過去編
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十二番隊に浦原喜助が新たに隊長として着任してからというもの、平子はひよ里の様子を見るためにちょくちょく十二番隊に顔を出すようになった。
もちろん、五番隊四席である如月澪の内心は、穏やかであるはずもない。
「隊長、今日も……向かわれるんですか?」
回ってきた他隊からの書類を手渡しつつ、いつものように微笑みを浮かべて尋ねる。
「ああ。ひよ里の奴、曳舟隊長が居なくなってから荒れてたし、顔くらい見ておこうと思うてな」
「……書類仕事が嫌で向かわれるわけじゃ、ないですよね?」
「そ、そんなことないでっ!?」
「冗談ですよ。ですが……本当に今だけですよ?藍染副隊長に叱られても知りませんからね?」
「あ〜、ほんま澪が居てくれて助かるわ〜。ようやってくれてるし、今度メシでも奢るわ」
「ふふ、それは楽しみにしてますね」
ここ最近では、すっかり定番になったやり取りだ。
澪にとって、こうして少しでも頼られることは嬉しかった。けれど、その反面──
(……隊長ってひよ里副隊長のこと好きなんじゃ……)
ふと、そんな思いがよぎる。
隊長がわざわざ時間を割いて様子を見に行っているため、不安にならないはずがない。
“男女の仲じゃない” “幼馴染らしい” と聞いてはいるが、だからといって嫉妬を抑えられるほど、澪の想いは軽くない。
「向こうももう落ち着いてきたし、明日からはちゃんと仕事戻るから、安心しいや」
仕事の負担を気にしたのか、そんなふうに言う平子に、澪は慌てて微笑み直す。
「大丈夫です。隊長が一日、二日居なくたって、五番隊の方々は優秀ですから。……遠慮なく、任せてください」
「おいおい、それじゃあ俺がいてもいなくても変わらん、って言うてるように聞こえるんやけど」
「そんなことないですよ。……現に、私は隊長が五番隊にいるから、この隊に入ったんですから」
思わず、澪の言葉に平子の動きが止まる。
「……そんなん言われたら、照れるやろ」
照れ隠しのように視線を外しながら、平子は苦笑する。
目のにいる部下は、今日も変わらず穏やかな微笑みを浮かべていた。
(改めて見ても、ほんま可愛いな……見た目も中身も、俺の好みどストライクやし……こんなん、好きにならん方が無理あるやろ)
実際、彼女が入隊してから四席に就くまでの働きぶり、気遣い、部下への接し方──どれも見てきた。
だからこそ、惹かれない方が可笑しいと、これで惚れなかったらそいつは不能だと平子は思ってる。
***
◆十二番隊・隊舎
「ひよ里さ〜ん、真子くんが来てやったで〜」
「なんやそのアホ面はーッ!!」
ドスッ!!
容赦のない蹴りが、平子の顔面に炸裂した。
もはや、十二番隊では見慣れた光景である。最初のうちは心配していた隊士たちも、今では素通りしていく。
「ちょ、なんやねん毎回! 心配して見に来てやってるだけやのに!」
「誰が頼んだっちゅーねん! 心配してやなくて、ただサボりたいだけやろ!このバケ!」
「誰がハゲや!! ちゅーか、もうちょっとお淑やかに出来んのか?うちの四席を見習えや! 」
「な〜にがお淑やかに〜やっ!!知らんわ!このハゲ!!」
「まぁまぁ、おふたりとも……そのへんで」
割って入ったのは、元隠密機動であり新しく十二番隊隊長となった浦原喜助だった。
「平子さんも、ひよ里さんのことを心配して来てるんスよ。ねぇ?」
「……まぁ、心配する必要もなくなってきたけどな。……あんたのとこでも相変わらずやし」
「けど、あまり頻繁に来てると、副隊長さんや如月さんに怒られちゃいますよ?」
その言葉に、平子の肩が一瞬ピクリと動く。
最近、藍染副隊長は外任務で隊舎を空けることが多い。その分、仕事を任せている澪に、既に一度釘を刺されていた。
「……惣右介に怒られるんは、避けたいなあ……」
