第九章
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虚と死神が共存する街づくりを行うという、とんでもない無茶振りミッションを藍染から仰せ付かったなつみは、帰り方を教えてもらえなかった時点で、完璧に諦めがついた。ザエルアポロだって知っているはずなのに、なかなか口が硬かったのもあり。
「ケェチッ‼️💢」
ドンッと彼を小突いてみた。
「痛ぁい❗️😖💦」
皮膚も硬かった。
「大人しくした方が良いよ😌」
今ある建物を増築するのか、または別の場所に新しく建設するのか、判断材料を集めるためと、現時点で迷子にならないようにと、施設全体を案内してもらった。
「ふむむ、なるほどなるほど…🤔」
街づくりは、どうやらゼロからのスタートではなく、ある程度進んでいるらしかった。既に何棟かの建物が点在しているのが、外に出てみてわかったのだ。
「ぼくのお部屋がある建物は、中心地点なのか」
「虚夜宮といって、本部の役割を担ってるよ。あちこちに見えるのは、さっき紹介した十刃たちが、各自の従属官と暮らす宮殿さ。ちなみに僕のはあそこ。また今度、案内してあげるね」
なつみに諦めがついたのには、もうひとつ理由がある。彼女はお小遣いの一部を流魂街に寄付し、住宅や店、公共施設などの建設に使ってもらっている。もちろんなつみひとりの資金援助だけでなく、彼女の活動に賛同する仲間たちも、募金に協力してくれている。彼女自身もボランティアとして、その施工を手伝ったりもし、建築の知識は他の死神よりも豊富であった。そのことを見込まれ、今回の人事となったのだろうと察したのだ。
「だったら、帰って大工さんたちから知恵をもらいたいのにさ…」
現世で大工として働いていた人たちは、なつみから仕事の依頼を受け、流魂街の街づくりに精を出す、第二の人生を楽しんでいた。そのおかげで、なつみは大工界でもアイドルだった。わからないことや、挑戦して作ってみたいことをなつみがきくと、どんなことでも答えて教えてくれるのだ。
「あと、イケちゃん先輩にもアドバイスもらいたい」
ここは彼女には、あまりにもシンプルで無機質で冷たさを感じやすいデザインになっていると思っていたからだ。
「まっすぐなラインばっかりだ。生活空間に生活感を求めない人が求めるタイプの空間デザインだな。ぼくの嫌いなタイプ〜。心を育てるなら、カーブだよ。カーブ」
そしてなつみが下した結論。
「まず、水を探しに行こう❗️✊」
食堂兼会議室にて、破面たちが集まってくれた中、堂々とそう宣言した。
「水?広大な平地や、資材が揃いそうな場所を探しに行くのではなくか」
「そー。古代文明を考えてみやー。でっかい文明が起こるところに、水脈ありだ。どんな生き物の生活にも、綺麗な水が必要なんだよ。ここも流れてはきているけど、敷地を広げて、より生活空間を作るなら、住人の増加を考えて、もう少し水量に余裕がある方が良いと思うんだ。絶対欲しいのが入浴施設だもん。ぼく、みんなとお風呂入りたいからさ😊」
「『同性』のみんなだろ。お前、いい加減言うなよ。喰われてぇのか?」
「何でそんなことになるのさ。ぼくは男にだってなれるんだから、男湯だって入れるよ😤」
義骸が届けばの話だ。
「風呂の件は追々で良いじゃないか。それより、なつみの意見は至極真っ当だよ。新地を求めるなら、水脈を中心に開拓すべきだ。彼女のために、畑も用意してあげたいしね」ザエルアポロが隣の椅子に座るなつみを撫でてあげる。「さすが藍染様に選ばれただけあるよ。君は賢いね」
「えへへ〜。畑もだし、田んぼもね。ぼく、市丸隊長が尸魂界からお米わざわざ持ってきてるなんて知らなかったもん。隊長にそんな重労働させたくないから、自給自足できる環境、整えなきゃね」
「ここの建設時に測量した、周辺の地形図が残っているよ。周辺といってもかなり広域で調べたんだ。いくらか参考になると思うよ」
