第七章
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ちょっと拗ねてる市丸とお風呂に入った後、いつものように彼の隣で布団に潜った。幸せそうな寝顔をして。
「ボクのなつみちゃんの時間が、もうすぐ終わってまう……」
薬をやめたなつみの頬は、ぷくっとなりだしていた。そこに。
ちゅ……
「んふふ」
気付くと、見覚えのある夜、庭、背の高い、髪の短い、死覇装の男、八の字の眉、イタズラな目、悪いことしちゃいそうな手。何故自分はこんなに小さい?小さい拳を握ってる。
「ん…?」
「あれ…」
目の前の男も動きを止めて、構えを解く。
「京楽隊長?」
「なつみちゃん?」
いつもの笠と桃色の着物、長い髪。今の目線の高さ、死覇装、緑のマント、短い髪、低い声。
(ちゅんちゅん…)
(ジョンスミス)
新人隊士と幼女の死神ごっこ。
「遅ぇなァ、春水。すっかり大人になっちまったじゃねぇか」
部屋の方から声。
「気付いていなくても、充分お世話できていたじゃないですか。怒らないであげて」
雲が晴れて、月明かりがすーっと部屋の中を照らしていく。優しい2人の笑顔。
「兄貴、義姉さん」
そう言った方の袖をぎゅっと掴む子。
「お、お、お…」
「さっきたくさん話したから、夢に見ちゃってるのかな。ね」
「おばけェェェーーーッ‼️‼️😱」
いつものように絶叫して倒れていく。
「わあぁあ💦」
掴まれてるので、道連れで倒れてしまう。
「なつみちゃん。もう、気絶しちゃったの?せっかくの再会なのに、もったいないよ〜😅」
倒れたジョンスミスに、お化けになったおじちゃんが近寄っていく。
「そいつを貸せ。部屋に転がしておく」
「うん…」
よいしょと、小さなジョンスミスを抱っこするおじちゃん。
「重くなったなぁ」
「それはそうですよ。大人なんですから」
畳の上にころんと寝かせた。
弟もそちらに上がろうと身体を起こしたが。
「お前は来るな。1万年早ぇ」
「え」
奥さんはクスクスと笑った。
「コイツは特別だから、こっちやそっちでも良いが、お前はフツーだからダメなんだ」
「フツーとは何だよ!隊長だよ!」
ブーブーと文句を垂らすものの、ここは言うことを聞くのが賢明なのだろう。下は土だが直に座ろう。
「なんかボク、しょっ引かれた感じ?」
「おう!コイツが男になったくらいでキレたことと、七緒に対するふしだらな態度の咎でな!」
兄奉行の目は誤魔化せない。
「確かに、なつみちゃんには謝ったから良かったけど、七緒への言動は見過ごせませんね」
「だろ!」
「しょーがないじゃーん。七緒ちゃんに勘付かれないようにするためなんだからさ。多少は目ぇつぶってよ〜」
そんな言い方に、お奉行はお怒りだった。
「てめぇ、どうせ夢の中の幻がほざいてる戯言程度にしか思ってねぇだろ!俺らの七緒への愛を舐めんじゃねぇ!ずっとお前に憑いてアイツの成長見てきたんだぞ!💢」
プンスカプンスカ
「ゲッ、何でボクなのさ!取り憑くなら七緒ちゃんにじゃないの。やめてー。なんだか恥ずかしいよ〜」
「💢」
ボカッ👊💥
「イデッ😣」
弟の脳天に拳骨を落としてやった。
「お前が俺らの簪付けてっから、そこから見れてんだよ」
「ふ〜ん」
「信じてねぇな😑」
「うん😊」
ドカッ👊💥
雪だるまなたんこぶがモコモコ。弟はダウンした⛄️
「喧嘩はいけませんよ。朝目覚めたら、今見ていることは、ほとんど忘れてしまうでしょう。信じられなくても、大した差ではありませんよ」
突っ伏したまま「そうだそうだ〜✊」と無言で腕を掲げてフリフリするちゅんちゅん。
