第七章
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不意に受信したデータを、自分の研究室で確認するマユリ。
「何だとォッ‼︎⁉︎どォいうことだネ、これは‼︎‼︎」
不意にマユリからの着信があり、隊首室にて着拒したい市丸。
「もぉ…、何やの?出たないなぁ」
しかし、そういうわけにもいかないので、伝令神機の通話ボタンをぽちり。
「はい」
「遅いヨ‼︎‼︎‼︎私を待たせるんじゃァない‼︎‼︎」
「どないしたんですかー…」
腕いっぱいに伸ばした伝令神機から、罵声が飛んでくる。
「なつみは川で一体何をしているんだネ‼︎‼︎伝令神機に全く出ないから、仕方なしにお前にかけたんだヨ‼︎教え給え‼︎」
「えっ、はぁ?なつみちゃんなら、男性死神協会のみんなとサウナ入ってるはずやけど」
「サウナだとォーッ⁉️💢」
また腕いっぱい伸ばした。耳が保たない。
「とっとと連れて帰るヨ‼︎‼︎」
プツッ‼︎‼︎💢ツーツーツー……
「切れた。はぁ…、只事やないってわけやな」
市丸のお出かけも決定した。
技術開発局からサウナ会場へのルートを駆け、マユリに追いつく市丸。
「何で帰らせなあかんの?」並走しながら話しかけた。「みんなでデトックスや〜言うて、楽しみにしとったから、邪魔したないねんけど」
「それが問題なんだヨ。サウナに入れば血行が良くなり老廃物が出て、さぞ健康的だとでも言うんだろう。そんなもの微々たる効果でしかないのにだ」
市丸の脳内でハテナが浮かぶ。
「何があかんの?」
「なつみが、その効果の噂を常識として捉えている場合、現実となってしまうんじゃぁないかネ。そうだろう」
「…、かもしれへんけど、なつみちゃんが始解せんと、そんなことには」
「あの鳥に我々の常識は通用しないヨ。なつみの引き寄せる幸運でわかるだろう。抜刀なんぞ必要事項ではないんだヨ」
「ほ、ほな、老廃物を出すんがあかん理由は?」
「身体は、当然のことだが、健康な状態になりたがるものだヨ。今、あの子の体内にある毒素には、私が与えた男体化させる薬の成分が含まれていることだろうネ」
「嘘やん…」
「私も疑いたいが、数値が示している。直ちに帰らせ、安静にすれば、もって半日だ。だが何が原因か、一時的な血行の急増が数回見られるんだヨ」
これだけの説明だが、かなり明確に状況の悪さが理解できた。
「このまま入り続ければ、1時間以内に元の女の身体に戻ってしまうヨ」
「あかん!なつみちゃん、たぶん裸や!」
「そんなものは大したことじゃないヨ!私が懸念しているのは、痛みだ。変身の最終段階で、あの子は激痛のあまり気絶してしまっている。もしも、なつみが女体化に気付き、あの時の痛みに再び襲われると予測すれば、現実にそうなってしまう可能性があるんだヨ。処置をしなければ、皆の前で悶え苦しむことになる。そんな事態は、確実に避けたいところだヨ」
「怖いこと言わんといて」
「ならば急ぐヨ。あの子の心と身体はバラバラだ。ここぞとばかりに、復元へ舵を切るに違いない」
サウナ、川、外気浴のサーキットを3セット終え、4周目に突入していた。なつみは京楽の肉体美を視界に入れてたまるかと、高温チームに参入していたのだが、徐々にキツくなってきた。
「ぽえ〜」
「大丈夫か、木之本。のぼせてきたんか」
「ちょっとフラついてるな」
「無理することないからな。ツラかったら、もう出て良いぞ」
「脱水してますから、水分をしっかり摂ってくださいね」
「ふいー…、すいません。お言葉に甘えて、お先です」
ぽてんぽてんとテントの外へ出ていった。
会場に到着した2人。マユリは高温、市丸は低温のサウナテントへ突入した。
