ボタン(バッファローマン夢小説)
名前を変える
ご利用の端末、あるいはブラウザ設定では夢小説機能をご利用になることができません。
古いスマートフォン端末や、一部ブラウザのプライベートブラウジング機能をご利用の際は、機能に制限が掛かることがございます。
「じゃあ、行ってくる」
「うん、いってらっしゃい。気をつけてね」
バッファローマンはスーツ――それも、ラグジュアリーな雰囲気の光沢のある紺のもの――を着て出かけていった。彼女もこれからでかける予定なので、今日の夕食はお互い外で済ませることになっていた。
あの装いから察するに、今夜は帰りが遅くなるだろう。そんなふうに察した彼女は自分もゆっくり出かけてこようと決め、白のスキニーとキャメルブラウンのパンプスに、パウダーブルーのスプリングコートにをはおって家を出た。
彼女は用をすませたあと、新刊書店や高級輸入食材をあつかう店など、気の向くままにいくつもの店をハシゴした。日が暮れたころ、雰囲気のよさそうなちいさなバルを見つけたのでその店に入り、数種のタパスとともにデキャンタの白ワインを楽しんだ。あの巨躯の超人と飲食を共にすると、いつだって信じられないくらいの量の料理と酒がテーブルに運ばれる。今夜は自分一人で始末できるだけの量をと、料理も酒もよくよく気をつけてチョイスした。おかげでキレイに皿とグラスを空にして気分よく帰宅することができた。上質のワインがもたらす心地よい酔いにひたりながら玄関のドアを開けると、たたきにはあるはずのない男物の靴が脱ぎ捨てられていた。
「……あれ?」
彼女の口から怪訝な声がもれた。
玄関の時計に目をやると午後10時を少し過ぎたところだった。
バッファローマンは、やはり一足先に帰宅していた。出かけたときの服装のまま襟元だけをゆるめてリビングのソファに身体を沈め、足をなげだしてくつろいでいる。
「よう、おかえり」
「早かったんだね」
「珍しく、な」
バッファローマンは片手で彼女をさし招くと、彼女の腰に腕を回して抱き寄せた。
とたんにプンと強い酒のにおいが鼻をついた。自分だって飲んでいる彼女が気がつくのだから、酒量は少なくなかっただろう。
「……おさけくさい」
「そこそこ飲んだ」
「やっぱり」
「ほら」
確かめてみろと言わんばかりに、バッファローマンは口を半ば開けた。いかがわしいその仕草に、彼女の心臓がドキリとはねた。そして彼女が唇をかさねたとたん、バッファローマンの舌がその口内に強引に押しいった。いつもよりずっと熱く感じるそれを、彼女はもてなすように、ていねいに絡めとった。ややあってバッファローマンは満足したのか舌を引きぬいた。酒でぬめった唾液が細い糸になって、二人のあいだをつないでいた。
気がつくと彼女は、ワインを飲んでいたときよりも熱くほてっていた。その様子を、バッファローマンの金色の瞳がじっと見つめていた。
「なあ、脱がしてくれよ。酔っちまって脱げねえんだ」
「……いま?」
「ああ」
「ココで?」
「そうだ」
「寝室 で」とか「疲れていないのか」とか、そんな目線で彼女が問うと、「疲れナントカって言うだろ」とバッファローマンは媚態な笑みをうかべた。
だから彼女は、半ばまで解かれたバッファローマンの胸元のネクタイをしゅるり、と抜きとった。それからワイシャツの小さな半透明のボタンを一つずつ丁寧に外していく。うつ向く彼女のうなじに、バッファローマンは顔を埋めた。匂いを吸い込む荒い鼻息を彼女は首すじに感じた。まるで猛った牡牛みたいだ。
「……オレが隣にいないときに、こんなモンつけるなよ」
そう言われて、アーデンのレッドドアを出しなにほんのちょっぴり落としたことを彼女は思いだした。たんなる気まぐれにすぎなかったし、時間と体温でほとんど消えかけていたのだけれど。
だから返事をかえさずに、バッファローマンが着ていたスーツの上衣とシャツを一度に剥がして二つ折りにすると、ソファのうえに置き、あらわになった逞しい胸に、うっとりと唇を寄せた。
「ほら、おまえも」
バッファローマンは彼女ブラウスに手を伸ばすとそのボタンをはずし始めた。
