消波(バッファローマン夢小説)
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波乗りのできない海を選んだ。
そのせいか海岸の最寄り駅は無人で、樹上で遠慮がちに鳴き始めた二、三のセミが認められるばかりだった。
駅前の看板地図とバッファローマンの方向感覚を頼りに、海に至るとおぼしき道を行くと、ややあって目の前に一面の砂浜が見えた。
小走りにそこへ駆け寄る彼女とその後をゆっくりついていくバッファローマン。彼の手首からはコンビニのビニール袋がぶら下がっていて、缶ビール、唐揚げ風のチキンスナック、ペットボトルのドリンクなどが詰め込まれていた。
電車の中では、海の家でビールを飲もう、焼きイカも食べようなどと盛り上がっていたが、駅へ降りた瞬間、海の家すらまだ営業していないだろうと思い至ったから、途中のコンビニで買ったのだ。
「うーーー!みーーーー!」
「靴脱ぎ禁止だぞー」
波打ち際で叫んでいる背中にたしなめるように声をかける。
「えー!?」
不満げに振り返った彼女にビールの入った袋をかかげた。
「ビール、飲もうぜ」
彼女は満面の笑みで駆け寄り、勢いを殺さぬままバッファローマンに突っ込んできた。
「ハリケーンミキサー!」
「いかんな。全くなってない」
バッファローマンは身じろぎ一つせず、筋肉の盛り上がった逞しい腕を彼女の背中にまわし、ギュッと抱き寄せた。
砂浜に並んで座り込みビールの缶を開けた。プシュ、という小気味良い音ともに勢いよく泡が顔をだす。
「海開きに、かんぱい!」
ベコンと缶を合わせたあとは半分ほどまで一息に飲み干した。
大きなものと小さなもの、満足のため息がふたつ。
それから唐揚げ風のチキンスナックに手を伸ばす。一口サイズのそれは下手をするとバッファローマン指先とさほど変わらない。
「バッファは3個ね、わたし2個」
「サンキュー」
彼女は口をモグモグさせて嬉しそうに飲み込んだあと、もう一口ビールを飲んだ。
「この○○あげクンて、私が小さい頃発売されたんだけど、初めて食べたときスッゴい美味しくて感動して、その後はしばらくこればっかり食べたがったんだって」
「ふうん」
「それで、あんまりにも欲しがるから『お前が大人になったらお勤めしてもらったお給料でお腹いっぱい食べなさい』って父がわたしに言ったんだって」
バッファローマンはシトリンの色をした金色の眼を細めて笑った。
「おまえ、食いもんのハナシばっかりしてるもんな、何だか想像つく」
「バッファがそばにいる時はね。一人のときは――バッファが隣にいないときは、バッファのことばっかり考えてるよ」
「そうか?」
「そうだよ。だからどこか遠くに行っちゃったら、ずーっとバッファローマンのことばっかり考えて、ご飯のこととか忘れちゃって飢え死にしちゃうよ」
「メシはちゃんと食えよ」
「じゃあどっかに行ったりしないで」
「そのつもりだ」
ふわりと柔らかな身体がバッファローマンによりかかる。
「美味しいものを食べるのが好きだし、二人で食べるともっと美味しくなるね」
「そうだな――泣いてんのか?」
どうしたのだ、と彼女の顔を覗きこむ。
声も出さずただ涙をホロホロとこぼしていた。
「去年も海に行ったでしょ?今年も海に来られたから嬉しいの。それでそうやって思い出が増えてくのが、とっても幸せ」
「これからもっと増えるんだぞ」
バッファローマンは陽射しを遮るように彼女に覆いかぶさるとキスをした。
ビールの後味が残ったほろ苦いキス。
そのせいか海岸の最寄り駅は無人で、樹上で遠慮がちに鳴き始めた二、三のセミが認められるばかりだった。
駅前の看板地図とバッファローマンの方向感覚を頼りに、海に至るとおぼしき道を行くと、ややあって目の前に一面の砂浜が見えた。
小走りにそこへ駆け寄る彼女とその後をゆっくりついていくバッファローマン。彼の手首からはコンビニのビニール袋がぶら下がっていて、缶ビール、唐揚げ風のチキンスナック、ペットボトルのドリンクなどが詰め込まれていた。
電車の中では、海の家でビールを飲もう、焼きイカも食べようなどと盛り上がっていたが、駅へ降りた瞬間、海の家すらまだ営業していないだろうと思い至ったから、途中のコンビニで買ったのだ。
「うーーー!みーーーー!」
「靴脱ぎ禁止だぞー」
波打ち際で叫んでいる背中にたしなめるように声をかける。
「えー!?」
不満げに振り返った彼女にビールの入った袋をかかげた。
「ビール、飲もうぜ」
彼女は満面の笑みで駆け寄り、勢いを殺さぬままバッファローマンに突っ込んできた。
「ハリケーンミキサー!」
「いかんな。全くなってない」
バッファローマンは身じろぎ一つせず、筋肉の盛り上がった逞しい腕を彼女の背中にまわし、ギュッと抱き寄せた。
砂浜に並んで座り込みビールの缶を開けた。プシュ、という小気味良い音ともに勢いよく泡が顔をだす。
「海開きに、かんぱい!」
ベコンと缶を合わせたあとは半分ほどまで一息に飲み干した。
大きなものと小さなもの、満足のため息がふたつ。
それから唐揚げ風のチキンスナックに手を伸ばす。一口サイズのそれは下手をするとバッファローマン指先とさほど変わらない。
「バッファは3個ね、わたし2個」
「サンキュー」
彼女は口をモグモグさせて嬉しそうに飲み込んだあと、もう一口ビールを飲んだ。
「この○○あげクンて、私が小さい頃発売されたんだけど、初めて食べたときスッゴい美味しくて感動して、その後はしばらくこればっかり食べたがったんだって」
「ふうん」
「それで、あんまりにも欲しがるから『お前が大人になったらお勤めしてもらったお給料でお腹いっぱい食べなさい』って父がわたしに言ったんだって」
バッファローマンはシトリンの色をした金色の眼を細めて笑った。
「おまえ、食いもんのハナシばっかりしてるもんな、何だか想像つく」
「バッファがそばにいる時はね。一人のときは――バッファが隣にいないときは、バッファのことばっかり考えてるよ」
「そうか?」
「そうだよ。だからどこか遠くに行っちゃったら、ずーっとバッファローマンのことばっかり考えて、ご飯のこととか忘れちゃって飢え死にしちゃうよ」
「メシはちゃんと食えよ」
「じゃあどっかに行ったりしないで」
「そのつもりだ」
ふわりと柔らかな身体がバッファローマンによりかかる。
「美味しいものを食べるのが好きだし、二人で食べるともっと美味しくなるね」
「そうだな――泣いてんのか?」
どうしたのだ、と彼女の顔を覗きこむ。
声も出さずただ涙をホロホロとこぼしていた。
「去年も海に行ったでしょ?今年も海に来られたから嬉しいの。それでそうやって思い出が増えてくのが、とっても幸せ」
「これからもっと増えるんだぞ」
バッファローマンは陽射しを遮るように彼女に覆いかぶさるとキスをした。
ビールの後味が残ったほろ苦いキス。
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