山思う(ザ・魔雲天夢小説)
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夏の始めのころ。よく晴れたウィークデイに空を見上げて「ああ、こんな日は仕事なんかしないでのんびり過ごしたいなあ」と、前触れもなく考えることがあるだろう。
その日の午後の彼女もまさにそんな心もちだった。好天は数日続くらしい。そういえば、ついこの間「有給休暇がたまっているから消化してほしい」と上司にいわれていた。さいわい繁忙期でもない。
だから彼女は退勤前に「突然で申し訳ありませんが」と前置きをしたうえで上司にうかがいをたて、一日だけ休みをとる許可を得た。
翌朝、いつもならとっくに家を出ていてしかるべき時間に、彼女はゆうゆうとコーヒーを淹れていて、一体どうしたのだろうとザ・魔雲天は思っていた。
「マウさん、わたし今日休みをとったの」
「とつぜんだな」
「有休、余ってるから使いなさいって前からいわれてて。仕事も落ちついてるし」
「そうか」
彼女はコーヒーをなみなみそそいだ二つのマグカップの片方を相手にわたした。礼をのべてカップを受けとった魔雲天は、のしのしと廊下を歩いて陽当たりのよい縁側にどっしりと腰をおろす。とたんに板張りのそこはギィ、と抗議の悲鳴をあげた。彼の体重が1トンに達することを思えば至極当然だが、心配は無用だ。縁の下の柱にはこれでもか、と筋交いをほどこしてある。
彼のあとをついてきた彼女もかたわらに腰をおろした。
二人は魔雲天の持ち家で暮らしている。古びた平屋の日本家屋で、離れにはこじんまりとした道場があり、彼はそこで主に悪行超人らに超人格闘技を教えている。一口に悪行といってもピンからキリまでいて、彼の道場に足を運ぶ超人はけしてつわ者というわけではない。むしろ実力のなさと肩書きによって、正義超人はおろか人間からも排斥され、始終鬱屈している者が多い。
魔雲天はかりそめでもそんな悪行超人らの精神的なより所になれば、と道場を運営しているのであった。
今日はその道場も休みだった。
梅雨明けを目前にひかえ、太陽はいよいよ力強く、縁側へ射しこむ陽光が二人の身体をチリチリと焼く。
「昼間にこうやって、二人でゆっくりおしゃべりするのって、よく考えたら久しぶりね」
「……そうだな」
朝と夜はともに食卓をかこむが、朝は慌ただしいし、夜は夜で、互いに疲れているところへよけいな気づかいをさせまいと、とりとめもないやり取りに終始する。総じてひざをつき合わせてじっくり話しこむような時間はけして多くなかった。
「あのね、マウさん。わたし知らなかったんだけど……超人になった人間がいるって、ほんとう?」
「……ああ、いる」
元・人間、現・正義超人。名をジェロニモ・ヤングマクダニエル。
彼は不屈の心をもっていた。そして、とても勇敢だった。
「それはよくある事なのかしら」
「いや、まずあり得ない」
稀有、でさえない。奇跡とか、神業とか、そういう範疇だ。
「じゃあ逆は?超人が人間になることってないの?」
「それは……」
魔雲天は思わず言葉尻を飲みこんだ。
超人も人間になる。
そして彼はまさにその当事者だった。
遠い昔、ある日とつぜん空から完璧超人たちがふってきた。自らを完璧・無量大数軍(パーフェクト・ラージナンバーズ )と名のる彼らは、地上のあらゆる超人を殲滅せんと目論んでいた。当時、正義超人と悪魔超人は暫定的な共闘体制を築いて対抗した。
正悪の超人たちが完璧・無量大数軍の面々と対決するなか、ザ・魔雲天は完璧超人ストロング・ザ・武道と戦った。
