第八章
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後日の夕暮れ時、連絡を受けたなつみは三番隊舎門前にいた。あの男を待っている。
「あ、来たぁ。おーい!イケちゃんせんぱーい!」
両手を大きく振って、池乃を迎えた。
「こんにちは😊」
「お疲れ。本当に俺、入って良いのか?」
「良いですよ。市丸隊長には言ってありますから。こちらへどうぞ」
自分の部屋へ池乃を連れてきた。
「ここにお願いします」
壁を指して言った。
「了解。穴空ける許可もらったか?」
「はい!わぁ〜✨」
なつみはそっちの許可は無く、勝手に池乃が持ってきた包みを開けた。
「かわいい💖」
「コビトカバだ。気に入ったか?」
「はい!とーっても🥰」
京楽と池乃の作品を見ていた日、ついついなつみもどれかが欲しくなったのだが、どれもサイズが大きく、なつみの部屋には飾れないものばかりだった。池乃に相談して、小さい絵を用意してもらい、しばらくレンタルさせてもらうことにしたのだ。
「ちょっとうるさくするぞ」
「はーい。ぼくはお仕事の続きします」
取り付け作業が完了し、池乃はなつみにチェックを求めた。
「どうだ」
「むおっ!むぉお〜💖」
机で書類作業をしていたなつみは、感嘆の声を上げながら、絵から離れた位置に移動して、部屋とのバランスを見た。
「絵が1枚あるだけで、雰囲気変わりますねぇ。もうこの部屋入る度に、目が行っちゃいますね、これ。癒しだ〜🥰」
「高さのこだわりとか無いのか?一応、お前の身長に合わせて、いつもより低めに」
カックン💥
「した、ぞ……⤵︎⤵︎⤵︎(笑)」
膝カックンをして、自分と身長を揃えてみたなつみ。
「お気遣いに感謝致します」
「みんなお前のこと、ちっさくてかわいいって思ってるんだぞ。背が低いこと、そんな嫌がんなよ」
「嫌です。不便ですもん。…、春水さんと全然違うもん」
「…。」
背筋を戻して、池乃は意見を述べる。
「竹馬、プレゼントしてやろうか」
「思い切って3m」
「なつみが4.5mか。それこそキスしにくいだろ」
「‼︎///」
「悩みまでちっぽけで、かわいいんだな」
ムスッとなったなつみは、足音をわざわざ立てて机に戻った。
その時、外からノックが聞こえた。
「はーい😤」
「なんやの、不機嫌そうに。あら」
訪れたのは市丸だった。
「浮気中?(笑)」
「んなわけないでしょう‼️この人がイケちゃん先輩です❗️」
「冗談やん。怒らんといて。こんにちはぁ。あ、これやね。ええやん。なんや、なつみちゃんに似てへん?このカバ」
「似てませんよ❗️」
「似てるぞ」
「似てないって❗️」
「こんくらい近づいたら一緒や」
鼻先同士の間1㎝あるかないかな距離の市丸となつみ。
「なんでもそうでしょ」
「そっちの方が浮気に見えるぞ」
「くっついてへんから、セーフや」
離れる。
「今日の分は、あとそんだけなん?」
「はい」
「ほな、すぐ終わるな。道場の鍵返したん?」
「まだです。書類を持ってくついでに返そうと思ってて」
「自主練したい子らがおるんやって。あぁ、これな」机の隅に置かれた鍵を見つけて取った。「持ってくわ」
「すいません。すぐ返さなくて」
「ええよ〜」
退室しようと市丸が動き出したその時、明らかに不自然なステップを踏んだ。
「わぁと、全身滑ったぁ」
ずるっ
「あ?」
「ぎやあッ⁉️😱」
市丸が転んだ拍子で、例の秘密の引き出しが露わになってしまった。
「むぎゃーーーッ‼️見ないでーーーッ‼️ふがッ⁉️」
すぐ立ち上がった市丸は、まだ座っているなつみのでこに指を1本添えて、立ち上がれなくさせた。
「ムギャアァアアーーーッ‼️💦💦💦」
「惨めやろ。人体の不思議やね〜」
兄妹が戯れている隙に、池乃は秘密の中身を手に取って眺めた。
「ふ〜ん、よく揃えたな。大したもんだ」
「「へ…?」」
思った反応よりもかなり大人しめで、兄妹はキョトンとした。同期の仲間たちは、あんなに騒いだのに。
「あ?なんだよ、その目」
「普通、ドン引きせぇへん?」
「するかよ。ちゃんと、アイツのこと好いてる証拠じゃねぇか」
「そやけど、京楽さんも京楽さんで、こないなことしてんねや〜って」
「昔からこんなんだぞ、アイツ。本屋にこういうの置いてあるからな。たまに見るが、『相変わらず、バカやってんな』って思ってるよ。ここ数年で力の入れ方変わったと思ったら、お前のためだったんだな」
静かに引き出しを閉めてくれた。
「用が無いなら、もう行ってくださいよ、隊長」
「せやね。からかい甲斐がないわ。ほな、失礼します〜」
なつみと市丸はバイバーイと手を振った。
扉が閉まると池乃が話しかけた。
「もうすぐ終わるんなら、ここで待たせてもらって良いか?」
「すいません。えっと、椅子とお茶お持ちしましょうか」
「いや、いらねぇ。床に座ってるよ」
「お尻痛いですよ?」
「かまわねぇ。絵でも描いて待ってっから」
「そうですか…。お菓子なら、そこの箱に入ってるんで、好きなの摘んでもらって良いですからね😄」
「気が向いたらな」
なつみは部下から提出された書類の確認と評価を、池乃はサラサラとスケッチブックに鉛筆描きをしている。
「イケちゃん先輩、何描いてるんですか?」
「次に描きたいと思ってるのの練習だ。キャンバスで完成したら、見せてやるよ。これはまだダメだ」
「え〜。ケチんぼ〜😗」
「こっち気にすんな。とっとと仕事片付けろって」
「はぁい😄」
15分後。
「色鉛筆まで持って来たんですか?」
「水くれりゃ、水彩でやってた」
「あ、水に溶ける色鉛筆なんですね」
「知ってるな、お前」
「いっつも旅先でそうして絵を描いてるんですか?」
「そうだな。動き回る野生動物たちは、ざっくりとしか、その場で描けねぇけど」
「襲われたりしないんですか?」
「しねぇよ。現世で義骸入らずにいるからな。そんで、しれっと人間たちと一緒に交通機関を利用させてもらってる。誰にも気付かれず、どこへでも行ける。無料で、且つ、安全にな」
「イケちゃん先輩みたいな人がいるから、心霊映像ネタにされるんですよ😒」
「あれは目立ちたがりのすることだ。まぁ、でもなぁ、気付かれてカメラ向けられりゃ、なんとなく見るわな」
「『恨めしそうにこちらを睨みつけている』じゃないですよ!やめてください😅」
「で、終わったのか?」
「あと10分!」
「了解」
10分後。
「おわたー🙌」
「お疲れ」
なつみの万歳を合図に、池乃は広げたものを片付け始めた。なつみも提出書類をひとつにトントン♪とまとめる。
「そんじゃ、本題といくぞ」
「いくぞー✊」
池乃の鞄から出てきたのは、何枚かの紙。
「こんなにですか⁉︎」
「なんかひらめいてな。俺は金属加工をまだやったことがないんだ。ガラスで全部やろうと思ってる」
「キレ〜✨」
それらはペアリングのデザイン案だった。
「色のサンプルも持ってきたぞ」
「ちょっと、どんだけ大荷物で来たんですか。その鞄、四次元すか」
「お前の頭身の方がねこ型ロボットだろ」
「ソンナコトナイモーン」
三番隊舎を後にした池乃は、今の話を京楽のところでもしようと、八番隊舎へ向かった。なつみも誘ったが、用事があると言って、断られてしまった。
その断ったなつみの用事というのは、技術開発局にある。言わずもがな、マユリの知るところ。
「しかしだネ。君とこうして共に時間を過ごせることは、大変喜ばしいことだが、要件を話してもらわなければ、無駄に過ごしているのと同じだと、思わんかネ?」
