第八章
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前半戦最後は、女性死神協会によるアイドルナンバーである。人数合わせなどと言われ、なつみと美沙も参加したが、絶対に後ろの見えにくいポジションにしてくださいとお願いできたため、清楚系のスカート衣装をみんなに見てもらうことはなかった。
だったはずなのに、パフォーマンスが終わり、他のメンバーははけて、乱菊がステージに残って檜佐木とMCでおしゃべりをしていたら。
「この衣装、卯ノ花隊長が作ってくださって、一人一人デザインが少しずつ違うのよ。他の子のも見たいでしょ?誰呼んだら良いかしら。なつみよね。なつみー!戻ってきてー!」
(ウソやん‼️何で‼️)
ヘッドセットはまだ着けたままだが、お茶を飲んでいた。なのに、そんな展開になってしまった。イヤだー、という顔をして、無視してじっとしていたら、やちるに引っ張られてステージに戻されてしまった。
「イヤだーッ‼️‼️」
「連れてきたよ〜😀」
「ありがと、やちる。なつみ!呼んだんだから、すぐ来なさいよ!」
「何でぼく///」
もじもじと恥ずかしそうにする。
「木之本、みんなにもよく見えるように、もっと前に行って、ピシッと立て」
「えー💧」
檜佐木に言われちゃ、とことこ前に行くしかない。
「はい、くるっと回って」
「もー」
ぷんぷんしながら、乱菊の指示に従う。客席から「かわいい〜」と声が上がる。
1周し終わったら、檜佐木と乱菊はステージ袖にこっそりはけてしまった。
「あれ?ちょっと!置いてかないでくださいよ!💦」
慌ててなつみも帰ろうとしたら、無理矢理なMCがそれを制止した。
「それではアンコールにお応えして、みんな大好き木之本なつみちゃんに1曲歌ってもらいましょー❗️」
「はぁ⁉️聞いてないですよ‼️そんなの‼️アンコールだって、お願いされてないじゃないですか‼️」
と訴えたものだから、上の方から思い出したような意地悪アンコールコールが送られてきた。
「アンコール!アンコール!🥳」
「キー‼️」
彼氏様とお兄様。それにキー‼️と睨みつけるみんなのアイドル。
「アンコール!アンコール!」
「むきゃぁ⁉️」
つられてみんなも面白がって、アンコールをなつみに求め始めた。
「これで文句無いわね😏」
「吉良、かけちまえ」
「了解です🙂」
「ああっ、ちょっと❗️あ❗️もー❗️」
イントロが始まる。それはなつみにぴったりな歌。大好きな曲なので、練習無しでも完璧に歌える曲だった。
(やられた。ここで逃げたらチキン野郎呼ばわりか。良いぜ、この名曲、てめぇらの心に刻んでやる❗️)
坂本真綾 『プラチナ』
I’m a dreamer ひそむパワー
私の世界
夢と恋と不安で出来てる
でも想像もしないもの 隠れてるはず
空に向かう木々のようにあなたを
まっすぐ見つめてる
みつけたいなあ かなえたいなあ
信じるそれだけで
越えられないものはない
歌うように奇蹟のように
「思い」が全てを変えてゆくよ
きっと きっと 驚くくらい
I’m a dreamer ひそむパワー
まだ見ぬ世界
そこで何が待っていても
もしも理想とちがっても 恐れはしない
鳥たちは風にのり旅をしてゆく
今日から明日へと
伝えたいなあ さけびたいなあ
この世に一つだけの存在である私
祈るように星のように
ちいさな光だけど何時かは
もっと もっと つよくなりたい
間奏部分、最前列にレンの姿を見つけ、彼が頭上に高く何かを掲げるのを見た。
(ムッちゃん?はぁ、レン、わかったよ。何かやってみる。寄こせ)
構えるなつみの手に、相棒が渡された。
限界のない可能性がここにある この手に
It’s gonna be your world
抜刀し、空へ舞い上がると、なつみは雨を降らし始めた。熱気溢れる会場にひんやりとした心地よさをお届け。
みつけたいなあ かなえたいなあ
信じるそれだけで
越えられないものはない
観客全員に挨拶するように、手を振りながらぐるーっとフライング。スカートの中がなかなか見えないような、上手いスピードで飛んでいく。
歌うように奇蹟のように
「思い」が全てを変えてゆくよ
きっと きっと 驚くくらい
お日様の光を雨に当てれば、観客の心もときめく大きな虹がかけられました。アウトロのキラキラな音色の中、スタッとステージに帰ってきたなつみ。シメの一言を。
「休憩させてください」
冗談を言いましたというなつみの笑みに、みんなも笑顔になった。
やっと落ち着けると、控室の椅子に腰掛けた。
「ふへ〜」
控室など、そんなに居られないから必要無いと言っていたのだが、この日が誕生日ということで、たくさんのプレゼントがなつみ宛に届いてきて、一時預かり場として結局用意してもらって良かったと思うなつみであった。
「朝より増えてない?」
お茶を飲みつつ、箱の山を眺める。
すると、ノックが聞こえ、どーぞーと答えると、外から来たのは大好きな彼であった。
「春水さん❗️」
「お疲れ様、なつみちゃん」
「わぁーい‼️」
椅子から離れて駆け寄り、ぴょんっと京楽に抱きついた。きゅーっとくっつく。でもすぐに思い出して、文句を言わなければ。
「さっき、酷いじゃないですかぁ。アンコールなんかするつもりなかったのにぃ」
「ふふ。ソロのキミを見たかったんだもん。最高にかわいかったよ」
ちゅ。
「天使かと思っちゃった」
「むー///」
なつみが座っていた椅子に、京楽は腰掛けた。なつみは、もちろんその膝の上に座らされる。
「みんな楽しそうで、何よりです」
「ホントそうだよ。この天才のおかげでね」
なつみの鼻をちょんちょんと触った。
「んふー😚」
照れちゃう〜。
「辛いことも多い仕事をしてるから、こんなに楽しい思い出は、すごく良い原動力になるんだよ。頑張ってくれて、ありがとう、なつみちゃん。ボクはキミが誇らしいよ」
改まって言われ、もっと照れちゃうなつみ。
「んん〜💕」
時計に目をやると、あまりボーッとしていられないことに気付いた。
「春水さん、そろそろぼく着替えないと」
降りようと動いたが、京楽がそうさせてくれなかった。
「手伝ってあげようか」
最近よく見るイタズラな目。
「もー、ひとりでできますぅ」