「春水さん、忘れるついでに、小耳に挟んでおきたいことがあるんです」
むくっと起き上がる。
「何だい?」
「あのね、私たち、その簪から七緒を見守っていますが、なつみちゃんの呼びかけにも応えているんですよ」
「呼びかけ?お化け怖いのに?」
「ええ」
困ったわ、なんて笑い方だ。
「そいつのヒーローマントにも宿ってんだ。俺たちが、虚の昇華を手伝ってやってる。他の魂魄もいてな。死んじまったってのに、まだ死神の仕事が続けられてるようで、楽しいもんだぜ」
「兄貴たちが力貸してるんだ!そりゃ、なつみちゃんの思惑がうまくいくはずだね」
「なつみちゃんのお願いだから、みんな聞きたくなっちゃうの。この子の世界、大好きなのよ」
「そうなんだ。なつみちゃんはこのこと知ってるの?」
「知らねぇな」
「教えてあげて良い?喜ぶよ、きっと」
「お前が覚えてたらな」
覚えてるよ、なんて思って過ぎた瞬間、もう忘れているのが意識の不思議。
おじちゃんはゆさゆさとなつみを揺らした。
「おぉい。いつまでそうしてるつもりだ。起きろよな」
ゆさゆさ。ぱち、…、ぱちぱちぱち。
「ふぁ〜🥱」
「寝てたんかい!寝てるけども!寝てたんかい!」
身体を起こして座り、首をゆっくり回して周囲を確認。大人が3人。
「わぁぁぁぁぁぁぁあーーーッ‼️」
子供の絶叫に、落ち着いて耳を塞ぐ対応を見せる大人が3人。
「あぁぁぁぁぁーーー…」
注目する視線が痛くて、声をフェードアウトさせていく。
「む☹️」
「落ち着いたか?」
「むーむー☹️」
「何だよ💧」
「お化けなのに、イタズラしないの?」
「しねぇーよ。お前、イタズラが怖くてお化け嫌いだったのか?」
「うん😊」
コツン👊
「イテッ😣」
しょうもない理由だったので、思わず手が出てしまった。
「ほらぁー、いじめるじゃーん😫」
「うるせぇ。虚に襲われる方がよっぽど恐ぇだろうが」
「虚は友だち!敵じゃなーい!」
「お化けは?」
「心臓に悪い。美沙ちゃんと、現世のお化け屋敷に行ったことがあるんだ」
「そこで漏らしたか」
「セーフだ。1滴だもん」
「アウトだ、バカ」
「セーフ‼️チョピ漏れで耐えたんだもん‼️褒めろよ‼️」
そこで項垂れてしまった。
「てか、お化けになるなよ、おじちゃん。嫌いになっちゃうよ‼︎」
床について握る両手に、ポタポタと涙が落ちてきた。
「うわぁぁぁんッ‼︎」
大粒の涙だ。
「悪かった」
声を上げてわんわんと子供のように泣くなつみを、おじちゃんは撫でてくれた。その手が優しくて、すごく求めていたものだったから、なつみは彼に抱きついて、その存在が確かなものか探しにいった。
「おじちゃぁん」
力強くしがみついてくるなつみに応えるよう、おじちゃんもそっと彼女の背中に腕を回した。
「これでも耐えた方なんだぜ。嫌うのは、やめてくれよな」
「そんなのわかってるもーん‼︎‼︎」
それでも小さな背中。ぽんぽんとなだめる。
なつみは、それを見る2人に背を向けていた。
「あーあー、よく義姉さんの前でやるよ」
弟はこちら側からご感想。
「止めないの?」
「止めたいのは、あなたの方でしょう?」
「ん、まさか。ボクの恋愛対象はやっぱり女の子だもん。あの子はもう違う。妬いたりするもんか」
「あなたにそう見えるなら、私も同じです。妬いたりしませんよ。だって、あの子はあの人の息子ですから。あの絆を邪魔するなんて、私にはできません」
やっと会えた憧れの人。夢の中の幻だとしても、本当に嬉しかった。嬉しくて嬉しくて、どうにも涙が止まらなかった。なので…。