直接聞きたいことがあると言って、なつみはマユリにアポを取って会いに来たのだが、顔を真っ赤にして黙りだ。なつみでなければ、マユリの前でこんなことをして5秒後も息をしていられた者はいなかっただろう。
「話す気になったら、いつでも話しかけてくれ給え。私は研究に戻らせてもらうヨ。この分だと、今夜はここで泊まることになりそうだネ。それはそれで、一向に構わないヨ」
回転椅子を回して、デスクに向こうとすると、息を吸う音が聞こえた。
「おおお、おもちゃを❗️かし」ゴニョゴニョゴニョゴニョ……///
人さし指を突き合わせて、俯き、モゴモゴモジモジ。恐らく用件を話したのだろうが、始めしか聞き取れなかった。
「大人になったものだな」
「‼️///💦💦💦」
が、聞かずとも、最初の単語とこの態度で全て理解できた。
はぁ…とため息を漏らしつつ、マユリは黒目を上にやり、ほぼ白目になった。その目を通常モードに戻し、求められた物を取り出そうと、引き出しに手を伸ばすも。
「おや…。そう言えば、持って帰って来た覚えが無いネェ。悪いが、アレはここには無いヨ」
「エェェエエーーーッ‼️⁉️😱」
絶望。
今度はなつみが白目。せっかく勇気を振り絞って来たにも関わらず、目的のブツの紛失が発覚。現実を直視できない。
方やマユリも上を向くが、それは思考を巡らせるためのもの。
「フーン…、誰が持っているんだろうネェ」
「持ってなんかないですよ❗️」我に返ってこれた。「病室に置き忘れてきちゃったんですよねッ!卯ノ花隊長か、他の方が、掃除したときに見つけて、捨てちゃってますよ!」
「普通に考えれば、そうだろうネ。いやはや、私としたことが。時間旅行に夢中で、今の今まですっかりアレの存在を忘れていたヨ」
察することができるだろう。なつみが求めている物、それは、タイムスリップをするために眠る必要があったなつみを気持ち良く寝かせようとマユリが用意した大人のおもちゃだ。
「アレが何であるか、知ってしまったんだネ。京楽は罪な男だヨ」
他人の悪口はやめましょう。あなたはソレを作り、使わせようとさえしたのだから。しかしなつみは、ソレが自分のために作られたものとは知らない。一度自分に貸そうとしてくれたなら、頼めばまた貸そうとしてくれるだろうと淡い期待を寄せてきたのだ。ただそれだけ。そう、ただそれだけ。無いなんて、あり得ない。
「理由を聞こうか。何故、アレが欲しい。京楽では満足できなかったのかネ?」
「……、入らなかったんです///」
マユリは深く椅子にもたれた。
「密かに開発しようという魂胆か。健気なことだ」
なつみはシュゥゥと内側に縮んでいった。
「そうだネェ…、確かに残っている可能性は低そうだが、処分されてしまったとも限らない。ここはひとつ、思い切って探しに行ってみてはどうかネ?😏」
「えーッ⁉️イヤですよ‼️なんでわざわざ‼️」
「面白そうじゃないか」
「新しいのを」
「残念ながら、私も暇じゃあないんだヨ。別件の君の頼みもあることだ。無いなら無いで我慢できるはずだが、どうしても急ぎで欲しいというなら、とりあえず、藍染の元へ行くことだネ」
「ケチー‼️」
「ヤツに取り上げられてから、アレの行方がわからないんだヨ。どこかにあるとするならば、ヤツの近辺が一番怪しいネ」
「涅隊長がきいてくださいよ❗️涅隊長が作ったものなんだから❗️」
「今アレを必要としているのは、私じゃあない。君だろう?😏」
「クーーーッ😖💦」
「無いことが判明したら、新しいものを作ってやろう。あったならば、調整をしてやる。どちらにせよ、報告をしに、私のところに来るんだヨ。いいネ?」
「藍染隊長だって処分してますよ」
「君の勝手な想像は無効だヨ。科学者にとって、情報源の信憑性は最重要事項なのを覚えておき給え」
「むぅぅ‼️わかりましたよ‼️きいて来りゃ良いんでしょ‼️」
「幸運を祈るヨ」
プンスカした足取りで、なつみは一時撤退を余儀なくされた。
「もぉーッ❗️1回で済むと思ったのにィッ‼️」
外に出たら、屋根の上にパッとワープ。
「よりによって藍染隊長のとこだなんて。もぉー!話したら、絶対気まずくなるじゃん!ヤダよぉ…」
逆手の猫の手を目元に当て、グーッと力む。そして2秒経って脱力。
「一時の恥か。なるようになれだな。春水さんのために、ちゃんとしたいんだもん」
帰り道とは少し違う方向へ視線を向ける。
「ついでに片付けとくか」
到着したのは十番隊舎。
「ごめんくださーい❗️」
「こんな時間に何の用だ、クソチビ」
本当は嬉しいくせに、相変わらずの仏頂面でなつみの対応をしてくれたのは李空。
「李空に用じゃないもん。乱菊さんに用だもん」
「あ?副隊長ならまだ仕事がたんまり残ってるから、お前の相手なんかできねぇよ」
「えー😩」
「そんな顔するってことは、急用じゃねぇな。また出直せ」
ダンッ‼️‼️‼️💥✋
〜👼
「ヤッホー、なつみ😆」
李空が話し終えた途端、来てはいけないはずの乱菊が突進してきて、李空はなつみの視界から消えた。
「あたしに用なんでしょ?さっさと通しなさいよ!バカ李空!」
前に倒れて、お手上げガニ股の李空、動けない。いつもいつも乱菊のわがままに付き合って、残業続きの毎日でも、いつかこの頑張りが報われますようにと、文句のひとつも言わずにウンタラカンタラ……
「李空、大丈夫?今のお股が痛そうだったぞ」
「おぉ、死んだと思った」
「⁉️李空ぅぅう‼️死なないでぇ〜‼️‼️😭」
大袈裟に李空の亡骸に覆いかぶさり、回復魔法を施す。
「ぴえん超えてぱおん超えてずどーん‼️‼️」
「で、どうしたの」
「それがですね☝️」
「切り替えが早ぇ…。傷は癒えても、心が痛ぇ…」
冷たい夜風が骨身に沁みる。李空が立ち上がる時には、2人の姿は無くなっていた。
「何してんだ、お前、そんなところで」
星を見つめる李空の目よ。
「隊長…、副隊長に逃げられました」
「💢」
「松本ぉぉぉおッ‼️‼️」
「木之本ーーーッ‼️‼️」
「「戻って来ーい‼️‼️‼️」」
それは逃亡犯たちに届いていた。
「やっば😙」
「ちょっと、やっぱり今日のところはやめときましょうよ。ふたりとも、すっごい怒ってますって💦」
「いーのいーの♪あたしの仕事は代わりがきくけど、あんたの悩みはあたししか解決できないんでしょ?😉」
おててを引っ張られ、なつみは乱菊とともに夜の街へ繰り出していく。
「すっかり女にされちゃったのね〜、あんた。愛しのカレシに♪」
「///💦」
これまた相談したのは、欲しい物のことについて。
「あたし、その店のしか着けてないの」
「ほぇ〜。着け心地が良いんですか」
「それもあるし、見た目も凝ってて、かわいいのよー」
「ふぇ〜。それは期待できますね」
「ただ、その辺に売ってる安物よりも手が込んでるから、値は張るんだけどね」
「今日そんなにお金持ってないですよ」
「あたしが貸してあげるわよ〜。とりあえず、見るだけ見ときましょ。明日かもしれないし、今夜だってあり得るんだから。早く済ませた方が良いでしょ」
そのお店というのがここ。
「ショーウィンドウが無いから、何屋さんかわかんないですね。看板もちっちゃい」
「ま、見られちゃ恥ずかしいって思う人も多いからじゃない?」
乱菊が扉を開いた。カランカランカラン。
「いらっしゃいませ。あら!乱菊さん」
「こんばんは」
「こんばんは」
「あら?かわいらしいお連れ様まで。いらっしゃいませ」
「あわ〜///💦」
店主との挨拶もそこそこに、なつみの視線はババーッと店内を駆け巡った。
「はわ〜🫣」
ブラジャー、パンツ、キャミソール、パジャマ、ネグリジェ、浴衣も少々、ディスプレイされているここは、乱菊御用達のランジェリーショップだ。
