1話:抜錨
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柔らかな日差しが自室の窓を照らす。
いつもと変わらない自分の部屋の天井。
「あれ…?わたし、どうやって帰ってきた…?」
下を見ると乱雑に布団がかけられていた。
辺りを見回すとベッドの近くに置かれたコップとピッチャーが目に入る。
(…あの後、連れて帰ってくれたんだ。)
昨日のままの服によれた化粧。
胸元からアルコールの匂いがする。
「飲むの失敗してるし。…最悪。」
昨日の記憶は途中から朧げだが、はっきり思い出すのはキラーの低い声。
──まだ、戻れるだろ
目を瞑って海賊をやめる想像をする。
結婚して、子供ができて、大きな家の中で笑い合う家族…。
……なんてーね。
「戻れるわけないじゃん。」
(喉渇いたな、さすがに昨日は飲みすぎたか。)
ピッチャーを手元に寄せ、水を注ぐ。
「ぬっる!…いや、やってもらって文句言うのは違うか。」
少し笑い声が出る。
「はぁー……、何やってんだろ。シャワー浴びたら外の空気でも吸いに行くか。」
(船にいたら、あの人に会いそうだし。)
昨日のことを少し思い出す。
さすがに今、会うのは気まず過ぎる。
◆◇◆◇
風が気持ちいい。
二日酔いの体に沁みる。
「あー……、風気持ちぃー…。」
なんとなくで船を出たけど、別に行くあてはない。
とりあえず船から離れるため、島の中をぶらぶら歩く。
「…ユメ、探した。」
聞き覚えがある声に少し視線を逸らす。
変わらない優しい声。
「こんなところで1人で歩くな。キッド海賊団もいるんだぞ。」
(…知ってる。)
「……おれの元に戻ってこい。」
目を瞑って陸での生活を想像する。
誰かと並んでただ平和に過ごす、幸せな暖かい家族。
海軍に狙われない、むしろ守ってくれる生活。
小さく息を吐く。
「…海賊やめる気ないから。」
空気が固まる。
元婚約者の顔も同じく固まった。
「な、」
ユメは元婚約者が何か言おうとするのを遮る。
「もう決めてるから。」
元婚約者は続けて何か言おうと口を開こうとしたが、言葉にしなかった。
「…そうか。」
返ってきたのは小さな声。
ユメも元婚約者に言おうとしたが、やめた。
もうそれ以上はない。
「……ありがとう。…さようなら。」
振り返らず、船を目指す。
さっきより足取りは軽い。
「あんたについて行くって決めたときから、全部捨てた。」
誰に聞かせるわけでもなく、小さく呟いた。
終
次の話に続く→
いつもと変わらない自分の部屋の天井。
「あれ…?わたし、どうやって帰ってきた…?」
下を見ると乱雑に布団がかけられていた。
辺りを見回すとベッドの近くに置かれたコップとピッチャーが目に入る。
(…あの後、連れて帰ってくれたんだ。)
昨日のままの服によれた化粧。
胸元からアルコールの匂いがする。
「飲むの失敗してるし。…最悪。」
昨日の記憶は途中から朧げだが、はっきり思い出すのはキラーの低い声。
──まだ、戻れるだろ
目を瞑って海賊をやめる想像をする。
結婚して、子供ができて、大きな家の中で笑い合う家族…。
……なんてーね。
「戻れるわけないじゃん。」
(喉渇いたな、さすがに昨日は飲みすぎたか。)
ピッチャーを手元に寄せ、水を注ぐ。
「ぬっる!…いや、やってもらって文句言うのは違うか。」
少し笑い声が出る。
「はぁー……、何やってんだろ。シャワー浴びたら外の空気でも吸いに行くか。」
(船にいたら、あの人に会いそうだし。)
昨日のことを少し思い出す。
さすがに今、会うのは気まず過ぎる。
◆◇◆◇
風が気持ちいい。
二日酔いの体に沁みる。
「あー……、風気持ちぃー…。」
なんとなくで船を出たけど、別に行くあてはない。
とりあえず船から離れるため、島の中をぶらぶら歩く。
「…ユメ、探した。」
聞き覚えがある声に少し視線を逸らす。
変わらない優しい声。
「こんなところで1人で歩くな。キッド海賊団もいるんだぞ。」
(…知ってる。)
「……おれの元に戻ってこい。」
目を瞑って陸での生活を想像する。
誰かと並んでただ平和に過ごす、幸せな暖かい家族。
海軍に狙われない、むしろ守ってくれる生活。
小さく息を吐く。
「…海賊やめる気ないから。」
空気が固まる。
元婚約者の顔も同じく固まった。
「な、」
ユメは元婚約者が何か言おうとするのを遮る。
「もう決めてるから。」
元婚約者は続けて何か言おうと口を開こうとしたが、言葉にしなかった。
「…そうか。」
返ってきたのは小さな声。
ユメも元婚約者に言おうとしたが、やめた。
もうそれ以上はない。
「……ありがとう。…さようなら。」
振り返らず、船を目指す。
さっきより足取りは軽い。
「あんたについて行くって決めたときから、全部捨てた。」
誰に聞かせるわけでもなく、小さく呟いた。
終
次の話に続く→
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