第八章
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マユリは夜のお散歩に出かけることにした。こんなに歩くことは珍しいが、致し方ない理由がある。
「気に入ってくれると良いネェ」
地下は通していないのだ。
「おや。涅隊長もお散歩ですか?」
歓迎などしてたまるかな相手が、道の向こうからやって来てしまった。
「藍染…」
「こんばんは」
「そこを通してもらうヨ」
「ええ、どうぞ」
黒目がぐるっと半円を辿るマユリ。
「鬱陶しいヨ!私を不審者扱いするんじゃあない!」
「僕は何も言ってませんよ。近所を見回りがてら、歩いているのは確かですが。挨拶ぐらいで、不機嫌になるのはやめてください、涅隊長」
「散歩の邪魔だヨ」
「散歩なら良いんですよ」
「ならば、私も貴様の邪魔をするまでだヨ」
「何のことですか」
お気付きだろうか。この無意味なやり取り。
「美沙ちゃーん!お風呂沸いたー!入ろー!」
「わかったー!今行くー!」
すぐ近くの1軒から、こんな声が響いてきた。
外の2人は耳を澄ませる。結局仲良しか。
「覗きはさせません」
「私とてさせないヨ。ここは問題無いから、見回りなら他も見てきたらどうだネ?」
「あなたこそ、散歩なら立ち止まらずに歩いたらどうですか」
「悪いネ。私は疲れたから、ここで休憩をしたいんだヨ」
「では、僕もここで一休みします」
「やぁっば!京楽隊長ってこんなもんなの?」
「そー。だからがんばんないと。これがローションだって。…、うわ、ドロドロ。これを塗るの?」
「ちゃんと濡らさないと、痛くなるよ」
「うん。んんッ、冷たいね、これ。ひゃ〜」
また聞き耳を立てて、口論は中断。
「てかさ、よくあたしの前でやるね」
「だって、安全確保のために、ひとりでは使うなって言うんだもん。京楽隊長には内緒でいたいし。だから付き合ってよ」
「はいはい。わかったから、続きどうぞ」
「そうそう。ちなみにこれね、取り外しができて…、ほら、中から、ぼくのが出てくるの。懐かしい。完全再現されてる」
「ハハッ!マジ?ちっちゃ!もうそっちから挿れたら?」
「ヤだよ!何で、自分で自分の挿れなきゃなんないのさ!こっちのおっきいのでやるの!おちんちんを失って、寂しがってるぼくのために、涅隊長がウケ狙いで作っただけなんだから」
「あんたがそれいらなくなったら、あたしにちょうだいよ」
「ぜぇーったい、物足りないって言うよ!」
「ふふふふふっ、いいから、もう、やるならやりな!(笑)」
「ぃよっしゃーッ‼️」
贈り物の性能と感想を確認したいマユリと、直にそれを見るのを止めさせたい藍染は、ここから中の様子を音漏れだけで推測する。
「ぬおおおおおおーッ」
「まだまだ入ってないよ。力抜いたら?」
「ふんぬーーーーー‼︎痛いー‼︎」
「ゴーゴー、レッツゴー、押せ押せ、ゴーゴー」
「ぐぬぅぅぅぅぅ、どらあああああ‼︎‼︎」
まるで筋トレでもしているようだ。
「無理をするなと、言ってやりたいネ。京楽とする時でも、こんな勇ましい声を上げているんだろうか。私なら、もう少し淑やかな方が好ましいヨ」
「んーーーーーッ‼︎やっぱダメ!今日はダメだ。ンニャッ!入んないよぉ…」
「残念ね」
「ふへ〜」
「でもさ、やっぱりひとりで頑張ることなくない?京楽隊長と一緒に、ちょっとずつ進めてけば良いと思うけど」
「だって、ぼくの中、キツくて痛いって言うもん。そんな思い、早く終わらせてあげたいの。できることは、しておかなきゃ」
こうして、お股の開発、バンド練習、お稽古、お仕事、1日だけモデル、男性死神協会会合などで忙しく毎日を過ごしていくなつみ。課題が多く、それぞれにちょっとずつしか進歩がない。だが、チャレンジできるという平和な時間があることに幸せを見出すと、こんな日々が続いても、「いつかは」という願いで歩みを進めることができた。