お構い無しで、京楽はなつみの首筋に口付けた。
「そんなこと言わないで。ほら、脱がせてあげるから」
背中のファスナーに手をかけて下ろしていく。
「あん、んん///」
舌を絡めるキスもしながら。
恐らく京楽は、なつみの人気ぶりが少し癇に障ったのだろう。「みんなのもの」として距離を感じてしまった。本来なら独り占めが許されているのに。その独占欲を満たすためにここに来た。なつみもわかっている。「また後でいっぱいお相手しますから」などと言って帰すことはできないのだ。今夜は京楽とではなく、仲間たちと過ごすことになっている。だから、満足してもらうには、仕方なく受け入れるしかなかった。
とはいえ、京楽とのイチャつきがやぶさかでないなつみは、結局嫌がる素振りを出さず、流れに身を任せていた。
「んにゃ〜///」
「ふふっ」
良い反応をされて、京楽もご満悦。
「着替え中なら、外の札を替えてもらわないと困るネェ。何も知らずに、こうして入ってきてしまうヨ」
「「わぁッ‼️涅隊長⁉️💦」」
予期せぬ訪問者にイチャつく恋人たちは抱き合って固まった。
「ノックくらいしろよ‼︎‼︎」
「『ご自由にお入りください』と書いてあるじゃあないか」
「だとしてもだ‼︎‼︎」
「うゅゅゅ💦///」
なつみはこそこそと京楽の陰に隠れた。
「すいません。着替えるので盾になってもらえますか」
「わかった」
了解した京楽が、マユリになつみを見せないよう間で立ちはだかった。
「で、用は何」
「君には無いヨ」
「わかってるよ‼︎」
「まだ私からの贈り物を開けていないようだネ」
スカートを履いたままでジーンズを履く。
「涅隊長も用意してくださったんですか!ありがとうございます。でも、ご覧の通り、今日は忙しいのとプレゼントがいっぱいなのとで、開けるのは明日にするつもりなんです」
「フーン、是非とも今すぐ見てもらいたいんだがネ」
ワンピースを脱ぎ、急いでTシャツを着る。
「足が早い食べ物でも入れたのかい?」
「いや、そうではないがネ」
「なら明日で良いじゃないか」
「君には関係無いと言っているだろう。最も見てもらいたくない人物だヨ😒」
「は?また変なもの作ったな、コイツ!」
「ケンカはやめてください❗️」
着替えを完了させたなつみが、2人の間に入った。
「ひとつくらいなら、開けるのなんて一瞬ですよ。涅隊長のプレゼント、どれですか?😊」
「フン、やはり、私はなつみを好いてしまうヨ。物分かりがいい」
頭を撫で撫で。
「アレだヨ。一番目立つはずだから、とうに開けていると思っていたヨ」
指を差したところにあるのは。
「ゲッ‼️あの大っきいヤツですか❗️謎過ぎて開けたくなかったんですよね💧」
本音がポロリとして、うっかりマユリの方を見たら、それは残念そうな顔をしていた。
「すいません❗️だって、人ひとり入ってそうなんだもん😣」
箱には入れずに、包装紙でグルグル巻きのそれ。
「どうする?人ひとり入ってたら」
涅マユリのすることだ。
「人ひとり入っているヨ」
「「ゲッ‼️⁉️」」
絶句のカップル。
「…ダッチワイフっすか」
後半の公演には、なつみの同期6人組もエントリーしていた。
「何やるのかな!ね、美沙ちゃん、楽しみだねー!」
ワクワクと、最前列の特等席で友だちの出番を待つなつみ。
「教えてもらえなかったの?」
「内緒にされてたの。ケチだろ、アイツら」
「サプライズでしょ、たぶん」
檜佐木のMCの合図で、6人がステージに登場した。
「キャーッ‼️💓🙌」
客席から大きな黄色い声援が湧き上がった。
「うっそ!何この人気。やっば!アイドルかよ。ウケるッ😙」
思わず笑っちゃうなつみ。
「あんたがそういう目で見てないだけ。あの人たち、それぞれの隊で相当女性人気集めてんの。見た目良いし、仕事できるし、愛想も良いし」
「え、李空が?」
「何より、彼女をつくろうとしないから」
「モテないだけかと思ってた。アイツら変だもん」
その2人のこそこそ話、ステージの上からは丸見えの丸聞こえ。
「うるせぇ。お前の方が変だろ‼︎この変人がぁ‼︎」
「だははははっ🤣」
スーパースター李空に直に話しかけられ、大笑いな一般人なつみ。
「おいー、スーパースターと目が合っちゃった〜。きゃ〜!りくぅ〜😙」
「微塵も思ってねぇだろ💢」
そこにスーパースター尾田がなだめに入る。
「こんなとこでもケンカすんなって。時間無いから、始めるぞ。木之本、来いよ」
「へ❓😦」
何も教えてもらっていないのに、来いとは何事。
「早くこっち来い、クソチビ」
「だとコラ、オラーッ‼️」
美沙の隣りから簡単に飛び出して、再びの登壇である。
「みなさーん!今日が何の日か、ご存知ですかー?」
スーパースターハルの問いかけに、観客が大きな声で答えてくれた。
「木之本さんの誕生日ぃーッ!」
「その通り❗️😉」
ハルのウィンクに撃ち抜かれたファンたちからの悲鳴が上がった。キャーッ😍
「俺たち、毎年この日に集められては歌わされる歌があって」
「嫌そうに言うなよ、ケイジ」
スーパースターケイジの腹にドゥフドゥフとパンチする一般人。
「それを、今から歌いまーす」
スーパースターレンが軽ーく言っちゃった。
「おい、そんな身内で楽しむもんを、こんな公衆の面前でやるこたないぜ」
だって何も聞かされてない一般人。
「木之本もマイク持って。お前今日暇無いじゃん。今歌わなかったら、タイミング逃すぞ」
「もうね、やらずにいたら、次の1年気持ち悪く過ごしそうで、イヤなの。やるよ、なつみ❗️」
「あんたも好きね〜🥴」
スーパースタークーちゃんに、このこの〜と小突く一般人。
「お前にプレゼント贈ってくれた人たちが、ここにたくさんいるんじゃないか?感謝の気持ちを伝えようぜ」
「うん❗️😊」
尾田の合図でイントロが始まる。
『ハッピー☆ラッキー・バースデー!』
尾田「この世界に キミが生まれた日は
ボクにとって 大切な 夢が生まれた記念日」
レン「声あわせて 1年に1度の
はずむリズム 特別な お祝いのハーモニー」
李空「煌めくキャンドルを灯すたびに
想い出は ココロ近づけた」
なつみ「ボクら 悲しみを 微笑みへと
変えるため逢えたんだ きっと」
Happy Birthday to You!