「この子のを買いに来たの。ちょっと見立ててくれる?」
「かしこまりました」
乱菊が店主に事情を説明する間、なつみはふらーっと商品を見て回ってみた。
(こ、こ、こーゆーのが、ちゃんとしたヤツ‼︎☹️)
ハンガーにかかっているキャミソールを身体に合わせてみる。
(オンナやな。絶対ぇ似合わんし‼︎)
ラックに戻した。
「なつみー。2階上がるわよ」
「まず採寸させていただきます」
「はーい。(サイスン‼︎)」
とことこっと駆け寄る。
「あんた、ちゃんと測ったことないでしょ」
「ないですよ!いつも勘で買ってます」
「いけませんね。肌に触れるものですから、身体に合ったものを選ばないと。そちらの階段からどうぞ」
乱菊の後について階段を上ると、店の2階は在庫置き場になっているのか、1階のような陳列ではなく、箱や袋に入ったままの商品が棚に並んでいた。
「そちらの広いところにお立ちください。身に付けているお召し物は、こちらの籠に入れていただいて。寒いようでしたら、お声がけください」
「え、めっちゃオープンすぎません💧」
「誰も来ないわよー。下、閉めてきたんでしょ?」
「はい。ご安心ください」
ニッコリ笑われてしまった。
脱ぐ前に、気になることがひとつ。
「あの、あのベッドはどうしてあそこに?」
部屋の一画に、何故かベッドやソファやドレッサーが。
「こちらで商品の広告撮影を行っているんです。乱菊さんには、モデルのお誘いをしても、毎度断られているんですよねぇ」
残念というように首を振る。
「あたしのことより、今日はなつみよ!早く脱いじゃいなさい」
「はーい」
渋々脱いでいく。斬魄刀を置いて、マントを外し、帯を緩めて死覇装を脱ぐ。
「はい」
言われた通りに脱いで、気をつけ。
「何してんの。全部に決まってるでしょ」
「へ?」
下着で止まっているなつみ。
「正確に測らせていただきますから😄」
「マジすか」
「マジです😊」
「どーせ試着もするんだから、裸で良いのよ!」
「えぇぇぇぇ💧」
2人の目がマジなので、渋々の渋々で脱ぐことにする。
「こんな思いをするなんて」
「銭湯行ったら堂々と脱いでんじゃない。何が違うのよ」
「なんかが違いますよ」
「みんなで脱げば怖くないですか?😄」
「怖いですよ😑」
「あら残念」
「京楽隊長に捧げるんでしょ❗️ビシッと立ちなさい❗️」
「名前言わないでくださいよ‼️💦」
「あ‼️ごめん‼️」
(思ってない。絶対思ってない)
「さっき下で伺いました。是非とも京楽隊長にご満足いただける1着を選びましょう!力を抜いて、腕を下ろしてお立ちください」
「もぉ❗️はいはい❗️」
「『はい』は1回‼️」
乱菊姉さんには逆らえない。
「はいッ‼️」
スリーサイズを測り終えると、バスローブを貸してもらえた。
「では、早速試着していきましょうね。ご希望はございますか?」
「適当にあんたのオススメ持ってきてみて。この子、オシャレのセンス全然無いから」
「かしこまりました」
(こんなことになろーとは😓)
しばらくして戻ってきた店主の持つ籠には、更にこんなことになろーとはな下着が詰め込まれていた。
「まずは、これからいきましょうか」
手渡される商品。
「それが上ですね」
受け取って、広げてみる。
「⁉️紐じゃん‼️😱💦」
くるくる回して、前も後ろも確認したって。
「パットのとこ無いじゃないですか‼️お、おっぱい丸出し‼️」
「なに驚いてんのよ。そういうのが欲しかったんでしょ?エッチするときに恥ずかしくないのが欲しいですって、言ってたじゃない」
「ちがっ、もっと普通ので良いんですよ‼️下にあった他のヤツで‼️フツーの‼️これじゃ、大事なとこ隠れませんよ‼️」
「お客様」強めの語気。「特別な時間を演出するのに、普通の物では不相応ですよ」
それはとどめの1発だった。
「とっとと着る❗️」
「はいぃッ‼️💦」
半べそかきながら着ていくなつみ。その様子を眺めるマネージャーとスタイリスト。
「なつみって、こんなこと普段言われないだろうけど、正直言って、エロい身体してんのよね」
「ほんとほんと。わかります。小柄なのに、肉付きが程よくて、触り心地が良さそうですよね。あと、なんと言っても、谷間のホクロ。いや〜、ズルいですよ。あれを見つけちゃ、黙ってられる男はいませんって」
「好き勝手言わないでください」
「ホントのことよ」
「うちの下着を着ければ、もっと魅力的になること、間違いナシです😊」
「はい。着ましたよ。着方合ってるんですか?何もかも丸見えですけど」
お尻を見ようと、身体を捻った。
しかし、せっかく着たにも関わらず、ふたりの表情は険しく真剣だ。
「色ですかね」
「そうね。黒は、背伸びしてる感が強いのかもしれないわね」
「よしっ。なら、次はこっちにしますか」
店主が籠の中をごそごそと。
「着たら全部買取りとか無いですよね❗️」
「大丈夫ですよ〜。ご心配無く〜」
そして着せ替え人形と化すなつみであった。
(こんなことになろーとは😭)
裸でいることに慣れてきて、気持ちに余裕が持てると、肌寒さを感じるもので、早く終わってくれと心底願うなつみ。
「良いんじゃない?これにしましょう!」
マネージャーからの決定のお言葉。
(やった〜。帰れる〜)
「あとこれに、キャミでも付けたらどうかしら。出し過ぎて不満があるみたいだから」
「お持ちします」
(まだなんかーい)
届いたキャミソールを着てあげるも。
「やっぱり透けるんですねぇ〜」
「当たり前でしょ❗️」
「疑問に思われているようなので、一言申し上げますと」
「何ですか?」
「裸よりも、何かを身につけている方が、いやらしい魅惑を醸し出すことができるんですよ」
「わかる‼️」
これに乱菊は納得。
「わかりません」
なつみにはピンと来ない。
「京楽隊長の身体で想像しなさいよ」
「わかります」
それなら即答でした。
「ご納得いただけましたね😄」
「はい、お会計〜で〜す」
「なんで乱菊さんが声高らかに言うんですか😟」
「お値段は合計でこちらになります」
下着の上下とキャミソールで締めて。
「えぇぇぇえーッ⁉️持ってないですよ❗️こんなに❗️」
「どれどれ?」
乱菊も値段を確認。
「あぁ、大丈夫よ、あたしが持ってるから。貸してあげるって言ったじゃない」
「そんな!💦」
「今買わなきゃ、後でひとりで買いに来たって、あんた普通の買うつもりでしょ。そんなことさせないわよ❗️」
「そんなぁ!😫」
図星である。
何やら揉めているようなところ、店主が名案閃いた顔をして、間に入ってきた。
「あ、あの!お困りのようでしたら、ひとつご提案差し上げても?」
「どうぞ」
「モデルやってくれるなら、今着てるの全部タダであげちゃうってのは、どう?」
お客様対応がここで終わった。
「決まりね!袋に詰めてあげるから、脱いじゃって〜!それとも着て帰る?」
「脱ぎますよ‼️」
それは、病院に嫌々連れてこられた猫が、家に帰れることを悟ったときのスピード感だった。
ショッピングバッグをぶらぶらさせて、とぼとぼおうちの前まで帰ってこられた。
「はぁ…😩」
すると、進行方向から声をかけられた。
「どうしたの?ため息ついちゃって」
「は‼️」袋を背中に隠す。「こんばんは、藍染隊長❗️」
「こんばんは」
おしゃべりをする距離まで近づかれてしまう。
「悩み事かな?」
「いや、まぁ、そんなところですけど、大丈夫です。はい」
「無理しないで。僕にできることだったら、頼って良いんだからね」
(何もできねぇわ!これに関しては!)