そして気付けば、随分と成長しているもので、いくつもの目標がぽんぽんと達成することもある。そんな時はとても幸せになれるので、星占いが12位であって欲しいと思ったりもする。そしたら、世界がいっぱい幸せで溢れてる気がして、もっと嬉しくなれるから。
「入った!入ったよーッ‼︎」
「やったじゃん、なつみ!よかったね!」
お風呂場では、相変わらずのトレーニングが展開していたが、今夜は無事に目標の深さまで差し込むことに達成した。
「ンニャッ!むふふ〜、これで京楽隊長喜ばせてあげれるよ〜😚」
「明日休みだし、八番隊舎に遊びに行ったら?」
「うん!」
寝室に戻ると、机の上に置いた伝令神機に着信があるのを見つけた。
「あ!イケちゃん先輩、できたって!」
「ペアリングだっけ」
「そう!」
「なら、そっちも明日行かなきゃね」
「んふふ〜。良いことって続くね〜😊」
なつみにしては、通常の出勤日なら遅刻している時間だが、お邪魔にならない程度に早く八番隊舎に行ってみると。
「すみませんね。隊長は今日も寝坊です。起こしてきてもらえますか?私より効果的でしょうから」
「はぁい😄」
案の定ではあった。能力を解放して、一瞬で京楽邸へ。
「ごめんくださーい!」
事情を説明して彼の寝室へ通してもらい、寝起きドッキリを仕掛ける。そろりそろり。
「おはよーございまーす」
声を抑えてのリポート。
入室して、床に荷物を置く。静かにことを進めなければ。だがなつみにはお手の物。隠密機動のレッスンを受けているのだから。物音立てずに四つん這いでベッドへ接近。下からすぅーっと首を伸ばして、寝顔を拝見。
(クスクスッ、寝てる〜😙)
はてさて、どう驚かせようか。
(ま、ベタにダイブか)
そう決めて立ち上がり、片足を退いて大ジャンプの準備を。グッと踏み込んでから。
「それ!」
跳んで、京楽の上にズドーンッ!のはずが。
「ブェッ⁉️」
躱されて、何もないところに顔面からうつ伏せで落ちてしまったなつみ。
「ギャッ⁉️」
今度は視界が真っ暗。あったかいのと、柔らかいのとで、布団をかけられたとわかる。
「おはよう、なつみちゃん。起こしに来てくれたの」
京楽の腕がなつみを捕らえる。
「そうです!伊勢副隊長が怒ってますよ。早く起きないと!」
「えー。このままこうしてたいよ〜」
「ダメです!」
なつみの首筋に口付ける。
「どうして死覇装なの?お休みじゃなかったっけ」
「そういうことはまだしません!今日、後でイケちゃん先輩のとこ、一緒に行こうと思って。京楽隊長がサボらずに、早くお仕事終われるように、お手伝いに来たんです」
「池乃?何で?」
「できたって連絡来ませんでしたか?」
もぞもぞと布団から出て、サイドテーブルに置かれた伝令神機に手を伸ばす。
「あ、本当だ」
これ以上変なことされないように、なつみはベッドから降りた。
「支度してください!」
布団を畳まれてしまったため、京楽は起きる他無い。
「わかった」
グーッと伸びをする京楽に、ひとつお願いをする。
「あの…、今夜お泊まりして良いですか?」
ストンと腕を下ろす。そしてにこりと微笑む。
「良いよ。大歓迎さ」
「よかった😊」
お泊まりセットを寝室に置かせてもらうことができた。
前回のお手伝いのように、京楽の部屋で書類整理などをするつもりでいたのだが、何故か補佐の相手に充てられたのは尾田だった。
「なーんでなつみちゃんを尾田くんとこにやっちゃうんだよ。ボクのお手伝いに来てくれたのに」
ぶーすかぶーすか。
「やはり、重要書類を他隊の方の目に触れさせるのは、よろしくないと思いまして。午前中は尾田くんの部屋で、お掃除や簡単な雑務をこなしてもらいます。午後からは各種戦闘訓練の見学を」
「ボクも見学するー」
「隊長は見学ではなく、ちゃんと指示や助言を隊士たちに与えてください」
「え!行っていいの⁉︎」
「やる事をやったらです。尾田くんから木之本さんを取り返したいなら、私の言う通りに仕事を進めてください」