Lucky Birthday to me!!
キミが好きさ 一番好きさ 今 キミに 「おめでとう」
Happy Birthday to You!
Lucky Birthday to me!!
タイムマシン 使わないで 未来まで届けたい
Happy Birthday to You!
Lucky Birthday to me!!
Happy Lucky Birthday to You!!
ハル「この世界に ナミダ流れるとき
できることを 見つけるよ おくびょうなんて卒業」
クーちゃん「あのライトで 照らさなくてもほら
キミといれば 勇気さえも 大きくしてくれるね」
ケイジ「もしもの チャンネルをヒネルたびに
飛び出すよ ときめくアイデア」
なつみ「ボクら 優しさで 手をつなげば
友だちで兄弟で 家族」
Happy Birthday to You!
Lucky Birthday to me!!
キミが好きさ 一番好きさ 今 キミに 「おめでとう」
Happy Birthday to You!
Lucky Birthday to me!!
どこでもドアは 開けなくても
瞳を閉じれば逢えるよ
なつみ「泣いたり 笑ったり 夢を見たり
気がつけば ひとりきりじゃない
ボクらは もともと ひとつなんだ
生きている それだけで 奇跡」
Happy Birthday thank You!
Happy Birthday thank You!
「おめでとう」と同じくらいの「ありがとう」をキミに
Happy Birthday thank You!
Happy Birthday thank You!
キミが生まれ 生きた日々が 幸せであるように
「明日へのプレゼント」
Happy Birthday to You!
Lucky Birthday to me!!
Happy Lucky Birthday to You!
Happy Birthday to You!
Lucky Birthday to me!!
Happy Lucky Birthday to You!
Lucky Birthday to You!!
あれよあれよとプログラムは進み。気付けば大トリの出番となった。始まりと同じく、最後を飾るのは男性死神協会だった。しかし、最初とは違い、会員全員があの正装をしている。羽織る死覇装、腹巻、サングラス。バンドメンバーがスタンバイし、射場がセンターマイクで語り始めた。
「あっちゅう間に、この大音楽祭のトリの時間になってしもうたな。楽しんでくれたかのォ!」
ウォーッとレスポンスが上がる。
「ほぉか。ワシらも大満足じゃけ。あと2曲、最後まで盛り上がって、ついてきてくれよォ、オンドレらァッ‼️」
また歓声が上がるも、このステージ上、1人足りていないように見える。
「射場さんが歌うのー?」
「えー」
このまま曲が始まりそうだったので、観客はブーイングに近い声を上げた。そんなことはさせまいと。あのスーパースターを呼ばなければ。
シャンッシャンッシャンッシャンッ👏
呼び込むための手拍子が自然と始まった。
「わかっとる‼︎‼︎ワシよりコイツじゃろ‼︎ 木之本ーッ、来たれーッ‼︎‼︎」
ワァーーーッ‼️👏
スタン、スタン、スタンと颯爽と現れた小さな姿も、なんと、正装を決め込んでいた。
「え⁉︎」
動揺する会場。
中央に着くと、なつみはスタンドマイクをガシッと掴んだ。
「お待たせしましたーッ‼️‼️」
何の躊躇いも無く、笑顔でステージに立つなつみの身体。声の高さはそのままに。
「キャーーーッ‼︎‼︎‼︎ 木之本くーんッ‼︎‼︎‼︎」
なつみは男の姿を取り戻していた。
とかく、彼の男時代を恋しく想っている三番隊の女性隊士たちからの熱い声援が湧いていた。観客の喜びや驚きを下に、上階では隊長格らがマユリに注目していた。冷ややかな目で。
「何だネ?皆喜んでいるじゃあないか。悪者扱いはよしてくれ給え」
悪気はひとつも無い。善意だ。親切だと。
「何をされたんですか。また例の薬ですか?」
反対派の卯ノ花のなかなかに厳しい一言。
「違うよ。あれは義骸だ。誕生日プレゼントにって、特別に作ったんだそうだよ」
全ての事情を知る京楽が、それはもう嫌そうに言った。
「義骸?どうしてこっちで入ってるんですか」
藍染の疑問も当然。
「思いが全てを変えるんだヨ。愛のチカラという奴だネ」
相変わらずの答えになっていない答え方。
「身体に負荷をかけない、うまい抜け穴を見つけたということか」
「見つけただけではないヨ。抜け道にまでした努力も察してもらいたいネ」
トントン、杖の突く音が静粛を求めた。
「歌が聴こえん。静かにせえ。問題無いなら、とやかく言うことは無かろう」
お兄ちゃんが呆れたように笑って見守るステージ上では、弟を被った妹がはしゃいで脱ぎ、愛しのマッチョを披露していたため、曲にまだ入っていなかった。
「木之本ー。そろそろええかー」
「なんとか帳尻合わせられていたのに、時間押してますよー」
「は〜い。歌いまーす😄」
床に置いた死覇装を羽織り直して、キリッと前を見据えた。
「ぼくたち死神は、とても大変なお仕事をしています。大切な仲間を失くすことも少なくありません。悲しいこと、ツラいこと、いろんなことがあるけれど、でも、ぼくたちは、この世界が美しくあり続けられるよう、しっかり務めを果たさなければなりません。大丈夫です。ぼくたちは、こんなに上手にできています!今日という日を迎えられて、みんなで笑い合って、とっても楽しい1日になりました。明日からも、みなさんと力を合わせて幸せな日々をつくっていけるように、宮本浩次とホクロの位置がシンメトリーなぼくが、心を込めて歌わせていただきます。聴いてください」
宮本浩次 『P.S. I love you』
