第九章
夢小説設定
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
祭りが終わり、瀞霊廷に日常が戻りつつある頃、なつみには悩み事がちらほら湧いてきていた。
「むぅ❗️悩む‼️」
少しずつ、それらの悩みを解消しつつ迎えたある朝、また大問題をなつみは起こしてしまった。
八番隊舎、隊首室にて。
「おはよ〜🥱」
京楽がやっと出勤。
「遅刻です」
「ごめんよ〜」
いつものことながら、呆れてため息を吐く七緒。
「そのご様子だと、木之本さんのこと、お聞きになっていませんね」
「なつみちゃん?どうかしたの?」
連絡が無かったことと、七緒の口ぶりからして、さして重大なことではないと判断できるが、何か問題が発生したことは見てとれる。
「詳しいことはわかりませんが、木之本さんがうさぎの姿になってしまったそうですよ」
「……は?」
「私も先程知らせを受けた時は、理解できませんでしたが、只事ではないそうで」
そう話す七緒の前で、俯き、ぷるぷる震える京楽。
「ボクに内緒で、またそんなことをっ…💢」
「何を怒ってらっしゃるんですか」
「どこにも曝さないぞ、ボクのセクシーバニーちゃぁーんッ‼️🔥」
せっかく来たのに、もう退室してしまった。それもダッシュで。
「はぁ…。勘違いしてる」
キュキューッ‼︎廊下から急ブレーキの音。
「七緒ちゃん‼️」
行ったと思ったら、すぐ引き返してきた。
「どうされました?」
別に驚きはしない。
「なつみちゃん、今どこ」
案の定の質問。
「技術開発局だそうです」
「あんの変態科学者ぁーッ❗️今度という今度は、絶対許さないぞーッ‼️💨」
今度こそ出ていった。
「はぁ…」
技術開発局に到着すると、ネムが応対してくれた。
「こちらへどうぞ。なつみ様はマユリ様の研究室にいらっしゃいます。容態は安定していますが、目覚める気配がまだないとのことです」
「…?…そう。」
バニーガールのコスプレをして、良からぬ遊びをしているという予想が間違ったものであると、ネムの説明からなんとなく窺えた。京楽は、なつみの身に起きたことが段々気になり出し、怒りは冷めて、不安に支配され始めた。
マユリの部屋の前では、深刻な面持ちの美沙、市丸、藍染がじっと何かを待っていた。3人は京楽の到着に気付く。
「遅いわ…」
「ごめん」
苛立ったため息を吐いた市丸に、状況がわかっていないが、無意識に謝ってしまった。
「京楽隊長、大変なことになってしまいました」
美沙の言葉は弱々しかった。現状を拒絶したがっているように。
「涅隊長が今、詳しいところを調べてくれています」
藍染は冷静に、そう伝えた。
「調べるって…。七緒ちゃんが言ってたけど、なつみちゃんがうさ」
京楽の言葉の途中で、部屋の扉が開けられた。
「やっと来たか。この一大事に、悠長なことだネ、恋人様は」
軽蔑の視線を投げかけるマユリが現れた。
「涅隊長、何かわかりましたか」
美沙が迫るようにきいた。
「ああ。ある程度でしかないがネ」
腕を組んでいるのかと思われたが、そうではなく、マユリは腕に抱く小さな何かを撫でていた。丸く、灰色のもふもふした何かを。
「ねぇ、涅隊長が抱いてるそれって」
京楽は自分の目を疑った。いや、まだ眠っており、夢でも見ているのだろうと思った。
しかし、なつみのいる現実は、夢よりも非現実を引き起こすのだ。
「そうだヨ。これはなつみだ」
「なつみちゃんが、うさぎになっちゃった……?」
遡ること数夜前のこと。
「朽木ルキアが現世で失踪したそうだ。浦原喜助と接触しているらしい。恐らく、崩玉の処分に動き出したんだろう。我々も、そろそろ旅立つ時が来たようだ」
某所にて、陰謀目論む例の3人が集まっていた。
「なつみを連れて行く方法を考えたんだが、眠らせて運ぶ以外に思いつかなかったよ。騙すことはできても、説得は無理だろうからね。向こうに着いてしまえば、多少疑ったとしても、楽しく暮らしてくれるだろう。確実に連れ出すには、力技でも仕方がないよ」
「ほんまに確実ですか?相手はなつみちゃんですよ」
