消波(バッファローマン夢小説)
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遠くにコンクリートで出来た城が見えた。
正体を確かめにぶらりと歩く。
海に設置する前の保管されている消波ブロックの集まりだった。
「お、ブルトン」
「テトラポッドだってば」
四方に足の出た立方体はバッファローマンでさえ見上げる高さで、およそ5メートルはあるだろうか。スペースを省くために二個を上下に組み合わせ、それが連なっている。
「近くで見るとおっきいねー」
そう言いながら組み合わされた隙間にヒョイと入っていく。
「危ないぞ」
「へーきへーき」
その内に奥へ入り込んだのか小さな背中は見えなくなった。
後を追おうにもその巨体が入り込めるはずもなく、戻るのを待つよりほかなかった。
気が付けば太陽は天高く、影は短い。
人気のない砂浜が右にも左にも続いている。
ふいに世界に一人しかいないような虚ろな気持ちに襲われた。
目の前には海が広がっていて、水中には魚が、見あげれば空の高いところには鳥が、足元の砂には乾いた藻屑に群がる名も知らぬ無数の羽虫がいるのに。
けれども、たとえ彼らがそこに何者かがいることを知覚したとしても、バッファローマンをバッファローマンとしては認識していない。
それは命 と魂 が似て非なるものだということによく似ている。
ひょこ、と入っていった場所から彼女が顔を出した。
「ただいまー」
「おせえよ」
よいしょ、とコンクリートたちの隙間から身体を抜く。
「お土産!」
差し出された大きな手に、コンクリートの小さな欠片をポトリとおいた。
小さくて、だけど奇妙にあちこち剥がれたそれは三日月のかたちをしていた。
「壊したな」
「壊してないよ、落ちてたの」
「あんまり出てこなかったら全部ぶっ壊してつまみ出そうと思ってたんだぞ」
「ほんと?」
「ああ。もしもオレに黙ってどっか行ったら地の果てでも追っかけて捕まえてやるから」
「こわーい」
彼女は嬉しそうに笑いながらバッファローマンに抱きついた。
それから、二人、また砂の上を歩いて。
二言三言話したり、黙り込んだり、手をつないだり。
そうして太陽が少し傾いた。
「あのう提案があるのですが」
「却下」
「まだ何も言っていないのに!」
「泊まって帰りたいとか言うんだろ、違うか?」
「……なんでわかったの!?」
「さっき松林の向こうにあった民宿の看板見てたろ、おまえ。大体わかるよ」
「だめかー」
「今夜は家に帰って、おまえの用意した素麺が食いたいんだオレは」
「暑いからいいね、お素麺」
「薬味にはショウガを忘れないでくれよ」
「冷蔵庫にミョウガもあったよ」
「泣かせるねえ」
「3個あった。1個は刻んで、残りは天ぷらにしよう!それとナスとししとうも揚げて食べよう!」
「揚げたてを素麺のつゆにつけて食ったら絶対旨いよな」
「うん!気を付けないとおつゆも飲んじゃうね」
「よし!それでは海開き終了!速やかに撤収!!」
「はい!軍曹どの」
二人はビッ!と姿勢を正すと、仲良く砂の上を駆けだした。
end
初出:PIXIV 2021.07.14
正体を確かめにぶらりと歩く。
海に設置する前の保管されている消波ブロックの集まりだった。
「お、ブルトン」
「テトラポッドだってば」
四方に足の出た立方体はバッファローマンでさえ見上げる高さで、およそ5メートルはあるだろうか。スペースを省くために二個を上下に組み合わせ、それが連なっている。
「近くで見るとおっきいねー」
そう言いながら組み合わされた隙間にヒョイと入っていく。
「危ないぞ」
「へーきへーき」
その内に奥へ入り込んだのか小さな背中は見えなくなった。
後を追おうにもその巨体が入り込めるはずもなく、戻るのを待つよりほかなかった。
気が付けば太陽は天高く、影は短い。
人気のない砂浜が右にも左にも続いている。
ふいに世界に一人しかいないような虚ろな気持ちに襲われた。
目の前には海が広がっていて、水中には魚が、見あげれば空の高いところには鳥が、足元の砂には乾いた藻屑に群がる名も知らぬ無数の羽虫がいるのに。
けれども、たとえ彼らがそこに何者かがいることを知覚したとしても、バッファローマンをバッファローマンとしては認識していない。
それは
ひょこ、と入っていった場所から彼女が顔を出した。
「ただいまー」
「おせえよ」
よいしょ、とコンクリートたちの隙間から身体を抜く。
「お土産!」
差し出された大きな手に、コンクリートの小さな欠片をポトリとおいた。
小さくて、だけど奇妙にあちこち剥がれたそれは三日月のかたちをしていた。
「壊したな」
「壊してないよ、落ちてたの」
「あんまり出てこなかったら全部ぶっ壊してつまみ出そうと思ってたんだぞ」
「ほんと?」
「ああ。もしもオレに黙ってどっか行ったら地の果てでも追っかけて捕まえてやるから」
「こわーい」
彼女は嬉しそうに笑いながらバッファローマンに抱きついた。
それから、二人、また砂の上を歩いて。
二言三言話したり、黙り込んだり、手をつないだり。
そうして太陽が少し傾いた。
「あのう提案があるのですが」
「却下」
「まだ何も言っていないのに!」
「泊まって帰りたいとか言うんだろ、違うか?」
「……なんでわかったの!?」
「さっき松林の向こうにあった民宿の看板見てたろ、おまえ。大体わかるよ」
「だめかー」
「今夜は家に帰って、おまえの用意した素麺が食いたいんだオレは」
「暑いからいいね、お素麺」
「薬味にはショウガを忘れないでくれよ」
「冷蔵庫にミョウガもあったよ」
「泣かせるねえ」
「3個あった。1個は刻んで、残りは天ぷらにしよう!それとナスとししとうも揚げて食べよう!」
「揚げたてを素麺のつゆにつけて食ったら絶対旨いよな」
「うん!気を付けないとおつゆも飲んじゃうね」
「よし!それでは海開き終了!速やかに撤収!!」
「はい!軍曹どの」
二人はビッ!と姿勢を正すと、仲良く砂の上を駆けだした。
end
初出:PIXIV 2021.07.14
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