「谷があるといいんだけどな。川が流れてる雰囲気しないけど、谷間があれば、掘ったら出そうだもん。んーでも、そうか。寒いから凍ってたりするんかな…🤔」
うんうんと頷いてくれるザエルアポロ。
「実は、ここの水は大分深いところから引き上げているんだ。僕たちが集まることで、霊圧同士がぶつかり、その摩擦で気温が上昇して、地中で氷になっていた水分が溶け出してはいるんだろうけど、湧水になるほどではないかな。排水を浄化して再利用するにしても、気分が良いものではないし。新しい水源の確保は大賛成だよ。地形の特徴から、大方の予測をつけてあげようか。そうしたら、無闇に歩き回ることをせずに済むでしょ」
「おー!ありがたい👏」
「それで、どうやって水脈を探り当てるつもりなのかな?」
ざっと椅子を引いて、やや膝を曲げて立った。
「ダウジング‼😆👉👉」
「バカだね」
「😱」
なつみは、「コイツ、上げて、下げたぞ」と手首を上下したり、ザエルアポロを指差したりしながら、ショックを受けたぞとジェスチャーで、お集まりのみなさんに訴えた。
「あのね。指でやるわけじゃないよ。そんな、ずっとゲッツして行くわけないじゃん。探せるわけないじゃん、こんなので。針金でやんの😤👉👉」
「うん、バカだね😌」
「〜😱」
「ハリベルなら、いくらか水の在処を察知できるんじゃないか?」
「ああ。そうだな」
慌てるなつみ。
「ちょっとちょっと❗️ぼくのダウジングだって、見つけれるもん❗️」
「あれはね、やってる本人の都合で動いてるだけだから。いい加減なものなんだよ」
「そんなことないもん❗️じゃじゃあ、ぼくとハリベルの勝負ね❗️どっちがでっかい水脈当てれるか、しょーぶッ❗️だよ❗️👉👉」
「ムキになることかよ」
「なることだよ‼️‼️」
探検の準備が整った後日、虚夜宮の上階をぐるりと回れるベランダ状の見張り場に立った。
「斬魄刀」
「持った❗️」
「マント」
「着けた❗️」
出発前の持ち物チェックを。
「水筒」
「持った❗️」
「お弁当」
「持った❗️」
「おやつ」
「持った❗️」
探検というよりも遠足のよう。
「財布」
「無い❗️」
「ハンカチ」
「無い❗️」
無くてもいいが、一応確認されたいのだ。
「地図」
「持った❗️」
読めやしないが。
「針金」
「持ったぁ❗️👉👉」
「ボディーガード」
「いーらないッ❗️」
リストをしまう。
「本当にひとりで大丈夫?外はとても危険だから、誰かつけた方が良いと思うけど」
「いらないよー。ダウジングに集中しなきゃいけないから、ひとりでいさせてくれ✋😤」
なつみの身に何かあれば、藍染に何をされるかわからない。ザエルアポロは心配したが、なつみの自信を信じてみることにする。噂に聞く、なつみが起こす奇跡を、彼も見てみたかったからだ。
「助けが必要になったら、すぐに僕らを呼ぶんだよ」
「うん❗️」
その隣には、ハリベルとその従属官たちがスタンバイしていた。
「絶対負けないからねー。プールと大浴場がつくれる、こーんなでっかい水脈見つけてやるんだからぁ❗️」
なつみがうんと両腕を広げて、「こーんな」と言った。
「ハンッ、だったらあたしらは、そのプールと大浴場に、スライダーと滝を付けれるくらいデカい水脈当ててやる!」
「何をー❗️じゃあ、ぼくのは、それに流れるプールとジャグジーと水族館付けてやるぅ‼️」
夢はでっかく、微笑ましいマイクパフォーマンスを繰り広げてくれるなつみとアパッチである。
「下らない話はその辺にしておけ。そろそろ行くぞ」
なのに、冷静に止めてくれるハリベル。
「下るよ❗️おもっきり下ってる話だよ❗️あ、行っちゃった❗️もー❗️こーゆーのは、よーいドンで行くもんなのにー❗️✊」
出遅れたなつみ。
「無駄口叩いても始まりませんからね」
スンスンも出発。
「大体、勝ち負けより、両方見つけられる方が良いんだろ。見つけてこいよ」
ミラ・ローズも出発。