心ではそう思っても、一応、黙ってうんうんと首を縦に振ってはおく。
「ところで、こんな時間にお買い物に行っていたんだね。どうしても欲しい物があったのかな?」
「は、はい。どうしてもってわけでもないですけど」
「そう」
「藍染隊長は、こんな時間にここを通りかかるなんて珍しいじゃないですか。お出かけでしたか?」
「ご飯に行ってたんだ。それで近くに君を感じたから、つい来てしまった。用も無いのに、会いに来ちゃったというやつだね」
「そうでしたか」
もじもじと、右足を少し下げてつま先を地面に付け、踵を左右にふらふら。
(あれをきくの、今なのか⁉︎)
マユリとの会話を思い出す。藍染に確認をするなら、今なのかもしれないが、さすがに外で、しかも家の前となると、気が引ける。言い出しにくい。
「やっぱり、何か気になることがあるんだね」
下唇を吸って、口を尖らせるなつみの俯いた仕草は、疑いようがない。言いたいことが喉まで上がっているのに、恥ずかしくて言えないことを示しているのだ。
「話してごらん」
なつみの視線がちらりと上がった。すんっと息を吸う。
「あの、2つお伺いしたいことがあるんですけど」
ガシッ‼︎‼︎
「なつみちゃんッ‼︎‼︎‼︎😆」
「わぁッ‼️⁉️」
話し出した途端に後ろから抱きつかれ、一瞬息が詰まってしまった。
「京楽隊長⁉️もぉ、驚かさないでくださいよ」
「ごめぇん」
人前にも関わらず、京楽はなつみのほっぺに自分のを重ねた。
「こんばんは、藍染隊長」
「こんばんは」
背筋を伸ばしても、抱いている腕はそのままの京楽。
その腕の中、なつみは仕方なしに話しを続けた。
「すいません、藍染隊長。さっきのこと、次のお稽古のときに話します」
「そうだね」
なつみの体勢からでは、京楽の表情は見えない。
「なになに?ボクに内緒でこそこそしないでよ。怪しいなぁ」
「うぅぅぅぅ……」
なつみは唸ることしかできなかった。「別に怪しいことじゃないですよ!変なことじゃないです!心配しないでください!」と言いたいところだが、おもちゃのことなので、怪しく変であり、嘘は言えない。
「んんんー……(ー公ー)」
「木之本くん、すごい顔してるよ💧」
鼻筋がしわっしわだった。
「まぁいいや。なつみちゃんにとって藍染隊長は悪者だもんね。浮気なんか無いって信じるよ」
なつみを抱き寄せる腕の力を抜いた。
「で、それの中身何?」
藍染に見られないように隠した袋は、口は閉じているものの、店の名前がバッチリ書かれている。京楽のお腹の前にあるため、少し身体を離せば、それがよく見えた。
「プフッ😙」
「なッ‼️⁉️💦」
店のことを知っているのか、京楽は吹いてしまった。それに気付いてなつみは叫ぶ。
「ナァァァァァァァァァァッ‼️‼️」
京楽の視界から袋を外すため、背中から前に持っていった。そしたら、藍染にそれが見える位置になってしまった。
「ナァァァァァァァァァァッ‼️‼️」
万事休す。京楽にも見られたくないし、藍染にも見られたくないし、なのに、どこにも隠しようがないこの状況。2人の方へ交互に顔をパッパッ向けるも、目は見えていないが、叫びながらパニックに陥った。
「ナァァァァァァァァァァッ‼️‼️ナァッ‼️‼️」
しかし何のことはない。逃げ場は目と鼻の先にあった。愛すべき我が家よ。なつみは挨拶もせず、見事にその場から逃げることにした。
パッ
取り残される男2人。
「フッフッフッフッフッ…、完全に不審者じゃないか、アレ(笑)」
京楽は笑いが堪えきれず、追いかけられなかった。
「かわいそうに。困らせてしまいましたよ。…、勝手に困っていただけですけど(笑)」
藍染も笑えて仕方がない。
「あー、おっかしい。ったく、かわいいんだから、ボクのなつみちゃんは」笑い過ぎて出てきた涙を拭う。「あんなにパニックにならなくても良いのにね。あ、惣右介くん、あの袋の店知ってるの?」
「え…」
「聞くまでもないか。鼻血出てるよ」
「なッ⁉️」
慌てて藍染は鼻の下を拭ったのだが。
「嘘だよ」
「えっ、ちょっと京楽隊長、からかわないでくださいよ」
京楽の嘘だった。
「フン、惣右介くんも男の子ってか」
「それを言うなら、木之本くんが女の子なんでしょう」
藍染を見る目を細める京楽。
「良い?なつみちゃんは、もうボクだけのものなんだ。変に手を出したら、ただじゃおかないよ」
「わざわざそれを言うためだけに、駆けつけたんですか?」
「まさか、それだけじゃないよ。話したいことがあったのに、逃げられちゃったなぁ」
「伝令神機で話せば良いじゃないですか」
ピキッ
「もしかして、まだ交換してないんですか?」
ピキピキッ
「そうだ、さっきの話気になるから、日にち早めてあげようかな。連絡しておこう」
ピキピキピキッ、ムカァーーーッ🔥
「ボクをからかうなァーーーッ‼️‼️」
伝令神機をわざとらしく取り出した藍染の首根っこを掴んで、京楽はブンブンと揺すった。
「悪者めぇーーーッ‼️‼️」
お怒りの京楽を前にしても、恋人でも上司でも何でもないただの悪者藍染は、涼しく笑っていた。
そんな大人気ないふたりのケンカは騒々しく。
「すいませーん。人んちの前でうるさいんですけどぉー」
2階の窓からクレームが届いた。
「あ、美沙ちゃん、ごめん💧」
「ケンカするなら帰ってくださーい」
「すまない。もう帰るよ。木之本くんにも謝っておいてくれるかい?」
美沙は部屋の奥へ手招きした。
嫌そうになつみが美沙の隣りから顔を覗かせる。
「なつみちゃん、池乃と話して決めたから、できたら一緒に取りに行こうね!」
「…はい」
どういう体勢なのか、窓枠からはなつみの鼻から上と小さなおててがふたつ並んでいるのしか見えない。
「木之本くん、何があったか、お話聞かせてね。おやすみ」
「おやすみなさい。京楽隊長も、おやすみなさい」
「おやすみ、なつみちゃん😘」
飛んできた投げキッスはちゃんとパシッと捕まえたが、そのまま奥へと姿を消してしまった。
「そこは受け止めるのね💧隊長方、おやすみなさい」
美沙が窓を閉めたため、それで終了。
部屋の中。
「で、どんなの買ったの。見せてよ!」
「それがさ、買ってないんだよ。貰ったっていうか、後で身体で払うというか…」
「何それ。ヤバくない?」
「部屋着のモデルで、店の中だけに貼る写真っていう約束だから、たぶん大丈夫だと思うけど…。乱菊さんもまたついてきてくれるし」
それでも心配だが、袋の中を開けてみる美沙。見て、びっくり。
「やっば❗️うわ、エッロ❗️スッケスケ❗️」
「貸したげよっか」
「ヤダ。絶対着ない」
「⤵︎⤵︎⤵︎///」
ここでも少々居た堪れないなつみであった。
「あ、来たぁ。おーい!イケちゃんせんぱーい!」
両手を大きく振って、池乃を迎えた。
「こんにちは😊」
「お疲れ。本当に俺、入って良いのか?」
「良いですよ。市丸隊長には言ってありますから。こちらへどうぞ」
自分の部屋へ池乃を連れてきた。
「ここにお願いします」
壁を指して言った。
「了解。穴空ける許可もらったか?」
「はい!わぁ〜✨」
なつみはそっちの許可は無く、勝手に池乃が持ってきた包みを開けた。
「かわいい💖」
「コビトカバだ。気に入ったか?」
「はい!とーっても🥰」
