第八章
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早朝、三番隊舎の屋外広場が遠征部隊集合場所となっている。
「とうちゃくっ‼️🙌」
パジャマなどなどを部屋に置いてきてから、なつみは到着した。既にチラホラと隊士たちは集まりだしている。
「遅刻や」
脚を揃えて両腕を上げ、ビシッとYでポーズするなつみの後ろから、市丸がおはようの挨拶をしてきた。
「嘘だ❗️」
「嘘や」
「ほら、嘘だ❗️」
「よう起こしてもらえたな。おはようさん」
「自分で起きたんですぅ〜。おはようございますぅ〜」
「ふ〜ん。すぐ寝たん?」
「ちょっとお話ししました。デートの約束しましたよ」
「ほぉ、そらええな」
「はい❗️」
「後でどんなふうに過ごしてきたか聞かせてな」
「……😑」
「何やの」
「隊長、恋路は秘め事ってヤツなんですよ❗️ベラベラ話したりしません❗️」
「あっそ」
「そんなことより」
市丸の後ろに回るなつみ。
「なーんで隊長は鞄背負ってるんですか」
なつみも含め、他の隊士全員が持っているものと同じ鞄だ。
「ん?キミがお休みするかもしれへんから、代わりに行ったろう思てたんよ」
「へぇ。お気遣い感謝致しますが、こうして来れましたから、お見送りだけで結構ですよっ」
鞄の紐を掴んで下ろそうとした。
「イヤや!ボクも行く!減るもんやないから、ええやん‼︎」
させるものかと、こちらからも掴んで放さない。
遠征部隊のみなさんは、「正直言って、どっちでも良いぞ」という顔をしていた。
「行くったら、行くんやーっ‼︎‼︎」
そんなこんなでついてきてしまった市丸に、目的地への道すがら、根掘り葉掘り尋ねられ、鬱陶しがり口を割らないなつみであったが、それは長続きしなかった。
午前中の活動を終え、市丸とお昼ご飯を食べていると、時間差のためか、昨夜から朝にかけての幸せな時間が頭の中で再生され、ある程度美化され、ふにゃんと思い出し照れ笑いをしたら最後、ぽろりとボロが出てしまった。
「かぁっこよかったんですよぉ〜😚」
こうなれば、きかれるまでもなく、自分から話したくなってしまうのがなつみのかわいいところであり、欠点である。
「ここだけの話なんですけどね、京楽隊長ってスゴいんですよ〜💓」
そりゃ、事によっては秘密を必ず守る頭は持ち合わせているのだが、溺愛する恋人の素敵な一面は、みんなに自慢したいもの。恋路の秘め事をベラベラしゃべってしまう。
「良いですか。ここだけの話ですよ〜💕」
明かしたところで害は無いだろう事ばかりなのだからと。
「あんな人がぼくの恋人なんて、ほんと、もったいないですぅ💖」
そうして話された新エピソードがこちら。
「朝、伝令神機の目覚ましで起きたんですけど、お布団に京楽隊長いなくて。トイレ行きがてら、探しに行ったんです。そしたら、稽古の間的な部屋があって、そこで斬術の鍛錬されてて。めちゃめちゃかっこいい。丸太を1本立てて、5秒で何回斬りつけられるかっていうのをやってたんですよ。ちょー速いの。そんで、切り口がしっかり深く残ってました。回数なら、ぼくも稼げるかもですけど、あんなパワーはマネできないですね。でもこれ、内緒にしてて欲しいんですって。コソ練主義者だからって。他にも練習メニューがあって、毎朝ひとりの時間に鍛えているそうです。隊長って、いちばん強いのを維持しなきゃならないのに、誰にも教えを請えないから、大変ですよね。朝から感動でした」
「ボクの大変さにも気付いてくれたん?」
「そういえば隊長って、いつ鍛錬されてるんですか?夜から朝まで、ずっと一緒に寝てたじゃないですか」
「キミとおらんときや」
「お付き合いしますよ」
「いらんわ。なつみちゃんは京楽さんとおり。教えるんも、教わることになるからな。あの人の力になったり」
「隊長の力にもなりたいです」
「ありがと。そんなことより、その後は?『行ってきます』のチューしたん?(笑)」
市丸がそれを言うと、あんたとのキスを思い出すではないかと、なつみはポフッと一瞬で赤面した。
「したんやな〜(笑)」
かわいい妹の朝帰りに、ニヤニヤして仕方ない市丸であった。見た目には、普段とそんなに変わりなかったが。
「お寝坊さんの理由がわかったし、良い思い出になったやんか」
あんた、お泊まり反対してたよな。
お出かけで楽しいのは、それまでの時間でもあり、準備からワクワクのドキドキなのである。デートをする日の前夜から、京楽宅へ行くことになったため、寝巻き問題に直面していた。
「パジャマかな、浴衣かな、う〜ん…」
「悩むとこ、そこ?」
なつみがお泊まりセットを鞄に詰め込むのを、美沙が眺めている。
「下着でしょ?悩むなら」
「んなッ、なッ、なんぞなッ💦///」
「ま、どっちにしろ、夜中は必要無いかもね。邪魔になるなら、寝巻きは置いてったら?」
「なッ、なッ、風邪ひいちゃうじゃんッ‼️///」
「寒かったら、何か貸してもらえるでしょ」
「あるかな、ぼくサイズの…」
「無きゃ、くっ付け」
「😣💓💦」
狼の出現に備えるのである。
「上手にできるかな」
「下手な方が安心するんじゃない?でもなつみ、変にいろいろ経験してるもんね」
「しょ、しょ、処女だぞ❗️いちお❗️」
「あんた、まさか、勉強した?」
「市丸隊長に教わったの❗️」
「あぁ、童貞取られたときね」
「それはしてないよ‼️ どっちのおしりにも挿れてないから、少なくともぼくは童貞だね‼️」