「気ぃつけて行けよ、なつみ!ちゃんと帰ってくんだぞ!」
アパッチも出発。
「うん、わかってる❗️いってらっしゃーい❗️👋」
お見送りができるなら、出遅れても良いなつみ。
「さて、君が行く方角だけど」ザエルアポロが指を差す。「あっちだ」
ハリベルたちとは逆の方角。
「わかりにくいだろうけど、あの辺は多少ここより低くなっているんだよ。もしかしたらあるかもしれない。君の野生の勘が働くことを期待してるよ」
「勘じゃないの❗️波動のキャッチなの❗️そこでぼくの活躍を、指咥えて待って見てな😏」
「双眼鏡を構えて待って見てるよ😌」
なつみは手すりの上に立ち、斬魄刀を抜いた。
「いってきまーす❗️お留守番よろしくね👋😉」
「いってらっしゃい」
夜の砂漠をサーっと飛んでいく。月明かりがなんともありがたい。
「ペッペッ💦」
しかし向かい風のせいで、砂が顔にかかるかかる。
「マントをマスク代わりにしろ」
「うん」
一旦降りて、斬魄刀を鞘に収める。マントを外して巻き直した。
「ムッちゃん、まるでここは月面だね。宇宙兄弟を思い出す……」
見回すと、人工物は虚夜宮と破面の宮だけ。
「家を建てることも、お友だちをつくることも、きっと怖くてできないんだ。身の守り方を知らなかったら、すぐに襲われちゃう。人の心を忘れちゃうほど、厳しい世界なんだ。放ったらかしてちゃいけない。…、帰っちゃいけない」
自然と胸のところをキュッと掴んだ。深く一度目を閉じて開く。
「こんなところでムッちゃんをムッちゃんて呼んだら、まるでムッちゃんが主人公みたいじゃん。ズルくない?」
「私に名付けたのはお前だろ。勝手に拗ねるな。どう見てもお前の方が日々人だしな」
「えー?そーかな。黄色い方がヒビチョフだよ」
「良いから。そろそろ試しに構えたらどうだ?」
「OK」
鞄から曲げた針金を取り出す。
無心で構えた。
「…😑」
「動かないな」
「まだまっすぐってことだよ。行こう」
針金を鞄にしまいつつ歩き出すと、気になる事が起きた。
「もー、靴の中すぐ砂入るなぁ。これ、歩いてらんないよ」
「宇宙服なら良かったのにな。今度、藍染に頼んでみたらどうだ?」
「バズ・ライトイヤー仕様にでもするか、ってそんなこといらないから。持ってきてもらうとしたら、宇宙兄弟の最新巻だよ」
また空を飛んでいくことにした。
「でもさ〜、最初はドッキリにハメられて超イヤだったけど。いざまともに目を向けてみたら、JAXAとNASAとロスコスモスが協力し合ってひとつのミッションに取り組むみたいな、すげぇプロジェクトじゃんって思えたよ。そんなすげぇのに、ぼく選ばれちゃって、やっば〜😆」
「やる気満々だな」
「ぼくさ、宇宙飛行士になりたいんだよ」
「影響されすぎだ。SLAM DUNKのときもバスケやりたがってたろ」
「さすがにツイストサーブは目指さなかったけど、ポケモンマスターはちょっと憧れたかな(笑)」
「尸魂界に宇宙開発部は存在しない。もちろん虚圏もな」
「人間って、がんばるよね。宇宙に夢を見るってさ。宇宙飛行士って、コミュニケーション能力も高いし、メカニックにも強いし、体力だってあるじゃん。ヒーローだよ。宇宙飛行士になれたら、他の何にだってなれそうだから、宇宙飛行士目指したい」
「宇宙飛行士じゃないものになるために、宇宙飛行士になりたいのか?」
「…、イジワル言うな😒」
「宇宙飛行士はずば抜けて凄い逸材だが、それを支える周りの人たちも、賢さと思いやりが備わっている。宇宙に挑むには、1人の知恵と力では足りないということだな。ミッションに関わる全ての人が、命をかけた思いを抱いている。それだけ重たい責任があるから、国を越えて自然と協力し合い、一致団結の平和がつくられるんだろうな」
「尸魂界でもつくろうよ、宇宙開発部」
「今やるべきことから目を逸らすな。お前の使命は、虚圏の開拓だ。宇宙は人間に任せれば良い。そうだ、宇宙兄弟といえば水資源探査があったろ」