「その言い方だと、如月さんになら怒られても構わないって聞こえますけどね〜?」
平子が返す前に──
「さっきからその“如月”って誰やねん!うちは話に混ぜてもらえんのかい!」
「なんや、会話に入れなくて寂しかったんかいな?」
「違うわボケ!!」
「まぁまぁ。如月さんは、平子さんのとこの四席の方っスよ」
浦原がフォローするように説明する。
「この前書類を届けに来てくれたんですよ。それがもう、すごく綺麗な方でして……ちょっとドキドキしちゃいました」
にこやかに照れる浦原を見た瞬間──
「なに鼻の下伸ばしてんねん!!」
鋭い蹴りが、今度は浦原に飛ぶ。
実際、澪は他の隊士に任せられるはずの回付を、わざわざ自分で行っていた。真面目ゆえの行動だったが、他の男に下心で見られるのは平子にとって面白くない。
(……澪にはしばらく回付任せんようにしとこ)
「せやろ?めっちゃ別嬪さんやろ。……狙ったらアカンで?」
「なに言うとんねん、ハゲ」
「大丈夫ッスよ、僕はただ綺麗やな〜って思っただけで、平子さんから取ったりなんかしませんよ?」
「……そ、そっか。べ、別に俺のってわけやないけどな!?」
途端に顔を赤らめた平子に、ひよ里は冷ややかに一言。
「……うわ、何やこのハゲ、キモッ」
**********
その日の夜。
如月澪は静まり返った自室で、一人机に向かっていた。照明の淡い光のもと、彼女の手元には一冊のノートがある。表紙には丁寧な文字でこう記されていた。
──《反省ノート》──
彼女が日々書き続けているこのノートには、業務内容や鍛錬の記録もごく稀に含まれているものの、主な内容は“ある人”への個人的な記録である。
今日の行動。
今日の会話。
そして、今日の彼の反応──。
ページをめくるたび、そこには詳細な会話の記録や、平子真子の表情・視線の動き、語尾の変化までもが几帳面に書き込まれていた。
「本日、平子隊長は十二番隊に訪問。ひよ里さんの様子を見に行くと仰っていた。
→ 嫉妬心を自覚。笑顔を崩さず対応できたのは合格。
→ しかし平子隊長が実はひよ里副隊長の事がないかという不安感が残る。
→ “五番隊に入ったのは隊長がいたから”と伝えたら、少し目を逸らして照れていた。可愛い。……いや、そこじゃない。もっと自然に伝える練習をしよう。」
さらにページをめくり反省と課題を見直す
発言:「五番隊の方々は優秀ですから」
→ 隊長に安心していただきたかった
→ 「隊長がいなくても困らない」と受け取られてしまった可能性あり
→ 気遣いと敬意を、言葉の選び方にも込めること。次回は「隊長がいてこその五番隊」という想いを、きちんと伝えられる言葉を探すこと。
そこには、少し筆圧の強い文字でそう記されていた。
彼の前では、言葉ひとつ、仕草ひとつを誤ってしまいたくない。そんな強い想いが滲み出るメモだった。
ページの隅にも、筆圧が濃くなった跡とともに、「次回までに“仕事は私に任せてください”の言い方、もっと自然に」と赤字でメモが書かれている。
この《反省ノート》は、彼女が中央霊術院に在学していた頃から書き続けているものだった。
気付けばもう五十冊を優に越えている。
彼に“振り向いてもらう”ために。
彼に“理想の女だ”と思ってもらうために。
澪にとってこの時間は、反省というより、心に溢れる言葉をそっと吐き出すための、大切な習慣になっている。
ノートに向かう表情は、普段の“完璧な四席”とはまるで違う。
時に指を唇に当てて考え込み、時にページに顔を埋めて身悶えし、時に「……好きすぎてつらい……」と呟きながら机に突っ伏す。
──けれど、それでも。
「次は、もう少し自然に伝えよう。……大丈夫、今日も隊長、笑ってくれてた」
ポツリと呟いてから、彼女は今日のページを閉じる。
表紙に手を置き、まるでノートに願いを込めるように目を閉じた。
明日も隊長の“理想の女性”でいられるように。
彼の傍にいられるように。