布団の中で市丸にくっついて、寝ながら大泣きしていた。
「わぁああ、あ。」
自分の声に驚いたのと、鼻水で息苦しくなったのとで、起きてしまった。
「起きたん?どないしたんや。怖い夢でも見とったん?」
おじちゃんではなく、お兄ちゃんの顔が目に映った。
現実に気付いて、なつみは寝巻きの袖で涙を拭いた。市丸がティッシュを取ってくれて、それで鼻をかんだ。
「すいません。うるさくして」
「ええんよ。ちょっとびっくりしたけど。大丈夫なん?」
「はい。夢の中で、おじちゃんと会えたんです。嬉しくって、つい。はぁ…、もったいないことした。起きちゃうなんて。本物じゃなくても、もっと会ってたかったな。ぼくの今までを、おじちゃんに話してあげたかったのに」
ベッドに並んで座っているふたり。
「本物やと思うで。会いに来てくれたんや、きっと。総隊長さんとこにも行ったらしいし。キミの成長、ちゃーんと見てくれてるんやって。京楽さんとも仲直りできたから、おじちゃんも嬉しいて、伝えたかったんとちゃう?」
そう言われると、そう思えてきて、にんまりするなつみ。嘘だとしても、市丸の優しさがありがたい。
「さ、泣き止んだんなら、もう一回寝ようや。まだまだ夜中やで」
「はい😊」
もぞもぞと布団の中に戻る。
「おじちゃんに会えんくて、泣くのはやめてや」
「ふふふ、会えなくても、市丸隊長がいてくれますから、さみしくないです。大丈夫です」
「あんまり強がり言うと、…、おじちゃんのが泣いてまうかもな(笑)」
くすくすっと笑い合う市丸となつみ。
「おやすみ、なつみちゃん。2回目やけど」
「おやすみなさい。2回目ですけど」
くすくすっ。
なつみが消えた世界。
「起きちまったな」
腕の中の温もりは、外に帰っていった。
庭に座る弟と話すため、兄は部屋の中ほどから縁側へ戻る。
「許してもらえて良かったね、兄貴」
「ああ。お前もな」
なつみの姿があろうと無かろうと、みんなの心はもうなつみの世界にあった。だから、どうしたってなつみの良いと思う方向に舵は切られていく。京楽兄弟の悩みも晴れ晴れと。
「お前たちが、俺たちを信じてくれているおかげで、こうして記憶が生き残って、想いが形になれてんだ。果報者だな」
「ええ、とっても」
夫婦は微笑む。
「やっぱり、さっきたくさんあの子と話したから、この夢を見られているんだね」
その意見にはムスッと。
「だから、時間かけ過ぎだっつってんだよ!無駄に探し回りやがって。お前がサボったがために、アイツの世話に隊長ら全員が巻き込まれることになったんだぞ!」
お説教再びで、猫背になってしまう。
「サボってたんじゃないもん。それに、ボクが見るより、あの人たちが指導した方が、いろんなことをなつみちゃんは学べるって。結果オーライだよ」
「俺はお前に頼んだんだ!」
ぷんすかぷんすかと、煙が立ちそうな兄。
「もうその話はこれでお終いにしましょう。済んでしまったことです。言っても仕方ありませんよ。ね、春水さん」
「うんうん😊」
「甘やかすなよ。子供の1人や2人面倒見れねぇで、どうすんだ。本当の子供ができたとき、こんな風にヘラヘラされたら、たまったもんじゃないぜ。カミさんが迷惑だ」
「あら、大したお父様だこと」
「おう❗️😤」
「あっはは。ボクには当分無い話さ😅」
笑ってそんなことを簡単に言うものだから、兄は弟の頬を思い切り両手で引っ張ってやった。
「グラァッ💢」
「やめて〜💦」
元いた場所に戻る。
「俺が一生を過ごしてわかった大事なことを、お前に教えてやる。忘れねぇように、心に刻め‼️」
「何さぁ」
痛いはずはないが、気分でつねられた頬を摩る弟。