「カルロム洞窟ね〜」
「あぁいうことだろ、今は」
「なつみム洞窟が見つかるかな〜。見つけてもさ、月面と違うから、虚圏史上初の水発見とかならないし、余裕で先住さんがいそうじゃん。感動とかスゴさが薄いよね」
「文句を言うな。抱えて飛んでやるから、ダウジングをしろ」
「やだよー。どこ持って飛ぶつもりなの?絶対息苦しくなるじゃん」
ザッと着地。
「また砂入るー。ブーツにしてもらおうかな」
針金を構える。
「袴にブーツとか…、あ、曲がったぜよ」
2本の針金がすーっと右斜め前へ。
「反応ありだ。よっしゃー!」
嬉しい変化に、ゴソゴソと力を込めて鞄に針金を押し込んだ。
「お弁当にしよう✊」
ズコッ‼️🐥
「何故だ‼️ここからだろう‼️」
なつみはムッちゃんを無視して、斬魄刀を地面に刺し、砂が風に乗ってこない上空へと、舞い上がっていった。お弁当を開ける。
「だってさ、こっから先はザエポンの目の届かないところに入りそうなんだもん。ゆっくりご飯食べられるのも、今のうちな気がするんだ」
「ザエポン…。お前それ、本人に言ってやるなよ」
「えー。他にあだ名思いつかないよ🍙」
「普通に呼んでやれば良いだろう」
「なっが。緊急時にあんな長い名前叫んでらんない」
「緊急時にそんなあだ名で呼んだら、緊張感が減るだろう。たかが2音をケチるな」
「……、もしかしてムッちゃんて呼ばれたくないの😒」
「奴がそういうことを気にするタイプに見えるという話だ。ザエルアポロと呼んでやれ。名前は人にとって、とても大切なものなのだからな。大体、ルとアとロを取ってンをくっつけるとは失礼だぞ」
「じゃあ、アポ☝️」
「それは犬だ」
「パグだ」
「サンタもハート柄だな」
「あんま言わないでよ、ムッちゃん。ホームシックになっちゃう」
「使命感を抱け。お前以外にこのミッションは務まらない。行け、ウェコムンドノート木之本なつみ!達成無き帰還は許されないぞ!」
「ははははッ❗️Copy. I’ll do my best. And I count on you, my commander😁」
心のキャプコムから現場の飛行士への、熱い応援メッセージだった。
新たに示された方角へ飛行していくと、再び針金はやや右へ曲がった。
スンッ
なつみは鼻から反射的に息を吸った。
「どうした」
「歩く」
ダウジングで導かれる方に、小さいが山が見える。2つ。
「谷があるのか」
「まだ地図の範囲内のはずだよ。谷があるなら教えてもらえてるって。何か変、あの山」
少し斜めに歩いてみると、山は2つだけではないことに気付く。
「ボコボコしてるように見える」
「岩山でもないな。あれらは枝か?」
山肌の異変の正体を探るため、なつみとムッちゃんは前方に視線を集中させて歩き続けた。陰から何かが襲ってきても反応できるよう、耳は全方向からの音を捕らえようとしていたが。
手元の針金が両側へクルッと回って、初めてなつみの視線が下へ降りた。
「…ッ‼︎⁉︎」
「そいつをしまって、抜け、なつみ」
ムッちゃんの声に従い、素早く針金から斬魄刀に持ち替えるが、恐怖からくる動揺で、なつみの身体は強張った。
(虚の死体の山)
5以上でいっぱいのなつみには、いや、なつみでなくとも、これは数えられたものではない。なつみのダウジングが探知した水脈。それは真っ赤な小川。大量の虚から流れ出る、血の川だった。
(これだけの数を倒すなんて、何人の仕業だろう。応援を呼ぶべきか)
そう疑いながらも、なつみは勇気を出して歩き出した。何故なら。
(霊圧が、…無い)
感覚を研ぎ澄ましても、どこからも発生源が無かったからだ。
「ギャングどもは狩に出てて、留守ってか」
なつみの狙いは、この死体の山だが、生存者がいないかどうか確かめることにあった。
「助けられるなら、助けなきゃ」
しかし拍動は無く、静かである。
「いないか」