ああ 愛してるぜきみを P.S. I love you
例えば若き日の夢が 悲しみと交差するとき
その時から人のナミダが 希望を語りはじめるのさ
悲しみの歴史それが 人の歴史だとしても
ああ やっぱ何度でも立ち上がる人の姿は
どこかまぶしい
雨の日傘をさすように 歩いてゆこう
ゆこう ゆこう 大人の本気で さあ 立ち上がろう
I love you I love you 悲しみの向こう
立ち上がれ がんばろぜ バカらしくも愛しき ああこの世界
I love you I love you いつまでも輝きもとめて
ああ 愛してるぜ日々を P.S. I love you
愛って何だかわかった日が きっと新たな誕生日
出会いと別れ ああ 人生を経て 宝物を手に入れたのさ
悲しみの歴史それが 人の歴史だとしても
ああ ひとつぶのナミダのその向こうに きみの笑顔を見つけた
晴れた日 自然に足どり軽くなるように
ゆこう ゆこう 大人の旅路は着の身着のままがいい
愛してる 愛してる 悲しみの向こう
立ち上がれ がんばろぜ はかなくもうるわしき ああこの世界
I love you I love you いつの日も喜びもとめて
ああ 愛してるぜ日々を P.S. I love you
愛してる 愛してる 悲しみの向こう
立ち上がれ がんばろぜ バカらしくも愛しき ああこの世界
I love you I love you いつまでも輝きもとめて
ああ 愛してるぜきみを P.S. I love you
P.S. I love you I love you
アウトロが流れる中、拍手を受けるメンバーたち。なつみはたくさんの愛を振り撒いて、肩で息をしながら音の海に喜んで身を沈めていた。
区切りを見つけて、ついに最後の1曲へと入っていく。
「次が最後の歌です。最後まで、全力でいきましょう。みなさん、ぼくたちにお付き合いいただき、ありがとうございました。笑顔で『また明日』って言える日が、毎日毎日みなさんの元へやってきますように。思い残すことが無いように。ぼくたちからのエールを受け取ってください!今日より楽しい明日へ、一緒に生きましょう‼︎」
宮本浩次 『明日以外すべて燃やせ』
人生は美しいアルバムじゃない
撮れなかった写真さ
この街では見えない地平線に
遥かな夢が眠る
傷だらけで 立てずに 諦めてた
野心を抱きしめた
明日のこと考え過ぎて
もう今日の 勇気とかないのか?
明日以外すべて燃やせ!
燃やした後にオマエだけ残る
夢も愛も絶望も呑み込んでいく運命の炎
それがオマエという時限装置なんだろ?
他の誰なんだ?
まだ何も見てないさ
きっと楽しいこともある
そんなまますべて決めて
後悔しないって言えるか?どうだ?
死ぬまでずっと生きていく
周回軌道の小さな世界
その外側にもあるんだ
夢も愛も絶望も呑み込んでいく運命の炎
それがオマエという時限装置なんだろ?
他の誰なんだ?
振り返れば遠くに 光る星が
まだ オマエを 守ってる
この街では見えない地平線に
遥かな夢が眠る
「ありがとうございましたーッ❗️大音楽祭はこれで終了しますが、あと少ししたら、女性死神協会主催の花火大会が始まります。この熱気、冷まさないようにしてくださいよ。お祭りはまだまだ続きます。大切な人と特別な時間を楽しんでください❗️それから最後に、めっちゃ個人的なことを」
なつみはにんまり口元を笑わせて鼻から息を吸う。
「こんな最高な誕生日にしてもらって、ぼくって最強の幸せ者でぇーすッ‼️ここにいるみんなのこと、1人残らず大好きでぇーすッ‼️ぼくだけこんなにもらってズルいので、ぼくからも、みなさんにお礼の贈り物、差し上げます‼️」
ステージ上では片付けが始まっていたのだが、なつみのMCにみんな耳を傾ける。席を離れる客もまだいなかった。
「いくよ、ムッちゃん」
何か企んでいるなつみは斬魄刀を抜き、黄昏時に近いこの空に向かって掲げる。また魔法をかけるのだ。
「叶え!夢現天道子!」
会場中にいる全員が、なつみの霊圧に当てられる。それはくすぐるように、人々の心を巡って広がっていった。
「みんなに幸せなことが絶対起きますように‼️😁」
その効果は約束されるものではないが、プレゼントを受け取った胸の中にあたたかい気持ちが宿ったことは確かだった。
「また一段と成長したのぉ」
「ここまで届くとは」
「成長したところで、あのデタラメな能力を戦いに使う気はいつまで経っても起きないらしいがな。変わり者は健在だ」
「アイツが特別なのは当たり前だろ。なつみの場合、誰にも負けなきゃ、それで良いんだよ」
「そうですね。あの子が求めているのは、不要な戦いを避ける優しい強さですから。ひょっとすると、窮地に立たされた時に出る底力は、もう私たちと肩を並べられるほどのものかもしれませんよ」
「それでも二十席から変わらねぇんだよな」
「ええの。なつみちゃんはなつみちゃんやから。みんなの真ん中におらなかん子なんよ」
「見事に全員の心を集めてしまったみたいだしね」
「まぁたモテちゃうのー?ボクのなつみちゃん」
「視線を集めたところで、あの子の見る先はそう簡単に予想できないものだヨ」
「また思いもよらないことが、起きそうだな」
「それも、面白い何かがね。ほんと、あの子がいると退屈しないよ。生まれてきてくれたことに、感謝だな」
だったはずなのに、パフォーマンスが終わり、他のメンバーははけて、乱菊がステージに残って檜佐木とMCでおしゃべりをしていたら。
「この衣装、卯ノ花隊長が作ってくださって、一人一人デザインが少しずつ違うのよ。他の子のも見たいでしょ?誰呼んだら良いかしら。なつみよね。なつみー!戻ってきてー!」
(ウソやん‼️何で‼️)