京楽のため息。
「わぁかったよ。とりあえず、こんだけはやった」
七緒のしたり顔。
「隊長の交際相手はもう、木之本さんしか考えられませんね」
「ボクもそう思うよ」
「なーんで尾田の部屋なんか掃除してやらにゃかんのだ!キレイじゃん!する必要無いじゃん!」
こちらでも、ぶーすかぶーすか。
「うるせぇな。他にやってもらうこと無ぇんだから、しょーがねぇだろ」
水を張ったバケツの中に雑巾を6枚入れ、尾田の仕事部屋にやって来るや否や、文句である。だが、郷に入っては郷に従わなければ追い出される恐れがあるため、やるにはやる。
「叶え、夢現天道子。みんなでこの部屋全部を水拭きしましょー。ピッカピカのツルッパゲにしてやるぞー!」
いつぞやの様に、能力を解放してタスク完了を目指す。ラジャー!と動き出した雑巾たちが、水を絞ってから縦横無尽に飛び交い、持ち場に着いた。あの頃とは違い、今は家具も命を宿している。雑巾が全面を走行できるように、「よっ」と脚を上げてくれるのだ。
なつみは目を閉じて集中。
「一遍にやると、すぐ終わって、やること無くなるぞ」
いつもと違う位置に移動した机と椅子に着いている尾田が、なつみに話しかけた。
「これもトレーニングの一環なんだよ。話しかけんな(早く春水さんに会いたい)」
黄昏時、こんなに満たされた日には、夕映えの美しい街並みや紅い空が見える中を歩きたいものだが、生憎、雨が降り始めてしまった。
七緒の立てたスケジュールが、滞りなく消化され、京楽は尾田から無事、なつみを奪い返すことができた。池乃の家にも、約束の時間に訪問でき、苦労があったものの、何もかもが噛み合って、全体を大きく見れば、スムーズに目標が達成されていった、なんとも清々しい期間であった。
(世界はいつも、最善で回ってる)
雨の日も悪くはない。特に、このようにしとしとと降る急な雨は。
池乃の家から出る時に、この雨に気付き、ふたりは傘を持っていなかったため、池乃に1本貸してもらうことにした。もちろんなつみが持ちたかったのだが、そうすれば京楽の目を突くことになるため、京楽が傘を持つ。その手がすぐ隣りで視界に入ってくるので、それが見えて、ふふっと微笑んでしまう。
「池乃、まーた良い仕事してくれたね」
「はいっ。とっても😊」
「これで、親子なんて言われないよ(笑)」
「とーぜんですッ!恋人です😤」
右手は傘を持つ京楽の腕に、左手は薬指が見えるように、まっすぐ伸ばして掲げる。
「指輪するのなんて初めてです。特別な感じがしますね。心がくすぐったいです」
傘を持つ手を替えて、空いた左手をなつみの腰に回した。相合傘の下では、ぴたりと寄り添うのが自然と許される。
「特別なキミだから、特別な物を、ね?」
「春水さんも特別です」
雨はカーテン。傘は目隠し。この薄暗い空も手伝って、遮ぎ遮られるふたりの姿がさらにひとつに重なったような。
「もうちょっとでおうちだよ、なつみちゃん」
「はい。帰りましょ///」
きっとふたりなら、傘を使わずとも雨に濡れない術を身に付けているだろうが、古から伝わるアイの行為を、あえて選んで楽しんだ。
そうして、のんびりと時は流れる。なつみに似合うからと、今夜の湯船にはアヒル隊長が浮いている。
「かわいい😌」
ぷかぷかしていたアヒル隊長を両手で持ち上げて、にぎにぎ。
そんななつみを後ろから抱きしめている京楽。もみもみ。
「かわいい😚」
「…😑」
「ん〜ーちゅっ❤️」
少し温度差がございますが、ふたりとも身体はぽかぽかと温まっております。
「あの、春水さん」
「なに〜」
なつみの胸を揉んでいた手を、お腹の方に下ろす。
「ぼく、先にお部屋戻りたいです」
どうしてだろうと、瞬きをしてみたが、京楽は頷いてあげる。
「わかった。ボクは髪をしっかり乾かしてから行くよ。ごゆっくり😘」
「☹️///💦」
これは、バレているんだろうか。
宣言通りに、なつみは先に寝室に戻った。
