極東の拠点
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あれから何をするでもなくバッファローマンはソファに座って新聞を読んでいた。目は紙面を追っているが、ややもするとさっきの場面がリフレインする。気分を害しているようには見えなかった。けれどもそうやって相手の顔色を慮っている事実がそもそも煩わしい。
だから誰かと――特に同類ではなく色恋の相手と――暮らすのは苦手だ。
小さく、弱く、柔らかくて、自分とは全く異なるメンタリティ。一番弱り果てるのは『話せば判りあえる、理解しあえる』と心の底から信じきっていることだ。思うのは構わない。ただしそれを彼にも当てはめないでほしい。
本当に世界が小さい生き物たちの考えている通りなのだとしたら、なぜバッファローマンはあのリングロープで囲われた四角い世界の中でいつも誰かと鎬を削りあっているのだ。
彼女は、よく喋る。喋るけれどもそれはいつも明るくて楽しい歌を口ずさむようで、目玉焼きを焼こうと卵を割ったら黄身が二個入っていたとか、掃除していたら無くしたと思ってたアクセサリーを見つけた、などという実に些末なことだし、彼がソレをおざなりに聞き流しても機嫌を損ねたことがない。
おざなりにならざるを得ない時が、やはりあるのだ。世界が彼に対して求める役割は、若い頃に比べればずいぶん減ったけれども、それでもまだ完全に解放されたとは言いがたい。
そんなワケでバッファローマンは彼女といても侃々諤々を拝聴させられることもなく、気の向いたときに相手の方を向けばたいそう熱烈な情愛でもてなされ、おまけに作る料理もまずまずなので、彼女とならココで一緒に暮らしてもいいかもしれないな、と思い始めていた。
そしてある時、彼女の笑顔を眺めている自分の顔に、オートマティックな笑みが浮かんでいるのに気がついて、それからあの「なぁ。ここで、暮らせよ」という台詞に至ったのだった。
だから誰かと――特に同類ではなく色恋の相手と――暮らすのは苦手だ。
小さく、弱く、柔らかくて、自分とは全く異なるメンタリティ。一番弱り果てるのは『話せば判りあえる、理解しあえる』と心の底から信じきっていることだ。思うのは構わない。ただしそれを彼にも当てはめないでほしい。
本当に世界が小さい生き物たちの考えている通りなのだとしたら、なぜバッファローマンはあのリングロープで囲われた四角い世界の中でいつも誰かと鎬を削りあっているのだ。
彼女は、よく喋る。喋るけれどもそれはいつも明るくて楽しい歌を口ずさむようで、目玉焼きを焼こうと卵を割ったら黄身が二個入っていたとか、掃除していたら無くしたと思ってたアクセサリーを見つけた、などという実に些末なことだし、彼がソレをおざなりに聞き流しても機嫌を損ねたことがない。
おざなりにならざるを得ない時が、やはりあるのだ。世界が彼に対して求める役割は、若い頃に比べればずいぶん減ったけれども、それでもまだ完全に解放されたとは言いがたい。
そんなワケでバッファローマンは彼女といても侃々諤々を拝聴させられることもなく、気の向いたときに相手の方を向けばたいそう熱烈な情愛でもてなされ、おまけに作る料理もまずまずなので、彼女とならココで一緒に暮らしてもいいかもしれないな、と思い始めていた。
そしてある時、彼女の笑顔を眺めている自分の顔に、オートマティックな笑みが浮かんでいるのに気がついて、それからあの「なぁ。ここで、暮らせよ」という台詞に至ったのだった。