ヘッドセットはまだ着けたままだが、お茶を飲んでいた。なのに、そんな展開になってしまった。イヤだー、という顔をして、無視してじっとしていたら、やちるに引っ張られてステージに戻されてしまった。
「イヤだーッ‼️‼️」
「連れてきたよ〜😀」
「ありがと、やちる。なつみ!呼んだんだから、すぐ来なさいよ!」
「何でぼく///」
もじもじと恥ずかしそうにする。
「木之本、みんなにもよく見えるように、もっと前に行って、ピシッと立て」
「えー💧」
檜佐木に言われちゃ、とことこ前に行くしかない。
「はい、くるっと回って」
「もー」
ぷんぷんしながら、乱菊の指示に従う。客席から「かわいい〜」と声が上がる。
1周し終わったら、檜佐木と乱菊はステージ袖にこっそりはけてしまった。
「あれ?ちょっと!置いてかないでくださいよ!💦」
慌ててなつみも帰ろうとしたら、無理矢理なMCがそれを制止した。
「それではアンコールにお応えして、みんな大好き木之本なつみちゃんに1曲歌ってもらいましょー❗️」
「はぁ⁉️聞いてないですよ‼️そんなの‼️アンコールだって、お願いされてないじゃないですか‼️」
と訴えたものだから、上の方から思い出したような意地悪アンコールコールが送られてきた。
「アンコール!アンコール!🥳」
「キー‼️」
彼氏様とお兄様。それにキー‼️と睨みつけるみんなのアイドル。
「アンコール!アンコール!」
「むきゃぁ⁉️」
つられてみんなも面白がって、アンコールをなつみに求め始めた。
「これで文句無いわね😏」
「吉良、かけちまえ」
「了解です🙂」
「ああっ、ちょっと❗️あ❗️もー❗️」
イントロが始まる。それはなつみにぴったりな歌。大好きな曲なので、練習無しでも完璧に歌える曲だった。
(やられた。ここで逃げたらチキン野郎呼ばわりか。良いぜ、この名曲、てめぇらの心に刻んでやる❗️)
坂本真綾 『プラチナ』
I’m a dreamer ひそむパワー
私の世界
夢と恋と不安で出来てる
でも想像もしないもの 隠れてるはず
空に向かう木々のようにあなたを
まっすぐ見つめてる
みつけたいなあ かなえたいなあ
信じるそれだけで
越えられないものはない
歌うように奇蹟のように
「思い」が全てを変えてゆくよ
きっと きっと 驚くくらい
I’m a dreamer ひそむパワー
まだ見ぬ世界
そこで何が待っていても
もしも理想とちがっても 恐れはしない
鳥たちは風にのり旅をしてゆく
今日から明日へと
伝えたいなあ さけびたいなあ
この世に一つだけの存在である私
祈るように星のように
ちいさな光だけど何時かは
もっと もっと つよくなりたい
間奏部分、最前列にレンの姿を見つけ、彼が頭上に高く何かを掲げるのを見た。
(ムッちゃん?はぁ、レン、わかったよ。何かやってみる。寄こせ)
構えるなつみの手に、相棒が渡された。
限界のない可能性がここにある この手に
It’s gonna be your world
抜刀し、空へ舞い上がると、なつみは雨を降らし始めた。熱気溢れる会場にひんやりとした心地よさをお届け。
みつけたいなあ かなえたいなあ
信じるそれだけで
越えられないものはない
観客全員に挨拶するように、手を振りながらぐるーっとフライング。スカートの中がなかなか見えないような、上手いスピードで飛んでいく。
歌うように奇蹟のように
「思い」が全てを変えてゆくよ
きっと きっと 驚くくらい
お日様の光を雨に当てれば、観客の心もときめく大きな虹がかけられました。アウトロのキラキラな音色の中、スタッとステージに帰ってきたなつみ。シメの一言を。
「休憩させてください」
冗談を言いましたというなつみの笑みに、みんなも笑顔になった。
やっと落ち着けると、控室の椅子に腰掛けた。
「ふへ〜」
控室など、そんなに居られないから必要無いと言っていたのだが、この日が誕生日ということで、たくさんのプレゼントがなつみ宛に届いてきて、一時預かり場として結局用意してもらって良かったと思うなつみであった。
「朝より増えてない?」
お茶を飲みつつ、箱の山を眺める。
すると、ノックが聞こえ、どーぞーと答えると、外から来たのは大好きな彼であった。
「春水さん❗️」
「お疲れ様、なつみちゃん」
「わぁーい‼️」
椅子から離れて駆け寄り、ぴょんっと京楽に抱きついた。きゅーっとくっつく。でもすぐに思い出して、文句を言わなければ。
「さっき、酷いじゃないですかぁ。アンコールなんかするつもりなかったのにぃ」
「ふふ。ソロのキミを見たかったんだもん。最高にかわいかったよ」
ちゅ。
「天使かと思っちゃった」
「むー///」
なつみが座っていた椅子に、京楽は腰掛けた。なつみは、もちろんその膝の上に座らされる。
「みんな楽しそうで、何よりです」
「ホントそうだよ。この天才のおかげでね」
なつみの鼻をちょんちょんと触った。
「んふー😚」
照れちゃう〜。
「辛いことも多い仕事をしてるから、こんなに楽しい思い出は、すごく良い原動力になるんだよ。頑張ってくれて、ありがとう、なつみちゃん。ボクはキミが誇らしいよ」
改まって言われ、もっと照れちゃうなつみ。
「んん〜💕」
時計に目をやると、あまりボーッとしていられないことに気付いた。
「春水さん、そろそろぼく着替えないと」
降りようと動いたが、京楽がそうさせてくれなかった。
「手伝ってあげようか」
最近よく見るイタズラな目。
「もー、ひとりでできますぅ」
お構い無しで、京楽はなつみの首筋に口付けた。
「そんなこと言わないで。ほら、脱がせてあげるから」
背中のファスナーに手をかけて下ろしていく。
「あん、んん///」
舌を絡めるキスもしながら。