京楽と池乃の作品を見ていた日、ついついなつみもどれかが欲しくなったのだが、どれもサイズが大きく、なつみの部屋には飾れないものばかりだった。池乃に相談して、小さい絵を用意してもらい、しばらくレンタルさせてもらうことにしたのだ。
「ちょっとうるさくするぞ」
「はーい。ぼくはお仕事の続きします」
取り付け作業が完了し、池乃はなつみにチェックを求めた。
「どうだ」
「むおっ!むぉお〜💖」
机で書類作業をしていたなつみは、感嘆の声を上げながら、絵から離れた位置に移動して、部屋とのバランスを見た。
「絵が1枚あるだけで、雰囲気変わりますねぇ。もうこの部屋入る度に、目が行っちゃいますね、これ。癒しだ〜🥰」
「高さのこだわりとか無いのか?一応、お前の身長に合わせて、いつもより低めに」
カックン💥
「した、ぞ……⤵︎⤵︎⤵︎(笑)」
膝カックンをして、自分と身長を揃えてみたなつみ。
「お気遣いに感謝致します」
「みんなお前のこと、ちっさくてかわいいって思ってるんだぞ。背が低いこと、そんな嫌がんなよ」
「嫌です。不便ですもん。…、春水さんと全然違うもん」
「…。」
背筋を戻して、池乃は意見を述べる。
「竹馬、プレゼントしてやろうか」
「思い切って3m」
「なつみが4.5mか。それこそキスしにくいだろ」
「‼︎///」
「悩みまでちっぽけで、かわいいんだな」
ムスッとなったなつみは、足音をわざわざ立てて机に戻った。
その時、外からノックが聞こえた。
「はーい😤」
「なんやの、不機嫌そうに。あら」
訪れたのは市丸だった。
「浮気中?(笑)」
「んなわけないでしょう‼️この人がイケちゃん先輩です❗️」
「冗談やん。怒らんといて。こんにちはぁ。あ、これやね。ええやん。なんや、なつみちゃんに似てへん?このカバ」
「似てませんよ❗️」
「似てるぞ」
「似てないって❗️」
「こんくらい近づいたら一緒や」
鼻先同士の間1㎝あるかないかな距離の市丸となつみ。
「なんでもそうでしょ」
「そっちの方が浮気に見えるぞ」
「くっついてへんから、セーフや」
離れる。
「今日の分は、あとそんだけなん?」
「はい」
「ほな、すぐ終わるな。道場の鍵返したん?」
「まだです。書類を持ってくついでに返そうと思ってて」
「自主練したい子らがおるんやって。あぁ、これな」机の隅に置かれた鍵を見つけて取った。「持ってくわ」
「すいません。すぐ返さなくて」
「ええよ〜」
退室しようと市丸が動き出したその時、明らかに不自然なステップを踏んだ。
「わぁと、全身滑ったぁ」
ずるっ
「あ?」
「ぎやあッ⁉️😱」
市丸が転んだ拍子で、例の秘密の引き出しが露わになってしまった。
「むぎゃーーーッ‼️見ないでーーーッ‼️ふがッ⁉️」
すぐ立ち上がった市丸は、まだ座っているなつみのでこに指を1本添えて、立ち上がれなくさせた。
「ムギャアァアアーーーッ‼️💦💦💦」
「惨めやろ。人体の不思議やね〜」
兄妹が戯れている隙に、池乃は秘密の中身を手に取って眺めた。
「ふ〜ん、よく揃えたな。大したもんだ」
「「へ…?」」
思った反応よりもかなり大人しめで、兄妹はキョトンとした。同期の仲間たちは、あんなに騒いだのに。
「あ?なんだよ、その目」
「普通、ドン引きせぇへん?」
「するかよ。ちゃんと、アイツのこと好いてる証拠じゃねぇか」
「そやけど、京楽さんも京楽さんで、こないなことしてんねや〜って」
「昔からこんなんだぞ、アイツ。本屋にこういうの置いてあるからな。たまに見るが、『相変わらず、バカやってんな』って思ってるよ。ここ数年で力の入れ方変わったと思ったら、お前のためだったんだな」
静かに引き出しを閉めてくれた。
「用が無いなら、もう行ってくださいよ、隊長」
「せやね。からかい甲斐がないわ。ほな、失礼します〜」
なつみと市丸はバイバーイと手を振った。
扉が閉まると池乃が話しかけた。
「もうすぐ終わるんなら、ここで待たせてもらって良いか?」
「すいません。えっと、椅子とお茶お持ちしましょうか」
「いや、いらねぇ。床に座ってるよ」
「お尻痛いですよ?」
「かまわねぇ。絵でも描いて待ってっから」
「そうですか…。お菓子なら、そこの箱に入ってるんで、好きなの摘んでもらって良いですからね😄」
「気が向いたらな」
なつみは部下から提出された書類の確認と評価を、池乃はサラサラとスケッチブックに鉛筆描きをしている。
「イケちゃん先輩、何描いてるんですか?」
「次に描きたいと思ってるのの練習だ。キャンバスで完成したら、見せてやるよ。これはまだダメだ」
「え〜。ケチんぼ〜😗」
「こっち気にすんな。とっとと仕事片付けろって」
「はぁい😄」
15分後。
「色鉛筆まで持って来たんですか?」
「水くれりゃ、水彩でやってた」
「あ、水に溶ける色鉛筆なんですね」
「知ってるな、お前」
「いっつも旅先でそうして絵を描いてるんですか?」
「そうだな。動き回る野生動物たちは、ざっくりとしか、その場で描けねぇけど」
「襲われたりしないんですか?」
「しねぇよ。現世で義骸入らずにいるからな。そんで、しれっと人間たちと一緒に交通機関を利用させてもらってる。誰にも気付かれず、どこへでも行ける。無料で、且つ、安全にな」
「イケちゃん先輩みたいな人がいるから、心霊映像ネタにされるんですよ😒」
「あれは目立ちたがりのすることだ。まぁ、でもなぁ、気付かれてカメラ向けられりゃ、なんとなく見るわな」
「『恨めしそうにこちらを睨みつけている』じゃないですよ!やめてください😅」
「で、終わったのか?」
「あと10分!」
「了解」
10分後。
「おわたー🙌」
「お疲れ」
なつみの万歳を合図に、池乃は広げたものを片付け始めた。なつみも提出書類をひとつにトントン♪とまとめる。
「そんじゃ、本題といくぞ」
「いくぞー✊」
池乃の鞄から出てきたのは、何枚かの紙。
「こんなにですか⁉︎」
「なんかひらめいてな。俺は金属加工をまだやったことがないんだ。ガラスで全部やろうと思ってる」
「キレ〜✨」
それらはペアリングのデザイン案だった。
「色のサンプルも持ってきたぞ」
「ちょっと、どんだけ大荷物で来たんですか。その鞄、四次元すか」
「お前の頭身の方がねこ型ロボットだろ」
「ソンナコトナイモーン」
三番隊舎を後にした池乃は、今の話を京楽のところでもしようと、八番隊舎へ向かった。なつみも誘ったが、用事があると言って、断られてしまった。
その断ったなつみの用事というのは、技術開発局にある。言わずもがな、マユリの知るところ。
「しかしだネ。君とこうして共に時間を過ごせることは、大変喜ばしいことだが、要件を話してもらわなければ、無駄に過ごしているのと同じだと、思わんかネ?」
直接聞きたいことがあると言って、なつみはマユリにアポを取って会いに来たのだが、顔を真っ赤にして黙りだ。なつみでなければ、マユリの前でこんなことをして5秒後も息をしていられた者はいなかっただろう。
「話す気になったら、いつでも話しかけてくれ給え。私は研究に戻らせてもらうヨ。この分だと、今夜はここで泊まることになりそうだネ。それはそれで、一向に構わないヨ」
回転椅子を回して、デスクに向こうとすると、息を吸う音が聞こえた。
「おおお、おもちゃを❗️かし」ゴニョゴニョゴニョゴニョ……///