「私が信用ならないかい?睡眠薬の効きは、以前確認している。それに、彼女の人気を利用すれば、犯人を特定されることなく薬を呑ませることができるはずだよ。大丈夫、上手くいくよ。担ぐ心配もしなくていい。私が責任を持って、あの子を抱えていくからね」
「日取りはお決まりですか」
「いや、いつなつみが薬を口にするかはわからないから、その内としか言えないかな。あの子の同居人が騒いだら、行動に移す。お前達が急ぐことはないよ。どうせ周りは何も気付かないのだからね。時間をかけて進めていこう」
「替え玉の方は?」
「確かに不安材料だが、何、私たちがここを去るまで耐えられれば良いだけのことだ。ギン、彼女に斬魄刀を使わせるような仕事をさせるなよ」
「わかりました」
そして、この大騒ぎの朝になり、なつみが起きていないことに美沙が気付き、寝室を覗くと、ベッドの上に抜け殻のように脱がれたパジャマがあった。その中が小さく膨らんでいるのを見つけたため、恐る恐るパジャマをめくってみると。
「何これっ🫢」
1羽のうさぎが眠っていた。その眠りが相当深いのか、美沙が抱き上げても起きる気配が無い。
「どうして、こんなところにうさぎが?」
部屋を見渡すと、なつみの姿はどこにも無いのだが、斬魄刀とマントはいつものところに置かれていた。死覇装は壁にかけられたまま。その上、大事なペアリングが、パジャマの袖の数cm離れたところに転がっていたのだ。つまり。
「出かけてないってこと?」
灰色のふわふわから伝わるのは、このうさぎの寝息ともうひとつ、この部屋にいるせいで手元からだとは信じられなかったが、確かになつみの霊圧が放たれているのがわかった。
「うそ…、なつみなの」
青ざめる美沙は、急いで藍染にこのことを伝えようと走り出した。
隊舎内を駆け回り、藍染を探す美沙。
「藍染隊長!大変です!」
会うことができた上司に、息急き切って報告する。
「どうしたの、そんなに慌てて」
挨拶も忘れて駆け込んできた美沙に、しめしめ、驚いた表情を向ける藍染。
「なつみが、なつみがッ!」
美沙は興奮して、そこから進めない。
「落ち着いて。なつみに何があったの」
言葉だけでは信じてもらえないだろうし、何より、言いたくもない事象。美沙は、眠るうさぎを藍染の目の前に差し出した。
「なつみがうさぎになっちゃいました‼︎‼︎」
「…、何だって‼︎⁉︎」
やはり計画は狂った。
何が原因で、そんなことが起きたのかをとりあえず突き止めるため、藍染はマユリのところへうさぎななつみを連れて行くよう、美沙に指示した。自分は市丸に連絡をし、その後自分も技術開発局に向かうと言って。
「なつみが眠ったよ。だけど、問題が起きてしまった」
伝令神機で市丸に伝える。
「やっぱり。何ですか?」
「それが…、うさぎになってしまって」
「はい……?」
「涅に原因を探らせる間、対応を考えるよ。お前も、すぐに技術開発局へ向かってくれ」
「ようわからんけど、行きますわ」
小首を傾げながら通話を終えると、市丸は隊舎を出る旨をイヅルに言っておく。
「イヅル、なつみちゃんがお寝坊さんしてるみたいやで、迎えに行くわ」
「そうなんですか?…、京楽隊長のところですかね」
「なんやちゃうみたいやで。悪いけど、ここ任せるわ」
「はい。いってらっしゃい」
美沙と技術開発局にて合流する藍染と市丸。
「市丸隊長、良かった、早く来てくださって」
「なつみちゃんがうさぎさんになってしもたって、ほんまなん?信じられへんけど」
「今調べてもらってますけど、涅隊長が引き受けてくださったので、恐らくそうなんですよ。だって、どこにも見当たらないじゃないですか!」
「京楽さんには、伝えたん?」
「八番隊へ地獄蝶を飛ばしておきましたから、一応は」
美沙は期待していないように俯いた。
「まだ寝てるやろうな」
「あれがなつみかどうか、明らかになってから、改めて僕が連絡を入れるよ」
「はい。お願いします」
そう話していると、マユリが現れ、3人を研究室へ誘導した。
「入り給え」
彼の表情からは、良い印象が窺えなかった。
「失礼します」
