鳩と王様(バッファローマン夢小説)
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『鳩』
作詞:不詳、作曲:不詳
ぽっぽっぽ
はとぽっぽ
まめがほしいか
そらやるぞ
みんなでなかよく
たべにこい
彼女は一人歌いながら、群がる鳩にエサをやっている。平日の午前中、そんな事に興じる余裕のある者が他に居るはずもなく、鳩たちの関心を一身に集めている。
――産まれたばかりのパンダを見に行こう、と言い出したのはどちらだったか。
バッファローマンの仕事が急に流れ、降って湧いたような休日に、二人で動物園にやってきた。
平日なら人も少なかろうという予想はものの見事に外れ、パンダ舎の前は長い列ができている。
待つことが苦にならなければ、普通のカップルは列の最後尾につき、流れにそって少しずつ前に進みながら、他愛ないお喋りに花を咲かせるだろう。
けれどもレジェンド・バッファローマンが、彼らのように振る舞うとなれば、それは全く別の話だ。図抜けて高い彼の姿は、本人の意図に関わらず、どこにいてもその存在を周囲に知らしめてしまう。
「人が集まると、迷惑かけちゃうかもしれないから、また今度にしよっか?」
「悪いな」
「バッファのせいじゃないよ。どうして謝るの?」
そっと、その場所を離れようとした二人だったが「あのバッファローマン」の姿を見つけた子供とその家族らが、集まってくる。みるみるうちに黒山のひとだかりになった。
「プライベートだから」と言っても差し支えない状況だが、子供が自分を慕ってくるとバッファローマンは無下にできない。
好きなのだ、子供が。
彼を目の前にすると、子供の反応は、おおむね二分される。
大喜びするか、大泣きするか。後者であれば、まず近づいてこない。取って食われるとでも思っているのかもしれない。
前者の場合は、顔中を笑顔にして彼の足にしがみついてきたり、頭の両脇に人差し指を二本立てて彼の真似をしたり。
それを見て、バッファローマンはいつも顔をほころばせる。
そんな風に彼の周りに人が集まっている時、彼女は気配を消して、その場からそっと離れる。自分の居場所をメールで伝え、彼が来るのを待つ。
――そして今に至る
跳ねて、飛んで、ついばんで。
また跳ねて飛んで。
自分はいま鳩の王様だ、と彼女は思う。
ただし、エサをあげている間だけ。
彼女のことが好きな訳ではない。
それでもこうやって集まってくると、慕われているような気がして嬉しい。
「ゴメンな、待たせて」
バッファローマンがおもむろに現れた。
今日の彼は白地に紺のボーダーのコットンのサマーセーター、ブリーチ加工したストレートのジーンズ、足元は紺のキャンパス地に白いステッチのデッキシューズといった装いだ。
「へーき」
何をしているのだ、と問う彼に、手をだすように彼女は言う。
言われた通りに差し出された、武骨で大きな掌に一掴みの種子を撒く。
「なんだコレ?」
「ハトのエサ。そのままゆっくりしゃがんでみて?」
彼がそろそろと身を沈めると、鳩のうちでも目ざといものが、差し出された掌に早速乗ってくる。
それを機に、他の鳩も新しい王様に集まってきた。
「おうさま、ばんざーーい」
彼女は袋に残っていたありったけのエサをバッファローマンの足元にぶちまける。
突然の大盤振る舞いに鳩たちは狂喜に沸いた。
「な!ちょっとまて!!こら!!!」
押し寄せる鳩の群れ。足元だけでなく、手に、手に乗りきれないものは肩に。止まり木よろしくロングホーンに掴まっている命知らずなものまでいる。
「だーっ!!いい加減にしろーーーっ!!!」
王様の怒りにおののいて、鳩たちは一斉に空へ帰っていった。
バッファローマンは肩で息をしている。
「……なにしてんだ、コラ」
彼の背後で怒りの陽炎がゆらめいている。
「……エヘヘ」
彼女は笑ってごまかせないかと、淡い期待を抱く。
「コッチこい。ジャンク・クラッシュだ」
彼は両の拳をジャンクマンよろしくガッチョンガッチョンしている。
「ヤダ。バッファにそんな事されたら、『北斗の拳』になっちゃう」
「ダーメーだっ。オレは今、文字通りレイジング・ブルだ。本来ならハリケーンミキサーだが、おおまけにまけてジャンク・クラッシュで勘弁してやろう」
「ヤダったら、ヤダ」
彼女はくるりと振り返って、子鹿のようにかけだした。
それをバッファローマンが追いかける。
ストライドの差ですぐに追いつき、後ろから抱きすくめた。
「掴まえた」
「――怒ってる?」
判っているくせに、彼を見上げて童女のように笑う。
「怒ってねえよ」
笑う彼女を見下ろして、そのほっぺたを軽くつまみ、バッファローマンも笑う。
