SIZE(バッファローマン夢小説)
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肩甲骨は翼のなごり
強く歯を立てれば砕けてしまうような肌の薄いワイングラスを彼女はとても好いている。
自宅で使うために何度か買ってはみたものの、いつもほんの僅かな油断でどこかにぶつけパシン、と割ってしまう。
物にはそれにふさわしい場所があるのだとそれで学んだ。
金魚鉢でクジラを飼えないのと同じように。
コポコポとワインがグラスをみたす音がする。
いまこの場所でグラスはとてもくつろいでいる。
ステムに触れているとそのくつろぎが自分にも伝わってくる。
「今度の水曜は晩メシ食いにいくぞ」とバッファローマンがある日彼女に告げた。
そんな物言いならビストロとかバルのような肩の凝らない店、あるいはちょっと奮発して廻らないお寿司屋さんのカウンター。そんな店を想像する。だから今夜帰宅したバッファローマンから「当日に着ろ」と綺麗にラッピングされた包みを渡されて驚いた。
なかには一そろいの衣服が入っていた。
ベロアで出来た金色のワンピース。背中が大きく空いて裾はロングフレアになっている。ワンピースというよりはドレスに近いデザイン。
ブラウンのパールのネックレスと同色の大ぶりなパールで出来たイヤリング。
「水曜って、どこに行くの?」
格式高いホテルのレストランの名前が反ってきた。
着てみろ、と言われてドレスに袖を通すと誂えたようにピッタリだ。
「……どうしてサイズが分かったの?」
「触ってりゃ大体判る」
彼女を抱き寄せて彼は言う。
「最近ちょっとオッパイ大きくなったろ?」
こくりと頷く。
下着を買い換えようか悩んでいたところだった。
背筋も伸びた。
いつも彼を見上げて話しているからだと思う。
「よく似合ってる」
バッファローマンはそう言って、あらわになった彼女の背中を指でなぞった。それが肩甲骨を通りすぎていったとき、ゾクリとして一瞬身体が浮き上がるような気がした。
「どうもコレばっかりはカッコつかねえ……」
もうすぐ日沈という時刻、ホテルに向かうハイヤーのなかでバッファローマンはつぶやいた。助手席を思いっきり前に倒して、どうにかこうにか後部座席に乗り込んでいる。頭も足元もみっちみちで、すこぶる乗り心地が悪そうだ。
「スーツ、シワになっちゃうかも」
上等なスリーピースのスーツ――殆ど黒に近いダークグレーにピンストライプの生地で仕立てられている――、シャンパンゴールドのシルクシャツと緋色のネクタイ。それはリングにあがるときにつけるグローブと同じ色をしている。
「仕方ない。ライトバンで乗り付けるワケにはいかねえからな」
「……忘れてたらごめんなさい。今日って何か記念日だった?」
「何でだ?」
「特別なディナーだから理由があるのかと思って」
「メシ食うのに理由なんか必要ねえだろ」
「そっかな?」
「そうだよ」
強く歯を立てれば砕けてしまうような肌の薄いワイングラスを彼女はとても好いている。
自宅で使うために何度か買ってはみたものの、いつもほんの僅かな油断でどこかにぶつけパシン、と割ってしまう。
物にはそれにふさわしい場所があるのだとそれで学んだ。
金魚鉢でクジラを飼えないのと同じように。
コポコポとワインがグラスをみたす音がする。
いまこの場所でグラスはとてもくつろいでいる。
ステムに触れているとそのくつろぎが自分にも伝わってくる。
「今度の水曜は晩メシ食いにいくぞ」とバッファローマンがある日彼女に告げた。
そんな物言いならビストロとかバルのような肩の凝らない店、あるいはちょっと奮発して廻らないお寿司屋さんのカウンター。そんな店を想像する。だから今夜帰宅したバッファローマンから「当日に着ろ」と綺麗にラッピングされた包みを渡されて驚いた。
なかには一そろいの衣服が入っていた。
ベロアで出来た金色のワンピース。背中が大きく空いて裾はロングフレアになっている。ワンピースというよりはドレスに近いデザイン。
ブラウンのパールのネックレスと同色の大ぶりなパールで出来たイヤリング。
「水曜って、どこに行くの?」
格式高いホテルのレストランの名前が反ってきた。
着てみろ、と言われてドレスに袖を通すと誂えたようにピッタリだ。
「……どうしてサイズが分かったの?」
「触ってりゃ大体判る」
彼女を抱き寄せて彼は言う。
「最近ちょっとオッパイ大きくなったろ?」
こくりと頷く。
下着を買い換えようか悩んでいたところだった。
背筋も伸びた。
いつも彼を見上げて話しているからだと思う。
「よく似合ってる」
バッファローマンはそう言って、あらわになった彼女の背中を指でなぞった。それが肩甲骨を通りすぎていったとき、ゾクリとして一瞬身体が浮き上がるような気がした。
「どうもコレばっかりはカッコつかねえ……」
もうすぐ日沈という時刻、ホテルに向かうハイヤーのなかでバッファローマンはつぶやいた。助手席を思いっきり前に倒して、どうにかこうにか後部座席に乗り込んでいる。頭も足元もみっちみちで、すこぶる乗り心地が悪そうだ。
「スーツ、シワになっちゃうかも」
上等なスリーピースのスーツ――殆ど黒に近いダークグレーにピンストライプの生地で仕立てられている――、シャンパンゴールドのシルクシャツと緋色のネクタイ。それはリングにあがるときにつけるグローブと同じ色をしている。
「仕方ない。ライトバンで乗り付けるワケにはいかねえからな」
「……忘れてたらごめんなさい。今日って何か記念日だった?」
「何でだ?」
「特別なディナーだから理由があるのかと思って」
「メシ食うのに理由なんか必要ねえだろ」
「そっかな?」
「そうだよ」
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