「人にゃそれぞれの感覚があっから、善悪っつー道徳をひとつの考えとして全員に共有することは不可能だ!だから、良かれと思ってしたことが、かえって迷惑だったりすることもある。周りの大多数が信じてるもんを、自分だけが疑ってることもある。そういうのを、お前は悪い事だと思うか?起こるのは仕方ないが、なるべく避けたいぐらいのもんだろ。全否定までいくなんざ、極端にも程がある。全員の自由の尊重を忘れちゃならねぇんだよ」
「うんうん。大事大事。自由と正義のために、戦おー✊」
ポカンッ💥
「いちいち叩くなよ😫」
「戦う必要は無ぇんだよ。だからお前はケンカになるんだ」
「そっちが叩くからじゃん❗️」
「てめぇの視点から見えるだけの角度のみで判断すんなよ。話し合えば、大概は分かり合えるもんだ」
「先に手ぇ出すの、そっち!👆」
「うっせ‼️」
「😣」
「男同士、兄弟同士は拳で語り合って良いんだ!」
「😟」
あぁ理不尽かな…。あなたのそれは語り合いではなく、説教也。反撃したら、やり返しが必至。あぁ終わりなきケンカよ。
「人が生きる意味はな、他人に自分が存在したことをありがたいと思ってもらう、世界への貢献ってやつだ。その感謝が1人に集中して、そこで終わるのは胸糞悪いが、誰かの『ありがとう』が相手に向けられ、その誰かが他の誰かの役に立って、感謝の連鎖がどこまでも続けば、敵なんかどこにもいやしねぇって見えるだろ。てめぇなんかいなきゃ良かったと思われる最期なんか、迎えたかねぇだろ?
さっき墓の前で、ジョンスミスに『道を示してくれて、ありがとう』って言われたよ。自分の運命を呪わずに済んで、すげぇ嬉しいってよ。アイツの幸せが、俺にもそうだった。
七緒を遺し、コイツも悲しませちまった俺は、とんでもないろくでなしのはずなんだがな、あのチビの言葉で救われた。俺は間違ってなかった。俺の生涯に価値が与えられ、次の世代に時間を繋ぐことができたんだ。
お前も、お前が生を享けたこと、誰かに感謝される生き方しろよ。
あ、あとな、命懸けで守ったり守られたりってのが無くて良いように、誰もが賢く強くなるよう、お前が手本になってみんなを導けな。それが山じいの次に相応しい総隊長の在り方だ!俺の理想だ!わかったか!😤」
(そんなぁ〜😅)
「返事‼️」
「はぁ〜い」
また殴られそうだったため、弟はすかさず両手でガードした。サッ。
「ケッ」
その反応に手を控える兄。
「兄貴の言いたいことわかったよ。でも、総隊長はヤダね。ボクじゃない。やるなら浮竹だよ。アイツの方が性に合ってる。みんなだって賛成するさ。ボクのやり方は不愉快を招くんだもん」
こんな気分の時に慰めてくれるのは、優しい女性の声が良い。
「春水さん、人は許し合えるものですよ。亀裂だって、助け合えばすぐに修復できます。嫌われることを恐れないで。なつみちゃんがあなたへ親愛の眼差しを送れるなら、あなたが悪者になることはない証になるでしょう。大きな過ちを経たあなたたちなら、何が起きても慎重になれるから、大丈夫。絶対、大丈夫。七緒も必ず、あなたの味方でいますし。ひとりで背負い過ぎず、あなたらしくこなしてください。いろいろ託した私が言えることではないかもしれませんが」
申し訳なさそうな笑みだった。
「そんなこと言わないで。七緒ちゃんからお母さんを奪ったのは、ボクのせいでもあるんだ。ちゃんと償わせて、義姉さんと七緒ちゃんに。それがとりあえずの、今のボクの生きる理由だな。それで良いかい?兄貴」
「不満だな」
「あっそ😅」