「そんなことまできいてないでしょ💧」
「⁉️🫢💦」
その日の仕事を終え、家に荷物を取りに帰り、とりあえずは八番隊舎へ訪れるなつみ。
「ごめんくださーい❗️」
「はーい」と出てきたのは、京楽ではなく尾田だった。
「むぅ、尾田に用は無いぞ」
「失礼な言い方すんなよ。お疲れ、木之本。隊長はまだ仕事中なんだ。中でちょっと待ってくれってさ」
「わかった///」
この尾田のセリフ、お泊まりもデートも知っているという感じか。
尾田が荷物を持ってくれて、その後ろをなつみがついていく。通されたのは隊首室だが、ノックをして扉を開けて覗いても、誰もいなかった。
「どこだろ。副隊長もいねぇや。ま、いっか。ここにいれば良いと思う」
尾田から荷物を受け取って、それを抱えて椅子に座る。脚、ぷらんぷらん。
「で?こないだは、どうだったんだよ」
案内が済んで、用は無いはずだが、尾田は部屋を出て行こうとしなかった。
「関係無いだろ。別に普通だよ。お風呂別々だったし、お話ししてから寝ただけだ。寝坊もしなかった」
「ふーん。そっか。大事にしてもらえてんだな」
「たぶんね」
「自信持てよ」
なつみのほっぺをグーの手できゅきゅっと撫でた。
「ファーストキス取り合った2人がそうしてくっついてるの、なかなか見てられないモンだよ」
「ガッ、隊長っ💦失礼しました💦」
よくあることだが、京楽が気配無く入り口に立っていた。尾田が慌ててなつみから離れる。
「京楽隊長、こんばんは❗️」
椅子からパッと立ち上がる。
「こんばんは、なつみちゃん。疲れてない?ここで少しゆっくりしてくかい?」
「いえ、大丈夫です。京楽隊長のお仕事が終わるまでで良いですよ」
「そう。じゃあもう行けるよ。七緒ちゃんからOKもらえたから」
副官室に入る前に、京楽の後ろで軽く一礼した七緒が見えた。
「後は尾田くんが片付けてくれるもんね」
ビシッと視線。
「はい💧」
「よろしく。そんな残ってないから、なつみちゃんは心配しなくて良いよ」
京楽が机に着いて片付けをしている間に、なつみは尾田へ目配せした。
(悪ぃな)
(いいよ。楽しんでこい)
なつみの頭をクシャッと撫でた。
「それもね」
((😣💦))
隊舎を出たなつみと京楽。
「尾田くんとイチャイチャしないでよ」
「え、そんなつもりないですよッ。ただの友だちなんですから」
「ただじゃない。事故でもキスしてんだから。しかも、キミからね」
「んー😔」
「2人とも、もっと自覚してほしいよ。なつみちゃんの恋人は、彼じゃないの。ボクなの!」
「はい」
「会うなとは言わないけど、あんまり彼らに隙を見せないでね。取られちゃうんじゃないかって、不安になるからさ」
「…はい。気を付けます」
楽しみにしていたデートなのに、いきなりシュンと落ち込みモード。
「なつみちゃん」
そう呼び、道の途中で立ち止まる。
「はい」
「キミが触れてもらいたいと思う相手は誰?名前言ってみて」
なつみの前に立ち、屈んで彼女と目線の高さを合わせた。手は自分の膝に。
「ん…」
恥ずかしくて視線を外したが、ちゃんとわかってもらわなければ。恋する相手は京楽であると。これは誘導なんかじゃない。自分の気持ちだ。目を前に戻す。
「春水さんです」
満足してくれたか、京楽は微笑み、右手でなつみの左頬を包んだ。なつみの心も喜んでいる。
「良かった。後でいっぱい触ってあげる」
そんな言い方をされては、照れて仕方ない。まだ外だというのに。
「ね、鞄持たせて。もう隊士の子たちに見られないから」
早く帰りたくて堪らないらしい。
隊長に、たかが二十席の隊士が荷物を持たせるなど、見せてはならない姿であると考え、なつみは遠慮していたのだが、断ってはいけない雰囲気だった。
「わかりました。どうぞ」
「ありがとう」
受け取り、肩にかける。
「抱っこするから、掴まって」
「そんなっ、ぼくまでなんて、重いですよ!無理しないでください。瞬歩でついてきますから」
「ヤダ。無理なんかじゃないから、お願い聞いて。ボクだってキミに触ってもらいたいの」
「むぅー。キツくなったら、途中で降ろしてくださいね」
「ならないよ」
なつみは京楽の首に掴まり、お姫様抱っこされた。
「行くよ、なつみちゃん」
「はい///」
チュッ❤️
「何でですかッ‼️⁉️///」
出発の「行くよ」かと思ったら、キスの合図でした。
「お顔が近くにあったから😙」
「早く行ってください‼️‼️💦」
「はぁ〜い」
出発してくれました。
おうちに帰ったら、手洗いうがいをしましょう。
「なつみちゃん用のコップ、用意したよ。はい😄」
なつみは、手ですくってうがいするのが苦手であり、前回のお泊まりで、京楽はそれを知ったのだ。
「あぅっ、ぼく、自分の折りたたみコップ持ってきたんですけど」
「んー、そっちが良いならしまうよ」
明らかにガッカリと肩を落とす京楽。コップを両手で持ってため息。
「いえ!そっち!使わせてもらいます!お心遣いに感謝しますよ!」
「ホント!はい、どうぞ」
なつみは手を伸ばすも、心根では。
(絶対高いヤツぅ。ガラスだし、模様かわいいし。うがいで使うヤツじゃないよぉ💦)
でも、笑顔えがお。
「ありがとうございまぁす。ははっ😅(マジ貴族‼️‼️)」
大事にされているということですよ。
夕食を料理番さんに作っていただいている間に、京楽は部屋着に着替えを済ませておくと言う。
「なつみちゃんも着替える?」