「ついにこの時が」
鞄から取り出し、紐を持って高く掲げる。
「よっしゃ‼︎」
いざ、勝負の時。
「気に入ってくれると良いネェ」
地下は通していないのだ。
「おや。涅隊長もお散歩ですか?」
歓迎などしてたまるかな相手が、道の向こうからやって来てしまった。
「藍染…」
「こんばんは」
「そこを通してもらうヨ」
「ええ、どうぞ」
黒目がぐるっと半円を辿るマユリ。
「鬱陶しいヨ!私を不審者扱いするんじゃあない!」
「僕は何も言ってませんよ。近所を見回りがてら、歩いているのは確かですが。挨拶ぐらいで、不機嫌になるのはやめてください、涅隊長」
「散歩の邪魔だヨ」
「散歩なら良いんですよ」
「ならば、私も貴様の邪魔をするまでだヨ」
「何のことですか」
お気付きだろうか。この無意味なやり取り。
「美沙ちゃーん!お風呂沸いたー!入ろー!」
「わかったー!今行くー!」
すぐ近くの1軒から、こんな声が響いてきた。
外の2人は耳を澄ませる。結局仲良しか。
「覗きはさせません」
「私とてさせないヨ。ここは問題無いから、見回りなら他も見てきたらどうだネ?」
「あなたこそ、散歩なら立ち止まらずに歩いたらどうですか」
「悪いネ。私は疲れたから、ここで休憩をしたいんだヨ」
「では、僕もここで一休みします」
「やぁっば!京楽隊長ってこんなもんなの?」
「そー。だからがんばんないと。これがローションだって。…、うわ、ドロドロ。これを塗るの?」
「ちゃんと濡らさないと、痛くなるよ」
「うん。んんッ、冷たいね、これ。ひゃ〜」
また聞き耳を立てて、口論は中断。
「てかさ、よくあたしの前でやるね」
「だって、安全確保のために、ひとりでは使うなって言うんだもん。京楽隊長には内緒でいたいし。だから付き合ってよ」
「はいはい。わかったから、続きどうぞ」
「そうそう。ちなみにこれね、取り外しができて…、ほら、中から、ぼくのが出てくるの。懐かしい。完全再現されてる」
「ハハッ!マジ?ちっちゃ!もうそっちから挿れたら?」
「ヤだよ!何で、自分で自分の挿れなきゃなんないのさ!こっちのおっきいのでやるの!おちんちんを失って、寂しがってるぼくのために、涅隊長がウケ狙いで作っただけなんだから」
「あんたがそれいらなくなったら、あたしにちょうだいよ」
「ぜぇーったい、物足りないって言うよ!」
「ふふふふふっ、いいから、もう、やるならやりな!(笑)」
「ぃよっしゃーッ‼️」
贈り物の性能と感想を確認したいマユリと、直にそれを見るのを止めさせたい藍染は、ここから中の様子を音漏れだけで推測する。
「ぬおおおおおおーッ」
「まだまだ入ってないよ。力抜いたら?」
「ふんぬーーーーー‼︎痛いー‼︎」
「ゴーゴー、レッツゴー、押せ押せ、ゴーゴー」
「ぐぬぅぅぅぅぅ、どらあああああ‼︎‼︎」
まるで筋トレでもしているようだ。
「無理をするなと、言ってやりたいネ。京楽とする時でも、こんな勇ましい声を上げているんだろうか。私なら、もう少し淑やかな方が好ましいヨ」
「んーーーーーッ‼︎やっぱダメ!今日はダメだ。ンニャッ!入んないよぉ…」
「残念ね」
「ふへ〜」
「でもさ、やっぱりひとりで頑張ることなくない?京楽隊長と一緒に、ちょっとずつ進めてけば良いと思うけど」
「だって、ぼくの中、キツくて痛いって言うもん。そんな思い、早く終わらせてあげたいの。できることは、しておかなきゃ」
こうして、お股の開発、バンド練習、お稽古、お仕事、1日だけモデル、男性死神協会会合などで忙しく毎日を過ごしていくなつみ。課題が多く、それぞれにちょっとずつしか進歩がない。だが、チャレンジできるという平和な時間があることに幸せを見出すと、こんな日々が続いても、「いつかは」という願いで歩みを進めることができた。
そして気付けば、随分と成長しているもので、いくつもの目標がぽんぽんと達成することもある。そんな時はとても幸せになれるので、星占いが12位であって欲しいと思ったりもする。そしたら、世界がいっぱい幸せで溢れてる気がして、もっと嬉しくなれるから。
