1話:抜錨
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同業海賊、島の住人たちと様々な人が集まる酒場でユメは1人で飲んでいた。
「子供いるから早く帰るな。」
「嫁が飲み過ぎだって怒るから…。」
誰かのぼやきがユメの耳に残る。
(……ほんと、最悪。)
もう酒瓶を何本、空にしただろうか。
いくら飲んでも酔えず、頭に浮かぶのはあの男のことばかり。
イスの引く音が聞こえた。
視線を上げなくても誰かわかる。
同じようにお酒を頼む低い声。
「なにしに来たの?」
「酒場に酒以外の用事でもあるのか?」
「…ないね。」
「お前はもう飲むなよ。」
「いいじゃん今日ぐらい。」
同じ場所で騒ぐ海賊たちの笑い声がやけに耳につく。
空気に耐えきらず、残っているお酒を呷る。
喉を過ぎるお酒が生ぬるい。
(…楽しそうにしてる声聞くと、泣いちゃいそう。……もう一本飲んじゃお。)
ユメは飲んでいない瓶に取ろうとしたとき、キラーの厚い指で抑えられる。
「ユメ、いい加減飲み過ぎだ。」
「…いいじゃん、別に。寝る前の友達じゃん。」
「酒に逃げてるだけだろ。」
漫画的表現をするなら、心に矢がグサっと突き刺さるような言葉。
(…キラーのやつ、優しさってのはないのかよ。)
「ちょっと待ってろ。」
席を立ち、何か店主に頼んでるキラーを横目に空いた瓶のラベルを意味なく読む。
「これ飲んで寝ろ。」
酒場に似合わないマグカップを渡された。
甘いココアの匂いが鼻腔をくすぐる。
「…もう子供じゃないんだけど。」
「好きだったろ?」
「子供扱いしないでよね。」
「飲まねぇなら、おれが飲むぞ?」
「…飲まないって言ってないし。」
ココアを飲むと言葉に表せない黒いモヤがかかった心が落ちついてきた。
(……今日のことキラーに話してもいいかも…。)
「ねえ、」
「あの人のことだけどさ、」
「船降りて、子供が出来て、明るい家庭作るんだって思ってたけど、」
「──破談になった。」
笑って誤魔化そうとするけど、渇いた笑いしか出ない。
キラーは黙って言葉の続きを待つように、ゆっくりお酒を飲む。
「……陸で暮らそうと思ったけど、だめだった。」
(あー……、涙出そう。)
「…まだ、戻れるだろ。」
思い浮かぶのは、あの人の驚く顔、そして汚いものでも見るかのような目。
…拒絶する言葉。
「何言ってんの……、無理に決まってんでしょ。」
キラーは何も言わずにただユメの横に座っている。
「……ねえ」
「慰めてよ。」
周りの笑い声がやけに大きく聞こえる。
「今のは違うだろ。」
素早い迷いもない言葉が返ってきた。
「ははっ、冷たっ。」
さっきより少しマシになった笑い声が出る。
「事実だろ。」
「そうだけどさ。…だったら、おやすみのハグしてよ。」
「…ガキかよ。」
グイッと力強くない腕で引き寄せられた。
片腕分だけの距離が近づき、すぐ離れる。
「これで我慢しとけ。」
「……ケチ。」
肩にキラーの温もりが残る。
(でも、あの人じゃなきゃ……満たされない。)
「…何してるんだろうな、わたし。」
目を閉じて、あの人のことを思い出す。
「……最悪。」
そう呟いて、そのまま意識が落ちた。
◆◇◆◇
続く→
「子供いるから早く帰るな。」
「嫁が飲み過ぎだって怒るから…。」
誰かのぼやきがユメの耳に残る。
(……ほんと、最悪。)
もう酒瓶を何本、空にしただろうか。
いくら飲んでも酔えず、頭に浮かぶのはあの男のことばかり。
イスの引く音が聞こえた。
視線を上げなくても誰かわかる。
同じようにお酒を頼む低い声。
「なにしに来たの?」
「酒場に酒以外の用事でもあるのか?」
「…ないね。」
「お前はもう飲むなよ。」
「いいじゃん今日ぐらい。」
同じ場所で騒ぐ海賊たちの笑い声がやけに耳につく。
空気に耐えきらず、残っているお酒を呷る。
喉を過ぎるお酒が生ぬるい。
(…楽しそうにしてる声聞くと、泣いちゃいそう。……もう一本飲んじゃお。)
ユメは飲んでいない瓶に取ろうとしたとき、キラーの厚い指で抑えられる。
「ユメ、いい加減飲み過ぎだ。」
「…いいじゃん、別に。寝る前の友達じゃん。」
「酒に逃げてるだけだろ。」
漫画的表現をするなら、心に矢がグサっと突き刺さるような言葉。
(…キラーのやつ、優しさってのはないのかよ。)
「ちょっと待ってろ。」
席を立ち、何か店主に頼んでるキラーを横目に空いた瓶のラベルを意味なく読む。
「これ飲んで寝ろ。」
酒場に似合わないマグカップを渡された。
甘いココアの匂いが鼻腔をくすぐる。
「…もう子供じゃないんだけど。」
「好きだったろ?」
「子供扱いしないでよね。」
「飲まねぇなら、おれが飲むぞ?」
「…飲まないって言ってないし。」
ココアを飲むと言葉に表せない黒いモヤがかかった心が落ちついてきた。
(……今日のことキラーに話してもいいかも…。)
「ねえ、」
「あの人のことだけどさ、」
「船降りて、子供が出来て、明るい家庭作るんだって思ってたけど、」
「──破談になった。」
笑って誤魔化そうとするけど、渇いた笑いしか出ない。
キラーは黙って言葉の続きを待つように、ゆっくりお酒を飲む。
「……陸で暮らそうと思ったけど、だめだった。」
(あー……、涙出そう。)
「…まだ、戻れるだろ。」
思い浮かぶのは、あの人の驚く顔、そして汚いものでも見るかのような目。
…拒絶する言葉。
「何言ってんの……、無理に決まってんでしょ。」
キラーは何も言わずにただユメの横に座っている。
「……ねえ」
「慰めてよ。」
周りの笑い声がやけに大きく聞こえる。
「今のは違うだろ。」
素早い迷いもない言葉が返ってきた。
「ははっ、冷たっ。」
さっきより少しマシになった笑い声が出る。
「事実だろ。」
「そうだけどさ。…だったら、おやすみのハグしてよ。」
「…ガキかよ。」
グイッと力強くない腕で引き寄せられた。
片腕分だけの距離が近づき、すぐ離れる。
「これで我慢しとけ。」
「……ケチ。」
肩にキラーの温もりが残る。
(でも、あの人じゃなきゃ……満たされない。)
「…何してるんだろうな、わたし。」
目を閉じて、あの人のことを思い出す。
「……最悪。」
そう呟いて、そのまま意識が落ちた。
◆◇◆◇
続く→
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