「いえいえ、死覇装のままでいます」
「うん。わかった。じゃあ、ボクの生着替えでも眺めてる?(笑)」
「し、し、しませんよ‼️💦」
寝室を逃げ出して、台所の様子を眺めに行った。
デザートまで堪能した後、ご馳走様でしたの気持ちを込めて、お皿洗いのお手伝いをするなつみ。
(これもあれも、高そうな食器ばっかりだよぉ。マジ貴族‼️割るの怖いけど、ただ食べるなんて申し訳ないもん。これくらいしなきゃ)
お酒も堪能したほろ酔い京楽も手伝いたかったが、主に雑務はさせてもらえない。割烹着を借りて、真剣な眼差しでお皿を洗う愛らしい恋人を少し遠くから見守るのみ。
(良い眺め🥃)
まだ飲むか。
さて、歯磨きのタイミングはいつだ。
「先に明日の予定でも決めますか?何時に起きましょう」
寝室でまったりな時間が流れる中、伝令神機を取り出して、目覚ましアラームの設定をしようとするなつみ。床に置いた鞄から歯ブラシを出して、ドレッサーに置いてからの話だ。
「朝〜?適当で良いじゃないか。なんならボク、出かけなくても良いんだけど。ここでず〜っとキミとゴロゴロしてたいな〜」
既に京楽はベッドでゴロゴロしていた。
「イヤです。買ってもらった服着て、いっしょに歩きたいですもん。次のデートでって約束だったじゃないですか」
手を腰に添えて、ぷんぷんする。
「フフッ、そうだね。せっかく持ってきてくれたんだもんね。どっか行かなきゃ勿体無いか」
「そーです❗️」
「考えてたのはね、個展なんだ」
「こてん?」
小首をこてんとするなつみ。京楽は起きて、ナイトテーブルの引き出しから1枚のチラシを取り出した。それをなつみに渡して見せてあげる。
「友人が画家をやっててね。新しい作品ができたらしくて、お披露目に個展をするって知らせてきたんだよ。アイツは、自然とか動物を描くのが上手でね。なつみちゃんも気に入ると思ってさ。どうだい?行ってみる?」
小さいが、いくつか作品の写真が載っている。どれもなつみ好みの柔らかいタッチに見えた。
「はい!行きましょう!すごーい✨」
目的地がひとつ決まった。
決まったところで。
「歯磨きしてきますね。磨いてる間にお風呂のお湯溜まってるといいんですけど」
「丁度良いんじゃない?ボクも行こー。浴衣浴衣ぁ〜っと」
箪笥の引き出しを開ける。その部屋着、一瞬であったな。
そんな京楽の背中のところを、きゅっきゅっと引っ張るなつみがいた。
「ん?どうしたの」
振り返る京楽の目に映ったなつみは、泣きそうな顔になっていた。
「どうしたの⁉︎」
京楽は焦った。眉を寄せ、口はへの字になり、耳まで真っ赤っかになっているのだから。
大きな声が出せないのか、なつみは口元に手を添えて、ヒソヒソ話したいポーズをした。それに応えて、京楽が耳を傾けてあげる。
ヒソヒソヒソ…。
伝え終わると、ペコペコと頭を下げて、何やらお願い。事情を知った京楽の心配は消えて、呆れと安堵のため息を吐いた。
「コップは持ってきたのに?まったくキミって子は(笑)」
恥ずかしさ爆発寸前のお顔だった模様。例のあの件だろう。
「ボクのバスローブを貸してあげる。向こうにあるから。そんな顔になっちゃうなら、大胆なマネしちゃダメだよ、なつみちゃん」
「だって…、美沙ちゃんが…///」
「でも、どうするかはキミ次第だろ?」
歯ブラシしか持っていないなつみの手を取り、自分の浴衣を持った京楽は、彼女を脱衣所に優しく引っ張っていく。
「やっぱり、持ってこれば良かったですぅ///💦」
「もう遅いよ。ボクも、ちゃんと着る気失せちゃった😉」
今夜の狼さんは、良いものか、悪いものか、もう少しでわかるだろう。その前に、心を落ち着かせて、口の中をきれいにしておきましょうか。
磨き終えて、あのお高級コップでゆすいだならば、最終確認といく。
「春水さん、先にお風呂入ってください。ぼく、その後入ります」
「どうして?一緒に入ろうよ」
口元を拭き拭き。
「脱ぐの恥ずかしいです///」
「寝巻きわざと置いてきた人が言うことじゃないよ」
「ぷきゅッ///」
フェイスタオルでいないいないと隠れる。
「サウナでお互いの身体見てるだろ?普通に脱いでたじゃないか。今更だよ。さぁ、こっちにおいで!」
という言葉に反して、なつみはショショショッと出口へ逃げていく。
その後ろ姿をガッチリ捕まえると、京楽は逃亡者の帯をシュルシュルッと手際よく引っこ抜いてしまった。
「わぁッ‼️⁉️///」
慣れたものだ。奪った帯を折りたたんでいく。
「じゃあ選んで。脱ぐか、脱がされるか」
落ちないように袴を掴んで、なつみが答える。回れ右!
「着てる‼️」
「ダメです」
「はぁずかしいーもぉぉんッ‼️」
ジタバタ!ドタバタ!
「しーずーかーに!態度がジョンスミスに戻ってるよ」
鼻にいっぱい皺を寄せて、ちゅんちゅんを睨む。そしてフンッと、その鼻の先をツンと上げると、彼の横を澄ましてスタスタ通り過ぎた。
「ぼくは大人です!自分で脱げます!あっち向いててください!」
はっきり指で方向を指されたわけでもないので、京楽は鏡の反射が見える方を向いた。
「はいはい。あっちね〜(笑)」
袴を脱ぎ出す姿はバッチリ見えている。すると現れたのはイチゴの柄パンツだった。
「プフッ😙」
「え⁉️あーッ‼️」
思わず漏れた笑い声に気付いてなつみが振り向くと、トリックを見破ってしまった。脱いでしまったものは仕方ないと、ぐるんぐるんぐるんと袴をまとめて籠にドゥンッ!