誰にも見せることのない“恋心の記録”は、今日も静かにページが増えていく──。
──しかし澪は気付いていない、既に想い人も彼女の事が好きだと言うことに──
もちろん、五番隊四席である如月澪の内心は、穏やかであるはずもない。
「隊長、今日も……向かわれるんですか?」
回ってきた他隊からの書類を手渡しつつ、いつものように微笑みを浮かべて尋ねる。
「ああ。ひよ里の奴、曳舟隊長が居なくなってから荒れてたし、顔くらい見ておこうと思うてな」
「……書類仕事が嫌で向かわれるわけじゃ、ないですよね?」
「そ、そんなことないでっ!?」
「冗談ですよ。ですが……本当に今だけですよ?藍染副隊長に叱られても知りませんからね?」
「あ〜、ほんま澪が居てくれて助かるわ〜。ようやってくれてるし、今度メシでも奢るわ」
「ふふ、それは楽しみにしてますね」
ここ最近では、すっかり定番になったやり取りだ。
澪にとって、こうして少しでも頼られることは嬉しかった。けれど、その反面──
(……隊長ってひよ里副隊長のこと好きなんじゃ……)
ふと、そんな思いがよぎる。
隊長がわざわざ時間を割いて様子を見に行っているため、不安にならないはずがない。
“男女の仲じゃない” “幼馴染らしい” と聞いてはいるが、だからといって嫉妬を抑えられるほど、澪の想いは軽くない。
「向こうももう落ち着いてきたし、明日からはちゃんと仕事戻るから、安心しいや」
仕事の負担を気にしたのか、そんなふうに言う平子に、澪は慌てて微笑み直す。
「大丈夫です。隊長が一日、二日居なくたって、五番隊の方々は優秀ですから。……遠慮なく、任せてください」
「おいおい、それじゃあ俺がいてもいなくても変わらん、って言うてるように聞こえるんやけど」
「そんなことないですよ。……現に、私は隊長が五番隊にいるから、この隊に入ったんですから」
思わず、澪の言葉に平子の動きが止まる。
「……そんなん言われたら、照れるやろ」
照れ隠しのように視線を外しながら、平子は苦笑する。
目のにいる部下は、今日も変わらず穏やかな微笑みを浮かべていた。
(改めて見ても、ほんま可愛いな……見た目も中身も、俺の好みどストライクやし……こんなん、好きにならん方が無理あるやろ)
実際、彼女が入隊してから四席に就くまでの働きぶり、気遣い、部下への接し方──どれも見てきた。
だからこそ、惹かれない方が可笑しいと、これで惚れなかったらそいつは不能だと平子は思ってる。
***
◆十二番隊・隊舎
「ひよ里さ〜ん、真子くんが来てやったで〜」
「なんやそのアホ面はーッ!!」
ドスッ!!
容赦のない蹴りが、平子の顔面に炸裂した。
もはや、十二番隊では見慣れた光景である。最初のうちは心配していた隊士たちも、今では素通りしていく。
「ちょ、なんやねん毎回! 心配して見に来てやってるだけやのに!」
「誰が頼んだっちゅーねん! 心配してやなくて、ただサボりたいだけやろ!このバケ!」
「誰がハゲや!! ちゅーか、もうちょっとお淑やかに出来んのか?うちの四席を見習えや! 」
「な〜にがお淑やかに〜やっ!!知らんわ!このハゲ!!」
「まぁまぁ、おふたりとも……そのへんで」
割って入ったのは、元隠密機動であり新しく十二番隊隊長となった浦原喜助だった。
「平子さんも、ひよ里さんのことを心配して来てるんスよ。ねぇ?」
「……まぁ、心配する必要もなくなってきたけどな。……あんたのとこでも相変わらずやし」
「けど、あまり頻繁に来てると、副隊長さんや如月さんに怒られちゃいますよ?」
その言葉に、平子の肩が一瞬ピクリと動く。
最近、藍染副隊長は外任務で隊舎を空けることが多い。その分、仕事を任せている澪に、既に一度釘を刺されていた。
「……惣右介に怒られるんは、避けたいなあ……」
「その言い方だと、如月さんになら怒られても構わないって聞こえますけどね〜?」
平子が返す前に──
「さっきからその“如月”って誰やねん!うちは話に混ぜてもらえんのかい!」