人さし指を突き合わせて、俯き、モゴモゴモジモジ。恐らく用件を話したのだろうが、始めしか聞き取れなかった。
「大人になったものだな」
「‼️///💦💦💦」
が、聞かずとも、最初の単語とこの態度で全て理解できた。
はぁ…とため息を漏らしつつ、マユリは黒目を上にやり、ほぼ白目になった。その目を通常モードに戻し、求められた物を取り出そうと、引き出しに手を伸ばすも。
「おや…。そう言えば、持って帰って来た覚えが無いネェ。悪いが、アレはここには無いヨ」
「エェェエエーーーッ‼️⁉️😱」
絶望。
今度はなつみが白目。せっかく勇気を振り絞って来たにも関わらず、目的のブツの紛失が発覚。現実を直視できない。
方やマユリも上を向くが、それは思考を巡らせるためのもの。
「フーン…、誰が持っているんだろうネェ」
「持ってなんかないですよ❗️」我に返ってこれた。「病室に置き忘れてきちゃったんですよねッ!卯ノ花隊長か、他の方が、掃除したときに見つけて、捨てちゃってますよ!」
「普通に考えれば、そうだろうネ。いやはや、私としたことが。時間旅行に夢中で、今の今まですっかりアレの存在を忘れていたヨ」
察することができるだろう。なつみが求めている物、それは、タイムスリップをするために眠る必要があったなつみを気持ち良く寝かせようとマユリが用意した大人のおもちゃだ。
「アレが何であるか、知ってしまったんだネ。京楽は罪な男だヨ」
他人の悪口はやめましょう。あなたはソレを作り、使わせようとさえしたのだから。しかしなつみは、ソレが自分のために作られたものとは知らない。一度自分に貸そうとしてくれたなら、頼めばまた貸そうとしてくれるだろうと淡い期待を寄せてきたのだ。ただそれだけ。そう、ただそれだけ。無いなんて、あり得ない。
「理由を聞こうか。何故、アレが欲しい。京楽では満足できなかったのかネ?」
「……、入らなかったんです///」
マユリは深く椅子にもたれた。
「密かに開発しようという魂胆か。健気なことだ」
なつみはシュゥゥと内側に縮んでいった。
「そうだネェ…、確かに残っている可能性は低そうだが、処分されてしまったとも限らない。ここはひとつ、思い切って探しに行ってみてはどうかネ?😏」
「えーッ⁉️イヤですよ‼️なんでわざわざ‼️」
「面白そうじゃないか」
「新しいのを」
「残念ながら、私も暇じゃあないんだヨ。別件の君の頼みもあることだ。無いなら無いで我慢できるはずだが、どうしても急ぎで欲しいというなら、とりあえず、藍染の元へ行くことだネ」
「ケチー‼️」
「ヤツに取り上げられてから、アレの行方がわからないんだヨ。どこかにあるとするならば、ヤツの近辺が一番怪しいネ」
「涅隊長がきいてくださいよ❗️涅隊長が作ったものなんだから❗️」
「今アレを必要としているのは、私じゃあない。君だろう?😏」
「クーーーッ😖💦」
「無いことが判明したら、新しいものを作ってやろう。あったならば、調整をしてやる。どちらにせよ、報告をしに、私のところに来るんだヨ。いいネ?」
「藍染隊長だって処分してますよ」
「君の勝手な想像は無効だヨ。科学者にとって、情報源の信憑性は最重要事項なのを覚えておき給え」
「むぅぅ‼️わかりましたよ‼️きいて来りゃ良いんでしょ‼️」
「幸運を祈るヨ」
プンスカした足取りで、なつみは一時撤退を余儀なくされた。
「もぉーッ❗️1回で済むと思ったのにィッ‼️」
外に出たら、屋根の上にパッとワープ。
「よりによって藍染隊長のとこだなんて。もぉー!話したら、絶対気まずくなるじゃん!ヤダよぉ…」
逆手の猫の手を目元に当て、グーッと力む。そして2秒経って脱力。
「一時の恥か。なるようになれだな。春水さんのために、ちゃんとしたいんだもん」
帰り道とは少し違う方向へ視線を向ける。
「ついでに片付けとくか」
到着したのは十番隊舎。
「ごめんくださーい❗️」
「こんな時間に何の用だ、クソチビ」
本当は嬉しいくせに、相変わらずの仏頂面でなつみの対応をしてくれたのは李空。
「李空に用じゃないもん。乱菊さんに用だもん」
「あ?副隊長ならまだ仕事がたんまり残ってるから、お前の相手なんかできねぇよ」
「えー😩」
「そんな顔するってことは、急用じゃねぇな。また出直せ」
ダンッ‼️‼️‼️💥✋
〜👼
「ヤッホー、なつみ😆」
李空が話し終えた途端、来てはいけないはずの乱菊が突進してきて、李空はなつみの視界から消えた。
「あたしに用なんでしょ?さっさと通しなさいよ!バカ李空!」
前に倒れて、お手上げガニ股の李空、動けない。いつもいつも乱菊のわがままに付き合って、残業続きの毎日でも、いつかこの頑張りが報われますようにと、文句のひとつも言わずにウンタラカンタラ……
「李空、大丈夫?今のお股が痛そうだったぞ」
「おぉ、死んだと思った」
「⁉️李空ぅぅう‼️死なないでぇ〜‼️‼️😭」
大袈裟に李空の亡骸に覆いかぶさり、回復魔法を施す。
「ぴえん超えてぱおん超えてずどーん‼️‼️」
「で、どうしたの」
「それがですね☝️」
「切り替えが早ぇ…。傷は癒えても、心が痛ぇ…」
冷たい夜風が骨身に沁みる。李空が立ち上がる時には、2人の姿は無くなっていた。
「何してんだ、お前、そんなところで」
星を見つめる李空の目よ。
「隊長…、副隊長に逃げられました」
「💢」
「松本ぉぉぉおッ‼️‼️」
「木之本ーーーッ‼️‼️」
「「戻って来ーい‼️‼️‼️」」
それは逃亡犯たちに届いていた。
「やっば😙」
「ちょっと、やっぱり今日のところはやめときましょうよ。ふたりとも、すっごい怒ってますって💦」
「いーのいーの♪あたしの仕事は代わりがきくけど、あんたの悩みはあたししか解決できないんでしょ?😉」
おててを引っ張られ、なつみは乱菊とともに夜の街へ繰り出していく。
「すっかり女にされちゃったのね〜、あんた。愛しのカレシに♪」
「///💦」
これまた相談したのは、欲しい物のことについて。
「あたし、その店のしか着けてないの」
「ほぇ〜。着け心地が良いんですか」
「それもあるし、見た目も凝ってて、かわいいのよー」
「ふぇ〜。それは期待できますね」
「ただ、その辺に売ってる安物よりも手が込んでるから、値は張るんだけどね」
「今日そんなにお金持ってないですよ」
「あたしが貸してあげるわよ〜。とりあえず、見るだけ見ときましょ。明日かもしれないし、今夜だってあり得るんだから。早く済ませた方が良いでしょ」
そのお店というのがここ。
「ショーウィンドウが無いから、何屋さんかわかんないですね。看板もちっちゃい」
「ま、見られちゃ恥ずかしいって思う人も多いからじゃない?」
乱菊が扉を開いた。カランカランカラン。
「いらっしゃいませ。あら!乱菊さん」
「こんばんは」
「こんばんは」
「あら?かわいらしいお連れ様まで。いらっしゃいませ」
「あわ〜///💦」
店主との挨拶もそこそこに、なつみの視線はババーッと店内を駆け巡った。
「はわ〜🫣」
ブラジャー、パンツ、キャミソール、パジャマ、ネグリジェ、浴衣も少々、ディスプレイされているここは、乱菊御用達のランジェリーショップだ。
「この子のを買いに来たの。ちょっと見立ててくれる?」
「かしこまりました」
乱菊が店主に事情を説明する間、なつみはふらーっと商品を見て回ってみた。
(こ、こ、こーゆーのが、ちゃんとしたヤツ‼︎☹️)