「それ、男物じゃない?」
あっち向いてたのに、こっちに戻ってる、を通り越して前のめりでパンツを凝視していた。
「良いじゃないですか。ぼくのなんですから。破れてもないのに、捨てるなんて」
スルッ
「ッ⁉️」
「さっき言ったろ?キミには隙があるって」
纏っていた死覇装の上が無くなっていた。遅かろうが、一応手で胸を覆い隠さなきゃ。と思ったが、ここはオンナならオンナらしく、ブチギレてやろう。
バァチンッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎
「イタァイッ‼︎💦」
まぁ、こういうことをやられた場合、スケベな男のほっぺにビンタを喰らわせるのが定石だが、いかんせん身長がアレなもんで、手近にあった腰に全力の平手打ちを。
「ぷんっ💢」
隠密機動で身に付けたスピードで、京楽が痛みにうずくまる間に、もう浴室に移動してシャワーを浴び始めた。
「あらら。時間をかけた方が良かったか😅」
ちょっと反省な狼さんでした。
「おっぱいぷるんぷるんしてたぁ〜🤤💕」
…💧
シャカシャカとシャンプーをしていると、腕が増えた覚えはないのに、少し下の方をシャカシャカする手が現れた。
「痒いところはありませんかぁ〜😄」
「…😑」
この浴室にはバスチェアが2つある。なつみが前に座り、その後ろに京楽が座った。
「ありません」
「は〜い」手を離す。「それにしてもさ、普通こういう夜って、下着を気にすると思うんだよね。パジャマをどうしようよりも、まずね。キミは特別だからあれでも良いけど」
なつみは泡立てる手を下ろして、シャワーの蛇口を捻るため、軽く身体を前に丸めた。
「でも、ボクとしては」
最大で開く。
ブシャーーーッ‼️‼️💦💦💦
「ブフーーーッ‼️⁉️💦💦💦」
彼氏の顔面に喰らわせてから、水圧を弱めた。
シャーーー…
頭を上げて、泡を洗い流していく。
「やるなぁ😅」
髪を洗ったら、次は身体を。
「洗ってあげようか?😄」
「結構です」
ツンとした態度は変わらない。
「そんなぁ。つまんないけど、して欲しくないなら、やらないよ。ボクは髪洗ってるね」
なつみがボディーソープをプッシュすると、京楽が彼女に被さるように腕を伸ばしてシャンプーをプッシュ。
「んむむ」
わざとらしく密着して、胸で押し倒してくるので、なつみは唸った。
「どいてくださーい」
「おっと〜、ごめんよ〜」
思っていないだろう。起きてくれた。
今度のシャワータイムは事なきを得ることを祈る。
「お先にどうぞ」
シャワーヘッドを抜いて、京楽へ差し出す。
「どうも」
イタズラは無い。ただ、お互いにお互いの身体に見惚れてしまうのみ。シャワーの音、湯気、淡い暖色の明かり、濡れていく肌。夢のように、今までに見たことのない憧れた景色だった。言葉も無い。
なつみはもう浴槽に行ける。
「先に入ってて。場所を変わろう」
本当はその背中に口付けたい。遠ざかるお尻にだって。
浴槽の縁に手をついたら、ふと、京楽の背中に目が行った。
(ヤバッ⁉️)
とんでもないものが見えて、なつみは戻ることにした。
「お背中洗います❗️」
「んっ?そう?ありがとう」
なつみがさっき座っていた前の椅子に京楽が、後ろになつみが座って、確かに場所が変わった。
「ごめんなさい。怒って良いですよ」
「ははっ、すごいの残ってた?」
なつみが触れるところから、癒しの霊力が流れ込んできた。
「手型がバッチリです💧ごめんなさい」
「強かったもんね〜(笑)」
真っ赤な紅葉は、京楽の背中から消されていく。
「色は退きました。痛みはありますか?」
「大丈夫だよ。手を出して」
振り返った京楽はボディーソープのボトルを持っており、ポンプをプッシュして、差し出されたなつみの掌にいくらか石鹸を出してあげた。
「後ろは頼んだよ、なつみちゃん😉」
「はい」
京楽の広い背中を素手で撫でていく。写真では幾度と見てきたこの背中は、直に見るととても違っていた。
「たくましいですね」
筋肉の付きが、他の誰とも違っている。絶対に負けてはならない運命への覚悟と責任を、不本意ながら受け入れて、鍛え上げた身体。その嫌々な態度でも、ここまで仕上げられていることへの周りからの評価と自己満足が、そこそこの原動力になっているかもしれないが。
「惚れちゃった?😁」
「かっこいいです」
茶化したトーンへの返事は、あまりにも甘く響き、なつみの腕が、任せた背中からお腹へ回ってきた。彼女の上半身がピタリと背中にくっつく。
「すきです」
「…ボクもだよ」
そんなことをするから、なつみにまた泡がついてしまった。ささっと腕や脚も磨くと京楽は声をかけた。
「洗い流すよ」
そっと離れたふたり。一緒に浴びれるようにと、京楽がシャワーヘッドを壁の高い位置に掛け直し、蛇口をひねった。その間になつみは何を思ったか、椅子の上に立っていた。振り返った京楽はびっくり。
「あれ、背が高いね、なつみちゃん」
キラキラ光る水滴に打たれながら、向き合うふたりは優しく互いの身体を手で撫でて、泡を落としていく。肩から胸へ、腹へ、背中に伸ばす頃には、深く交わる接吻が始まっていた。
「とうちゃくっ‼️🙌」
パジャマなどなどを部屋に置いてきてから、なつみは到着した。既にチラホラと隊士たちは集まりだしている。
「遅刻や」