全てが本当に死体であると判断したなつみは、この惨状を築き上げた者たちが帰ってくる前に、水脈探しを再開するため、高く飛んで逃げることにした。地面にぐっと踏み込んだその時。
「何をしている」
後ろを取られてしまった。
(しまったッ‼︎‼︎)
「ケェチッ‼️💢」
ドンッと彼を小突いてみた。
「痛ぁい❗️😖💦」
皮膚も硬かった。
「大人しくした方が良いよ😌」
今ある建物を増築するのか、または別の場所に新しく建設するのか、判断材料を集めるためと、現時点で迷子にならないようにと、施設全体を案内してもらった。
「ふむむ、なるほどなるほど…🤔」
街づくりは、どうやらゼロからのスタートではなく、ある程度進んでいるらしかった。既に何棟かの建物が点在しているのが、外に出てみてわかったのだ。
「ぼくのお部屋がある建物は、中心地点なのか」
「虚夜宮といって、本部の役割を担ってるよ。あちこちに見えるのは、さっき紹介した十刃たちが、各自の従属官と暮らす宮殿さ。ちなみに僕のはあそこ。また今度、案内してあげるね」
なつみに諦めがついたのには、もうひとつ理由がある。彼女はお小遣いの一部を流魂街に寄付し、住宅や店、公共施設などの建設に使ってもらっている。もちろんなつみひとりの資金援助だけでなく、彼女の活動に賛同する仲間たちも、募金に協力してくれている。彼女自身もボランティアとして、その施工を手伝ったりもし、建築の知識は他の死神よりも豊富であった。そのことを見込まれ、今回の人事となったのだろうと察したのだ。
「だったら、帰って大工さんたちから知恵をもらいたいのにさ…」
現世で大工として働いていた人たちは、なつみから仕事の依頼を受け、流魂街の街づくりに精を出す、第二の人生を楽しんでいた。そのおかげで、なつみは大工界でもアイドルだった。わからないことや、挑戦して作ってみたいことをなつみがきくと、どんなことでも答えて教えてくれるのだ。
「あと、イケちゃん先輩にもアドバイスもらいたい」
ここは彼女には、あまりにもシンプルで無機質で冷たさを感じやすいデザインになっていると思っていたからだ。
「まっすぐなラインばっかりだ。生活空間に生活感を求めない人が求めるタイプの空間デザインだな。ぼくの嫌いなタイプ〜。心を育てるなら、カーブだよ。カーブ」
そしてなつみが下した結論。
「まず、水を探しに行こう❗️✊」
食堂兼会議室にて、破面たちが集まってくれた中、堂々とそう宣言した。
「水?広大な平地や、資材が揃いそうな場所を探しに行くのではなくか」
「そー。古代文明を考えてみやー。でっかい文明が起こるところに、水脈ありだ。どんな生き物の生活にも、綺麗な水が必要なんだよ。ここも流れてはきているけど、敷地を広げて、より生活空間を作るなら、住人の増加を考えて、もう少し水量に余裕がある方が良いと思うんだ。絶対欲しいのが入浴施設だもん。ぼく、みんなとお風呂入りたいからさ😊」
「『同性』のみんなだろ。お前、いい加減言うなよ。喰われてぇのか?」
「何でそんなことになるのさ。ぼくは男にだってなれるんだから、男湯だって入れるよ😤」
義骸が届けばの話だ。
「風呂の件は追々で良いじゃないか。それより、なつみの意見は至極真っ当だよ。新地を求めるなら、水脈を中心に開拓すべきだ。彼女のために、畑も用意してあげたいしね」ザエルアポロが隣の椅子に座るなつみを撫でてあげる。「さすが藍染様に選ばれただけあるよ。君は賢いね」
「えへへ〜。畑もだし、田んぼもね。ぼく、市丸隊長が尸魂界からお米わざわざ持ってきてるなんて知らなかったもん。隊長にそんな重労働させたくないから、自給自足できる環境、整えなきゃね」
「ここの建設時に測量した、周辺の地形図が残っているよ。周辺といってもかなり広域で調べたんだ。いくらか参考になると思うよ」
「谷があるといいんだけどな。川が流れてる雰囲気しないけど、谷間があれば、掘ったら出そうだもん。んーでも、そうか。寒いから凍ってたりするんかな…🤔」
うんうんと頷いてくれるザエルアポロ。