体躯こそ遜色ないものの、膂力その他について彼は武道に遠く及ばず、たとえ全身全霊をもって立ち向かったとしてもとうてい太刀打ちできないだろう。ゴングが鳴った直後、組みあってすぐに彼はそう悟った。
ならばせめても自分にできることは、あとを託す仲間たちが少しでも有利に戦えるよう、可能なかぎり相手の手の内を暴きたててから沈むこと。
しかし、必死で喰いさがる魔雲天に武道は「ゼロの悲劇」と呼ばれる奥義をくり出し、それによって、魔雲天の岩石でできた身体は人間の身体へと変じてしまった。
そのとたん、身のうちに生じた肉の感覚。
経験したことのない軟らかなその感触に、彼は心底身の毛がよだった。
とつぜんよみがえった記憶に放心する魔雲天。
「どうしたの?マウさん」
彼女はいぶかしげな視線をむけた。
「……いや、何でもない。それから超人が人間になったことは、ない。少なくとも知るかぎりでは」
「そっかあ」
「おかしなことを聞きたがる」
えっとね、とためらいながら彼女は口をひらいた。
「わたし最近、思ってるんだけど、もう少しマウさんと普通の恋人同士みたいに触れ合えたらうれしいなって」
それはどういう意味だ。
答えあぐねて沈黙がおとずれる。
「ごめんなさい、気分を悪くさせたかしら」
「悪いが、オレでは望みをかなえられない。そういうことなら、おまえには他にもっとふさわしい相手がいるだろう」
「ちがうのよ、そうじゃないの。あなたとそうしたいの。他の誰かじゃ意味がないのよ」
そのとき、前触れもなくどこかの樹上でセミが鳴きはじめた。
二人のあいだにただよう気まずい雰囲気をうち消すように、音高く休まずチーーと響くそれは、まるで夏の幕開けを告げるようだった。
「ことし初めてのセミの声ね」
「ああ」
「おかしなこと言ったわ、忘れて」
「気にするな」
「お昼はお素麺なんてどう?ここで食べましょうよ、風が気持ちいいから」
「そうだな」
彼女が昼食の支度をするあいだ、魔雲天はふと思いついて、去年の秋にしまい込んだ風鈴をだしてきた。二人で縁日にいった時に買い求めたものだ。ガラスの内側に富士山があざやかに描かれていて、「マウさんの似顔絵つきね」と彼女は笑った。
縁側の軒先につると、風鈴はそよ風にゆれて、チリン、とひとつ鳴った。
似顔絵とはうまいことをいったものだ。その言の通り彼はヒトガタというより自然の造形物といったほうが正しい。
だのに彼女はそんな自分と。
お待たせ、と彼女は水をたっぷりはった大きな飯台を両手で抱えてやってきた。
「いつも言ってるだろう。重いものを運ぶときは呼べ」
魔雲天が飯台を受けとると、水のなかをたゆたう大量の素麺と氷山みたいに浮いている幾つもの氷。水面にはカンヅメのミカンとサクランボが浮いていた。
それから彼女はまだあるのよ、といってあり合わせの野菜で作った精進揚げをのせた平皿も運んできた。
「いただきます」
二人は両手を合わせ、食前のあいさつをすませると、さっそく素麺に箸をのばした。ゴツゴツした石塊のような魔雲天の手の中で、白木の割り箸はまるで楊枝かマッチ棒のように見えるけれど、彼はそれを器用に繰って素麺をたぐる。それからそば猪口のつゆにつけ、気持ちのよい音をたてて一気にすすった。まるで滝の流れが岩肌をさかのぼるようだ。彼の痛快な食べっぷりはいつも彼女をうれしくさせる。
「うまい」
「たくさん食べて!いっぱい茹でたのよ」
「おまえもだ。二人で食べよう」
「うん!」
それから彼女は午睡をした。縁側から続く畳敷きの居間で。枕がわりの座布団と腹にはタオルケット。
「何だか夏休みの小学生みたい」そういって小さく笑っていたが、魔雲天が気がついたときには寝息をたてていた。