うさぎは診察台に寝かされて、くーすかくーすかと眠り続けている。
「このうさぎさんが?」
市丸は信じ難いという顔をして見下ろした。
「涅隊長、どうでしたか」
椅子に腰掛けるマユリに美沙が問う。
「まずわかったのは、それがうさぎだということだ」
「はい?なつみじゃないってことですか」
「いや、そういう意味じゃあないヨ。身体の構造が完全にうさぎであるということだ。目覚めて、『おはよう』と言ってくれれば、簡単なんだがネ」
眠るうさぎの身体を撫でてみる市丸。ふさふさの毛が心地よく、たくさん触っていたくなる。この感覚に、どこか覚えがあるような。
「残念ながら、霊圧の質や霊力と身体の比率からして、そのうさぎがなつみであることは確かだヨ」
「嘘やろ…」
「私も疑いたいがネ。幻覚などという優しい現象ではないんだヨ」
ショックを受ける市丸の横にいる藍染は、そんなことを知りたいのではない。
「涅隊長、原因は突き止められそうですか」
「採血をして、今、分析器にかけているところだヨ。結果が出るまで少し時間がかかるから、そう急かされても困るんだがネ。私の予想では、何らかの薬が引き起こしたことだと思っているヨ」
「うさぎになる薬なんて、無いやろ」
「ならば、なつみが自ら変身したとでも言うのかネ?狙ってやったことならば、どうして眠ったままだ。何より、普通うさぎになりたがる動機など無いだろう」
「そうやけど…」
「なつみの能力は確かにさまざまなことを可能にするが、こんなことよりももっと容易くできるだろう性転換を私に頼んできたくらいだヨ。種を超えた変身ができるわけがないだろう。これは、外からの影響がもたらしたものだ」
3人にもマユリの考えが見えてきた。
「薬で、外からって、まさか、なつみをうさぎにした犯人がいるってことですか⁉︎」
美沙は驚いて、手を口に当てた。
半分事情を知る2人は、下手に口を挟めずにいた。
「わからないことだらけなんだ。憶測は、とりあえずここまでにしておこう」
「さすがは藍染隊長。君はお優しいネ」
一旦そこで話を切り上げ、マユリは研究室で再びひとりになった。3人は廊下に出て、分析の結果を待つ。そこに遅れて京楽が来た。
「むぅ❗️悩む‼️」
少しずつ、それらの悩みを解消しつつ迎えたある朝、また大問題をなつみは起こしてしまった。
八番隊舎、隊首室にて。
「おはよ〜🥱」
京楽がやっと出勤。
「遅刻です」
「ごめんよ〜」
いつものことながら、呆れてため息を吐く七緒。
「そのご様子だと、木之本さんのこと、お聞きになっていませんね」
「なつみちゃん?どうかしたの?」
連絡が無かったことと、七緒の口ぶりからして、さして重大なことではないと判断できるが、何か問題が発生したことは見てとれる。
「詳しいことはわかりませんが、木之本さんがうさぎの姿になってしまったそうですよ」
「……は?」
「私も先程知らせを受けた時は、理解できませんでしたが、只事ではないそうで」
そう話す七緒の前で、俯き、ぷるぷる震える京楽。
「ボクに内緒で、またそんなことをっ…💢」
「何を怒ってらっしゃるんですか」
「どこにも曝さないぞ、ボクのセクシーバニーちゃぁーんッ‼️🔥」
せっかく来たのに、もう退室してしまった。それもダッシュで。
「はぁ…。勘違いしてる」
キュキューッ‼︎廊下から急ブレーキの音。
「七緒ちゃん‼️」
行ったと思ったら、すぐ引き返してきた。
「どうされました?」
別に驚きはしない。
「なつみちゃん、今どこ」
案の定の質問。
「技術開発局だそうです」
「あんの変態科学者ぁーッ❗️今度という今度は、絶対許さないぞーッ‼️💨」
今度こそ出ていった。
「はぁ…」
技術開発局に到着すると、ネムが応対してくれた。
「こちらへどうぞ。なつみ様はマユリ様の研究室にいらっしゃいます。容態は安定していますが、目覚める気配がまだないとのことです」
「…?…そう。」
バニーガールのコスプレをして、良からぬ遊びをしているという予想が間違ったものであると、ネムの説明からなんとなく窺えた。京楽は、なつみの身に起きたことが段々気になり出し、怒りは冷めて、不安に支配され始めた。