ハンガーにかかっているキャミソールを身体に合わせてみる。
(オンナやな。絶対ぇ似合わんし‼︎)
ラックに戻した。
「なつみー。2階上がるわよ」
「まず採寸させていただきます」
「はーい。(サイスン‼︎)」
とことこっと駆け寄る。
「あんた、ちゃんと測ったことないでしょ」
「ないですよ!いつも勘で買ってます」
「いけませんね。肌に触れるものですから、身体に合ったものを選ばないと。そちらの階段からどうぞ」
乱菊の後について階段を上ると、店の2階は在庫置き場になっているのか、1階のような陳列ではなく、箱や袋に入ったままの商品が棚に並んでいた。
「そちらの広いところにお立ちください。身に付けているお召し物は、こちらの籠に入れていただいて。寒いようでしたら、お声がけください」
「え、めっちゃオープンすぎません💧」
「誰も来ないわよー。下、閉めてきたんでしょ?」
「はい。ご安心ください」
ニッコリ笑われてしまった。
脱ぐ前に、気になることがひとつ。
「あの、あのベッドはどうしてあそこに?」
部屋の一画に、何故かベッドやソファやドレッサーが。
「こちらで商品の広告撮影を行っているんです。乱菊さんには、モデルのお誘いをしても、毎度断られているんですよねぇ」
残念というように首を振る。
「あたしのことより、今日はなつみよ!早く脱いじゃいなさい」
「はーい」
渋々脱いでいく。斬魄刀を置いて、マントを外し、帯を緩めて死覇装を脱ぐ。
「はい」
言われた通りに脱いで、気をつけ。
「何してんの。全部に決まってるでしょ」
「へ?」
下着で止まっているなつみ。
「正確に測らせていただきますから😄」
「マジすか」
「マジです😊」
「どーせ試着もするんだから、裸で良いのよ!」
「えぇぇぇぇ💧」
2人の目がマジなので、渋々の渋々で脱ぐことにする。
「こんな思いをするなんて」
「銭湯行ったら堂々と脱いでんじゃない。何が違うのよ」
「なんかが違いますよ」
「みんなで脱げば怖くないですか?😄」
「怖いですよ😑」
「あら残念」
「京楽隊長に捧げるんでしょ❗️ビシッと立ちなさい❗️」
「名前言わないでくださいよ‼️💦」
「あ‼️ごめん‼️」
(思ってない。絶対思ってない)
「さっき下で伺いました。是非とも京楽隊長にご満足いただける1着を選びましょう!力を抜いて、腕を下ろしてお立ちください」
「もぉ❗️はいはい❗️」
「『はい』は1回‼️」
乱菊姉さんには逆らえない。
「はいッ‼️」
スリーサイズを測り終えると、バスローブを貸してもらえた。
「では、早速試着していきましょうね。ご希望はございますか?」
「適当にあんたのオススメ持ってきてみて。この子、オシャレのセンス全然無いから」
「かしこまりました」
(こんなことになろーとは😓)
しばらくして戻ってきた店主の持つ籠には、更にこんなことになろーとはな下着が詰め込まれていた。
「まずは、これからいきましょうか」
手渡される商品。
「それが上ですね」
受け取って、広げてみる。
「⁉️紐じゃん‼️😱💦」
くるくる回して、前も後ろも確認したって。
「パットのとこ無いじゃないですか‼️お、おっぱい丸出し‼️」
「なに驚いてんのよ。そういうのが欲しかったんでしょ?エッチするときに恥ずかしくないのが欲しいですって、言ってたじゃない」
「ちがっ、もっと普通ので良いんですよ‼️下にあった他のヤツで‼️フツーの‼️これじゃ、大事なとこ隠れませんよ‼️」
「お客様」強めの語気。「特別な時間を演出するのに、普通の物では不相応ですよ」
それはとどめの1発だった。
「とっとと着る❗️」
「はいぃッ‼️💦」
半べそかきながら着ていくなつみ。その様子を眺めるマネージャーとスタイリスト。
「なつみって、こんなこと普段言われないだろうけど、正直言って、エロい身体してんのよね」
「ほんとほんと。わかります。小柄なのに、肉付きが程よくて、触り心地が良さそうですよね。あと、なんと言っても、谷間のホクロ。いや〜、ズルいですよ。あれを見つけちゃ、黙ってられる男はいませんって」
「好き勝手言わないでください」
「ホントのことよ」
「うちの下着を着ければ、もっと魅力的になること、間違いナシです😊」
「はい。着ましたよ。着方合ってるんですか?何もかも丸見えですけど」
お尻を見ようと、身体を捻った。
しかし、せっかく着たにも関わらず、ふたりの表情は険しく真剣だ。
「色ですかね」
「そうね。黒は、背伸びしてる感が強いのかもしれないわね」
「よしっ。なら、次はこっちにしますか」
店主が籠の中をごそごそと。
「着たら全部買取りとか無いですよね❗️」
「大丈夫ですよ〜。ご心配無く〜」
そして着せ替え人形と化すなつみであった。
(こんなことになろーとは😭)
裸でいることに慣れてきて、気持ちに余裕が持てると、肌寒さを感じるもので、早く終わってくれと心底願うなつみ。
「良いんじゃない?これにしましょう!」
マネージャーからの決定のお言葉。
(やった〜。帰れる〜)
「あとこれに、キャミでも付けたらどうかしら。出し過ぎて不満があるみたいだから」
「お持ちします」
(まだなんかーい)
届いたキャミソールを着てあげるも。
「やっぱり透けるんですねぇ〜」
「当たり前でしょ❗️」
「疑問に思われているようなので、一言申し上げますと」
「何ですか?」
「裸よりも、何かを身につけている方が、いやらしい魅惑を醸し出すことができるんですよ」
「わかる‼️」
これに乱菊は納得。
「わかりません」
なつみにはピンと来ない。
「京楽隊長の身体で想像しなさいよ」
「わかります」
それなら即答でした。
「ご納得いただけましたね😄」
「はい、お会計〜で〜す」
「なんで乱菊さんが声高らかに言うんですか😟」
「お値段は合計でこちらになります」
下着の上下とキャミソールで締めて。
「えぇぇぇえーッ⁉️持ってないですよ❗️こんなに❗️」
「どれどれ?」
乱菊も値段を確認。
「あぁ、大丈夫よ、あたしが持ってるから。貸してあげるって言ったじゃない」
「そんな!💦」
「今買わなきゃ、後でひとりで買いに来たって、あんた普通の買うつもりでしょ。そんなことさせないわよ❗️」
「そんなぁ!😫」
図星である。
何やら揉めているようなところ、店主が名案閃いた顔をして、間に入ってきた。
「あ、あの!お困りのようでしたら、ひとつご提案差し上げても?」
「どうぞ」
「モデルやってくれるなら、今着てるの全部タダであげちゃうってのは、どう?」
お客様対応がここで終わった。
「決まりね!袋に詰めてあげるから、脱いじゃって〜!それとも着て帰る?」
「脱ぎますよ‼️」
それは、病院に嫌々連れてこられた猫が、家に帰れることを悟ったときのスピード感だった。
ショッピングバッグをぶらぶらさせて、とぼとぼおうちの前まで帰ってこられた。
「はぁ…😩」
すると、進行方向から声をかけられた。
「どうしたの?ため息ついちゃって」
「は‼️」袋を背中に隠す。「こんばんは、藍染隊長❗️」
「こんばんは」
おしゃべりをする距離まで近づかれてしまう。
「悩み事かな?」
「いや、まぁ、そんなところですけど、大丈夫です。はい」
「無理しないで。僕にできることだったら、頼って良いんだからね」
(何もできねぇわ!これに関しては!)