脚を揃えて両腕を上げ、ビシッとYでポーズするなつみの後ろから、市丸がおはようの挨拶をしてきた。
「嘘だ❗️」
「嘘や」
「ほら、嘘だ❗️」
「よう起こしてもらえたな。おはようさん」
「自分で起きたんですぅ〜。おはようございますぅ〜」
「ふ〜ん。すぐ寝たん?」
「ちょっとお話ししました。デートの約束しましたよ」
「ほぉ、そらええな」
「はい❗️」
「後でどんなふうに過ごしてきたか聞かせてな」
「……😑」
「何やの」
「隊長、恋路は秘め事ってヤツなんですよ❗️ベラベラ話したりしません❗️」
「あっそ」
「そんなことより」
市丸の後ろに回るなつみ。
「なーんで隊長は鞄背負ってるんですか」
なつみも含め、他の隊士全員が持っているものと同じ鞄だ。
「ん?キミがお休みするかもしれへんから、代わりに行ったろう思てたんよ」
「へぇ。お気遣い感謝致しますが、こうして来れましたから、お見送りだけで結構ですよっ」
鞄の紐を掴んで下ろそうとした。
「イヤや!ボクも行く!減るもんやないから、ええやん‼︎」
させるものかと、こちらからも掴んで放さない。
遠征部隊のみなさんは、「正直言って、どっちでも良いぞ」という顔をしていた。
「行くったら、行くんやーっ‼︎‼︎」
そんなこんなでついてきてしまった市丸に、目的地への道すがら、根掘り葉掘り尋ねられ、鬱陶しがり口を割らないなつみであったが、それは長続きしなかった。
午前中の活動を終え、市丸とお昼ご飯を食べていると、時間差のためか、昨夜から朝にかけての幸せな時間が頭の中で再生され、ある程度美化され、ふにゃんと思い出し照れ笑いをしたら最後、ぽろりとボロが出てしまった。
「かぁっこよかったんですよぉ〜😚」
こうなれば、きかれるまでもなく、自分から話したくなってしまうのがなつみのかわいいところであり、欠点である。
「ここだけの話なんですけどね、京楽隊長ってスゴいんですよ〜💓」
そりゃ、事によっては秘密を必ず守る頭は持ち合わせているのだが、溺愛する恋人の素敵な一面は、みんなに自慢したいもの。恋路の秘め事をベラベラしゃべってしまう。
「良いですか。ここだけの話ですよ〜💕」
明かしたところで害は無いだろう事ばかりなのだからと。
「あんな人がぼくの恋人なんて、ほんと、もったいないですぅ💖」
そうして話された新エピソードがこちら。
「朝、伝令神機の目覚ましで起きたんですけど、お布団に京楽隊長いなくて。トイレ行きがてら、探しに行ったんです。そしたら、稽古の間的な部屋があって、そこで斬術の鍛錬されてて。めちゃめちゃかっこいい。丸太を1本立てて、5秒で何回斬りつけられるかっていうのをやってたんですよ。ちょー速いの。そんで、切り口がしっかり深く残ってました。回数なら、ぼくも稼げるかもですけど、あんなパワーはマネできないですね。でもこれ、内緒にしてて欲しいんですって。コソ練主義者だからって。他にも練習メニューがあって、毎朝ひとりの時間に鍛えているそうです。隊長って、いちばん強いのを維持しなきゃならないのに、誰にも教えを請えないから、大変ですよね。朝から感動でした」
「ボクの大変さにも気付いてくれたん?」
「そういえば隊長って、いつ鍛錬されてるんですか?夜から朝まで、ずっと一緒に寝てたじゃないですか」
「キミとおらんときや」
「お付き合いしますよ」
「いらんわ。なつみちゃんは京楽さんとおり。教えるんも、教わることになるからな。あの人の力になったり」
「隊長の力にもなりたいです」
「ありがと。そんなことより、その後は?『行ってきます』のチューしたん?(笑)」
市丸がそれを言うと、あんたとのキスを思い出すではないかと、なつみはポフッと一瞬で赤面した。
「したんやな〜(笑)」
かわいい妹の朝帰りに、ニヤニヤして仕方ない市丸であった。見た目には、普段とそんなに変わりなかったが。
「お寝坊さんの理由がわかったし、良い思い出になったやんか」
あんた、お泊まり反対してたよな。
お出かけで楽しいのは、それまでの時間でもあり、準備からワクワクのドキドキなのである。デートをする日の前夜から、京楽宅へ行くことになったため、寝巻き問題に直面していた。
「パジャマかな、浴衣かな、う〜ん…」
「悩むとこ、そこ?」
なつみがお泊まりセットを鞄に詰め込むのを、美沙が眺めている。
「下着でしょ?悩むなら」
「んなッ、なッ、なんぞなッ💦///」
「ま、どっちにしろ、夜中は必要無いかもね。邪魔になるなら、寝巻きは置いてったら?」
「なッ、なッ、風邪ひいちゃうじゃんッ‼️///」
「寒かったら、何か貸してもらえるでしょ」
「あるかな、ぼくサイズの…」
「無きゃ、くっ付け」
「😣💓💦」
狼の出現に備えるのである。
「上手にできるかな」
「下手な方が安心するんじゃない?でもなつみ、変にいろいろ経験してるもんね」
「しょ、しょ、処女だぞ❗️いちお❗️」
「あんた、まさか、勉強した?」
「市丸隊長に教わったの❗️」
「あぁ、童貞取られたときね」
「それはしてないよ‼️ どっちのおしりにも挿れてないから、少なくともぼくは童貞だね‼️」
「そんなことまできいてないでしょ💧」
「⁉️🫢💦」
その日の仕事を終え、家に荷物を取りに帰り、とりあえずは八番隊舎へ訪れるなつみ。
「ごめんくださーい❗️」
「はーい」と出てきたのは、京楽ではなく尾田だった。