これ以上ここにいると、兄の機嫌を損ねるばかりと判断した弟は、意識を別の方へ移すことにした。
「なつみちゃんは帰ってこないしね」
「だから不満だ」
「ボクのなつみちゃんの時間が、もうすぐ終わってまう……」
薬をやめたなつみの頬は、ぷくっとなりだしていた。そこに。
ちゅ……
「んふふ」
気付くと、見覚えのある夜、庭、背の高い、髪の短い、死覇装の男、八の字の眉、イタズラな目、悪いことしちゃいそうな手。何故自分はこんなに小さい?小さい拳を握ってる。
「ん…?」
「あれ…」
目の前の男も動きを止めて、構えを解く。
「京楽隊長?」
「なつみちゃん?」
いつもの笠と桃色の着物、長い髪。今の目線の高さ、死覇装、緑のマント、短い髪、低い声。
(ちゅんちゅん…)
(ジョンスミス)
新人隊士と幼女の死神ごっこ。
「遅ぇなァ、春水。すっかり大人になっちまったじゃねぇか」
部屋の方から声。
「気付いていなくても、充分お世話できていたじゃないですか。怒らないであげて」
雲が晴れて、月明かりがすーっと部屋の中を照らしていく。優しい2人の笑顔。
「兄貴、義姉さん」
そう言った方の袖をぎゅっと掴む子。
「お、お、お…」
「さっきたくさん話したから、夢に見ちゃってるのかな。ね」
「おばけェェェーーーッ‼️‼️😱」
いつものように絶叫して倒れていく。
「わあぁあ💦」
掴まれてるので、道連れで倒れてしまう。
「なつみちゃん。もう、気絶しちゃったの?せっかくの再会なのに、もったいないよ〜😅」
倒れたジョンスミスに、お化けになったおじちゃんが近寄っていく。
「そいつを貸せ。部屋に転がしておく」
「うん…」
よいしょと、小さなジョンスミスを抱っこするおじちゃん。
「重くなったなぁ」
「それはそうですよ。大人なんですから」
畳の上にころんと寝かせた。
弟もそちらに上がろうと身体を起こしたが。
「お前は来るな。1万年早ぇ」
「え」
奥さんはクスクスと笑った。
「コイツは特別だから、こっちやそっちでも良いが、お前はフツーだからダメなんだ」
「フツーとは何だよ!隊長だよ!」
ブーブーと文句を垂らすものの、ここは言うことを聞くのが賢明なのだろう。下は土だが直に座ろう。
「なんかボク、しょっ引かれた感じ?」
「おう!コイツが男になったくらいでキレたことと、七緒に対するふしだらな態度の咎でな!」
兄奉行の目は誤魔化せない。
「確かに、なつみちゃんには謝ったから良かったけど、七緒への言動は見過ごせませんね」
「だろ!」
「しょーがないじゃーん。七緒ちゃんに勘付かれないようにするためなんだからさ。多少は目ぇつぶってよ〜」
そんな言い方に、お奉行はお怒りだった。
「てめぇ、どうせ夢の中の幻がほざいてる戯言程度にしか思ってねぇだろ!俺らの七緒への愛を舐めんじゃねぇ!ずっとお前に憑いてアイツの成長見てきたんだぞ!💢」
プンスカプンスカ
「ゲッ、何でボクなのさ!取り憑くなら七緒ちゃんにじゃないの。やめてー。なんだか恥ずかしいよ〜」
「💢」
ボカッ👊💥
「イデッ😣」
弟の脳天に拳骨を落としてやった。
「お前が俺らの簪付けてっから、そこから見れてんだよ」
「ふ〜ん」
「信じてねぇな😑」
「うん😊」
ドカッ👊💥
雪だるまなたんこぶがモコモコ。弟はダウンした⛄️
「喧嘩はいけませんよ。朝目覚めたら、今見ていることは、ほとんど忘れてしまうでしょう。信じられなくても、大した差ではありませんよ」
突っ伏したまま「そうだそうだ〜✊」と無言で腕を掲げてフリフリするちゅんちゅん。
「春水さん、忘れるついでに、小耳に挟んでおきたいことがあるんです」
むくっと起き上がる。