マユリの部屋の前では、深刻な面持ちの美沙、市丸、藍染がじっと何かを待っていた。3人は京楽の到着に気付く。
「遅いわ…」
「ごめん」
苛立ったため息を吐いた市丸に、状況がわかっていないが、無意識に謝ってしまった。
「京楽隊長、大変なことになってしまいました」
美沙の言葉は弱々しかった。現状を拒絶したがっているように。
「涅隊長が今、詳しいところを調べてくれています」
藍染は冷静に、そう伝えた。
「調べるって…。七緒ちゃんが言ってたけど、なつみちゃんがうさ」
京楽の言葉の途中で、部屋の扉が開けられた。
「やっと来たか。この一大事に、悠長なことだネ、恋人様は」
軽蔑の視線を投げかけるマユリが現れた。
「涅隊長、何かわかりましたか」
美沙が迫るようにきいた。
「ああ。ある程度でしかないがネ」
腕を組んでいるのかと思われたが、そうではなく、マユリは腕に抱く小さな何かを撫でていた。丸く、灰色のもふもふした何かを。
「ねぇ、涅隊長が抱いてるそれって」
京楽は自分の目を疑った。いや、まだ眠っており、夢でも見ているのだろうと思った。
しかし、なつみのいる現実は、夢よりも非現実を引き起こすのだ。
「そうだヨ。これはなつみだ」
「なつみちゃんが、うさぎになっちゃった……?」
遡ること数夜前のこと。
「朽木ルキアが現世で失踪したそうだ。浦原喜助と接触しているらしい。恐らく、崩玉の処分に動き出したんだろう。我々も、そろそろ旅立つ時が来たようだ」
某所にて、陰謀目論む例の3人が集まっていた。
「なつみを連れて行く方法を考えたんだが、眠らせて運ぶ以外に思いつかなかったよ。騙すことはできても、説得は無理だろうからね。向こうに着いてしまえば、多少疑ったとしても、楽しく暮らしてくれるだろう。確実に連れ出すには、力技でも仕方がないよ」
「ほんまに確実ですか?相手はなつみちゃんですよ」
「私が信用ならないかい?睡眠薬の効きは、以前確認している。それに、彼女の人気を利用すれば、犯人を特定されることなく薬を呑ませることができるはずだよ。大丈夫、上手くいくよ。担ぐ心配もしなくていい。私が責任を持って、あの子を抱えていくからね」
「日取りはお決まりですか」
「いや、いつなつみが薬を口にするかはわからないから、その内としか言えないかな。あの子の同居人が騒いだら、行動に移す。お前達が急ぐことはないよ。どうせ周りは何も気付かないのだからね。時間をかけて進めていこう」
「替え玉の方は?」
「確かに不安材料だが、何、私たちがここを去るまで耐えられれば良いだけのことだ。ギン、彼女に斬魄刀を使わせるような仕事をさせるなよ」
「わかりました」
そして、この大騒ぎの朝になり、なつみが起きていないことに美沙が気付き、寝室を覗くと、ベッドの上に抜け殻のように脱がれたパジャマがあった。その中が小さく膨らんでいるのを見つけたため、恐る恐るパジャマをめくってみると。
「何これっ🫢」
1羽のうさぎが眠っていた。その眠りが相当深いのか、美沙が抱き上げても起きる気配が無い。
「どうして、こんなところにうさぎが?」
部屋を見渡すと、なつみの姿はどこにも無いのだが、斬魄刀とマントはいつものところに置かれていた。死覇装は壁にかけられたまま。その上、大事なペアリングが、パジャマの袖の数cm離れたところに転がっていたのだ。つまり。
「出かけてないってこと?」
灰色のふわふわから伝わるのは、このうさぎの寝息ともうひとつ、この部屋にいるせいで手元からだとは信じられなかったが、確かになつみの霊圧が放たれているのがわかった。
「うそ…、なつみなの」
青ざめる美沙は、急いで藍染にこのことを伝えようと走り出した。
隊舎内を駆け回り、藍染を探す美沙。
「藍染隊長!大変です!」
会うことができた上司に、息急き切って報告する。
「どうしたの、そんなに慌てて」
挨拶も忘れて駆け込んできた美沙に、しめしめ、驚いた表情を向ける藍染。
「なつみが、なつみがッ!」
美沙は興奮して、そこから進めない。
「落ち着いて。なつみに何があったの」
