ゲームブック ドスくん落ち
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二人でアジトに帰ると「軽くシャワーを浴びてきます」と言うので先に自室に戻ることにした。
一連のせいで一気に疲れた体をベッドに沈める。疲れと帰ってこれた安心からどっと眠気が襲いかかる。ノックをされたが眠気で上手く口が動かない。どうせこの部屋に入ってくる人は決まっている。ややあってからドアが開かれた。
覆いかぶさったその人は服こそ着ているものの、水分を含んだ髪からぽたりと水滴が落ちる。せっかくきれいなのにもったいない。
壊れ物でも触るかのように冷たい手が頬を撫でるが噛み跡の残る爪が肌に触れチクチクした。
「ちょっと、いたいです」
「なまえさん、貴女に言わなければいけないことがあります」
「そんな改まってなんです?」
「先日、敵組織との抗争でどこから漏れたのか分かりませんが...、例の神社を襲撃されました。恐らくぼくが調べあげた痕跡を見て隠れ蓑とでも誤認したのかもしれません」
この人がそんな失態を犯すだろうか。疑問を抱くもそれを問う気力もない、結局のところ私では何が真実なのか嘘なのか分からないのだから。
「…そっか」
詳しく聞けばどうやら戦闘機が墜落したらしい。
激しい衝突と漏れ出た燃料で炎上し見る影もないようで復興も難しく暫くは一般人が立ち入ることも不可能だろう。
「怒らないのですか?」
「どうして?」
「帰りたいと、言っていたでしょう。騒ぎが落ち着いた後であれば連れていけますが、」
「もう、いいの」
もちろん、とてもショックではある。
けれどもこれで良かったのかもしれない。あの神社がある限り、未練を捨てられない。それと同じくらいこの人を捨てられないのだから、無い方が諦めもつく。
「...もう、いいんです。きっとこれで良かったんです。帰ったらフョードルさんにも会えなくなっちゃいますし」
そっとささくれた手を握る。
重たい瞼を開けてフョードルさんの顔を見ると真顔でぎょろりとこちらを見ていたものだから、眠気が醒めていく。
元々顔色が悪く、良くも悪くも眼力のある人だから、少しだけ不気味に感じてしまった。
「ねえ、ぼくとても貴女の事を愛しているんです。だから帰らないでください。もし、なまえさんが帰っても必ず見つけますからね」
「なら、急に帰ることになっても安心ですね」
青白い顔が近づいて唇を重ねるとシャワーを浴びたせいかいつもよりしっとりしていた。
思考を奪われる、麻薬のような唇。
ぽたり。ぽたり。
彼の髪についた水滴が首に落ちてきてまるで首輪のようでぞくりと震える。
この人が愛おしい。だから、もういいの。
諦めよう。
赤紫の瞳に宿る狂気は見ぬふりをして、これからも生きていく。
瞼を閉じればかつての友人が、家族が、朧気に浮かんでは消えていく。そしてやがて何も浮かんでこなくなった。
これでいい。これでいいの。
そっと冷たい手を取り祈るように指を絡める。
ねえ、今度こそちゃんと全部忘れさせてね。もう二度と帰りたいたいと思わないように。
きっとこれが人にとっても魔人にとってもハッピーエンド。そうだよね?