「むぅ、尾田に用は無いぞ」
「失礼な言い方すんなよ。お疲れ、木之本。隊長はまだ仕事中なんだ。中でちょっと待ってくれってさ」
「わかった///」
この尾田のセリフ、お泊まりもデートも知っているという感じか。
尾田が荷物を持ってくれて、その後ろをなつみがついていく。通されたのは隊首室だが、ノックをして扉を開けて覗いても、誰もいなかった。
「どこだろ。副隊長もいねぇや。ま、いっか。ここにいれば良いと思う」
尾田から荷物を受け取って、それを抱えて椅子に座る。脚、ぷらんぷらん。
「で?こないだは、どうだったんだよ」
案内が済んで、用は無いはずだが、尾田は部屋を出て行こうとしなかった。
「関係無いだろ。別に普通だよ。お風呂別々だったし、お話ししてから寝ただけだ。寝坊もしなかった」
「ふーん。そっか。大事にしてもらえてんだな」
「たぶんね」
「自信持てよ」
なつみのほっぺをグーの手できゅきゅっと撫でた。
「ファーストキス取り合った2人がそうしてくっついてるの、なかなか見てられないモンだよ」
「ガッ、隊長っ💦失礼しました💦」
よくあることだが、京楽が気配無く入り口に立っていた。尾田が慌ててなつみから離れる。
「京楽隊長、こんばんは❗️」
椅子からパッと立ち上がる。
「こんばんは、なつみちゃん。疲れてない?ここで少しゆっくりしてくかい?」
「いえ、大丈夫です。京楽隊長のお仕事が終わるまでで良いですよ」
「そう。じゃあもう行けるよ。七緒ちゃんからOKもらえたから」
副官室に入る前に、京楽の後ろで軽く一礼した七緒が見えた。
「後は尾田くんが片付けてくれるもんね」
ビシッと視線。
「はい💧」
「よろしく。そんな残ってないから、なつみちゃんは心配しなくて良いよ」
京楽が机に着いて片付けをしている間に、なつみは尾田へ目配せした。
(悪ぃな)
(いいよ。楽しんでこい)
なつみの頭をクシャッと撫でた。
「それもね」
((😣💦))
隊舎を出たなつみと京楽。
「尾田くんとイチャイチャしないでよ」
「え、そんなつもりないですよッ。ただの友だちなんですから」
「ただじゃない。事故でもキスしてんだから。しかも、キミからね」
「んー😔」
「2人とも、もっと自覚してほしいよ。なつみちゃんの恋人は、彼じゃないの。ボクなの!」
「はい」
「会うなとは言わないけど、あんまり彼らに隙を見せないでね。取られちゃうんじゃないかって、不安になるからさ」
「…はい。気を付けます」
楽しみにしていたデートなのに、いきなりシュンと落ち込みモード。
「なつみちゃん」
そう呼び、道の途中で立ち止まる。
「はい」
「キミが触れてもらいたいと思う相手は誰?名前言ってみて」
なつみの前に立ち、屈んで彼女と目線の高さを合わせた。手は自分の膝に。
「ん…」
恥ずかしくて視線を外したが、ちゃんとわかってもらわなければ。恋する相手は京楽であると。これは誘導なんかじゃない。自分の気持ちだ。目を前に戻す。
「春水さんです」
満足してくれたか、京楽は微笑み、右手でなつみの左頬を包んだ。なつみの心も喜んでいる。
「良かった。後でいっぱい触ってあげる」
そんな言い方をされては、照れて仕方ない。まだ外だというのに。
「ね、鞄持たせて。もう隊士の子たちに見られないから」
早く帰りたくて堪らないらしい。
隊長に、たかが二十席の隊士が荷物を持たせるなど、見せてはならない姿であると考え、なつみは遠慮していたのだが、断ってはいけない雰囲気だった。
「わかりました。どうぞ」
「ありがとう」
受け取り、肩にかける。
「抱っこするから、掴まって」
「そんなっ、ぼくまでなんて、重いですよ!無理しないでください。瞬歩でついてきますから」
「ヤダ。無理なんかじゃないから、お願い聞いて。ボクだってキミに触ってもらいたいの」
「むぅー。キツくなったら、途中で降ろしてくださいね」
「ならないよ」
なつみは京楽の首に掴まり、お姫様抱っこされた。
「行くよ、なつみちゃん」
「はい///」
チュッ❤️
「何でですかッ‼️⁉️///」
出発の「行くよ」かと思ったら、キスの合図でした。
「お顔が近くにあったから😙」
「早く行ってください‼️‼️💦」
「はぁ〜い」
出発してくれました。
おうちに帰ったら、手洗いうがいをしましょう。
「なつみちゃん用のコップ、用意したよ。はい😄」
なつみは、手ですくってうがいするのが苦手であり、前回のお泊まりで、京楽はそれを知ったのだ。
「あぅっ、ぼく、自分の折りたたみコップ持ってきたんですけど」
「んー、そっちが良いならしまうよ」
明らかにガッカリと肩を落とす京楽。コップを両手で持ってため息。
「いえ!そっち!使わせてもらいます!お心遣いに感謝しますよ!」
「ホント!はい、どうぞ」
なつみは手を伸ばすも、心根では。
(絶対高いヤツぅ。ガラスだし、模様かわいいし。うがいで使うヤツじゃないよぉ💦)
でも、笑顔えがお。
「ありがとうございまぁす。ははっ😅(マジ貴族‼️‼️)」
大事にされているということですよ。
夕食を料理番さんに作っていただいている間に、京楽は部屋着に着替えを済ませておくと言う。
「なつみちゃんも着替える?」
「いえいえ、死覇装のままでいます」
「うん。わかった。じゃあ、ボクの生着替えでも眺めてる?(笑)」
