春の呪い(ステカセキング夢小説)
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ステカセキングと彼女は枯れ野に横たわって、春の気配を聞いていた。
小鳥のさえずり。
木々のそよぎ。
湿った土の、やわらかな風の、におい。
それらがたしかに春のおとずれを感じさせる。
そんなとき、音に言葉はいらないとステカセキングは考える。
都会の喧騒もたしかによい。
名も知らぬ、おそらく二度と会うこともないだろう人々がまき散らすエネルギーにつられ、自らのうちに湧きあがるメロディ。同じように他の人たちがかもし出したものとまざりあって、街はおおらかなハーモニーで充たされる。
対して自然のなかで感じるそれは、オーケストラのように、命のあるなしに関わらず、今そこに存在する全てによって生みだされる。そんななか、彼女と自分だけが同じメロディを奏でている。
二人は一つの愛を出どころにしているから。
「ステカセはいつも幸せそうだね」
それは彼女といるからだ。
ステカセキングは本当はそう言いたかったが、照れくさいので
「そうかな?」
と答えておいた。
「うん。わたしはそう感じる」
「陽気がよくなって、音がゆるんでるのかも」
「春がきてるね」
「うん」
いまこの瞬間を、記録しておけないのがなんとも残念だ。
ありとあらゆる超人の戦闘データを我が物とする彼だからこそ、失われてしまうものの価値を知っている。
彼女はステカセキングではなく、空を見上げて言った。
「私たちって、結婚すると思うの
「うん」
「きっと、子どもも産まれるわ」
「そうだね」
なぜだかそれは実現する――約束された未来のように感じられた。
悪魔超人なのに。
機械の身体なのに。
春がくる。
そのことがうれしくて、頭がヘンになっているのかもしれない。
きっとそうだ。
春の呪いだ。
ステカセキングはそう思うことにした。
end
初出:PIXIV 2023.92.16
小鳥のさえずり。
木々のそよぎ。
湿った土の、やわらかな風の、におい。
それらがたしかに春のおとずれを感じさせる。
そんなとき、音に言葉はいらないとステカセキングは考える。
都会の喧騒もたしかによい。
名も知らぬ、おそらく二度と会うこともないだろう人々がまき散らすエネルギーにつられ、自らのうちに湧きあがるメロディ。同じように他の人たちがかもし出したものとまざりあって、街はおおらかなハーモニーで充たされる。
対して自然のなかで感じるそれは、オーケストラのように、命のあるなしに関わらず、今そこに存在する全てによって生みだされる。そんななか、彼女と自分だけが同じメロディを奏でている。
二人は一つの愛を出どころにしているから。
「ステカセはいつも幸せそうだね」
それは彼女といるからだ。
ステカセキングは本当はそう言いたかったが、照れくさいので
「そうかな?」
と答えておいた。
「うん。わたしはそう感じる」
「陽気がよくなって、音がゆるんでるのかも」
「春がきてるね」
「うん」
いまこの瞬間を、記録しておけないのがなんとも残念だ。
ありとあらゆる超人の戦闘データを我が物とする彼だからこそ、失われてしまうものの価値を知っている。
彼女はステカセキングではなく、空を見上げて言った。
「私たちって、結婚すると思うの
「うん」
「きっと、子どもも産まれるわ」
「そうだね」
なぜだかそれは実現する――約束された未来のように感じられた。
悪魔超人なのに。
機械の身体なのに。
春がくる。
そのことがうれしくて、頭がヘンになっているのかもしれない。
きっとそうだ。
春の呪いだ。
ステカセキングはそう思うことにした。
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初出:PIXIV 2023.92.16
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