恐らく京楽は、なつみの人気ぶりが少し癇に障ったのだろう。「みんなのもの」として距離を感じてしまった。本来なら独り占めが許されているのに。その独占欲を満たすためにここに来た。なつみもわかっている。「また後でいっぱいお相手しますから」などと言って帰すことはできないのだ。今夜は京楽とではなく、仲間たちと過ごすことになっている。だから、満足してもらうには、仕方なく受け入れるしかなかった。
とはいえ、京楽とのイチャつきがやぶさかでないなつみは、結局嫌がる素振りを出さず、流れに身を任せていた。
「んにゃ〜///」
「ふふっ」
良い反応をされて、京楽もご満悦。
「着替え中なら、外の札を替えてもらわないと困るネェ。何も知らずに、こうして入ってきてしまうヨ」
「「わぁッ‼️涅隊長⁉️💦」」
予期せぬ訪問者にイチャつく恋人たちは抱き合って固まった。
「ノックくらいしろよ‼︎‼︎」
「『ご自由にお入りください』と書いてあるじゃあないか」
「だとしてもだ‼︎‼︎」
「うゅゅゅ💦///」
なつみはこそこそと京楽の陰に隠れた。
「すいません。着替えるので盾になってもらえますか」
「わかった」
了解した京楽が、マユリになつみを見せないよう間で立ちはだかった。
「で、用は何」
「君には無いヨ」
「わかってるよ‼︎」
「まだ私からの贈り物を開けていないようだネ」
スカートを履いたままでジーンズを履く。
「涅隊長も用意してくださったんですか!ありがとうございます。でも、ご覧の通り、今日は忙しいのとプレゼントがいっぱいなのとで、開けるのは明日にするつもりなんです」
「フーン、是非とも今すぐ見てもらいたいんだがネ」
ワンピースを脱ぎ、急いでTシャツを着る。
「足が早い食べ物でも入れたのかい?」
「いや、そうではないがネ」
「なら明日で良いじゃないか」
「君には関係無いと言っているだろう。最も見てもらいたくない人物だヨ😒」
「は?また変なもの作ったな、コイツ!」
「ケンカはやめてください❗️」
着替えを完了させたなつみが、2人の間に入った。
「ひとつくらいなら、開けるのなんて一瞬ですよ。涅隊長のプレゼント、どれですか?😊」
「フン、やはり、私はなつみを好いてしまうヨ。物分かりがいい」
頭を撫で撫で。
「アレだヨ。一番目立つはずだから、とうに開けていると思っていたヨ」
指を差したところにあるのは。
「ゲッ‼️あの大っきいヤツですか❗️謎過ぎて開けたくなかったんですよね💧」
本音がポロリとして、うっかりマユリの方を見たら、それは残念そうな顔をしていた。
「すいません❗️だって、人ひとり入ってそうなんだもん😣」
箱には入れずに、包装紙でグルグル巻きのそれ。
「どうする?人ひとり入ってたら」
涅マユリのすることだ。
「人ひとり入っているヨ」
「「ゲッ‼️⁉️」」
絶句のカップル。
「…ダッチワイフっすか」
後半の公演には、なつみの同期6人組もエントリーしていた。
「何やるのかな!ね、美沙ちゃん、楽しみだねー!」
ワクワクと、最前列の特等席で友だちの出番を待つなつみ。
「教えてもらえなかったの?」
「内緒にされてたの。ケチだろ、アイツら」
「サプライズでしょ、たぶん」
檜佐木のMCの合図で、6人がステージに登場した。
「キャーッ‼️💓🙌」
客席から大きな黄色い声援が湧き上がった。
「うっそ!何この人気。やっば!アイドルかよ。ウケるッ😙」
思わず笑っちゃうなつみ。
「あんたがそういう目で見てないだけ。あの人たち、それぞれの隊で相当女性人気集めてんの。見た目良いし、仕事できるし、愛想も良いし」
「え、李空が?」
「何より、彼女をつくろうとしないから」
「モテないだけかと思ってた。アイツら変だもん」
その2人のこそこそ話、ステージの上からは丸見えの丸聞こえ。
「うるせぇ。お前の方が変だろ‼︎この変人がぁ‼︎」
「だははははっ🤣」
スーパースター李空に直に話しかけられ、大笑いな一般人なつみ。
「おいー、スーパースターと目が合っちゃった〜。きゃ〜!りくぅ〜😙」
「微塵も思ってねぇだろ💢」
そこにスーパースター尾田がなだめに入る。
「こんなとこでもケンカすんなって。時間無いから、始めるぞ。木之本、来いよ」
「へ❓😦」
何も教えてもらっていないのに、来いとは何事。
「早くこっち来い、クソチビ」
「だとコラ、オラーッ‼️」
美沙の隣りから簡単に飛び出して、再びの登壇である。
「みなさーん!今日が何の日か、ご存知ですかー?」
スーパースターハルの問いかけに、観客が大きな声で答えてくれた。
「木之本さんの誕生日ぃーッ!」
「その通り❗️😉」
ハルのウィンクに撃ち抜かれたファンたちからの悲鳴が上がった。キャーッ😍
「俺たち、毎年この日に集められては歌わされる歌があって」
「嫌そうに言うなよ、ケイジ」
スーパースターケイジの腹にドゥフドゥフとパンチする一般人。
「それを、今から歌いまーす」
スーパースターレンが軽ーく言っちゃった。
「おい、そんな身内で楽しむもんを、こんな公衆の面前でやるこたないぜ」
だって何も聞かされてない一般人。
「木之本もマイク持って。お前今日暇無いじゃん。今歌わなかったら、タイミング逃すぞ」
「もうね、やらずにいたら、次の1年気持ち悪く過ごしそうで、イヤなの。やるよ、なつみ❗️」
「あんたも好きね〜🥴」
スーパースタークーちゃんに、このこの〜と小突く一般人。
「お前にプレゼント贈ってくれた人たちが、ここにたくさんいるんじゃないか?感謝の気持ちを伝えようぜ」
「うん❗️😊」
尾田の合図でイントロが始まる。
『ハッピー☆ラッキー・バースデー!』
尾田「この世界に キミが生まれた日は
ボクにとって 大切な 夢が生まれた記念日」
レン「声あわせて 1年に1度の
はずむリズム 特別な お祝いのハーモニー」
李空「煌めくキャンドルを灯すたびに
想い出は ココロ近づけた」
なつみ「ボクら 悲しみを 微笑みへと
変えるため逢えたんだ きっと」
Happy Birthday to You!