しばらくすると、西の空にどす黒い雲が姿を現した。そうしてみるみるうちに頭上にやってきて、あたりが真っ暗になったかと思うと、堰を切ったように雨を降らせはじめた。
夕立だ。
魔雲天ははなからそれを悟っていた。庭の洗濯物はとっくに取りこんであり、しぶきが入りこまないように縁側のガラスの引き戸もしめてある。大きな雨つぶが窓ガラスにあたるたび、パツパツと音がする。
まるで嵐のようだ。
さしもの超人でも屋外に出ることをためらうような嵐の夜、気が向くとザ・魔雲天はたった独りで闇のなかをそぞろ歩く。吠えたける風、目も開けられないほどにしぶく雨。天はごうごうとうなりをあげる。そんななかを出歩くというのは岩石の肉体をもつ彼だからこそ可能なふるまいだ。
狂乱と混沌のなか、風雨にたたかれ、稲光に照らしだされ、彼は彼であることの喜びを全身で享受する。
超人と人間。
どちらが優れているのかは誰にも決められない。両者は別個の種族だ。
だけど、彼女は屈託なく両者の垣根をとび越え、ザ・魔雲天の胸のなかに飛びこんできた。今では彼もまたそれを受け入れつつある。
しかし彼は人間であるということがどんなものなのか知っている――あのときに知ってしまった。
そして、もう二度と彼が人間になることはない。
悪魔超人ザ・魔雲天の魂をおさめることができるのは、岩石のこの身体だけだから。
深い物思いにふけっていた魔雲天だったが、気がつくと空の端が明るくなりはじめていた。眠っている彼女にかかったタオルケットをそっとなおしてやる。二人の関係はずっとは続かないし、いつか彼女もそれに気づくはずだ。
だけどそれは今ではない。
「ゆっくり眠れ」
ザ・魔雲天はおだやかな――彼女でさえ目にしたことのないような――笑みをうかべ小さくそうつぶやいた。
end
初出:PIXIV 2023.06.27
その日の午後の彼女もまさにそんな心もちだった。好天は数日続くらしい。そういえば、ついこの間「有給休暇がたまっているから消化してほしい」と上司にいわれていた。さいわい繁忙期でもない。
だから彼女は退勤前に「突然で申し訳ありませんが」と前置きをしたうえで上司にうかがいをたて、一日だけ休みをとる許可を得た。
翌朝、いつもならとっくに家を出ていてしかるべき時間に、彼女はゆうゆうとコーヒーを淹れていて、一体どうしたのだろうとザ・魔雲天は思っていた。
「マウさん、わたし今日休みをとったの」
「とつぜんだな」
「有休、余ってるから使いなさいって前からいわれてて。仕事も落ちついてるし」
「そうか」
彼女はコーヒーをなみなみそそいだ二つのマグカップの片方を相手にわたした。礼をのべてカップを受けとった魔雲天は、のしのしと廊下を歩いて陽当たりのよい縁側にどっしりと腰をおろす。とたんに板張りのそこはギィ、と抗議の悲鳴をあげた。彼の体重が1トンに達することを思えば至極当然だが、心配は無用だ。縁の下の柱にはこれでもか、と筋交いをほどこしてある。
彼のあとをついてきた彼女もかたわらに腰をおろした。
二人は魔雲天の持ち家で暮らしている。古びた平屋の日本家屋で、離れにはこじんまりとした道場があり、彼はそこで主に悪行超人らに超人格闘技を教えている。一口に悪行といってもピンからキリまでいて、彼の道場に足を運ぶ超人はけしてつわ者というわけではない。むしろ実力のなさと肩書きによって、正義超人はおろか人間からも排斥され、始終鬱屈している者が多い。
魔雲天はかりそめでもそんな悪行超人らの精神的なより所になれば、と道場を運営しているのであった。