「なつみ‼︎‼︎」「なつみちゃん‼︎‼︎」
「ブォアッ⁉︎く、涅隊長⁉︎」
「どうしたんですか⁉︎」
「市丸隊長⁉︎」
「何で京楽さんがおんの⁉︎ったく、だからやな‼︎」
「どういうことだ」
「木之本、いないんですか?さっき外出てったばっかりですけど」
「いないヨ‼︎」
「のぼせたっぽいから、その辺で涼んでるはずだろーが。椅子にいねぇのか?」
「木之本くんに何か起きたってことですか?」
「脱衣所にもいないぞ!」
「何でボクがいるといけないのさ」
「なつみちゃんの心臓がバクバクしてまうからや‼︎‼︎」
「暴れ回る音や、悲鳴はしなかったのかネ⁉︎」
「してません。物音いうたら、川の音くらいじゃろ。のォ」
「何だとォッ⁉︎」
マユリは水際へ駆け出した。
「説明しろ、市丸!」
「なつみちゃん、女の子に戻ってまったかもしれへん。サウナで、男になる薬の残りの効果が流されてしまったんやないかって、涅さんは言うんやけど」
「ウソだろッ⁉︎」
「水飛沫が上がる音は確かに聞いた。アイツが飛び込んだだけかと思ったが、違ったのか」
「ねぇ、暴れ回るってどういうこと⁉︎」
「急に構造が変わってまうから、激痛に襲われるかもて」
とんでもないことが起きているかもしれないと、裸の男たちは息を呑む。
そこでイヅルが声を上げた。
「あ!」
「おったんか!」
「いえ、あれ」
否定はしたが、下流の方へ指を差した。
「あそこに落ちてるの、木之本くんの帽子じゃ…」
「なんじゃと⁉︎」
一同がそのポイントへ目を凝らす。彼らがいるところから、十数メートル離れた岸に、確かにそれは打ち上げられていた。
「あかん」
ここは広い川だ。一見流れは穏やかだが、深いところではそうではないかもしれない。そしてなつみの身長だ。すぐに足はつかなくなる。
皆、心を鎮めてなつみの霊圧を探し始める。意識がどんどん川を下ってしまう。大半に焦りが出るところ、微かな波紋が生まれた。
トクン……
「おった」
ザバンッ‼︎‼︎
遥か川下で何かが飛び込んだ。京楽である。マユリもそちらへ走っていた。市丸も同時に反応したのだが、動こうとした足をぐっと止め、みんなに指示を出した。
「ありったけタオル持ってきて!早く!」
「っはい!」
「伊江村、市丸と救助に向かってくれ」
「はい!」
「他はここにいよう」
眼鏡とコートを取りに行ってから、伊江村は荻堂に頼んだ。
「卯ノ花隊長に連絡してくれ」
「了解」
「行きましょう、市丸隊長、っていない⁉︎お待ちをーッ‼︎💨」
川の中。ぼやけた視界を素早く見回し、力無く沈みいくなつみの姿を確認した。
(なつみちゃん‼︎)
ダンッと水を蹴り、ぐっと距離を縮めていったのだが…。この空間に既視感。はたと泳ぎをやめる。
薄暗く、冷たい水の中に、想いを寄せるあの者と。
そのとき、声が不思議と響き渡った。
「あっちは遊び、こっちは別物。見誤るんじゃないよ、総蔵佐」
戦いなどと物騒なことを、本当はしたくはない。責任だって負いたくない。だが、そうも言っていられない世の中。ならば自分はとことん遊ぼう。自分との遊びに付き合いきれないつまらない者は、自分の前で生きている価値は無い。斬って捨てて、また新しいおもちゃが来るのを待とう。それが連れの望みとあらば。それが、このやるかやられるかの世界を過ごす、自分らしい唯一の方法ならば。そうして奪ってきた命。任務だ、戯れだと理由を付けて息の根を止めてきた。この景色の中で。呪いか…。
しかし今は救うとき。京楽は声に導かれ、再び突き進み、なつみの腕を掴んだ。引き寄せて、しっかりと抱きしめる。市丸の言った通り、その身体は元の姿に返っていた。
水面を見上げ、陽の光の揺らめきを浴びる。