作詞:不詳、作曲:不詳
ぽっぽっぽ
はとぽっぽ
まめがほしいか
そらやるぞ
みんなでなかよく
たべにこい
彼女は一人歌いながら、群がる鳩にエサをやっている。平日の午前中、そんな事に興じる余裕のある者が他に居るはずもなく、鳩たちの関心を一身に集めている。
――産まれたばかりのパンダを見に行こう、と言い出したのはどちらだったか。
バッファローマンの仕事が急に流れ、降って湧いたような休日に、二人で動物園にやってきた。
平日なら人も少なかろうという予想はものの見事に外れ、パンダ舎の前は長い列ができている。
待つことが苦にならなければ、普通のカップルは列の最後尾につき、流れにそって少しずつ前に進みながら、他愛ないお喋りに花を咲かせるだろう。
けれどもレジェンド・バッファローマンが、彼らのように振る舞うとなれば、それは全く別の話だ。図抜けて高い彼の姿は、本人の意図に関わらず、どこにいてもその存在を周囲に知らしめてしまう。
「人が集まると、迷惑かけちゃうかもしれないから、また今度にしよっか?」
「悪いな」
「バッファのせいじゃないよ。どうして謝るの?」
そっと、その場所を離れようとした二人だったが「あのバッファローマン」の姿を見つけた子供とその家族らが、集まってくる。みるみるうちに黒山のひとだかりになった。
「プライベートだから」と言っても差し支えない状況だが、子供が自分を慕ってくるとバッファローマンは無下にできない。
好きなのだ、子供が。
彼を目の前にすると、子供の反応は、おおむね二分される。
大喜びするか、大泣きするか。後者であれば、まず近づいてこない。取って食われるとでも思っているのかもしれない。
前者の場合は、顔中を笑顔にして彼の足にしがみついてきたり、頭の両脇に人差し指を二本立てて彼の真似をしたり。
それを見て、バッファローマンはいつも顔をほころばせる。
そんな風に彼の周りに人が集まっている時、彼女は気配を消して、その場からそっと離れる。自分の居場所をメールで伝え、彼が来るのを待つ。
――そして今に至る
跳ねて、飛んで、ついばんで。
また跳ねて飛んで。
自分はいま鳩の王様だ、と彼女は思う。
ただし、エサをあげている間だけ。
彼女のことが好きな訳ではない。
それでもこうやって集まってくると、慕われているような気がして嬉しい。
「ゴメンな、待たせて」
バッファローマンがおもむろに現れた。
今日の彼は白地に紺のボーダーのコットンのサマーセーター、ブリーチ加工したストレートのジーンズ、足元は紺のキャンパス地に白いステッチのデッキシューズといった装いだ。
「へーき」
何をしているのだ、と問う彼に、手をだすように彼女は言う。
言われた通りに差し出された、武骨で大きな掌に一掴みの種子を撒く。
「なんだコレ?」
「ハトのエサ。そのままゆっくりしゃがんでみて?」
彼がそろそろと身を沈めると、鳩のうちでも目ざといものが、差し出された掌に早速乗ってくる。
それを機に、他の鳩も新しい王様に集まってきた。
「おうさま、ばんざーーい」
彼女は袋に残っていたありったけのエサをバッファローマンの足元にぶちまける。
突然の大盤振る舞いに鳩たちは狂喜に沸いた。
「な!ちょっとまて!!こら!!!」
押し寄せる鳩の群れ。足元だけでなく、手に、手に乗りきれないものは肩に。止まり木よろしくロングホーンに掴まっている命知らずなものまでいる。
「だーっ!!いい加減にしろーーーっ!!!」
王様の怒りにおののいて、鳩たちは一斉に空へ帰っていった。
バッファローマンは肩で息をしている。
「……なにしてんだ、コラ」
彼の背後で怒りの陽炎がゆらめいている。
「……エヘヘ」
彼女は笑ってごまかせないかと、淡い期待を抱く。
「コッチこい。ジャンク・クラッシュだ」
彼は両の拳をジャンクマンよろしくガッチョンガッチョンしている。
「ヤダ。バッファにそんな事されたら、『北斗の拳』になっちゃう」
「ダーメーだっ。オレは今、文字通りレイジング・ブルだ。本来ならハリケーンミキサーだが、おおまけにまけてジャンク・クラッシュで勘弁してやろう」
「ヤダったら、ヤダ」
彼女はくるりと振り返って、子鹿のようにかけだした。
それをバッファローマンが追いかける。
ストライドの差ですぐに追いつき、後ろから抱きすくめた。
「掴まえた」
「――怒ってる?」
判っているくせに、彼を見上げて童女のように笑う。
「怒ってねえよ」
笑う彼女を見下ろして、そのほっぺたを軽くつまみ、バッファローマンも笑う。
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