心ではそう思っても、一応、黙ってうんうんと首を縦に振ってはおく。
「ところで、こんな時間にお買い物に行っていたんだね。どうしても欲しい物があったのかな?」
「は、はい。どうしてもってわけでもないですけど」
「そう」
「藍染隊長は、こんな時間にここを通りかかるなんて珍しいじゃないですか。お出かけでしたか?」
「ご飯に行ってたんだ。それで近くに君を感じたから、つい来てしまった。用も無いのに、会いに来ちゃったというやつだね」
「そうでしたか」
もじもじと、右足を少し下げてつま先を地面に付け、踵を左右にふらふら。
(あれをきくの、今なのか⁉︎)
マユリとの会話を思い出す。藍染に確認をするなら、今なのかもしれないが、さすがに外で、しかも家の前となると、気が引ける。言い出しにくい。
「やっぱり、何か気になることがあるんだね」
下唇を吸って、口を尖らせるなつみの俯いた仕草は、疑いようがない。言いたいことが喉まで上がっているのに、恥ずかしくて言えないことを示しているのだ。
「話してごらん」
なつみの視線がちらりと上がった。すんっと息を吸う。
「あの、2つお伺いしたいことがあるんですけど」
ガシッ‼︎‼︎
「なつみちゃんッ‼︎‼︎‼︎😆」
「わぁッ‼️⁉️」
話し出した途端に後ろから抱きつかれ、一瞬息が詰まってしまった。
「京楽隊長⁉️もぉ、驚かさないでくださいよ」
「ごめぇん」
人前にも関わらず、京楽はなつみのほっぺに自分のを重ねた。
「こんばんは、藍染隊長」
「こんばんは」
背筋を伸ばしても、抱いている腕はそのままの京楽。
その腕の中、なつみは仕方なしに話しを続けた。
「すいません、藍染隊長。さっきのこと、次のお稽古のときに話します」
「そうだね」
なつみの体勢からでは、京楽の表情は見えない。
「なになに?ボクに内緒でこそこそしないでよ。怪しいなぁ」
「うぅぅぅぅ……」
なつみは唸ることしかできなかった。「別に怪しいことじゃないですよ!変なことじゃないです!心配しないでください!」と言いたいところだが、おもちゃのことなので、怪しく変であり、嘘は言えない。
「んんんー……(ー公ー)」
「木之本くん、すごい顔してるよ💧」
鼻筋がしわっしわだった。
「まぁいいや。なつみちゃんにとって藍染隊長は悪者だもんね。浮気なんか無いって信じるよ」
なつみを抱き寄せる腕の力を抜いた。
「で、それの中身何?」
藍染に見られないように隠した袋は、口は閉じているものの、店の名前がバッチリ書かれている。京楽のお腹の前にあるため、少し身体を離せば、それがよく見えた。
「プフッ😙」
「なッ‼️⁉️💦」
店のことを知っているのか、京楽は吹いてしまった。それに気付いてなつみは叫ぶ。
「ナァァァァァァァァァァッ‼️‼️」
京楽の視界から袋を外すため、背中から前に持っていった。そしたら、藍染にそれが見える位置になってしまった。
「ナァァァァァァァァァァッ‼️‼️」
万事休す。京楽にも見られたくないし、藍染にも見られたくないし、なのに、どこにも隠しようがないこの状況。2人の方へ交互に顔をパッパッ向けるも、目は見えていないが、叫びながらパニックに陥った。
「ナァァァァァァァァァァッ‼️‼️ナァッ‼️‼️」
しかし何のことはない。逃げ場は目と鼻の先にあった。愛すべき我が家よ。なつみは挨拶もせず、見事にその場から逃げることにした。
パッ
取り残される男2人。
「フッフッフッフッフッ…、完全に不審者じゃないか、アレ(笑)」
京楽は笑いが堪えきれず、追いかけられなかった。
「かわいそうに。困らせてしまいましたよ。…、勝手に困っていただけですけど(笑)」
藍染も笑えて仕方がない。
「あー、おっかしい。ったく、かわいいんだから、ボクのなつみちゃんは」笑い過ぎて出てきた涙を拭う。「あんなにパニックにならなくても良いのにね。あ、惣右介くん、あの袋の店知ってるの?」
「え…」
「聞くまでもないか。鼻血出てるよ」
「なッ⁉️」
慌てて藍染は鼻の下を拭ったのだが。
「嘘だよ」
「えっ、ちょっと京楽隊長、からかわないでくださいよ」
京楽の嘘だった。
「フン、惣右介くんも男の子ってか」
「それを言うなら、木之本くんが女の子なんでしょう」
藍染を見る目を細める京楽。
「良い?なつみちゃんは、もうボクだけのものなんだ。変に手を出したら、ただじゃおかないよ」
「わざわざそれを言うためだけに、駆けつけたんですか?」
「まさか、それだけじゃないよ。話したいことがあったのに、逃げられちゃったなぁ」
「伝令神機で話せば良いじゃないですか」
ピキッ
「もしかして、まだ交換してないんですか?」
ピキピキッ
「そうだ、さっきの話気になるから、日にち早めてあげようかな。連絡しておこう」
ピキピキピキッ、ムカァーーーッ🔥
「ボクをからかうなァーーーッ‼️‼️」
伝令神機をわざとらしく取り出した藍染の首根っこを掴んで、京楽はブンブンと揺すった。
「悪者めぇーーーッ‼️‼️」
お怒りの京楽を前にしても、恋人でも上司でも何でもないただの悪者藍染は、涼しく笑っていた。
そんな大人気ないふたりのケンカは騒々しく。
「すいませーん。人んちの前でうるさいんですけどぉー」
2階の窓からクレームが届いた。
「あ、美沙ちゃん、ごめん💧」
「ケンカするなら帰ってくださーい」
「すまない。もう帰るよ。木之本くんにも謝っておいてくれるかい?」
美沙は部屋の奥へ手招きした。
嫌そうになつみが美沙の隣りから顔を覗かせる。
「なつみちゃん、池乃と話して決めたから、できたら一緒に取りに行こうね!」
「…はい」
どういう体勢なのか、窓枠からはなつみの鼻から上と小さなおててがふたつ並んでいるのしか見えない。
「木之本くん、何があったか、お話聞かせてね。おやすみ」
「おやすみなさい。京楽隊長も、おやすみなさい」
「おやすみ、なつみちゃん😘」
飛んできた投げキッスはちゃんとパシッと捕まえたが、そのまま奥へと姿を消してしまった。
「そこは受け止めるのね💧隊長方、おやすみなさい」
美沙が窓を閉めたため、それで終了。
部屋の中。
「で、どんなの買ったの。見せてよ!」
「それがさ、買ってないんだよ。貰ったっていうか、後で身体で払うというか…」
「何それ。ヤバくない?」
「部屋着のモデルで、店の中だけに貼る写真っていう約束だから、たぶん大丈夫だと思うけど…。乱菊さんもまたついてきてくれるし」
それでも心配だが、袋の中を開けてみる美沙。見て、びっくり。
「やっば❗️うわ、エッロ❗️スッケスケ❗️」
「貸したげよっか」
「ヤダ。絶対着ない」
「⤵︎⤵︎⤵︎///」
ここでも少々居た堪れないなつみであった。