(帰るよ、キミと一緒に。ボクはキミと帰るんだ)
ふたりが夢見た未来へ。
「何だとォッ‼︎⁉︎どォいうことだネ、これは‼︎‼︎」
不意にマユリからの着信があり、隊首室にて着拒したい市丸。
「もぉ…、何やの?出たないなぁ」
しかし、そういうわけにもいかないので、伝令神機の通話ボタンをぽちり。
「はい」
「遅いヨ‼︎‼︎‼︎私を待たせるんじゃァない‼︎‼︎」
「どないしたんですかー…」
腕いっぱいに伸ばした伝令神機から、罵声が飛んでくる。
「なつみは川で一体何をしているんだネ‼︎‼︎伝令神機に全く出ないから、仕方なしにお前にかけたんだヨ‼︎教え給え‼︎」
「えっ、はぁ?なつみちゃんなら、男性死神協会のみんなとサウナ入ってるはずやけど」
「サウナだとォーッ⁉️💢」
また腕いっぱい伸ばした。耳が保たない。
「とっとと連れて帰るヨ‼︎‼︎」
プツッ‼︎‼︎💢ツーツーツー……
「切れた。はぁ…、只事やないってわけやな」
市丸のお出かけも決定した。
技術開発局からサウナ会場へのルートを駆け、マユリに追いつく市丸。
「何で帰らせなあかんの?」並走しながら話しかけた。「みんなでデトックスや〜言うて、楽しみにしとったから、邪魔したないねんけど」
「それが問題なんだヨ。サウナに入れば血行が良くなり老廃物が出て、さぞ健康的だとでも言うんだろう。そんなもの微々たる効果でしかないのにだ」
市丸の脳内でハテナが浮かぶ。
「何があかんの?」
「なつみが、その効果の噂を常識として捉えている場合、現実となってしまうんじゃぁないかネ。そうだろう」
「…、かもしれへんけど、なつみちゃんが始解せんと、そんなことには」
「あの鳥に我々の常識は通用しないヨ。なつみの引き寄せる幸運でわかるだろう。抜刀なんぞ必要事項ではないんだヨ」
「ほ、ほな、老廃物を出すんがあかん理由は?」
「身体は、当然のことだが、健康な状態になりたがるものだヨ。今、あの子の体内にある毒素には、私が与えた男体化させる薬の成分が含まれていることだろうネ」
「嘘やん…」
「私も疑いたいが、数値が示している。直ちに帰らせ、安静にすれば、もって半日だ。だが何が原因か、一時的な血行の急増が数回見られるんだヨ」
これだけの説明だが、かなり明確に状況の悪さが理解できた。
「このまま入り続ければ、1時間以内に元の女の身体に戻ってしまうヨ」
「あかん!なつみちゃん、たぶん裸や!」
「そんなものは大したことじゃないヨ!私が懸念しているのは、痛みだ。変身の最終段階で、あの子は激痛のあまり気絶してしまっている。もしも、なつみが女体化に気付き、あの時の痛みに再び襲われると予測すれば、現実にそうなってしまう可能性があるんだヨ。処置をしなければ、皆の前で悶え苦しむことになる。そんな事態は、確実に避けたいところだヨ」
「怖いこと言わんといて」
「ならば急ぐヨ。あの子の心と身体はバラバラだ。ここぞとばかりに、復元へ舵を切るに違いない」
サウナ、川、外気浴のサーキットを3セット終え、4周目に突入していた。なつみは京楽の肉体美を視界に入れてたまるかと、高温チームに参入していたのだが、徐々にキツくなってきた。
「ぽえ〜」
「大丈夫か、木之本。のぼせてきたんか」
「ちょっとフラついてるな」
「無理することないからな。ツラかったら、もう出て良いぞ」
「脱水してますから、水分をしっかり摂ってくださいね」
「ふいー…、すいません。お言葉に甘えて、お先です」
ぽてんぽてんとテントの外へ出ていった。
会場に到着した2人。マユリは高温、市丸は低温のサウナテントへ突入した。
「なつみ‼︎‼︎」「なつみちゃん‼︎‼︎」
「ブォアッ⁉︎く、涅隊長⁉︎」
