極東の拠点
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バッファローマンの住居は都内では珍しい第一種低層住居専用地域に建てられた分譲型マンションで、その三階の一戸を所有している。地域の特性として彼の住む階が最上階で、一つの階段に対して三戸、その階段が10。つまり総戸数は30。エントランスを抜けると天井の高い風除室があって、花崗岩の壁と、明り取りの天窓がまるでヨーロッパの教会のようにも見える。そこから各部屋への階段まではタイルを敷き詰めた渡り廊下が続いていて、差しかけ屋根は強化ガラスなので雨の日は雨粒が透けて見え、その風情で憂打つな気分を幾らか和らげてくれるのだった。
廊下の傍らには樹木が植えてあって、春は灯台躑躅や皐、夏は百日紅や姫しゃら、秋には萩などが目を楽しませてくれる。
春から夏へ移り変わる今の時分は、低く整えられた梔子が沢山の蕾をつけていた。ミルク色と柔らかな黄緑の二層で描かれた螺旋は巻きがだいぶほどけており、もう幾らもせずに内奥から、気鬱をぬぐい去るあの清浄な香りが漂いはじめるだろう。
彼がどのようにしてそこに居を構えたかについては、バッファローマンについてまわる諸々が関わってくる。
本国はスペインで、そちらにもきちんとした生活の拠点を設けているけれども、数々の出来事からここ日本の地とも浅からぬ縁(えにし)ができた。
今でも一年の殆どをこの国で過ごしているし、今後もそれは続くだろう。であるならばある程度快適な場所で寝起きしたくなるのが道理だ。
長期滞在型賃貸物件は都内であれば無数にあるが、いかんせん並外れたその巨躯が選択肢を極端に狭めている。昔からその事でわずらわしい思いをずいぶんしてきて、ならばいっそ条件にあった不動産を購入してしまおうとずい分前に決めた。プライバシーが保てて、居住空間にゆとりのある物件。
このマンションの一戸の総面積は150㎡超。天井高は最大で300cmあり、全洋室のため鴨居が一つもないのでドアの高さも天井に準じている。これは欧米人の体格を基準にしているからだ。約35㎡のリビング。それにダイニングキッチンやバス、トイレなど生活に必要な諸々と部屋が3つ。バッファローマンの自室、寝室、最後の一部屋が彼女のスペースになった。それらの部屋の造り同様に、据えられた家具もまた、所有者の巨躯に準じたサイズになっている。なかでも寝室に据えられたベッドはシモ●ズのスペシャルオーダーで、ワイドキングのサイズだが、バッファローマンの身長に合わせてその長さは3メートルもある。
薄く開いた寝室のドアの隙間から、それを初めて見たとき、アレなホテルのベッドみたいだな、と下卑た考えが頭に浮かんだ。
どこで何をしていても他の誰かになることが出来ないバッファローマンは迂闊にその手の施設を利用できなくて、後にまさしくその時考えた通りになったのはまた別の話だ。
廊下の傍らには樹木が植えてあって、春は灯台躑躅や皐、夏は百日紅や姫しゃら、秋には萩などが目を楽しませてくれる。
春から夏へ移り変わる今の時分は、低く整えられた梔子が沢山の蕾をつけていた。ミルク色と柔らかな黄緑の二層で描かれた螺旋は巻きがだいぶほどけており、もう幾らもせずに内奥から、気鬱をぬぐい去るあの清浄な香りが漂いはじめるだろう。
彼がどのようにしてそこに居を構えたかについては、バッファローマンについてまわる諸々が関わってくる。
本国はスペインで、そちらにもきちんとした生活の拠点を設けているけれども、数々の出来事からここ日本の地とも浅からぬ縁(えにし)ができた。
今でも一年の殆どをこの国で過ごしているし、今後もそれは続くだろう。であるならばある程度快適な場所で寝起きしたくなるのが道理だ。
長期滞在型賃貸物件は都内であれば無数にあるが、いかんせん並外れたその巨躯が選択肢を極端に狭めている。昔からその事でわずらわしい思いをずいぶんしてきて、ならばいっそ条件にあった不動産を購入してしまおうとずい分前に決めた。プライバシーが保てて、居住空間にゆとりのある物件。
このマンションの一戸の総面積は150㎡超。天井高は最大で300cmあり、全洋室のため鴨居が一つもないのでドアの高さも天井に準じている。これは欧米人の体格を基準にしているからだ。約35㎡のリビング。それにダイニングキッチンやバス、トイレなど生活に必要な諸々と部屋が3つ。バッファローマンの自室、寝室、最後の一部屋が彼女のスペースになった。それらの部屋の造り同様に、据えられた家具もまた、所有者の巨躯に準じたサイズになっている。なかでも寝室に据えられたベッドはシモ●ズのスペシャルオーダーで、ワイドキングのサイズだが、バッファローマンの身長に合わせてその長さは3メートルもある。
薄く開いた寝室のドアの隙間から、それを初めて見たとき、アレなホテルのベッドみたいだな、と下卑た考えが頭に浮かんだ。
どこで何をしていても他の誰かになることが出来ないバッファローマンは迂闊にその手の施設を利用できなくて、後にまさしくその時考えた通りになったのはまた別の話だ。