Lucky Birthday to me!!
キミが好きさ 一番好きさ 今 キミに 「おめでとう」
Happy Birthday to You!
Lucky Birthday to me!!
タイムマシン 使わないで 未来まで届けたい
Happy Birthday to You!
Lucky Birthday to me!!
Happy Lucky Birthday to You!!
ハル「この世界に ナミダ流れるとき
できることを 見つけるよ おくびょうなんて卒業」
クーちゃん「あのライトで 照らさなくてもほら
キミといれば 勇気さえも 大きくしてくれるね」
ケイジ「もしもの チャンネルをヒネルたびに
飛び出すよ ときめくアイデア」
なつみ「ボクら 優しさで 手をつなげば
友だちで兄弟で 家族」
Happy Birthday to You!
Lucky Birthday to me!!
キミが好きさ 一番好きさ 今 キミに 「おめでとう」
Happy Birthday to You!
Lucky Birthday to me!!
どこでもドアは 開けなくても
瞳を閉じれば逢えるよ
なつみ「泣いたり 笑ったり 夢を見たり
気がつけば ひとりきりじゃない
ボクらは もともと ひとつなんだ
生きている それだけで 奇跡」
Happy Birthday thank You!
Happy Birthday thank You!
「おめでとう」と同じくらいの「ありがとう」をキミに
Happy Birthday thank You!
Happy Birthday thank You!
キミが生まれ 生きた日々が 幸せであるように
「明日へのプレゼント」
Happy Birthday to You!
Lucky Birthday to me!!
Happy Lucky Birthday to You!
Happy Birthday to You!
Lucky Birthday to me!!
Happy Lucky Birthday to You!
Lucky Birthday to You!!
あれよあれよとプログラムは進み。気付けば大トリの出番となった。始まりと同じく、最後を飾るのは男性死神協会だった。しかし、最初とは違い、会員全員があの正装をしている。羽織る死覇装、腹巻、サングラス。バンドメンバーがスタンバイし、射場がセンターマイクで語り始めた。
「あっちゅう間に、この大音楽祭のトリの時間になってしもうたな。楽しんでくれたかのォ!」
ウォーッとレスポンスが上がる。
「ほぉか。ワシらも大満足じゃけ。あと2曲、最後まで盛り上がって、ついてきてくれよォ、オンドレらァッ‼️」
また歓声が上がるも、このステージ上、1人足りていないように見える。
「射場さんが歌うのー?」
「えー」
このまま曲が始まりそうだったので、観客はブーイングに近い声を上げた。そんなことはさせまいと。あのスーパースターを呼ばなければ。
シャンッシャンッシャンッシャンッ👏
呼び込むための手拍子が自然と始まった。
「わかっとる‼︎‼︎ワシよりコイツじゃろ‼︎ 木之本ーッ、来たれーッ‼︎‼︎」
ワァーーーッ‼️👏
スタン、スタン、スタンと颯爽と現れた小さな姿も、なんと、正装を決め込んでいた。
「え⁉︎」
動揺する会場。
中央に着くと、なつみはスタンドマイクをガシッと掴んだ。
「お待たせしましたーッ‼️‼️」
何の躊躇いも無く、笑顔でステージに立つなつみの身体。声の高さはそのままに。
「キャーーーッ‼︎‼︎‼︎ 木之本くーんッ‼︎‼︎‼︎」
なつみは男の姿を取り戻していた。
とかく、彼の男時代を恋しく想っている三番隊の女性隊士たちからの熱い声援が湧いていた。観客の喜びや驚きを下に、上階では隊長格らがマユリに注目していた。冷ややかな目で。
「何だネ?皆喜んでいるじゃあないか。悪者扱いはよしてくれ給え」
悪気はひとつも無い。善意だ。親切だと。
「何をされたんですか。また例の薬ですか?」
反対派の卯ノ花のなかなかに厳しい一言。
「違うよ。あれは義骸だ。誕生日プレゼントにって、特別に作ったんだそうだよ」
全ての事情を知る京楽が、それはもう嫌そうに言った。
「義骸?どうしてこっちで入ってるんですか」
藍染の疑問も当然。
「思いが全てを変えるんだヨ。愛のチカラという奴だネ」
相変わらずの答えになっていない答え方。
「身体に負荷をかけない、うまい抜け穴を見つけたということか」
「見つけただけではないヨ。抜け道にまでした努力も察してもらいたいネ」
トントン、杖の突く音が静粛を求めた。
「歌が聴こえん。静かにせえ。問題無いなら、とやかく言うことは無かろう」
お兄ちゃんが呆れたように笑って見守るステージ上では、弟を被った妹がはしゃいで脱ぎ、愛しのマッチョを披露していたため、曲にまだ入っていなかった。
「木之本ー。そろそろええかー」
「なんとか帳尻合わせられていたのに、時間押してますよー」
「は〜い。歌いまーす😄」
床に置いた死覇装を羽織り直して、キリッと前を見据えた。
「ぼくたち死神は、とても大変なお仕事をしています。大切な仲間を失くすことも少なくありません。悲しいこと、ツラいこと、いろんなことがあるけれど、でも、ぼくたちは、この世界が美しくあり続けられるよう、しっかり務めを果たさなければなりません。大丈夫です。ぼくたちは、こんなに上手にできています!今日という日を迎えられて、みんなで笑い合って、とっても楽しい1日になりました。明日からも、みなさんと力を合わせて幸せな日々をつくっていけるように、宮本浩次とホクロの位置がシンメトリーなぼくが、心を込めて歌わせていただきます。聴いてください」