「どうしたんですか⁉︎」
「市丸隊長⁉︎」
「何で京楽さんがおんの⁉︎ったく、だからやな‼︎」
「どういうことだ」
「木之本、いないんですか?さっき外出てったばっかりですけど」
「いないヨ‼︎」
「のぼせたっぽいから、その辺で涼んでるはずだろーが。椅子にいねぇのか?」
「木之本くんに何か起きたってことですか?」
「脱衣所にもいないぞ!」
「何でボクがいるといけないのさ」
「なつみちゃんの心臓がバクバクしてまうからや‼︎‼︎」
「暴れ回る音や、悲鳴はしなかったのかネ⁉︎」
「してません。物音いうたら、川の音くらいじゃろ。のォ」
「何だとォッ⁉︎」
マユリは水際へ駆け出した。
「説明しろ、市丸!」
「なつみちゃん、女の子に戻ってまったかもしれへん。サウナで、男になる薬の残りの効果が流されてしまったんやないかって、涅さんは言うんやけど」
「ウソだろッ⁉︎」
「水飛沫が上がる音は確かに聞いた。アイツが飛び込んだだけかと思ったが、違ったのか」
「ねぇ、暴れ回るってどういうこと⁉︎」
「急に構造が変わってまうから、激痛に襲われるかもて」
とんでもないことが起きているかもしれないと、裸の男たちは息を呑む。
そこでイヅルが声を上げた。
「あ!」
「おったんか!」
「いえ、あれ」
否定はしたが、下流の方へ指を差した。
「あそこに落ちてるの、木之本くんの帽子じゃ…」
「なんじゃと⁉︎」
一同がそのポイントへ目を凝らす。彼らがいるところから、十数メートル離れた岸に、確かにそれは打ち上げられていた。
「あかん」
ここは広い川だ。一見流れは穏やかだが、深いところではそうではないかもしれない。そしてなつみの身長だ。すぐに足はつかなくなる。
皆、心を鎮めてなつみの霊圧を探し始める。意識がどんどん川を下ってしまう。大半に焦りが出るところ、微かな波紋が生まれた。
トクン……
「おった」
ザバンッ‼︎‼︎
遥か川下で何かが飛び込んだ。京楽である。マユリもそちらへ走っていた。市丸も同時に反応したのだが、動こうとした足をぐっと止め、みんなに指示を出した。
「ありったけタオル持ってきて!早く!」
「っはい!」
「伊江村、市丸と救助に向かってくれ」
「はい!」
「他はここにいよう」
眼鏡とコートを取りに行ってから、伊江村は荻堂に頼んだ。
「卯ノ花隊長に連絡してくれ」
「了解」
「行きましょう、市丸隊長、っていない⁉︎お待ちをーッ‼︎💨」
川の中。ぼやけた視界を素早く見回し、力無く沈みいくなつみの姿を確認した。
(なつみちゃん‼︎)
ダンッと水を蹴り、ぐっと距離を縮めていったのだが…。この空間に既視感。はたと泳ぎをやめる。
薄暗く、冷たい水の中に、想いを寄せるあの者と。
そのとき、声が不思議と響き渡った。
「あっちは遊び、こっちは別物。見誤るんじゃないよ、総蔵佐」
戦いなどと物騒なことを、本当はしたくはない。責任だって負いたくない。だが、そうも言っていられない世の中。ならば自分はとことん遊ぼう。自分との遊びに付き合いきれないつまらない者は、自分の前で生きている価値は無い。斬って捨てて、また新しいおもちゃが来るのを待とう。それが連れの望みとあらば。それが、このやるかやられるかの世界を過ごす、自分らしい唯一の方法ならば。そうして奪ってきた命。任務だ、戯れだと理由を付けて息の根を止めてきた。この景色の中で。呪いか…。
しかし今は救うとき。京楽は声に導かれ、再び突き進み、なつみの腕を掴んだ。引き寄せて、しっかりと抱きしめる。市丸の言った通り、その身体は元の姿に返っていた。
水面を見上げ、陽の光の揺らめきを浴びる。
(帰るよ、キミと一緒に。ボクはキミと帰るんだ)
ふたりが夢見た未来へ。