「何だい?」
「あのね、私たち、その簪から七緒を見守っていますが、なつみちゃんの呼びかけにも応えているんですよ」
「呼びかけ?お化け怖いのに?」
「ええ」
困ったわ、なんて笑い方だ。
「そいつのヒーローマントにも宿ってんだ。俺たちが、虚の昇華を手伝ってやってる。他の魂魄もいてな。死んじまったってのに、まだ死神の仕事が続けられてるようで、楽しいもんだぜ」
「兄貴たちが力貸してるんだ!そりゃ、なつみちゃんの思惑がうまくいくはずだね」
「なつみちゃんのお願いだから、みんな聞きたくなっちゃうの。この子の世界、大好きなのよ」
「そうなんだ。なつみちゃんはこのこと知ってるの?」
「知らねぇな」
「教えてあげて良い?喜ぶよ、きっと」
「お前が覚えてたらな」
覚えてるよ、なんて思って過ぎた瞬間、もう忘れているのが意識の不思議。
おじちゃんはゆさゆさとなつみを揺らした。
「おぉい。いつまでそうしてるつもりだ。起きろよな」
ゆさゆさ。ぱち、…、ぱちぱちぱち。
「ふぁ〜🥱」
「寝てたんかい!寝てるけども!寝てたんかい!」
身体を起こして座り、首をゆっくり回して周囲を確認。大人が3人。
「わぁぁぁぁぁぁぁあーーーッ‼️」
子供の絶叫に、落ち着いて耳を塞ぐ対応を見せる大人が3人。
「あぁぁぁぁぁーーー…」
注目する視線が痛くて、声をフェードアウトさせていく。
「む☹️」
「落ち着いたか?」
「むーむー☹️」
「何だよ💧」
「お化けなのに、イタズラしないの?」
「しねぇーよ。お前、イタズラが怖くてお化け嫌いだったのか?」
「うん😊」
コツン👊
「イテッ😣」
しょうもない理由だったので、思わず手が出てしまった。
「ほらぁー、いじめるじゃーん😫」
「うるせぇ。虚に襲われる方がよっぽど恐ぇだろうが」
「虚は友だち!敵じゃなーい!」
「お化けは?」
「心臓に悪い。美沙ちゃんと、現世のお化け屋敷に行ったことがあるんだ」
「そこで漏らしたか」
「セーフだ。1滴だもん」
「アウトだ、バカ」
「セーフ‼️チョピ漏れで耐えたんだもん‼️褒めろよ‼️」
そこで項垂れてしまった。
「てか、お化けになるなよ、おじちゃん。嫌いになっちゃうよ‼︎」
床について握る両手に、ポタポタと涙が落ちてきた。
「うわぁぁぁんッ‼︎」
大粒の涙だ。
「悪かった」
声を上げてわんわんと子供のように泣くなつみを、おじちゃんは撫でてくれた。その手が優しくて、すごく求めていたものだったから、なつみは彼に抱きついて、その存在が確かなものか探しにいった。
「おじちゃぁん」
力強くしがみついてくるなつみに応えるよう、おじちゃんもそっと彼女の背中に腕を回した。
「これでも耐えた方なんだぜ。嫌うのは、やめてくれよな」
「そんなのわかってるもーん‼︎‼︎」
それでも小さな背中。ぽんぽんとなだめる。
なつみは、それを見る2人に背を向けていた。
「あーあー、よく義姉さんの前でやるよ」
弟はこちら側からご感想。
「止めないの?」
「止めたいのは、あなたの方でしょう?」
「ん、まさか。ボクの恋愛対象はやっぱり女の子だもん。あの子はもう違う。妬いたりするもんか」
「あなたにそう見えるなら、私も同じです。妬いたりしませんよ。だって、あの子はあの人の息子ですから。あの絆を邪魔するなんて、私にはできません」
やっと会えた憧れの人。夢の中の幻だとしても、本当に嬉しかった。嬉しくて嬉しくて、どうにも涙が止まらなかった。なので…。
布団の中で市丸にくっついて、寝ながら大泣きしていた。
「わぁああ、あ。」
自分の声に驚いたのと、鼻水で息苦しくなったのとで、起きてしまった。
