ゲームブック ドスくん落ち
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なんだかずっと、ずうっと長い夢を見ていた様な気がする。どんな夢を見ていたのか、思い出せないけれど。
スマホを確認するととっくにお昼を過ぎてもうすぐ夕方に差し掛かる時間だった。カーテンの隙間から差し込む夕日が目に痛い。休日とはいえ、さすがに寝すぎて頭も痛む。それにお腹が空いた。仕方なく起きて冷蔵庫を確認したが手頃にすぐに食べれる物が無かった。
暫く悩んでから、渋々着替えてスーパーに向かう。
惣菜売り場に行くとどうやら期間限定らしい海外の色んな料理やキットが並んでいた。
その中でも一際ロシア料理に目がいく。
フルーツと共に小さなパックに収められているブリヌイが美味しそうだ。もちもちの生地にジャムやクリーム乗せると美味しくてついたくさん食べてしまう。あの人はそれを見てよく笑って、
...?あの人って誰だろう。そもそも自分はこんな小洒落たものなど食べたことは無い筈だ。
寝すぎて頭が可笑しいのか。変な夢でも見ていたに違いない。
とりあえず、気になっていたブリヌイとお弁当を持ってレジを済ませる。
ふと、どこかから視線を感じて当たりを見渡すが何もない。
たまには何か本でも買おうかしらと、出口までの寄り道に最新刊コーナーに目を向けるとどっ、と心臓が脈打った。
文豪ストレイドッグスの最新刊だ。表紙には太宰さんとフョードルさんが描かれている。
ああ、前巻からもうそんなに経ったのか。
買いに並ぼうかと思ったが、レジが混雑し始めたのでやめた。いつでも買えるからまた今度でいいや。本格的に暗くなる前に帰ろう。
なんだか、夜道は怖い。
無事に家に着き鍵を開け誰もいないと分かっているのに癖でただいまと言いながら家に入る。返事は無い。
はずだった。
「おかえりなさい」
「えっ」
あるはずの無い出迎えに買い物袋を玄関に落とし立ち尽くした。
「おや、ブリヌイですか。スメタナは買いました?」
壁にもたれかかる長身の身体。細身をより際立たせる黒いコート。ウシャンカから無造作に伸びる黒髪。生気のない赤紫の瞳に全て思い出した。だったら、尚更ここにいるはずがない。だって、彼は、
「な、どうしてここに...!?」
「ぼくがなまえさんを手放すわけがないでしょう?折角忌々しい神社を壊した矢先に自害されるとは予想外でしたが、今となってはどうでもいいことです。間に合わなかったぼくにも非がありますから、怒ってはいませんよ」
うっそりと悪魔の様に笑い冷たい身体に抱かれ背筋が恐怖で凍る。
愛の重さに差はあれど、あんなに好いた相手だったのに。
"どこに堕ちたと思う?"
"永遠に自由を失うことになる"
今更太宰さんの言葉を思い出した。
あの人は正しかったのだ。私よりずっとこの魔人を理解し尽くしていた。
あちらで死んでもなお追いかけてくるなんて。
もうこの人から逃げられないのだと悟った。
「もう二度と離れません。ぼく達は死ぬまで、否、死んでもずっと一緒です。愛していますなまえさん」
太宰治は、唯一この人から助けてくれる人はもういないのだから。助けようとしてくれたのに私があの手を振り払ってしまった。
私を抱きしめる腕は酷く優しいのに体が動かない。
もうこの人からは永遠に逃げられない。
終
死すらぼくたちを引き裂くことはできません。
今度こそぼくがずっとずっと、守りますからね。ふふ、そんなに嬉し泣きしないでくださいぼくの可愛い人