には市丸がいるのだ。
「そもそもや。アーロニーロがどうして変身にこだわらなあかんのか、そこを考えたらな」
「あー、そっか」市丸からアーロニーロに視線を移す。「何でぇ❗️」
「乱暴なきき方やね😅」
「変身できなくたって、アーロニーロはいろんな能力持ってるはずでしょ?お日様の光の下でも、充分強く戦えるって❗️つか、この街で戦う必要無いし❗️太陽あっても良いじゃん❗️ピンチになったら、ぼくが助けてあげるしさ。許せ、アーロニーロ。きみの個性をひとつ潰させてもらおう。その分さ、他にできること増やすのお手伝いするから。お願ぁーい🥹」
うるうるした眼でアーロニーロを見つめ、瞬き。甘い声に、ちゅんと尖った唇。これを向けられては、男は皆チョロくなる。
「わかった。お前の言葉を信じる」「新シイチカラ、集メルヨ」
「良い子ぉーッ‼️」
なつみはアーロニーロの席にすっ飛んでいき、頭部を抱き寄せ、ぐりぐり撫で回してやった。
「うりうりうりうりーっ❗️大好きだぞ、アーロニーロ❗️ぼくは向上心の塊野郎が大好きだ‼️😆」
身体まで揺するものだから、マスクに隠れた内部では、液体も双子もぐるぐる回る。
「やめろー!オレたちもお前好きだから!」「止メテー!目ガ回ルー!」
みんなは思っている。
(太陽云々より先に、なつみにやられちゃってるよ、おいおい)
「なつみちゃんがちっちゃなお日様やから、しゃあないて」
ということで、なつみの街づくりは、太陽を創り出すところから始めることになった。
「こうね、両手を高く上げて、力を溜めると、できる気がするんすよ🙌」
「『オラに元気を〜』言うたら、できるやろうね。キミなら」
「オラ」「言わさへんけど」
市丸は、まだもう少しここに居てくれるようです。