「起きたん?どないしたんや。怖い夢でも見とったん?」
おじちゃんではなく、お兄ちゃんの顔が目に映った。
現実に気付いて、なつみは寝巻きの袖で涙を拭いた。市丸がティッシュを取ってくれて、それで鼻をかんだ。
「すいません。うるさくして」
「ええんよ。ちょっとびっくりしたけど。大丈夫なん?」
「はい。夢の中で、おじちゃんと会えたんです。嬉しくって、つい。はぁ…、もったいないことした。起きちゃうなんて。本物じゃなくても、もっと会ってたかったな。ぼくの今までを、おじちゃんに話してあげたかったのに」
ベッドに並んで座っているふたり。
「本物やと思うで。会いに来てくれたんや、きっと。総隊長さんとこにも行ったらしいし。キミの成長、ちゃーんと見てくれてるんやって。京楽さんとも仲直りできたから、おじちゃんも嬉しいて、伝えたかったんとちゃう?」
そう言われると、そう思えてきて、にんまりするなつみ。嘘だとしても、市丸の優しさがありがたい。
「さ、泣き止んだんなら、もう一回寝ようや。まだまだ夜中やで」
「はい😊」
もぞもぞと布団の中に戻る。
「おじちゃんに会えんくて、泣くのはやめてや」
「ふふふ、会えなくても、市丸隊長がいてくれますから、さみしくないです。大丈夫です」
「あんまり強がり言うと、…、おじちゃんのが泣いてまうかもな(笑)」
くすくすっと笑い合う市丸となつみ。
「おやすみ、なつみちゃん。2回目やけど」
「おやすみなさい。2回目ですけど」
くすくすっ。
なつみが消えた世界。
「起きちまったな」
腕の中の温もりは、外に帰っていった。
庭に座る弟と話すため、兄は部屋の中ほどから縁側へ戻る。
「許してもらえて良かったね、兄貴」
「ああ。お前もな」
なつみの姿があろうと無かろうと、みんなの心はもうなつみの世界にあった。だから、どうしたってなつみの良いと思う方向に舵は切られていく。京楽兄弟の悩みも晴れ晴れと。
「お前たちが、俺たちを信じてくれているおかげで、こうして記憶が生き残って、想いが形になれてんだ。果報者だな」
「ええ、とっても」
夫婦は微笑む。
「やっぱり、さっきたくさんあの子と話したから、この夢を見られているんだね」
その意見にはムスッと。
「だから、時間かけ過ぎだっつってんだよ!無駄に探し回りやがって。お前がサボったがために、アイツの世話に隊長ら全員が巻き込まれることになったんだぞ!」
お説教再びで、猫背になってしまう。
「サボってたんじゃないもん。それに、ボクが見るより、あの人たちが指導した方が、いろんなことをなつみちゃんは学べるって。結果オーライだよ」
「俺はお前に頼んだんだ!」
ぷんすかぷんすかと、煙が立ちそうな兄。
「もうその話はこれでお終いにしましょう。済んでしまったことです。言っても仕方ありませんよ。ね、春水さん」
「うんうん😊」
「甘やかすなよ。子供の1人や2人面倒見れねぇで、どうすんだ。本当の子供ができたとき、こんな風にヘラヘラされたら、たまったもんじゃないぜ。カミさんが迷惑だ」
「あら、大したお父様だこと」
「おう❗️😤」
「あっはは。ボクには当分無い話さ😅」
笑ってそんなことを簡単に言うものだから、兄は弟の頬を思い切り両手で引っ張ってやった。
「グラァッ💢」
「やめて〜💦」
元いた場所に戻る。
「俺が一生を過ごしてわかった大事なことを、お前に教えてやる。忘れねぇように、心に刻め‼️」
「何さぁ」
痛いはずはないが、気分でつねられた頬を摩る弟。