今日はその道場も休みだった。
梅雨明けを目前にひかえ、太陽はいよいよ力強く、縁側へ射しこむ陽光が二人の身体をチリチリと焼く。
「昼間にこうやって、二人でゆっくりおしゃべりするのって、よく考えたら久しぶりね」
「……そうだな」
朝と夜はともに食卓をかこむが、朝は慌ただしいし、夜は夜で、互いに疲れているところへよけいな気づかいをさせまいと、とりとめもないやり取りに終始する。総じてひざをつき合わせてじっくり話しこむような時間はけして多くなかった。
「あのね、マウさん。わたし知らなかったんだけど……超人になった人間がいるって、ほんとう?」
「……ああ、いる」
元・人間、現・正義超人。名をジェロニモ・ヤングマクダニエル。
彼は不屈の心をもっていた。そして、とても勇敢だった。
「それはよくある事なのかしら」
「いや、まずあり得ない」
稀有、でさえない。奇跡とか、神業とか、そういう範疇だ。
「じゃあ逆は?超人が人間になることってないの?」
「それは……」
魔雲天は思わず言葉尻を飲みこんだ。
超人も人間になる。
そして彼はまさにその当事者だった。
遠い昔、ある日とつぜん空から完璧超人たちがふってきた。自らを完璧・無量大数軍(パーフェクト・ラージナンバーズ )と名のる彼らは、地上のあらゆる超人を殲滅せんと目論んでいた。当時、正義超人と悪魔超人は暫定的な共闘体制を築いて対抗した。
正悪の超人たちが完璧・無量大数軍の面々と対決するなか、ザ・魔雲天は完璧超人ストロング・ザ・武道と戦った。
体躯こそ遜色ないものの、膂力その他について彼は武道に遠く及ばず、たとえ全身全霊をもって立ち向かったとしてもとうてい太刀打ちできないだろう。ゴングが鳴った直後、組みあってすぐに彼はそう悟った。
ならばせめても自分にできることは、あとを託す仲間たちが少しでも有利に戦えるよう、可能なかぎり相手の手の内を暴きたててから沈むこと。
しかし、必死で喰いさがる魔雲天に武道は「ゼロの悲劇」と呼ばれる奥義をくり出し、それによって、魔雲天の岩石でできた身体は人間の身体へと変じてしまった。
そのとたん、身のうちに生じた肉の感覚。
経験したことのない軟らかなその感触に、彼は心底身の毛がよだった。
とつぜんよみがえった記憶に放心する魔雲天。
「どうしたの?マウさん」
彼女はいぶかしげな視線をむけた。
「……いや、何でもない。それから超人が人間になったことは、ない。少なくとも知るかぎりでは」
「そっかあ」
「おかしなことを聞きたがる」
えっとね、とためらいながら彼女は口をひらいた。
「わたし最近、思ってるんだけど、もう少しマウさんと普通の恋人同士みたいに触れ合えたらうれしいなって」
それはどういう意味だ。
答えあぐねて沈黙がおとずれる。
「ごめんなさい、気分を悪くさせたかしら」
「悪いが、オレでは望みをかなえられない。そういうことなら、おまえには他にもっとふさわしい相手がいるだろう」
「ちがうのよ、そうじゃないの。あなたとそうしたいの。他の誰かじゃ意味がないのよ」
そのとき、前触れもなくどこかの樹上でセミが鳴きはじめた。
二人のあいだにただよう気まずい雰囲気をうち消すように、音高く休まずチーーと響くそれは、まるで夏の幕開けを告げるようだった。
「ことし初めてのセミの声ね」
「ああ」
「おかしなこと言ったわ、忘れて」
「気にするな」
「お昼はお素麺なんてどう?ここで食べましょうよ、風が気持ちいいから」
「そうだな」
彼女が昼食の支度をするあいだ、魔雲天はふと思いついて、去年の秋にしまい込んだ風鈴をだしてきた。二人で縁日にいった時に買い求めたものだ。ガラスの内側に富士山があざやかに描かれていて、「マウさんの似顔絵つきね」と彼女は笑った。