「し、し、しませんよ‼️💦」
寝室を逃げ出して、台所の様子を眺めに行った。
デザートまで堪能した後、ご馳走様でしたの気持ちを込めて、お皿洗いのお手伝いをするなつみ。
(これもあれも、高そうな食器ばっかりだよぉ。マジ貴族‼️割るの怖いけど、ただ食べるなんて申し訳ないもん。これくらいしなきゃ)
お酒も堪能したほろ酔い京楽も手伝いたかったが、主に雑務はさせてもらえない。割烹着を借りて、真剣な眼差しでお皿を洗う愛らしい恋人を少し遠くから見守るのみ。
(良い眺め🥃)
まだ飲むか。
さて、歯磨きのタイミングはいつだ。
「先に明日の予定でも決めますか?何時に起きましょう」
寝室でまったりな時間が流れる中、伝令神機を取り出して、目覚ましアラームの設定をしようとするなつみ。床に置いた鞄から歯ブラシを出して、ドレッサーに置いてからの話だ。
「朝〜?適当で良いじゃないか。なんならボク、出かけなくても良いんだけど。ここでず〜っとキミとゴロゴロしてたいな〜」
既に京楽はベッドでゴロゴロしていた。
「イヤです。買ってもらった服着て、いっしょに歩きたいですもん。次のデートでって約束だったじゃないですか」
手を腰に添えて、ぷんぷんする。
「フフッ、そうだね。せっかく持ってきてくれたんだもんね。どっか行かなきゃ勿体無いか」
「そーです❗️」
「考えてたのはね、個展なんだ」
「こてん?」
小首をこてんとするなつみ。京楽は起きて、ナイトテーブルの引き出しから1枚のチラシを取り出した。それをなつみに渡して見せてあげる。
「友人が画家をやっててね。新しい作品ができたらしくて、お披露目に個展をするって知らせてきたんだよ。アイツは、自然とか動物を描くのが上手でね。なつみちゃんも気に入ると思ってさ。どうだい?行ってみる?」
小さいが、いくつか作品の写真が載っている。どれもなつみ好みの柔らかいタッチに見えた。
「はい!行きましょう!すごーい✨」
目的地がひとつ決まった。
決まったところで。
「歯磨きしてきますね。磨いてる間にお風呂のお湯溜まってるといいんですけど」
「丁度良いんじゃない?ボクも行こー。浴衣浴衣ぁ〜っと」
箪笥の引き出しを開ける。その部屋着、一瞬であったな。
そんな京楽の背中のところを、きゅっきゅっと引っ張るなつみがいた。
「ん?どうしたの」
振り返る京楽の目に映ったなつみは、泣きそうな顔になっていた。
「どうしたの⁉︎」
京楽は焦った。眉を寄せ、口はへの字になり、耳まで真っ赤っかになっているのだから。
大きな声が出せないのか、なつみは口元に手を添えて、ヒソヒソ話したいポーズをした。それに応えて、京楽が耳を傾けてあげる。
ヒソヒソヒソ…。
伝え終わると、ペコペコと頭を下げて、何やらお願い。事情を知った京楽の心配は消えて、呆れと安堵のため息を吐いた。
「コップは持ってきたのに?まったくキミって子は(笑)」
恥ずかしさ爆発寸前のお顔だった模様。例のあの件だろう。
「ボクのバスローブを貸してあげる。向こうにあるから。そんな顔になっちゃうなら、大胆なマネしちゃダメだよ、なつみちゃん」
「だって…、美沙ちゃんが…///」
「でも、どうするかはキミ次第だろ?」
歯ブラシしか持っていないなつみの手を取り、自分の浴衣を持った京楽は、彼女を脱衣所に優しく引っ張っていく。
「やっぱり、持ってこれば良かったですぅ///💦」
「もう遅いよ。ボクも、ちゃんと着る気失せちゃった😉」
今夜の狼さんは、良いものか、悪いものか、もう少しでわかるだろう。その前に、心を落ち着かせて、口の中をきれいにしておきましょうか。
磨き終えて、あのお高級コップでゆすいだならば、最終確認といく。
「春水さん、先にお風呂入ってください。ぼく、その後入ります」
「どうして?一緒に入ろうよ」
口元を拭き拭き。
「脱ぐの恥ずかしいです///」
「寝巻きわざと置いてきた人が言うことじゃないよ」
「ぷきゅッ///」
フェイスタオルでいないいないと隠れる。
「サウナでお互いの身体見てるだろ?普通に脱いでたじゃないか。今更だよ。さぁ、こっちにおいで!」
という言葉に反して、なつみはショショショッと出口へ逃げていく。
その後ろ姿をガッチリ捕まえると、京楽は逃亡者の帯をシュルシュルッと手際よく引っこ抜いてしまった。
「わぁッ‼️⁉️///」
慣れたものだ。奪った帯を折りたたんでいく。
「じゃあ選んで。脱ぐか、脱がされるか」
落ちないように袴を掴んで、なつみが答える。回れ右!
「着てる‼️」
「ダメです」
「はぁずかしいーもぉぉんッ‼️」
ジタバタ!ドタバタ!
「しーずーかーに!態度がジョンスミスに戻ってるよ」
鼻にいっぱい皺を寄せて、ちゅんちゅんを睨む。そしてフンッと、その鼻の先をツンと上げると、彼の横を澄ましてスタスタ通り過ぎた。
「ぼくは大人です!自分で脱げます!あっち向いててください!」
はっきり指で方向を指されたわけでもないので、京楽は鏡の反射が見える方を向いた。
「はいはい。あっちね〜(笑)」
袴を脱ぎ出す姿はバッチリ見えている。すると現れたのはイチゴの柄パンツだった。
「プフッ😙」
「え⁉️あーッ‼️」
思わず漏れた笑い声に気付いてなつみが振り向くと、トリックを見破ってしまった。脱いでしまったものは仕方ないと、ぐるんぐるんぐるんと袴をまとめて籠にドゥンッ!