「実は、ここの水は大分深いところから引き上げているんだ。僕たちが集まることで、霊圧同士がぶつかり、その摩擦で気温が上昇して、地中で氷になっていた水分が溶け出してはいるんだろうけど、湧水になるほどではないかな。排水を浄化して再利用するにしても、気分が良いものではないし。新しい水源の確保は大賛成だよ。地形の特徴から、大方の予測をつけてあげようか。そうしたら、無闇に歩き回ることをせずに済むでしょ」
「おー!ありがたい👏」
「それで、どうやって水脈を探り当てるつもりなのかな?」
ざっと椅子を引いて、やや膝を曲げて立った。
「ダウジング‼😆👉👉」
「バカだね」
「😱」
なつみは、「コイツ、上げて、下げたぞ」と手首を上下したり、ザエルアポロを指差したりしながら、ショックを受けたぞとジェスチャーで、お集まりのみなさんに訴えた。
「あのね。指でやるわけじゃないよ。そんな、ずっとゲッツして行くわけないじゃん。探せるわけないじゃん、こんなので。針金でやんの😤👉👉」
「うん、バカだね😌」
「〜😱」
「ハリベルなら、いくらか水の在処を察知できるんじゃないか?」
「ああ。そうだな」
慌てるなつみ。
「ちょっとちょっと❗️ぼくのダウジングだって、見つけれるもん❗️」
「あれはね、やってる本人の都合で動いてるだけだから。いい加減なものなんだよ」
「そんなことないもん❗️じゃじゃあ、ぼくとハリベルの勝負ね❗️どっちがでっかい水脈当てれるか、しょーぶッ❗️だよ❗️👉👉」
「ムキになることかよ」
「なることだよ‼️‼️」
探検の準備が整った後日、虚夜宮の上階をぐるりと回れるベランダ状の見張り場に立った。
「斬魄刀」
「持った❗️」
「マント」
「着けた❗️」
出発前の持ち物チェックを。
「水筒」
「持った❗️」
「お弁当」
「持った❗️」
「おやつ」
「持った❗️」
探検というよりも遠足のよう。
「財布」
「無い❗️」
「ハンカチ」
「無い❗️」
無くてもいいが、一応確認されたいのだ。
「地図」
「持った❗️」
読めやしないが。
「針金」
「持ったぁ❗️👉👉」
「ボディーガード」
「いーらないッ❗️」
リストをしまう。
「本当にひとりで大丈夫?外はとても危険だから、誰かつけた方が良いと思うけど」
「いらないよー。ダウジングに集中しなきゃいけないから、ひとりでいさせてくれ✋😤」
なつみの身に何かあれば、藍染に何をされるかわからない。ザエルアポロは心配したが、なつみの自信を信じてみることにする。噂に聞く、なつみが起こす奇跡を、彼も見てみたかったからだ。
「助けが必要になったら、すぐに僕らを呼ぶんだよ」
「うん❗️」
その隣には、ハリベルとその従属官たちがスタンバイしていた。
「絶対負けないからねー。プールと大浴場がつくれる、こーんなでっかい水脈見つけてやるんだからぁ❗️」
なつみがうんと両腕を広げて、「こーんな」と言った。
「ハンッ、だったらあたしらは、そのプールと大浴場に、スライダーと滝を付けれるくらいデカい水脈当ててやる!」
「何をー❗️じゃあ、ぼくのは、それに流れるプールとジャグジーと水族館付けてやるぅ‼️」
夢はでっかく、微笑ましいマイクパフォーマンスを繰り広げてくれるなつみとアパッチである。
「下らない話はその辺にしておけ。そろそろ行くぞ」
なのに、冷静に止めてくれるハリベル。
「下るよ❗️おもっきり下ってる話だよ❗️あ、行っちゃった❗️もー❗️こーゆーのは、よーいドンで行くもんなのにー❗️✊」
出遅れたなつみ。
「無駄口叩いても始まりませんからね」
スンスンも出発。
「大体、勝ち負けより、両方見つけられる方が良いんだろ。見つけてこいよ」
ミラ・ローズも出発。
「気ぃつけて行けよ、なつみ!ちゃんと帰ってくんだぞ!」
アパッチも出発。
「うん、わかってる❗️いってらっしゃーい❗️👋」
お見送りができるなら、出遅れても良いなつみ。