「入った!入ったよーッ‼︎」
「やったじゃん、なつみ!よかったね!」
お風呂場では、相変わらずのトレーニングが展開していたが、今夜は無事に目標の深さまで差し込むことに達成した。
「ンニャッ!むふふ〜、これで京楽隊長喜ばせてあげれるよ〜😚」
「明日休みだし、八番隊舎に遊びに行ったら?」
「うん!」
寝室に戻ると、机の上に置いた伝令神機に着信があるのを見つけた。
「あ!イケちゃん先輩、できたって!」
「ペアリングだっけ」
「そう!」
「なら、そっちも明日行かなきゃね」
「んふふ〜。良いことって続くね〜😊」
なつみにしては、通常の出勤日なら遅刻している時間だが、お邪魔にならない程度に早く八番隊舎に行ってみると。
「すみませんね。隊長は今日も寝坊です。起こしてきてもらえますか?私より効果的でしょうから」
「はぁい😄」
案の定ではあった。能力を解放して、一瞬で京楽邸へ。
「ごめんくださーい!」
事情を説明して彼の寝室へ通してもらい、寝起きドッキリを仕掛ける。そろりそろり。
「おはよーございまーす」
声を抑えてのリポート。
入室して、床に荷物を置く。静かにことを進めなければ。だがなつみにはお手の物。隠密機動のレッスンを受けているのだから。物音立てずに四つん這いでベッドへ接近。下からすぅーっと首を伸ばして、寝顔を拝見。
(クスクスッ、寝てる〜😙)
はてさて、どう驚かせようか。
(ま、ベタにダイブか)
そう決めて立ち上がり、片足を退いて大ジャンプの準備を。グッと踏み込んでから。
「それ!」
跳んで、京楽の上にズドーンッ!のはずが。
「ブェッ⁉️」
躱されて、何もないところに顔面からうつ伏せで落ちてしまったなつみ。
「ギャッ⁉️」
今度は視界が真っ暗。あったかいのと、柔らかいのとで、布団をかけられたとわかる。
「おはよう、なつみちゃん。起こしに来てくれたの」
京楽の腕がなつみを捕らえる。
「そうです!伊勢副隊長が怒ってますよ。早く起きないと!」
「えー。このままこうしてたいよ〜」
「ダメです!」
なつみの首筋に口付ける。
「どうして死覇装なの?お休みじゃなかったっけ」
「そういうことはまだしません!今日、後でイケちゃん先輩のとこ、一緒に行こうと思って。京楽隊長がサボらずに、早くお仕事終われるように、お手伝いに来たんです」
「池乃?何で?」
「できたって連絡来ませんでしたか?」
もぞもぞと布団から出て、サイドテーブルに置かれた伝令神機に手を伸ばす。
「あ、本当だ」
これ以上変なことされないように、なつみはベッドから降りた。
「支度してください!」
布団を畳まれてしまったため、京楽は起きる他無い。
「わかった」
グーッと伸びをする京楽に、ひとつお願いをする。
「あの…、今夜お泊まりして良いですか?」
ストンと腕を下ろす。そしてにこりと微笑む。
「良いよ。大歓迎さ」
「よかった😊」
お泊まりセットを寝室に置かせてもらうことができた。
前回のお手伝いのように、京楽の部屋で書類整理などをするつもりでいたのだが、何故か補佐の相手に充てられたのは尾田だった。
「なーんでなつみちゃんを尾田くんとこにやっちゃうんだよ。ボクのお手伝いに来てくれたのに」
ぶーすかぶーすか。
「やはり、重要書類を他隊の方の目に触れさせるのは、よろしくないと思いまして。午前中は尾田くんの部屋で、お掃除や簡単な雑務をこなしてもらいます。午後からは各種戦闘訓練の見学を」
「ボクも見学するー」
「隊長は見学ではなく、ちゃんと指示や助言を隊士たちに与えてください」
「え!行っていいの⁉︎」
「やる事をやったらです。尾田くんから木之本さんを取り返したいなら、私の言う通りに仕事を進めてください」
京楽のため息。
「わぁかったよ。とりあえず、こんだけはやった」
七緒のしたり顔。