縁側の軒先につると、風鈴はそよ風にゆれて、チリン、とひとつ鳴った。
似顔絵とはうまいことをいったものだ。その言の通り彼はヒトガタというより自然の造形物といったほうが正しい。
だのに彼女はそんな自分と。
お待たせ、と彼女は水をたっぷりはった大きな飯台を両手で抱えてやってきた。
「いつも言ってるだろう。重いものを運ぶときは呼べ」
魔雲天が飯台を受けとると、水のなかをたゆたう大量の素麺と氷山みたいに浮いている幾つもの氷。水面にはカンヅメのミカンとサクランボが浮いていた。
それから彼女はまだあるのよ、といってあり合わせの野菜で作った精進揚げをのせた平皿も運んできた。
「いただきます」
二人は両手を合わせ、食前のあいさつをすませると、さっそく素麺に箸をのばした。ゴツゴツした石塊のような魔雲天の手の中で、白木の割り箸はまるで楊枝かマッチ棒のように見えるけれど、彼はそれを器用に繰って素麺をたぐる。それからそば猪口のつゆにつけ、気持ちのよい音をたてて一気にすすった。まるで滝の流れが岩肌をさかのぼるようだ。彼の痛快な食べっぷりはいつも彼女をうれしくさせる。
「うまい」
「たくさん食べて!いっぱい茹でたのよ」
「おまえもだ。二人で食べよう」
「うん!」
それから彼女は午睡をした。縁側から続く畳敷きの居間で。枕がわりの座布団と腹にはタオルケット。
「何だか夏休みの小学生みたい」そういって小さく笑っていたが、魔雲天が気がついたときには寝息をたてていた。
しばらくすると、西の空にどす黒い雲が姿を現した。そうしてみるみるうちに頭上にやってきて、あたりが真っ暗になったかと思うと、堰を切ったように雨を降らせはじめた。
夕立だ。
魔雲天ははなからそれを悟っていた。庭の洗濯物はとっくに取りこんであり、しぶきが入りこまないように縁側のガラスの引き戸もしめてある。大きな雨つぶが窓ガラスにあたるたび、パツパツと音がする。
まるで嵐のようだ。
さしもの超人でも屋外に出ることをためらうような嵐の夜、気が向くとザ・魔雲天はたった独りで闇のなかをそぞろ歩く。吠えたける風、目も開けられないほどにしぶく雨。天はごうごうとうなりをあげる。そんななかを出歩くというのは岩石の肉体をもつ彼だからこそ可能なふるまいだ。
狂乱と混沌のなか、風雨にたたかれ、稲光に照らしだされ、彼は彼であることの喜びを全身で享受する。
超人と人間。
どちらが優れているのかは誰にも決められない。両者は別個の種族だ。
だけど、彼女は屈託なく両者の垣根をとび越え、ザ・魔雲天の胸のなかに飛びこんできた。今では彼もまたそれを受け入れつつある。
しかし彼は人間であるということがどんなものなのか知っている――あのときに知ってしまった。
そして、もう二度と彼が人間になることはない。
悪魔超人ザ・魔雲天の魂をおさめることができるのは、岩石のこの身体だけだから。
深い物思いにふけっていた魔雲天だったが、気がつくと空の端が明るくなりはじめていた。眠っている彼女にかかったタオルケットをそっとなおしてやる。二人の関係はずっとは続かないし、いつか彼女もそれに気づくはずだ。
だけどそれは今ではない。
「ゆっくり眠れ」
ザ・魔雲天はおだやかな――彼女でさえ目にしたことのないような――笑みをうかべ小さくそうつぶやいた。
end
初出:PIXIV 2023.06.27
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