「なんや、会話に入れなくて寂しかったんかいな?」
「違うわボケ!!」
「まぁまぁ。如月さんは、平子さんのとこの四席の方っスよ」
浦原がフォローするように説明する。
「この前書類を届けに来てくれたんですよ。それがもう、すごく綺麗な方でして……ちょっとドキドキしちゃいました」
にこやかに照れる浦原を見た瞬間──
「なに鼻の下伸ばしてんねん!!」
鋭い蹴りが、今度は浦原に飛ぶ。
実際、澪は他の隊士に任せられるはずの回付を、わざわざ自分で行っていた。真面目ゆえの行動だったが、他の男に下心で見られるのは平子にとって面白くない。
(……澪にはしばらく回付任せんようにしとこ)
「せやろ?めっちゃ別嬪さんやろ。……狙ったらアカンで?」
「なに言うとんねん、ハゲ」
「大丈夫ッスよ、僕はただ綺麗やな〜って思っただけで、平子さんから取ったりなんかしませんよ?」
「……そ、そっか。べ、別に俺のってわけやないけどな!?」
途端に顔を赤らめた平子に、ひよ里は冷ややかに一言。
「……うわ、何やこのハゲ、キモッ」
**********
その日の夜。
如月澪は静まり返った自室で、一人机に向かっていた。照明の淡い光のもと、彼女の手元には一冊のノートがある。表紙には丁寧な文字でこう記されていた。
──《反省ノート》──
彼女が日々書き続けているこのノートには、業務内容や鍛錬の記録もごく稀に含まれているものの、主な内容は“ある人”への個人的な記録である。
今日の行動。
今日の会話。
そして、今日の彼の反応──。
ページをめくるたび、そこには詳細な会話の記録や、平子真子の表情・視線の動き、語尾の変化までもが几帳面に書き込まれていた。
「本日、平子隊長は十二番隊に訪問。ひよ里さんの様子を見に行くと仰っていた。
→ 嫉妬心を自覚。笑顔を崩さず対応できたのは合格。
→ しかし平子隊長が実はひよ里副隊長の事がないかという不安感が残る。
→ “五番隊に入ったのは隊長がいたから”と伝えたら、少し目を逸らして照れていた。可愛い。……いや、そこじゃない。もっと自然に伝える練習をしよう。」
さらにページをめくり反省と課題を見直す
発言:「五番隊の方々は優秀ですから」
→ 隊長に安心していただきたかった
→ 「隊長がいなくても困らない」と受け取られてしまった可能性あり
→ 気遣いと敬意を、言葉の選び方にも込めること。次回は「隊長がいてこその五番隊」という想いを、きちんと伝えられる言葉を探すこと。
そこには、少し筆圧の強い文字でそう記されていた。
彼の前では、言葉ひとつ、仕草ひとつを誤ってしまいたくない。そんな強い想いが滲み出るメモだった。
ページの隅にも、筆圧が濃くなった跡とともに、「次回までに“仕事は私に任せてください”の言い方、もっと自然に」と赤字でメモが書かれている。
この《反省ノート》は、彼女が中央霊術院に在学していた頃から書き続けているものだった。
気付けばもう五十冊を優に越えている。
彼に“振り向いてもらう”ために。
彼に“理想の女だ”と思ってもらうために。
澪にとってこの時間は、反省というより、心に溢れる言葉をそっと吐き出すための、大切な習慣になっている。
ノートに向かう表情は、普段の“完璧な四席”とはまるで違う。
時に指を唇に当てて考え込み、時にページに顔を埋めて身悶えし、時に「……好きすぎてつらい……」と呟きながら机に突っ伏す。
──けれど、それでも。
「次は、もう少し自然に伝えよう。……大丈夫、今日も隊長、笑ってくれてた」
ポツリと呟いてから、彼女は今日のページを閉じる。
表紙に手を置き、まるでノートに願いを込めるように目を閉じた。
明日も隊長の“理想の女性”でいられるように。
彼の傍にいられるように。
誰にも見せることのない“恋心の記録”は、今日も静かにページが増えていく──。
──しかし澪は気付いていない、既に想い人も彼女の事が好きだと言うことに──