宮本浩次 『P.S. I love you』
ああ 愛してるぜきみを P.S. I love you
例えば若き日の夢が 悲しみと交差するとき
その時から人のナミダが 希望を語りはじめるのさ
悲しみの歴史それが 人の歴史だとしても
ああ やっぱ何度でも立ち上がる人の姿は
どこかまぶしい
雨の日傘をさすように 歩いてゆこう
ゆこう ゆこう 大人の本気で さあ 立ち上がろう
I love you I love you 悲しみの向こう
立ち上がれ がんばろぜ バカらしくも愛しき ああこの世界
I love you I love you いつまでも輝きもとめて
ああ 愛してるぜ日々を P.S. I love you
愛って何だかわかった日が きっと新たな誕生日
出会いと別れ ああ 人生を経て 宝物を手に入れたのさ
悲しみの歴史それが 人の歴史だとしても
ああ ひとつぶのナミダのその向こうに きみの笑顔を見つけた
晴れた日 自然に足どり軽くなるように
ゆこう ゆこう 大人の旅路は着の身着のままがいい
愛してる 愛してる 悲しみの向こう
立ち上がれ がんばろぜ はかなくもうるわしき ああこの世界
I love you I love you いつの日も喜びもとめて
ああ 愛してるぜ日々を P.S. I love you
愛してる 愛してる 悲しみの向こう
立ち上がれ がんばろぜ バカらしくも愛しき ああこの世界
I love you I love you いつまでも輝きもとめて
ああ 愛してるぜきみを P.S. I love you
P.S. I love you I love you
アウトロが流れる中、拍手を受けるメンバーたち。なつみはたくさんの愛を振り撒いて、肩で息をしながら音の海に喜んで身を沈めていた。
区切りを見つけて、ついに最後の1曲へと入っていく。
「次が最後の歌です。最後まで、全力でいきましょう。みなさん、ぼくたちにお付き合いいただき、ありがとうございました。笑顔で『また明日』って言える日が、毎日毎日みなさんの元へやってきますように。思い残すことが無いように。ぼくたちからのエールを受け取ってください!今日より楽しい明日へ、一緒に生きましょう‼︎」
宮本浩次 『明日以外すべて燃やせ』
人生は美しいアルバムじゃない
撮れなかった写真さ
この街では見えない地平線に
遥かな夢が眠る
傷だらけで 立てずに 諦めてた
野心を抱きしめた
明日のこと考え過ぎて
もう今日の 勇気とかないのか?
明日以外すべて燃やせ!
燃やした後にオマエだけ残る
夢も愛も絶望も呑み込んでいく運命の炎
それがオマエという時限装置なんだろ?
他の誰なんだ?
まだ何も見てないさ
きっと楽しいこともある
そんなまますべて決めて
後悔しないって言えるか?どうだ?
死ぬまでずっと生きていく
周回軌道の小さな世界
その外側にもあるんだ
夢も愛も絶望も呑み込んでいく運命の炎
それがオマエという時限装置なんだろ?
他の誰なんだ?
振り返れば遠くに 光る星が
まだ オマエを 守ってる
この街では見えない地平線に
遥かな夢が眠る
「ありがとうございましたーッ❗️大音楽祭はこれで終了しますが、あと少ししたら、女性死神協会主催の花火大会が始まります。この熱気、冷まさないようにしてくださいよ。お祭りはまだまだ続きます。大切な人と特別な時間を楽しんでください❗️それから最後に、めっちゃ個人的なことを」
なつみはにんまり口元を笑わせて鼻から息を吸う。
「こんな最高な誕生日にしてもらって、ぼくって最強の幸せ者でぇーすッ‼️ここにいるみんなのこと、1人残らず大好きでぇーすッ‼️ぼくだけこんなにもらってズルいので、ぼくからも、みなさんにお礼の贈り物、差し上げます‼️」
ステージ上では片付けが始まっていたのだが、なつみのMCにみんな耳を傾ける。席を離れる客もまだいなかった。
「いくよ、ムッちゃん」
何か企んでいるなつみは斬魄刀を抜き、黄昏時に近いこの空に向かって掲げる。また魔法をかけるのだ。
「叶え!夢現天道子!」
会場中にいる全員が、なつみの霊圧に当てられる。それはくすぐるように、人々の心を巡って広がっていった。
「みんなに幸せなことが絶対起きますように‼️😁」
その効果は約束されるものではないが、プレゼントを受け取った胸の中にあたたかい気持ちが宿ったことは確かだった。
「また一段と成長したのぉ」
「ここまで届くとは」
「成長したところで、あのデタラメな能力を戦いに使う気はいつまで経っても起きないらしいがな。変わり者は健在だ」
「アイツが特別なのは当たり前だろ。なつみの場合、誰にも負けなきゃ、それで良いんだよ」
「そうですね。あの子が求めているのは、不要な戦いを避ける優しい強さですから。ひょっとすると、窮地に立たされた時に出る底力は、もう私たちと肩を並べられるほどのものかもしれませんよ」
「それでも二十席から変わらねぇんだよな」
「ええの。なつみちゃんはなつみちゃんやから。みんなの真ん中におらなかん子なんよ」
「見事に全員の心を集めてしまったみたいだしね」
「まぁたモテちゃうのー?ボクのなつみちゃん」
「視線を集めたところで、あの子の見る先はそう簡単に予想できないものだヨ」
「また思いもよらないことが、起きそうだな」
「それも、面白い何かがね。ほんと、あの子がいると退屈しないよ。生まれてきてくれたことに、感謝だな」