たとえていえば其れは(バッファローマン夢小説)
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季節は始まりと終わりから変わっていく。
陽射しがまぶしくてもう寝ていられないという朝や、背中が汗ばんで目覚めてしまう夜が、気がつくとなくなっている。
ああ夏から秋に移ったのだな、と気づく。
ベランダに洗濯物を干していた彼女がバッファローマンを呼んだ。ばかでかいサンダルをはいて呼ばれた場所に出てみれば、金木犀の香りがするという。甘くまろやかなその花香が漂ってくると、秋だなあと毎年実感するのだそうだ。
ところがバッファローマンにはどれがその匂いなのかイマイチ判らない。
こんなにいい香りなのに、と不思議がられたが、関心がなければそんなものだろう。
彼女だって、怯えきった対戦相手の体臭とか、彼がマットに沈む瞬間の呼気の臭いとか、そういうもののことはきっと判らないハズだから。
いま、二人は近所の川縁を歩いていた。
高く遠く空は澄み、赤いトンボが宙を舞う。
先触れもなしに茎を伸ばし、ポツリと開いた曼珠沙華の紅い花。
トンボ!
ヒガンバナ!
バッファローマン!
彼女は目に入るものを一つずつ声にだして確かめると、バッファローマンにぎゅうと抱きついた。お返しにうなじを撫でてやると、嬉しそうにみぞおちあたりに頬擦りした。
こういう他愛ない触れあい大好きだ。言葉よりも余程よく気持ちが通じ合う気がする。
と。
「――いいニオイがする!」
彼女は天啓でもくだったかのように顔をあげ、クンクンあたりのニオイをかぐ。
「カレーのにおいじゃない!?」
促されて注意をはらってみれば、なるほどスパイシーな香りが空気のなかに感じられた。
昼時だしな、バッファローマンがつぶやくと
「見つけた、きっとあそこだ!!」
今いる土手をくだって道路の反対側、住宅街のとばくちに立っている一軒家の門扉に小さなスタンドが立っていた。
「行ってみよう!」
言った瞬間には転がるようにかけ出していた。気をつけろよ、とかぶせるように背後からかけた言葉も聞こえていないだろう。
(――犬か、アイツは)
誰かを動物に例えるのは良くあることだ。どっちつかずのコウモリ、スッポンのように食いついたら離さないしつこさ、猫のように気まぐれ等々。
彼女は、もう、まごうことなく犬だ。
それもセントバーナードのような、生きることの不条理を憂いながら世の移り変わりを泰然と眺めているふうの大型犬ではなく、遊びたいときに遊び、眠くなったら眠り、お前のことが世界で一番好きなのだと四六時中腹をみせてコチラにアピールしてくる小型犬。
昔はもう少し違う雰囲気の女がタイプだったような気がするが。
そんなことを考えながら土手を下っていくバッファローマンだった。
陽射しがまぶしくてもう寝ていられないという朝や、背中が汗ばんで目覚めてしまう夜が、気がつくとなくなっている。
ああ夏から秋に移ったのだな、と気づく。
ベランダに洗濯物を干していた彼女がバッファローマンを呼んだ。ばかでかいサンダルをはいて呼ばれた場所に出てみれば、金木犀の香りがするという。甘くまろやかなその花香が漂ってくると、秋だなあと毎年実感するのだそうだ。
ところがバッファローマンにはどれがその匂いなのかイマイチ判らない。
こんなにいい香りなのに、と不思議がられたが、関心がなければそんなものだろう。
彼女だって、怯えきった対戦相手の体臭とか、彼がマットに沈む瞬間の呼気の臭いとか、そういうもののことはきっと判らないハズだから。
いま、二人は近所の川縁を歩いていた。
高く遠く空は澄み、赤いトンボが宙を舞う。
先触れもなしに茎を伸ばし、ポツリと開いた曼珠沙華の紅い花。
トンボ!
ヒガンバナ!
バッファローマン!
彼女は目に入るものを一つずつ声にだして確かめると、バッファローマンにぎゅうと抱きついた。お返しにうなじを撫でてやると、嬉しそうにみぞおちあたりに頬擦りした。
こういう他愛ない触れあい大好きだ。言葉よりも余程よく気持ちが通じ合う気がする。
と。
「――いいニオイがする!」
彼女は天啓でもくだったかのように顔をあげ、クンクンあたりのニオイをかぐ。
「カレーのにおいじゃない!?」
促されて注意をはらってみれば、なるほどスパイシーな香りが空気のなかに感じられた。
昼時だしな、バッファローマンがつぶやくと
「見つけた、きっとあそこだ!!」
今いる土手をくだって道路の反対側、住宅街のとばくちに立っている一軒家の門扉に小さなスタンドが立っていた。
「行ってみよう!」
言った瞬間には転がるようにかけ出していた。気をつけろよ、とかぶせるように背後からかけた言葉も聞こえていないだろう。
(――犬か、アイツは)
誰かを動物に例えるのは良くあることだ。どっちつかずのコウモリ、スッポンのように食いついたら離さないしつこさ、猫のように気まぐれ等々。
彼女は、もう、まごうことなく犬だ。
それもセントバーナードのような、生きることの不条理を憂いながら世の移り変わりを泰然と眺めているふうの大型犬ではなく、遊びたいときに遊び、眠くなったら眠り、お前のことが世界で一番好きなのだと四六時中腹をみせてコチラにアピールしてくる小型犬。
昔はもう少し違う雰囲気の女がタイプだったような気がするが。
そんなことを考えながら土手を下っていくバッファローマンだった。
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