「さて、君が行く方角だけど」ザエルアポロが指を差す。「あっちだ」
ハリベルたちとは逆の方角。
「わかりにくいだろうけど、あの辺は多少ここより低くなっているんだよ。もしかしたらあるかもしれない。君の野生の勘が働くことを期待してるよ」
「勘じゃないの❗️波動のキャッチなの❗️そこでぼくの活躍を、指咥えて待って見てな😏」
「双眼鏡を構えて待って見てるよ😌」
なつみは手すりの上に立ち、斬魄刀を抜いた。
「いってきまーす❗️お留守番よろしくね👋😉」
「いってらっしゃい」
夜の砂漠をサーっと飛んでいく。月明かりがなんともありがたい。
「ペッペッ💦」
しかし向かい風のせいで、砂が顔にかかるかかる。
「マントをマスク代わりにしろ」
「うん」
一旦降りて、斬魄刀を鞘に収める。マントを外して巻き直した。
「ムッちゃん、まるでここは月面だね。宇宙兄弟を思い出す……」
見回すと、人工物は虚夜宮と破面の宮だけ。
「家を建てることも、お友だちをつくることも、きっと怖くてできないんだ。身の守り方を知らなかったら、すぐに襲われちゃう。人の心を忘れちゃうほど、厳しい世界なんだ。放ったらかしてちゃいけない。…、帰っちゃいけない」
自然と胸のところをキュッと掴んだ。深く一度目を閉じて開く。
「こんなところでムッちゃんをムッちゃんて呼んだら、まるでムッちゃんが主人公みたいじゃん。ズルくない?」
「私に名付けたのはお前だろ。勝手に拗ねるな。どう見てもお前の方が日々人だしな」
「えー?そーかな。黄色い方がヒビチョフだよ」
「良いから。そろそろ試しに構えたらどうだ?」
「OK」
鞄から曲げた針金を取り出す。
無心で構えた。
「…😑」
「動かないな」
「まだまっすぐってことだよ。行こう」
針金を鞄にしまいつつ歩き出すと、気になる事が起きた。
「もー、靴の中すぐ砂入るなぁ。これ、歩いてらんないよ」
「宇宙服なら良かったのにな。今度、藍染に頼んでみたらどうだ?」
「バズ・ライトイヤー仕様にでもするか、ってそんなこといらないから。持ってきてもらうとしたら、宇宙兄弟の最新巻だよ」
また空を飛んでいくことにした。
「でもさ〜、最初はドッキリにハメられて超イヤだったけど。いざまともに目を向けてみたら、JAXAとNASAとロスコスモスが協力し合ってひとつのミッションに取り組むみたいな、すげぇプロジェクトじゃんって思えたよ。そんなすげぇのに、ぼく選ばれちゃって、やっば〜😆」
「やる気満々だな」
「ぼくさ、宇宙飛行士になりたいんだよ」
「影響されすぎだ。SLAM DUNKのときもバスケやりたがってたろ」
「さすがにツイストサーブは目指さなかったけど、ポケモンマスターはちょっと憧れたかな(笑)」
「尸魂界に宇宙開発部は存在しない。もちろん虚圏もな」
「人間って、がんばるよね。宇宙に夢を見るってさ。宇宙飛行士って、コミュニケーション能力も高いし、メカニックにも強いし、体力だってあるじゃん。ヒーローだよ。宇宙飛行士になれたら、他の何にだってなれそうだから、宇宙飛行士目指したい」
「宇宙飛行士じゃないものになるために、宇宙飛行士になりたいのか?」
「…、イジワル言うな😒」
「宇宙飛行士はずば抜けて凄い逸材だが、それを支える周りの人たちも、賢さと思いやりが備わっている。宇宙に挑むには、1人の知恵と力では足りないということだな。ミッションに関わる全ての人が、命をかけた思いを抱いている。それだけ重たい責任があるから、国を越えて自然と協力し合い、一致団結の平和がつくられるんだろうな」
「尸魂界でもつくろうよ、宇宙開発部」
「今やるべきことから目を逸らすな。お前の使命は、虚圏の開拓だ。宇宙は人間に任せれば良い。そうだ、宇宙兄弟といえば水資源探査があったろ」
「カルロム洞窟ね〜」
「あぁいうことだろ、今は」
「なつみム洞窟が見つかるかな〜。見つけてもさ、月面と違うから、虚圏史上初の水発見とかならないし、余裕で先住さんがいそうじゃん。感動とかスゴさが薄いよね」