言葉だけでは信じてもらえないだろうし、何より、言いたくもない事象。美沙は、眠るうさぎを藍染の目の前に差し出した。
「なつみがうさぎになっちゃいました‼︎‼︎」
「…、何だって‼︎⁉︎」
やはり計画は狂った。
何が原因で、そんなことが起きたのかをとりあえず突き止めるため、藍染はマユリのところへうさぎななつみを連れて行くよう、美沙に指示した。自分は市丸に連絡をし、その後自分も技術開発局に向かうと言って。
「なつみが眠ったよ。だけど、問題が起きてしまった」
伝令神機で市丸に伝える。
「やっぱり。何ですか?」
「それが…、うさぎになってしまって」
「はい……?」
「涅に原因を探らせる間、対応を考えるよ。お前も、すぐに技術開発局へ向かってくれ」
「ようわからんけど、行きますわ」
小首を傾げながら通話を終えると、市丸は隊舎を出る旨をイヅルに言っておく。
「イヅル、なつみちゃんがお寝坊さんしてるみたいやで、迎えに行くわ」
「そうなんですか?…、京楽隊長のところですかね」
「なんやちゃうみたいやで。悪いけど、ここ任せるわ」
「はい。いってらっしゃい」
美沙と技術開発局にて合流する藍染と市丸。
「市丸隊長、良かった、早く来てくださって」
「なつみちゃんがうさぎさんになってしもたって、ほんまなん?信じられへんけど」
「今調べてもらってますけど、涅隊長が引き受けてくださったので、恐らくそうなんですよ。だって、どこにも見当たらないじゃないですか!」
「京楽さんには、伝えたん?」
「八番隊へ地獄蝶を飛ばしておきましたから、一応は」
美沙は期待していないように俯いた。
「まだ寝てるやろうな」
「あれがなつみかどうか、明らかになってから、改めて僕が連絡を入れるよ」
「はい。お願いします」
そう話していると、マユリが現れ、3人を研究室へ誘導した。
「入り給え」
彼の表情からは、良い印象が窺えなかった。
「失礼します」
うさぎは診察台に寝かされて、くーすかくーすかと眠り続けている。
「このうさぎさんが?」
市丸は信じ難いという顔をして見下ろした。
「涅隊長、どうでしたか」
椅子に腰掛けるマユリに美沙が問う。
「まずわかったのは、それがうさぎだということだ」
「はい?なつみじゃないってことですか」
「いや、そういう意味じゃあないヨ。身体の構造が完全にうさぎであるということだ。目覚めて、『おはよう』と言ってくれれば、簡単なんだがネ」
眠るうさぎの身体を撫でてみる市丸。ふさふさの毛が心地よく、たくさん触っていたくなる。この感覚に、どこか覚えがあるような。
「残念ながら、霊圧の質や霊力と身体の比率からして、そのうさぎがなつみであることは確かだヨ」
「嘘やろ…」
「私も疑いたいがネ。幻覚などという優しい現象ではないんだヨ」
ショックを受ける市丸の横にいる藍染は、そんなことを知りたいのではない。
「涅隊長、原因は突き止められそうですか」
「採血をして、今、分析器にかけているところだヨ。結果が出るまで少し時間がかかるから、そう急かされても困るんだがネ。私の予想では、何らかの薬が引き起こしたことだと思っているヨ」
「うさぎになる薬なんて、無いやろ」
「ならば、なつみが自ら変身したとでも言うのかネ?狙ってやったことならば、どうして眠ったままだ。何より、普通うさぎになりたがる動機など無いだろう」
「そうやけど…」
「なつみの能力は確かにさまざまなことを可能にするが、こんなことよりももっと容易くできるだろう性転換を私に頼んできたくらいだヨ。種を超えた変身ができるわけがないだろう。これは、外からの影響がもたらしたものだ」
3人にもマユリの考えが見えてきた。
「薬で、外からって、まさか、なつみをうさぎにした犯人がいるってことですか⁉︎」
美沙は驚いて、手を口に当てた。
半分事情を知る2人は、下手に口を挟めずにいた。
「わからないことだらけなんだ。憶測は、とりあえずここまでにしておこう」
「さすがは藍染隊長。君はお優しいネ」
一旦そこで話を切り上げ、マユリは研究室で再びひとりになった。3人は廊下に出て、分析の結果を待つ。そこに遅れて京楽が来た。