「それ、男物じゃない?」
あっち向いてたのに、こっちに戻ってる、を通り越して前のめりでパンツを凝視していた。
「良いじゃないですか。ぼくのなんですから。破れてもないのに、捨てるなんて」
スルッ
「ッ⁉️」
「さっき言ったろ?キミには隙があるって」
纏っていた死覇装の上が無くなっていた。遅かろうが、一応手で胸を覆い隠さなきゃ。と思ったが、ここはオンナならオンナらしく、ブチギレてやろう。
バァチンッ‼︎‼︎‼︎‼︎‼︎
「イタァイッ‼︎💦」
まぁ、こういうことをやられた場合、スケベな男のほっぺにビンタを喰らわせるのが定石だが、いかんせん身長がアレなもんで、手近にあった腰に全力の平手打ちを。
「ぷんっ💢」
隠密機動で身に付けたスピードで、京楽が痛みにうずくまる間に、もう浴室に移動してシャワーを浴び始めた。
「あらら。時間をかけた方が良かったか😅」
ちょっと反省な狼さんでした。
「おっぱいぷるんぷるんしてたぁ〜🤤💕」
…💧
シャカシャカとシャンプーをしていると、腕が増えた覚えはないのに、少し下の方をシャカシャカする手が現れた。
「痒いところはありませんかぁ〜😄」
「…😑」
この浴室にはバスチェアが2つある。なつみが前に座り、その後ろに京楽が座った。
「ありません」
「は〜い」手を離す。「それにしてもさ、普通こういう夜って、下着を気にすると思うんだよね。パジャマをどうしようよりも、まずね。キミは特別だからあれでも良いけど」
なつみは泡立てる手を下ろして、シャワーの蛇口を捻るため、軽く身体を前に丸めた。
「でも、ボクとしては」
最大で開く。
ブシャーーーッ‼️‼️💦💦💦
「ブフーーーッ‼️⁉️💦💦💦」
彼氏の顔面に喰らわせてから、水圧を弱めた。
シャーーー…
頭を上げて、泡を洗い流していく。
「やるなぁ😅」
髪を洗ったら、次は身体を。
「洗ってあげようか?😄」
「結構です」
ツンとした態度は変わらない。
「そんなぁ。つまんないけど、して欲しくないなら、やらないよ。ボクは髪洗ってるね」
なつみがボディーソープをプッシュすると、京楽が彼女に被さるように腕を伸ばしてシャンプーをプッシュ。
「んむむ」
わざとらしく密着して、胸で押し倒してくるので、なつみは唸った。
「どいてくださーい」
「おっと〜、ごめんよ〜」
思っていないだろう。起きてくれた。
今度のシャワータイムは事なきを得ることを祈る。
「お先にどうぞ」
シャワーヘッドを抜いて、京楽へ差し出す。
「どうも」
イタズラは無い。ただ、お互いにお互いの身体に見惚れてしまうのみ。シャワーの音、湯気、淡い暖色の明かり、濡れていく肌。夢のように、今までに見たことのない憧れた景色だった。言葉も無い。
なつみはもう浴槽に行ける。
「先に入ってて。場所を変わろう」
本当はその背中に口付けたい。遠ざかるお尻にだって。
浴槽の縁に手をついたら、ふと、京楽の背中に目が行った。
(ヤバッ⁉️)
とんでもないものが見えて、なつみは戻ることにした。
「お背中洗います❗️」
「んっ?そう?ありがとう」
なつみがさっき座っていた前の椅子に京楽が、後ろになつみが座って、確かに場所が変わった。
「ごめんなさい。怒って良いですよ」
「ははっ、すごいの残ってた?」
なつみが触れるところから、癒しの霊力が流れ込んできた。
「手型がバッチリです💧ごめんなさい」
「強かったもんね〜(笑)」
真っ赤な紅葉は、京楽の背中から消されていく。
「色は退きました。痛みはありますか?」
「大丈夫だよ。手を出して」
振り返った京楽はボディーソープのボトルを持っており、ポンプをプッシュして、差し出されたなつみの掌にいくらか石鹸を出してあげた。
「後ろは頼んだよ、なつみちゃん😉」
「はい」
京楽の広い背中を素手で撫でていく。写真では幾度と見てきたこの背中は、直に見るととても違っていた。
「たくましいですね」
筋肉の付きが、他の誰とも違っている。絶対に負けてはならない運命への覚悟と責任を、不本意ながら受け入れて、鍛え上げた身体。その嫌々な態度でも、ここまで仕上げられていることへの周りからの評価と自己満足が、そこそこの原動力になっているかもしれないが。
「惚れちゃった?😁」
「かっこいいです」
茶化したトーンへの返事は、あまりにも甘く響き、なつみの腕が、任せた背中からお腹へ回ってきた。彼女の上半身がピタリと背中にくっつく。
「すきです」
「…ボクもだよ」
そんなことをするから、なつみにまた泡がついてしまった。ささっと腕や脚も磨くと京楽は声をかけた。
「洗い流すよ」
そっと離れたふたり。一緒に浴びれるようにと、京楽がシャワーヘッドを壁の高い位置に掛け直し、蛇口をひねった。その間になつみは何を思ったか、椅子の上に立っていた。振り返った京楽はびっくり。
「あれ、背が高いね、なつみちゃん」
キラキラ光る水滴に打たれながら、向き合うふたりは優しく互いの身体を手で撫でて、泡を落としていく。肩から胸へ、腹へ、背中に伸ばす頃には、深く交わる接吻が始まっていた。