「人にゃそれぞれの感覚があっから、善悪っつー道徳をひとつの考えとして全員に共有することは不可能だ!だから、良かれと思ってしたことが、かえって迷惑だったりすることもある。周りの大多数が信じてるもんを、自分だけが疑ってることもある。そういうのを、お前は悪い事だと思うか?起こるのは仕方ないが、なるべく避けたいぐらいのもんだろ。全否定までいくなんざ、極端にも程がある。全員の自由の尊重を忘れちゃならねぇんだよ」
「うんうん。大事大事。自由と正義のために、戦おー✊」
ポカンッ💥
「いちいち叩くなよ😫」
「戦う必要は無ぇんだよ。だからお前はケンカになるんだ」
「そっちが叩くからじゃん❗️」
「てめぇの視点から見えるだけの角度のみで判断すんなよ。話し合えば、大概は分かり合えるもんだ」
「先に手ぇ出すの、そっち!👆」
「うっせ‼️」
「😣」
「男同士、兄弟同士は拳で語り合って良いんだ!」
「😟」
あぁ理不尽かな…。あなたのそれは語り合いではなく、説教也。反撃したら、やり返しが必至。あぁ終わりなきケンカよ。
「人が生きる意味はな、他人に自分が存在したことをありがたいと思ってもらう、世界への貢献ってやつだ。その感謝が1人に集中して、そこで終わるのは胸糞悪いが、誰かの『ありがとう』が相手に向けられ、その誰かが他の誰かの役に立って、感謝の連鎖がどこまでも続けば、敵なんかどこにもいやしねぇって見えるだろ。てめぇなんかいなきゃ良かったと思われる最期なんか、迎えたかねぇだろ?
さっき墓の前で、ジョンスミスに『道を示してくれて、ありがとう』って言われたよ。自分の運命を呪わずに済んで、すげぇ嬉しいってよ。アイツの幸せが、俺にもそうだった。
七緒を遺し、コイツも悲しませちまった俺は、とんでもないろくでなしのはずなんだがな、あのチビの言葉で救われた。俺は間違ってなかった。俺の生涯に価値が与えられ、次の世代に時間を繋ぐことができたんだ。
お前も、お前が生を享けたこと、誰かに感謝される生き方しろよ。
あ、あとな、命懸けで守ったり守られたりってのが無くて良いように、誰もが賢く強くなるよう、お前が手本になってみんなを導けな。それが山じいの次に相応しい総隊長の在り方だ!俺の理想だ!わかったか!😤」
(そんなぁ〜😅)
「返事‼️」
「はぁ〜い」
また殴られそうだったため、弟はすかさず両手でガードした。サッ。
「ケッ」
その反応に手を控える兄。
「兄貴の言いたいことわかったよ。でも、総隊長はヤダね。ボクじゃない。やるなら浮竹だよ。アイツの方が性に合ってる。みんなだって賛成するさ。ボクのやり方は不愉快を招くんだもん」
こんな気分の時に慰めてくれるのは、優しい女性の声が良い。
「春水さん、人は許し合えるものですよ。亀裂だって、助け合えばすぐに修復できます。嫌われることを恐れないで。なつみちゃんがあなたへ親愛の眼差しを送れるなら、あなたが悪者になることはない証になるでしょう。大きな過ちを経たあなたたちなら、何が起きても慎重になれるから、大丈夫。絶対、大丈夫。七緒も必ず、あなたの味方でいますし。ひとりで背負い過ぎず、あなたらしくこなしてください。いろいろ託した私が言えることではないかもしれませんが」
申し訳なさそうな笑みだった。
「そんなこと言わないで。七緒ちゃんからお母さんを奪ったのは、ボクのせいでもあるんだ。ちゃんと償わせて、義姉さんと七緒ちゃんに。それがとりあえずの、今のボクの生きる理由だな。それで良いかい?兄貴」
「不満だな」
「あっそ😅」
これ以上ここにいると、兄の機嫌を損ねるばかりと判断した弟は、意識を別の方へ移すことにした。
「なつみちゃんは帰ってこないしね」
「だから不満だ」