「文句を言うな。抱えて飛んでやるから、ダウジングをしろ」
「やだよー。どこ持って飛ぶつもりなの?絶対息苦しくなるじゃん」
ザッと着地。
「また砂入るー。ブーツにしてもらおうかな」
針金を構える。
「袴にブーツとか…、あ、曲がったぜよ」
2本の針金がすーっと右斜め前へ。
「反応ありだ。よっしゃー!」
嬉しい変化に、ゴソゴソと力を込めて鞄に針金を押し込んだ。
「お弁当にしよう✊」
ズコッ‼️🐥
「何故だ‼️ここからだろう‼️」
なつみはムッちゃんを無視して、斬魄刀を地面に刺し、砂が風に乗ってこない上空へと、舞い上がっていった。お弁当を開ける。
「だってさ、こっから先はザエポンの目の届かないところに入りそうなんだもん。ゆっくりご飯食べられるのも、今のうちな気がするんだ」
「ザエポン…。お前それ、本人に言ってやるなよ」
「えー。他にあだ名思いつかないよ🍙」
「普通に呼んでやれば良いだろう」
「なっが。緊急時にあんな長い名前叫んでらんない」
「緊急時にそんなあだ名で呼んだら、緊張感が減るだろう。たかが2音をケチるな」
「……、もしかしてムッちゃんて呼ばれたくないの😒」
「奴がそういうことを気にするタイプに見えるという話だ。ザエルアポロと呼んでやれ。名前は人にとって、とても大切なものなのだからな。大体、ルとアとロを取ってンをくっつけるとは失礼だぞ」
「じゃあ、アポ☝️」
「それは犬だ」
「パグだ」
「サンタもハート柄だな」
「あんま言わないでよ、ムッちゃん。ホームシックになっちゃう」
「使命感を抱け。お前以外にこのミッションは務まらない。行け、ウェコムンドノート木之本なつみ!達成無き帰還は許されないぞ!」
「ははははッ❗️Copy. I’ll do my best. And I count on you, my commander😁」
心のキャプコムから現場の飛行士への、熱い応援メッセージだった。
新たに示された方角へ飛行していくと、再び針金はやや右へ曲がった。
スンッ
なつみは鼻から反射的に息を吸った。
「どうした」
「歩く」
ダウジングで導かれる方に、小さいが山が見える。2つ。
「谷があるのか」
「まだ地図の範囲内のはずだよ。谷があるなら教えてもらえてるって。何か変、あの山」
少し斜めに歩いてみると、山は2つだけではないことに気付く。
「ボコボコしてるように見える」
「岩山でもないな。あれらは枝か?」
山肌の異変の正体を探るため、なつみとムッちゃんは前方に視線を集中させて歩き続けた。陰から何かが襲ってきても反応できるよう、耳は全方向からの音を捕らえようとしていたが。
手元の針金が両側へクルッと回って、初めてなつみの視線が下へ降りた。
「…ッ‼︎⁉︎」
「そいつをしまって、抜け、なつみ」
ムッちゃんの声に従い、素早く針金から斬魄刀に持ち替えるが、恐怖からくる動揺で、なつみの身体は強張った。
(虚の死体の山)
5以上でいっぱいのなつみには、いや、なつみでなくとも、これは数えられたものではない。なつみのダウジングが探知した水脈。それは真っ赤な小川。大量の虚から流れ出る、血の川だった。
(これだけの数を倒すなんて、何人の仕業だろう。応援を呼ぶべきか)
そう疑いながらも、なつみは勇気を出して歩き出した。何故なら。
(霊圧が、…無い)
感覚を研ぎ澄ましても、どこからも発生源が無かったからだ。
「ギャングどもは狩に出てて、留守ってか」
なつみの狙いは、この死体の山だが、生存者がいないかどうか確かめることにあった。
「助けられるなら、助けなきゃ」
しかし拍動は無く、静かである。
「いないか」
全てが本当に死体であると判断したなつみは、この惨状を築き上げた者たちが帰ってくる前に、水脈探しを再開するため、高く飛んで逃げることにした。地面にぐっと踏み込んだその時。
「何をしている」
後ろを取られてしまった。
(しまったッ‼︎‼︎)