だけど、ノロノロとした指の運びは手こずっているのだろうか。
「ああ、なんで女のボタンは――こう外しにくいんだ」
プチン、とはぜたボタンがとんだ。
end
(初出:PIXIV 2022.00.00)
「うん、いってらっしゃい。気をつけてね」
バッファローマンはスーツ――それも、ラグジュアリーな雰囲気の光沢のある紺のもの――を着て出かけていった。彼女もこれからでかける予定なので、今日の夕食はお互い外で済ませることになっていた。
あの装いから察するに、今夜は帰りが遅くなるだろう。そんなふうに察した彼女は自分もゆっくり出かけてこようと決め、白のスキニーとキャメルブラウンのパンプスに、パウダーブルーのスプリングコートにをはおって家を出た。
彼女は用をすませたあと、新刊書店や高級輸入食材をあつかう店など、気の向くままにいくつもの店をハシゴした。日が暮れたころ、雰囲気のよさそうなちいさなバルを見つけたのでその店に入り、数種のタパスとともにデキャンタの白ワインを楽しんだ。あの巨躯の超人と飲食を共にすると、いつだって信じられないくらいの量の料理と酒がテーブルに運ばれる。今夜は自分一人で始末できるだけの量をと、料理も酒もよくよく気をつけてチョイスした。おかげでキレイに皿とグラスを空にして気分よく帰宅することができた。上質のワインがもたらす心地よい酔いにひたりながら玄関のドアを開けると、たたきにはあるはずのない男物の靴が脱ぎ捨てられていた。
「……あれ?」
彼女の口から怪訝な声がもれた。
玄関の時計に目をやると午後10時を少し過ぎたところだった。
バッファローマンは、やはり一足先に帰宅していた。出かけたときの服装のまま襟元だけをゆるめてリビングのソファに身体を沈め、足をなげだしてくつろいでいる。
「よう、おかえり」
「早かったんだね」
「珍しく、な」
バッファローマンは片手で彼女をさし招くと、彼女の腰に腕を回して抱き寄せた。
とたんにプンと強い酒のにおいが鼻をついた。自分だって飲んでいる彼女が気がつくのだから、酒量は少なくなかっただろう。
「……おさけくさい」
「そこそこ飲んだ」
「やっぱり」
「ほら」
確かめてみろと言わんばかりに、バッファローマンは口を半ば開けた。いかがわしいその仕草に、彼女の心臓がドキリとはねた。そして彼女が唇をかさねたとたん、バッファローマンの舌がその口内に強引に押しいった。いつもよりずっと熱く感じるそれを、彼女はもてなすように、ていねいに絡めとった。ややあってバッファローマンは満足したのか舌を引きぬいた。酒でぬめった唾液が細い糸になって、二人のあいだをつないでいた。
気がつくと彼女は、ワインを飲んでいたときよりも熱くほてっていた。その様子を、バッファローマンの金色の瞳がじっと見つめていた。
「なあ、脱がしてくれよ。酔っちまって脱げねえんだ」
「……いま?」
「ああ」
「ココで?」
「そうだ」
「
だから彼女は、半ばまで解かれたバッファローマンの胸元のネクタイをしゅるり、と抜きとった。それからワイシャツの小さな半透明のボタンを一つずつ丁寧に外していく。うつ向く彼女のうなじに、バッファローマンは顔を埋めた。匂いを吸い込む荒い鼻息を彼女は首すじに感じた。まるで猛った牡牛みたいだ。
「……オレが隣にいないときに、こんなモンつけるなよ」
そう言われて、アーデンのレッドドアを出しなにほんのちょっぴり落としたことを彼女は思いだした。たんなる気まぐれにすぎなかったし、時間と体温でほとんど消えかけていたのだけれど。
だから返事をかえさずに、バッファローマンが着ていたスーツの上衣とシャツを一度に剥がして二つ折りにすると、ソファのうえに置き、あらわになった逞しい胸に、うっとりと唇を寄せた。
「ほら、おまえも」
バッファローマンは彼女ブラウスに手を伸ばすとそのボタンをはずし始めた。
だけど、ノロノロとした指の運びは手こずっているのだろうか。
「ああ、なんで女のボタンは――こう外しにくいんだ」
プチン、とはぜたボタンがとんだ。
end
(初出:PIXIV 2022.00.00)
1/1ページ