「隊長の交際相手はもう、木之本さんしか考えられませんね」
「ボクもそう思うよ」
「なーんで尾田の部屋なんか掃除してやらにゃかんのだ!キレイじゃん!する必要無いじゃん!」
こちらでも、ぶーすかぶーすか。
「うるせぇな。他にやってもらうこと無ぇんだから、しょーがねぇだろ」
水を張ったバケツの中に雑巾を6枚入れ、尾田の仕事部屋にやって来るや否や、文句である。だが、郷に入っては郷に従わなければ追い出される恐れがあるため、やるにはやる。
「叶え、夢現天道子。みんなでこの部屋全部を水拭きしましょー。ピッカピカのツルッパゲにしてやるぞー!」
いつぞやの様に、能力を解放してタスク完了を目指す。ラジャー!と動き出した雑巾たちが、水を絞ってから縦横無尽に飛び交い、持ち場に着いた。あの頃とは違い、今は家具も命を宿している。雑巾が全面を走行できるように、「よっ」と脚を上げてくれるのだ。
なつみは目を閉じて集中。
「一遍にやると、すぐ終わって、やること無くなるぞ」
いつもと違う位置に移動した机と椅子に着いている尾田が、なつみに話しかけた。
「これもトレーニングの一環なんだよ。話しかけんな(早く春水さんに会いたい)」
黄昏時、こんなに満たされた日には、夕映えの美しい街並みや紅い空が見える中を歩きたいものだが、生憎、雨が降り始めてしまった。
七緒の立てたスケジュールが、滞りなく消化され、京楽は尾田から無事、なつみを奪い返すことができた。池乃の家にも、約束の時間に訪問でき、苦労があったものの、何もかもが噛み合って、全体を大きく見れば、スムーズに目標が達成されていった、なんとも清々しい期間であった。
(世界はいつも、最善で回ってる)
雨の日も悪くはない。特に、このようにしとしとと降る急な雨は。
池乃の家から出る時に、この雨に気付き、ふたりは傘を持っていなかったため、池乃に1本貸してもらうことにした。もちろんなつみが持ちたかったのだが、そうすれば京楽の目を突くことになるため、京楽が傘を持つ。その手がすぐ隣りで視界に入ってくるので、それが見えて、ふふっと微笑んでしまう。
「池乃、まーた良い仕事してくれたね」
「はいっ。とっても😊」
「これで、親子なんて言われないよ(笑)」
「とーぜんですッ!恋人です😤」
右手は傘を持つ京楽の腕に、左手は薬指が見えるように、まっすぐ伸ばして掲げる。
「指輪するのなんて初めてです。特別な感じがしますね。心がくすぐったいです」
傘を持つ手を替えて、空いた左手をなつみの腰に回した。相合傘の下では、ぴたりと寄り添うのが自然と許される。
「特別なキミだから、特別な物を、ね?」
「春水さんも特別です」
雨はカーテン。傘は目隠し。この薄暗い空も手伝って、遮ぎ遮られるふたりの姿がさらにひとつに重なったような。
「もうちょっとでおうちだよ、なつみちゃん」
「はい。帰りましょ///」
きっとふたりなら、傘を使わずとも雨に濡れない術を身に付けているだろうが、古から伝わるアイの行為を、あえて選んで楽しんだ。
そうして、のんびりと時は流れる。なつみに似合うからと、今夜の湯船にはアヒル隊長が浮いている。
「かわいい😌」
ぷかぷかしていたアヒル隊長を両手で持ち上げて、にぎにぎ。
そんななつみを後ろから抱きしめている京楽。もみもみ。
「かわいい😚」
「…😑」
「ん〜ーちゅっ❤️」
少し温度差がございますが、ふたりとも身体はぽかぽかと温まっております。
「あの、春水さん」
「なに〜」
なつみの胸を揉んでいた手を、お腹の方に下ろす。
「ぼく、先にお部屋戻りたいです」
どうしてだろうと、瞬きをしてみたが、京楽は頷いてあげる。
「わかった。ボクは髪をしっかり乾かしてから行くよ。ごゆっくり😘」
「☹️///💦」
これは、バレているんだろうか。
宣言通りに、なつみは先に寝室に戻った。
「ついにこの時が」
鞄から取り出し、紐を持って高く掲げる。
「よっしゃ‼︎」
いざ、勝負の時。