ゲームブック ドスくん落ち
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背後から突然誰かに手首を掴まれ後ろで一括りにされた。
叫ぼうとした瞬間口を抑えられる。
その力強さから男だと理解しもう駄目だと諦めかけたその時、懐かしい匂いがした。
「...!」
「...ぼくです。どうかお静かに」
ずっと聞きたかった声に涙腺が緩む。大人しく静かに頷く。
「そのまま静かに、ゆっくり下がって」
耳元で小さく囁く声は間違いなくフョードルさんのもので。
足音を立てぬように彼に合わせて後退してコンテナの影に身を潜める。コツ、コツ、無人駅に誰かの足音が響く。
そっと身を潜めると暫く彷徨っていた足音は消えていき、拘束が解かれる。
「もういいですよ」
「っ怪我は?無事なの?って、」
振り返り背後の相手を見やると多少手に怪我を負っているようだった。潮風に紛れて微かにお酒の匂いがする。
「少し冷えますがぼくは問題ありません。別の場所で指示を出していたのですが嵌められてしまいました。流石は太宰くん。油断ならない相手だ」
「え、えっ?どういうこと?」
「白鯨に送った通信の一部を解析しハッキングされ、そこからなまえさんに偽の連絡を送られてしまいました」
「白鯨」
ならやはり今はギルドとの戦いが終わったあとで間違いないのだと独り言として呟けば
「計画の内の一つです」とだけ返される。期待していたわけではないが肝心なことはいつも教えてはくれない。
「聞きたいことはたくさんありますが、本当に何とも無いんですね?」
「はい、この通りの虚弱体質でいつも通りフラフラしてます」
「今そんな冗談はいらないですけど」
「これでも急いできたんですよ。ぼくを案じて来てくれるのは嬉しいのですが、もう二度としないでください」
生気のない顔が食い気味に近づいてくる。
いつもの余裕ある口ぶりとは大違いで言葉を吐き出していく。
「もし、万が一にも緊急事態が起こった際は必ずゴンチャロフと共に行動しなさい。状況にもよりますが彼ならば最低限命は守りますから」
早口な言葉に吐息が顔にかかりそうだ。
いつの間にか掴まれていた両肩には骨ばった指先がくい込んで痛い。
「あの、」
「それからもしアジトを囲まれたり、爆破される時はご自分の部屋に隠れていなさい。あの部屋は特別製でどこよりも安全です。空気清浄機の中に非常用の通信機を埋め込んでいますから、それを使ってぼくの指示通りに動くこと」
「そろそろ、」
「必ず迎えの者を寄越しますからそれまでは」
「いい加減帰りましょ!」
私が口を挟む間もない程のマシンガントークに強引に終止符を打てば不満げに口を閉じた。
「...そう、ですね。焦っていたようで、すみません。帰りましょうか。っ、なまえさん?」
しょんぼりとした彼の手を握ると華奢な指先は何時も以上に冷たくまるで氷のようなのに、しっとりと汗で濡れていた。
この恐ろしい、魔人と呼ばれる人がたかが自分一人のために取り乱している。
そんな人を放って帰れるのかと自分に問うても出てくる答えは否ばかりだった。
暗い夜道を手を繋いで帰る